霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 森議(しんぎ)〔一一五八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻 篇:第2篇 月下の古祠 よみ(新仮名遣い):げっかのふるほこら
章:第7章 森議 よみ(新仮名遣い):しんぎ 通し章番号:1158
口述日:1922(大正11)年11月27日(旧10月9日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玉国別は物音を大黒主の軍勢だと悟り、森蔭から様子をうかがおうと三人に目配せして祠の裏深く木陰に身を隠した。祠の前は少し広庭があって、森の中からはハッキリと見えている。
道公はバラモン軍だと見てとり、ここで言霊を打ち出して進軍を食い止めようと玉国別に進言した。玉国別は道公をいさめ、自分は今頭が痛んで肉体を修理しないと言霊を完全に使用できないから、様子をとっくりと見定めた上で臨機応変の策を施せばよいと諭した。
どうしても行動したいという道公を、玉国別は叱り、師の権限で押しとどめた。玉国別は様子をうかがいながら、確かに斎苑館へ攻め入るバラモン軍の先鋒隊だと認め、首途の功名を表す絶好のチャンスだと独り言を言った。
はやる道公に対して純公は、玉国別には深い思慮があるのだとたしなめた。純公はやはり道公をなだめつつ、自身の体がうずいて仕方がないと本心を洩らした。
玉国別は、バラモン軍の先鋒隊を通過させてから、後からやってくる治国別の一行とはさみうちにしようとの作戦を抱いていたのであったが、三人の部下に披露しなかった。しかし道公が決死の覚悟でバラモン軍に突撃しようとしているのを知り、道公だけには耳打ちして秘策を知らせた。
バラモン軍たちは、神素盞嗚大神を悪と弾じ滅ぼさんとする進軍歌を声勇ましく歌っている。この歌を聞いた伊太公はのぼせ上り、物も言わずに金剛杖を振りかざして暴れこんだ。バラモン軍はどよめきたち、けわしい谷道を右往左往し喚き叫ぶ声が谷間に響いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-11-21 20:50:17 OBC :rm4307
愛善世界社版:96頁 八幡書店版:第8輯 62頁 修補版: 校定版:102頁 普及版:37頁 初版: ページ備考:
001斎苑(いそ)(やかた)立出(たちい)でて
002悪魔(あくま)征討(せいたう)(のぼ)りゆく
003玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)
004河鹿(かじか)(たうげ)出会(でくわ)した
005レコード(やぶ)りの烈風(れつぷう)
006(のが)れむものと(ふところ)
007谷間(たにま)()をば(しの)ばせつ
008山猿(やまざる)(ども)両眼(りやうがん)
009()きむしられて(しばら)くは
010悲惨(ひさん)(まく)(おろ)せしが
011(やうや)(かみ)御助(みたす)けに
012一眼(いちがん)のみは全快(ぜんくわい)
013(いさ)(すす)んで河鹿山(かじかやま)
014(たうげ)(みなみ)(くだ)()
015()西山(せいざん)(うすづ)きて
016黄昏(たそがれ)(ちか)晩秋(ばんしう)
017(そら)(かがや)月影(つきかげ)
018(ちから)(たの)(ふる)ぼけし
019(ほこら)(まへ)一行(いつかう)
020(いき)(やす)らひ立上(たちあが)
021(たがひ)(うた)()みかはし
022(また)もやここを立出(たちい)でて
023前進(ぜんしん)せむと(おも)(をり)
024(さか)(した)より(きこ)()
025(こま)(いなな)(ひと)(こゑ)
026(いぶ)かしさよと()()まり
027(みみ)をすまして(うかが)へば
028鬼春別(おにはるわけ)(ひき)ゐたる
029先鋒隊(せんぽうたい)()られたり
030スワ一大事(いちだいじ)()(かく)
031(てき)様子(やうす)(さぐ)らむと
032常磐木(ときはぎ)(しげ)森蔭(もりかげ)
033これ(さいは)ひと(おく)(ふか)
034(しの)びて()つこそ(あやふ)けれ。
035 玉国別(たまくにわけ)(にはか)(きこ)ゆる人馬(じんば)物音(ものおと)(うはさ)()くハルナの(みやこ)大黒主(おほくろぬし)軍勢(ぐんぜい)036(わが)大神(おほかみ)(しづ)まります斎苑(いそ)(やかた)魔軍(まぐん)(ひき)つれ進撃(しんげき)せむとするものならむ、037(なに)()もあれ、038(この)森蔭(もりかげ)(さいは)様子(やうす)(うかが)はむ……と(さん)(にん)目配(めくば)せし(なが)ら、039(ほこら)(うら)(ふか)く、040樹蔭(こかげ)()(かく)した。041(もち)()(つき)皎々(かうかう)()(かがや)(ども)042常磐木(ときはぎ)老樹(らうじゆ)(えだ)(もつ)(てん)(ふう)じた(ほこら)(もり)は、043際立(きはだ)つて(くら)い。044(しか)(なが)(ほこら)(まへ)(すこ)広庭(ひろには)があつて、045木立(こだち)(まばら)なる(ため)046(もり)(なか)よりハツキリと(には)小石(こいし)(まで)()えてゐる。047道公(みちこう)(こゑ)をひそめて、
048道公『モシ先生(せんせい)(さま)049アリヤ一体(いつたい)何者(なにもの)(ござ)いませうかな。050あの物音(ものおと)にて(さつ)すれば、051余程(よほど)人数(にんず)()えます。052(この)(やう)急坂(きふはん)(たい)()んで(のぼ)つて()るとは、053合点(がてん)()かぬ(はなし)ぢやありませぬか。054貴方(あなた)(その)物音(ものおと)()くなり、055直様(すぐさま)(この)森蔭(もりかげ)にお(しの)びになりましたが、056(また)しても卑怯(ひけふ)(やつ)と、057(かみ)(さま)にお(しか)りを(かうむ)り、058折角(せつかく)(たす)けて(もら)つた一箇(ひとつ)()(さる)どもにえぐり()られるやうな(こと)(ござ)いますまいか。059烈風(れつぷう)(おそ)れて(みぎ)()(かみ)(さま)から間接(かんせつ)取上(とりあ)げられ、060貴方(あなた)神業(しんげふ)をおろそかに(いた)した(つみ)ぢやと()つて、061(かみ)(さま)にお(わび)をなさつたでせう。062まだ()(した)()(かわ)かぬ(さき)に、063天下(てんか)宣伝使(せんでんし)人馬(じんば)足音(あしおと)()いて、064斯様(かやう)(ところ)へお(しの)びになるとはチツと卑怯(ひけふ)ではありますまいか。065()しも斎苑(いそ)(やかた)進撃(しんげき)するバラモン(けう)軍隊(ぐんたい)であらうものなら、066それこそ宣伝使(せんでんし)職務(しよくむ)はゼロでせう。067どうしてもここで()()めなくては、068貴方(あなた)のお(かほ)()ちますまい。069アレアレ(はや)くも(ほこら)(まへ)騎馬(きば)軍卒(ぐんそつ)(あら)はれました。070(ひと)(この)(へん)()しぬけに言霊(ことたま)打出(うちだ)さうぢやありませぬか』
071 玉国別(たまくにわけ)小声(こごゑ)になつて、072()(くう)(おさ)へるやうにして、
073玉国別『お(まへ)のいふも一応(いちおう)(もつと)もだが、074さう(いそ)ぐに(およ)ばない。075マアとつくりと様子(やうす)()いた(うへ)076臨機(りんき)応変(おうへん)(さく)(ほどこ)せば()いぢやないか。077わしも(いま)(あたま)(いた)んで仕方(しかた)がないから、078言霊(ことたま)使用(しよう)機関(きくわん)たる肉体(にくたい)完全(くわんぜん)修理(しうり)した(うへ)でなくては(おも)ふやうに(はたら)けない。079(まへ)(たち)(さん)(にん)言霊(ことたま)(ちから)さへあれば、080わしは(ただ)司令官(しれいくわん)地位(ちゐ)()つて采配(さいはい)(ふる)つて()れば()いのだが、081一切(いつさい)万事(ばんじ)(いま)(ところ)では、082自分(じぶん)一人(ひとり)主要(しゆえう)なる職務(しよくむ)をやつてのけねばならぬのだから、083マアさう(いそ)がずに(わし)()(とほ)りになつて()るがよからうぞ』
084道公(みちこう)『モシ先生(せんせい)085信心(しんじん)(ふる)(あたら)しいはないぢやありませぬか。086(わたし)言霊(ことたま)信用(しんよう)出来(でき)ないやうに仰有(おつしや)いましたが、087貴方(あなた)のお(こゑ)吾々(われわれ)(こゑ)も、088ヤツパリ(その)原料(げんれう)(おな)(かみ)(さま)水火(すゐくわ)のイキを調合(てうがふ)されたものでせう。089千騎(せんき)一騎(いつき)になれば、090キツと(かみ)(さま)応援(おうゑん)して(くだ)さるでせう。091あれ御覧(ごらん)なさいませ、092(ほこら)(まへ)にだんだんと(めう)(かげ)()えて()るぢやありませぬか。093何奴(どいつ)此奴(こいつ)(みんな)(うま)()つて()ります。094エーエ、095(うで)()りますわい、096これだから猪突(ちよとつ)主義(しゆぎ)(なん)だが、097(あま)退嬰(たいえい)主義(しゆぎ)先生(せんせい)(こま)つたものだ。098予定(よてい)退却(たいきやく)ばかりやつてゐては、099(せん)(ねん)(まん)(ねん)()つたとても、100ハルナの(みやこ)までは()けませぬぞえ』
101玉国別(たまくにわけ)『さう血気(けつき)にはやるものではない。102軽々(かるがる)しく(すす)んで(かへつ)(てき)利益(りえき)(あた)へるよりも落着(おちつ)(はら)つて前後(ぜんご)(かんが)へ、103(おもむろ)言霊(ことたま)必要(ひつえう)(みと)むれば、104全力(ぜんりよく)集注(しふちゆう)して、105打出(うちだ)(まで)のことだ。106()()(しづ)まつたがよからう。107(すこ)しく冷静(れいせい)になつて()れ』
108道公(みちこう)忠勇(ちうゆう)義烈(ぎれつ)熱血(ねつけつ)男子(だんし)109最早(もはや)全身(ぜんしん)()()(かへ)()つてもゐても()られなくなりました。110そんなら先生(せんせい)111貴方(あなた)貴方(あなた)()(かんが)へが(ござ)いませうから、112どうぞ(わたし)単独(たんどく)行動(かうどう)(ゆる)して(くだ)さいませ。113何程(なにほど)先生(せんせい)だつて、114(かみ)(さま)(ため)活動(くわつどう)する吾々(われわれ)行動(かうどう)を、115頭抑(あたまおさ)へに阻止(そし)なさる(わけ)には()きますまい』
116 玉国別(たまくにわけ)冷静(れいせい)(くび)左右(さいう)()(なが)ら、117(さん)(にん)(かほ)見廻(みまは)し、
118玉国別(たまくにわけ)道公(みちこう)119(まへ)()ふものも一応(いちおう)(もつと)もだ。120(しか)(なが)一行(いつかう)()(にん)の……(わたし)支配者(しはいしや)だ。121何程(なにほど)道公(みちこう)天才家(てんさいか)だと()つても、122六韜(りくたう)三略(さんりやく)(おく)()(わか)らない。123さう(かみ)(さま)(みち)単調(たんてう)なものではない、124千変(せんぺん)万化(ばんくわ)秘策(ひさく)があるのだから、125()(しばら)(ひか)へたがよからうぞ』
126言葉尻(ことばじり)(ちから)をこめて、127()めつけるやうに()つた。128道公(みちこう)は『ヘー』と(いや)(さう)返詞(へんじ)をし(なが)(だま)()んで(しま)つた。129(ほこら)(まへ)には片彦(かたひこ)130久米彦(くめひこ)先鋒(せんぽう)隊長(たいちやう)人員(じんゐん)点呼(てんこ)をやつてゐる(こゑ)131(いち)()(さん)()()(ろく)(なな)(はち)()(じふ)十一(じふいち)十二(じふに)………と順々(じゆんじゆん)大小(だいせう)高低(かうてい)(こゑ)(きこ)えてゐる。132(いづ)れの(こゑ)(みな)言葉尻(ことばじり)坂道(さかみち)のやうに立向(うはむ)けにはねてゐる(やう)(きこ)えた。133玉国別(たまくにわけ)(ちひ)さい(こゑ)(おち)つき(はら)つて、
134玉国別(たまくにわけ)『ヤツパリあれはバラモン(けう)先鋒隊(せんぽうたい)()えるなア。135どうやら斎苑(いそ)(やかた)(むか)つて攻撃(こうげき)(まゐ)るものらしい。136(かみ)(さま)()経綸(けいりん)(いま)となつて(かんが)へれば、137(じつ)巧妙(かうめう)(きは)めたものだ。138面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、139これでこそ吾々(われわれ)首途(かどで)功名(こうみやう)をあらはす(こと)出来(でき)る』
140 道公(みちこう)(また)もや(くち)(ひら)き、141玉国別(たまくにわけ)(ひざ)(ちか)にぢり()り、142木蔭(こかげ)(おほ)はれた宣伝使(せんでんし)(かほ)(のぞ)()み、143(やや)(いき)(はづ)ませ、
144道公先生(せんせい)145(いま)のお言葉(ことば)では貴方(あなた)もヤツパリ、146斎苑(いそ)(やかた)()めよせる敵軍(てきぐん)とお(みと)めになつたやうですなア。147それが(わか)つて()(なが)ら、148なぜ泰然(たいぜん)自若(じじやく)として活動(くわつどう)開始(かいし)なさらぬのか、149首途(かどで)功名(こうみやう)(あら)はす(とき)だと仰有(おつしや)いましたが、150ムザムザ(てき)見遁(みのが)し、151(やかた)進入(しんにふ)させて、152如何(どう)してそれが手柄(てがら)になりませう。153貴方(あなた)片眼(かため)をお()られ(あそ)ばして、154心気(しんき)(とみ)沮喪(そさう)し、155卑怯(ひけふ)未練(みれん)(くも)(つつ)まれ(あそ)ばしたのぢや(ござ)いませぬか』
156 玉国別(たまくにわけ)冷静(れいせい)に、
157玉国別『マア()て、158これには(ふか)戦略(せんりやく)のあることだ』
159道公(みちこう)『ヘエー、160(めう)戦略(せんりやく)もあるものですなア。161クロパトキンの(やう)予定(よてい)退却(たいきやく)(もつ)唯一(ゆゐいつ)戦略(せんりやく)思召(おぼしめ)すのですか』
162伊太公(いたこう)『オイ道公(みちこう)163三十六(さんじふろく)(けい)(おく)()だよ』
164道公(みちこう)『ソリヤ()しからぬ。165如何(どう)して吾々(われわれ)(かほ)()つものか、166第一(だいいち)先生(せんせい)のお(かほ)()つまい。167勇将(ゆうしやう)(もと)弱卒(じやくそつ)なし、168といふことがある。169(しか)(なが)弱将(じやくしやう)(もと)勇卒(ゆうそつ)ありだから、170チツと勝手(かつて)(ちが)ふわい。171(しか)(なが)何程(なにほど)大将(たいしやう)(よわ)くても部下(ぶか)さへ(つよ)ければ大将(たいしやう)()があがるものだ。172オイ、173伊太公(いたこう)174純公(すみこう)175(ひと)(おれ)同盟(どうめい)して先生(せんせい)退隠(たいいん)(せま)り、176一大(いちだい)改革(かいかく)断行(だんかう)し、177道公(みちこう)司令官(しれいくわん)となつて大活躍(だいくわつやく)(こころ)みようぢやないか』
178純公(すみこう)匹夫(ひつぷ)下郎(げらう)分際(ぶんざい)として(なに)()ふのだ。179先生(せんせい)()胸中(きようちう)吾々(われわれ)(わか)つて(たま)らうか。180吾々(われわれ)測量(そくりやう)()らるるやうな先生(せんせい)なら、181大抵(たいてい)貫目(くわんめ)はきまつてゐるぢやないか。182瞹昧(あいまい)模糊(もこ)として捕捉(ほそく)(べか)らざる(ところ)先生(せんせい)大人格(だいじんかく)勇躍(ゆうやく)してゐるのだ。183何事(なにごと)指揮(しき)命令(めいれい)(したが)ふのが(おれ)(たち)(つと)めだ。184先生(せんせい)職権(しよくけん)まで、185下郎(げろう)分際(ぶんざい)として批評(ひひやう)する価値(かち)があるか。186それに貴様(きさま)(ゐのしし)武者(むしや)だから、187前後(ぜんご)(わきま)へもなく、188先生(せんせい)放逐論(はうちくろん)まで持出(もちだ)しよつて(なん)(こと)だ。189チツと落着(おちつ)かないか。190(すこ)(かぜ)()いてもバタバタ(さわ)()()(やう)木端(こつぱ)武者(むしや)が、191如何(どう)して(この)()神業(しんげふ)(つと)まるか』
192道公(みちこう)『ソリヤさうかも()れないが、193アレ()よ、194(はら)()つてたまらぬぢやないか。195(ほこら)(まへ)黒山(くろやま)(ごと)(てき)(あつま)り、196人員(じんゐん)点呼(てんこ)(まで)やりよつて、197旗鼓(きこ)堂々(だうだう)()きよる(この)姿(すがた)()て、198如何(どう)して(これ)看過(かんくわ)出来(でき)ようか。199三尺(さんじやく)秋水(しうすゐ)があらば月光(げつくわう)(ひら)めかし、200獅子(しし)奮迅(ふんじん)(いきほひ)(もつ)て、201(かた)つぱしから()()()()て、202一泡(ひとあわ)()かしてくれたいは山々(やまやま)なれど、203(なん)()つても無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)三五教(あななひけう)204吾々(われわれ)武器(ぶき)()つたら、205言霊(ことたま)発射(はつしや)か、206マサカ(ちが)へば(いは)(ごと)拳骨(げんこつ)武器(ぶき)(いう)するのみだ。207エヽ残念(ざんねん)(こと)だなア』
208伊太公(いたこう)(おれ)(なん)だか、209体中(からだぢう)躍動(やくどう)して仕方(しかた)がない。210それに引替(ひきか)先生(せんせい)勁敵(けいてき)(まへ)(ひか)(なが)ら、211冷然(れいぜん)として(いは)(ごと)く、212黙然(もくねん)として(おし)(ごと)しだ。213こりやマア如何(どう)したら()いのだらうかなア』
214 玉国別(たまくにわけ)(しづか)両手(りやうて)をパツと(ひら)き、215(さん)(にん)(おさ)へつける(やう)真似(まね)をして二三回(にさんくわい)空中(くうちう)(おさ)へ、
216玉国別(たまくにわけ)『まてしばし(かみ)御言(みこと)(くだ)るまで
217(うみ)より(ふか)天地(てんち)仕組(しぐみ)を』
218道公(みちこう)『これが(また)ジツと()のがし()れませう
219みすみす(てき)(まへ)(ひか)へて』
220玉国別(たまくにわけ)何事(なにごと)(かみ)(こころ)(まか)すこそ
221(なれ)()三人(みたり)(つと)めと(さと)れ』
222道公(みちこう)『これはしたり(おも)ひもよらぬ()(きみ)
223へらず(ぐち)には(あき)るる而已(のみ)なり』
224純公(すみこう)道公(みちこう)貴様(きさま)(わか)らぬことを()
225玉国別(たまくにわけ)(をしへ)(そむ)くか』
226伊太公(いたこう)(そむ)かぬが(みち)(まこと)()らね(ども)
227(なん)とはなしに(こころ)せかるる』
228道公(みちこう)伊太公(いたこう)(こころ)(おれ)(おな)じこと
229いざいざさらば二人(ふたり)()たうか』
230玉国別(たまくにわけ)皇神(すめかみ)()けし(いのち)()(ばち)
231さやぎける(かな)(しこ)のたぶれが』
232道公(みちこう)『それは(また)(おも)ひもよらぬ(あふ)(かな)
233(しこ)のたぶれは(わが)()(きみ)よ』
234純公(すみこう)『コリヤ二人(ふたり)失礼(しつれい)なことをぬかすない
235唐変木(たうへんぼく)(なに)(わか)らう』
236道公(みちこう)卑怯者(ひけふもの)二人(ふたり)豪傑(がうけつ)(また)二人(ふたり)
237いよいよ(ここ)()(わか)れたり』
238玉国別(たまくにわけ)面白(おもしろ)(いさ)言葉(ことば)二人(ふたり)()
239真理(しんり)(そむ)きて(あやま)ちをすな』
240 玉国別(たまくにわけ)(けつ)して片彦(かたひこ)241久米彦(くめひこ)一隊(いつたい)(いきほひ)辟易(へきえき)し、242(この)森蔭(もりかげ)(かく)れたのではない。243片彦(かたひこ)244久米彦(くめひこ)一隊(いつたい)無事(ぶじ)通過(つうくわ)させ、245(かれ)懐谷(ふところだに)方面(はうめん)(まで)(のぼ)つた(ころ)には、246治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)がやつて()るに(ちがひ)ない。247さうすれば(てき)をやりすごし、248前後(ぜんご)より一斉(いつせい)言霊(ことたま)打出(うちだ)し、249(てき)(ふくろ)(ねづみ)として帰順(きじゆん)せしめようとの、250神算(しんさん)鬼謀(きぼう)(いだ)いてゐたからである。251(しか)(なが)(さん)(にん)部下(ぶか)(その)秘策(ひさく)(しめ)すのは(あま)価値(かち)なき(やう)(おも)はれたからであつた。252道公(みちこう)玉国別(たまくにわけ)態度(たいど)憤慨(ふんがい)し、253言葉(ことば)つよく、
254道公(みちこう)『モシ先生(せんせい)255只今(ただいま)(かぎ)りお(ひま)頂戴(ちやうだい)(いた)します』
256玉国別(たまくにわけ)『ウン(のぞ)みとあれば(ひま)()らう。257大分(だいぶ)(てき)(おそ)ろしくなつたと()えるのう。258(その)挙措(きよそ)動作(どうさ)(なん)だ。259(まる)蒟蒻(こんにやく)(やう)だ』
260道公(みちこう)『ハイ(おそ)ろしくなりました。261(あま)貴方(あなた)(こし)(よわ)いので、262それが(おそ)ろしいのですよ。263(かみ)(さま)につくか、264師匠(ししやう)()くか、265(その)軽重(けいちよう)(かんが)へねばなりませぬ。266(けつ)して先生(せんせい)()てる(こころ)微塵(みじん)もありませぬが、267(かみ)(さま)(ため)には(なみだ)をのんで(そむ)きます。268()(かげ)三尺(さんじやく)(へだ)てて()まずといふことさへあるに、269貴方(あなた)(そむ)(わたし)心根(こころね)270熱鉄(ねつてつ)()むよりも(つら)(ござ)いますが、271どうぞ(ゆる)して(くだ)さいませ。272(この)道公(みちこう)(いのち)(まと)(てき)(むか)つて突喊(とつかん)(いた)します。273(さいはひ)にして勝利(しようり)()ましても、274(けつ)して(わたし)手柄(てがら)には(いた)しませぬ。275ヤツパリ先生(せんせい)()手柄(てがら)になるので(ござ)いますから……』
276 玉国別(たまくにわけ)(なみだ)(なが)(なが)ら、277(ちひ)さい(こゑ)で、
278玉国別(たまくにわけ)道公(みちこう)279(ちか)()れ、280(みみ)よりの(はなし)がある』
281 道公(みちこう)甦生(よみがへ)つたやうな気分(きぶん)になり、282二足(ふたあし)三足(みあし)(おも)はず()(あが)り、283(いぬ)(しばら)()はなかつた主人(しゆじん)出会(であ)うた(とき)のやうに()()(かか)へつき、284玉国別(たまくにわけ)口元(くちもと)(みみ)()せた。
285 道公(みちこう)幾度(いくたび)(くび)(たて)()り、
286道公(みちこう)『ハイ(わか)りました。287それならば(わたし)安心(あんしん)(いた)します。288流石(さすが)先生(せんせい)だ。289如何(いか)にも妙案(めうあん)奇策(きさく)です。290到底(たうてい)匹夫(ひつぷ)下郎(げらう)(くはだ)(およ)(ところ)では(ござ)いませぬ。291オイ純公(すみこう)292伊太公(いたこう)293安心(あんしん)せい、294ヤツパリ(おれ)先生(せんせい)(えら)いワ。295普通(ふつう)一般(いつぱん)のお師匠(ししやう)さまとは(いささ)(せん)(こと)にしてゐるのだ。296こんな先生(せんせい)()つた(おれ)(たち)(じつ)幸福(かうふく)なものだぞ』
297伊太公(いたこう)『さうか、298そりや有難(ありがた)い。299どんな(こと)だい。300一寸(ちよつと)()らしてくれないか』
301道公(みちこう)(ふく)司令官(しれいくわん)(おれ)()つて()りさへすれば、302それでいいのだ。303匹夫(ひつぷ)下郎(げろう)分際(ぶんざい)として英雄(えいゆう)心事(しんじ)(うかが)はむとするは(もつ)ての(ほか)だ。304貴様(きさま)二人(ふたり)にお()かしなさるのならば、305如何(どう)して(おれ)耳許(みみもと)小声(こごゑ)(ささや)きなさる道理(だうり)があらう。306天機(てんき)()らすなとの(なぞ)相違(さうゐ)ない。307そんな(こと)()()かぬやうな道公(みちこう)ぢやない。308マア神妙(しんめう)に、309(おれ)のするままに盲従(まうじゆう)する(はう)が、310(まへ)(たち)天職(てんしよく)だ。311エーン』
312純公(すみこう)『イヤお(まへ)さへ得心(とくしん)すれば、313(おれ)(なん)にも(たづ)ねる必要(ひつえう)はないのだ。314ナア伊太公(いたこう)315さうぢやないか。316道公(みちこう)得心(とくしん)する(くらゐ)だから大抵(たいてい)(きま)つてるワ。317()()安心(あんしん)したがよからうぞ』
318 (ほこら)(まへ)より進軍歌(しんぐんか)(きこ)えて()る。319()(にん)(みみ)()まして、320一言(ひとこと)()らさじと()いてゐる。
321(バラモン軍)(この)()(つく)(たま)ひたる
322梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
323大国彦(おほくにひこ)(たま)(すゑ)
324ハルナの(みやこ)()れまして
325大黒主(おほくろぬし)名乗(なの)りつつ
326豊葦原(とよあしはら)瑞穂国(みづほくに)
327青人草(あをひとぐさ)(すゑ)までも
328(めぐ)みの(つゆ)()(たま)
329天国(てんごく)浄土(じやうど)()(うへ)
330(ひら)かせ(たま)ふぞ(たふと)けれ
331さはさり(なが)()(なか)
332(つき)村雲(むらくも)(はな)(かぜ)
333(しこ)曲津(まがつ)遠近(をちこち)
334さやりて()をば(みだ)しゆく
335(なか)にも()けて素盞嗚(すさのを)
336(しこ)魔神(まがみ)斎苑(いそ)(やかた)
337数多(あまた)魔神(まがみ)()(つど)
338大黒主(おほくろぬし)神業(かむわざ)
339(くつが)へさむと朝夕(あさゆふ)
340(たく)みゐるこそゆゆしけれ
341(われ)()(かみ)()(かみ)(みや)
342(かみ)(ひと)しき()(もつ)
343(この)()(あら)醜神(しこがみ)
344ゆめゆめ(ゆる)しおくべきか
345来栖(くるす)(もり)()()れば
346(かむ)素盞嗚(すさのを)悪神(わるがみ)
347差遣(さしつか)はしし宣伝使(せんでんし)
348照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)
349(おも)はず()らず出会(でつく)はし
350変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)自由(じいう)自在(じざい)
351妖術(えうじゆつ)幻術(げんじゆつ)使(つか)ひたて
352(われ)()一行(いつかう)荒風(あらかぜ)
353()()()りゆく(その)(ごと)
354一度(いちど)予定(よてい)退却(たいきやく)
355余儀(よぎ)なくされし(くや)しさよ
356さはさり(なが)()(なか)
357(あく)がいつ(まで)(つづ)かうか
358(あま)岩戸(いはと)(とざ)したる
359(はや)素盞嗚(すさのを)悪神(あくがみ)
360吾々(われわれ)一行(いつかう)堂々(だうだう)
361(くつわ)(なら)べて()()めば
362何条(なんでう)(もつ)てたまるべき
363(かぜ)をくらつて()げちるか
364(ただし)降参(かうさん)(いた)さむと
365吠面(ほえづら)かわいてあやまるか
366ビワの(みづうみ)乗越(のりこ)えて
367()(やうや)くにくれの(うみ)
368コーカス(ざん)()()くか
369(なに)()もあれ(わが)(ぐん)
370勝利(しようり)()()(ごと)(なり)
371あゝ(いさ)ましし(いさ)ましし
372勝鬨(かちどき)あぐるは(とき)()
373(すす)めや(すす)めいざ(すす)
374正義(せいぎ)刃向(はむか)(やいば)なし
375大黒主(おほくろぬし)御言(みこと)もて
376(すす)()れこそ(かみ)(みや)
377(かみ)(いくさ)堂々(だうだう)
378(すす)めよ(すす)めいざ(すす)
379河鹿(かじか)(たうげ)(さか)しとも
380吹来(ふきく)(かぜ)(つよ)くとも
381三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
382仮令(たとへ)幾万(いくまん)(きた)るとも
383(あらし)(まへ)灯火(ともしび)
384はかなく()ゆるは(あん)(うち)
385(すす)めよ(すす)めいざ(すす)
386悪魔(あくま)軍勢(ぐんぜい)(ほろ)(まで)
387(こゑ)(いさ)ましく、388悪神(あくがみ)悪神(あくがみ)としてヤハリ自分(じぶん)味方(みかた)(ぜん)(しん)じてゐるものの(ごと)く、389天地(てんち)()ぢず進軍歌(しんぐんか)(うた)つてゐる。390伊太公(いたこう)逆上(のぼ)せあがり、391(その)まま(もの)をも()はず、392韋駄天(ゐだてん)(ばし)りに密集(みつしふ)部隊(ぶたい)()して、393金剛杖(こんがうづゑ)(うち)ふり(うち)ふり夜叉(やしや)(ごと)くにあばれ()んで(しま)つた。
394 片彦(かたひこ)395久米彦(くめひこ)(ひき)ゐる軍隊(ぐんたい)(にはか)にどよめき()ち、396(けは)しき(ほそ)谷路(たにみち)右往(うわう)左往(さわう)(かけ)まはり(わめ)(さけ)(こゑ)397(たに)木霊(こだま)(ひび)かせてゐる。
398大正一一・一一・二七 旧一〇・九 松村真澄録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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