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第43巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 狂風怪猿
01 烈風
〔1152〕
02 懐谷
〔1153〕
03 失明
〔1154〕
04 玉眼開
〔1155〕
05 感謝歌
〔1156〕
第2篇 月下の古祠
06 祠前
〔1157〕
07 森議
〔1158〕
08 噴飯
〔1159〕
09 輸入品
〔1160〕
第3篇 河鹿の霊嵐
10 夜の昼
〔1161〕
11 帰馬
〔1162〕
12 双遇
〔1163〕
第4篇 愛縁義情
13 軍談
〔1164〕
14 忍び涙
〔1165〕
15 温愛
〔1166〕
第5篇 清松懐春
16 鰌鍋
〔1167〕
17 反歌
〔1168〕
18 石室
〔1169〕
余白歌
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第43巻
> 第1篇 狂風怪猿 > 第2章 懐谷
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第二章
懐谷
(
ふところだに
)
〔一一五三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻
篇:
第1篇 狂風怪猿
よみ(新仮名遣い):
きょうふうかいえん
章:
第2章 懐谷
よみ(新仮名遣い):
ふところだに
通し章番号:
1153
口述日:
1922(大正11)年11月26日(旧10月8日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉国別一行は烈風が静まったのであたりを見れば、すでに闇の帳に包まれていた。度胸を定めて道端にみのを布き、夜が明けるのを待つことにした。
ふと目を覚ますとほんのりあたりが明るくなっている。玉国別は、正しい言霊を使うよう、一同を諭した。一同は黒雲が風を運んでくるのを見て、急坂を下って日当たりがよい谷間へ着いた。
河鹿峠に群生するたくさんの尾長猿は暴風の襲来を前知して、この懐谷を避難所として幾千とも知れず集まってきた。玉国別一行の姿を見て、猿たちは周囲を取り巻いている。
伊太公は猿たちに言霊を聞かせてやろうと宣伝歌を歌い始めた。調子はずれな宣伝歌に、猿たちはじりじりと輪を狭めてくる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-01-03 04:34:40
OBC :
rm4302
愛善世界社版:
21頁
八幡書店版:
第8輯 36頁
修補版:
校定版:
22頁
普及版:
8頁
初版:
ページ備考:
001
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
岩石
(
がんせき
)
も
002
草木
(
くさき
)
も
残
(
のこ
)
らず
飛
(
と
)
び
散
(
ち
)
れと
003
云
(
い
)
はむばかりに
吹
(
ふ
)
きまくる
004
大山嵐
(
おほやまあらし
)
に
進
(
すす
)
みかね
005
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
006
道
(
みち
)
の
傍
(
かたへ
)
の
木々
(
きぎ
)
の
根
(
ね
)
を
007
シツカと
掴
(
つか
)
み
打伏
(
うちふ
)
して
008
風
(
かぜ
)
の
過
(
す
)
ぐるを
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
たり
009
一時
(
ひととき
)
二時
(
ふたとき
)
はや
三時
(
みとき
)
010
待
(
ま
)
てども
止
(
や
)
まぬ
暴風
(
あらかぜ
)
は
011
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
の
吼
(
ほ
)
ゆるごと
012
呻
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて
吹
(
ふ
)
きつける
013
日
(
ひ
)
は
西山
(
せいざん
)
に
傾
(
かたむ
)
いて
014
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
015
茲
(
ここ
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
一行
(
いつかう
)
は
016
施
(
ほどこ
)
す
術
(
すべ
)
もなきままに
017
是非
(
ぜひ
)
なく
一夜
(
ひとよ
)
を
明
(
あ
)
かしけり
018
丑満
(
うしみつ
)
過
(
す
)
ぐる
時
(
とき
)
もあれ
019
さしもに
烈
(
はげ
)
しき
科戸辺
(
しなどべ
)
の
020
神
(
かみ
)
は
漸
(
やうや
)
く
休戦
(
きうせん
)
の
021
喇叭
(
ラツバ
)
を
吹
(
ふ
)
いて
鎮
(
しづ
)
まりぬ
022
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
023
初
(
はじ
)
めて
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し
024
心
(
こころ
)
を
定
(
さだ
)
めて
夜明
(
よあ
)
けまで
025
やすやす
眠
(
ねむ
)
りに
就
(
つ
)
きにける。
026
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は
漸
(
やうや
)
く
烈風
(
れつぷう
)
の
静
(
しづ
)
まりしに
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
で
下
(
お
)
ろし
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば、
027
真黒
(
しんこく
)
の
暗
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
は
眼前
(
がんぜん
)
迄
(
まで
)
濃
(
こまやか
)
に
包
(
つつ
)
んでゐる。
028
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
度胸
(
どきよう
)
を
定
(
さだ
)
め
道側
(
みちばた
)
に
蓑
(
みの
)
を
布
(
し
)
き
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるを
待
(
ま
)
つこととした。
029
不図
(
ふと
)
目
(
め
)
を
覚
(
さま
)
せばホンノリとそこら
中
(
ぢう
)
が
明
(
あかる
)
くなつて
居
(
ゐ
)
る。
030
道公
(
みちこう
)
は
目
(
め
)
を
擦
(
こす
)
り
乍
(
なが
)
ら、
031
道公
『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
032
どうやら
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けたやうです。
033
昨日
(
さくじつ
)
は
肝腎
(
かんじん
)
の
門出
(
かどで
)
の
日
(
ひ
)
であるにも
拘
(
かか
)
はらず、
034
暴風
(
ばうふう
)
襲来
(
しふらい
)
で
大変
(
たいへん
)
に
吾々
(
われわれ
)
を
面喰
(
めんくら
)
はせたぢやありませぬか。
035
あんな
悪日
(
あくび
)
は
何卒
(
どうぞ
)
続
(
つづ
)
かない
様
(
やう
)
にして
欲
(
ほ
)
しいものですな。
036
今日
(
けふ
)
は
新
(
あたら
)
しい
日天
(
につてん
)
様
(
さま
)
がお
出
(
で
)
ましになつたら
一同
(
いちどう
)
が
充分
(
じゆうぶん
)
にお
願
(
ねがひ
)
を
致
(
いた
)
しませうか』
037
玉国別
(
たまくにわけ
)
『どうやら
今日
(
けふ
)
も
風模様
(
かぜもやう
)
らしい。
038
あんまり、
039
仕様
(
しやう
)
もない
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てるものだから、
040
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
のお
戒
(
いまし
)
めに
会
(
あ
)
うたのだ。
041
これからは
各自
(
めいめい
)
に
口
(
くち
)
を
慎
(
つつし
)
まねばならないぞ。
042
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さちは
)
ふ
国
(
くに
)
だから、
043
天地
(
てんち
)
が
曇
(
くも
)
るのも、
044
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くのも、
045
大洪水
(
だいこうずゐ
)
が
出
(
で
)
るのも、
046
みんな
人間
(
にんげん
)
共
(
ども
)
の
言霊
(
ことたま
)
が
悪
(
わる
)
いからだ。
047
吾々
(
われわれ
)
は
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
て、
048
あらゆる
枉津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
す
大使命
(
だいしめい
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだから、
049
仮
(
かり
)
にも
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
はないが
宜
(
い
)
いぞ』
050
道公
(
みちこう
)
『さうですな、
051
伊太公
(
いたこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
052
しようもない
脱線
(
だつせん
)
だらけの
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
得意
(
とくい
)
らしく
大風
(
おほかぜ
)
の
向
(
むか
)
ふを
張
(
は
)
つて
吹立
(
ふきた
)
てよるものだから
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
つて、
053
門出
(
かどで
)
の
血祭
(
ちまつ
)
りに
向脛
(
むかふづね
)
を
擦
(
す
)
り
剥
(
む
)
き、
054
赤
(
あか
)
い
血
(
ち
)
を
出
(
だ
)
したのです。
055
大体
(
だいたい
)
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れとか
三人
(
さんにん
)
連
(
づ
)
れとかなら
宜
(
よ
)
かつたでせうが、
056
一行
(
いつかう
)
四人
(
しにん
)
連
(
づ
)
れと
云
(
い
)
ふのですから、
057
あまり
縁起
(
えんぎ
)
の
宜
(
よ
)
い
事
(
こと
)
もありませぬわい』
058
玉国別
(
たまくにわけ
)
『コリヤコリヤ
道公
(
みちこう
)
、
059
お
前
(
まへ
)
こそ
言霊
(
ことたま
)
が
悪
(
わる
)
いぢやないか、
060
四
(
し
)
人
(
にん
)
なんて、
061
しようもない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふな、
062
何是
(
なぜ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
と
云
(
い
)
はぬのだ』
063
道公
(
みちこう
)
『
四
(
よ
)
人
(
にん
)
と
云
(
い
)
へば
余
(
あま
)
つた
人
(
ひと
)
の
様
(
やう
)
で
尚更
(
なほさら
)
縁起
(
えんぎ
)
が
悪
(
わる
)
いぢやありませぬか。
064
私
(
わたし
)
だつて
決
(
けつ
)
して
余
(
あま
)
り
人間
(
にんげん
)
ぢやありませぬ。
065
やつぱり
一人前
(
いちにんまへ
)
の
裸百貫
(
はだかひやくくわん
)
の
色男
(
いろをとこ
)
ですからな』
066
玉国別
(
たまくにわけ
)
『あれを
見
(
み
)
よ、
067
丑寅
(
うしとら
)
の
空
(
そら
)
に
怪
(
あや
)
しい
黒雲
(
くろくも
)
が
出
(
で
)
た、
068
あれは
風玉
(
かぜだま
)
だ。
069
あいつが
一
(
ひと
)
つ
吹
(
ふ
)
きつけて
来
(
こ
)
ようものなら
昨夜
(
さくや
)
の
烈風
(
れつぷう
)
どころぢやない。
070
早
(
はや
)
く
行進
(
かうしん
)
を
続
(
つづ
)
けて
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
懐谷
(
ふところだに
)
まで
到着
(
たうちやく
)
し、
071
暫
(
しばら
)
く
避難
(
ひなん
)
をしようではないか。
072
サア
行
(
ゆ
)
かう』
073
とスツクと
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
慌
(
あわただ
)
しく
蓑
(
みの
)
を
着
(
ちやく
)
し
笠
(
かさ
)
を
手
(
て
)
にシツカと
握
(
にぎ
)
り
杖
(
つゑ
)
をつきながら、
074
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
りつつ、
075
懐
(
ふところ
)
より
麺麭
(
パン
)
を
出
(
だ
)
してかじりつつ
行
(
ゆ
)
く。
076
漸
(
やうや
)
くにして
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
下
(
くだ
)
り
坂
(
ざか
)
の
中
(
なか
)
程
(
ほど
)
の
懐谷
(
ふところだに
)
と
云
(
い
)
ふ
南向
(
みなみむ
)
きの、
077
こんもりとした
日当
(
ひあた
)
りのよき
谷間
(
たにあひ
)
へ
着
(
つ
)
いた。
078
此
(
この
)
箇所
(
かしよ
)
は
山道
(
やまみち
)
の
一丁
(
いつちやう
)
ばかり
上
(
かみ
)
である。
079
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
到着
(
たうちやく
)
し
蓑
(
みの
)
を
敷
(
し
)
き
風
(
かぜ
)
の
通過
(
つうくわ
)
するのを
待
(
ま
)
つ
事
(
こと
)
とした。
080
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
に
群棲
(
ぐんせい
)
する
沢山
(
たくさん
)
の
尾長猿
(
をながざる
)
は
暴風
(
ばうふう
)
の
襲来
(
しふらい
)
を
前知
(
ぜんち
)
して
何
(
いづ
)
れも
此
(
この
)
懐谷
(
ふところだに
)
を
屈竟
(
くつきやう
)
の
避難所
(
ひなんじよ
)
として
幾千
(
いくせん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
程
(
ほど
)
集
(
あつま
)
つて
来
(
き
)
た。
081
さうして
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
驚
(
おどろ
)
いたと
見
(
み
)
え、
082
四五間
(
しごけん
)
ばかり
近寄
(
ちかよ
)
り
周囲
(
ぐるり
)
をアトラス
形
(
がた
)
に
取
(
とり
)
まいてキヤツキヤツと
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
き
牙
(
きば
)
をならし
啼
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
んでゐる。
083
道公
(
みちこう
)
は
数千匹
(
すうせんびき
)
の
猿
(
さる
)
に
囲
(
かこ
)
まれたのを
見
(
み
)
て、
084
道公
『
何
(
なん
)
とマア
沢山
(
たくさん
)
な
庚申
(
かうしん
)
の
眷族
(
けんぞく
)
だのう。
085
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
人間
(
にんげん
)
に
能
(
よ
)
う
似
(
に
)
た
姿
(
すがた
)
をして
赤
(
あか
)
い
顔
(
かほ
)
で
吾々
(
われわれ
)
を
護衛
(
ごゑい
)
してゐる。
086
此奴
(
こいつ
)
もやつぱり
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
が
恐
(
こは
)
いと
見
(
み
)
えて
此処
(
ここ
)
へ
避難
(
ひなん
)
して
来
(
き
)
たと
見
(
み
)
えるわい。
087
庚申
(
かうしん
)
の
眷族
(
けんぞく
)
は
猿
(
さる
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが
庚申
(
かうしん
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
風
(
かぜ
)
を
引
(
ひ
)
かす
神
(
かみ
)
だ。
088
庚申
(
かうしん
)
の
晩
(
ばん
)
に
風邪
(
ふうじや
)
に
罹
(
かか
)
ると
次
(
つぎ
)
の
庚申
(
かうしん
)
の
日
(
ひ
)
まで
本復
(
ほんぷく
)
せぬと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
089
ヤツパリ
眷族
(
けんぞく
)
だけで
風
(
かぜ
)
に
恐
(
おそ
)
れて
此処
(
ここ
)
まで
陣
(
ぢん
)
を
引
(
ひ
)
いたのだなア。
090
エー、
091
キヤツキヤツと
八釜
(
やかま
)
しう
吐
(
ぬ
)
かすな、
092
耳
(
みみ
)
が
聾
(
つんぼ
)
になつて
了
(
しま
)
ふわい。
093
亡国
(
ばうこく
)
的
(
てき
)
の
悲調
(
ひてう
)
を
帯
(
お
)
びた
哀音
(
あいおん
)
を
共唱
(
きようしやう
)
しよつてアタ
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い。
094
むかつく
代物
(
しろもの
)
だなア』
095
玉国別
(
たまくにわけ
)
『アハヽヽヽまたしても、
096
はつしやぎ
出
(
だ
)
したな。
097
アヽ
困
(
こま
)
つた
男
(
をとこ
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たものだ。
098
おい
道公
(
みちこう
)
、
099
お
前
(
まへ
)
の
口
(
くち
)
は
身体
(
からだ
)
より
三千
(
さんぜん
)
年
(
ねん
)
ばかり
前
(
さき
)
へ
生
(
うま
)
れてると
見
(
み
)
えるな』
100
道公
(
みちこう
)
『
三千年
(
さんぜんねん
)
前
(
さき
)
へ
口
(
くち
)
が
生
(
うま
)
れるから
三千口
(
みちこう
)
と
申
(
まを
)
すのです。
101
アハヽヽヽ
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
立直
(
たてなほ
)
す
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
には
誂
(
あつら
)
へ
向
(
むき
)
でせう。
102
それ
道
(
みち
)
の
以
(
もつ
)
て
道
(
みち
)
とすべきは
真
(
しん
)
の
道
(
みち
)
に
非
(
あら
)
ず。
103
道
(
みち
)
とせざる
所
(
ところ
)
に
真
(
しん
)
の
道
(
みち
)
あり。
104
三千年
(
みちとせ
)
の
御
(
ご
)
艱難
(
かんなん
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
の
神徳
(
しんとく
)
現
(
あら
)
はれて
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
に
充
(
み
)
ち
満
(
み
)
ちにけり。
105
…
奥山
(
おくやま
)
に
紅葉
(
もみぢ
)
は
照
(
て
)
れど
道
(
みち
)
なくば
如何
(
いか
)
でか
人
(
ひと
)
の
訪
(
と
)
ひ
来
(
きた
)
るべき…と
申
(
まを
)
しましてな、
106
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
何
(
なに
)
が
大切
(
たいせつ
)
だと
云
(
い
)
つても
道
(
みち
)
位
(
くらゐ
)
大切
(
たいせつ
)
なものはありませぬよ。
107
道
(
みち
)
といふ
字
(
じ
)
はコトバと
読
(
よ
)
みませう。
108
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に「
太初
(
はじめ
)
に
道
(
ことば
)
あり。
109
道
(
ことば
)
は
神
(
かみ
)
なり、
110
神
(
かみ
)
は
道
(
ことば
)
と
偕
(
とも
)
にあり。
111
万物
(
ばんぶつ
)
これによつて
造
(
つく
)
らる。
112
総
(
すべ
)
て
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
造
(
つく
)
られたるもの
一切
(
いつさい
)
は
道
(
ことば
)
によりて
造
(
つく
)
られざるはなし」とチヤンと
神訓
(
しんくん
)
に
現
(
あら
)
はれてゐませう。
113
それだから
此
(
この
)
道公
(
みちこう
)
は
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
にはなくてはならぬ
人物
(
じんぶつ
)
ですよ。
114
役者
(
やくしや
)
の
子
(
こ
)
が
大根
(
だいこん
)
を
喰
(
く
)
はぬのも
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
、
115
浄瑠璃
(
じやうるり
)
家
(
がたり
)
の
子
(
こ
)
が
根深
(
ねぶか
)
を
食
(
く
)
はぬのもやつぱり
道
(
みち
)
のためですからな。
116
アハヽヽヽ』
117
伊太公
(
いたこう
)
『モシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
118
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
には
神
(
かみ
)
も
仏事
(
ぶつじ
)
も
人民
(
じんみん
)
も
鳥類
(
てうるゐ
)
畜類
(
ちくるゐ
)
虫族
(
むしけら
)
迄
(
まで
)
も
助
(
たす
)
けるとお
示
(
しめ
)
しになつてゐるぢやありませぬか。
119
これ
丈
(
だ
)
け
沢山
(
たくさん
)
に
庚申
(
かうしん
)
の
眷族
(
けんぞく
)
が
吾々
(
われわれ
)
の
尊
(
たふと
)
い
言霊
(
ことたま
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はうと
思
(
おも
)
つて
集
(
あつ
)
まつて
来
(
き
)
たのですから、
120
一
(
ひと
)
つ
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
の
籠
(
こも
)
つた
言霊
(
ことたま
)
を
振舞
(
ふれま
)
つてやつたらどんな
物
(
もの
)
でせうなア』
121
玉国別
(
たまくにわけ
)
『ウン』
122
道公
(
みちこう
)
『オイ、
123
伊太公
(
いたこう
)
、
124
措
(
お
)
け
措
(
お
)
け。
125
貴様
(
きさま
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
にはウンザリして
了
(
しま
)
つた。
126
又
(
また
)
足曳
(
あしびき
)
の
山道
(
やまみち
)
で
向脛
(
むかふづね
)
を
擦
(
す
)
り
剥
(
む
)
いて
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
く
位
(
くらゐ
)
がおちだから』
127
伊太公
(
いたこう
)
『
向
(
むか
)
ふの
脛
(
すね
)
ならチツとも
痛
(
いた
)
くないが、
128
やつぱり
己
(
おれ
)
の
脛
(
すね
)
だから
一寸
(
ちよつと
)
は
困
(
こま
)
る。
129
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
前車
(
ぜんしや
)
の
覆
(
くつが
)
へるは
後車
(
こうしや
)
の
警
(
いまし
)
めと
云
(
い
)
ふ
聖訓
(
せいくん
)
を
体得
(
たいとく
)
した
伊太公
(
いたこう
)
だ。
130
先
(
さき
)
の
失敗
(
しつぱい
)
に
懲
(
こ
)
りて
今度
(
こんど
)
はあんなヘマな
事
(
こと
)
はやらぬ
積
(
つも
)
りだ。
131
今度
(
こんど
)
こそ
本真剣
(
ほんしんけん
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ふから
謹
(
つつし
)
んで
聞
(
き
)
け。
132
初
(
はじ
)
めから
馬鹿
(
ばか
)
にしてかかられると
根
(
ね
)
つから
気乗
(
きの
)
りがせぬので
碌
(
ろく
)
な
歌
(
うた
)
も
歌
(
うた
)
へぬぢやないか。
133
エーン』
134
道公
(
みちこう
)
『さう
偉相
(
えらさう
)
に
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
くのなら、
135
一
(
ひと
)
つ
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
見
(
み
)
よ』
136
伊太公
(
いたこう
)
『
俺
(
おれ
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
は
今度
(
こんど
)
はとつときの
特別
(
とくべつ
)
上等品
(
じやうとうひん
)
だ。
137
山河
(
さんか
)
草木
(
さうもく
)
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
に
従
(
したが
)
ふと
云
(
い
)
ふ
生言霊
(
いくことたま
)
の
発射
(
はつしや
)
だから
用心
(
ようじん
)
せないと
千里側
(
せんりわき
)
へ
吹
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばされて
了
(
しま
)
ふぞ。
138
かう
云
(
い
)
つても
俺
(
おれ
)
の
決
(
けつ
)
して
法螺
(
ほら
)
でも
自慢
(
じまん
)
でもないから
真面目
(
まじめ
)
に
聞
(
き
)
かうよ。
139
オイ、
140
純公
(
すみこう
)
も
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
め
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つて
拝聴
(
はいちやう
)
しろ。
141
抑
(
そもそ
)
も
言霊
(
ことたま
)
の
権威
(
けんゐ
)
と
云
(
い
)
ふものは
鬼神
(
きしん
)
を
泣
(
な
)
かしむる
豪勢
(
がうせい
)
なものだ。
142
かうして
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
を
命
(
めい
)
ぜられたのも
一方
(
いつぱう
)
より
見
(
み
)
れば
言霊
(
ことたま
)
の
練習
(
れんしふ
)
をして
将来
(
しやうらい
)
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
になるためだ。
143
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
仕入物
(
しいれもの
)
では
到底
(
たうてい
)
満足
(
まんぞく
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
にはなれないよ。
144
総
(
すべ
)
て
人間
(
にんげん
)
は
天才
(
てんさい
)
が
手伝
(
てつだ
)
はねば
駄目
(
だめ
)
だからな』
145
道公
(
みちこう
)
『
天才
(
てんさい
)
が
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れるわい。
146
貴様
(
きさま
)
が
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ふと
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
怒
(
いか
)
りを
発
(
はつ
)
し
給
(
たま
)
ひ
忽
(
たちま
)
ち
天災
(
てんさい
)
を
下
(
くだ
)
し
給
(
たま
)
ふから
困
(
こま
)
つた
天才
(
てんさい
)
だ。
147
アハヽヽヽ、
148
エー
猿
(
さる
)
の
奴
(
やつ
)
、
149
キヤツ キヤツ
吐
(
ぬか
)
しよつて
根
(
ね
)
つから
俺
(
おれ
)
の
言霊
(
ことたま
)
が
不貫徹
(
ふくわんてつ
)
に
終
(
をは
)
りさうだ。
150
こんな
処
(
ところ
)
で
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
する
馬鹿
(
ばか
)
があるかい。
151
貴様
(
きさま
)
は
機
(
き
)
を
見
(
み
)
る
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らないから
駄目
(
だめ
)
だ』
152
伊太公
(
いたこう
)
『エヘン、
153
機
(
き
)
に
臨
(
のぞ
)
み
変
(
へん
)
に
応
(
おう
)
ずるは
天才
(
てんさい
)
智者
(
ちしや
)
の
敢
(
あへ
)
てよくする
所
(
ところ
)
、
154
迂愚者
(
うぐしや
)
の
測知
(
そくち
)
し
得
(
う
)
る
限
(
かぎ
)
りでない。
155
サア
之
(
これ
)
から
庚申
(
かうしん
)
の
眷族
(
けんぞく
)
に
向
(
むか
)
つて
生言霊
(
いくことたま
)
の
連発銃
(
れんぱつじう
)
を
発射
(
はつしや
)
するのだ。
156
いいか、
157
用心
(
ようじん
)
して
居
(
を
)
らぬと
昨夜
(
ゆうべ
)
の
烈風
(
れつぷう
)
の
様
(
やう
)
に
吹
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばされて
終
(
しま
)
ふぞ』
158
道公
(
みちこう
)
『
足曳
(
あしびき
)
の
山鳥
(
やまどり
)
の
尾
(
を
)
の、
159
又
(
また
)
しても
長々
(
ながなが
)
しい
前口上
(
まへこうじやう
)
だなア。
160
いい
加減
(
かげん
)
に
発射
(
はつしや
)
して
見
(
み
)
ろ』
161
伊太公
(
いたこう
)
『かう
尾長猿
(
をながざる
)
の
奴
(
やつ
)
、
162
身辺
(
しんぺん
)
近
(
ちか
)
く
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
つてはチツとばかり
面食
(
めんくら
)
はざるを
得
(
え
)
ない。
163
吾輩
(
わがはい
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
て
一丁
(
いつちやう
)
ばかり
退却
(
たいきやく
)
をさして
見
(
み
)
せるから
伊太公
(
いたこう
)
の
腕前
(
うでまへ
)
、
164
否
(
いな
)
言霊
(
ことたま
)
の
武者振
(
むしやぶり
)
を
拝観
(
はいくわん
)
拝聴
(
はいちやう
)
なされませ、
165
エヘン。
166
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
167
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
音彦
(
おとひこ
)
に
168
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
りし
吾々
(
われわれ
)
は
169
至
(
いた
)
つて
尊
(
たふと
)
い
伊太公
(
いたこう
)
ぞ
170
神
(
かみ
)
も
仏
(
ほとけ
)
も
人民
(
じんみん
)
も
171
禽獣
(
きんじう
)
虫魚
(
ちうぎよ
)
の
端
(
はし
)
までも
172
生言霊
(
いくことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
に
173
助
(
たす
)
けて
進
(
すす
)
む
宣伝使
(
せんでんし
)
174
オツトドツコイ
吾々
(
われわれ
)
は
175
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
候補者
(
こうほしや
)
ぞ
176
庚申
(
かうしん
)
さまの
眷族
(
けんぞく
)
よ
177
貴様
(
きさま
)
は
風
(
かぜ
)
が
恐
(
こは
)
いのか
178
懐谷
(
ふところだに
)
へ
集
(
あつま
)
つて
179
キヤツキヤツと
咆
(
ほ
)
えるは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
180
みつともないぞ、こら
畜生
(
ちくしやう
)
181
四
(
よ
)
つ
手
(
で
)
の
化物
(
ばけもの
)
やうやうと
182
枝
(
えだ
)
から
枝
(
えだ
)
へと
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
り
183
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
を
喰
(
くら
)
ひキヤツキヤツと
184
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
咆
(
ほ
)
え
猛
(
たけ
)
る
185
その
有様
(
ありさま
)
の
面白
(
おもしろ
)
さ
186
あんまり
良
(
よ
)
い
気
(
き
)
になりよると
187
猿
(
ましら
)
も
木
(
き
)
からバツサリと
188
落
(
お
)
ちて
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
足
(
あし
)
を
折
(
を
)
り
189
小便
(
せうべん
)
垂
(
た
)
れて
斃死
(
くたば
)
つて
190
非業
(
ひごう
)
の
最後
(
さいご
)
を
遂
(
と
)
げるぞよ
191
俺
(
おれ
)
は
誠
(
まこと
)
の
神司
(
かむづかさ
)
192
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぞ
193
俺
(
おれ
)
の
言葉
(
ことば
)
をよつく
聞
(
き
)
け
194
同
(
おな
)
じ
天地
(
てんち
)
に
生
(
うま
)
れ
来
(
き
)
て
195
人間
(
にんげん
)
擬
(
まが
)
ひの
猿
(
さる
)
となり
196
頭
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
三本
(
さんぼん
)
足
(
た
)
らぬため
197
畜生
(
ちくしやう
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
甘
(
あま
)
んじて
198
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
るか
情
(
なさけ
)
ない
199
頭
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
三本
(
さんぼん
)
足
(
た
)
らぬのは
200
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
201
御恩
(
ごおん
)
を
忘
(
わす
)
れた
罰
(
ばち
)
ぢやぞや
202
早
(
はや
)
く
心
(
こころ
)
を
取直
(
とりなほ
)
し
203
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
204
四
(
よ
)
つ
手
(
で
)
をついて
拝礼
(
はいれい
)
し
205
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
206
耳
(
みみ
)
をすませて
拝聴
(
はいちやう
)
し
207
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
人間
(
にんげん
)
の
208
社会
(
しやくわい
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
く
)
るがよい
209
人
(
ひと
)
の
真似
(
まね
)
をば
喜
(
よろこ
)
んで
210
致
(
いた
)
した
罰
(
ばち
)
で
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
211
体
(
からだ
)
は
人間
(
にんげん
)
尾
(
を
)
は
獣
(
けもの
)
212
畜生道
(
ちくしやうだう
)
の
苦
(
くる
)
しみを
213
助
(
たす
)
けて
欲
(
ほ
)
しいと
思
(
おも
)
はぬか
214
こらこらキヤツキヤツ
吐
(
ぬか
)
すなよ
215
耳
(
みみ
)
が
聾
(
つんぼ
)
になりよるわ
216
雲雀
(
ひばり
)
か
燕
(
つばめ
)
か
小雀
(
こすずめ
)
か
217
何
(
なん
)
の
身霊
(
みたま
)
か
知
(
し
)
らねども
218
あんまり
口
(
くち
)
が
過
(
す
)
ぎるぞや
219
玉国別
(
たまくにわけ
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
220
沈黙
(
ちんもく
)
せよと
仰有
(
おつしや
)
つた
221
貴様
(
きさま
)
もチツとは
伊太公
(
いたこう
)
の
222
善言
(
ぜんげん
)
美口
(
びこう
)
に
神習
(
かむなら
)
ひ
223
しばらく
沈黙
(
ちんもく
)
するがよい
224
伊太公
(
いたこう
)
さまが
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
225
千匹猿
(
せんびきざる
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
226
篏口令
(
かんこうれい
)
を
布
(
し
)
くほどに
227
我
(
わが
)
憲法
(
けんぱふ
)
を
守
(
まも
)
らねば
228
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
で
天国
(
てんごく
)
の
229
畜生
(
ちくしやう
)
警察
(
けいさつ
)
へ
訴
(
うつた
)
へる
230
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
231
如何
(
いか
)
に
畜生
(
ちくしやう
)
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
232
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
より
233
生
(
うま
)
れ
出
(
いで
)
たる
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
は
234
実
(
じつ
)
に
憐
(
あは
)
れな
代物
(
しろもの
)
だ
235
一言
(
いちげん
)
天地
(
てんち
)
を
震動
(
しんどう
)
し
236
一声
(
いつせい
)
風雨
(
ふうう
)
雷霆
(
らいてい
)
を
237
叱咤
(
しつた
)
するてふ
伊太公
(
いたこう
)
の
238
生言霊
(
いくことたま
)
を
謹
(
つつし
)
んで
239
畜生
(
ちくしやう
)
ながらも
反省
(
はんせい
)
せよ
240
吾
(
われ
)
は
救
(
すく
)
ひの
道
(
みち
)
の
者
(
もの
)
241
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
に
捨
(
す
)
てられて
242
如何
(
いか
)
にガヤガヤ
騒
(
さわ
)
いでも
243
決
(
けつ
)
して
助
(
たす
)
かる
筈
(
はず
)
はない
244
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
するが
良
(
よ
)
い
245
改心
(
かいしん
)
すれば
其
(
その
)
日
(
ひ
)
から
246
楽
(
らく
)
に
此
(
この
)
世
(
よ
)
が
暮
(
く
)
れるぞよ
247
それも
知
(
し
)
らずに
何時迄
(
いつまで
)
も
248
キヤツキヤツ
吐
(
ぬ
)
かして
山棲
(
やまずま
)
ひ
249
木実
(
このみ
)
の
蔕
(
へた
)
や
渋柿
(
しぶがき
)
を
250
食
(
くら
)
つて
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
送
(
おく
)
るとは
251
実
(
じつ
)
に
可憐相
(
かはいそ
)
な
代物
(
しろもの
)
だ
252
とは
云
(
い
)
ふものの
吾々
(
われわれ
)
も
253
人間界
(
にんげんかい
)
に
向
(
むか
)
つては
254
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
言霊
(
ことたま
)
を
255
発射
(
はつしや
)
するやうな
力
(
ちから
)
ない
256
今日
(
けふ
)
宣伝
(
せんでん
)
の
門出
(
かどいで
)
に
257
演習
(
えんしふ
)
気取
(
きど
)
りで
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
に
258
言霊戦
(
ことたません
)
を
試
(
こころ
)
みた
259
これが
利
(
き
)
いたらお
慰
(
なぐさ
)
み
260
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるばつかりが
261
決
(
けつ
)
して
司
(
つかさ
)
の
能
(
のう
)
ぢやない
262
鳥
(
とり
)
獣
(
けだもの
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
263
虫族
(
むしけら
)
までも
済度
(
さいど
)
して
264
助
(
たす
)
けて
行
(
ゆ
)
くのが
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
265
これこれもうし
宣伝使
(
せんでんし
)
266
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
267
俺
(
わし
)
の
言葉
(
ことば
)
は
違
(
ちが
)
ひますか
268
違
(
ちが
)
ふなら
違
(
ちが
)
ふと
云
(
い
)
ひなされ
269
あれあれ
皆
(
みな
)
さま
猿公
(
えてこう
)
が
270
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
拝
(
をが
)
みよる
271
よつぽど
俺
(
わし
)
の
言霊
(
ことたま
)
は
272
猿公
(
さるこう
)
さまの
琴線
(
きんせん
)
に
273
よくよく
触
(
ふ
)
れたと
見
(
み
)
えまする
274
如何
(
いか
)
に
畜生
(
ちくしやう
)
なればとて
275
決
(
けつ
)
して
馬鹿
(
ばか
)
にはなりませぬ
276
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
277
叶
(
かな
)
はないから
止
(
や
)
めませう』
278
道公
(
みちこう
)
『アハヽヽヽ
貴様
(
きさま
)
の
言霊
(
ことたま
)
はよく
利
(
き
)
くと
見
(
み
)
えて、
279
おひおひ
吾々
(
われわれ
)
の
身辺
(
しんぺん
)
に
押寄
(
おしよ
)
せて
来
(
く
)
るぢやないか』
280
伊太公
(
いたこう
)
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
281
余
(
あんま
)
り
有難
(
ありがた
)
うて
一言
(
いちごん
)
も
洩
(
も
)
らさじと
俺
(
おれ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
拝聴
(
はいちやう
)
してゐるのだ。
282
「
苦
(
くる
)
しうない、
283
近
(
ちか
)
う
近
(
ちか
)
う」と
云
(
い
)
ひもせぬのに
身辺
(
しんぺん
)
に
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
く
)
るのだから
伊太公
(
いたこう
)
の
初宣伝
(
はつせんでん
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
有力
(
いうりよく
)
なものだ』
284
道公
(
みちこう
)
『
目的
(
もくてき
)
と
結果
(
けつくわ
)
がそれでも
違
(
ちが
)
ふぢやないか』
285
伊太公
(
いたこう
)
『そんなら
貴様
(
きさま
)
、
286
猿公
(
ゑんこう
)
を
退却
(
たいきやく
)
させて
見
(
み
)
い。
287
もし
効能
(
かうのう
)
があつたら
俺
(
おれ
)
の
首
(
くび
)
でも
熨斗
(
のし
)
つけて
貴様
(
きさま
)
に
献上
(
けんじやう
)
するわい』
288
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
猿
(
さる
)
の
奴
(
やつ
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
八釜
(
やかま
)
しいが、
289
それにもいやまして
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
も
騒
(
さわ
)
がしい
奴
(
やつ
)
だな。
290
まるで
雷
(
かみなり
)
と
同居
(
どうきよ
)
してる
様
(
やう
)
だ。
291
アハヽヽヽ』
292
(
大正一一・一一・二六
旧一〇・八
北村隆光
録)
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王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
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