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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
01 入那の野辺
〔1105〕
02 入那城
〔1106〕
03 偽恋
〔1107〕
04 右守館
〔1108〕
05 急告
〔1109〕
06 誤解
〔1110〕
07 忍術使
〔1111〕
第2篇 神機赫灼
08 無理往生
〔1112〕
09 蓮の川辺
〔1113〕
10 狼の岩窟
〔1114〕
11 麓の邂逅
〔1115〕
12 都入り
〔1116〕
第3篇 北光神助
13 夜の駒
〔1117〕
14 慈訓
〔1118〕
15 難問題
〔1119〕
16 三番叟
〔1120〕
第4篇 神出鬼没
17 宵企み
〔1121〕
18 替へ玉
〔1122〕
19 当て飲み
〔1123〕
20 誘惑
〔1124〕
21 長舌
〔1125〕
余白歌
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> 第1篇 天空地平 > 第1章 入那の野辺
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第一章
入那
(
いるな
)
の
野辺
(
のべ
)
〔一一〇五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第1篇 天空地平
よみ(新仮名遣い):
てんくうちへい
章:
第1章 入那の野辺
よみ(新仮名遣い):
いるなののべ
通し章番号:
1105
口述日:
1922(大正11)年11月10日(旧09月22日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
イルナの森(入那の森)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
入那の国のヨルの都に向かう途中の田舎道で、黄金姫と清照姫の二人は忽然と森蔭に姿を隠してしまった。カルとレーブは宵闇の中、二人を探してさまよっていた。
二人は、黄金姫と清照姫は神格者だからと思い直して跪坐し天地の神明に祈願をこらした。どこからともなく中空から声があり、黄金姫と清照姫は二三日神界の御用に使うから、一足心配せずに先に入那の都を行くようにと伝えた。
両人は安心して四方山話に花を咲かせ、夜を明かした。二人は七八人の男たちに取り囲まれていることに気づき、わざと大声でバラモン教徒であることを示す話をした。
男たちは、入那の国のセーラン王の左守・クーリンスの家来たちであった。二人は、自分たちは黄金姫と清照姫の行方を知っていると語り、入那の都へ一緒に行くことになった。
そこへテク、アルマ、テムの三人が現れて、一行の前に来ると道にへたばってしまった。一行は三人を介抱した。テクは正気付くと法螺を吹いてでたらめな報告をする。一行は総勢で左守の館を目指して進んだ。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-08-22 18:31:50
OBC :
rm4101
愛善世界社版:
11頁
八幡書店版:
第7輯 533頁
修補版:
校定版:
11頁
普及版:
4頁
初版:
ページ備考:
001
木枯
(
こがらし
)
すさぶ
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
002
野辺
(
のべ
)
の
木草
(
きぐき
)
も
黄金姫
(
わうごんひめ
)
の
003
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
神司
(
かむづかさ
)
004
四方
(
よも
)
に
清照姫
(
きよてるひめ
)
命
(
みこと
)
005
レーブやカルを
従
(
したが
)
へて
006
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
神
(
かみ
)
西山
(
せいざん
)
に
007
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
の
小都会
(
せうとくわい
)
008
ヨルの
都
(
みやこ
)
へ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
009
暗
(
やみ
)
の
張
(
とばり
)
はおろされて
010
森
(
もり
)
の
小烏
(
こがらす
)
がやがやと
011
鳴
(
な
)
く
音
(
ね
)
も
寂
(
さび
)
しき
田圃路
(
たんぼみち
)
012
脚下
(
あしもと
)
みたり
四人
(
よつたり
)
が
013
こころいそいそ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
014
忽
(
たちま
)
ち
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
より
015
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でし
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
016
母娘
(
おやこ
)
二人
(
ふたり
)
を
引抱
(
ひつかか
)
へ
017
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
何処
(
どこ
)
となく
018
足音
(
あしおと
)
忍
(
しの
)
ばせ
矢
(
や
)
の
如
(
ごと
)
く
019
忽
(
たちま
)
ち
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しけり
020
レーブとカルの
両人
(
りやうにん
)
は
021
母娘
(
おやこ
)
の
姿
(
すがた
)
の
消
(
き
)
えしより
022
打驚
(
うちおどろ
)
きて
忍
(
しの
)
び
足
(
あし
)
023
声
(
こゑ
)
もひそかに
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
と
024
宵暗
(
よひやみ
)
の
空
(
そら
)
すかしつつ
025
力
(
ちから
)
泣
(
な
)
く
泣
(
な
)
く
探
(
さが
)
しゆく。
026
レーブ『オイ、
027
カル、
028
困
(
こま
)
つたなア、
029
こんな
処
(
ところ
)
でお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
を
見失
(
みうしな
)
ひ、
030
どうしてハルナの
都
(
みやこ
)
の
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
が
立
(
た
)
つものか。
031
われわれ
両人
(
りやうにん
)
は
草
(
くさ
)
を
分
(
わ
)
けてもお
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
032
その
御
(
おん
)
在処
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねて、
033
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
にお
渡
(
わた
)
し
申上
(
まをしあ
)
げねばならぬぢやないか』
034
カル『そりや
貴様
(
きさま
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだ。
035
吾々
(
われわれ
)
も
斯
(
か
)
うして
依然
(
じつ
)
として
手
(
て
)
を
束
(
つか
)
ね
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
すと
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かないなア。
036
神界
(
しんかい
)
旅行
(
りよかう
)
の
際
(
さい
)
にも
生魂姫
(
いくむすびひめの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
から
惟神
(
かむながら
)
中毒
(
ちうどく
)
をしてはならないといふことを
大変
(
たいへん
)
に
戒
(
いまし
)
められたのだからなア』
037
レーブ
『オイ、
038
カルよ、
039
熟々
(
つらつら
)
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ると
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
、
040
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
は
吾々
(
われわれ
)
から
見
(
み
)
れば
幾十段
(
いくじふだん
)
とも
知
(
し
)
れない
神格者
(
しんかくしや
)
でもあり、
041
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
直接
(
ちよくせつ
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
戴
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
られるのだから、
042
余
(
あま
)
り
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
るまいと
思
(
おも
)
ふよ。
043
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
こ
)
の
儘
(
まま
)
放任
(
はうにん
)
して
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かないから、
044
吾々
(
われわれ
)
としてのベストを
竭
(
つく
)
して
見
(
み
)
ようぢやないか。
045
あの
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
は、
046
どうやら
狼
(
おほかみ
)
か
獅子
(
しし
)
の
群
(
むれ
)
のやうだつたが、
047
それならば
吾々
(
われわれ
)
は、
048
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らない。
049
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
には
狼
(
おほかみ
)
が
守護
(
しゆご
)
して
居
(
ゐ
)
るのだから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だよ』(
狼
(
おほかみ
)
、
050
獅子
(
しし
)
は
皆
(
みな
)
比喩
(
ひゆ
)
なり。
051
蔭武者
(
かげむしや
)
又
(
また
)
は
強者
(
きやうしや
)
の
意
(
い
)
)
052
カル
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
053
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して、
054
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
を
祈
(
いの
)
ることに
致
(
いた
)
さうぢやないか』
055
レーブ
『アヽそれが
善
(
よ
)
からう』
056
と
茲
(
ここ
)
に
両人
(
りやうにん
)
は
森蔭
(
もりかげ
)
の
暗
(
やみ
)
に
跪坐
(
きざ
)
して
天地
(
てんち
)
の
神明
(
しんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らし、
057
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるを
待
(
ま
)
つこととせり。
058
何処
(
どこ
)
ともなく
空中
(
くうちう
)
に
声
(
こゑ
)
あり、
059
声
『レーブ、
060
カルの
両人
(
りやうにん
)
、
061
必
(
かなら
)
ず
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
すに
及
(
およ
)
ばぬ。
062
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
063
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
神
(
かみ
)
の
都合
(
つがふ
)
に
依
(
よ
)
つて
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
神界
(
しんかい
)
から
御用
(
ごよう
)
に
使
(
つか
)
うて
居
(
ゐ
)
るから、
064
汝
(
なんぢ
)
は
明朝
(
みやうてう
)
未明
(
みめい
)
にここを
出立
(
しゆつたつ
)
いたして
入那
(
いるな
)
の
都
(
みやこ
)
へ
一足先
(
ひとあしさき
)
へ
参
(
まゐ
)
れ。
065
母娘
(
おやこ
)
両人
(
りやうにん
)
は
後
(
あと
)
より
追付
(
おひつ
)
くべければ、
066
両人
(
りやうにん
)
に
心配
(
しんぱい
)
なく
今夜
(
こんや
)
は
此処
(
ここ
)
で
夜
(
よ
)
を
明
(
あ
)
かしたが
宜
(
よ
)
からうぞよ』
067
と
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
き
声
(
こゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
068
両人
(
りやうにん
)
はこの
声
(
こゑ
)
こそは
全
(
まつた
)
く
天声
(
てんせい
)
なり、
069
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
示
(
しめ
)
しなりと、
070
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
み
森
(
もり
)
の
大木
(
おほき
)
の
根
(
ね
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ちかけて、
071
四方山
(
よもやま
)
の
話
(
はなし
)
に
夜
(
よ
)
を
更
(
ふ
)
かし、
072
取留
(
とりとめ
)
もなき
雑談
(
ざつだん
)
の
花
(
はな
)
を
咲
(
さ
)
かしつつありけるが、
073
レーブはそろそろカルに
向
(
むか
)
ひ
揶揄
(
からか
)
ひ
始
(
はじ
)
めたり。
074
レーブ
『オイ、
075
カル、
076
貴様
(
きさま
)
は
大切
(
たいせつ
)
な
女房
(
にようばう
)
に
肱鉄
(
ひぢてつ
)
の
乱射
(
らんしや
)
を
浴
(
あび
)
せかけられた
挙句
(
あげく
)
の
果
(
はて
)
は、
077
近所
(
きんじよ
)
のセムの
背虫
(
せむし
)
男
(
をとこ
)
に
横奪
(
よこど
)
りされたといふ
評判
(
ひやうばん
)
を
薄々
(
うすうす
)
聞
(
き
)
かぬでもないが、
078
其
(
その
)
後
(
ご
)
どうしたのだい。
079
あの
儘
(
まま
)
に
泣
(
な
)
き
寝入
(
ねい
)
りらしいが、
080
それではカルの
男振
(
をとこぶり
)
も
駄目
(
だめ
)
ぢやないか。
081
何故
(
なにゆゑ
)
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴訟
(
そしよう
)
を
提起
(
ていき
)
せないのか』
082
カル
『ソンナ
事
(
こと
)
が
何
(
なん
)
ぼ
何
(
なん
)
でも
男
(
をとこ
)
として
出来
(
でき
)
るものかい。
083
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴訟
(
そしよう
)
は
女
(
をんな
)
からするものぢやないか』
084
レーブ
『
女
(
をんな
)
に
限
(
かぎ
)
つて
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴
(
うつた
)
へを
起
(
おこ
)
すことを
得
(
え
)
た
時代
(
じだい
)
は、
085
今後
(
こんご
)
三十余万
(
さんじふよまん
)
年後
(
ねんご
)
の
廿
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
の
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
の
時代
(
じだい
)
の
事
(
こと
)
だ。
086
今日
(
こんにち
)
は
最早
(
もはや
)
廿
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
より
三十余万
(
さんじふよまん
)
年
(
ねん
)
の
過去
(
くわこ
)
の
神代
(
かみよ
)
だ。
087
男子
(
だんし
)
だつて
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴訟
(
そしよう
)
が
提起
(
ていき
)
出来
(
でき
)
ない
道理
(
だうり
)
があるかい。
088
貴様
(
きさま
)
は
未来
(
みらい
)
の
法律
(
はふりつ
)
のみに
迷従
(
めいじゆう
)
して、
089
現代
(
げんだい
)
の
法律
(
はふりつ
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
るのか、
090
アーン』
091
カル
『それでも
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
では
女子
(
ぢよし
)
の
貞操
(
ていさう
)
といふことはあるが、
092
男子
(
だんし
)
の
貞操
(
ていさう
)
といふ
事
(
こと
)
は
聞
(
き
)
かないからのう』
093
レーブ
『
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
では
教主
(
けうしゆ
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
さまから
一夫
(
いつぷ
)
多妻
(
たさい
)
主義
(
しゆぎ
)
ぢやから、
094
婦人
(
ふじん
)
は
丸切
(
まるき
)
り
機械
(
きかい
)
扱
(
あつか
)
ひにされて
居
(
ゐ
)
るやうなものだよ。
095
婦人
(
ふじん
)
の
立場
(
たちば
)
として
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴
(
うつた
)
へでもする
権利
(
けんり
)
がなくては
堪
(
たま
)
らないからだよ。
096
然
(
しか
)
し
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
の
道
(
みち
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
三五教
(
あななひけう
)
では
妻
(
つま
)
の
方
(
はう
)
から
貴様
(
きさま
)
の
女房
(
にようばう
)
のやうに
夫
(
をつと
)
を
捨
(
す
)
て
他
(
た
)
の
男
(
をとこ
)
と
情
(
じやう
)
を
通
(
つう
)
じたり、
097
夫
(
をつと
)
を
盲目
(
まうもく
)
にしよつた
時
(
とき
)
は、
098
男
(
をとこ
)
だつて
矢張
(
やつぱり
)
貞操
(
ていさう
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
された
事
(
こと
)
になるのだ。
099
男
(
をとこ
)
の
方
(
はう
)
からその
不貞腐
(
ふてくさ
)
れの
女房
(
にようばう
)
に
対
(
たい
)
して、
100
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴訟
(
そしよう
)
を
提起
(
ていき
)
するのは
当然
(
たうぜん
)
だ。
101
女
(
をんな
)
ばかりに
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴訟権
(
そしようけん
)
があるのは
未来
(
みらい
)
の
廿
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
といふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
にて
行
(
おこな
)
はれる
制度
(
せいど
)
だ。
102
併
(
しか
)
し
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
は
文明
(
ぶんめい
)
的
(
てき
)
進歩
(
しんぽ
)
的
(
てき
)
宗教
(
しうけう
)
だと
見
(
み
)
えて、
103
三十五万
(
さんじふごまん
)
年
(
ねん
)
も
凡
(
すべ
)
ての
規則
(
きそく
)
や
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
が
進歩
(
しんぽ
)
して
居
(
ゐ
)
るわい。
104
アハヽヽヽヽ』
105
カル
『さうすると、
106
鬼雲姫
(
おにくもひめ
)
様
(
さま
)
は
永
(
なが
)
らく
夫
(
をつと
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
と
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
して、
107
彼処
(
あこ
)
までバラモンの
基礎
(
きそ
)
を
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げ、
108
ヤレもう
楽
(
らく
)
ぢやといふ
間際
(
まぎは
)
になつて、
109
大黒主
(
おほくろぬし
)
さまから
追出
(
おひだ
)
され、
110
其
(
その
)
後
(
あと
)
へ
立派
(
りつぱ
)
な
若
(
わか
)
い
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
さまを
女房
(
にようばう
)
に
入
(
い
)
れられて、
111
自分
(
じぶん
)
は
年
(
とし
)
を
老
(
と
)
つてから、
112
アンナ
残酷
(
ざんこく
)
な
目
(
め
)
に
合
(
あは
)
されて
居
(
ゐ
)
ながら、
113
何故
(
なぜ
)
貞操
(
ていさう
)
蹂躙
(
じうりん
)
の
訴訟
(
そしよう
)
を
提起
(
ていき
)
なさらないのだらうかなア』
114
レーブ
『そこが
強食
(
きやうしよく
)
弱肉
(
じやくにく
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だよ。
115
大黒主
(
おほくろぬし
)
さまより
上
(
うへ
)
のお
役
(
やく
)
もなし、
116
之
(
これ
)
を
制御
(
せいぎよ
)
する
法律
(
はふりつ
)
もないのだから、
117
是
(
これ
)
計
(
ばか
)
りは
致
(
いた
)
し
方
(
かた
)
がない。
118
司法
(
しはふ
)
、
119
行政
(
げうせい
)
、
120
立法
(
りつぱふ
)
の
三大
(
さんだい
)
権力
(
けんりよく
)
を
握
(
にぎ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのが
大黒主
(
おほくろぬし
)
だから、
121
これを
制御
(
せいぎよ
)
し
懲戒
(
ちようかい
)
する
権利
(
けんり
)
ある
者
(
もの
)
は
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
より
外
(
ほか
)
にはないのだ。
122
思
(
おも
)
へば
下
(
した
)
の
者
(
もの
)
はつまらぬものだよ。
123
鬼雲姫
(
おにくもひめ
)
様
(
さま
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
お
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
には
沐雨
(
もくう
)
櫛風
(
しつぷう
)
、
124
東奔
(
とうほん
)
西走
(
せいそう
)
して、
125
漸
(
やうや
)
くあれだけの
土台
(
どだい
)
を
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げ、
126
今
(
いま
)
一息
(
ひといき
)
といふ
所
(
ところ
)
で
放逐
(
はうちく
)
とは
余
(
あま
)
り
残酷
(
ざんこく
)
ぢやないか。
127
それだから
婆羅門
(
ばらもん
)
教
(
けう
)
は
無道
(
ぶだう
)
の
教団
(
けうだん
)
だといふのだ。
128
是
(
これ
)
が○○
教
(
けう
)
であつたら
大変
(
たいへん
)
ぢやないか。
129
部下
(
ぶか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
や
信徒
(
しんと
)
が
承知
(
しようち
)
せないからなア』
130
カル
『それでも
三五教
(
あななひけう
)
の
神柱
(
かむばしら
)
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
は
一夫
(
いつぷ
)
多妻
(
たさい
)
ぢやないか。
131
八
(
はち
)
人
(
にん
)
同
(
おな
)
じやうな
年配
(
ねんぱい
)
の
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
があつたぢやないか』
132
レーブ
『
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
は
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
ぢや。
133
元
(
もと
)
より
女房
(
にようばう
)
はない。
134
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
の
出来
(
でき
)
たのは
肉体
(
にくたい
)
の
御子
(
みこ
)
ではない。
135
霊魂
(
みたま
)
の
美
(
うる
)
はしき
乙女
(
をとめ
)
を
八
(
はち
)
人
(
にん
)
も
方々
(
はうばう
)
から
拾
(
ひろ
)
ひ
集
(
あつ
)
めて、
136
その
乙女
(
をとめ
)
の
霊魂
(
みたま
)
に
対
(
たい
)
し
自
(
みづか
)
ら
厳
(
いづ
)
の
御息
(
みいき
)
を
吹
(
ふ
)
きかけて
我
(
わが
)
子
(
こ
)
と
為
(
な
)
したまうたのだ。
137
吾々
(
われわれ
)
のやうに
暗
(
くら
)
がりで
夫婦
(
ふうふ
)
が
拵
(
こしら
)
へたのとは
違
(
ちが
)
ふのだ』
138
カル
『それならあの
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
を
生
(
う
)
んだ
肉体
(
にくたい
)
の
親
(
おや
)
はあるだらうな』
139
レーブ
『ソリアあるとも、
140
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
とも
皆
(
みな
)
捨児
(
すてご
)
を
拾
(
ひろ
)
つて
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
に
遊
(
あそ
)
ばしたのだから、
141
両親
(
りやうしん
)
は
尊様
(
みことさま
)
には
御
(
お
)
分
(
わか
)
りになつて
居
(
ゐ
)
ても、
142
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
の
方
(
はう
)
では
矢張
(
やつぱり
)
真
(
しん
)
の
父上
(
ちちうへ
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
られるやうだ。
143
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
御
(
ご
)
精霊
(
せいれい
)
を
分与
(
ぶんよ
)
されて
居
(
ゐ
)
るのだから、
144
仮令
(
たとへ
)
肉体
(
にくたい
)
の
児
(
こ
)
でなくとも
肉体
(
にくたい
)
以上
(
いじやう
)
の
近
(
ちか
)
い
親
(
した
)
しい
御児
(
みこ
)
になるのだ。
145
おれ
達
(
たち
)
も
矢張
(
やつぱり
)
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
孫
(
まご
)
位
(
くらゐ
)
なものだ。
146
今迄
(
いままで
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
孫
(
まご
)
だつたが
俺
(
おれ
)
も
今度
(
こんど
)
いよいよ
尊様
(
みことさま
)
の
孫
(
まご
)
になつたのだ。
147
貴様
(
きさま
)
も
昨日
(
きのふ
)
あたりから
尊様
(
みことさま
)
の
曾孫
(
ひまご
)
位
(
ぐらゐ
)
になつて
居
(
ゐ
)
るかも
知
(
し
)
れないよ』
148
カル
『さうか、
149
有難
(
ありがた
)
いなア、
150
アヽ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
151
レーブ、
152
カルの
両人
(
りやうにん
)
は
森林
(
しんりん
)
に
囀
(
さへづ
)
り
始
(
はじ
)
めた
諸鳥
(
ももとり
)
の
声
(
こゑ
)
に
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし、
153
あたりの
明
(
あか
)
くなつたのに
打驚
(
うちおどろ
)
いて、
154
レーブ
『オヽ、
155
カル、
156
もう
夜明
(
よあ
)
けだ。
157
よく
草臥
(
くたび
)
れてグツと
一寝入
(
ひとねい
)
りやつてしまつた。
158
サア
是
(
これ
)
から
両人
(
りやうにん
)
が
力
(
ちから
)
を
合
(
あ
)
はして
奥様
(
おくさま
)
等
(
たち
)
の
所在
(
ありか
)
の
捜索
(
そうさく
)
しようぢやないか』
159
カル
『さう
慌
(
あわて
)
るには
及
(
およ
)
ばぬぢやないか。
160
たつた
今
(
いま
)
主人
(
しゆじん
)
になつた
所
(
ところ
)
だ。
161
言
(
い
)
はば
二日月
(
ふつかづき
)
さまのやうなものだよ………。
162
現
(
あら
)
はれて
間
(
ま
)
もなく
隠
(
かく
)
るる
二日月
(
ふつかづき
)
………そんな
水臭
(
みづくさ
)
い
主人
(
しゆじん
)
を
捜
(
さが
)
した
所
(
ところ
)
で
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
163
来
(
きた
)
るものは
拒
(
こば
)
まず、
164
去
(
さ
)
る
者
(
もの
)
は
追
(
お
)
はず
式
(
しき
)
で
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
渡
(
わた
)
つて
行
(
ゆ
)
かねば、
165
何程
(
なにほど
)
石
(
いし
)
に
根
(
ね
)
つぎをするやうな
案
(
あん
)
じ
方
(
かた
)
をしたつて、
166
会
(
あ
)
ふ
時
(
とき
)
が
来
(
こ
)
な
会
(
あ
)
はれるものぢやないワ。
167
マアマア
気
(
き
)
を
落付
(
おちつ
)
けて
惟神
(
かむながら
)
に………オツト ドツコイ、
168
此奴
(
こいつ
)
は
言
(
い
)
はれぬワイ………お
目
(
め
)
にかかる
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
つことにしようかい』
169
レーブ
『
貴様
(
きさま
)
最早
(
もはや
)
変心
(
へんしん
)
しかけよつたな。
170
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ。
171
さういふ
冷
(
ひや
)
やかな
根性
(
こんじやう
)
で
居
(
を
)
ると、
172
又
(
また
)
今度
(
こんど
)
は
八万
(
はちまん
)
地獄
(
ぢごく
)
へ
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
落
(
お
)
ちるぞ』
173
カル
『
冷
(
ひや
)
やかなといふが、
174
晩秋
(
ばんしう
)
初冬
(
しよとう
)
の
境目
(
さかひめ
)
だ。
175
冷
(
ひや
)
やかなのは
当然
(
あたりまへ
)
だ。
176
人
(
ひと
)
は
天地
(
てんち
)
に
習
(
なら
)
ふのが
惟神
(
かむながら
)
ぢやないか。
177
男心
(
をとこごころ
)
と
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
、
178
曇
(
くも
)
るかと
思
(
おも
)
へば
直
(
すぐ
)
に
照
(
て
)
る、
179
照
(
て
)
るかと
思
(
おも
)
へば
曇
(
くも
)
る、
180
天地
(
てんち
)
を
以
(
もつ
)
て
教
(
をしへ
)
となし、
181
日月
(
じつげつ
)
を
以
(
もつ
)
て
経
(
きやう
)
とするのだから、
182
貴様
(
きさま
)
のやうな
偽善者
(
きぜんしや
)
とは
此
(
この
)
カルさまはチツと
違
(
ちが
)
ふのだ』
183
レーブ
『
貴様
(
きさま
)
は
森
(
もり
)
で
転寝
(
うたたね
)
をして
居
(
ゐ
)
る
間
(
うち
)
に、
184
又
(
また
)
もや
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
眷族
(
けんぞく
)
共
(
ども
)
に
憑依
(
ひようい
)
されたのだな。
185
何程
(
なにほど
)
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
だと
云
(
い
)
つても、
186
余
(
あま
)
りキツイ
変
(
かは
)
り
様
(
やう
)
ぢやないか』
187
カル
『
代
(
よ
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
は
かはる
と
書
(
か
)
くから、
188
刻々
(
こくこく
)
に
変
(
かは
)
るのが
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
189
道端
(
みちばた
)
の
岩
(
いは
)
のやうに
常磐
(
ときは
)
に
堅磐
(
かきは
)
に
動
(
うご
)
かなくては、
190
世界
(
せかい
)
の
進歩
(
しんぽ
)
も
天地
(
てんち
)
の
経綸
(
けいりん
)
も
出来
(
でき
)
るものぢやない。
191
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
三日
(
みつか
)
見
(
み
)
ぬ
間
(
ま
)
に
桜
(
さくら
)
哉
(
かな
)
………と
云
(
い
)
ふだらう。
192
それが
天地
(
てんち
)
の
真理
(
しんり
)
だ』
193
レーブ
『さうするとカル、
194
貴様
(
きさま
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
孫
(
まご
)
に
逆転
(
ぎやくてん
)
したのだな』
195
カル
『
別
(
べつ
)
に
逆転
(
ぎやくてん
)
したのでも
何
(
なん
)
でもないよ。
196
鞘
(
さや
)
を
抜
(
ぬ
)
き
出
(
で
)
た
刀
(
かたな
)
がキチンと
元
(
もと
)
の
鞘
(
さや
)
へ
納
(
をさ
)
まつただけのものだ。
197
矢張
(
やつぱり
)
俺
(
おれ
)
はかうなつて
来
(
く
)
ると
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
方
(
はう
)
が
偉
(
えら
)
いやうな
気
(
き
)
がするワイ』
198
レーブ
『ハハア、
199
さうすると
貴様
(
きさま
)
は
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
、
200
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
が
側
(
そば
)
にゐられる
間
(
あひだ
)
だけは、
201
野良犬
(
のらいぬ
)
のやうに
尾
(
を
)
を
振
(
ふ
)
つて
居
(
ゐ
)
よつて、
202
表面
(
へうめん
)
帰順
(
きじゆん
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
203
お
二人
(
ふたり
)
が
何者
(
なにもの
)
かに
攫
(
さら
)
はれて
見
(
み
)
えなくなつたので、
204
又
(
また
)
もやそんなズルイ
考
(
かんが
)
へを
起
(
おこ
)
しよつたのだなア』
205
カル
『
面従
(
めんじう
)
腹背
(
ふくはい
)
、
206
長
(
なが
)
いものにまかれるのが
当世
(
たうせい
)
だよ。
207
ウツフヽヽヽ』
208
レーブ
『ハハー、
209
此奴
(
こいつ
)
ア、
210
ヤツパリ
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
眷族
(
けんぞく
)
が
憑依
(
ひようい
)
しよつたと
見
(
み
)
えるワイ。
211
どうやら
俺
(
おれ
)
も
大黒主
(
おほくろぬし
)
気分
(
きぶん
)
になつて
来
(
き
)
よつたぞ。
212
吾
(
われ
)
ながら
吾
(
われ
)
の
心
(
こころ
)
がテンと
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か
分
(
わか
)
らなくなつて
来
(
き
)
たワイ。
213
それなら
俺
(
おれ
)
もこれから
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
し、
214
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
の
所在
(
ありか
)
を
注進
(
ちゆうしん
)
して、
215
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
のセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御前
(
みまへ
)
に
手柄
(
てがら
)
を
立
(
た
)
てようかなア』
216
と
両人
(
りやうにん
)
は
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
見合
(
みあ
)
はしながらワザと
大声
(
おほごゑ
)
に
呶鳴
(
どな
)
つてゐる。
217
道端
(
みちばた
)
の
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
からムクムクと
近
(
ちか
)
よつて
来
(
き
)
た
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
218
其
(
その
)
中
(
なか
)
の
頭
(
かしら
)
と
覚
(
おぼ
)
しき
目
(
め
)
のクルツと
光
(
ひか
)
つた、
219
どこともなしに
威厳
(
ゐげん
)
のある
男
(
をとこ
)
は、
220
セーラン
王
(
わう
)
の
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
と
仕
(
つか
)
へてゐるクーリンスの
家来
(
けらい
)
で、
221
テームスといふ
男
(
をとこ
)
である。
222
テームス
『
今
(
いま
)
ここに
於
(
おい
)
て
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けば、
223
其
(
その
)
方
(
はう
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
と
見
(
み
)
えるが、
224
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
225
清照姫
(
きよてるひめ
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
つてゐるさうだが、
226
吾々
(
われわれ
)
に
言
(
い
)
つてくれまいかなア。
227
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
クーリンス
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
つて、
228
吾々
(
われわれ
)
は
数多
(
あまた
)
の
家来
(
けらい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
229
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
がここを
通過
(
つうくわ
)
するとの
或者
(
あるもの
)
の
注進
(
ちゆうしん
)
に
依
(
よ
)
つて、
230
土中
(
どちう
)
の
関所
(
せきしよ
)
に
待
(
ま
)
つてゐたのだ』
231
レーブ『ハイ、
232
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
其
(
その
)
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
に
甘
(
うま
)
く
取入
(
とりい
)
り、
233
入那
(
いるな
)
の
森
(
もり
)
まで
何
(
なん
)
とか
彼
(
か
)
とか
云
(
い
)
つて
連
(
つ
)
れて
参
(
まゐ
)
り、
234
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
手渡
(
てわた
)
しして、
235
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
手柄
(
てがら
)
にしたいと
存
(
ぞん
)
じ、
236
イヤ
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
り、
237
共々
(
ともども
)
に
手柄
(
てがら
)
をさして
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
ひまして
参
(
まゐ
)
りました
処
(
ところ
)
、
238
狼
(
おほかみ
)
の
群
(
むれ
)
が
沢山
(
たくさん
)
やつて
来
(
き
)
て、
239
二人
(
ふたり
)
を
喰
(
くは
)
へてどつかへ
参
(
まゐ
)
りました。
240
併
(
しか
)
しながらこれには
深
(
ふか
)
い
秘密
(
ひみつ
)
があります。
241
只今
(
ただいま
)
此処
(
ここ
)
で
申上
(
まをしあ
)
げる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬ。
242
クーリンス
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
於
(
おい
)
てハツキリと
申上
(
まをしあ
)
げますから、
243
どうぞ
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さい』
244
テームス
『
秘密
(
ひみつ
)
とあらば
強
(
た
)
つて
聞
(
き
)
かうとは
申
(
まを
)
さぬ。
245
それなら
入那
(
いるな
)
の
都
(
みやこ
)
まで
案内
(
あんない
)
するから
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい』
246
カル
『オイ、
247
レーブ、
248
甘
(
うま
)
くやつたなア』
249
と
言
(
い
)
ひかけて、
250
俄
(
にはか
)
に
自分
(
じぶん
)
の
口
(
くち
)
を
押
(
おさ
)
へ、
251
カル
『イヤ、
252
レーブ、
253
甘
(
うま
)
いことになつて
来
(
き
)
たなア。
254
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
の
手柄
(
てがら
)
の
現
(
あら
)
はれ
時
(
どき
)
、
255
アヽ
勇
(
いさ
)
ましし
勇
(
いさ
)
ましし、
256
宝
(
たから
)
の
山
(
やま
)
は
眼前
(
がんぜん
)
に
横
(
よこた
)
はつて
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
なものだ。
257
モシ、
258
テームスさま、
259
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
を
大切
(
たいせつ
)
にせなくちや、
260
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
の
所在
(
ありか
)
は
口
(
くち
)
を
噤
(
つぐ
)
んで
申
(
まを
)
しませぬぞや。
261
吾々
(
われわれ
)
の
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
くか
開
(
あ
)
かぬかに
依
(
よ
)
つて、
262
お
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
や
左守
(
さもり
)
の
司様
(
かみさま
)
の
成功
(
せいこう
)
不成功
(
ふせいこう
)
が
分
(
わか
)
るるのだから、
263
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
損
(
そこ
)
ねない
様
(
やう
)
に
特別
(
とくべつ
)
待遇
(
たいぐう
)
を
願
(
ねが
)
ひますよ』
264
テームス
『よくマア
恩
(
おん
)
にきせる
男
(
をとこ
)
だなア。
265
エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
266
余
(
あま
)
り
威張
(
ゐば
)
られてもチツとは
迷惑
(
めいわく
)
だけれど、
267
クーリンス
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
には
代
(
か
)
へられない』
268
レーブ『
今
(
いま
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
269
何
(
なん
)
とでも
云
(
い
)
つて
此奴
(
こいつ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
をたらかし、
270
館
(
やかた
)
へつれて
帰
(
かへ
)
るが
最後
(
さいご
)
、
271
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
から
槍襖
(
やりぶすま
)
の
垣
(
かき
)
を
造
(
つく
)
り、
272
両人
(
りやうにん
)
を
否応
(
いやおう
)
なしに
白状
(
はくじやう
)
さしてやろといふお
前
(
まへ
)
さまの
下心
(
したごころ
)
だらうがな。
273
アハヽヽヽ』
274
テームス
『
何
(
なん
)
と
悪気
(
わるぎ
)
のまはる
男
(
をとこ
)
だなア。
275
マアどうでも
良
(
い
)
い。
276
来
(
く
)
る
所
(
ところ
)
まで
来
(
き
)
てみなくては
分
(
わか
)
らぬぢやないか』
277
カル『
何
(
なん
)
せよ、
278
騙
(
だま
)
し
合
(
あ
)
ひの
狸
(
たぬき
)
ばかりの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
279
このレーブだつてカルだつて、
280
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
してるか
分
(
わか
)
りませぬぞや。
281
ウツフヽヽヽ
本当
(
ほんたう
)
のこと
言
(
い
)
へば、
282
レーブ、
283
カルの
両人
(
りやうにん
)
は、
284
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
の
為
(
ため
)
にドテライ
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされるのが
怖
(
こは
)
さに、
285
三五教
(
あななひけう
)
で
居
(
ゐ
)
ながら
俄
(
にはか
)
にワザと
聞
(
きこ
)
えよがしに、
286
お
前
(
まへ
)
さまが
岩窟
(
がんくつ
)
にゐるのを
前知
(
ぜんち
)
して
喋
(
しやべ
)
つたのだから
当
(
あて
)
にはなりませぬぞや。
287
イツヒヽヽヽ』
288
テームスは
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし、
289
テームス
『コリヤ コリヤ
両人
(
りやうにん
)
、
290
今
(
いま
)
からそんなことを
申
(
まを
)
しても
駄目
(
だめ
)
だぞ。
291
偽
(
いつは
)
りを
申
(
まを
)
すな、
292
三五教
(
あななひけう
)
だと
云
(
い
)
へば
此
(
この
)
テームスが
驚
(
おどろ
)
くかと
思
(
おも
)
うて、
293
左様
(
さやう
)
なことを
申
(
まを
)
すのだろ。
294
そんなことに
一杯
(
いつぱい
)
喰
(
く
)
はされるやうな
此
(
この
)
方
(
はう
)
ぢやないワイ。
295
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
吾々
(
われわれ
)
に
喋
(
しやべ
)
る
奴
(
やつ
)
があらう
道理
(
だうり
)
がない。
296
貴様
(
きさま
)
はヤツパリ、
297
バラモン
教
(
けう
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
だ。
298
左様
(
さやう
)
なことを
申
(
まを
)
して
此
(
この
)
テームスやクーリンスに
揚壺
(
あげつぼ
)
を
喰
(
く
)
はせ、
299
直接
(
ちよくせつ
)
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
て、
300
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
の
手柄
(
てがら
)
にしようと
思
(
おも
)
ふのだろ。
301
其
(
その
)
手
(
て
)
は
喰
(
く
)
はぬぞ』
302
と
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
き
出
(
だ
)
し
呶鳴
(
どな
)
りつける。
303
レーブ
『ハヽヽヽヽ、
304
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか、
305
レーブもサツパリ
混線
(
こんせん
)
してしまつた。
306
それならマア
黄金姫
(
わうごんひめ
)
母娘
(
おやこ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
を
知
(
し
)
つてゐることにしておかうかい』
307
テームス
『ナマクラなことを
申
(
まを
)
すな、
308
正直
(
しやうぢき
)
に
申上
(
まをしあ
)
げるのだぞ。
309
クーリンス
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
で
今
(
いま
)
の
様
(
やう
)
な
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬことを
申
(
まを
)
すと、
310
お
赦
(
ゆる
)
しはないぞ』
311
レーブ
『お
赦
(
ゆる
)
しがなければなくていいワ。
312
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
秘密
(
ひみつ
)
や
黄金姫
(
わうごんひめ
)
の
所在
(
ありか
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げぬまでのことだ。
313
アハヽヽヽ、
314
それよりも
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
に
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
へ
注進
(
ちゆうしん
)
致
(
いた
)
したら、
315
すぐに
一国
(
いつこく
)
の
王
(
わう
)
位
(
くらゐ
)
にはして
貰
(
もら
)
へるのだからなア、
316
イツヒヽヽヽ、
317
ボロイボロイ、
318
甘
(
うま
)
い
物
(
もの
)
は
小人数
(
こにんず
)
で
食
(
く
)
へだから、
319
こんな
所
(
ところ
)
で
博愛
(
はくあい
)
慈善
(
じぜん
)
主義
(
しゆぎ
)
を
振
(
ふ
)
りまいて
居
(
を
)
つても、
320
あまり
引
(
ひ
)
き
合
(
あは
)
ないワ、
321
のう、
322
カル
公
(
こう
)
』
323
カル
『オイ、
324
レーブ、
325
いい
加減
(
かげん
)
に
意茶
(
いちや
)
つかしておかぬか、
326
テームス
様
(
さま
)
は
吾々
(
われわれ
)
とは
違
(
ちが
)
つて
左守
(
さもり
)
の
司様
(
かみさま
)
の
秘書役
(
ひしよやく
)
だから、
327
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
をとつておきさへすれば、
328
どんな
出世
(
しゆつせ
)
をさして
下
(
くだ
)
さるかも
知
(
し
)
れないぞ。
329
ねえ
テームスさま、
330
さうでげせう』
331
テームス
『カルの
申
(
まを
)
す
通
(
とほ
)
り、
332
魚心
(
うをごころ
)
あれば
水心
(
みづごころ
)
あり、
333
水心
(
みづごころ
)
あれば
魚心
(
うをごころ
)
ありだ。
334
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
くは
取計
(
とりはか
)
らはないから、
335
安心
(
あんしん
)
して
来
(
き
)
てくれ』
336
レーブ
『それなら
一
(
ひと
)
つ、
337
どつと
安心
(
あんしん
)
して、
338
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れてやらうかな。
339
イヤ、
340
テームスさま、
341
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
頼
(
たの
)
み
致
(
いた
)
しやす』
342
テームス
『それなら、
343
左守
(
さもり
)
の
司様
(
かみさま
)
も
大変
(
たいへん
)
にお
急
(
せ
)
きだから、
344
サア
急
(
いそ
)
いで
都
(
みやこ
)
へ
帰
(
かへ
)
らう』
345
かく
話
(
はなし
)
してゐる
所
(
ところ
)
へ、
346
テク、
347
アルマ、
348
テムの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をしめ、
349
足腰
(
あしこし
)
の
痛
(
いた
)
みも
直
(
なほ
)
つたと
見
(
み
)
え、
350
大変
(
たいへん
)
な
勢
(
いきほひ
)
で、
351
三人
『エーサツサ エーサツサ エーサツサ エーサツサ』
352
と
掛声
(
かけごゑ
)
しながら
通
(
とほ
)
り
過
(
す
)
ぎようとする。
353
テームスは
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
て、
354
テームス
『オイオイ、
355
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
共
(
ども
)
、
356
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
てえ』
357
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
立
(
た
)
ち
止
(
ど
)
まり、
358
テク『あゝテームス
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか。
359
余
(
あま
)
り
急
(
いそ
)
いだので、
360
ここのお
関所
(
せきしよ
)
も
気
(
き
)
がつかず
通
(
とほ
)
り
越
(
こ
)
さうと
致
(
いた
)
しました。
361
あゝ
余
(
あま
)
り
走
(
はし
)
つたので
息苦
(
いきぐる
)
しい、
362
目
(
め
)
がまはるのか
天地
(
てんち
)
が
廻転
(
くわいてん
)
するのか
知
(
し
)
らないが、
363
貴方
(
あなた
)
のお
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くにつけ、
364
ガタリと
気
(
き
)
が
弛
(
ゆる
)
んで
参
(
まゐ
)
りました。
365
どうぞ
一
(
ひと
)
つ
背中
(
せなか
)
を
打
(
う
)
つて
下
(
くだ
)
さいな。
366
ハア ハア ハア』
367
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はグタリとなつて
深傷
(
ふかで
)
を
負
(
お
)
うた
軍人
(
ぐんじん
)
のやうに
道
(
みち
)
の
上
(
うへ
)
にベタリと
平太
(
へた
)
つてしまつた。
368
テームス『
大声
(
おほごゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
りつけ、
369
叱
(
しか
)
りつけてやらねば
気
(
き
)
が
弛
(
ゆる
)
んでは
駄目
(
だめ
)
だ。
370
ヤア
家来
(
けらい
)
の
者
(
もの
)
共
(
ども
)
、
371
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
気
(
き
)
をつけてやれ』
372
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
捕手
(
とりて
)
はバラバラと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
側
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
り、
373
背中
(
せなか
)
を
打
(
う
)
つやら、
374
頭
(
あたま
)
から
水
(
みづ
)
をぶつかけるやら、
375
大変
(
たいへん
)
な
大騒動
(
おほさうどう
)
をやつてゐる。
376
漸
(
やうや
)
くにして
次々
(
つぎつぎ
)
に
正気
(
しやうき
)
づき、
377
テクは
息
(
いき
)
も
苦
(
くる
)
しげに
物語
(
ものがた
)
る。
378
テク
『テームス
様
(
さま
)
の
仰
(
あふ
)
せにより、
379
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
猛獣
(
まうじう
)
荒
(
すさ
)
ぶ
荒野原
(
あらのはら
)
を
入那
(
いるな
)
の
森
(
もり
)
まで
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
折
(
をり
)
しも、
380
祠
(
ほこら
)
の
中
(
なか
)
に
怪
(
あや
)
しの
物音
(
ものおと
)
、
381
ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
と
立寄
(
たちよ
)
り、
382
様子
(
やうす
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
見
(
み
)
れば、
383
当
(
たう
)
の
目的物
(
もくてきぶつ
)
たる
恐
(
おそ
)
ろしき
武勇
(
ぶゆう
)
の
聞
(
きこ
)
えある
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
384
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
385
それに
従
(
したが
)
ふレーブ、
386
カルの
両人
(
りやうにん
)
、
387
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
言霊戦
(
ことたません
)
を
開始
(
かいし
)
し、
388
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
息
(
いき
)
ふさがり、
389
足
(
あし
)
はなえ、
390
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かして
大地
(
だいち
)
にドツと
倒
(
たふ
)
れ
伏
(
ふ
)
す、
391
進退
(
しんたい
)
維
(
こ
)
れ
谷
(
きは
)
まり
居
(
を
)
る
折
(
をり
)
しも、
392
雲
(
くも
)
押分
(
おしわ
)
けて
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
の
影
(
かげ
)
、
393
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国彦
(
おほくにひこの
)
命
(
みこと
)
、
394
天馬
(
てんば
)
に
跨
(
また
)
がり、
395
悠々
(
いういう
)
として
入那
(
いるな
)
の
森
(
もり
)
近
(
ちか
)
く
下
(
くだ
)
り
給
(
たま
)
へば、
396
流石
(
さすが
)
の
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
397
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
其
(
その
)
神徳
(
しんとく
)
に
辟易
(
へきえき
)
し、
398
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
南方
(
なんぱう
)
指
(
さ
)
して
逃
(
に
)
げゆく
可笑
(
をか
)
しさ。
399
レーブ、
400
カルの
両人
(
りやうにん
)
は、
401
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
神徳
(
しんとく
)
に
怖
(
お
)
ぢ
恐
(
おそ
)
れ、
402
ウンと
一声
(
ひとこゑ
)
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れ、
403
敢
(
あへ
)
なき
最後
(
さいご
)
を
遂
(
と
)
げにけり。
404
かかる
小童
(
こわつぱ
)
武者
(
むしや
)
には
目
(
め
)
もかけず、
405
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
406
清照姫
(
きよてるひめ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひかけ、
407
ここまで
来
(
きた
)
り
候
(
さふらふ
)
。
408
母娘
(
おやこ
)
二人
(
ふたり
)
は
既
(
すで
)
に
既
(
すで
)
に
此
(
この
)
一筋道
(
ひとすぢみち
)
を
通
(
とほ
)
りしならむ、
409
テームス
様
(
さま
)
、
410
キツと
掴
(
つか
)
まへ
遊
(
あそ
)
ばしたで
厶
(
ござ
)
いませうなア。
411
それさへ
承
(
うけたま
)
はらば
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
仮令
(
たとへ
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
で
相果
(
あひは
)
つるとも、
412
決
(
けつ
)
して
恨
(
うらみ
)
とは
存
(
ぞん
)
じませぬ』
413
と
息
(
いき
)
もせきせき
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つる。
414
レーブ『オイ、
415
テク、
416
随分
(
ずゐぶん
)
駄法螺
(
だぼら
)
を
吹
(
ふ
)
きよるなア。
417
レーブさまもカルさまも
貴様
(
きさま
)
より
一足
(
ひとあし
)
お
先
(
さき
)
に
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのだ。
418
テームス
様
(
さま
)
と
万事
(
ばんじ
)
交渉
(
かうせふ
)
を
遂
(
と
)
げ、
419
目出度
(
めでた
)
く
締盟
(
ていめい
)
の
済
(
す
)
んだ
所
(
ところ
)
だ、
420
確
(
しつ
)
かり
致
(
いた
)
さぬか。
421
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
驚
(
おどろ
)
きの
余
(
あま
)
り
狂気
(
きやうき
)
致
(
いた
)
したなア』
422
テク
『ヤア、
423
貴様
(
きさま
)
はレーブ、
424
カルの
両人
(
りやうにん
)
か。
425
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
生返
(
いきかへ
)
りよつたのだ』
426
カル『オイ、
427
テク、
428
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
つてるのだ。
429
ソリヤ
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
から
言
(
い
)
ふべきことだよ。
430
貴様
(
きさま
)
こそ
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
生返
(
いきかへ
)
つたのだ』
431
テク
『あゝカルか、
432
さうすると
貴様
(
きさま
)
はヤツパリ
此方
(
こちら
)
の
味方
(
みかた
)
だつたのかなア』
433
レーブ『
見方
(
みかた
)
に
依
(
よ
)
つては
味方
(
みかた
)
でもあり、
434
敵
(
てき
)
でもあるワイ。
435
敵
(
てき
)
の
中
(
なか
)
に
味方
(
みかた
)
あり、
436
味方
(
みかた
)
の
中
(
なか
)
に
敵
(
てき
)
のある
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
437
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
でさへも
敵味方
(
てきみかた
)
の
衝突
(
しようとつ
)
が
絶
(
た
)
えず
起
(
おこ
)
つてゐるのだからなア。
438
アハヽヽヽ』
439
テームスは
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
440
テームス
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
441
左守
(
さもり
)
の
司様
(
かみさま
)
の
館
(
やかた
)
まで
急
(
いそ
)
ぐことに
致
(
いた
)
さう』
442
茲
(
ここ
)
に
一行
(
いつかう
)
十三
(
じふさん
)
人
(
にん
)
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
に
鞭
(
むちう
)
ちながら
入那
(
いるな
)
の
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
443
(
大正一一・一一・一〇
旧九・二二
松村真澄
録)
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