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第75巻(寅の巻)
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第41巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 天空地平
01 入那の野辺
〔1105〕
02 入那城
〔1106〕
03 偽恋
〔1107〕
04 右守館
〔1108〕
05 急告
〔1109〕
06 誤解
〔1110〕
07 忍術使
〔1111〕
第2篇 神機赫灼
08 無理往生
〔1112〕
09 蓮の川辺
〔1113〕
10 狼の岩窟
〔1114〕
11 麓の邂逅
〔1115〕
12 都入り
〔1116〕
第3篇 北光神助
13 夜の駒
〔1117〕
14 慈訓
〔1118〕
15 難問題
〔1119〕
16 三番叟
〔1120〕
第4篇 神出鬼没
17 宵企み
〔1121〕
18 替へ玉
〔1122〕
19 当て飲み
〔1123〕
20 誘惑
〔1124〕
21 長舌
〔1125〕
余白歌
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第二〇章
誘惑
(
いうわく
)
〔一一二四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
篇:
第4篇 神出鬼没
よみ(新仮名遣い):
しんしゅつきぼつ
章:
第20章 誘惑
よみ(新仮名遣い):
ゆうわく
通し章番号:
1124
口述日:
1922(大正11)年11月12日(旧09月24日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ユーフテスはただちにセーリス姫に、大黒主からの援軍が五百騎やってくることを注進した。黄金姫、清照姫、セーリス姫の三人の密談により、ヤスダラ姫に化けた清照姫が右守と会談し、その五百騎を食い止める算段をすることになった。
ユーフテスは策を授けられ、右守の館に帰っていく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-17 00:07:35
OBC :
rm4120
愛善世界社版:
281頁
八幡書店版:
第7輯 634頁
修補版:
校定版:
294頁
普及版:
134頁
初版:
ページ備考:
001
セーリス
姫
(
ひめ
)
はイルナ
城
(
じやう
)
の
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
一弦琴
(
いちげんきん
)
を
弾
(
だん
)
じて
居
(
ゐ
)
た。
002
セーリス姫
『
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とを
造
(
つく
)
らしし
003
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
は
004
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
人々
(
ひとびと
)
の
005
誠
(
まこと
)
の
親
(
おや
)
にましまして
006
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
神徳
(
しんとく
)
を
007
遍
(
あまね
)
く
下
(
くだ
)
し
給
(
たま
)
ふなり
008
イルナの
城
(
しろ
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
009
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
010
曲鬼
(
まがおに
)
共
(
ども
)
の
蔓
(
はびこ
)
りて
011
首陀
(
しゆだ
)
の
姓
(
せい
)
より
生
(
うま
)
れたる
012
右守司
(
うもりつかさ
)
のカールチン
013
鰻登
(
うなぎのぼ
)
りに
登
(
のぼ
)
りつめ
014
驕
(
おご
)
り
傲
(
たか
)
ぶり
今
(
いま
)
ははや
015
セーラン
王
(
わう
)
の
御位
(
みくらゐ
)
を
016
狽
(
ねら
)
ひ
居
(
を
)
るこそうたてけれ
017
イルナの
城
(
しろ
)
は
風前
(
ふうぜん
)
の
018
今
(
いま
)
灯火
(
ともしび
)
となりし
時
(
とき
)
019
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
の
現
(
あ
)
れまして
020
傾
(
かたむ
)
く
城
(
しろ
)
を
立直
(
たてなほ
)
し
021
セーラン
王
(
わう
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
022
安
(
やす
)
く
守
(
まも
)
らせたまひつつ
023
魔神
(
まがみ
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
鉄鎚
(
てつつゐ
)
を
024
下
(
くだ
)
させ
給
(
たま
)
ふ
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
025
あゝ
面白
(
おもしろ
)
し
面白
(
おもしろ
)
し
026
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
の
妹
(
いもうと
)
と
027
生
(
うま
)
れあひたる
吾
(
われ
)
こそは
028
イルナの
城
(
しろ
)
の
太柱
(
ふとばしら
)
029
非道
(
ひだう
)
の
事
(
こと
)
とは
知
(
し
)
りながら
030
魔神
(
まがみ
)
に
従
(
したが
)
ふユーフテス
031
言葉
(
ことば
)
の
先
(
さき
)
に
操
(
あやつ
)
りつ
032
醜神
(
しこがみ
)
共
(
ども
)
の
企
(
たく
)
らみを
033
洩
(
も
)
れなく
落
(
お
)
ちなく
探
(
さぐ
)
らせつ
034
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
君
(
きみ
)
の
為
(
ため
)
035
世人
(
よびと
)
のために
村肝
(
むらきも
)
の
036
心
(
こころ
)
痛
(
いた
)
むる
苦
(
くる
)
しさよ
037
さはさりながら
天地
(
あめつち
)
の
038
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
真心
(
まごころ
)
を
039
清
(
きよ
)
き
御
(
おん
)
目
(
め
)
に
臠
(
みそな
)
はし
040
必
(
かなら
)
ず
許
(
ゆる
)
したまふべし
041
佯
(
いつは
)
られたるユーフテス
042
彼
(
かれ
)
が
心
(
こころ
)
の
憐
(
あは
)
れさを
043
妾
(
わらは
)
は
知
(
し
)
らぬにあらねども
044
大事
(
だいじ
)
の
前
(
まへ
)
の
一小事
(
いちせうじ
)
045
セーラン
王
(
わう
)
の
勅
(
みことのり
)
046
背
(
そむ
)
かむ
由
(
よし
)
もないぢやくり
047
涙
(
なみだ
)
を
呑
(
の
)
みて
荒男
(
あらをとこ
)
048
操
(
あやつ
)
り
来
(
きた
)
る
苦
(
くる
)
しさよ
049
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
050
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
051
善神
(
ぜんしん
)
邪神
(
じやしん
)
を
別
(
わ
)
けたまふ
052
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
053
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
054
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
055
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
056
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
057
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
教
(
をしへ
)
058
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
心根
(
こころね
)
を
059
憐
(
あは
)
れみ
給
(
たま
)
ひて
逸早
(
いちはや
)
く
060
セーラン
王
(
わう
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
061
守
(
まも
)
らせたまへ
惟神
(
かむながら
)
062
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
大神
(
おほかみ
)
の
063
御前
(
みまへ
)
に
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる
064
御前
(
みまへ
)
に
慎
(
つつ
)
しみ
願
(
ね
)
ぎまつる』
065
と
歌
(
うた
)
を
終
(
をは
)
り、
066
合掌
(
がつしやう
)
して
声
(
こゑ
)
も
静
(
しづか
)
に「
国治立
(
くにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
、
067
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へ
幸倍
(
さちはへ
)
たまへ」と
祈
(
いの
)
る
折
(
をり
)
しも、
068
足音
(
あしおと
)
忍
(
しの
)
ばせながら
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
るはユーフテスである。
069
セーリス
姫
(
ひめ
)
はユーフテスの
慌
(
あわただ
)
しく
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
りしを
見
(
み
)
て、
070
言葉
(
ことば
)
急
(
せは
)
しく、
071
セーリス姫
『ヤア
其方
(
そなた
)
はなつかしきユーフテス
殿
(
どの
)
、
072
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いますかなア』
073
ユーフテス
『ハイ、
074
俄
(
にはか
)
に
申上
(
まをしあ
)
げたき
事
(
こと
)
があつて
右守
(
うもり
)
の
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
をつくろひ
参
(
まゐ
)
りました。
075
いよいよ
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
が
五百騎
(
ごひやくき
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
派遣
(
はけん
)
し、
076
右守
(
うもり
)
と
力
(
ちから
)
を
合
(
あは
)
せ、
077
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
退隠
(
たいいん
)
させむとの
計略
(
けいりやく
)
が
整
(
ととの
)
ひました。
078
何
(
なん
)
とか
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
さねばなりますまい』
079
セーリス姫
『
其
(
その
)
軍隊
(
ぐんたい
)
は
何時
(
いつ
)
頃
(
ごろ
)
此処
(
ここ
)
へ
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せて
参
(
まゐ
)
りますか、
080
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
りませうなア』
081
ユーフテス
『あまり
長
(
なが
)
くはありますまい。
082
カルマタ
国
(
こく
)
へ
派遣
(
はけん
)
された
大足別
(
おほだるわけ
)
の
所
(
ところ
)
へ
参
(
まゐ
)
る
使者
(
ししや
)
が
往
(
ゆ
)
きがけに
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
信書
(
しんしよ
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
083
右守
(
うもり
)
の
館
(
やかた
)
へ
放
(
はふ
)
り
込
(
こ
)
んで
参
(
まゐ
)
りました。
084
右守
(
うもり
)
もやや
安心
(
あんしん
)
して、
085
もはや
軍隊
(
ぐんたい
)
の
必要
(
ひつえう
)
がないから、
086
お
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
さうかと
迄
(
まで
)
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ました
処
(
ところ
)
へ、
087
五百騎
(
ごひやくき
)
の
応援軍
(
おうゑんぐん
)
を
送
(
おく
)
るとの
書面
(
しよめん
)
を
頂
(
いただ
)
き、
088
俄
(
にはか
)
に
鼻息
(
はないき
)
が
荒
(
あら
)
くなつて
参
(
まゐ
)
りました。
089
それ
故
(
ゆゑ
)
取
(
と
)
るものも
取
(
と
)
りあへず
貴女
(
あなた
)
迄
(
まで
)
報告
(
はうこく
)
にやつて
来
(
き
)
ました』
090
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
些
(
ちつと
)
も
騒
(
さわ
)
がず
微笑
(
びせう
)
を
浮
(
うか
)
べながら、
091
セーリス姫
『それは
段々
(
だんだん
)
と
面白
(
おもしろ
)
くなつて
来
(
き
)
ましたなア。
092
どちらになつても、
093
私
(
わたし
)
と
貴方
(
あなた
)
の
結婚
(
けつこん
)
さへ
都合
(
つがふ
)
よく
出来
(
でき
)
れば
好
(
い
)
いぢやありませぬか。
094
オホヽヽヽ』
095
ユーフテス
『そりやさうですが、
096
矢張
(
やつぱり
)
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
押
(
お
)
し
込
(
こ
)
まれなさつては
貴女
(
あなた
)
だつてあまり
都合
(
つがふ
)
はよくありますまい。
097
従
(
したが
)
つて
私
(
わたし
)
だつて
羽振
(
はぶ
)
りが
利
(
き
)
きませぬからなア』
098
セーリス姫
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
に
一
(
ひと
)
つ
申上
(
まをしあ
)
げて
来
(
き
)
ますから、
099
貴方
(
あなた
)
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい』
100
とツと
立
(
た
)
つて
黄金姫
(
わうごんひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
101
ユーフテスが
報告
(
はうこく
)
の
顛末
(
てんまつ
)
を
残
(
のこ
)
らず
物語
(
ものがた
)
つた。
102
茲
(
ここ
)
に
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
103
セーリス
姫
(
ひめ
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
鼎坐
(
ていざ
)
して、
104
ひそひそ
対抗策
(
たいかうさく
)
を
打
(
う
)
ち
合
(
あは
)
す
事
(
こと
)
となつた。
105
黄金姫
『
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
、
106
早
(
はや
)
く
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
るさうだが、
107
何
(
なん
)
とかこれを
阻止
(
そし
)
する
考
(
かんが
)
へはあるまいかなア。
108
清照姫
(
きよてるひめ
)
』
109
と
云
(
い
)
ひつつ
清照姫
(
きよてるひめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
覗
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
む。
110
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
微笑
(
びせう
)
しながら、
111
清照姫
『お
母
(
かあ
)
さま、
112
そりや
何
(
なん
)
でもない
事
(
こと
)
ですわ。
113
私
(
わたし
)
が
其
(
その
)
五百騎
(
ごひやくき
)
を
喰
(
く
)
ひ
止
(
と
)
めて
見
(
み
)
ませうか』
114
黄金姫
『それは
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
だが、
115
其方
(
そなた
)
一人
(
ひとり
)
でどうして
喰
(
く
)
ひ
止
(
と
)
める
考
(
かんが
)
へですか』
116
清照姫
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
右守
(
うもり
)
を
此処
(
ここ
)
へ
呼
(
よ
)
んで
下
(
くだ
)
さい。
117
さうして
私
(
わたし
)
と
右守
(
うもり
)
と
只
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
、
118
一室
(
いつしつ
)
に
入
(
い
)
つて
密談
(
みつだん
)
を
遂
(
と
)
げ、
119
うまく
右守
(
うもり
)
より
喰
(
く
)
ひ
止
(
と
)
めさして
見
(
み
)
せませう』
120
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
肯
(
うなづ
)
きながら、
121
黄金姫
『ホヽヽヽヽ
清
(
きよ
)
さま、
122
お
前
(
まへ
)
の
美貌
(
びばう
)
と
弁舌
(
べんぜつ
)
とを
応用
(
おうよう
)
すれば
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
もありますまい。
123
どうぞ
確
(
しつか
)
りやつて
下
(
くだ
)
さいや』
124
清照姫
『
三寸
(
さんずん
)
の
舌鋒
(
ぜつぽう
)
をもつて、
125
五百
(
ごひやく
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
逐
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らすのも
亦
(
また
)
愉快
(
ゆくわい
)
でせう、
126
オホヽヽヽ』
127
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
喜
(
よろこ
)
ばしげに、
128
セーリス姫
『それならこれからユーフテスに
命
(
めい
)
じ、
129
右守
(
うもり
)
を
当城
(
たうじやう
)
へ
呼
(
よ
)
び
寄
(
よ
)
せませうか』
130
清照
(
きよてる
)
『どうぞ
早
(
はや
)
く、
131
其
(
その
)
手続
(
てつづ
)
きをして
下
(
くだ
)
さい』
132
黄金姫
『こんな
時
(
とき
)
にはお
転婆娘
(
てんばむすめ
)
も
亦
(
また
)
必要
(
ひつえう
)
だ。
133
清
(
きよ
)
さまも
随分
(
ずゐぶん
)
こんな
事
(
こと
)
には
経験
(
けいけん
)
がつんで
居
(
ゐ
)
るからなア。
134
オホヽヽヽ』
135
清照姫
『お
母
(
かあ
)
さま、
136
冷
(
ひや
)
かして
下
(
くだ
)
さいますな。
137
何
(
なん
)
ぼ
秋
(
あき
)
だと
云
(
い
)
つても
余
(
あんま
)
りですわ』
138
黄金姫
『セーリス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
139
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
頼
(
たの
)
みますよ』
140
セーリス
姫
(
ひめ
)
は「アイ」と
答
(
こた
)
へて
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
下
(
さが
)
り、
141
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
待
(
ま
)
たせて
置
(
お
)
いたユーフテスの
耳
(
みみ
)
に
口
(
くち
)
を
寄
(
よ
)
せ
何事
(
なにごと
)
をか
囁
(
ささや
)
いた。
142
ユーフテスは
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
み
顔
(
がほ
)
で、
143
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で
表
(
おもて
)
に
出
(
い
)
で、
144
大地
(
だいち
)
をどんどん
威喝
(
ゐかつ
)
させながら、
145
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
渡
(
わた
)
る
木枯
(
こがらし
)
の
風
(
かぜ
)
、
146
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく
笛
(
ふえ
)
を
吹
(
ふ
)
いて
通
(
とほ
)
る
城
(
しろ
)
の
馬場
(
ばば
)
を
尻引
(
しりひつ
)
からげ、
147
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
く
右守
(
うもり
)
の
館
(
やかた
)
をさして
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
148
(
大正一一・一一・一二
旧九・二四
加藤明子
録)
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