樹木が鬱蒼として四方を山に囲まれた清浄の境域に、水晶のような水が流れ、所々に青い清泉が散在している。中空には微妙の音楽と共に天津乙女が舞い、霊鳥が飛び交っている。
苔むす麗しい巌の上に、悦子姫が立って日の丸扇を両手に持って、豊国姫命と三五教を讃える歌を歌い舞っている。
音彦はこれまでの宣伝の経緯を歌に歌った。そして真名井ケ原の霊場を讃え、ここに禊して瑞霊と成り代わって曲津神を言向け和す決意を表した。
一同は音彦の歌に勇み立った。そして、豊国姫命が神姿を現すという中央の石の宝座に向かって天津祝詞を奏上し、宣伝歌を歌い終わった。
そこへ加米彦が息せき切って報告にやってきた。黒姫が、フサの国からやってきた高山彦という将軍と結婚し、共に軍勢を引き連れて真名井ケ原に攻め寄せてきたのであった。
音彦は青彦と加米彦に、ウラナイ教軍を言向け和すように命じ、自らは悦子姫とともに豊国姫命の神勅を乞うた。
加米彦、青彦が言霊を射照らすと、魔軍はばたばたと倒れ、高山彦は黒姫とともに馬に乗って遁走した。
二人が戻ってくると、悦子姫に豊国姫命が降臨して、神勅を降しつつあった。
ご神名は、豊雲野尊またの御名を豊国姫神という。
国治立大神と共にいったん地底の国に身を潜めていた。
再び地教山に現れた。
そして国土を修理固成しつつ時の至るのを待っていた。
天運循環し、天津神よりこの聖地を鎮座所と定められた。
この地に霊魂を止めて自転倒島はもとより、大八洲の国々に霊魂を配って世を永遠に守る。
鬼雲彦を使役していた八岐大蛇の片割れが、鬼ケ城に姿を隠して、聖地を窺っている。悦子姫、音彦、加米彦、青彦は進撃して敵を言向け和せ。
悦子姫らは豊国姫命の神勅により、鬼ケ城へ向かった。
音彦は、平助親子に祝詞と宣伝歌の力を説いて聞かせた。平助らは家路についた。