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千(せん)の利休(りきう)は明智(あけち)光秀(みつひで)

インフォメーション

鏡：水鏡題名：千の利休は明智光秀よみ：著者：出口王仁三郎

神の国掲載号：1926（大正15）年05月号八幡書店版：334頁愛善世界社版：149頁著作集：第五版：191頁第三版：191頁全集：440頁初版：183頁

概要：備考：タグ：データ凡例：データ最終更新日： OBC ：kg148

001　千(せん)の利休(りきう)と云(い)ふ人(ひと)は、002明智(あけち)光秀(みつひで)の成(な)れの果(は)てである。003明智(あけち)光秀(みつひで)は山崎(やまざき)の一戦(いつせん)に脆(もろ)くも敗(やぶ)れて、004遂(つひ)に名(な)もなき一土兵(いちどへい)の為(た)めに竹槍(たけやり)にてつき殺(ころ)されたと、005歴史(れきし)に伝(つた)へられてあるがあれは嘘(うそ)である。006天王山(てんのうざん)の一戦(いつせん)で勝敗(しようはい)の決(けつ)することは、007初(はじ)めからよく承知(しようち)してをつたが、008光秀(みつひで)は将士(しやうし)の度々(たびたび)の迎(むか)へをうけながら、009態(わざ)とグズグズして居(ゐ)て、010遂(つひ)に勝(かち)を秀吉(ひでよし)に譲(ゆづ)つたのである。011実(じつ)は疾(と)くに光秀(みつひで)と秀吉(ひでよし)との間(あひだ)には妥協(だけふ)が成立(せいりつ)して居(ゐ)たのである。012聡明(そうめい)なる光秀(みつひで)は、013たとへ如何(いか)なる事情(じじやう)があつたにもせよ、014いつたん主(しゆ)殺(ごろし)の汚名(をめい)を着(き)たものが、015天下(てんか)の将軍(しやうぐん)となつても永続(ながつづ)きがせぬと云(い)ふ事(こと)をよく承知(しようち)して居(ゐ)て秀吉(ひでよし)に勝(かち)を譲(ゆづ)つたのである。016そして彼(かれ)は頭(あたま)を丸(まる)めてお茶(ちや)坊主(ばうず)となり、017萩(はぎ)の枝折戸(しをりど)四畳半(よでふはん)の中(なか)にあつて、018天下(てんか)の大事(だいじ)を論(ろん)じ、019謀(はかりごと)を廻(めぐ)らして秀吉(ひでよし)を太閤(たいこう)の地位(ちゐ)迄(まで)押(お)しのぼして仕舞(しま)つたのである。020彼(かれ)は実(じつ)に秀吉(ひでよし)の好参謀(かうさんぼう)であつたのである。021朝鮮(てうせん)征伐(せいばつ)なども、022彼(かれ)の献策(けんさく)に出(で)たものである。023茶室(ちやしつ)に這入(はい)るには丸腰(まるごし)となつてにじり口(ぐち)より入(い)らねばならぬ。024元亀(げんき)天正(てんしやう)時代(じだい)の荒武者(あらむしや)を制御(せいぎよ)操縦(さうじう)するに、025もつて来(こ)いの場所(ばしよ)方法(はうはふ)であつた。026第一(だいいち)秘密(ひみつ)を保(たも)つに絶好(ぜつかう)であつた。027後(のち)彼(かれ)は娘(むすめ)の美貌(びぼう)が禍(わざはい)の因(いん)をなして自殺(じさつ)を余儀(よぎ)なくせしめられたと、028世(よ)に伝(つた)へられて居(ゐ)るが、029全(まつた)く跡形(あとかた)もない事(こと)である。030英雄(えいゆう)、031英雄(えいゆう)を知(し)る諸般(しよはん)機微(きび)の消息(せうそく)は俗人(ぞくじん)には分(わか)らぬ。

032　筆者(ひつしや)がこのお話(はなし)を伺(うかが)つて、033或時(あるとき)の事(こと)二三(にさん)の方々(かたがた)にお話(はなし)して居(を)りました、034偶(たまたま)座(ざ)に岡山(おかやま)の太田(おほた)栄子(ゑいこ)夫人(ふじん)が居(を)られて、035この話(はなし)を裏書(うらがき)する面白(おもしろ)い物語(ものがたり)をせられましたので、036左(さ)に御紹介(ごせうかい)致(いた)します。

037　太田(おほた)夫人(ふじん)は、038大正(たいしやう)九年(くねん)の頃(ころ)、039聖師様(せいしさま)から「千(せん)の利休(りきう)は明智(あけち)光秀(みつひで)である」と云(い)ふ事(こと)を承(うけたま)はつて、040それを師匠(ししやう)（お茶(ちや)の先生(せんせい)）の名倉(なくら)某氏(ぼうし)に話(はな)されたさうです。041さうすると名倉(なくら)氏(し)はそれを又(また)家元(いへもと)（当時(たうじ)第十三代(だいじふさんだい)円能斎(ゑんのうさい)氏(し)）に話(はな)されました、042すると円能斎(ゑんのうさい)氏(し)の顔色(かほいろ)がサツと変(かは)つて暫(しばら)くは物(もの)も云(い)はれなかつたさうですが、043太(ふと)い吐息(といき)と共(とも)に口(くち)を突(つ)いて出(で)た言葉(ことば)は、044「まあどうしてそれが分(わか)つたのですか」と云(い)ふ事(こと)であつたと云(い)ふ事(こと)です。045そして、046更(さら)に語(ご)をついで、047「その事(こと)こそ、048千家(せんけ)に伝(つた)はる、049一子相伝(いつしさうでん)の大秘密(だいひみつ)であつて、050後(あと)を嗣(つ)ぐ長男(ちやうなん)のみが知(し)つて、051次(つぎ)から次(つぎ)へと言(い)ひつたへ語(かた)りつぎて、052世(よ)に知(し)るものが絶(た)えて無(な)い筈(はず)です。053どうしてそれが分(わか)つたのでせう」と聞(き)くので、054名倉(なくら)氏(し)は「霊覚(れいかく)によつて分(わか)つたのです。055丹波(たんば)の国(くに)綾部町(あやべちやう)に、056大神通力(だいじんつうりき)を供(そな)へた聖者(せいじや)がありましてその人(ひと)の霊覚(れいかく)によつて、057其(その)秘事(ひじ)が分(わか)つて来(き)たのです」とて、058聖師様(せいしさま)に関(くわん)するお話(はなし)をせられました。059円能斎(ゑんのうさい)氏(し)はいたく驚(おどろ)き且(かつ)感(かん)じ入(い)り、060遂(つひ)に執事(しつじ)を派(は)して綾部(あやべ)に参拝(さんぱい)せしめ、061次(つい)で自(みづか)らも亦(また)参拝(さんぱい)せられたさうですが、062深(ふか)くこの事(こと)を秘(ひ)して人(ひと)に語(かた)らなかつた。063名倉(なくら)氏(し)も又(また)秘(ひ)して仕舞(しま)つたのですが、064不思議(ふしぎ)な事(こと)には三人(さんにん)が三人(さんにん)共(とも)、065相(あひ)前後(ぜんご)して同(おな)じ心臓病(しんざうびやう)の為(た)め倒(たふ)れて仕舞(しま)つたさうです。

066　太田(おほた)夫人(ふじん)は「これは秘(ひ)してはならぬと思(おも)ひ、067皆(みな)さんにお話(はなし)して居(を)ります」と語(かた)られました。068一座(いちざ)のものは是(これ)を聞(き)いて、069今更(いまさら)の如(ごと)く驚(おどろ)き、070聖師様(せいしさま)の称(たた)へ盡(つく)せぬ御霊覚(ごれいかく)の程(ほど)を感(かん)じ入(い)りました。071そして聖師様(せいしさま)がもし、072此(この)霊覚(れいかく)によつて訂正(ていせい)さるるならば、073世界(せかい)の歴史(れきし)も随分(ずいぶん)変(かは)つて来(く)るかも知(し)れないと思(おも)ひました。

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