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第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
01 入那の野辺
〔1105〕
02 入那城
〔1106〕
03 偽恋
〔1107〕
04 右守館
〔1108〕
05 急告
〔1109〕
06 誤解
〔1110〕
07 忍術使
〔1111〕
第2篇 神機赫灼
08 無理往生
〔1112〕
09 蓮の川辺
〔1113〕
10 狼の岩窟
〔1114〕
11 麓の邂逅
〔1115〕
12 都入り
〔1116〕
第3篇 北光神助
13 夜の駒
〔1117〕
14 慈訓
〔1118〕
15 難問題
〔1119〕
16 三番叟
〔1120〕
第4篇 神出鬼没
17 宵企み
〔1121〕
18 替へ玉
〔1122〕
19 当て飲み
〔1123〕
20 誘惑
〔1124〕
21 長舌
〔1125〕
余白歌
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> 第4篇 神出鬼没 > 第19章 当て飲み
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第一九章
当
(
あ
)
て
飲
(
の
)
み〔一一二三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第4篇 神出鬼没
よみ(新仮名遣い):
しんしゅつきぼつ
章:
第19章 当て飲み
よみ(新仮名遣い):
あてのみ
通し章番号:
1123
口述日:
1922(大正11)年11月12日(旧09月24日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
右守のカールチンは、妻のテーナ姫と、マンモス、サモア姫、ユーフテスらの幹部連を引き連れて、茶室にて願望成就の前祝として酒を酌み交わしていた。
カールチンはよい機嫌に酔いつぶされて、テーナ姫やカールチン、マンモスを相手に管を巻いている。
そこへハルナの都から大黒主の信書がカールチンに届いた。信書には、イルナ国に派遣すべき軍隊二千騎は出せなくなったが、五百騎を遣わせるとあった。
カールチンは自分が酔いつぶれてしまっているので、代わりにユーフテスに大黒主の使者との謁見を命じたが、大黒主の使者はカルマタ国に急ぎの用があるとすでに出立してしまっていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-17 00:05:48
OBC :
rm4119
愛善世界社版:
268頁
八幡書店版:
第7輯 629頁
修補版:
校定版:
281頁
普及版:
127頁
初版:
ページ備考:
001
イルナ
川
(
がは
)
の
清流
(
せいりう
)
の
一部
(
いちぶ
)
をとり
込
(
こ
)
んだ
泉水
(
せんすゐ
)
の
中
(
なか
)
に
瀟洒
(
せうしや
)
たる
茶室
(
ちやしつ
)
が
建
(
た
)
つている。
002
これは
右守
(
うもり
)
の
館
(
やかた
)
で、
003
今朝
(
けさ
)
は
早朝
(
さうてう
)
よりカールチン、
004
テーナ
姫
(
ひめ
)
、
005
マンモス、
006
サモア
姫
(
ひめ
)
、
007
ユーフテスの
幹部
(
かんぶ
)
連
(
れん
)
、
008
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
前祝
(
まへいはひ
)
として
盛
(
さかん
)
に
酒
(
さけ
)
酌
(
く
)
み
交
(
かは
)
し
浩然
(
こうぜん
)
の
気
(
き
)
を
養
(
やしな
)
つてゐる。
009
カールチンはテーナ
姫
(
ひめ
)
、
010
サモア
姫
(
ひめ
)
に
盛
(
も
)
り
潰
(
つぶ
)
され、
011
王者
(
わうじや
)
気取
(
きど
)
りになつて
豪然
(
がうぜん
)
と
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
の
泥
(
どろ
)
を
人
(
ひと
)
もなげに
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
て
出
(
だ
)
した。
012
カールチンはまはらぬ
舌
(
した
)
を、
013
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
めて
無理
(
むり
)
に
使
(
つか
)
ひながら、
014
(
酔泥
(
よひどれ
)
口調
(
くてう
)
)『オイ
婆
(
ば
)
アさま……ではない、
015
昔
(
むかし
)
の
別嬪
(
べつぴん
)
のテーナ
姫
(
ひめ
)
、
016
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
智略
(
ちりやく
)
は
偉
(
えら
)
いものだらう。
017
まるで
久延毘古
(
くえびこの
)
神
(
かみ
)
か
思兼
(
おもひかねの
)
神
(
かみ
)
の
様
(
やう
)
な
神智
(
しんち
)
鬼策
(
きさく
)
が
臍下
(
せいか
)
丹田
(
たんでん
)
から
湧
(
わ
)
いて
来
(
く
)
るのだからのう、
018
エーン、
019
此
(
この
)
神
(
かみ
)
は
足
(
あし
)
は
歩
(
ある
)
かねども
天ケ下
(
あめがした
)
の
事
(
こと
)
は
悉
(
ことごと
)
く
知
(
し
)
る
神
(
かみ
)
なり、
020
奇魂
(
くしみたま
)
千憑彦
(
ちよりひこ
)
の
命
(
みこと
)
の
再来
(
さいらい
)
とは
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
事
(
こと
)
だ、
021
エーン。
022
今
(
いま
)
に
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
、
023
テルマン
国
(
ごく
)
を
併合
(
へいがふ
)
して、
024
大王国
(
だいわうこく
)
を
建設
(
けんせつ
)
し、
025
テーナ
姫
(
ひめ
)
でなくてテーナ
妃
(
ひ
)
と
改名
(
かいめい
)
さしてやる。
026
何
(
なん
)
と
婆
(
ば
)
アさま、
027
嬉
(
うれ
)
しいだらうなア。
028
エーン』
029
テーナ姫
『あまり
悲
(
かな
)
しいことも
厶
(
ござ
)
りませぬ。
030
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
031
さうなると
私
(
わたし
)
は
却
(
かへつ
)
て
悲
(
かな
)
しうなるかも
知
(
し
)
れませぬ。
032
一層
(
いつそう
)
今
(
いま
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
が
夫婦
(
ふうふ
)
睦
(
むつま
)
じく
暮
(
くら
)
せますから、
033
何程
(
なにほど
)
結構
(
けつこう
)
だか
分
(
わか
)
りますまい。
034
又
(
また
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
真似
(
まね
)
をして
糟糠
(
さうかう
)
の
妻
(
つま
)
を
無残
(
むざん
)
におつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
し、
035
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
の
様
(
やう
)
な
美人
(
びじん
)
を
後釜
(
あとがま
)
に
据
(
す
)
ゑられちや、
036
まるつきり
鳶
(
とび
)
に
揚豆腐
(
あげどうふ
)
を
浚
(
さら
)
はれた
様
(
やう
)
なものですからなア。
037
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
性
(
しやう
)
が
悪
(
わる
)
いから
案
(
あん
)
じられてなりませぬわ』
038
カールチン
『そりや
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ。
039
いやしくもバラモン
教
(
けう
)
の
道
(
みち
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
の
此
(
この
)
方
(
はう
)
、
040
そんな
没義道
(
もぎだう
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しては
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
済
(
す
)
まぬじやないか。
041
いや
其
(
その
)
方
(
はう
)
ばかりぢやない、
042
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
心
(
こころ
)
も
頓
(
とん
)
と
済
(
す
)
まないから、
043
滅多
(
めつた
)
にそんな
事
(
こと
)
はないから
安心
(
あんしん
)
をしたが
宜
(
よ
)
からうぞ、
044
エーン。
045
折角
(
せつかく
)
酒
(
さけ
)
がうまく
廻
(
まは
)
つた
所
(
ところ
)
へ、
046
そんな
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
を
云
(
い
)
つてくれると、
047
サツパリ
興
(
きよう
)
が
醒
(
さ
)
めて
了
(
しま
)
ふぢやないか。
048
エーン』
049
テーナ姫
『それ
聞
(
き
)
いてチツトばかり
安心
(
あんしん
)
を
致
(
いた
)
しました。
050
貴方
(
あなた
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
051
そんな
事
(
こと
)
をなさる
筈
(
はず
)
はありませぬわネー。
052
初
(
はじ
)
めて
会
(
あ
)
うた
時
(
とき
)
、
053
あなたは
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
いました。
054
よもや
忘
(
わす
)
れては
居
(
を
)
られますまい』
055
カールチン
『こりやこりや、
056
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふか。
057
そんな
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
るとユーフテスやマンモス、
058
サモアが
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んで
嫉妬
(
やきもち
)
をやき
居
(
を
)
るから、
059
昔
(
むかし
)
のローマンスはここらで、
060
うまく
切
(
き
)
りとしたら
如何
(
どう
)
だ。
061
エーン』
062
テーナ姫
『
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
の
蜜
(
みつ
)
の
様
(
やう
)
な
恋
(
こひ
)
を
時々
(
ときどき
)
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
すのも、
063
あまり
気
(
き
)
の
悪
(
わる
)
いものじや
厶
(
ござ
)
りませぬぜ。
064
人間
(
にんげん
)
の
楽
(
たの
)
しみは
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
のローマンスを
時々
(
ときどき
)
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
す
位
(
くらゐ
)
愉快
(
ゆくわい
)
なものはありませぬ。
065
それを
忘
(
わす
)
れちや
人生
(
じんせい
)
の
趣味
(
しゆみ
)
も
何
(
なに
)
もあつたものぢやありませぬわ』
066
とテーナ
姫
(
ひめ
)
も
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れた
勢
(
いきほひ
)
で、
067
四辺
(
あたり
)
構
(
かま
)
はず
昔
(
むかし
)
の
恋
(
こひ
)
を
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てようとする。
068
ユーフテス
『
何
(
なん
)
とまア、
069
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
070
奥様
(
おくさま
)
も
面白
(
おもしろ
)
い
時
(
とき
)
があつたのですな。
071
一遍
(
いつぺん
)
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいませな。
072
私
(
わたし
)
もセーリス
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
恋
(
こひ
)
しい
女
(
をんな
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
るのですから、
073
研究
(
けんきう
)
のために
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
へば
大変
(
たいへん
)
都合
(
つがふ
)
が
宜
(
よろ
)
しいがな。
074
あゝあ、
075
二夫婦
(
ふたふうふ
)
に
一人鰥
(
ひとりやもめ
)
か、
076
セーリス
姫
(
ひめ
)
も
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かないわい。
077
ほんの
一寸
(
ちよつと
)
でいいから
顔
(
かほ
)
なつとつき
出
(
だ
)
してくれると、
078
ユーフテスの
肩身
(
かたみ
)
も
広
(
ひろ
)
くなるのだけれど、
079
まだ
公然
(
こうぜん
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
でないから
仕方
(
しかた
)
ない。
080
先
(
さき
)
の
楽
(
たの
)
しみとしようかな、
081
エーン』
082
カールチン
『こりやこりやユーフテス、
083
エーンとは
何
(
なん
)
ぢや。
084
俺
(
おれ
)
のお
株
(
かぶ
)
を
占領
(
せんりやう
)
しやがつて、
085
誰
(
たれ
)
に
断
(
ことわ
)
つて
其
(
その
)
エーンを
盗
(
ぬす
)
んだか、
086
エーン』
087
ユーフテス
『
別
(
べつ
)
に
盗
(
ぬす
)
んだのぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
088
あまり
沢山
(
たくさん
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
がエーンを
落
(
おと
)
しなさるものですから、
089
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わたし
)
が
拾
(
ひろ
)
つたので
厶
(
ござ
)
りますよ。
090
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
くセーリス
姫
(
ひめ
)
とエーンを
結
(
むす
)
びたう
厶
(
ござ
)
りますわい、
091
エーン』
092
テーナ姫
『オホヽヽヽヽ、
093
エーンエーンの
掛合
(
かけあひ
)
だなア。
094
チツトはエーン
慮
(
りよ
)
したら
如何
(
どう
)
だい。
095
エーンと
月日
(
つきひ
)
は
待
(
ま
)
つがよいと
云
(
い
)
ふぢやありませぬか。
096
エーンはテーナ』
097
ユーフテス
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
098
恋
(
こひ
)
の
情火
(
じやうくわ
)
にこがされて、
099
胸
(
むね
)
に
焔
(
ほのほ
)
がエーンエーンと
燃
(
も
)
え
立
(
た
)
ちますわい。
100
貴方
(
あなた
)
たちは、
101
さうして
夫婦
(
ふうふ
)
仲
(
なか
)
よく
笑
(
わら
)
つたり、
102
意茶
(
いちや
)
ついたりして
居
(
ゐ
)
ながら、
103
まだ
未婚者
(
みこんしや
)
のユーフテスを
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なとも、
104
可愛相
(
かあいさう
)
なとも
思
(
おも
)
はず、
105
「お
前
(
まへ
)
のエーン
談
(
だん
)
等
(
など
)
は
吾不関
(
われかんせず
)
エーン」と
云
(
い
)
ふやうな
態度
(
たいど
)
でゐらつしやいますから、
106
つい
私
(
わたし
)
もエーン
世
(
せい
)
主義
(
しゆぎ
)
になりかけは………しませぬわい』
107
マンモス
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
108
こんな
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
はないぢやありませぬか。
109
マンモスは
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
成功
(
せいこう
)
の
日
(
ひ
)
を
見
(
み
)
たいもので
厶
(
ござ
)
りますなア』
110
ユーフテス
『
成功
(
せいこう
)
の
日
(
ひ
)
は
已
(
すで
)
に
見
(
み
)
えてゐるぢやないか。
111
現
(
げん
)
にセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
右守
(
うもり
)
さまに
位
(
くらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
つてやらうと
仰有
(
おつしや
)
つたぢやないか。
112
王者
(
わうじや
)
の
言葉
(
ことば
)
に
決
(
けつ
)
して
二言
(
にごん
)
はあるまい。
113
これと
云
(
い
)
ふのもヤツパリ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
器量
(
きりやう
)
の
佳
(
よ
)
い
賢明
(
けんめい
)
なお
娘
(
むすめ
)
様
(
さま
)
をお
持
(
も
)
ちなさつたからだ。
114
あゝあ、
115
持
(
も
)
つべきものは
娘
(
むすめ
)
なりけりだ。
116
ユーフテスも
早
(
はや
)
くセーリス
姫
(
ひめ
)
と
結婚
(
けつこん
)
して
美
(
うつく
)
しい
傾国
(
けいこく
)
の
娘
(
むすめ
)
を
生
(
う
)
み、
117
老後
(
らうご
)
を
楽
(
たの
)
しみたいものだわい、
118
アーン』
119
マンモス
『こりやこりやユーフテス、
120
アーンなんて
吐
(
ぬか
)
すとサツパリ
貴様
(
きさま
)
の
縁談
(
えんだん
)
はアーンになつて
了
(
しま
)
ふぞ、
121
アーン』
122
ユーフテス『こりやマンモス、
123
茶々
(
ちやちや
)
を
入
(
い
)
れるのか、
124
入
(
い
)
れるなら
入
(
い
)
れて
見
(
み
)
い。
125
俺
(
おれ
)
にも
了簡
(
れうけん
)
があるぞ』
126
ユーフテス
『この
国
(
くに
)
は
茶々
(
ちやちや
)
が
名物
(
めいぶつ
)
だ。
127
碾茶
(
ひきちや
)
なつと
煎茶
(
せんちや
)
なつと
盛
(
も
)
つてやらうか。
128
チヤチヤ ヤートコセ、
129
ママチートコセ、
130
セーリス
姫
(
ひめ
)
さまに、
131
うまく
ちよろまか
されて、
132
終
(
しま
)
ひの
果
(
は
)
てには
肱鉄砲
(
ひぢでつぱう
)
、
133
日頃
(
ひごろ
)
の
思
(
おも
)
ひも
滅茶
(
めちや
)
苦茶
(
くちや
)
、
134
蜥蜴
(
とかげ
)
の
様
(
やう
)
な
面
(
つら
)
をして、
135
あんなシヤンに
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
るなんて、
136
チヤンチヤラをかしい。
137
しまひの
果
(
は
)
てにやチヤツチヤ、
138
ムチヤに
此
(
この
)
縁談
(
えんだん
)
は
揉
(
も
)
み
潰
(
つぶ
)
されて
了
(
しま
)
ふぞ。
139
そんな
事
(
こと
)
は
此
(
この
)
マンモスの
天眼通
(
てんがんつう
)
でチヤーンと
分
(
わか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ、
140
エーン』
141
サモア『オホヽヽヽヽ
今日
(
けふ
)
はまア、
142
何
(
なん
)
とした
面白
(
おもしろ
)
い
日
(
ひ
)
でせう』
143
カールチン
『おい、
144
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
、
145
今日
(
けふ
)
は
右守
(
うもり
)
の
祝宴
(
しゆくえん
)
だから、
146
何
(
なん
)
なつと
喋
(
しやべ
)
つたが
宜
(
よ
)
いが、
147
もう
一二
(
いちに
)
ケ
月
(
げつ
)
すると
俺
(
おれ
)
は
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
だから、
148
こんな
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないぞ。
149
其
(
その
)
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
は
貴様
(
きさま
)
も
弁
(
わきま
)
へて
居
(
ゐ
)
るだらうな、
150
エーン』
151
ユーフテス
『そりや
弁
(
わきま
)
へて
居
(
ゐ
)
ますとも、
152
このユーフテスは。
153
併
(
しか
)
し
貴方
(
あなた
)
だつて、
154
あまり
良
(
よ
)
くない
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へてゐなさるのだから、
155
何
(
いづ
)
れどちらへなりと
埒
(
らち
)
がつきませうかい、
156
アーン』
157
カールチン
『こりやこりや、
158
善
(
よ
)
くない
事
(
こと
)
とは
何
(
なん
)
だ。
159
チツと
無礼
(
ぶれい
)
ではないか、
160
エーン』
161
ユーフテス
『
貴方
(
あなた
)
は
寡欲
(
くわよく
)
恬淡
(
てんたん
)
な、
162
チツとも
欲
(
よく
)
のないお
方
(
かた
)
と
云
(
い
)
つたのですよ。
163
凡
(
すべ
)
て
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
捉
(
とら
)
まへやうとすれば、
164
捉
(
とら
)
へられぬものです。
165
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
万事
(
ばんじ
)
にかけて
抜
(
ぬ
)
け
目
(
め
)
なく、
166
よくない
方
(
かた
)
だから
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
方
(
はう
)
から
昨日
(
きのふ
)
の
様
(
やう
)
にあんな
結構
(
けつこう
)
なことを
仰有
(
おつしや
)
るので
厶
(
ござ
)
りますわい。
167
これを
思
(
おも
)
へば
時節
(
じせつ
)
は
待
(
ま
)
たねばならぬものですな。
168
(
都々逸
(
どどいつ
)
)「
時世
(
ときよ
)
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
と
云
(
い
)
へど、
169
よくないお
方
(
かた
)
が
王
(
わう
)
となる」あゝヨイトセ ヨイトセぢや。
170
おいマンモス、
171
貴様
(
きさま
)
も
一
(
ひと
)
つ
前祝
(
まへいはひ
)
に
歌
(
うた
)
はぬかい。
172
大蛇
(
をろち
)
の
子
(
こ
)
のやうにグイグイ
飲
(
の
)
んでばかり
居
(
ゐ
)
やがつて、
173
何
(
なん
)
の
態
(
ざま
)
だ。
174
チとコケコーでも
唄
(
うた
)
つたら
如何
(
どう
)
だい、
175
アーン』
176
マンモスは
鹿爪
(
しかつめ
)
らしく、
177
マンモス
『
飲
(
の
)
む
時
(
とき
)
には
飲
(
の
)
む、
178
遊
(
あそ
)
ぶ
時
(
とき
)
には
遊
(
あそ
)
ぶ。
179
然
(
しか
)
り
而
(
しか
)
うして
聊
(
いささ
)
か
以
(
もつ
)
て
唄
(
うた
)
ふべき
時
(
とき
)
には
唄
(
うた
)
ふのだ。
180
俺
(
おれ
)
も
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
や、
181
千軍
(
せんぐん
)
万馬
(
ばんば
)
の
中
(
なか
)
を
往来
(
わうらい
)
して
来
(
き
)
た
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
……ではない、
182
其
(
その
)
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
の……
伝記
(
でんき
)
を
読
(
よ
)
んで、
183
チツとばかり
感化力
(
かんくわりよく
)
を
養
(
やしな
)
ふ……たと
云
(
い
)
ふチーチヤーさまだからな、
184
エーン。
185
貴様
(
きさま
)
の
如
(
ごと
)
き
燕雀輩
(
えんじやくはい
)
の
敢
(
あへ
)
て
窺知
(
きち
)
する
所
(
ところ
)
に
非
(
あら
)
ずだ。
186
(
詩吟
(
しぎん
)
)「
月
(
つき
)
は
中空
(
ちうくう
)
に
皎々
(
かうかう
)
として
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
り、
187
マンモスは
悠々
(
いういう
)
として
酒杯
(
しゆはい
)
に
浸
(
ひた
)
る。
188
月影
(
げつえい
)
映
(
うつ
)
す
杯洗
(
はいせん
)
の
中
(
なか
)
、
189
絶世
(
ぜつせい
)
の
美人
(
びじん
)
吾
(
わが
)
傍
(
かたはら
)
に
在
(
あ
)
り」とは
如何
(
どう
)
だ、
190
うまいだらう。
191
俺
(
おれ
)
の
詩歌
(
しか
)
は
而
(
しか
)
も
特別
(
とくべつ
)
誂
(
あつら
)
へだからなア、
192
エーン』
193
ユーフテス
『
貴様
(
きさま
)
の
詩歌
(
しか
)
はカイローカイローと
紅葉林
(
もみぢばやし
)
で
四足
(
よつあし
)
の
女房
(
にようばう
)
を
呼
(
よ
)
ぶ
先生
(
せんせい
)
の
声
(
こゑ
)
によく
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
るわ。
194
オツとそのカイローで
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した、
195
俺
(
おれ
)
も
早
(
はや
)
くセー
チヤン
と
偕老
(
かいらう
)
同穴
(
どうけつ
)
の
契
(
ちぎり
)
を
結
(
むす
)
びたいものだ。
196
貴様
(
きさま
)
のやうなシヤツチもない
詩歌
(
しか
)
を
呻
(
うな
)
ると
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
うなつてくるわい。
197
シカのシは
死人
(
しにん
)
の
死
(
し
)
だらうよ。
198
もつと
生命
(
せいめい
)
のある
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つたら
如何
(
どう
)
だい、
199
アーン』
200
マンモスは
咳
(
せき
)
一
(
ひと
)
つしながら、
201
マンモス
『
詩歌
(
しか
)
の
詩
(
し
)
の
字
(
じ
)
は
言扁
(
ごんべん
)
に
寺
(
てら
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
を
書
(
か
)
くぢやないか。
202
死人
(
しにん
)
の
納
(
をさ
)
まる
所
(
ところ
)
は
寺
(
てら
)
だよ』
203
ユーフテス『ヘーン、
204
うまいこと
云
(
い
)
ふ
寺
(
てら
)
あ、
205
墓々死
(
ばかばかし
)
いことをユーフテスぢやないか、
206
マンモス
奴
(
め
)
』
207
かく
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
く
処
(
ところ
)
へスタスタとやつて
来
(
き
)
た
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
、
208
一通
(
いつつう
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
差出
(
さしだ
)
し、
209
男
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
210
ハルナの
都
(
みやこ
)
から
急
(
いそ
)
ぎの
使
(
つかひ
)
が
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
を
持
(
も
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
211
と
恭
(
うやうや
)
しく
差出
(
さしだ
)
すを、
212
カールチンは
酔眼
(
すゐがん
)
をカツと
見開
(
みひら
)
き、
213
手紙
(
てがみ
)
を
手早
(
てばや
)
く
受取
(
うけと
)
り
封
(
ふう
)
を
押切
(
おしき
)
つて
文面
(
ぶんめん
)
に
目
(
め
)
をそそぎ、
214
カールチン
『エ、
215
何
(
なに
)
、
216
むつかしい
文字
(
もじ
)
が
書
(
か
)
いてあるぞ、
217
何
(
なん
)
だかよく
動
(
うご
)
く
文面
(
ぶんめん
)
だなア。
218
二筋
(
ふたすぢ
)
にも
三筋
(
みすぢ
)
にも、
219
素麺
(
そうめん
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
のやうに
文字
(
もじ
)
が
活躍
(
くわつやく
)
してゐるわい。
220
こりやヤツパリ
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
筆蹟
(
ひつせき
)
と
見
(
み
)
える、
221
活神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
のお
筆
(
ふで
)
は
違
(
ちが
)
つたものだ。
222
ようよう
益々
(
ますます
)
活動
(
くわつどう
)
し
出
(
だ
)
したぞ』
223
と
目
(
め
)
をちらつかせ
手
(
て
)
を
震
(
ふる
)
はせ、
224
読
(
よ
)
まうとすれども
如何
(
どう
)
しても
読
(
よ
)
む
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
225
カールチン
『おい、
226
テーナ
姫
(
ひめ
)
、
227
貴様
(
きさま
)
一
(
ひと
)
つ
読
(
よ
)
んで
呉
(
く
)
れないか。
228
非常
(
ひじやう
)
に
墨痕
(
ぼくこん
)
淋漓
(
りんり
)
として
竜
(
りう
)
の
走
(
は
)
するが
如
(
ごと
)
き
活
(
い
)
きた
文字
(
もじ
)
だから
何処
(
どこ
)
かへ
逃
(
に
)
げさうだ、
229
エーン』
230
テーナ姫
『ホヽヽヽヽ、
231
どれ
妾
(
わたし
)
が
読
(
よ
)
んで
見
(
み
)
ませう』
232
と
手紙
(
てがみ
)
を
受取
(
うけと
)
り、
233
テーナ姫
『エヽ……
此
(
この
)
度
(
たび
)
汝
(
なんぢ
)
の
願
(
ねがひ
)
により
騎馬
(
きば
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
二千騎
(
にせんき
)
派遣
(
はけん
)
致
(
いた
)
すべき
所
(
ところ
)
、
234
隣国
(
りんごく
)
のセイナに
暴動
(
ばうどう
)
起
(
おこ
)
り、
235
これを
急々
(
きふきふ
)
鎮定
(
ちんてい
)
すべく、
236
アルマンをして
之
(
これ
)
を
率
(
ひき
)
ゐしめ
征討
(
せいたう
)
に
向
(
むか
)
はせたれば、
237
汝
(
なんぢ
)
が
請願
(
せいぐわん
)
に
応
(
おう
)
じ
難
(
がた
)
し。
238
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何時
(
いつ
)
擾乱
(
ぜうらん
)
鎮定
(
ちんてい
)
すとも
量
(
はか
)
り
難
(
がた
)
ければ、
239
五百騎
(
ごひやくき
)
を
急々
(
きふきふ
)
汝
(
なんぢ
)
が
許
(
もと
)
に
派遣
(
はけん
)
すべければ、
240
万事
(
ばんじ
)
万端
(
ばんたん
)
の
用意
(
ようい
)
あつて
然
(
しか
)
るべし。
241
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
カールチンへ、
242
大黒主
(
おほくろぬし
)
宣示
(
せんじ
)
……』
243
カールチン
『よしよし、
244
それで
解
(
わか
)
つた。
245
併
(
しか
)
しながら、
246
隣国
(
りんごく
)
に
騒動
(
さうだう
)
が
起
(
おこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るにも
拘
(
かかは
)
らず、
247
五百騎
(
ごひやくき
)
を
派遣
(
はけん
)
下
(
くだ
)
さるとは、
248
よくもよくも
吾々
(
われわれ
)
を
信用
(
しんよう
)
して
下
(
くだ
)
さつたものだ、
249
実
(
じつ
)
に
有難
(
ありがた
)
い、
250
併
(
しか
)
しながら
最早
(
もはや
)
セーラン
王
(
わう
)
の
口
(
くち
)
から、
251
あゝ
言
(
い
)
つたのだから、
252
戦
(
たたか
)
ひの
必要
(
ひつえう
)
もあるまい。
253
併
(
しか
)
し
何時
(
なんどき
)
悪智慧
(
わるぢゑ
)
をかふ
奴
(
やつ
)
があつて
変心
(
へんしん
)
されるかも
知
(
し
)
れない。
254
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
に
五百騎
(
ごひやくき
)
の
勇者
(
ゆうしや
)
があれば
何事
(
なにごと
)
も
都合
(
つがふ
)
よく
行
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
ふもの、
255
まア
謹
(
つつし
)
んでお
受
(
う
)
けをする
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
さうかなア。
256
おい、
257
ユーフテス、
258
お
前
(
まへ
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
使者
(
ししや
)
に
会
(
あ
)
つて
宜
(
よろ
)
しくお
礼
(
れい
)
を
申上
(
まをしあ
)
げて
呉
(
く
)
れ。
259
俺
(
おれ
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
にお
目
(
め
)
にかかるのが
本意
(
ほんい
)
なれども、
260
斯
(
か
)
う
気楽
(
きらく
)
さうに
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れた
処
(
ところ
)
を
使者
(
ししや
)
に
見
(
み
)
られたら
大変
(
たいへん
)
だ。
261
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
信用
(
しんよう
)
を
落
(
おと
)
してはならないからなア』
262
と
稍
(
やや
)
酔
(
よ
)
ひも
醒
(
さ
)
め、
263
少
(
すこ
)
しく
真面目
(
まじめ
)
になつて
宣示
(
せんじ
)
した。
264
ユーフテス
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
265
使者
(
ししや
)
に
接見
(
せつけん
)
するのは、
266
此
(
この
)
ユーフテスを
措
(
お
)
いて、
267
外
(
ほか
)
に
適当
(
てきたう
)
な
人物
(
じんぶつ
)
は
憚
(
はばか
)
りながら
厶
(
ござ
)
いますまい。
268
左様
(
さやう
)
なれば、
269
特命
(
とくめい
)
全権
(
ぜんけん
)
公使
(
こうし
)
として
接見
(
せつけん
)
仕
(
つかまつ
)
らう。
270
いや
吾々
(
われわれ
)
一人
(
ひとり
)
では
全権
(
ぜんけん
)
公使
(
こうし
)
の
貫目
(
くわんめ
)
が
足
(
た
)
らぬ。
271
マンモス、
272
お
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
せ、
273
アーン』
274
マンモス
『エー、
275
馬鹿
(
ばか
)
にしやがるない。
276
誰
(
たれ
)
が
貴様
(
きさま
)
の
下
(
した
)
について
行
(
ゆ
)
く
奴
(
やつ
)
があるかい。
277
此
(
この
)
マンモスは、
278
これから
出世
(
しゆつせ
)
をせにやならぬ
体
(
からだ
)
だ。
279
使者
(
ししや
)
に
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
られ……マンモスはユーフテスの
下役
(
したやく
)
ぢや……と
思
(
おも
)
はれちや、
280
将来
(
しやうらい
)
のため
大変
(
たいへん
)
な
不利益
(
ふりえき
)
だから、
281
利害
(
りがい
)
の
打算
(
ださん
)
上
(
じやう
)
から
見
(
み
)
て、
282
まア
止
(
や
)
めて
置
(
お
)
かうかい、
283
エーン』
284
カールチンは、
285
カールチン
『あゝ
酔
(
よ
)
うた
酔
(
よ
)
うた、
286
こんなヨタンボで
如何
(
どう
)
して
使者
(
ししや
)
に
接見
(
せつけん
)
が
出来
(
でき
)
ようか。
287
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国彦
(
おほくにひこの
)
命
(
みこと
)
、
288
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へ
幸
(
さきは
)
へ
給
(
たま
)
へ、
289
ゲーウツプ、
290
ガラガラ ガラガラ。
291
余
(
あま
)
り
俄
(
にはか
)
のお
使
(
つかひ
)
で
腹
(
はら
)
の
虫
(
むし
)
奴
(
め
)
が
清潔法
(
せいけつはふ
)
を
始
(
はじ
)
めやがつて、
292
飲
(
の
)
んだ
酒
(
さけ
)
までが
逆流
(
ぎやくりう
)
しだした。
293
あゝ
苦
(
くる
)
しい
事
(
こと
)
だ。
294
苦
(
くる
)
しい
中
(
なか
)
にも
楽
(
たの
)
しみありだ。
295
あゝあ、
296
ユーフテス、
297
うまく
使者
(
ししや
)
に
会
(
あ
)
うたら
内兜
(
うちかぶと
)
を
見透
(
みす
)
かされぬ
様
(
やう
)
にユーフテスとやるのだよ、
298
エーン』
299
ユーフテス
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
300
左様
(
さやう
)
ならば
今日
(
こんにち
)
は
貴方
(
あなた
)
の
代理
(
だいり
)
として
使者
(
ししや
)
に
接見
(
せつけん
)
して
参
(
まゐ
)
ります。
301
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
りますかな』
302
カールチン
『よしよし、
303
貴様
(
きさま
)
に
全権
(
ぜんけん
)
を
委任
(
ゐにん
)
するから、
304
そこはうまくやつて
来
(
こ
)
い』
305
ユーフテス
『
左様
(
さやう
)
ならば、
306
これより
得意
(
とくい
)
の
外交
(
ぐわいかう
)
的
(
てき
)
手腕
(
しゆわん
)
を
揮
(
ふる
)
つて
見
(
み
)
せませう』
307
と
云
(
い
)
ひすててバタバタと
表
(
おもて
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
308
ユーフテスは
他
(
た
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
様
(
やう
)
に
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れては
居
(
ゐ
)
なかつた。
309
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
注意
(
ちゆうい
)
によつてカールチン
夫婦
(
ふうふ
)
の
凡
(
すべ
)
ての
行動
(
かうどう
)
を
視察
(
しさつ
)
するのが
第一
(
だいいち
)
の
目的
(
もくてき
)
だつたからである。
310
ユーフテスは
表
(
おもて
)
へ
出
(
い
)
で
態
(
わざ
)
とにヒヨロリ ヒヨロリと
千鳥足
(
ちどりあし
)
になりながら、
311
(
酔
(
よ
)
ひどれ
口調
(
くてう
)
)『ハルナの
国
(
くに
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
はドヽヽヽ
何処
(
どこ
)
にケヽヽヽけつかるのだ。
312
特命
(
とくめい
)
………
全権
(
ぜんけん
)
公使
(
こうし
)
の………
俺
(
おれ
)
はユーフテスさまだぞ。
313
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
へ………
俺
(
おれ
)
の
前
(
まへ
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ぬか、
314
アーン』
315
門番
(
もんばん
)
のケールは
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
316
ケール
『もしもし、
317
御
(
ご
)
家老
(
からう
)
様
(
さま
)
、
318
ハルナの
国
(
くに
)
のお
使
(
つかひ
)
はあの
手紙
(
てがみ
)
を
渡
(
わた
)
したきり、
319
これからカルマタ
国
(
こく
)
へお
使
(
つかひ
)
に
行
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
つて「
一寸
(
ちよつと
)
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
され」と
云
(
い
)
ふのも
聞
(
き
)
かずに
馬
(
うま
)
に
鞭韃
(
むちう
)
ち
一目散
(
いちもくさん
)
に
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
はれました。
320
そんな
足許
(
あしもと
)
で
追掛
(
おひか
)
けても
駄目
(
だめ
)
ですよ』
321
ユーフテス
『ナヽヽヽ
何
(
なん
)
だ、
322
サツパリ
後
(
あと
)
の
祭
(
まつり
)
で
持
(
も
)
ちも
卸
(
おろ
)
しも
出来
(
でき
)
なくなつた。
323
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
324
これも
何
(
なに
)
かの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
だらう』
325
と
云
(
い
)
ひながらヒヨロリ ヒヨロリと
足許
(
あしもと
)
危
(
あや
)
ふく
奥
(
おく
)
を
目
(
め
)
がけて
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
326
(
大正一一・一一・一二
旧九・二四
北村隆光
録)
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