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奇魂(くしみたま)の足(た)らなかつた南洲翁(なんしうをう)

インフォメーション
鏡：水鏡 題名：奇魂の足らなかった南洲翁 よみ： 著者：出口王仁三郎
神の国掲載号：1928（昭和3）年03月号 八幡書店版：337頁 愛善世界社版：147頁 著作集： 第五版：139頁 第三版：139頁 全集：408頁 初版：129頁
概要： 備考： タグ： データ凡例： データ最終更新日： OBC ：kg116
001　大島(おほしま)から鹿児嶋(かごしま)へと、002今度(こんど)の旅行(りよかう)で西郷(さいごう)南洲翁(なんしうをう)の跡(あと)をたづねてみたが、003翁(をう)には惜(をし)い哉(かな)奇魂(くしみたま)が足(た)らなかつた、004と云(い)ふ事(こと)を痛感(つうかん)せずには居(を)れなかつた。005天下(てんか)に号令(がうれい)せうとするものが、006陸路(りくろ)兵(へい)を起(おこ)して道々(みちみち)熊本(くまもと)を通過(つうくわ)して東上(とうじやう)せんとするなどは策(さく)の最(もつと)も拙(せつ)なるものである。007彼(か)の時(とき)急遽(きふきよ)兵(へい)を神戸(かうべ)大阪(おほさか)に送(おく)つて、008名古屋(なごや)以西(いせい)を扼(やく)して仕舞はねばならぬのであつた。009当時(たうじ)物情(ぶつじやう)騒然(さうぜん)として居(ゐ)て、010そんな事(こと)は何(なん)でもなく出来(でき)た事(こと)なのである。011かくて京都(きやうと)、012大阪(おほさか)などの大都市(だいとし)を早(はや)く手(て)に収(をさ)めねば志(こころざし)を伸(の)ぶる事(こと)が出来(でき)ない事(こと)は火(ひ)を観(み)るよりも明(あきら)かな事(こと)であつた。013然(しか)るに事(こと)茲(ここ)に出(い)でずして、014熊本(くまもと)あたりに引(ひ)つかかつて、015愚図(ぐづ)愚図(ぐづ)して居(ゐ)たものであるから、016事(こと)志(こころざし)と違(たが)ひ、017思(おも)ひもよらぬ朝敵(てうてき)の汚名(をめい)を一時(いちじ)と雖(いへど)も着(き)ねばならぬやうになつて仕舞(しま)つたのである。018奇魂(くしみたま)が足(た)らなかつた。019桐野(きりの)利秋(としあき)、020篠原(しのはら)国幹(くにもと)皆(みな)然(しか)りである。021大嶋(おほしま)に滞在中(たいざいちう)、022三回(さんくわい)ばかり西郷(さいごう)翁(をう)の霊(れい)にあつたが、023いろいろ私(わたし)に話(はなし)をして居(を)つた。024「智慧(ちゑ)が足(た)らなかつたなあ」と云(い)ふてやつたら、025「全(まつた)くやり方(かた)が悪(わる)かつた」と云(い)ふて居(を)つた。
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