霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 至善(しぜん)至悪(しあく)〔一二九五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第1篇 和光同塵 よみ(新仮名遣い):わこうどうじん
章:第1章 至善至悪 よみ(新仮名遣い):しぜんしあく 通し章番号:1295
口述日:1923(大正12)年01月20日(旧12月4日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
本巻物語の主人公である初稚姫および高姫の霊魂上に位置およびその情態を略叙して参考に供することとする。
初稚姫は清浄無垢の妙齢の娘である。現代のごとく学校教育を受けたのではない。幼少より母を失い、父と共に各地の霊山霊場に参拝し、あるいは神霊に感じて、三五教の宣伝使と共に種々の神的苦行を経たため、霊魂の光が光輝を増し、黄金時代の天的天人の域に向上していた。
宣伝使としても地上の天人としても実に優秀な神格者であった。ゆえに初稚姫は大神の許しあるときは、一声天地を震撼し、風水火の災いをも自由に鎮停しうる神力を備えていた。
初稚姫は身に備わった愛善の徳により容易に神力を表すことを好まなかった。姫の精霊は大神の直接神格の内流に充たされ、霊肉共に一見して凡人ならざることがうかがわれるのであった。
それゆえ八岐大蛇の跋扈する月の国へただ一人出征しても、神を親とし主人とし、愛善の徳と信真の徳を杖となし糧となして恐れるものもなかった。
目に触れるもの身に接近するものことごとく親しき友となし、これらの同士となって和合帰順悦服の神力を発揮しつつ進むことを得たのである。かつまた理性的にしてものに偏せず、中庸の真理も超越していた。理性は、神愛と神真が和合した円満な情動によって獲得されるのである。
さて、真理には三つの階級がある。人間はこの三階級の真理に居らなければ、神人合一の境に入ることは不可能である。
低級の真理とは、法律・政治の大本を過たずによく現界に処し最善を尽くすことである。中程の真理は、君臣・夫婦・父子・兄弟・朋友・社会に対して五倫五常の完全な実を挙げることである。
しかしいかにこれらの真理を解し説き、説示するといえども、実践しない者はいわゆる偽善者であり、無知の者にもかえって劣ると霊界では定められている。
最高の真理とは、愛善と信真に居り、大神の直接内流を受け、神と和合し外的観念を去り、万事内的に住し得るものをいうのである。
これに照らせば、現代の人間が理性的とか理知的とか言っている言説や著書も、ひとつとして理性的なものはないのである。
不完全な自然界の知識に立脚し、地獄界より来る自愛や世間愛に基づく偽りの知識によって薫陶されたものであるので、彼らは精霊界に至れば生前の虚偽的知識や学問を全部剥奪され、残るは恐怖と悲哀と暗黒のみである。
霊的および神的生涯の準備がなければ、精霊界に至った時にかえって無知な人間にも数等劣ってしまう。むしろ、現界において無知なる者は、おぼろげながらも霊界を信じかつ恐れるがゆえに、驕慢の心無く心中常に従順の徳に居る。そのような者は、霊界に入りし後は神の光明に浴し、神の愛を受けるものである。
現界においては、到底その人間の真相はわからに。初稚姫のように肉体そのままで天人の列に加わった神人であれば、その人の面貌・言語・動作に触れてその生涯と人格を洞察し得るのである。
しかし現代人は肉体の表衣に包まれてその真相を悟ることはできない。偽善者を見じゃとみなし聖人とみなして賞揚する例は沢山にある。
瑞月はかつて高熊山の修業のおり、神の許しを得て霊界を見聞した時、過去の智者賢者、英諭豪傑と言われる古人の精霊に会い、その情態を見聞して以外の感に打たれたことがしばしばあった。彼らは自愛と世間愛に惑溺し、自尊心強く神の存在を認めざりしため、霊界にあっては実に弱き者、貧しき者、賤しき者として遇せられていたのである。
現代の政治家・智者学者と唱えられる人たちに対しても、これを思えば実に憐憫の情に耐えないのである。かれら憐れな地獄の住人を救い上げようと焦慮しても、彼らの売文が神に向かって閉ざされ、地獄に向かって開かれているため、これを光明に導くのは容易な業ではない。
初稚姫の神霊はふたたび大神の意志を奉戴し、地上に降臨して大予言者となって綾の聖地に現れ、その純朴無垢なる記憶と想念を通じて、天来の福音をあるいは筆に、あるいは口に伝達し、地上を五六七の天国に順化せしめんと計らせ給うこと、三十年に及んだ。
されど頑迷不霊の人間はこれを恐れ忌むことはなはだしく、これを嫉視し憎悪していた。このような有様においては、百の天人は大神の命を奉じていかなる快挙に出で給うやもはかり難いのである。
次に高姫の霊界上の地位について少しく述べる必要がある。宇宙には天界、精霊界、地獄界の三界がある。精霊界は霊界と現界の中間に介在している。
まず、精霊界には自然的・肉体的精霊なるものが団体を作り、現界人を邪道に導こうとしていることを知らなければならない。肉体的精霊にはいろいろな種類があり、天狗、狐狸、大蛇、妖魅など暗黒な現界に跋扈跳梁している。
これらは地獄界でもなく、一種の妖魅界または兇党界と称し、人間にたとえれば浮浪の徒である。かれらは山の入り口、川の堤、池の岸、墓場の付近などに群居している。暗迷にして頑固な妄想家のすきを窺い、その欲望に付け入って入ってくるのである。
肉体的精霊は人間の想念と和合せず、体中に侵入し来たり、その諸感覚を占有し、口舌を用いて語り、手足をもって動作する。その精霊は憑依した人間をすべて吾が物と思っている。
あるときは人間の記憶と想念に入って大神と自称し予言者をまねる。その人間はついに自らを真の予言者と信じるに至ってしまう。されどこうした精霊は少しの先見の明なく、一息先のことも探知しえない。
このような精霊に憑依された人間が、たとえば開祖の神諭を読みふけり、記憶し想念中に蓄え置くとき、侵入してきた悪霊はこれを基礎として種々の予言的言辞を弄し、頑迷無知な世人を籠絡して邪道に引き入れようとするものである。
悪霊の矛盾に気が付いて反抗的態度に出ても、悪霊に説伏されたり肉体上の苦痛を与えられたりしてついに悪霊に感服するに至ると、もはやどうすることもできなくなる。いかなる神の説示も認めることはできなくなり、自ら天下唯一の予言者であるなどと狂的態度に出ることになる。
この物語の主人公たる高姫はこの好適例である。ゆえに高姫は、自己の記憶と想念と憑霊の言葉のほかには一切を否定し、数多の人間を熱狂的に吾が説に悦服せしめようと焦慮するのである。
高姫はいったん改心の境に入ったように見えたが、ふたたびつきまとえる兇霊は肉体の隙を見澄まして侵入し来たり、大狂態を演じるに至ったのである。
兇霊が憑依した偽予言者に魅入られた人間は、いかなる善人であっても相当に思索力を有する人物でも、その術中に巻きこまれてしまう。いったん迷わされた人間は容易に目が醒めるものではない。
されど神はあくまでも至仁至愛にましますゆえに、弥勒胎蔵の神鍵をもって宝庫を開き、天国の光明である智慧証覚を授け、愛善の徳に包んで救い上げ、一人でも多く天国の生涯を送らせようとなし給い、予言者に聖霊を充たして天国の福音を伝えさせることになったのである。
祠の森に杢助を名乗って現れた妖怪は、兇悪な自然的精霊にして高姫の心性に相似していたために互いに相慕い求め、狂態を演出して神業の妨害をなした。ついには神律に照らされて根底の国に投げおろされるまで、その暴動をやめないものである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5001
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第9輯 149頁 修補版: 校定版:7頁 普及版:3頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 【教育編】第一篇 皇道教育 > 第七章 至善至悪
001 本巻(ほんくわん)物語(ものがたり)主人公(しゆじんこう)たる初稚姫(はつわかひめ)(およ)高姫(たかひめ)霊魂(れいこん)(じやう)位置(ゐち)(およ)(その)情態(じやうたい)略舒(りやくじよ)して参考(さんかう)(きよう)することとする。
002 初稚姫(はつわかひめ)清浄(せいじやう)無垢(むく)(わか)妙齢(めうれい)(むすめ)である。003(しか)して(べつ)現代(げんだい)(ごと)学校(がくかう)教育(けういく)()けたのではない。004(ただ)幼少(えうせう)より(はは)(うしな)ひ、005(ちち)(とも)各地(かくち)霊山(れいざん)霊場(れいぢやう)参拝(さんぱい)し、006(あるひ)神霊(しんれい)(かん)じて、007三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(とも)種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)神的(しんてき)苦行(くぎやう)()たるため、008純粋(じゆんすゐ)無垢(むく)なる霊魂(みたま)(ひかり)益々(ますます)(その)光輝(くわうき)()し、009玲瓏(れいろう)(たま)(ごと)く、010黒鉄(こくてつ)時代(じだい)(うま)れながら、011(その)本体(ほんたい)(すなは)内分(ないぶん)(てき)生涯(しやうがい)は、012黄金(わうごん)時代(じだい)天的(てんてき)天人(てんにん)向上(かうじやう)して()た。013(ゆゑ)宣伝使(せんでんし)としても(また)地上(ちじやう)天人(てんにん)としても、014(じつ)優秀(いうしう)神格者(しんかくしや)であつた。015大神(おほかみ)神善(しんぜん)神真(しんしん)とを()体得(たいとく)し、016無限(むげん)(ちから)(あた)へられ、017(かみ)直接(ちよくせつ)内流(ないりう)(その)精霊(せいれい)(およ)肉身(にくしん)(みた)せ、018(その)容貌(ようばう)(ならび)皮膚(ひふ)光沢(くわうたく)019柔軟(じうなん)さなどは(ほとん)どエンゼルの(ごと)くであつた。020(ゆゑ)初稚姫(はつわかひめ)大神(おほかみ)(ゆる)しある(とき)は、021一声(いつせい)天地(てんち)震撼(しんかん)し、022一音(いちおん)風雨(ふうう)雷霆(らいてい)叱咤(しつた)し、023地震(ぢしん)(かみなり)海嘯(つなみ)その(ほか)風水火(ふうすいくわ)(わざはひ)をも自由(じいう)鎮定(ちんてい)()神力(しんりき)(そな)へてゐた。024されど初稚姫(はつわかひめ)愛善(あいぜん)(とく)(まつた)()(そな)はり、025謙譲(けんじやう)なるを(もつ)処世(しよせい)(じやう)第一(だいいち)となしゐたれば、026容易(ようい)神力(しんりき)(あら)はす(こと)(この)まなかつた。027(しか)して(ひめ)精霊(せいれい)大神(おほかみ)直接(ちよくせつ)神格(しんかく)内流(ないりう)(みた)され、028霊肉(れいにく)(とも)一見(いつけん)して凡人(ぼんじん)ならざるを(さと)()らるるのであつた。029(ひめ)()天人(てんにん)(かた)り、030(あるひ)大神(おほかみ)御声(みこゑ)()き、031(しん)(ぜん)よりする智慧(ちゑ)証覚(しようかく)具備(ぐび)したる(てん)は、032三五教(あななひけう)きつての出藍(しゆつらん)のほまれを(ほしいまま)にしてゐた。033それ(ゆゑ)八岐(やまた)大蛇(をろち)跋扈(ばつこ)する(つき)御国(みくに)神軍(しんぐん)として出征(しゆつせい)するにも、034(ただ)一人(ひとり)従者(ともびと)もつれず、035(しん)(かみ)(おや)とし主人(あるじ)とし、036師匠(ししやう)とし、037愛善(あいぜん)(とく)信真(しんしん)(とく)(つゑ)となし(あるひ)(かて)となし、038天上(てんじやう)天下(てんか)(おそ)るるものなく、039猛獣(まうじう)毒蛇(どくじや)()(くる)深山(しんざん)幽谷(いうこく)曠野(くわうや)をも、040天国(てんごく)花園(はなぞの)()ぐるが(ごと)心地(ここち)し、041()()るるもの、042()接近(せつきん)するもの、043(ことごと)(これ)(した)しき(とも)となし、044(かつ)(これ)()同士(どうし)となつて和合(わがふ)帰順(きじゆん)悦服(えつぷく)(とう)神力(しんりき)発揮(はつき)しつつ(すす)むことを()たのである。045(ゆゑ)如何(いか)なる現界(げんかい)(てき)智者(ちしや)学者(がくしや)()ひて談話(だんわ)(まじ)ふる(とき)も、046一度(いちど)として相手(あひて)(がた)嫌悪(けんを)(じやう)(おこ)さしめたる(こと)なく、047(その)()(ところ)(いづ)れも霊的(れいてき)神的(しんてき)にして、048(あい)(しん)とに(みた)されざるはなく、049草野(さうや)(かぜ)行過(ゆきす)ぎるが(ごと)風靡(ふうび)し、050帰順(きじゆん)し、051和合(わがふ)せしめねばおかなかつた。052天稟(てんりん)美貌(びばう)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(いづ)れも愛善(あいぜん)(とく)真善(しんぜん)(ひかり)なる大神(おほかみ)より(きた)るが(ゆゑ)に、053(ひめ)面前(めんぜん)(きた)(もの)は、054(いづ)れも歓喜(くわんき)悦服(えつぷく)せざるはなかつたのである。055(かつ)(また)理性(りせい)(てき)にしてものに(へん)せず、056中庸(ちうよう)057中和(ちうわ)058大中(だいちう)などの真理(しんり)超越(てうゑつ)してゐた。
059 (そもそ)(この)理性(りせい)神愛(しんあい)神真(しんしん)和合(わがふ)より(きた)(ところ)円満(ゑんまん)なる情動(じやうどう)によつて獲得(くわくとく)し、060(この)情動(じやうどう)よりして真理(しんり)透徹(とうてつ)するものである。061さて真理(しんり)には(みつ)つの階級(かいきふ)がある。062(しか)して人間(にんげん)(この)三階級(さんかいきふ)真理(しんり)にをらなければ、063到底(たうてい)神人(しんじん)合一(がふいつ)(きやう)()(こと)不可能(ふかのう)である。064法律(はふりつ)065政治(せいぢ)大本(たいほん)(あやま)たず()現界(げんかい)(しよ)し、066最善(さいぜん)(つく)()るを(しよう)して、067低級(ていきふ)真理(しんり)()るものと()ひ、068(また)君臣(くんしん)夫婦(ふうふ)父子(ふし)兄弟(けいてい)朋友(ほういう)(ならび)社会(しやくわい)(たい)し、069五倫(ごりん)五常(ごじやう)完全(くわんぜん)なる(じつ)()()(とき)は、070これを(なか)(ほど)真理(しんり)()(もの)といふのである。071(しか)しながら如何(いか)法律(はふりつ)(かい)政治(せいぢ)()き、072(あるひ)五倫(ごりん)五常(ごじやう)詳細(しやうさい)説示(せつじ)了得(れうとく)すると(いへど)も、073(これ)実践(じつせん)躬行(きうかう)()ざる(もの)所謂(いはゆる)偽善者(きぜんしや)にして、074無智(むち)賤人(せんじん)にも(おと)るものと霊界(れいかい)(おい)(さだ)めらるるのである。075(また)(あい)(ぜん)(しん)(しん)()り、076大神(おほかみ)直接(ちよくせつ)内流(ないりう)()け、077(かみ)和合(わがふ)し、078外的(ぐわいてき)観念(くわんねん)()り、079万事(ばんじ)内的(ないてき)(ぢゆう)()るものを(しよう)して最高(さいかう)真理(しんり)()(もの)()ふのである。080(ゆゑ)現代(げんだい)(おい)聖人(せいじん)君子(くんし)(とな)へられ(あるひ)智者(ちしや)識者(しきしや)(しよう)せられ、081高位(かうい)高官(かうくわん)(あが)めらるる人物(じんぶつ)(いへど)も、082最高(さいかう)真理(しんり)()らざる(もの)は、083霊界(れいかい)(おい)ては(じつ)(いや)しく(みにく)く、084(かつ)中有界(ちううかい)(また)地獄界(ぢごくかい)群居(ぐんきよ)せざるを()ざる(もの)である。085霊界(れいかい)()つて現界(げんかい)(とき)めく智者(ちしや)学者(がくしや)(また)有力者(いうりよくしや)といはるる(もの)精霊(せいれい)出会(でつくは)し、086(その)情況(じやうきやう)()れば、087(いづ)れも魯鈍(ろどん)痴呆(ちはう)(さう)(あら)はし、088身体(しんたい)動作(どうさ)(まつた)不正(ふせい)にして四肢(しし)(をのの)(ふる)ひ、089(すこ)しの(かぜ)にも()()りさうになつてゐるものである。090(これ)(すべ)てが理性(りせい)(てき)ならざるが(ゆゑ)である。091現代(げんだい)人間(にんげん)理性(りせい)(てき)とか理智(りち)(てき)とか、092物知(ものし)(がほ)()つてゐる(その)言説(げんせつ)(また)博士(はかせ)学士(がくし)(など)著書(ちよしよ)()るも、093(いつ)として理性(りせい)(てき)なるものはない。094(いづ)れも自然界(しぜんかい)基礎(きそ)とせる不完全(ふくわんぜん)なる先賢(せんけん)先哲(せんてつ)()はれたる学者(がくしや)所説(しよせつ)教義(けうぎ)基礎(きそ)とし、095古今(ここん)東西(とうざい)書籍(しよせき)をあさり、096(これ)記憶(きおく)(そん)し、097(その)記憶(きおく)(もと)として種々(しゆじゆ)自然(しぜん)(てき)知識(ちしき)発育(はついく)せしめたるものである。098(ゆゑ)(ただ)記憶(きおく)のみにして、099(けつ)して理性(りせい)(てき)知識(ちしき)ではない。100現代(げんだい)(すべ)ての学者(がくしや)主神(すしん)大神(おほかみ)直接(ちよくせつ)(また)間接(かんせつ)内流(ないりう)受入(うけい)るる(こと)(あた)はず、101(いづ)れも地獄界(ぢごくかい)より(きた)自愛(じあい)(およ)世間愛(せけんあい)(もとづ)(いつは)りの知識(ちしき)()つて薫陶(くんたう)されたるものなれば、102(かれ)()霊体(れいたい)分離(ぶんり)関門(くわんもん)()精霊界(せいれいかい)(いた)(とき)は、103生前(せいぜん)(おけ)虚偽(きよぎ)(てき)知識(ちしき)学問(がくもん)記憶(きおく)全部(ぜんぶ)剥奪(はくだつ)され、104(のこ)るは(ただ)恐怖(きようふ)悲哀(ひあい)暗黒(あんこく)とのみである。105(すべ)自愛(じあい)より()づる学識(がくしき)智能(ちのう)(いづ)れも暗黒面(あんこくめん)(むか)つてゐるが(ゆゑ)に、106(かみ)のまします天界(てんかい)光明(くわうみやう)()()(とほ)ざかりゐたれば、107精霊界(せいれいかい)()りし(とき)霊的(れいてき)(およ)神的(しんてき)生涯(しやうがい)準備(じゆんび)(ひとつ)もなく、108(いな)(かへ)つて魯鈍(ろどん)無智(むち)人間(にんげん)(おと)ること数等(すうとう)である。109魯鈍(ろどん)無智(むち)なる(もの)は、110(つね)朧気(おぼろげ)ながらも霊界(れいかい)(しん)()(おそ)るるが(ゆゑ)に、111驕慢(けうまん)(こころ)なく、112心中(しんちう)(つね)従順(じゆうじゆん)(とく)()りしが(ゆゑ)に、113霊界(れいかい)()りし(のち)(かみ)光明(くわうみやう)(よく)し、114(かみ)(あい)()くるものである。
115 (また)現界(げんかい)()りては、116到底(たうてい)人間(にんげん)(その)真相(しんさう)(わか)らないものである。117されど初稚姫(はつわかひめ)(ごと)肉体(にくたい)(その)(まま)にて天人(てんにん)(れつ)(くは)はりたる神人(しんじん)は、118よく(その)(ひと)面貌(めんばう)(およ)言語(げんご)動作(どうさ)一度(ひとたび)()るれば、119(その)生涯(しやうがい)()り、120(その)人格(じんかく)如何(いかん)をも洞破(どうは)()るのである。121如何(いか)現代人(げんだいじん)法律(はふりつ)をよく(まも)り、122(あるひ)(だい)政治家(せいぢか)()められ、123智者(ちしや)仁者(じんしや)()はるる(こと)あるとも、124肉体(にくたい)表衣(へうい)(つつ)まれ()るを(もつ)て、125暗冥(あんめい)なる人間(にんげん)はこれが真相(しんさう)(さと)()ることは出来(でき)ない。126肉体人(にくたいじん)(その)交際(かうさい)(さい)し、127(こころ)(おも)はざる(ところ)()ふことあり、128(あるひ)(おも)はざる(ところ)129(ほつ)せざる(ところ)()さねばならぬことがある。130(いか)るべき(とき)(いか)らず、131(あるひ)少々(せうせう)無理(むり)なことでも、132(なん)とかして表面(へうめん)(よそほ)ひ、133世人(せじん)をして(かへ)つて(これ)聖者(せいじや)仁者(じんしや)(おも)はしめてゐる(こと)(おほ)い。134(また)肉体人(にくたいじん)如何(いか)なる偽善者(きぜんしや)虚飾(きよしよく)判別(はんべつ)するの(ちから)なければ、135賢者(けんじや)看做(みな)し、136聖人(せいじん)看做(みな)して、137(おほ)いに賞揚(しやうやう)することは沢山(たくさん)(れい)がある。138(ゆゑ)(みづ)御霊(みたま)神諭(しんゆ)にも……(ひと)()(ぜん)となす(ところ)139(かなら)ずしも(ぜん)ならず、140(ひと)()(あく)となす(ところ)141(かなら)ずしも(あく)ならず、142善人(ぜんにん)()悪人(あくにん)()ふも、143(ただ)頑迷(ぐわんめい)無智(むち)なる盲目(まうもく)世間(せけん)()(えい)じたる幻像(げんざう)(ほか)ならない……と(しめ)してあるのは(この)理由(りいう)である。144瑞月(ずゐげつ)()つて高熊山(たかくまやま)修業(しゆげふ)(をり)145(かみ)(ゆる)しを()けて霊界(れいかい)見聞(けんぶん)したる(とき)146わが記憶(きおく)(のこ)れる古人(こじん)(また)現代(げんだい)肉体(にくたい)(いう)せる英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)147智者(ちしや)賢者(けんじや)といはるる人々(ひとびと)精霊(せいれい)()ひ、148(その)状態(じやうたい)見聞(けんぶん)して意外(いぐわい)(かん)にうたれたことが屡々(しばしば)あつた。149(かれ)()(すべ)ては自愛(じあい)世間愛(せけんあい)在世中(ざいせいちう)惑溺(わくでき)し、150自尊心(じそんしん)(つよ)(かつ)(かみ)存在(そんざい)(みと)めざりし(もの)のみなれば、151霊界(れいかい)()りては(じつ)(よわ)(もの)152(まづ)しき(もの)153(いや)しき(もの)として(ぐう)せられつつあつたのである。154(これ)(おも)へば現代(げんだい)()ける政治家(せいぢか)(また)智者(ちしや)学者(がくしや)などの()(うへ)(おも)ふにつけ、155(じつ)憐愍(れんびん)(じやう)()へない(おも)ひがするのである。156如何(いか)にもして大神(おほかみ)愛善(あいぜん)(とく)信真(しんしん)(ひかり)に、157(かれ)()(まよ)へる(あは)れな地獄(ぢごく)住人(ぢゆうにん)を、158せめて精霊界(せいれいかい)にまで(すく)()げ、159無限(むげん)永苦(えいく)(まぬが)れしめむと焦慮(せうりよ)すれども、160(かれ)()霊性(れいせい)(その)内分(ないぶん)(おい)(かみ)(むか)つて(とざ)され、161脚底(きやくてい)地獄(ぢごく)(むか)つて(ひら)かれあれば、162(これ)光明(くわうみやう)(みちび)くは容易(ようい)(わざ)でない。163(また)如何(いか)なる神人(しんじん)(あい)()()てる大声(たいせい)叱呼(しつこ)福音(ふくいん)も、164霊的(れいてき)盲目者(まうもくしや)165聾者(ろうしや)となり()てたるを(もつ)て、166如何(いか)なる雷鳴(らいめい)(とどろ)きも警鐘(けいしよう)乱打(らんだ)(ひびき)も、167(てん)として鼓膜(こまく)(かん)じないのである。168(ああ)(あは)れむべき(かな)169虚偽(きよぎ)罪悪(ざいあく)()てる地獄道(ぢごくだう)蒼生(さうせい)よ。170ここに初稚姫(はつわかひめ)神霊(しんれい)(ふたた)大神(おほかみ)意思(いし)奉戴(ほうたい)し、171地上(ちじやう)降臨(かうりん)し、172(だい)予言者(よげんしや)となつて(あや)聖地(せいち)(あら)はれ、173(その)純朴(じゆんぼく)無垢(むく)なる記憶(きおく)想念(さうねん)(つう)じて、174天来(てんらい)福音(ふくいん)(あるひ)(ふで)(あるひ)(くち)伝達(でんたつ)し、175地上(ちじやう)地獄(ぢごく)(くわ)して五六七(みろく)天国(てんごく)順化(じゆんくわ)せしめむと(はか)らせ(たま)ふこと、176(ほとん)三十(さんじふ)(ねん)(およ)んだ。177されど頑迷(ぐわんめい)不霊(ふれい)有苗(いうべう)(てき)人間(にんげん)(これ)(おそ)()むこと(はなは)だしく、178(あだか)仇敵(きうてき)(ごと)くに嫉視(しつし)し、179憎悪(ぞうを)するに(いた)つたのである。180ああ()くも(たふと)大神(おほかみ)(つか)はし(たま)聖霊(せいれい)(また)予言者(よげんしや)(げん)無視(むし)し、181軽侮(けいぶ)し、182益々(ますます)虚偽(きよぎ)罪悪(ざいあく)(あらた)めざるに(おい)ては、183(もも)天人(てんにん)大神(おほかみ)(めい)(ほう)じ、184如何(いか)なる快挙(くわいきよ)()(たま)ふやも(はか)(がた)いのである。
185 (つぎ)高姫(たかひめ)霊界上(れいかいぢやう)地位(ちゐ)()いて(すこ)しく()ぶる必要(ひつえう)がある。186宇宙(うちう)には天界(てんかい)187精霊界(せいれいかい)188地獄界(ぢごくかい)三界(さんかい)あることは屡々(しばしば)()べた(ところ)である。189(しか)して精霊界(せいれいかい)霊界(れいかい)現界(げんかい)(また)中間(ちうかん)介在(かいざい)せりと()つてもいい(くらゐ)なものである。190(ゆゑ)精霊界(せいれいかい)には自然(しぜん)(てき)(すなは)肉体(にくたい)(てき)精霊(せいれい)なるものが団体(だんたい)(つく)つて、191現界人(げんかいじん)邪道(じやだう)(みちび)かむとするものある(こと)()らねばならぬ。192肉体(にくたい)(てき)精霊(せいれい)とは、193色々(いろいろ)種類(しゆるゐ)あれども、194(その)(かたち)人間(にんげん)()人間(にんげん)にあらざるあり、195(あるひ)天狗(てんぐ)あり、196狐狸(こり)あり、197大蛇(をろち)あり、198一種(いつしゆ)妖魅(えうみ)ありて、199暗黒(あんこく)なる現界(げんかい)跋扈(ばつこ)跳梁(てうりやう)しつつあり。200(これ)()地獄界(ぢごくかい)にも(あら)ず、201一種(いつしゆ)妖魅界(えうみかい)(また)兇党界(きようたうかい)(しよう)し、202人間(にんげん)(たと)ふれば、203所謂(いはゆる)不浪(ふらう)()である。204(かれ)()人間(にんげん)山窩(さんくわ)(むれ)(ごと)く、205(やま)入口(いりぐち)(かは)(つつみ)(いけ)(きし)206墓場(はかば)附近(ふきん)(など)群居(ぐんきよ)し、207暗冥(あんめい)にして頑固(ぐわんこ)なる妄想家(もうさうか)(きよ)(うかが)ひ、208(その)人間(にんげん)抱持(はうぢ)せる欲望(よくばう)()()つて虚隙(きよげき)(もと)めて()(きた)るものである。209(この)肉体(にくたい)(てき)精霊(せいれい)(また)人間(にんげん)想念(さうねん)和合(わがふ)せずして(その)体中(たいちう)侵入(しんにふ)(きた)り、210(その)諸感官(しよかんくわん)占有(せんいう)し、211(その)口舌(こうぜつ)(もち)ひて(かた)り、212(その)手足(てあし)(もつ)動作(どうさ)するものである。213(しか)して(これ)()精霊(せいれい)(その)憑依(ひようい)せる人間(にんげん)(もの)(もつ)てすべて(わが)(もの)とのみ(おも)ふてゐる。214(ある)(とき)人間(にんげん)記憶(きおく)想念(さうねん)()つて大神(おほかみ)自称(じしよう)し、215(あるひ)予言者(よげんしや)をまね、216(つひ)(みづか)(しん)予言者(よげんしや)(しん)ずるに(いた)るものである。217されど(これ)()精霊(せいれい)(すこ)しも先見(せんけん)(めい)なく、218一息先(ひといきさき)(こと)探知(たんち)()ないものである。219何故(なにゆゑ)なれば(その)心性(しんせい)無明(むみやう)暗黒(あんこく)境域(きやうゐき)()るが(ゆゑ)である。220憑依(ひようい)された人間(にんげん)が、221(たと)へば開祖(かいそ)神諭(しんゆ)()(ふけ)り、222(これ)記憶(きおく)(とど)想念中(さうねんちう)(たくは)へおく(とき)は、223侵入(しんにふ)(きた)りし悪霊(あくれい)(すなは)妖魅(えうみ)は、224(これ)基礎(きそ)として種々(しゆじゆ)予言(よげん)(てき)言辞(げんじ)(ろう)し、225(かつ)(また)筆先(ふでさき)などと(しよう)して、226()たり八合(はちがふ)なことを()(しめ)し、227頑迷(ぐわんめい)無智(むち)なる世人(せじん)籠絡(ろうらく)し、228(つひ)邪道(じやだう)()()れむとするものである。229開祖(かいそ)神諭(しんゆ)に……(さき)()えぬ(かみ)(まこと)(かみ)でないぞよ……と(しめ)されたるは(この)(かん)消息(せうそく)()らされたものである。230(また)熱狂(ねつきやう)なる人間(にんげん)(わが)記憶(きおく)基礎(きそ)として、231(その)想念(さうねん)(はたら)かせて()(きた)りし精霊(せいれい)(わが)記憶(きおく)(そむ)けることを口走(くちばし)り、232(あるひ)()(しめ)(とき)は、233(たちま)審神(さには)(てき)態度(たいど)となり……(なんぢ)大神(おほかみ)真似(まね)(いた)邪神(じやしん)にはあらざるか、234(はや)(わが)肉体(にくたい)()れ……などと反抗(はんかう)(てき)態度(たいど)()づるものもある。235(しか)(なが)(つひ)には(その)悪霊(あくれい)(ため)説伏(せつぷく)せられ、236(あるひ)はいろいろの肉体(にくたい)(じやう)苦痛(くつう)(あた)へられ、237(つひ)にその妖魅(えうみ)(げん)感服(かんぷく)するに(いた)るものである。238サア()うなつた(とき)は、239最早(もはや)()げも(おろ)しも出来(でき)なくなつて、240如何(いか)なる(かみ)光明(くわうみやう)説示(せつじ)承認(しようにん)するの(ちから)なく、241(ただ)(たん)に……われは天下(てんか)唯一(ゆゐいつ)予言者(よげんしや)なり、242無上(むじやう)神人(しんじん)なり、243(われ)なくば(この)蒼生(さうせい)如何(いかん)せむ……と狂的(きやうてき)態度(たいど)()づるものである。244(この)物語(ものがたり)主人公(しゆじんこう)たる高姫(たかひめ)(すなは)(この)好適例(かうてきれい)である。245(ゆゑ)()高姫(たかひめ)自己(じこ)記憶(きおく)想念(さうねん)と、246憑霊(ひようれい)言葉(ことば)(ほか)には一切(いつさい)否定(ひてい)し、247(かつ)熱狂(ねつきやう)(てき)数多(あまた)人間(にんげん)(わが)(せつ)悦服(えつぷく)せしめむと焦慮(せうりよ)するのである。248(その)熱誠(ねつせい)()(ごと)暴風(ばうふう)(ごと)(また)洪水(こうずゐ)(ごと)し。249如何(いか)なる神人(しんじん)有徳者(うとくしや)(これ)説得(せつとく)帰順(きじゆん)せしめ、250善霊(ぜんれい)帰正(きせい)せしむることは天下(てんか)難事(なんじ)である。251(ゆゑ)高姫(たかひめ)一旦(いつたん)改心(かいしん)(きやう)()りし(ごと)()えたれども、252(ふたた)びつきまとへる兇霊(きようれい)(かれ)肉体(にくたい)虚隙(きよげき)()すまし、253(また)もや(うしほ)(ごと)体内(たいない)侵入(しんにふ)(きた)り、254大狂態(だいきやうたい)(えん)ずるに(いた)つたのである。
255 ()かる狂的(きやうてき)憑霊者(ひようれいしや)弁舌(べんぜつ)行為(かうゐ)(もつと)執拗(しつえう)にして、256昼夜(ちうや)間断(かんだん)なくつき(まと)ひ、257(わが)所説(しよせつ)帰服(きふく)せしめねば()まない(てい)勇猛心(ゆうまうしん)抱持(はうぢ)してゐる。258()かる兇霊(きようれい)憑依(ひようい)せる(にせ)予言者(よげんしや)魅入(みい)られたる人間(にんげん)は、259如何(いか)なる善人(ぜんにん)(いへど)も、260(やや)常識(じやうしき)ありと(とな)へられてゐる紳士(しんし)でも、261(また)奸智(かんち)()けたる人間(にんげん)でも、262思索力(しさくりよく)相当(さうたう)(いう)する人物(じんぶつ)でも、263(つひ)には(その)術中(じゆつちう)巻込(まきこ)まれて(しま)ふものである。264かかる(ためし)三十五万(さんじふごまん)年前(ねんぜん)神代(かみよ)のみではない、265(げん)大本(おほもと)(なか)(おい)ても()かる標本(へうほん)(しめ)されてある。266これも大本(おほもと)神示(しんじ)()れば、267(かみ)御心(みこころ)にして、268(ぜん)(あく)との立別(たてわ)けを(しめ)し、269信仰(しんかう)試金石(しきんせき)(あら)はし(たま)ふものたることを感謝(かんしや)せなくてはならぬ。270一旦(いつたん)(まよ)はされたる精霊(せいれい)人間(にんげん)は、271容易(ようい)()()めるものでない。272(しか)しながら(かく)(ごと)渦中(くわちう)(おちい)人間(にんげん)は、273霊相応(みたまさうおう)()によつて、274()むを()ずここに没入(ぼつにふ)するのである。275されど(かみ)()くまでも至仁(しじん)至愛(しあい)にましますが(ゆゑ)に、276弥勒(みろく)胎蔵(たいざう)神鍵(しんけん)(もつ)宝庫(はうこ)(ひら)き、277天国(てんごく)光明(くわうみやう)なる智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(さづ)け、278愛善(あいぜん)(とく)(つつ)んで、279(これ)をせめて中有界(ちううかい)までなりと(すく)()げ、280ここに霊的(れいてき)教育(けういく)(ほどこ)し、281(いち)(にん)にても(おほ)天国(てんごく)生涯(しやうがい)(おく)らしめむとなし(たま)ひ、282仁愛(じんあい)()める聖霊(せいれい)(みた)して、283予言者(よげんしや)(きた)り、284口舌(こうぜつ)(もつ)天国(てんごく)福音(ふくいん)()(つた)(たま)ふこととなつたのである。285(ああ)されど頑迷(ぐわんめい)不霊(ふれい)妖怪(えうくわい)286人獣(にんじう)合一(がふいつ)境域(きやうゐき)墜落(つゐらく)せる精霊(せいれい)(およ)人間(にんげん)は、287天国(てんごく)(すく)ふこと(あだか)(はり)(あな)駱駝(らくだ)(とほ)すよりも(かた)きを熟々(つくづく)(かん)ずる次第(しだい)である。288大本(おほもと)神諭(しんゆ)にも……(かみ)人民(じんみん)とに()をつけるぞよ……とあるは(すなは)精霊(せいれい)肉体人(にくたいじん)とに(たい)しての()言葉(ことば)である。289(ああ)如何(いか)にせむ、290(まよ)へる精霊(せいれい)よ、291人間(にんげん)よ、292(こと)肉体(にくたい)(てき)兇霊(きようれい)(その)身魂(しんこん)占領(せんりやう)されたる妖怪(えうくわい)(てき)(にせ)予言者(よげんしや)身魂(みたま)をや。
293 (ついで)(ほこら)(もり)(おい)杢助(もくすけ)(あら)はれたる妖怪(えうくわい)は、294兇悪(きようあく)なる自然(しぜん)(てき)精霊(せいれい)(すなは)形体(けいたい)(てき)兇霊(きようれい)にして高姫(たかひめ)心性(しんせい)相似(さうじ)し、295接近(せつきん)しやすき便宜(べんぎ)ありしを(もつ)て、296(たがひ)相慕(あひした)相求(あひもと)め、297風車(かざぐるま)(ごと)く、298(まは)灯籠(どうろう)(ごと)く、299終生(しうせい)()ひまはりなどして狂態(きやうたい)演出(えんしゆつ)し、300現界(げんかい)()ふに(およ)ばず霊界(れいかい)悪魔(あくま)となりて神業(しんげふ)妨害(ばうがい)をなし、301(つひ)には神律(しんりつ)(てら)され、302神怒(しんど)()れ、303根底(ねそこ)(くに)最底(さいてい)投下(なげおろ)さるるまで(その)狂的(きやうてき)暴動(ばうどう)()めないものである。304(ああ)(あは)れむべきかな、305肉体(にくたい)(てき)兇霊(きようれい)よ、306(その)機関(きくわん)となりし人間(にんげん)肉体(にくたい)よ、307精霊(せいれい)よ。308(おも)うても(はだへ)(あは)(しやう)ずるやうである。309ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
310大正一二・一・二〇 旧一一・一二・四 松村真澄録)
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