霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 (ばば)(ばば)〔七二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻 篇:第4篇 混線状態 よみ(新仮名遣い):こんせんじょうたい
章:第15章 婆と婆 よみ(新仮名遣い):ばばとばば 通し章番号:727
口述日:1922(大正11)年06月13日(旧05月18日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は瀬戸内海を西へ航海し、小豆ケ島に着いた。この島には岩窟が多くあって怪物が住むと伝えられていた。
貫州は岩窟の様子を見に中に入って行った。一人残された高姫は、することなすこと裏目に出る自分の境遇を思い起こして、自分に憑いている日の出神に疑いの心を起こす。
そして、腹の中にいる霊を責め立て始めた。高姫が腹の中の玉のようになっている霊を捻りつぶそうとすると、霊は自分は日の出神などではなく、木常姫の霊だと白状した。
木常姫は、高姫の肉体は自分の分霊が凝ってできたのだから、他所へ移ることはできないと言う。高姫は自分の守護神が日の出神ではないと感づいていたような発言をする。
しかし、日の出神と偽って現れた以上は、どこまでも日の出神で通さねばならないのだ、と逆に霊を叱りつけ、今度は自分が霊を教育して使ってやるのだと吠えている。
そこへ東助の館の便所から逃げてきた友彦が偶然やってきた。高姫が自問自答しているのを見て、気がふれているのだと思って思わず独り言を言う。それが高姫の耳に入って、今度は高姫は友彦に八つ当たりを始めだした。
友彦はバラモン教時代の高姫を見知っており、二人は互いに名乗りをする。そこへ貫州が岩窟から出てきた。
貫州は、どうやらここは泥棒の一団の隠れ家らしいと報告する。一行は岩窟の中へ進んで行くと、現れたのはバラモン教の蜈蚣姫であった。蜈蚣姫は高姫を三五教の鷹鳥姫と見て襲おうとする。
高姫は、元は自分もバラモン教だったことを明かして、バラモン教のために三五教に潜入していたのだと蜈蚣姫を丸め込んでしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-15 02:00:00 OBC :rm2315
愛善世界社版:243頁 八幡書店版:第4輯 584頁 修補版: 校定版:247頁 普及版:114頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)貫州(くわんしう)(とも)玉能姫(たまのひめ)より(おく)つた新造(しんざう)(ふね)(あやつ)(なが)ら、002(やうや)くにして瀬戸(せと)内海(ないかい)最大(さいだい)巨島(きよたう)小豆(せうど)(しま)到着(たうちやく)し、003磯端(いそばた)(ふね)(つな)ぎ、004(しば)(この)(しま)滞在(たいざい)し、005(やま)谷々(たにだに)までも(くま)なく(たから)所在(ありか)(さが)さむと、006国城山(くにしろやま)中腹(ちうふく)まで(のぼ)りつめた。007(ここ)には巨大(きよだい)なる岩窟(いはや)があつて、008(むかし)から怪物(くわいぶつ)(ひそ)魔窟(まくつ)(とな)へられて()る。
009貫州(くわんしう)高姫(たかひめ)(さま)010ここには立派(りつぱ)岩窟(いはや)()りますなア。011玉能姫(たまのひめ)(やつ)012ヒヨツとしたら()()(ところ)(かく)して()いたかも()れませぬ。013(むかし)から(ひと)出入(でいり)した(こと)のない、014(ふか)岩窟(がんくつ)だと杣人(そまびと)()つて()りましたから、015(ひと)探険(たんけん)して()ませうか』
016高姫(たかひめ)『マア(しばら)(かんが)へさして(もら)はう。017どこ(まで)注意深(ちういぶか)玉能姫(たまのひめ)(こと)であるから、018吾々(われわれ)両人(りやうにん)(この)岩窟(がんくつ)這入(はい)るや(いな)や、019見張(みは)らして()いた味方(みかた)(やつ)(あな)でも(ふさ)ぎ、020徳利詰(とつくりづめ)にでもしよつたら、021それこそ大変(たいへん)だ。022(この)界隈(かいわい)をせめて四五丁(しごちやう)四面(しめん)調査(しら)べた(うへ)(こと)にしよう』
023貫州(くわんしう)『そんな心配(しんぱい)()りますまい。024そんなら此処(ここ)貴女(あなた)()つて()(くだ)さい。025(わたし)一人(ひとり)探険(たんけん)して()ますから……』
026()ふより(はや)く、027岩窟(がんくつ)(なか)(こし)(かが)めて、028ノソノソ()(やう)這入(はい)つて(しま)つた。029(あと)高姫(たかひめ)(うで)()胡床(あぐら)をかき、030思案(しあん)()れて独語(ひとりごと)
031高姫(たかひめ)『あゝする(こと)()(こと)032(いすか)(はし)(ほど)()(ちが)うと()ふのは、033ヤツパリ大自在天(だいじざいてん)大国別(おほくにわけの)(みこと)()神慮(しんりよ)(そむ)いた(むく)いかも()れない。034一旦(いつたん)鬼雲彦(おにくもひこ)部下(ぶか)となり、035バラモン(けう)教理(けうり)(とな)(なが)ら、036(また)もや三五教(あななひけう)変性(へんじやう)男子(なんし)(こひ)しくなり、037ウラナイ(けう)(めい)()つて、038中間教(ちうかんけう)(ひね)()し、039何時(いつ)()にか大自在天(だいじざいてん)()(とな)へぬ(やう)になり、040(ふたた)国治立(くにはるたちの)(みこと)(しん)じ、041再転(さいてん)して素盞嗚(すさのをの)(みこと)三五教(あななひけう)逆戻(ぎやくもど)りをなし、042(いま)(また)三五教(あななひけう)幹部(かんぶ)(ため)散々(さんざん)()()はされ、043()出神(でのかみ)さまも如何(どう)して御座(ござ)るのだらうか。044(この)(ごろ)高姫(たかひめ)精神(せいしん)(へん)だが、045()出神(でのかみ)(さま)(なん)とはなしに便(たよ)りなうなつて()た。046あれ(ほど)(ひか)(たま)所在(ありか)(わか)らぬ(やう)()出神(でのかみ)では、047実際(じつさい)(こと)(やく)()たぬ。048ヒヨツとしたら(この)(ごろ)眼病(がんびやう)でも(わづら)つて()られるのではあるまいかなア。049あゝ最早(もはや)瞋恚(しんい)(くも)(つつ)まれて、050一寸先(いつすんさき)()えなくなつて(しま)つた。051どこを(たづ)ねたら(この)(たま)行衛(ゆくゑ)(わか)るであらうか。052(ただし)熱心(ねつしん)黒姫(くろひめ)最早(もはや)()()れて()るのではあるまいか、053サツパリ五里(ごり)霧中(むちう)(どころ)岩前(がんぜん)夢中(むちう)彷徨(はうくわう)すると()高姫(たかひめ)今日(けふ)境遇(きやうぐう)054アーアもう(かみ)(さま)(いや)になつて(しま)つた。055時々(ときどき)(はら)(なか)からイロイロの(こと)()つて()かして()れるが、056(あと)()(かへ)(なが)むれば、057(ひと)つとして神勅(しんちよく)的中(てきちう)した(こと)はなく、058自分(じぶん)(からだ)憑依(ひようい)して()(れい)には、059(なん)とはなしに贔屓(ひいき)がつくものだから、060自分(じぶん)もチツと(あや)しいとは(おも)(なが)ら、061(いま)今迄(いままで)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)頑張(ぐわんば)り、062()(とほ)して()たが、063明石(あかし)(なだ)難船(なんせん)()ひ、064(また)家島(えじま)では(ふね)()られ島流(しまなが)同様(どうやう)憂目(うきめ)()うても、065(なん)にも()らして()れぬ(やう)盲神(めくらがみ)容器(いれもの)になつた(ところ)で、066()()(はぢ)上塗(うはぬ)りをするばつかりだ、067アヽ如何(どう)したらよからうかなア。068今更(いまさら)聖地(せいち)引返(ひきかへ)し、069言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)杢助(もくすけ)(たい)謝罪(あやま)るのも馬鹿(ばか)げて()るし、070モウ仕方(しかた)がない、071(どく)()はば(さら)(まで)(ねぶ)れだ。072(いま)となつて、073ヤツパリ(わたし)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)では()りませなんだと……そんな(こと)(これ)(まで)威張(ゐば)つた手前(てまへ)074()はれた義理(ぎり)でもなし。075……(ひと)守護神(しゆごじん)談判(だんぱん)をして(その)(うへ)(こと)にしよう。076……コレコレ(はら)(なか)守護神(しゆごじん)077チツと発動(はつどう)して(わたし)質問(しつもん)(こた)へて(くだ)さい。078今度(こんど)今迄(いままで)(やう)なヨタリスクは()きませぬぞ。079ネツトプライスの(まこと)(ひと)つを開陳(かいちん)なされ。080返答(へんたふ)()つては高姫(たかひめ)今日(けふ)(かぎ)りお(まへ)()(こと)()かぬのだから、081サア(はや)発動(はつどう)せぬか、082(くち)()らぬか』
083(こぶし)(かた)めて(へそ)(あた)りを(ちから)一杯(いつぱい)(なぐ)りつけて()る。084如何(どう)したものか、085今日(けふ)(かぎ)りて()出神(でのかみ)(しよう)する憑依物(ひよういぶつ)も、086チウの(こゑ)(ひと)()げず、087(へそ)(した)あたりに萎縮(ゐしゆく)して、088(ちひ)さき(まり)(やう)になつて付着(ふちやく)して()る。089高姫(たかひめ)(ちから)一杯(いつぱい)(その)(たま)(うへ)から(にぎ)()め、
090高姫(たかひめ)『サアどうぢや、091なんとか返答(へんたふ)せぬか。092結構(けつこう)変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)肉体(にくたい)を、093今迄(いままで)よくも弄物(おもちや)にしよつた。094(ひね)(つぶ)してやらうか』
095(はら)(かは)千切(ちぎ)れる(ほど)(ちから)()めて、096グリグリとした(かた)(たま)(にぎ)(つぶ)さうとする。097(はら)(なか)より、
098(木常姫の霊)『アヽ(いた)(いた)い。099白状(はくじやう)します。100どうぞ(こら)へて(くだ)さい。101(わたし)金毛(きんまう)九尾(きうび)(きつね)乾児(こぶん)102(むかし)エルサレムの(みや)で、103大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)以下(いか)神々(かみがみ)(くるし)めた木常姫(こつねひめ)(みたま)御座(ござ)います。104(その)木常姫(こつねひめ)分霊(ぶんれい)()つて貴女(あなた)肉体(にくたい)形作(かたちづく)られ、105(この)()(うま)れて()たのだ。106そして(わたし)(おな)身魂(みたま)分派(わかれ)だから、107(まへ)(うつ)るより(ほか)(うつ)(こと)出来(でき)ないのだ』
108高姫(たかひめ)『よう白状(はくじやう)した。109大方(おほかた)そんな(こと)だらうと(おも)うて()つたのだ。110(しか)(なが)(おな)身魂(みたま)因縁(いんねん)なれば、111(まへ)()(とほ)(はな)(わけ)()かず、112(わたし)実際(じつさい)はお(まへ)(わか)れとも()い。113(しか)木常姫(こつねひめ)霊魂(みたま)だなぞと、114(なん)()弱音(よわね)()くのか。115(はじ)めから()出神(でのかみ)(いつは)つて(あら)はれた以上(いじやう)は、116どこまでも()出神(でのかみ)(とほ)さぬか。117そんな()(よわ)守護神(しゆごじん)(わたし)(きら)ひだ。118サア(これ)から(わたし)がキツと教育(けういく)をしてやるから、119今迄(いままで)(やう)(この)肉体(にくたい)自由(じいう)自在(じざい)使(つか)(こと)はならぬぞ。120高姫(たかひめ)今度(こんど)はお(まへ)使(つか)ふのだから、121さう(おも)へ』
122木常姫(こつねひめ)(れい)肉体(にくたい)(れい)をお使(つか)ひになれば、123体主(たいしゆ)霊従(れいじゆう)になりはしませぬか』
124高姫(たかひめ)『エー(また)しても、125(まへ)までが理屈(りくつ)()ふのか。126世間(せけん)(やつ)(みんな)表面(へうめん)でこそ霊主(れいしゆ)体従(たいじう)()ました(かほ)して(ほざ)いて()るが、127(わか)らぬ(やつ)だなア。128物質(ぶつしつ)()(なか)にそんな馬鹿(ばか)(こと)如何(どう)して(おこな)へるものか。129体主(たいしゆ)霊従(れいじゆう)天地(てんち)真理(しんり)だ。130(わし)今迄(いままで)(まへ)(れい)(したが)ひ、131霊主(れいしゆ)体従(たいじゆう)(まも)つて()て、132(ひと)つも(ろく)(こと)出来(でき)なんだぢやないか。133体主(たいしゆ)霊従(れいじゆう)()(なか)(かぎ)る。134虚偽(きよぎ)(しき)生活(せいくわつ)(この)高姫(たかひめ)()らざる(ところ)135これからはスツクリ()持直(もちなほ)し、136赤裸々(せきらら)露骨(ろこつ)に、137体主(たいしゆ)霊従(れいじゆう)標榜(へうぼう)して()(なか)()心組(つもり)だから、138(まへ)もそう心得(こころえ)ろ』
139木常姫(こつねひめ)(れい)『アヽ仕方(しかた)がない。140(なに)()つても(みづ)でばな()いて()れる(はず)がないから、141ここ(しばら)くは沈黙(ちんもく)(まく)をおろさうか。142アハヽヽヽ』
143自問(じもん)自答(じたふ)(しき)りにやつて()る。
144 (この)(ところ)(くそ)まぶれになつて(のぼ)つて()一人(ひとり)宣伝使(せんでんし)があつた。145宣伝使(せんでんし)岩窟(いはや)(まへ)中婆(ちうばば)(かうべ)()れ、146モノログして()るのを()て、
147宣伝使(せんでんし)『ハハア、148此奴(こいつ)気違(きちがひ)だなア。149(ひと)()うては(ひと)(こた)へて()よる。150(むかし)から(はら)(なか)から自然(しぜん)にものを()病気(びやうき)があると()(こと)()いて()つたがテツキリ()んな(やつ)(こと)()うたのだらう。151神懸(かむがかり)三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。このセリフ内の他の2ヶ所も同じ。にしては(すこ)調子(てうし)(ちが)ふ。152(しか)(なが)病気(びやうき)でも(なん)でも()い、153(はら)(なか)より(なん)でも()いから、154(もの)()つて()れると、155実否(じつぴ)()(かく)も、156神懸(かむがかり)として誤魔化(ごまくわ)すのに都合(つがふ)()いけれど……自分(じぶん)(やう)何時(いつ)まで修行(しうぎやう)しても、157鎮魂(ちんこん)しても、158(はら)(なか)からウンともスンとも()うて()ない(もの)には(こま)つて(しま)ふ。159あちらでも神懸(かむがかり)真似(まね)をしては失敗(しつぱい)し、160こちらでも真似(まね)をしては失敗(しつぱい)し、161到頭(たうとう)洲本(すもと)酋長(しうちやう)(たく)(おい)て、162九分(くぶ)九厘(くりん)()(ところ)で、163女房(にようばう)看破(かんぱ)され(きも)(つぶ)()(ところ)へ、164()んだ(はず)主人(しゆじん)(かへ)つて()よつて(おほ)いに面目玉(めんぼくだま)(つぶ)し、165雪隠(せついん)(なか)から籠脱(かごぬ)けをやつた(とき)(くる)しさ、166(こは)さ、167大自在天(だいじざいてん)(さま)のお(かげ)(やうや)海辺(うみべ)無事(ぶじ)到着(たうちやく)し、168一艘(いつそう)(ふね)見付(みつ)けて、169無理(むり)やりに(おき)漕出(こぎだ)し、170暴風(ばうふう)()(なが)され、171此島(ここ)までやつて()たのだが、172雪隠(せついん)(くぐ)つた(とき)に、173自分(じぶん)宣伝使(せんでんし)(ふく)雪隠(せついん)雑巾役(ざふきんやく)(つと)めよつたと()えて、174(いま)だに怪体(けつたい)臭気(にほひ)がする。175アヽ(こま)つた(こと)だ。176一層(いつそう)(こと)177(ふたた)改悪(かいあく)して、178(この)(ばば)(はだか)にし、179(くさ)着物(きもの)取換(とりかへ)こをしてやらうかなア』
180何時(いつ)()にか小声(こごゑ)(おほ)きくなり、181高姫(たかひめ)(みみ)(きこ)えて()た。182高姫(たかひめ)は、183大部分(だいぶぶん)宣伝使(せんでんし)独語(ひとりごと)()(さと)り、
184高姫(たかひめ)『オツホヽヽヽ、185(くそ)まぶれの宣伝使(せんでんし)186雪隠(せんち)雑巾(ざふきん)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)教服(けうふく)(かへ)るなんて、187そんな(だい)それた野心(やしん)(おこ)すものぢやない。188チヤンとお(まへ)(はら)(そこ)まで見抜(みぬ)いてあるのだから……』
189宣伝使(せんでんし)『ヤアお(まへ)何処(どこ)(ばば)アか()らぬが、190(おれ)腹中(はら)をさう(はや)くから見透(みす)かして()るのなれば仕方(しかた)がない。191()めて()かう。192(おれ)着物(きもの)にはドツサリと黄金色(わうごんしよく)のババが()いて、193ババの着物(きもの)になつて(しま)つた。194貴様(きさま)のを()がした(ところ)でヤツパリババ着物(きもの)だ。195……オイ(ばあ)さま、196どこぞ其処(そこ)らの谷川(たにがは)(おれ)着物(きもの)洗濯(せんたく)して()れぬか』
197高姫(たかひめ)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)宣伝使(せんでんし)と、198洗濯婆(せんたくばば)間違(まちが)へられては迷惑(めいわく)だ。199こんな(たか)(やま)(みづ)もない(ところ)に、200洗濯婆(せんたくばば)()るものか。201谷川(たにがは)(ほとり)へでも()つて(さが)して()い。202(ばば)(かは)付物(つきもの)だ。203(この)(ばば)世界(せかい)人民(じんみん)身魂(みたま)洗濯(せんたく)する大和(やまと)(だましひ)根本(こつぽん)洗濯婆(せんたくばば)だぞ。204……ヘン宣伝使(せんでんし)(づら)をしやがつて、205(なに)をとぼけて()るのだ。206余程(よつぽど)よい頓馬(とんま)野郎(やらう)だなア』
207(いま)までの腹立(はらだ)(まぎ)れに、208宣伝使(せんでんし)(はう)(ほこ)()けて(しま)つた。
209宣伝使(せんでんし)『なんと(くち)達者(たつしや)(ばば)アも()ればあるものだ。210恰度(ちやうど)(いま)ウラナイ(けう)()てて()高姫(たかひめ)(やう)な、211口喧(くちやかま)しい()アさまぢやないか』
212高姫(たかひめ)『その高姫(たかひめ)(この)肉体(にくたい)ぢや。213わしの()如何(どう)して()つて()るか』
214宣伝使(せんでんし)(わし)(その)(とき)雉子(きぎす)()つた(をとこ)だ。215(まへ)鬼雲彦(おにくもひこ)膝元(ひざもと)()()て、216バラモン(けう)()いて()つた(とき)217(わし)()いて()つた。218あの(とき)(こと)(おも)へば随分(ずゐぶん)(とし)()つたものだなア……(いま)はバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)友彦(ともひこ)()()(たま)はつて、219自転倒(おのころ)(じま)(いち)(ゑん)宣伝(せんでん)(まは)つて()るのだ』
220高姫(たかひめ)『アヽさうかい。221そんなしやつ(つら)宣伝(せんでん)出来(でき)たかな』
222友彦(ともひこ)センデン万化(ばんくわ)()(やつ)し、223獅子(しし)奮迅(ふんじん)(いきほひ)活動(くわつどう)した結果(けつくわ)224とうと(ふんぢん)(なか)(おちい)り、225フン(しつ)(ところ)だつた。226アハヽヽヽ』
227打解(うちと)けて(わら)ふ。
228高姫(たかひめ)『お(まへ)もそこまで糞度胸(くそどきよう)がすわつて、229雪隠(せんち)(なか)まで(もぐ)れば、230最早(もはや)(これ)から(あが)(ざか)だ。231(くそ)()雪隠虫(せんちむし)(つひ)には()ひあがつて、232空中(くうちう)飛行(ひかう)自在(じざい)玉蠅(たまばへ)となり、233どんな(えら)人間(にんげん)(あたま)へでも()まつて、234(くそ)()りかける(やう)になるものだ。235(まへ)(これ)から(ひと)糞発(ふんぱつ)して、236(わし)一緒(いつしよ)活動(くわつどう)したらどうだ。237フンパツせいと()つても雪隠(せんち)()(しり)をまくるのだないぞツ』
238友彦(ともひこ)『お(まへ)随分(ずゐぶん)(くち)達者(たつしや)糞婆(くそばば)ぢやなア。239(しか)(なが)らヤツパリ、240ウラナイ(けう)とか()中間教(ちうかんけう)()(とほ)して()るのかい』
241高姫(たかひめ)『バラモン(けう)も、242鬼雲彦(おにくもひこ)大将(たいしやう)243大江山(おほえやま)(とりで)から三五教(あななひけう)()ひまくられて()(かへ)(やう)腰抜教(こしぬけけう)なり、244ウラナイ(けう)から一寸(ちよつと)都合(つがふ)()りて、245(もと)三五教(あななひけう)逆転(ぎやくてん)して()たのだが、246ヤツパリ此奴(こいつ)糞詰(ふんづま)(けう)だ。247何分(なにぶん)(あな)()(をしへ)だから、248万事(ばんじ)万端(ばんたん)行詰(ゆきつま)りだらけ、249それに(わか)らず()幹部(かんぶ)()めて()るのだから活動(くわつどう)しようと(おも)つても()(あし)()(やう)がない。250(しか)(なが)らバラモン、251ウラル、252ウラナイ、253三五(あなない)254四教(しけう)(つう)じて一番(いちばん)勢力(せいりよく)()るのは依然(やつぱり)三五(あななひ)(みち)だ。255此島(ここ)には天上(てんじやう)天下(てんか)唯我(ゆゐが)独尊(どくそん)(てき)(みつ)つの(たから)があるのだが、256其奴(そいつ)(かく)場所(ばしよ)(さが)()てさへすれば、257三五教(あななひけう)吾々(われわれ)自由(じいう)自在(じざい)になり、258天晴(あつぱ)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)出来(でき)るのだから、259(たま)所在(ありか)(さが)さうと(おも)つて、260一人(ひとり)家来(けらい)()れて此島(ここ)まで()(ところ)だが、261(まへ)(こと)(しな)()つたら家来(けらい)にしてやるから、262今迄(いままで)経路(けいろ)物語(ものがた)つて()れ。263()第一(だいいち)にお(まへ)着物(きもの)因縁(いんねん)から()かう。264雪隠(せついん)から()()(こと)()いたが、265それは何処(どこ)雪隠(せついん)だい』
266 友彦(ともひこ)()りし次第(しだい)(ことごと)物語(ものがた)りける。
267高姫(たかひめ)『さうすると、268(まへ)東助(とうすけ)(たく)()つたのだな。269彼奴(あいつ)(さん)(にん)(をとこ)()れて(かへ)つた(はず)だが、270(まへ)()たのかい』
271友彦(ともひこ)(なん)だか三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(ふく)()けて()つたやうだ。272(しか)(なが)東助(とうすけ)にスツカリ服従(ふくじゆう)して、273(これ)から東助(とうすけ)大将(たいしやう)に、274高姫(たかひめ)所在(ありか)(たづ)打亡(うちほろ)ぼさねば()かぬと()うて、275(りき)んで()ましたよ』
276(うそ)(なら)()て、277高姫(たかひめ)(きも)(ひし)がうとする。278高姫(たかひめ)(おどろ)いて(くち)(とが)らせ、279()をグルグルと廻転(くわいてん)させ(なが)ら、
280高姫(たかひめ)『そりや本当(ほんたう)か。281そして何時(いつ)()()ると()つて()つたかな』
282友彦(ともひこ)(なん)でも東助(とうすけ)(ささや)くのを()けば、283高姫(たかひめ)小豆島(せうどじま)漂着(へうちやく)したに(ちがひ)ないから、284数百(すうひやく)(にん)軍勢(ぐんぜい)引連(ひきつ)れ、285全島(ぜんたう)(かた)(ぱし)から捜索(そうさく)して、286高姫(たかひめ)生擒(とりこ)にして()(かへ)り、287(した)()いてやると()つてましたよ。288用心(ようじん)せぬと何時(なんどき)やつて()るか(わか)りませぬぜ。289アツハヽヽヽ』
290(わら)ふ。291高姫(たかひめ)(その)(かほ)をチラリと()て、
292高姫(たかひめ)『エー(はら)(わる)い。293そんな恐喝(おどし)()ふものか、294小豆(せうど)(しま)()たと()(こと)がどうして東助(とうすけ)(わか)道理(だうり)があらう。295(また)(まへ)声色(こはいろ)()ひ、296顔色(かほいろ)()ひ、297(うそ)()いて()るのだろ』
298友彦(ともひこ)『アヽそこまで看破(かんぱ)されては仕方(しかた)がない。299(さつ)しの(とほ)りだ。300マア(うそ)にして()きませうかい』
301 ()(はな)()(ところ)へ、302(かほ)一面(いちめん)蜘蛛(くも)()だらけになつた貫州(くわんしう)は、303数多(あまた)衣類(いるゐ)小脇(こわき)(かか)へて()()た。304高姫(たかひめ)はこれを()て、
305高姫(たかひめ)『ヤアお(まへ)貫州(くわんしう)306一体(いつたい)(その)(かほ)如何(どう)したのだ』
307貫州(くわんしう)『ハイ此処(ここ)(おそ)ろしい泥棒(どろばう)岩窟(いはや)()えて、308沢山(たくさん)掠奪品(りやくだつひん)(やま)(ごと)()んで()りました。309(わたし)泥棒(どろばう)のウハマヘをはねて、310大泥棒(おほどろばう)となり、311(かほ)(この)(とほ)クモ(すけ)になつて()()ました。312資本(もと)何分(なにぶん)(かか)らぬ代物(しろもの)だから、313(やす)うまけと()ます。314絹物(きぬもの)()れば、315木綿物(もめんもの)()るが、316突込(つつこ)みで(いつ)(しやく)何程(なんぼ)(おろし)ませうかい。317……ヤア(なん)だ、318(あや)しい臭気(にほひ)がすると(おも)へば、319そこに(くそ)まぶれの着物(きもの)()てる(やつ)一人(ひとり)()つて()る。320大方(おほかた)雪隠虫(せんちむし)のお()けだらう。321早速(さつそく)此奴(こいつ)買手(かひて)出来(でき)た。322()(なか)はようしたものだ。323()んな山中(さんちう)(みせ)()しした(ところ)で、324たアれも買手(かひて)()るまいと(おも)うて()つたのに、325()()はう……とか()つて、326不思議(ふしぎ)なものだなア』
327一人(ひとり)洒落(しやれ)てゐる。
328高姫(たかひめ)『お(まへ)そんな(わる)(こと)をして、329(なん)ともないのか。330(かみ)(さま)()まぬぢやないか』
331貫州(くわんしう)(わたし)天眼通(てんがんつう)(くそ)まぶれの人間(にんげん)(いま)()()ると()(こと)を、332チヤンと(さと)りました。333こんな(ところ)洗濯(せんたく)する(わけ)には()かず、334(こま)つてるだらうと(おも)つて、335慈善(じぜん)(てき)(かか)へて()たのだ。336サア(おれ)(もん)ぢやないけれど、337(まへ)勝手(かつて)()たがよからう』
338友彦(ともひこ)持主(もちぬし)(わか)らぬ着物(きもの)勝手(かつて)()(わけ)には()きませぬ。339()ふとか、340()るとかせなくては、341(だま)つて着服(ちやくふく)すれば泥棒(どろばう)になりますから……』
342貫州(くわんしう)殊勝(しゆしよう)らしい(こと)()ふな。343(まへ)宣伝使(せんでんし)のサツクを()めて泥棒(どろばう)をやつて()つた(をとこ)(ちが)ひない。344(まへ)面付(つらつき)は、345どう贔屓目(ひいきめ)()ても、346泥棒(どろばう)としか(おれ)天眼通(てんがんつう)(えい)じない、347大方(おほかた)貴様(きさま)の…ここは親分(おやぶん)根拠地(こんきよち)だらう。348(なん)だか(この)岩窟(いはや)(おく)には大勢(おほぜい)(こゑ)(きこ)えて()つたから、349ソツト()(だけ)着物(きもの)引抱(ひつかか)()()して()たのだが、350貴様(きさま)大方(おほかた)岩窟(ここ)乾児(こぶん)(ちが)ひあるまい』
351友彦(ともひこ)『これは(いささ)迷惑(めいわく)だ。352(じつ)(ところ)(はじ)めて(この)(しま)漂着(へうちやく)したばかりだから、353そんな(いた)うない(はら)(さぐ)るものだない。354(しか)(この)着物(きもの)(しばら)拝借(はいしやく)しよう。355(その)(かは)りに(わし)衣類(いるゐ)(わた)すからお(まへ)()苦労(くらう)だが、356岩窟(いはや)(なか)まで()(はこ)んで()いてくれぬか』
357 貫州(くわんしう)は、
358貫州勝手(かつて)にせい』
359捨台詞(すてぜりふ)(のこ)して、360(また)もや岩窟(がんくつ)(なか)駆込(かけこ)んだ。361高姫(たかひめ)362友彦(ともひこ)(つづ)いて岩窟(がんくつ)(なか)(はい)る。363(あるひ)(ひろ)く、364(あるひ)(せま)く、365起伏(きふく)ある天然(てんねん)隧道(トンネル)を、366()(たて)にし(よこ)にし、367(あるひ)()ひなどして(やうや)(ひろ)窟内(くつない)(すす)()つた。368どこともなく糸竹(しちく)管絃(くわんげん)(おと)(きこ)えて()る。369(さん)(にん)(あや)しげに(みみ)()まして(その)(おと)出所(しゆつしよ)(たたず)(かんが)()んだ。370(あるひ)(まへ)(きこ)え、371(うしろ)(きこ)え、372(みぎ)かと(おも)へば(ひだり)373(ひだり)かと(おも)へば(あたま)(うへ)に、374()(そこ)(おと)がする。375途方(とはう)()れ、376半時(はんとき)ばかり無言(むごん)(まま)377(かほ)見合(みあは)せて(かんが)()んでゐた。378(かたはら)岩壁(がんぺき)(おと)もなくパツと(ひら)いて、379(なか)より(あら)はれ(きた)一人(ひとり)(ばば)ア、380(さん)(にん)()るより、
381婆(蜈蚣姫)『アヽ、382(まへ)鷹鳥山(たかとりやま)()(かま)へて()つた鷹鳥姫(たかとりひめ)(その)()(やつ)だなア。383アヽよい(ところ)へやつて()た。384サア()れから日頃(ひごろ)(うら)みを()らし、385金剛(こうがう)不壊(ふえ)(たま)(むらさき)(たま)所在(ありか)白状(はくじやう)させねば()かぬ』
386高姫(たかひめ)『これはこれは()高名(かうめい)(かね)(うけたま)はりて()りましたが、387(ひと)(たに)(へだ)てた魔谷(まや)(だけ)鷹鳥山(たかとりやま)388()近所(きんじよ)()(なが)ら、389(まこと)()不沙汰(ぶさた)(いた)して()りました。390(わたし)(その)(たま)を……よもやお(まへ)さまが何々(なになに)してゐるのではあるまいかと(おも)うて()たのです。391(ひと)(うたが)うて(まこと)()みませぬが、392貴女(あなた)もあの(たま)(つい)ては非常(ひじやう)執着心(しふちやくしん)がお()りなさるのだから、393(わたし)(うたが)ふのも(あなが)無理(むり)では()りますまい』
394とシツペ(かへ)しに(まく)()てる。395蜈蚣姫(むかでひめ)顔色(かほいろ)()へ、
396蜈蚣姫盗人(ぬすびと)猛々(たけだけ)しいとはお(まへ)(こと)だ。397(なに)なと勝手(かつて)にほざいたがよからう。398此穴(ここ)にはスマートボールや(その)()勇士(ゆうし)沢山(たくさん)(かか)へてあるから、399最早(もはや)(まへ)(たち)(ふくろ)(ねずみ)同様(どうやう)400(うん)()きぢやと(あきら)めて、401神妙(しんめう)白状(はくじやう)したがよからう。402あのマア迷惑相(めいわくさう)面付(つらつき)わいの、403オツホヽヽヽ』
404(かた)(ゆす)り、405(あご)をしやくり、406(した)まで()して(わら)()ける(にく)らしさ。
407高姫(たかひめ)『お(まへ)さまは(おと)名高(なだか)(おに)(じやう)(ざん)408鬼熊別(おにくまわけ)(おく)さま蜈蚣姫(むかでひめ)さまと()ふお(かた)でせうがなア。409(わたし)(もと)鬼雲彦(おにくもひこ)弟子(でし)となり、410バラモン(けう)教理(けうり)信用(しんよう)して()いた(こと)がある高姫(たかひめ)御座(ござ)います。411(いま)一寸(ちよつと)都合(つがふ)があつて、412三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()()んでゐるのだが、413(こころ)(そこ)はお(まへ)さまと同様(どうやう)414ヤツパリ大自在天(だいじざいてん)(さま)信仰(しんかう)し、415生命(いのち)までも(ささ)げて、416千騎(せんき)一騎(いつき)活動(くわつどう)をしてゐるので御座(ござ)います。417どうぞして三五教(あななひけう)(みつ)つの(たから)(うば)()り、418それを手柄(てがら)にメソポタミヤの本山(ほんざん)献上(けんじやう)し、419()神業(しんげふ)(たす)けたいばつかりに、420()うして()けてゐるのですよ。421貴女(あなた)(がた)今迄(いままで)(わたし)(てき)(おも)うて御座(ござ)るが、422(けつ)して(てき)ではありませぬ。423強力(きようりよく)なる味方(みかた)です。424(たま)所在(ありか)(わか)らうものなら、425それこそ(かく)(どころ)か、426貴女(あなた)()()鬼雲彦(おにくもひこ)(さま)(たてまつ)つて(もら)(かんが)へで、427これ(だけ)苦労(くらう)をしてゐるのです。428三五教(あななひけう)教主(けうしゆ)言依別(ことよりわけの)(みこと)が、429玉能姫(たまのひめ)430初稚姫(はつわかひめ)()(をんな)子供(こども)(うつつ)()かし、431肝腎(かんじん)(たま)(かく)さして(しま)ひよつたのだから、432(なん)でも(その)所在(ありか)(さが)さうと(おも)つて、433此島(ここ)までやつて()たのが、434(かみ)(さま)不思議(ふしぎ)(えん)で、435(おも)はぬ(ところ)でお()(かか)りました』
436蜈蚣姫(むかでひめ)『アヽそう()くとメソポタミヤでお()(かか)つた高姫(たかひめ)さまによく()てゐる。437それなら何故(なぜ)(わたし)魔谷(まや)(だけ)()つた(とき)438(まへ)さまは三五教(あななひけう)ぢやと()つて反対(はんたい)をしたのだ。439それが一体(いつたい)合点(がつてん)がいかぬぢやないか』
440高姫(たかひめ)『アハヽヽヽ、441(たれ)()れも(みな)442(この)高姫(たかひめ)(はら)()らない(やつ)(ばか)りだから、443三五教(あななひけう)熱心(ねつしん)宣伝使(せんでんし)とのみ(おも)うて()矢先(やさき)に、444何程(なにほど)(まへ)さまに()ひたうても、445()ふことが出来(でき)ない。446そんな(こと)ども(わか)つた(くらゐ)なら、447今迄(いままで)苦心(くしん)(みづ)(あわ)になるのだから、448(わたし)(こころ)もチツと推量(すゐりやう)して(くだ)さい。449(かみ)(おく)には(おく)があり、450(その)(また)(おく)には(おく)があるのだから、451そんな(たく)みをして()れば(すぐ)発覚(はつかく)しますから、452(こと)()さむとする(もの)仮令(たとへ)453自分(じぶん)(をつと)であらうが、454女房(にようばう)であらうが、455何程(なにほど)信用(しんよう)した弟子(でし)であらうが、456一口(ひとくち)でも(しやべ)(やう)(こと)では、457成就(じやうじゆ)しませぬからな。458オホヽヽヽ』
459蜈蚣姫(むかでひめ)(なん)とお(まへ)さまは感心(かんしん)(ひと)ぢや。460さう(こと)()かれば(てき)でもなし、461姉妹(きやうだい)同様(どうやう)462サアどうぞ(おく)(とほ)つてゆつくりと(くつ)ろいで(くだ)さい。463昔話(むかしばなし)をして(たがひ)(たのし)みませう』
464今迄(いままで)()つて(かは)つた挨拶(あいさつ)()りに、465高姫(たかひめ)(くみ)(やす)しと(こころ)(なか)(わら)(なが)ら、466蜈蚣姫(むかでひめ)(あと)()いて、467(おく)()(すす)()る。
468 貫州(くわんしう)469友彦(ともひこ)入口(いりぐち)()()()(つく)つた火鉢(ひばち)(あた)へられ、470()をあぶり(なが)ら、471様子(やうす)如何(いか)にと()つて()た。472高姫(たかひめ)今後(こんご)如何(いか)なる策略(さくりやく)をめぐらすならむか。
473大正一一・六・一三 旧五・一八 松村真澄録)
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