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第66巻(巳の巻)
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第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
01 入那の野辺
〔1105〕
02 入那城
〔1106〕
03 偽恋
〔1107〕
04 右守館
〔1108〕
05 急告
〔1109〕
06 誤解
〔1110〕
07 忍術使
〔1111〕
第2篇 神機赫灼
08 無理往生
〔1112〕
09 蓮の川辺
〔1113〕
10 狼の岩窟
〔1114〕
11 麓の邂逅
〔1115〕
12 都入り
〔1116〕
第3篇 北光神助
13 夜の駒
〔1117〕
14 慈訓
〔1118〕
15 難問題
〔1119〕
16 三番叟
〔1120〕
第4篇 神出鬼没
17 宵企み
〔1121〕
18 替へ玉
〔1122〕
19 当て飲み
〔1123〕
20 誘惑
〔1124〕
21 長舌
〔1125〕
余白歌
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第三章
偽恋
(
にせこひ
)
〔一一〇七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第1篇 天空地平
よみ(新仮名遣い):
てんくうちへい
章:
第3章 偽恋
よみ(新仮名遣い):
にせこい
通し章番号:
1107
口述日:
1922(大正11)年11月10日(旧09月22日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ユーフテスは王に一喝されて自宅に戻り、思案に暮れていた。すると番頭が、門前に美人が現れて手紙をユーフテスに渡してくれと言っているという。ユーフテスが手紙を開いて見ると、それはセーリス姫からの恋文だった。
ユーフテスは、門番に命じてセーリス姫を室内に呼び出させた。セーリス姫はユーフテスに気があるような素振りをし、右守カールチンのたくらみをすっかり聞き出してしまった。そして明日また登城してから会う約束をしてその日は別れた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-07 10:47:04
OBC :
rm4103
愛善世界社版:
40頁
八幡書店版:
第7輯 544頁
修補版:
校定版:
41頁
普及版:
19頁
初版:
ページ備考:
001
セーラン
王
(
わう
)
の
一喝
(
いつかつ
)
にあひ、
002
悄然
(
せうぜん
)
として
早々
(
さうさう
)
城内
(
じやうない
)
を
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り、
003
自宅
(
じたく
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んで
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
るのは、
004
当時
(
たうじ
)
城内
(
じやうない
)
にては
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
も
落
(
おと
)
すやうな
勢力
(
せいりよく
)
盛
(
さかん
)
なる
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
カールチンの
家老職
(
からうしよく
)
ユーフテスである。
005
そこへ
番頭
(
ばんとう
)
のコールが、
006
慌
(
あわただ
)
しく
馳
(
は
)
せ
来
(
きた
)
り、
007
コール
『もしもし
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
008
門前
(
もんぜん
)
に
素敵
(
すてき
)
滅法界
(
めつぱふかい
)
な
美人
(
びじん
)
が
現
(
あら
)
はれまして、
009
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
を
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れと
申
(
まを
)
しました。
010
さうして
直様
(
すぐさま
)
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
が
頂
(
いただ
)
きたいとの
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
011
随分
(
ずゐぶん
)
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
も
固
(
かた
)
くるしいお
方
(
かた
)
のやうで
厶
(
ござ
)
いますが、
012
○○の
道
(
みち
)
は
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
と
見
(
み
)
えますなア。
013
本当
(
ほんたう
)
に
油断
(
ゆだん
)
がなりませぬわい』
014
とニヤリと
笑
(
わら
)
ひ、
015
一通
(
いつつう
)
の
手紙
(
てがみ
)
をユーフテスに
渡
(
わた
)
す。
016
ユーフテスは、
017
ユーフテス
『コール、
018
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すか、
019
ちと
心得
(
こころえ
)
たがよからうぞよ』
020
コール
『ハイ、
021
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
022
コール
からキツト
心得
(
こころえ
)
ます、
023
イヒヽヽヽ』
024
と
小
(
ちひ
)
さく
笑
(
わら
)
ひながら、
025
踞
(
うづくま
)
つて
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
026
ユーフテスは
手早
(
てばや
)
く
其
(
その
)
信書
(
しんしよ
)
を
押
(
お
)
し
展
(
ひら
)
き
検
(
あらた
)
め
見
(
み
)
れば、
027
私
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
に
幾度
(
いくたび
)
も
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
なお
手紙
(
てがみ
)
を
頂
(
いただ
)
きましたセーリス
姫
(
ひめ
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
028
早速
(
さつそく
)
お
返事
(
へんじ
)
を
申上
(
まをしあ
)
げたいのは
山々
(
やまやま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたが、
029
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
人目
(
ひとめ
)
の
関
(
せき
)
に
隔
(
へだ
)
てられ、
030
燃
(
も
)
ゆる
思
(
おも
)
ひを
押
(
お
)
し
隠
(
かく
)
し、
031
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
耐
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
んで
参
(
まゐ
)
りましたが、
032
もはや
恋
(
こひ
)
の
炎
(
ほのほ
)
に
身
(
み
)
を
焼
(
や
)
かれ
立
(
た
)
つても
居
(
ゐ
)
てもゐられなくなつて
来
(
き
)
ました。
033
それ
故
(
ゆゑ
)
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
をもつて
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
とは
存
(
ぞん
)
じながら
人目
(
ひとめ
)
を
忍
(
しの
)
びお
慕
(
した
)
ひ
申
(
まを
)
して
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います。
034
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
で
厶
(
ござ
)
いませうが、
035
一目
(
ひとめ
)
逢
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さいませぬか。
036
妾
(
わらは
)
はお
返事
(
へんじ
)
のある
迄
(
まで
)
表門
(
おもてもん
)
にお
待
(
ま
)
ち
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
ります。
037
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
色
(
いろ
)
よきお
返事
(
へんじ
)
をお
待
(
ま
)
ち
申
(
まを
)
します。
038
穴賢
(
あなかしこ
)
039
セーリスより
040
ユーフテス様へ
041
と
記
(
しる
)
しあるを
見
(
み
)
るより、
042
ユーフテスは
俄
(
にはか
)
に
苦
(
にが
)
り
切
(
き
)
つた
顔
(
かほ
)
の
紐
(
ひも
)
を
無雑作
(
むざふさ
)
に
緩
(
ゆる
)
め、
043
牡丹餅
(
ぼたもち
)
を
砂原
(
すなはら
)
に
打
(
う
)
ちつけたやうな
崩
(
くづ
)
れた
相好
(
さうがう
)
で、
044
右手
(
みぎて
)
の
甲
(
かふ
)
で
流
(
なが
)
れ
落
(
お
)
つる
口辺
(
くちばた
)
の
唾涎
(
よだれ
)
の
始末
(
しまつ
)
をつけながら、
045
目
(
め
)
迄
(
まで
)
細
(
ほそ
)
くして
猫撫声
(
ねこなでごゑ
)
となり、
046
ユーフテス
『オー、
047
コール、
048
よう
使
(
つかひ
)
に
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れた。
049
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が、
050
御
(
ご
)
多用中
(
たようちう
)
なれども
万障
(
ばんしやう
)
繰合
(
くりあは
)
せ、
051
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
面会
(
めんくわい
)
すると
仰有
(
おつしや
)
るから
早
(
はや
)
くお
出
(
い
)
でなさいと
案内
(
あんない
)
をして
来
(
く
)
るのだぞ』
052
コールは
少
(
すこ
)
し
耳
(
みみ
)
が
遠
(
とほ
)
いので、
053
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
で
耳
(
みみ
)
を
拘
(
かか
)
へながら、
054
ユーフテスの
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
き
噛
(
かぢ
)
り
怪訝
(
けげん
)
な
顔
(
かほ
)
して、
055
コール
『エヽ
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います。
056
多忙中
(
たばうちう
)
だから
面会
(
めんくわい
)
が
出来
(
でき
)
ない、
057
又
(
また
)
出直
(
でなほ
)
して
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいと
申上
(
まをしあ
)
げるのですか。
058
折角
(
せつかく
)
あんな
天女
(
てんによ
)
が
天降
(
あまくだ
)
つて
来
(
き
)
たのに
素気
(
すげ
)
なう
追
(
お
)
ひ
帰
(
かへ
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますかい。
059
三五教
(
あななひけう
)
ぢやないが、
060
些
(
ちつ
)
と
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しをなさつて、
061
一目
(
ひとめ
)
逢
(
あ
)
つておやりなさつたらどうでせう』
062
ユーフテス
『エヽ
聾
(
つんぼ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
仕方
(
しかた
)
のないものだなア。
063
又
(
また
)
聞
(
き
)
き
損
(
ぞこな
)
ひをして
折角
(
せつかく
)
来
(
き
)
た
恋人
(
こひびと
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
してしまはれては
大変
(
たいへん
)
だ。
064
手紙
(
てがみ
)
を
書
(
か
)
いてやるが
一番
(
いちばん
)
間違
(
まちが
)
ひがなくて
宜
(
よ
)
からう』
065
とユーフテスは、
066
文箱
(
ふばこ
)
より
料紙
(
れうし
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し
筆
(
ふで
)
に
墨
(
すみ
)
を
滲
(
にじ
)
ませ、
067
筆
(
ふで
)
の
穂
(
ほ
)
を
一寸
(
ちよつと
)
かんでプツプと
黒
(
くろ
)
い
唾
(
つば
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
吐
(
は
)
きながら、
068
すらすらと
何事
(
なにごと
)
か
書
(
か
)
き
流
(
なが
)
し
厳封
(
げんぷう
)
した
上
(
うへ
)
、
069
ユーフテス
『オイ、
070
コール、
071
貴様
(
きさま
)
は
耳
(
みみ
)
が
遠
(
とほ
)
いから
間違
(
まちが
)
ひがあつては
困
(
こま
)
るによつて、
072
其
(
その
)
女
(
をんな
)
に
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
を
渡
(
わた
)
すのだ。
073
サア
早
(
はや
)
くこれをもつて
往
(
ゆ
)
けや』
074
と
声
(
こゑ
)
を
高
(
たか
)
め
耳
(
みみ
)
のはた
近
(
ちか
)
く
寄
(
よ
)
つて
云
(
い
)
ひつける。
075
コールは
忽
(
たちま
)
ち
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
み
顔
(
がほ
)
、
076
コール
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
077
と
肩
(
かた
)
を
怒
(
いか
)
らし
一足
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
四股踏
(
しこふ
)
みながら
表門
(
おもてもん
)
さして
走
(
はし
)
り
出
(
い
)
で、
078
コール
『コレ、
079
ナイス、
080
お
前
(
まへ
)
も
余
(
あま
)
り
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かねえぢやないか。
081
こんな
白昼
(
はくちう
)
に、
082
そんな
白首
(
しらくび
)
がのそのそとやつて
来
(
く
)
るものだから、
083
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
大変
(
たいへん
)
な
嫌
(
いや
)
な
顔
(
かほ
)
をなさつて
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
をして
居
(
ゐ
)
なさる。
084
サア
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つたがよからうぞ。
085
多忙
(
たばう
)
で
万障
(
ばんしやう
)
繰
(
く
)
り
合
(
あ
)
つて
居
(
を
)
るから、
086
断
(
ことわ
)
り
状
(
じやう
)
をお
書
(
か
)
き
遊
(
あそ
)
ばしたから
之
(
これ
)
を
読
(
よ
)
んで
諦
(
あきら
)
めて
帰
(
かへ
)
つたがよからう。
087
本当
(
ほんたう
)
に
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かねえ
女
(
をんな
)
だなア。
088
そんな
不味
(
まづ
)
いやり
方
(
かた
)
で、
089
ユーフテス
様
(
さま
)
を
擒
(
とりこ
)
にしようと
思
(
おも
)
つたつて、
090
手管
(
てくだ
)
に
乗
(
の
)
せようと
思
(
おも
)
つたつて
駄目
(
だめ
)
だぞ、
091
アハヽヽヽ』
092
セーリス姫
『
何
(
なに
)
、
093
ユーフテス
様
(
さま
)
が
帰
(
かへ
)
つてくれと
仰有
(
おつしや
)
つたのかい。
094
そんな
筈
(
はづ
)
はありますまいが』
095
コール
『さてさて
強太
(
しぶと
)
い
女
(
をんな
)
だなア。
096
何
(
なに
)
よりも
其
(
その
)
断
(
ことわ
)
り
状
(
じやう
)
が
証拠
(
しようこ
)
だ。
097
早
(
はや
)
く
封
(
ふう
)
押
(
お
)
し
切
(
き
)
つて
読
(
よ
)
んで
見
(
み
)
なさい。
098
さうしたら
こなさん
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
が
嘘
(
うそ
)
でないと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
一目
(
いちもく
)
瞭然
(
れうぜん
)
となるであらう。
099
あゝ
惜
(
を
)
しいものだなア。
100
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
も
逢
(
あ
)
ひたい
事
(
こと
)
であらうが、
101
矢張
(
やつぱり
)
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
昼
(
ひる
)
だと
思
(
おも
)
つて
気兼
(
きがね
)
をしてゐらつしやると
見
(
み
)
える。
102
ヤイ
女
(
をんな
)
、
103
今晩
(
こんばん
)
裏口
(
うらぐち
)
からやつて
来
(
こ
)
い。
104
此
(
この
)
コールが
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かしてソツと
逢
(
あ
)
はしてやるから、
105
イヒヽヽヽ』
106
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
慌
(
あわただ
)
しく
封
(
ふう
)
じ
目
(
め
)
を
切
(
き
)
り、
107
ソツと
読
(
よ
)
み
下
(
くだ
)
せば
美事
(
みごと
)
な
筆跡
(
ひつせき
)
で
艶
(
なま
)
めかしい
文字
(
もんじ
)
が
列
(
つら
)
ねてある。
108
姫
(
ひめ
)
はニツコリと
打
(
う
)
ち
笑
(
わら
)
ひながら
静々
(
しづしづ
)
と
門
(
もん
)
の
閾
(
しきゐ
)
を
跨
(
また
)
げて
奥
(
おく
)
に
入
(
い
)
らうとする。
109
コールは
頻
(
しき
)
りに
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
110
コール
『
何
(
なん
)
とまア、
111
押尻
(
おしけつ
)
の
強
(
つよ
)
い
女
(
をんな
)
だなア。
112
それだから
今時
(
いまどき
)
の
女
(
をんな
)
は
奴転婆
(
どてんば
)
と
云
(
い
)
ふのだよ。
113
百鬼
(
ひやくき
)
昼行
(
ちうこう
)
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
114
こんな
厳粛
(
げんしゆく
)
なお
館
(
やかた
)
へ
昼
(
ひる
)
の
日中
(
ひなか
)
に
白首
(
しらくび
)
が
往来
(
わうらい
)
するやうになつては、
115
最早
(
もはや
)
世
(
よ
)
も
末
(
すゑ
)
だ』
116
と
云
(
い
)
ひながら、
117
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
袖
(
そで
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
118
コール
『これこれ、
119
何処
(
どこ
)
のナイスか
知
(
し
)
らぬが
厚顔
(
あつかま
)
しい、
120
断
(
ことわ
)
り
言
(
い
)
はれた
家
(
うち
)
へ
入
(
はい
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか。
121
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つたり
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つたり』
122
とグツと
力
(
ちから
)
にまかして
引
(
ひ
)
き
戻
(
もど
)
さうとするのをセーリス
姫
(
ひめ
)
は、
123
セーリス姫
『エヽ
面倒
(
めんだう
)
』
124
と
一
(
ひと
)
つ
肱
(
ひぢ
)
を
振
(
ふ
)
つた
途端
(
とたん
)
に、
125
コールは
二三間
(
にさんげん
)
ばかり
跳飛
(
はねと
)
ばされドスンと
大地
(
だいち
)
に
尻餅
(
しりもち
)
をつき、
126
アイタヽヽと
面
(
つら
)
を
顰
(
しか
)
めて
姫
(
ひめ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見送
(
みおく
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
127
姫
(
ひめ
)
はコールに
頓着
(
とんちやく
)
なく、
128
奥庭
(
おくには
)
さして
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
129
ユーフテスは、
130
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
るを
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
つ
間
(
ま
)
の
長
(
なが
)
き
鶴
(
つる
)
の
首
(
くび
)
、
131
石亀
(
いしがめ
)
のやうに
手足
(
てあし
)
を
急
(
せは
)
しく
動
(
うご
)
かしながら、
132
座敷中
(
ざしきちう
)
を
願望
(
ぐわんばう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
時節
(
じせつ
)
到来
(
たうらい
)
とステテコ
踊
(
をど
)
りをやつて
居
(
ゐ
)
る、
133
そこへサラサラと
衣摺
(
きぬず
)
れの
音
(
おと
)
聞
(
きこ
)
えて
入
(
い
)
り
来
(
く
)
る
人
(
ひと
)
の
跫音
(
あしおと
)
は、
134
どうやらセーリス
姫
(
ひめ
)
らしいので、
135
俄
(
にはか
)
に
眉毛
(
まゆげ
)
を
撫
(
な
)
でたり
目脂
(
めやに
)
が
溜
(
たま
)
つて
居
(
ゐ
)
ないかといぢつてみたり、
136
鼻糞
(
はなくそ
)
を
掃除
(
さうぢ
)
したり
唾涎
(
よだれ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
つたり
襟
(
えり
)
を
直
(
なほ
)
したり、
137
態
(
わざ
)
とに
躍
(
をど
)
る
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でながら
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
138
どことはなしに
顔
(
かほ
)
はパツと
紅葉
(
もみぢ
)
を
散
(
ち
)
らし
心
(
こころ
)
落
(
お
)
ちつかぬ
様子
(
やうす
)
である。
139
其処
(
そこ
)
へ
襖
(
ふすま
)
をソツと
押
(
お
)
し
開
(
あ
)
けて
一瞥
(
いちべつ
)
、
140
城
(
しろ
)
を
覆
(
くつが
)
へすやうな
絶世
(
ぜつせい
)
の
美人
(
びじん
)
、
141
イルナ
城
(
じやう
)
の
花
(
はな
)
と
謳
(
うた
)
はれたセーリス
姫
(
ひめ
)
が
立居
(
たちゐ
)
もいと
淑
(
しと
)
やかに
満面
(
まんめん
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る
姿
(
すがた
)
は、
142
牡丹
(
ぼたん
)
か
芍薬
(
しやくやく
)
か
百合
(
ゆり
)
の
花
(
はな
)
か、
143
又
(
また
)
も
違
(
ちが
)
うたら
白蓮華
(
しろれんげ
)
、
144
桔梗
(
ききやう
)
の
花
(
はな
)
の
雨露
(
あめつゆ
)
に
霑
(
うるほ
)
ふ
優姿
(
やさすがた
)
、
145
淑
(
しと
)
やかに
白
(
しろ
)
き
細
(
ほそ
)
き
柔
(
やはら
)
かき
鼈甲
(
べつかふ
)
のやうな
皮膚
(
きめ
)
の
細
(
こま
)
かい
手
(
て
)
をつきながら、
146
態
(
わざ
)
とに
声
(
こゑ
)
を
震
(
ふる
)
はせ
恥
(
はづ
)
かし
気
(
げ
)
に、
147
セーリス姫
『ユーフテス
様
(
さま
)
、
148
お
懐
(
なつ
)
かしう
厶
(
ござ
)
います』
149
と
云
(
い
)
つたきり
畳
(
たたみ
)
に
首
(
くび
)
を
打
(
う
)
ちつけて
態
(
わざ
)
とに
肩
(
かた
)
で
息
(
いき
)
をして
見
(
み
)
せる。
150
ユーフテスはニコニコしながら
嬉
(
うれ
)
しさうな
顔
(
かほ
)
をして、
151
女
(
をんな
)
に
馬鹿
(
ばか
)
にしられてはならぬ、
152
此処
(
ここ
)
が
一
(
ひと
)
つ
男
(
をとこ
)
の
売
(
う
)
り
所
(
どころ
)
だと
云
(
い
)
はむばかりに
儼然
(
げんぜん
)
として、
153
ユーフテス
『セーリス
姫
(
ひめ
)
殿
(
どの
)
、
154
此
(
この
)
白昼
(
はくちう
)
に
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
として
人目
(
ひとめ
)
も
繁
(
しげ
)
きに
拘
(
かかは
)
らず、
155
お
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さるとは
些
(
ちつ
)
と
不注意
(
ふちうい
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか。
156
左様
(
さやう
)
な
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
貴女
(
あなた
)
とは
思
(
おも
)
はなかつた。
157
今迄
(
いままで
)
吾々
(
われわれ
)
も
姫
(
ひめ
)
の
容色
(
ようしよく
)
に
迷
(
まよ
)
ひ、
158
幾度
(
いくたび
)
となく
艶書
(
えんしよ
)
を
差上
(
さしあ
)
げたなれど、
159
決
(
けつ
)
して
自分
(
じぶん
)
の
本心
(
ほんしん
)
では
厶
(
ござ
)
らぬ
事
(
こと
)
はない。
160
何用
(
なによう
)
あつて
今頃
(
いまごろ
)
吾
(
わが
)
宅
(
たく
)
をお
訪
(
たづ
)
ねなさつたか、
161
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
些
(
ち
)
と
不届
(
ふとど
)
きでは
厶
(
ござ
)
らぬかナ』
162
と
空威張
(
からゐば
)
りして
見
(
み
)
せて
居
(
ゐ
)
る。
163
セーリス姫
『ホヽヽヽヽお
情
(
なさけ
)
ないそのお
言葉
(
ことば
)
、
164
それ
程
(
ほど
)
妾
(
わたし
)
がお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りませぬなら
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
りお
暇
(
いとま
)
を
致
(
いた
)
します。
165
不束
(
ふつつか
)
な
女
(
をんな
)
が
参
(
まゐ
)
りましてお
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てさせまして
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
166
妾
(
わたし
)
も
女
(
をんな
)
のはしくれ、
167
今迄
(
いままで
)
貴方
(
あなた
)
に
操
(
あやつ
)
られて
居
(
ゐ
)
たかと
思
(
おも
)
へば
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
ちます』
168
と
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
169
クルリと
後
(
うしろ
)
を
向
(
む
)
け
帰
(
かへ
)
らうとするのをユーフテスはあわてて
引
(
ひ
)
き
止
(
と
)
め、
170
ユーフテス
『マヽヽマお
待
(
ま
)
ちなさいませ。
171
短気
(
たんき
)
は
損気
(
そんき
)
、
172
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のやうにさう
早取
(
はやど
)
りをしられては
困
(
こま
)
ります。
173
貴女
(
あなた
)
は
貴
(
たふと
)
い
刹帝利
(
せつていり
)
の
家筋
(
いへすぢ
)
、
174
私
(
わたし
)
は
卑
(
いや
)
しい
首陀
(
しゆだ
)
の
成
(
な
)
り
上
(
あが
)
りもの、
175
到底
(
たうてい
)
階級
(
かいきふ
)
が
違
(
ちが
)
ひますから、
176
貴女
(
あなた
)
のお
傍
(
そば
)
へも
寄
(
よ
)
れない
身分
(
みぶん
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
177
恋
(
こひ
)
には
上下
(
じやうげ
)
の
隔
(
へだ
)
てなしとか、
178
つい
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げました。
179
どうぞ
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
180
セーリス姫
『ホヽヽヽそりや
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますか。
181
若
(
わか
)
き
血潮
(
ちしほ
)
の
湧
(
わ
)
き
満
(
み
)
ちた
佳人
(
かじん
)
と
佳人
(
かじん
)
、
182
誰
(
たれ
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
が
厶
(
ござ
)
いませう。
183
現界
(
げんかい
)
の
階級
(
かいきふ
)
は
階級
(
かいきふ
)
と
致
(
いた
)
しましても、
184
恋愛
(
れんあい
)
と
云
(
い
)
ふ
神聖
(
しんせい
)
な
道
(
みち
)
には
上下
(
じやうげ
)
の
区別
(
くべつ
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい。
185
妾
(
わたし
)
は
左様
(
さやう
)
な
階級
(
かいきふ
)
的
(
てき
)
制度
(
せいど
)
は
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りませぬ。
186
何
(
なん
)
とかして
時代
(
じだい
)
に
目醒
(
めざ
)
めたる
婦人
(
ふじん
)
を
集
(
あつ
)
め
恋愛
(
れんあい
)
神聖論
(
しんせいろん
)
を
天下
(
てんか
)
に
高調
(
かうてう
)
したいと
内々
(
ないない
)
活動中
(
くわつどうちう
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ、
187
ホヽヽヽ』
188
ユーフテス
『
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
開
(
ひら
)
けた
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
だナア。
189
それだから
此
(
この
)
ユーフテスが
好
(
す
)
きで
耐
(
たま
)
らないと
申
(
まを
)
しまするのだ。
190
いやもうズツと
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りました。
191
斯
(
か
)
うして
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
を
承
(
うけたま
)
はつた
以上
(
いじやう
)
は
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
けて、
192
一
(
ひと
)
つ
天下
(
てんか
)
の
為
(
た
)
めに
大活動
(
だいくわつどう
)
を
致
(
いた
)
さうぢやありませぬか』
193
セーリス姫
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
194
恋愛
(
れんあい
)
は
恋愛
(
れんあい
)
として
置
(
お
)
きまして、
195
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
た
以上
(
いじやう
)
は、
196
貴方
(
あなた
)
と
妾
(
わたし
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
となり、
197
息
(
いき
)
を
合
(
あは
)
して
纒
(
まと
)
まつた
大事業
(
だいじげふ
)
を
起
(
おこ
)
したらどうでせうかなア』
198
ユーフテス
『ホー、
199
そいつは
面白
(
おもしろ
)
い。
200
それだからどうしてもお
前
(
まへ
)
さまの
事
(
こと
)
が
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
れないと
云
(
い
)
ふのだ。
201
エヘヽヽヽ』
202
セーリス姫
『オホヽヽヽ、
203
貴方
(
あなた
)
も
仲々
(
なかなか
)
隅
(
すみ
)
に
置
(
お
)
けない
悪人
(
あくにん
)
ですなア』
204
ユーフテス
『そりやさうでせうかい、
205
右守
(
うもり
)
さまのお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りになつて
居
(
を
)
る
位
(
くらゐ
)
だから。
206
エヽ
併
(
しか
)
し
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
左守
(
さもり
)
さまの
御
(
おん
)
息女
(
むすめ
)
、
207
表面
(
へうめん
)
は
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
として
日々
(
にちにち
)
お
勤
(
つと
)
めになつて
親密
(
しんみつ
)
さうにして
厶
(
ござ
)
るが、
208
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
は
犬
(
いぬ
)
と
猿
(
さる
)
、
209
丁度
(
ちやうど
)
仇
(
かたき
)
同士
(
どうし
)
のやうなもので
厶
(
ござ
)
いますなア。
210
こいつを
何
(
なん
)
とかして
都合
(
つがふ
)
よく
纒
(
まと
)
めたいものです。
211
さうでなければ、
212
私
(
わたし
)
と
貴女
(
あなた
)
との
恋
(
こひ
)
はいつ
迄
(
まで
)
も
完全
(
くわんぜん
)
に
維持
(
ゐぢ
)
することは
出来
(
でき
)
ますまい』
213
セーリス姫
『
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
の
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はります。
214
左守
(
さもり
)
、
215
右守
(
うもり
)
の
両役
(
りやうやく
)
はセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
両腕
(
りやううで
)
、
216
鳥
(
とり
)
で
云
(
い
)
はば
左右
(
さいう
)
の
翼
(
つばさ
)
、
217
どうしてそんな
暗闘
(
あんとう
)
が
厶
(
ござ
)
いませうぞ。
218
それは
何
(
なに
)
かのお
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひでは
厶
(
ござ
)
いますまいかなア』
219
ユーフテスは
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
220
ユーフテス
『イエイエどうしてどうして、
221
大変
(
たいへん
)
な
暗闘
(
あんとう
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
222
暗闘
(
あんとう
)
の
中
(
うち
)
はまだ
宜
(
よろ
)
しいが、
223
今日
(
こんにち
)
の
所
(
ところ
)
は
既
(
すで
)
に
表向
(
おもてむき
)
の
戦
(
たたか
)
ひになりかけて
居
(
を
)
りますよ』
224
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
態
(
わざ
)
と
驚
(
おどろ
)
いたやうな
顔付
(
かほつき
)
きで、
225
一寸
(
ちよつと
)
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
くし、
226
ユーフテスの
顔
(
かほ
)
を
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
めながら、
227
セーリス姫
『それは
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はりました。
228
果
(
はた
)
してそんな
事
(
こと
)
があつたら
妾
(
わたし
)
はどう
致
(
いた
)
しませうか。
229
貴方
(
あなた
)
との
恋
(
こひ
)
も
従
(
したが
)
つて
駄目
(
だめ
)
になりませう。
230
それが
残念
(
ざんねん
)
で
厶
(
ござ
)
います』
231
と
空涙
(
そらなみだ
)
を
零
(
こぼ
)
して
俯向
(
うつむ
)
く。
232
ユーフテス
『
訳
(
わけ
)
を
申
(
まを
)
さねば
分
(
わか
)
りますまいが、
233
貴女
(
あなた
)
のお
姉様
(
ねえさま
)
のヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が、
234
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御許婚
(
いひなづけ
)
であつた
事
(
こと
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
りです。
235
さうした
処
(
ところ
)
が、
236
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
は
余
(
あま
)
り
剛直
(
がうちよく
)
一方
(
いつぱう
)
のお
方
(
かた
)
で、
237
世上
(
せじやう
)
の
交際
(
かうさい
)
がまづいため、
238
当時
(
たうじ
)
勢
(
いきほひ
)
並
(
なら
)
ぶものなき
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
申上
(
まをしあ
)
げたり、
239
又
(
また
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
に
同情
(
どうじやう
)
をしたり
遊
(
あそ
)
ばすものだから、
240
大棟梁
(
だいとうりやう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
気勘
(
きかん
)
に
触
(
さは
)
り、
241
既
(
すで
)
にイルナの
国王
(
こくわう
)
を
召
(
め
)
し
上
(
あ
)
げらるる
所
(
ところ
)
であつたのを、
242
右守
(
うもり
)
のカールチン
様
(
さま
)
が
種々
(
いろいろ
)
と
弁解
(
べんかい
)
を
遊
(
あそ
)
ばし、
243
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
無事
(
ぶじ
)
に
治
(
をさ
)
まつたので
厶
(
ござ
)
います。
244
其
(
その
)
代
(
かは
)
りにヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
をテルマン
国
(
ごく
)
のシヤールといふ
毘舎
(
びしや
)
の
家
(
いへ
)
に
降
(
くだ
)
し、
245
カールチン
様
(
さま
)
のお
息女
(
むすめ
)
サマリー
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
妃
(
きさき
)
に
入
(
い
)
れて
漸
(
やうや
)
う
其
(
その
)
場
(
ば
)
のゴミを
濁
(
にご
)
し、
246
イルナの
国
(
くに
)
を
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
維持
(
ゐぢ
)
してお
出
(
い
)
でになつたのは、
247
隠
(
かく
)
れたる
忠臣
(
ちうしん
)
カールチン
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
います。
248
貴女
(
あなた
)
の
父上
(
ちちうへ
)
クーリンス
様
(
さま
)
は
左守
(
さもり
)
の
職
(
しよく
)
にありながら、
249
社交術
(
しやかうじゆつ
)
が
不味
(
まづ
)
いためにイルナの
国
(
くに
)
を
既
(
すで
)
に
棒
(
ぼう
)
に
振
(
ふ
)
らうとなさいました。
250
此
(
この
)
間
(
かん
)
の
消息
(
せうそく
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るものは、
251
此
(
この
)
ユーフテスしかありませぬよ。
252
定
(
さだ
)
めてセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
もカールチンは
不忠
(
ふちう
)
な
奴
(
やつ
)
、
253
自分
(
じぶん
)
の
娘
(
むすめ
)
を
妃
(
きさき
)
となし、
254
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
を
退
(
の
)
け、
255
遂
(
つひ
)
にはイルナの
国
(
くに
)
を
占領
(
せんりやう
)
しようとするものと
早合点
(
はやがつてん
)
してゐらつしやるさうですが、
256
如何
(
いか
)
に
隠
(
かく
)
れたる
忠臣
(
ちうしん
)
たるカールチン
様
(
さま
)
だとて、
257
サマリー
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
虐待
(
ぎやくたい
)
なされ、
258
それがため
御
(
ご
)
離縁
(
りえん
)
になるやうな
事
(
こと
)
があればそれこそ
大変
(
たいへん
)
です。
259
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
してでも、
260
カールチン
様
(
さま
)
は
反旗
(
はんき
)
を
翻
(
ひるがへ
)
し、
261
涙
(
なみだ
)
を
呑
(
の
)
んでセーラン
王
(
わう
)
を
国家
(
こくか
)
のために
放逐
(
はうちく
)
せなければならぬやうになつて
居
(
を
)
ります』
262
セーリス姫
『
何
(
なん
)
とマア
右守
(
うもり
)
様
(
さま
)
は、
263
そのやうな
立派
(
りつぱ
)
なお
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
いますかなア。
264
最前
(
さいぜん
)
貴方
(
あなた
)
は
大悪人
(
だいあくにん
)
の
右守
(
うもり
)
の
部下
(
ぶか
)
だからと
仰有
(
おつしや
)
つたでは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
265
ユーフテス
『そりや
悪人
(
あくにん
)
と
云
(
い
)
へば
悪人
(
あくにん
)
でせう。
266
一
(
ひと
)
つ
虫
(
むし
)
の
居所
(
ゐどころ
)
が
悪
(
わる
)
くなつたら、
267
どんな
事
(
こと
)
をなさるか
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
い
権幕
(
けんまく
)
ですから「
君
(
きみ
)
君
(
きみ
)
たらずんば
臣
(
しん
)
臣
(
しん
)
たるべからず」と
常々
(
つねづね
)
仰有
(
おつしや
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたから、
268
今度
(
こんど
)
サマリー
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
王
(
わう
)
様
(
さま
)
と
争
(
いさかひ
)
をしてお
帰
(
かへ
)
りになつたを
機
(
しほ
)
に、
269
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
早馬使
(
はやうまづかひ
)
を
立
(
た
)
てられましたから、
270
キツト
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
好
(
よ
)
い
事
(
こと
)
はありますまい。
271
併
(
しか
)
しながらこのユーフテスは、
272
カールチン
様
(
さま
)
の
秘密
(
ひみつ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
握
(
にぎ
)
つた
男
(
をとこ
)
、
273
私
(
わたし
)
の
首
(
くび
)
の
振
(
ふ
)
りやう
一
(
ひと
)
つで
大抵
(
たいてい
)
の
事
(
こと
)
は
結末
(
けつまつ
)
がつきますから、
274
貴女
(
あなた
)
と
斯
(
か
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
は、
275
秘密
(
ひみつ
)
さへ
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さるなら、
276
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
相談
(
さうだん
)
し
合
(
あ
)
つて、
277
貴女
(
あなた
)
のお
願
(
ねが
)
ひとならばセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
をお
助
(
たす
)
けしないものでもありませぬ。
278
又
(
また
)
クーリンス
様
(
さま
)
をお
助
(
たす
)
けするもしないも、
279
皆
(
みな
)
此
(
この
)
ユーフテスの
手
(
て
)
に
握
(
にぎ
)
つて
居
(
を
)
る
絶対
(
ぜつたい
)
権利
(
けんり
)
でありますからなア』
280
と
稍
(
やや
)
傲慢気
(
がうまんげ
)
に
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てるを、
281
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
態
(
わざ
)
と
心配気
(
しんぱいげ
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
282
セーリス姫
『
実
(
じつ
)
を
申
(
まを
)
せば、
283
妾
(
わたし
)
だつて
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
しあまり
深
(
ふか
)
い
恩顧
(
おんこ
)
を
受
(
う
)
けたと
云
(
い
)
ふでもなし、
284
貴方
(
あなた
)
とかうして
気楽
(
きらく
)
に
暮
(
くら
)
さるれば、
285
これに
越
(
こ
)
したる
喜
(
よろこ
)
びは
厶
(
ござ
)
いませぬワ』
286
ユーフテス
『
姫
(
ひめ
)
がさういふお
心
(
こころ
)
なら、
287
私
(
わたし
)
は
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
包
(
つつ
)
まずに
云
(
い
)
ひませう。
288
実
(
じつ
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
より、
289
幾度
(
いくたび
)
も
密使
(
みつし
)
が
参
(
まゐ
)
り、
290
カールチン
様
(
さま
)
に
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
の
国王
(
こくわう
)
となれとの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
291
それについては
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
妻子
(
さいし
)
が
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
となり、
292
バラモン
教
(
けう
)
の
根底
(
こんてい
)
を
攪乱
(
かくらん
)
すべく
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
の
本拠
(
ほんきよ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
此方
(
こなた
)
に
来
(
く
)
るとの
事
(
こと
)
で、
293
彼
(
かれ
)
を
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
引
(
ひ
)
き
捕
(
とら
)
へよとの
御
(
ご
)
厳命
(
げんめい
)
、
294
それさへ
早
(
はや
)
く
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れば、
295
カールチン
様
(
さま
)
は
忽
(
たちま
)
ちイルナの
国王
(
こくわう
)
とおなり
遊
(
あそ
)
ばし、
296
ユーフテスは
直
(
ただち
)
に
左守
(
さもり
)
に
抜擢
(
ばつてき
)
される
事
(
こと
)
に
極
(
きま
)
つて
居
(
を
)
ります。
297
これは
大
(
だい
)
の
秘密
(
ひみつ
)
ですから
誰
(
だれ
)
にも
言
(
い
)
つてはなりませぬぞや』
298
セーリス姫
『それは
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
299
仮令
(
たとへ
)
どうならうと
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
出世
(
しゆつせ
)
さへ
出来
(
でき
)
れば、
300
妾
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
の
女房
(
にようばう
)
、
301
麻
(
あさ
)
につれ
添
(
そ
)
う
蓬
(
よもぎ
)
とやら、
302
一緒
(
いつしよ
)
に
権力
(
けんりよく
)
がのび
行
(
ゆ
)
くのですから、
303
どうぞ
御
(
ご
)
成功
(
せいこう
)
を
望
(
のぞ
)
みます』
304
ユーフテス
『イヤ、
305
それ
聞
(
き
)
いて
私
(
わたし
)
も
安心
(
あんしん
)
を
致
(
いた
)
しました。
306
それならセーリス
姫
(
ひめ
)
殿
(
どの
)
、
307
キツト
私
(
わたし
)
の
妻
(
つま
)
ですなア。
308
必
(
かなら
)
ず
変心
(
へんしん
)
して
下
(
くだ
)
さるなや』
309
セーリス姫
『
女
(
をんな
)
の
一心
(
いつしん
)
岩
(
いは
)
でも
射貫
(
いぬ
)
く、
310
妾
(
わたし
)
は
決
(
けつ
)
して
変
(
かは
)
りませぬ。
311
貴方
(
あなた
)
こそ
左守
(
さもり
)
とおなり
遊
(
あそ
)
ばしたら
妾
(
わたし
)
をお
捨
(
す
)
てなさるのでせう。
312
それが
心配
(
しんぱい
)
でなりませぬわ』
313
ユーフテス
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
314
左様
(
さやう
)
な
心配
(
しんぱい
)
はして
下
(
くだ
)
さるな。
315
二世
(
にせ
)
三世
(
さんせ
)
は
愚
(
おろ
)
か
五百世
(
いほせ
)
まで
誠
(
まこと
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
で
厶
(
ござ
)
る』
316
セーリス姫
『それを
承
(
うけたま
)
はつてヤツと
安心
(
あんしん
)
を
致
(
いた
)
しました。
317
併
(
しか
)
しながら
人目
(
ひとめ
)
の
関
(
せき
)
も
厶
(
ござ
)
りますれば、
318
今日
(
けふ
)
はこれでお
暇
(
いとま
)
を
致
(
いた
)
します。
319
どうぞ
女
(
をんな
)
が
度々
(
たびたび
)
参
(
まゐ
)
りましては
目的
(
もくてき
)
の
妨
(
さまた
)
げになりますから、
320
城内
(
じやうない
)
でお
目
(
め
)
にかかりませう』
321
ユーフテス
『あゝ
惜
(
を
)
しい
別
(
わか
)
れだが
二人
(
ふたり
)
の
将来
(
しやうらい
)
の
為
(
た
)
めだ。
322
それならここで
別
(
わか
)
れませう』
323
セーリス姫
『
明日
(
あす
)
御
(
ご
)
登城
(
とじやう
)
になりましたら、
324
どうぞ
妾
(
わたし
)
の
居間
(
ゐま
)
をお
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいませ。
325
併
(
しか
)
し
人目
(
ひとめ
)
もありますから、
326
態
(
わざ
)
とに
素気
(
すげ
)
なう
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますから、
327
必
(
かなら
)
ずお
気
(
き
)
に
触
(
さ
)
へて
下
(
くだ
)
さいますなや』
328
ユーフテス
『
口
(
くち
)
で
悪
(
わる
)
云
(
い
)
うて
心
(
こころ
)
でほめて
蔭
(
かげ
)
の
惚気
(
のろけ
)
が
聞
(
き
)
かしたい……と
云
(
い
)
ふ
筆法
(
ひつぱふ
)
ですな、
329
アハヽヽヽ』
330
セーリス姫
『オホヽヽヽ
左様
(
さやう
)
ならばお
暇
(
いとま
)
致
(
いた
)
します』
331
と
両人
(
りやうにん
)
は
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
堅
(
かた
)
く
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り
合
(
あ
)
ひ、
332
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
見合
(
みあ
)
はし、
333
残
(
のこ
)
り
惜
(
を
)
しげに
左右
(
さいう
)
に
袂
(
たもと
)
を
分
(
わか
)
てり。
334
(
大正一一・一一・一〇
旧九・二二
加藤明子
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