霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一四章 籠抜(かごぬけ)〔七二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻 篇:第3篇 有耶無耶 よみ(新仮名遣い):うやむや
章:第14章 籠抜 よみ(新仮名遣い):かごぬけ 通し章番号:726
口述日:1922(大正11)年06月12日(旧05月17日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
東助が留守の間、洲本の東助館は妻のお百合が守っていた。お百合は東助が何日も帰って来ないことを心配していたが、そこへ門口に宣伝使が尋ねてくる。
宣伝使は、バラモン教の友彦であった。友彦は東助が何日も海へ出たきり帰ってこないことを近所で聞きつけると、それをネタにお百合に取り入って東助の財産を自分のものにしてしまおうと企んでいた。
しかしお百合は、友彦が去年浪速の姉のところで、病気に付け込んで詐欺を働こうとした男であることに気づき、友彦を怒鳴りつけて気を失わせ、縛ってしまった。
そこへ東助が帰還してくる。事の次第を聞いた東助は、友彦に改心を薦め、村人の前で改心の説法をするようにと諭す。しかし友彦は便所に行く振りをして、便壺の穴から逃げてしまった。
東助の部下となった鶴公、清公、武公は、東助に感化されて改心し、言依別命の教えを奉じることになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-15 01:56:22 OBC :rm2314
愛善世界社版:226頁 八幡書店版:第4輯 577頁 修補版: 校定版:230頁 普及版:106頁 初版: ページ備考:
001 洲本(すもと)(さと)()(たか)き、002人子(ひとご)(つかさ)東助(とうすけ)留守(るす)門前(もんぜん)(たたず)み、003宣伝歌(せんでんか)声低(こゑひく)(うた)一人(ひとり)宣伝使(せんでんし)があつた。004下女(はしため)のお(さつ)台所(だいどころ)より(この)(こゑ)()きつけ、005(もん)()(ひら)いて(なが)むれば、006蓑笠(みのかさ)007草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)扮装(いでたち)したる、008四十(しじふ)恰好(かつかう)男盛(をとこざか)りの宣伝使(せんでんし)であつた。009宣伝使(せんでんし)はお(さつ)(むか)ひ、
010宣伝使(せんでんし)()れは日頃(ひごろ)経験(けいけん)(じやう)011(この)(やかた)(まへ)(とほ)()れば、012(なん)とはなしに(この)()には変事(へんじ)突発(とつぱつ)せし(ごと)(おぼ)ゆる。013(なんぢ)(いへ)何事(なにごと)もなきや』
014言葉(ことば)(しと)やかに()ひかけた。015(さつ)(すこ)(くび)(かたむ)(なが)ら、
016(さつ)一寸(ちよつと)()ちを(ねが)ひます。017(おく)()つて奥様(おくさま)(うかが)つて(まゐ)りますから……』
018()(のこ)し、019(その)(まま)姿(すがた)(かく)した。020(おく)一間(ひとま)には女房(にようばう)のお百合(ゆり)021火鉢(ひばち)(まへ)にもたれかかり、022何事(なにごと)思案(しあん)(てい)であつた。023(さつ)(ふすま)をソツと(ひき)あけ、
024(さつ)奥様(おくさま)々々(おくさま)
025()んだ。026百合(ゆり)何事(なにごと)にか()()られしものの(ごと)く、027(さつ)(こゑ)(みみ)()らなかつた。028(さつ)(おそ)(おそ)るお百合(ゆり)(まへ)にじ()り、
029(さつ)『モウシ奥様(おくさま)030門口(かどぐち)不思議(ふしぎ)宣伝使(せんでんし)()つて()られます。031如何(どう)いたしませうかなア』
032()(こゑ)に、033百合(ゆり)(かほ)をあげ、
034百合(ゆり)『ナニ、035宣伝使(せんでんし)(かど)にお()ちとな。036それは都合(つがふ)()(こと)だ。037(ひと)(うかが)つて(いただ)きたい(こと)があるから……どうぞ此方(こちら)(とほ)つて(もら)うて(くだ)さい』
038(さつ)『ハイ(かしこ)まりました』
039足早(あしばや)(おもて)()で、
040(さつ)『モシモシ宣伝使(せんでんし)(さま)041奥様(おくさま)(なに)()(ねがひ)なされたい(こと)があるさうですから、042どうぞ(おく)()(とほ)(くだ)さいませ』
043 宣伝使(せんでんし)()(うなづ)きお(さつ)(あと)(したが)ひ、044草鞋(わらぢ)()(あし)(あら)ひ、045百合(ゆり)居間(ゐま)(とほ)された。046百合(ゆり)()()がり、047宣伝使(せんでんし)上座(かみざ)(しやう)じ、048丁寧(ていねい)(かしら)()げ、
049百合(ゆり)宣伝使(せんでんし)(さま)050よくこそ()立寄(たちよ)(くだ)さいました。051()()ゆるりと()休息(きうそく)(くだ)さいませ』
052宣伝使(せんでんし)(わたくし)はバラモン(けう)友彦(ともひこ)(まを)宣伝使(せんでんし)御座(ござ)る。053当家(たうけ)門前(もんぜん)通過(つうくわ)(いた)さむとする(とき)054(なん)となく気懸(きがか)りが(いた)しましてなりませぬので、055(うち)には(おも)ひも()らぬ事件(じけん)突発(とつぱつ)(いた)して()(やう)(かんが)へましたから、056一寸(ちよつと)()(たづ)(いた)しました』
057百合(ゆり)『それはそれは()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)ります。058(じつ)(ところ)(わたし)主人(しゆじん)東助(とうすけ)(まを)(もの)059二三(にさん)(にち)以前(いぜん)より何処(どこ)(まゐ)りましたか、060皆目(かいもく)行方(ゆくへ)(わか)らず、061大方(おほかた)(この)(あひだ)颶風(しけ)に、062船自慢(ふねじまん)主人(しゆじん)(こと)とて(ふね)(あやつ)り、063荒波(あらなみ)()まれたのではあるまいかと、064(うへ)(した)への大騒動(おほさうどう)065村中(むらぢう)(もの)()()手分(てわ)けを(いた)しまして、066山林(さんりん)原野(げんや)(まを)すに(およ)ばず、067近海(きんかい)(くま)なく(さが)(まは)れども皆目(かいもく)行方(ゆくへ)()れず、068(いき)()るのか()んで()りますのか、069それさへも(わか)りませぬ。070どうぞ(かみ)(さま)一応(いちおう)()(うかが)(くだ)さいますまいか』
071 友彦(ともひこ)近辺(きんぺん)(もの)(さわ)ぎを()て、072遠近(をちこち)人々(ひとびと)東助(とうすけ)紛失(ふんしつ)せし(こと)を、073(まへ)(もつ)()()り、074ワザと立寄(たちよ)つたのである、075されど素知(そし)らぬ(ふう)(よそほ)(なが)ら、
076友彦(ともひこ)『それはそれは()心配(しんぱい)御座(ござ)いませう。077(ひと)(わたし)(うかが)つて()ませう』
078()(あら)(くち)(すす)ぎ、079あたりに(ひと)()きを()てニタリと(わら)ひ、080(した)()し、
081友彦(ともひこ)村人(むらびと)(はなし)()れば、082あれ(だけ)(さが)したのだから、083最早(もはや)()きて()気遣(きづか)ひはない。084ウマくチヨロまかせば、085淡路一(あはぢいち)財産家(ざいさんか)086友彦(ともひこ)亭主(ていしゆ)となり、087バラモン(けう)淡路(あはぢ)(いち)(ゑん)(この)富力(ふりよく)(もつ)拡張(くわくちやう)すれば(なん)でもない(こと)だ。088あゝ結構(けつこう)(かぜ)()いて()たものだ。089(しか)(なが)万々一(まんまんいち)主人(しゆじん)()きて(かへ)つて()たら大変(たいへん)だが、090(しか)滅多(めつた)にそんな(こと)はあるまい。091(ひと)度胸(どきよう)()してやつて()よう』
092小声(こごゑ)(つぶや)いて()る。093そこへ女房(にようばう)のお百合(ゆり)(あたら)しき手拭(てぬぐひ)()ち、
094百合(ゆり)宣伝使(せんでんし)(さま)095どうぞ()れでお()()()(くだ)さいませ』
096とつき()す。097(その)横顔(よこがほ)()て、
098友彦(ともひこ)『アヽ(なん)綺麗(きれい)(をんな)だなア。099……(しか)(いま)独語(ひとりごと)()かれはせなかつたか』
100(やや)不安(ふあん)(ねん)()られ、101(ぬす)()にお百合(ゆり)(かほ)(のぞ)いて()ると、102百合(ゆり)はそんな気配(けはい)()かつた。103友彦(ともひこ)はヤツと安心(あんしん)(むね)()でおろし、104悠々(いういう)(とこ)()端坐(たんざ)し、105バラモン(けう)経文(きやうもん)(とな)(をは)り、106偽神憑(にせかむがか)りとなつて、
107友彦(ともひこ)『ウンウンウン、108(この)(はう)大自在天(だいじざいてん)大国別(おほくにわけの)(みこと)なるぞ』
109(らい)(ごと)呶鳴(どな)()てた。110百合(ゆり)(おどろ)いて平伏(へいふく)し、
111百合(ゆり)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います』
112涙声(なみだごゑ)になつて()る。113友彦(ともひこ)(また)もや(くち)()り、
114友彦(ともひこ)当家(たうけ)主人(しゆじん)東助(とうすけ)は、115(なに)不自由(ふじゆう)なき()であり(なが)ら、116海漁(うみれう)(この)(あるひ)冒険(ばうけん)(てき)事業(じげふ)(いた)(わる)(くせ)がある。117それが(ため)生命(いのち)()てたのだ。118不憫(ふびん)なれどモウ仕方(しかた)がない。119せめて三日(みつか)以前(いぜん)(この)宣伝使(せんでんし)当家(たうけ)()()れば、120()らしてやるのであつたが、121さてもさても残念(ざんねん)(こと)であつたのう。122モウ(この)(うへ)仕方(しかた)がない。123霊魂(みたま)冥福(めいふく)(いの)り、124主人(しゆじん)天国(てんごく)(すく)はるる(やう)125鄭重(ていちよう)なる祭典(さいてん)(おこな)ひ、126(かつ)有力(いうりよく)なる(かみ)(ごと)(をつと)()ち、127東助(とうすけ)後継(あとつぎ)(いた)ささねば、128当家(たうけ)到底(たうてい)永続(えいぞく)(いた)すまいぞよ。129(また)東助(とうすけ)睾丸病(かうぐわんびやう)がある(ため)130()出来(でき)ないから、131折角(せつかく)()めた財産(ざいさん)他人(たにん)()らねばなるまい。132(なんぢ)(かみ)(まを)(こと)を、133よつく(はら)()れて、134何事(なにごと)大国別(おほくにわけの)(みこと)命令(めいれい)(どほ)(いた)すが上分別(じやうふんべつ)だ』
135百合(ゆり)『ハイハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。136……(かみ)(さま)(あふ)せなら、137どんな(こと)でも(そむ)きは(いた)しませぬ』
138友彦(ともひこ)(なん)(えら)(やつ)だ。139(その)(はう)流石(さすが)東助(とうすけ)(つま)だけあつて、140よく身魂(みたま)(みが)けたものだ。141(かみ)感心(かんしん)(いた)すぞよ』
142百合(ゆり)(なに)(まを)しても、143世間(せけん)()らずの卑女(はしため)144(かみ)(さま)から()められる(やう)(こと)(ひと)つも御座(ござ)いませぬ』
145友彦(ともひこ)坊間(ばうかん)(つた)ふる(ところ)()れば、146(なんぢ)(じつ)貞淑(ていしゆく)(をんな)()(こと)だ。147世間(せけん)(うはさ)()かずとも、148(かみ)(こころ)のドン(ぞこ)までよく見抜(みぬ)いて()るぞよ。149一旦(いつたん)()んだ主人(しゆじん)最早(もはや)()べど(こた)へず、150(さけ)べど(かへ)らず、151是非(ぜひ)なしと(あきら)め、152(あと)(いへ)大切(たいせつ)(まも)り、153子孫(しそん)()()やし、154祖先(そせん)(いへ)(まも)るが、155せめてもの東助(とうすけ)への貞節(ていせつ)156合点(がてん)()つたか』
157百合(ゆり)『ハイハイ(かしこ)まりまして御座(ござ)います。158(しか)(なが)(わたし)(やう)(もの)に、159如何(どう)して後添(のちぞへ)()()れる(もの)御座(ござ)いませう。160(なん)だか(をつと)(れい)(たい)()()まない(やう)(おも)はれてなりませぬ。161そして(その)(をつと)()つのは、162せめて三年祭(さんねんさい)(をは)つてからにして(もら)(こと)出来(でき)ますまいか』
163友彦(ともひこ)大国別(おほくにわけの)(みこと)(まを)(こと)164しつかり()け。165人間(にんげん)理屈(りくつ)(ろん)ずるに()らぬ。166(ぜん)(いそ)げだ、167(いち)(にち)(はや)(をつと)(むか)へたがよからう。168(その)(をつと)(かみ)(さづ)けてやる(ほど)に……さうすれば子孫(しそん)(てん)(ほし)(かず)(ごと)()えて、169(いへ)万代(ばんだい)不易(ふえき)170世界(せかい)幸福者(しあわせもの)としてやるぞよ』
171百合(ゆり)『ハイハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。172どうぞ(よろ)しう()(ねがひ)申上(まをしあ)げます。173そして(その)(をつと)(まを)すのは、174何処(どこ)から(もら)ひましたら(よろ)しう御座(ござ)いますか、175これも(ひと)()(うかが)(いた)したう御座(ござ)います』
176友彦(ともひこ)(べつ)何処(どこ)へも(さが)しに()くに(およ)ばぬ。177灯台下(とうだいもと)真暗(まつくら)がり、178(いま)(なんぢ)()(まへ)三国一(さんごくいち)花婿(はなむこ)()()るぞよ。179これも(かみ)媒介(なかうど)(いた)さむと、180遥々(はるばる)()れて()たのだから、181(よろこ)(いさ)んで命令(めいれい)服従(ふくじゆう)するがよからう』
182百合(ゆり)(かみ)(さま)183()つから其処(そこ)らに(たれ)()えませぬ』
184友彦(ともひこ)『ハテ(さつ)しの(わる)い。185(いま)(なんぢ)()(まへ)(おい)(かみ)託宣(たくせん)(つた)へて()る、186大国別(おほくにわけの)(みこと)生宮(いきみや)宣伝使(せんでんし)であるぞよ』
187 お百合(ゆり)はハツと(おどろ)き、188友彦(ともひこ)(かほ)をつくづく看守(みまも)り、
189百合(ゆり)『あなたは何時(いつ)やら、190浪速(なには)(さと)でお()にかかつた(こと)のある(やう)(かた)ですなア』
191友彦(ともひこ)馬鹿(ばか)(まを)せ。192他人(たにん)空似(そらに)(まを)して、193世界(せかい)(おな)(かほ)をした(もの)は、194二人(ふたり)づつ(てん)から(こしら)へてあるのだ。195(この)肉体(にくたい)(かみ)直々(ぢきぢき)生宮(いきみや)であるぞよ。196よく調(しら)べたがよからう』
197百合(ゆり)(はな)(さき)一寸(ちよつと)(あか)(ところ)から、198()(くぼ)んだ(ところ)199(くち)(おほ)きさ、200()()(さき)()けた(ところ)201()たりや()たり、202よくマア()(かた)()るものですなア。203(わたし)(あね)浪速(なには)(さと)嫁入(よめい)つて()りますが、204去年(きよねん)(ふゆ)205急飛脚(きふひきやく)()ましたので、206()()れば(あね)大病(たいびやう)207そこへ宣伝使(せんでんし)がお()えになり、208イロイロと仰有(おつしや)つて……(あね)病気(びやうき)(なほ)してやらう、209それに(つい)てはコレコレの(くすり)()るから、210薬代(くすりだい)()せ……と(あふ)せられ、211大枚(たいまい)三百(さんびやく)(りやう)(ふところ)にし門口(かどぐち)()()り、212(いま)(かほ)()せないさうです。213(わたし)(その)(とき)()(かほ)貴方(あなた)のお(かほ)と、214(あま)りよく()()りますので、215一寸(ちよつと)()(うかが)(いた)しました』
216友彦(ともひこ)(かみ)詐偽師(さぎし)(ひと)つに()られては、217(かみ)迷惑(めいわく)(いた)すぞよ』
218百合(ゆり)『さう仰有(おつしや)るお(こゑ)は、219あの詐偽師(さぎし)とそつくりですワ。220(こゑ)までそれ(ほど)よく()(ひと)()るものですかなア』
221友彦(ともひこ)『つい(はなし)横道(よこみち)這入(はい)つた。222(その)(はう)覚悟(かくご)如何(どう)ぢや』
223百合(ゆり)『どうぞ二三(にさん)(にち)()(くだ)さいませ。224(その)(うへ)でトツクリと(かんが)へ、225親類(しんるゐ)にも相談(さうだん)(いた)し、226浪速(なには)(あね)()んで()て、227(その)(うへ)()厄介(やくかい)(あづか)りませう。228どうぞ(かみ)さま一先(ひとま)()引取(ひきと)(くだ)さいませ』
229 ポンポンと()()つた。230友彦(ともひこ)顔色(かほいろ)真赤(まつか)()め、231冷汗(ひやあせ)(からだ)一面(いちめん)ヅクヅクにかいて、232湯気(ゆげ)をポーツポーツと()(なが)ら、
233友彦(ともひこ)『あゝ失礼(しつれい)(いた)しました。234つい(ねむ)つたと()えて、235結構(けつこう)風呂(ふろ)()れて(もら)うたと(おも)へば、236アヽ(ゆめ)でしたか。237体中(からだぢう)(この)(とほ)り、238守護神(しゆごじん)入浴(にふよく)したと()えまして、239湯気(ゆげ)()つて()りまする』
240百合(ゆり)『イエイエ(けつ)して(ゆめ)では御座(ござ)いませぬ。241神懸(かむがか)三版・御校正本・愛世版では「神懸り」、校定版では「神憑り」。御座(ござ)いました。242それはそれは(めう)(こと)仰有(おつしや)いました。243(わたし)(すこ)(ばか)()()ちぬ(こと)御座(ござ)いますので、244二三(にさん)(にち)猶予(いうよ)(ねが)つて()きました』
245友彦(ともひこ)『あゝさうでしたか。246何分(なにぶん)知覚(ちかく)精神(せいしん)(うしな)つて(しま)神感法(しんかんはふ)神懸(かむがかり)三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。ですから、247チツトも(わか)りませぬ。248神懸(かむがかり)三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。(かへつ)自分(じぶん)()つては不便(ふべん)なもので御座(ござ)います。249アハヽヽヽ』
250(わら)ひに(まぎ)らす。
251百合(ゆり)『それ(だけ)立派(りつぱ)神懸(かむがかり)三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神がかり」。出来(でき)ましたら結構(けつこう)です。252仮令(たとへ)人間憑(にんげんがか)りに(いた)しましても、253あれ(だけ)巧妙(かうめう)託宣(たくせん)出来(でき)ますれば、254大抵(たいてい)(もの)(みな)降参(まゐ)つて(しま)ひます。255(わたし)でさへも一旦(いつたん)は、256あの何々(なになに)でした(くらゐ)ですもの。257オホヽヽヽ』
258友彦(ともひこ)(なん)と、259合点(がてん)()かぬ貴女(あなた)()言葉尻(ことばじり)260(なん)(あや)しい(こと)御座(ござ)いましたか』
261百合(ゆり)『イエイエ(べつ)(あや)しい(こと)御座(ござ)いませぬ。262(かみ)(さま)()引合(ひきあは)せ、263(あね)(うち)去年(きよねん)(まゐ)りました泥棒(どろばう)模型(もけい)実物(じつぶつ)か、264それは(あと)(わか)りますが、265……野太(のぶと)(やつ)(だま)しに()ました』
266(あと)一二句(いちにく)(ちから)()めて、267(やさ)しき(をんな)()呶鳴(どな)りつけた。268友彦(ともひこ)(この)(こゑ)()たれ、269(おも)はず尻餅(しりもち)()いて、270(くち)()けた(まま)271火鉢(ひばち)(よこ)にバタリと(たふ)れた。272百合(ゆり)独語(ひとりごと)
273百合(ゆり)『オホヽヽヽ、274(なん)悪魔(あくま)()ふものは、275どこまでも抜目(ぬけめ)のないものだ。276(てつ)きり此奴(こいつ)(ねえ)さんの(うち)三百(さんびやく)(りやう)(かた)()つた(やつ)間違(まちがひ)ない。277まだ主人(しゆじん)生死(せいし)さへも(わか)らない(うち)から其処(そこ)近所(きんじよ)(うはさ)()いて()よつて、278()加減(かげん)(こと)()ひ、279若後家(わかごけ)(たぶ)らかさうと(おも)うてやつて()よつたのだなア。280どうやら()()かして()るらしい。281(いま)(うち)細帯(ほそおび)手足(てあし)(くく)り、282庭先(にはさき)引摺(ひきず)()し、283(みづ)でもかけて()()けてやりませう。284……アーアそれにしても東助(とうすけ)さまは如何(どう)なつたのかいな。285(むら)(しう)は、286(いま)だに(たれ)報告(はうこく)()(くだ)さらず、287イヨイヨ(わたし)未亡人(みばうじん)になれば、288今迄(いままで)とは層一層(そういつそう)腹帯(はらおび)()めねばなるまい。289あゝ(こま)つた(こと)出来(でき)()た』
290自語(じご)する(をり)しも、291(さつ)(あわただ)しく(この)()駆来(かけきた)り、
292(さつ)奥様(おくさま)293(よろこ)(くだ)さりませ。294旦那(だんな)(さま)只今(ただいま)()機嫌(きげん)よう()(かへ)りになりました』
295 お百合(ゆり)()()(ばか)(よろこ)び、
296百合(ゆり)『ナニ、297旦那(だんな)(さま)がお(かへ)りとな。298あゝ()うしては()られまい。299ドレドレお(むか)へを(まを)さねばなるまい』
300(えり)(ただ)()(ところ)へ、301(はや)くも東助(とうすけ)(さん)(にん)(をとこ)引連(ひきつ)れ、302廊下(らうか)縁板(えんいた)威喝(ゐかつ)させ(なが)(あら)はれ(きた)り、
303東助(とうすけ)『アヽお百合(ゆり)304(あま)(かへ)るのが(おそ)かつたので、305心配(しんぱい)しただらうなア。306村人(むらびと)にも大変(たいへん)厄介(やくかい)をかけたさうだ。307(おれ)到頭(たうとう)(かぜ)()(なが)されたと()(わけ)でもないが、308家島(えじま)まで()つて()たのだ。309マア安心(あんしん)して()れ』
310百合(ゆり)『それはそれは(なに)よりも(うれ)しい(こと)御座(ござ)います。311つきましては貴方(あなた)のお不在中(るすちゆう)に、312四足(よつあし)一匹(いつぴき)()()んで()ましたので、313(いま)生捕(いけどり)にして()きました。314どうぞトツクリ御覧(ごらん)(くだ)さいませ』
315友彦(ともひこ)(ゆび)ざす。
316東助(とうすけ)(なに)317これは人間(にんげん)だないか。318(きび)しく(ばく)されて()るではないか』
319百合(ゆり)『ハイ、320一寸(ちよつと)(わたし)(ばく)しておきました。321此奴(こいつ)去年(きよねん)(ふゆ)322(ねえ)さまの(うち)三百(さんびやく)(りやう)(かた)()つた泥棒(どろばう)ですよ。323あなたが行方(ゆくへ)()れないと()(うはさ)()いて、324ウマく(わたし)(たぶ)らかし、325(この)(いへ)横領(わうりやう)しようと(おも)うて()()図太(づぶと)代物(しろもの)です』
326東助(とうすけ)『それは()しからぬ(やつ)だ。327(しか)(なが)()うしてはおかれまい。328(たす)けてやらねばならぬから……コレコレ鶴公(つるこう)329清公(きよこう)330武公(たけこう)331(まへ)(たち)()苦労(くらう)だが、332(いましめ)()(みづ)でも(あた)へて、333()()けてやつて(くだ)さい』
334 (さん)(にん)(めい)(まま)(いましめ)()(みづ)()()けた。335(やうや)くの(こと)友彦(ともひこ)正気(しやうき)(ふく)()きあがり、336東助(とうすけ)(その)()姿(すがた)()(おほい)(おどろ)き、337(たたみ)(かしら)()りつけ、338(なみだ)(とも)詫入(わびい)る。339東助(とうすけ)友彦(ともひこ)(むか)ひ、
340東助『お(まへ)立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)(ふう)をして()るが、341(いま)()(ところ)()れば、342大変(たいへん)悪党(あくたう)らしい。343(この)()(なか)何処(どこ)までも(あく)では(とほ)れませぬぞ』
344友彦(ともひこ)『ハイ(まこと)(わる)御座(ござ)いました。345面目(めんぼく)次第(しだい)御座(ござ)いませぬ。346どうぞ生命(いのち)(ばか)りはお(たす)(くだ)さいませ。347これつきりモウ宣伝使(せんでんし)()めまする』
348東助(とうすけ)結構(けつこう)宣伝使(せんでんし)(やく)をやめとは(まを)さぬ。349ますます(たましひ)(みが)いて立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)にお()りなさい。350そして世界(せかい)人民(じんみん)善道(ぜんだう)(みちび)きなさるのが貴方(あなた)天職(てんしよく)だ。351今迄(いままで)(やう)(かみ)(さま)松魚節(かつをぶし)にして(をんな)籠絡(ろうらく)したり、352病人(びやうにん)()(いへ)(さが)して、353弱身(よわみ)()()詐欺(さぎ)をしたりする(やう)(こと)は、354これ()りお()めなさるがよからう』
355友彦(ともひこ)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。356どうぞお(たす)(くだ)さいませ。357これ(かぎ)(あく)(あらた)めまする』
358 ()かる(ところ)門口(かどぐち)大勢(おほぜい)(こゑ)にて、
359東助(とうすけ)さまが()きてござつた。360無事(ぶじ)(かへ)られた、361ウローウロー』
362山岳(さんがく)(ゆる)(ばか)歓呼(くわんこ)(こゑ)(きこ)()る。
363東助(とうすけ)『お(まへ)364イヨイヨ改心(かいしん)()たのならば、365あの(とほ)(いま)門口(かどぐち)沢山(たくさん)村人(むらびと)()()るから、366(ひと)懺悔(ざんげ)演説(えんぜつ)でもして(くだ)され。367一伍(いちぶ)一什(しじふ)(つつ)(かく)さず、368旧悪(きうあく)をさらけ()して改心(かいしん)(じやう)をお(しめ)しなされ。369それが出来(でき)ねば大泥棒(おほどろばう)として、370(この)東助(とうすけ)酋長(しうちやう)職権(しよくけん)(もつ)成敗(せいばい)(いた)す』
371 友彦(ともひこ)(ちひ)さい(こゑ)で、
372友彦『ハイ(いた)しまする』
373東助(とうすけ)『サア(はや)門口(かどぐち)()て、374懺悔(ざんげ)演説(えんぜつ)(はじ)めたが(よろ)しからう』
375 友彦(ともひこ)は、
376友彦『ハイ(すぐ)(まゐ)ります。377(にはか)大便(だいべん)(もよほ)して()ました。378どうぞ便所(べんじよ)()(あひだ)()猶予(いうよ)(ねが)ひます』
379東助(とうすけ)便所(べんじよ)ならば其処(そこ)にある。380サア(はや)()つて()たがよからう』
381 友彦(ともひこ)は、
382友彦『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います』
383直様(すぐさま)雪隠(せつちん)()り、384(また)(あな)から(くぐ)つて(そと)()()し、385折柄(をりから)()()れかかつたのを(さいは)ひ、386裏山(うらやま)密林(みつりん)()して一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かく)れたりける。
387 鶴公(つるこう)388清公(きよこう)389武公(たけこう)(さん)(にん)(しばら)東助(とうすけ)(いへ)厄介(やくかい)となり、390(つひ)東助(とうすけ)感化(かんくわ)されて前非(ぜんぴ)()い、391(こころ)(そこ)より言依別(ことよりわけの)(みこと)(をしへ)(ほう)ずる(こと)となりにける。
392大正一一・六・一二 旧五・一七 松村真澄録)
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki