霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一章 春野(はるの)(たび)〔六二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第1篇 弥仙の神山 よみ(新仮名遣い):みせんのみやま
章:第1章 春野の旅 よみ(新仮名遣い):はるののたび 通し章番号:629
口述日:1922(大正11)年04月24日(旧03月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
紅包む弥生の空に朧に月がかかる。和知の里の小路をとぼとぼと、悦子姫、音彦、加米彦、夏彦らの宣伝使一行が歩いてくる。
向こうから二人連れがやってきて、宣伝使たちの方を見ながらひそひそとささやきつつ眺めていた。これは英子姫と亀彦であった。
一行は邂逅し、芝生の上に座って、これまで宣伝の旅の経緯を語り合った。
英子姫は、弥仙山に父神・神素盞嗚大神の神務を帯びて登ったというが、その内容については明かさなかった。悦子姫一行は、英子姫に勧められて弥仙山に登ることとし、英子姫と亀彦に別れを告げた。
険しい弥仙山を登っていく折りしも、加米彦と夏彦は軽口をたたいている。
途中で、一人の爺に声をかけられ、家によって神様の話をするように懇願される。聞けば、以前にここを通った英子姫一行が、後から来る宣伝使に神の道を聞け、と諭したのだという。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-03-07 19:19:32 OBC :rm1801
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第3輯 639頁 修補版: 校定版:7頁 普及版:3頁 初版: ページ備考:
001(かぜ)(あたた)かく八重霞(やへがすみ)
002春日(はるひ)伯母(をば)はクレさうで
003クレナイに(つつ)弥生空(やよひぞら)
004(おぼろ)(つき)中天(ちうてん)
005()らず(くも)らずボンヤリと
006かかる山家(やまが)(ゆふ)まぐれ
007(かは)(なが)れは淙々(そうそう)
008(とどろ)(わた)和知(わち)(さと)
009(そら)(ふう)じて立並(たちなら)
010老樹(らうじゆ)(した)小径(せうけい)
011トボトボ(きた)宣伝使(せんでんし)
012(かみ)(をしへ)をどこまでも
013(つた)へにや山家(やまが)肥後(ひご)(はし)
014(つき)(ひかり)(ちから)とし
015(かみ)(めぐみ)(つゑ)となし
016(からす)(ねむ)鷹栖(たかのす)
017川辺(かはべ)(さと)(すす)()
018(かほ)(かたち)悦子姫(よしこひめ)
019(みづ)(なが)れの音彦(おとひこ)
020やがては(きた)夏彦(なつひこ)
021九十九(つくも)(まが)りの山路(やまみち)
022(まが)つた(こし)のトボトボと
023()はぬばかりに加米彦(かめひこ)
024草鞋(わらぢ)(あし)()(なが)
025神子坂(みこさか)(ばし)(たもと)まで
026(きた)(をり)しも(むか)ふより
027スタスタ(きた)二人(ふたり)()
028(なに)かヒソヒソ(ささや)きつ
029夜目(よめ)()かして一行(いつかう)
030(こころ)()りげに(なが)めゐる。
031二人(英子姫、亀彦)『モシモシ、032一寸(ちよつと)(たづ)(いた)します。033最前(さいぜん)から(うけたま)はれば、034路々(みちみち)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひつつお(いで)になつた(やう)御座(ござ)いますが、035()しやあなたは、036三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)では御座(ござ)いますまいか』
037 加米彦(かめひこ)は、
038加米彦『ヤアさう仰有(おつしや)るあなたは、039(なん)だか聞覚(ききおぼ)えのあるやうな(かん)じが(いた)します。040朧夜(おぼろよ)(こと)とてハツキリお(かほ)(わか)りませぬが、041どなたで御座(ござ)いましたかなア』
042男(亀彦)(わたくし)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)亀彦(かめひこ)(まを)(もの)043(いま)一人(ひとり)(かた)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(さま)のお娘子(むすめご)英子姫(ひでこひめ)()(かた)御座(ござ)います』
044悦子姫『アヽお(なつか)しや、045英子姫(ひでこひめ)(さま)御座(ござ)いましたか、046(わたし)悦子(よしこ)(ござ)ります。047()(ところ)でお()にかかりました。048(わたし)剣尖山(けんさきやま)(ふもと)(おい)てお(わか)(まを)しましてより、049真奈井(まなゐ)(はら)(うづ)宝座(ほうざ)拝礼(はいれい)(いた)し、050それより三岳(みたけ)岩窟(がんくつ)言向和(ことむけやは)し、051鬼熊別(おにくまわけ)割拠(かつきよ)する(おに)(じやう)(ざん)岩窟(がんくつ)を、052四五(しご)同志(どうし)(とも)言霊(ことたま)(もつ)包囲(はうゐ)攻撃(こうげき)(いた)し、053それから生野(いくの)054長田野(をさだの)()え、055神知地(じんちぢ)(やま)魔神(まがみ)征服(せいふく)し、056高城山(たかしろやま)立向(たちむか)ひ、057(ふたた)(みち)(てん)じ、058和知(わち)(なが)れに沿()うて聖地(せいち)引返(ひきかへ)し、059あなた(さま)(おん)()にかかり、060今後(こんご)(わたし)()()るべき方法(はうはふ)を、061()相談(さうだん)申上(まをしあ)げたいと(おも)ひまして、062遥々(はるばる)()(をか)し、063此処(ここ)まで(まゐ)りました』
064英子姫(ひでこひめ)(よろこ)(なが)ら、
065英子姫『アヽ左様(さやう)ですか、066(わたし)其方(そなた)(わか)れてより、067(かみ)(さま)(めい)()り、068弥仙(みせん)深山(しんざん)に、069(ある)使命(しめい)()びて登山(とざん)し、070(いま)(また)(ちち)大神(おほかみ)神霊(しんれい)のお(つげ)()りて、071亀彦(かめひこ)(ともな)ひ、072伊吹山(いぶきやま)(まゐ)途中(とちう)御座(ござ)います。073アヽ()(ところ)でお()にかかりました。074()れの(かた)何方(どなた)(ぞん)じませぬが、075(いづ)三五教(あななひけう)(かた)でせう。076(この)川音(かはおと)()(なが)ら、077出会(であ)うたを(さいは)(ゆつ)くりと休息(きうそく)(いた)しませう』
078悦子姫『それは(ねが)うてもないこと。079(わたし)もどこか()(ところ)があれば一休(ひとやす)(いた)したいと(おも)うて()ました。080……(この)(かた)音彦(おとひこ)加米彦(かめひこ)宣伝使(せんでんし)081一人(ひとり)はウラナイ(けう)(しばら)入信(にふしん)して()夏彦(なつひこ)()(をとこ)御座(ござ)います』
082亀彦(わたくし)亀彦(かめひこ)です。083貴下(あなた)由良(ゆら)(みなと)人子(ひとご)(つかさ)084秋山彦(あきやまひこ)門前(もんぜん)(おい)てお()にかかつた加米彦(かめひこ)さまですか、085コレハコレハ(めう)(ところ)でお()にかかりました。086(また)音彦(おとひこ)さまとは、087フサの(くに)でお(わか)(いた)しました(わたくし)旧友(きういう)ぢやありませぬか』
088音彦左様(さやう)その音彦(おとひこ)御座(ござ)いますよ』
089亀彦遥々(はるばる)(この)自転倒(おのころ)(じま)へお()しになつたのは、090(なに)(ふか)仔細(しさい)御座(ござ)いませう』
091音彦『これに()いては、092種々(いろいろ)珍談(ちんだん)御座(ござ)いまするが、093ユルリと(あと)から申上(まをしあ)げませう。094サアサア(みな)さま、095打揃(うちそろ)うて(この)芝生(しばふ)(うへ)骨休(ほねやす)めを(いた)しませうかい』
096一同(よろ)しからう』
097一同(いちどう)老樹(らうじゆ)(かげ)打解(うちと)け、098手足(てあし)()ばして休息(きうそく)したり。
099(ここ)六人(むたり)宣伝使(せんでんし)
100()つの(はな)()(ふゆ)()
101(かぜ)()()山桜(やまざくら)
102(かほ)りを()びて()(かた)
103(もも)(はなし)(はな)()かせ
104(おも)はず(とき)(うつ)しける。
105音彦『モシ英子姫(ひでこひめ)(さま)106最前(さいぜん)あなたの()言葉(ことば)()れば、107弥仙山(みせんざん)神務(しんむ)()びて()登山(とざん)になつたと(あふ)せられましたなア。108音彦(おとひこ)一度(いちど)(その)霊山(れいざん)へ、109是非(ぜひ)登山(とざん)(いた)したいと(ぞん)じて()ます。110随分(ずゐぶん)嶮岨(けんそ)(ところ)でせうなア』
111英子姫『お(さつ)しの(とほ)り、112(じつ)嶮峻(けんしゆん)深山(しんざん)御座(ござ)います。113(ひる)(なほ)(くら)く、114鬱蒼(うつさう)たる老樹(らうじゆ)(てん)(ふう)じ、115到底(たうてい)日月(じつげつ)(ひかり)(をが)(こと)出来(でき)ませぬ。116(しか)(なが)ら、117貴方(あなた)(がた)登山(とざん)なされますならば、118大変(たいへん)都合(つがふ)()(こと)御座(ござ)います。119(わたし)(ちち)神勅(しんちよく)()りて、120(ひと)つの経綸(けいりん)(おこな)うて()きました。121どうぞあなた(がた)一度(いちど)()つて(くだ)さいませ』
122音彦(その)()経綸(けいりん)とは、123如何(いか)なる御用(ごよう)御座(ござ)いました。124(あらかじ)仰有(おつしや)つて(くだ)さいませぬか。125音彦(おとひこ)(その)覚悟(かくご)(いた)さねばなりませぬ』
126英子姫只今(ただいま)申上(まをしあ)げずとも、127(いで)になれば、128……ハハア(これ)であつたかなア……と自然(しぜん)にお(わか)りになりませう。129先楽(さきたの)しみに、130(この)(はなし)(しばら)保留(ほりう)して()きませう』
131加米彦(かめひこ)『エー英子姫(ひでこひめ)(さま)さう()(をし)みをなさるものぢやない、132アツサリと()つて(くだ)さいナ』
133英子姫(ひでこひめ)『イエイエ宣伝使(せんでんし)言葉(ことば)二言(にごん)御座(ござ)いませぬ。134一旦(いつたん)申上(まをしあ)げぬと()つた(こと)は、135金輪際(こんりんざい)口外(こうぐわい)する(こと)出来(でき)ませぬ』
136加米彦『あなた(さま)綺麗(きれい)女神(めがみ)にも()ず、137随分(ずゐぶん)愛嬌(あいけう)のない(こと)仰有(おつしや)いますなア。138(はじ)めて加米(かめ)()(ねが)ひしたことを、139直様(すぐさま)()()(くだ)されず、140クルツプ(しき)砲弾(はうだん)発射(はつしや)し、141加米(かめ)()欲求(よくきう)撃退(げきたい)なされますか。142シテ、143あなたは愛嬌(あいけう)定義(ていぎ)()つて()ますか』
144英子姫『イヤもう おむつかしい議論(ぎろん)()つかけられますこと。145マアマアぼつぼつと()登山(とざん)なされませ。146それはそれはアツと()(やう)仕組(しぐみ)がして御座(ござ)いますワ』
147加米彦(なん)だか諄々(じゆんじゆん)として詭弁(きべん)(ろう)するお(ひめ)さまだナア。148キベン万丈(ばんぢやう)加米(かめ)(あた)()からずだ、149アハヽヽヽ』
150悦子姫『コレコレ加米彦(かめひこ)さま、151さうヅケヅケと無遠慮(ぶゑんりよ)(もの)仰有(おつしや)るものでない。152チトたしなみなさらぬか』
153加米彦『ハイハイたしなみませうよ、154悦子(よしこ)さま。155無礼(ぶれい)ぢやとか、156謙遜(けんそん)ぢやとか、157遠慮(ゑんりよ)ぢやとか、158たしなみぢやとか、159種々(いろいろ)雅号(ががう)沢山(たくさん)()つて、160取捨(しゆしや)選択(せんたく)(ほとん)閉口(へいこう)頓死(とんし)(いた)します』
161 音彦(おとひこ)(かほ)をシカメ、
162音彦『エー縁起(えんぎ)(わる)い。163閉口(へいこう)頓死(とんし)なぞと、164せうもない(こと)()ふものでない。165(まへ)(たち)哲学(てつがく)とか道学(だうがく)とか()親不孝(おやふかう)166不作法(ぶさはふ)学問(がくもん)をかぢつて()るから、167仕末(しまつ)にをへない、168マアマア英子姫(ひでこひめ)(さま)仰有(おつしや)(とほ)りハイハイと温順(おとな)しくして()れば()いのだ。169吾々(われわれ)(ろく)(にん)(なか)では、170(もつと)もお(えら)(かた)だ、171()はば吾々(われわれ)のお師匠(ししやう)(さま)だ。172()(かげ)(ろく)(しやく)(さが)つても()むなと()(くらゐ)だ』
173加米彦『あなたも縁起(えんぎ)(わる)(こと)()ひますネ。174加米(かめ)閉口(へいこう)頓首(とんしゆ)()つた(こと)(とが)(なが)ら、175あなたは()(かげ)がどうの()うのつて、176()れこそ自縄(じじよう)自縛(じばく)ぢやありませぬか』
177 音彦(おとひこ)()()し、
178音彦『ハヽヽヽ、179(わけ)(わか)らぬ団子(だんご)理屈(りくつ)()()ねる(をとこ)だなア』
180加米彦『お(まへ)こそ団子(だんご)理屈(りくつ)だ。181吾々(われわれ)のは餅理屈(もちりくつ)だ。182(ぶと)(もち)()きや加米彦(かめひこ)()ねる、183ポンポンと音彦(おとひこ)がすると()ふぢやないか、184アハヽヽヽ』
185 亀彦(かめひこ)()()がり、
186亀彦『サア(みな)さま、187何時(いつ)まで()(はなし)(いた)して()つても際限(さいげん)()りませぬ。188冗談(ぜうだん)から(ひま)()る、189瓢箪(へうたん)から(こま)()る。190(こま)(むち)()ち、191一日(ひとひ)(はや)目的地(もくてきち)(むか)つて発足(はつそく)(いた)しませう。192ナア英子姫(ひでこひめ)(さま)……』
193英子姫折角(せつかく)()にかかつて(うれ)しいと(おも)へば、194神界(しんかい)()命令(めいれい)195()むにやまれませぬ。196英子(ひでこ)直様(すぐさま)(わか)(いた)しませう。197皆様(みなさま)左様(さやう)なら、198(いづ)(また)()にかかる機会(きくわい)御座(ござ)いませう』
199会釈(ゑしやく)し、200(はや)くも(あゆ)()したり。
201 悦子姫(よしこひめ)会釈(ゑしやく)しながら、
202悦子姫左様(さやう)ならば、203(ひめ)(さま)204機嫌(きげん)よくお()(くだ)さいませ。205亀彦(かめひこ)(さま)206()如才(じよさい)御座(ござ)いますまいが、207どうぞ(ひめ)(さま)()身辺(しんぺん)注意(ちうい)(はら)つて(くだ)さいませやア』
208亀彦亀彦(かめひこ)209委細(ゐさい)承知(しようち)(つかまつ)りました。210(かなら)(かなら)()煩慮(はんりよ)(くだ)さいますな。211サアこれからコンパスに(あぶら)()して(すす)みませう。212悦子姫(よしこひめ)さま、213音彦(おとひこ)214加米(かめ)宣伝使(せんでんし)殿(どの)215夏彦(なつひこ)さま、216左様(さやう)ならば()機嫌(きげん)よう……』
217一同『お二人(ふたり)(さま)218仕合(しあは)せよう抜群(ばつぐん)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はし(たま)はむ(こと)念願(ねんぐわん)(いた)します、219アリヨース』
220双方(さうはう)(たもと)(わか)つ。221二本(にほん)(しろ)(つゑ)のみ朧月夜(おぼろづきよ)山路(やまみち)を、222川上(かはかみ)()して(のぼ)()く。
223 (はる)()(またた)(うち)()(はな)れ、224(かすみ)(そら)()()けて、225天津(あまつ)()大神(おほかみ)は、226まん(まる)温顔(をんがん)()()して、227()(にん)(かうべ)(てら)(たま)ふ。228心持(こころもち)よき春風(はるかぜ)に、229(みち)()きまで()()山桜(やまざくら)230(はな)(あざむ)悦子姫(よしこひめ)231山路(やまみち)(とほ)(ゆか)しさは、232画中(ぐわちう)(ひと)(ごと)くなり。
233 音彦(おとひこ)急坂(きふはん)()(あふ)ぎ、
234音彦『アヽ随分(ずゐぶん)(けは)しい(さか)ですなア。235英子姫(ひでこひめ)さまが一切(いつさい)沈黙(ちんもく)(まも)つて()られたのも、236()()胸突坂(むなつきざか)沢山(たくさん)あるので、237吾々(われわれ)恐怖心(きようふしん)(おこ)し、238折角(せつかく)張詰(はりつ)めた精神(せいしん)を、239薄志(はくし)弱行(じやくかう)逆転(ぎやくてん)旅行(りよかう)()かけるかと(おも)つての()(こころ)(くば)り、240イヤもう(おそ)()りました。241(ひと)(みちび)き、242向上(かうじやう)させてやらうと(おも)宣伝使(せんでんし)()(こころ)は、243(また)格別(かくべつ)なものですなア』
244 悦子姫(よしこひめ)は、
245悦子姫『イヤ(けつ)して(けつ)して英子姫(ひでこひめ)(さま)()心中(しんちゆう)は、246さうではありますまい、247(すこ)意味(いみ)(ふか)(こと)があるのでせう。248(わたし)英子姫(ひでこひめ)(さま)()言葉(ことば)(はし)に、249(ふか)(ふか)意味(いみ)があると、250(すぐ)(むね)琴線(きんせん)()れました。251マアマア()(ところ)まで()つて()なくては(わか)りますまい』
252音彦『さうですかなア。253音彦(おとひこ)(やう)木訥(ぼくとつ)人間(にんげん)は、254ソンナ微細(びさい)(てん)まで()()きませぬ、255何分(なにぶん)仁王(にわう)荒削(あらけづ)(ぜん)たる(をとこ)ですからなア、256ハヽヽヽヽ』
257 加米彦(かめひこ)大声(おほごゑ)で、
258加米彦『コレコレ音彦(おとひこ)さま、259巧妙(うま)(こと)()つてるぢやないか。260悦子姫(よしこひめ)さまと、261(この)(ほそ)(みち)()()(やう)にして(ある)(なが)ら、262似合(にあ)うの似合(にあ)はぬのつて、263ソラ(なに)()ふのだ、264(おに)(わら)ふぞよ、265アツハヽヽヽ。266オイ夏彦(なつひこ)267貴様(きさま)(くる)しさうに、268(あせ)をたらたらと(なが)して()るぢやないか』
269夏彦『きまつた(こと)ですよ。270(なつ)ヒコに(あた)れば、271(あせ)(たき)(ごと)(なが)()るのが、272(むかし)からきまりきつた、273天地(てんち)()規則(きそく)274(あせ)をかかねば、275天則(てんそく)違反(ゐはん)(つみ)()はれるよ加米(かめ)さま』
276加米彦(なに)()ふのだ。277(すつぽん)(たで)()ました(やう)に、278(おほ)きな鼻息(はないき)をしよつて……』
279夏彦加米彦(かめひこ)280(すつぽん)だつて、281カメ(ひこ)だつて(おな)(こと)ぢやないか。282(すつぽん)(あら)(いき)をする(やう)に、283(かめ)一匹(いつぴき)284どこやらで、285ヤツパリ、286フースーフースーと呼吸(いき)をし(なが)ら、287法界(はふかい)悋気(りんき)をやつて()るやうだワイ、288ハツハヽヽヽ』
289加米彦『アヽ(なつ)チヤン、290ホーカイなア』
291音彦『オイオイ加米彦(かめひこ)292夏彦(なつひこ)両人(りやうにん)293(はや)()ぬか、294ナンダ、295()ンなチツポケな(さか)屁古垂(へこた)れよつて………随分(ずゐぶん)(あし)(おそ)(やつ)だなア』
296加米彦(やかま)しい()うて()れない音彦(おとひこ)さま、297(あが)(ざか)(まへ)(たか)いワイ。298(その)(かは)りに(くだ)(ざか)になつたら、299ドンナものだ、300一瀉(いつしや)千里(せんり)(いきほひ)で、301アフンとさしてやるぞ。302(しか)(なが)(この)()(なが)いのに、303さう(いそ)ぐにも(およ)ばぬぢやないか、304そこらの木蔭(こかげ)(ひと)切腹(せつぷく)したらどうだい』
305 音彦(おとひこ)は、
306音彦『エー(また)縁起(えんぎ)(わる)(こと)()加米(かめ)だナア。307エヽ仕方(しかた)がない。308悦子姫(よしこひめ)(さま)309()平地(ひらち)一服(いつぷく)(いた)しませうか、310両人(ふたり)(やつ)311大変(たいへん)屁古垂(へこた)れて()(やう)ですから』
312 悦子姫(よしこひめ)気軽(きが)るげに、
313悦子姫『マア此処(ここ)(ゆつ)くりと()つてあげませう』
314 加米彦(かめひこ)小柴(こしば)(しげ)小径(こみち)を、315ガサガサ(あへ)(あへ)ぎ、316手負猪(ておひじし)(やう)鼻息(はないき)()て、317(たま)(あせ)(しぼ)りつつ、318(やうや)二人(ふたり)(そば)(のぼ)()きける。
319 (あし)()るる(ばか)りの細路(ほそみち)を、320粗朶(そだ)()()うて(くだ)()二人(ふたり)(をんな)あり、321()(にん)姿(すがた)()て、
322『コレハコレハ皆様(みなさま)323(せま)(みち)(かさ)たか(もの)()うて(とほ)りまして、324(まこと)()みませぬ、325どうぞ()勘弁(かんべん)(くだ)さいませ』
326 加米彦(かめひこ)は、
327加米彦『サアそれは仕方(しかた)がありませぬ、328天下(てんか)御免(ごめん)大道(だいだう)329(いな)330羊腸(やうちやう)山路(やまみち)331………サアサア(みな)さま、332(はやし)(なか)(しばら)沈没(ちんぼつ)(いた)しませう。333そして敵艦(てきかん)二隻(にせき)334暗礁(あんせう)()けた安全(あんぜん)海路(かいろ)通過(つうくわ)させてやりませうかい』
335 ()(にん)はガサガサと、336()(しげ)みへ()けると、337二人(ふたり)(をんな)(あせ)片手(かたて)に、338手拭(てぬぐひ)にて(ぬぐ)(なが)ら、
339『コレハコレハ(みな)さま、340()みませぬ』
341(いた)()てし(ごと)(ほそ)坂路(さかみち)をエチエチ(くだ)()く。
342 加米彦(かめひこ)二人(ふたり)後姿(うしろすがた)見送(みおく)りて、
343加米彦『アヽ無事(ぶじ)()神輿(しんよ)通過(つうくわ)()ンだ。344サアサア(みな)さま、345一服(いつぷく)のやり(なほ)しを(いた)しませう……』
346音彦(おとひこ)『あの(をんな)沢山(たくさん)粗朶(そだ)をムクムクと()うて(かへ)りよつたが、347一体(いつたい)(なん)()雅名(がめい)だらう』
348加米彦(かめひこ)『あれかい、349きまつて()るワイ。350オハラ()(しば)()うて(とほ)つたのだ』
351音彦『ナニ、352()ンな(ところ)大原女(おほはらめ)(とほ)つてたまるものか。353叡山(えいざん)(ふもと)ぢやあるまいし』
354加米彦『それでも(おほ)きな(はら)をして()つたぢやないか』
355音彦『あれはヤセの(をんな)だよ。356八瀬(やせ)大原(おほはら)()つて、357(はた)小母(をば)産地(さんち)だよ。358此処(ここ)もヤツパリ山地(さんち)には間違(まちが)ひない。359(さき)(をんな)大変(たいへん)痩女(やせをんな)360(あと)のは(はら)(をんな)だ。361それで一人(ひとり)はヤセ()362一人(ひとり)はオハラ()だ、363()()(なほ)せば、364双方(さうはう)意見(いけん)成立(せいりつ)して、365複雑(ふくざつ)議論(ぎろん)(おこ)らぬだらう』
366加米彦『モシ悦子姫(よしこひめ)さま、367あなた最前(さいぜん)音彦(おとひこ)と、368大変(たいへん)(なか)ようして(ある)いて()ましたなア。369()をつけなされませや。370(この)音彦(おとひこ)は、371女房(にようばう)五十子(いそこ)(ひめ)竜宮(りうぐう)(ひと)(じま)()つて()るものですから、372やもめ(どり)同様(どうやう)373ウツカリして()ると、374(いま)()つた(をんな)ぢやないが、375(いま)はヤセ()のあなたでも、376何時(いつ)()にか大腹女(おほはらめ)になりますよ』
377悦子姫(よしこひめ)『オツホヽヽヽ、378気遣(きづか)(くだ)さいますな、379(けつ)して(けつ)して()心配(しんぱい)はかけませぬから』
380加米彦(かめひこ)『アヽそれならマア(わたくし)()安心(あんしん)だ』
381音彦(おとひこ)『オイ加米彦(かめひこ)382冗談(ぜうだん)()加減(かげん)にせぬか、383(なが)春日(はるひ)(また)()れて(しま)ふぞ』
384悦子姫(よしこひめ)『サア(みな)さま、385(まゐ)りませう』
386九十九(つくも)(をり)(けは)しき小径(こみち)(のぼ)()く。
387音彦(おとひこ)今度(こんど)加米彦(かめひこ)388夏彦(なつひこ)389(さき)()け、390(また)煩雑(うるさ)問題(もんだい)提起(ていき)されては処置(しよち)(こま)るから』
391加米彦(かめひこ)『さうだらう。392ヤツパリ(もの)がある(やつ)は、393何処(どこ)までも注意深(ちういぶか)いものだ、394イヒヽ』
395 加米彦(かめひこ)悦子姫(よしこひめ)(あと)に、396三尺(さんじやく)(ばか)(はな)れて()いて()く。397七八丁(しちはつちやう)(のぼ)つたと(おも)うと、398胸突坂(むねつきさか)(のぼ)()二人(ふたり)姿(すがた)399半丁(はんちやう)(ばか)谷底(たにそこ)に、400(かさ)ばつかり(ゆら)ついて()る。
401加米彦(かめひこ)『ヤア、402(おほ)きな(しろ)松茸(まつたけ)(のぼ)つて()るワイ。403オイ音彦(おとひこ)404夏彦(なつひこ)405悦子姫(よしこひめ)さまが(それ)(ほど)(はづ)かしいのか。406(なん)だ、407(かさ)(かほ)(からだ)もみな(かく)しよつて……』
408悦子姫(よしこひめ)加米彦(かめひこ)さま、409(また)貴方(あなた)嘲弄(からか)ふのかい、410()加減(かげん)411冗談(ぜうだん)はよしにしなさいよ』
412加米彦(かめひこ)(この)さみしい山路(やまみち)413(わたくし)(やう)()(もの)(ひと)つあるのも(また)重宝(ちようほう)でせう。414(しか)(なが)ら、415()()らぬとあれば仕方(しかた)がない。416冗談(ぜうだん)はこれ(かぎ)りヨシコ(ひめ)(いた)しませう、417アツハヽヽヽ』
418悦子姫(よしこひめ)『それまた、419冗談(ぜうだん)仰有(おつしや)るワ』
420加米彦(かめひこ)仰有(おつしや)いますな。421加米彦(かめひこ)憑依(ひようい)して()雲雀彦(ひばりひこ)守護神(しゆごじん)()422(やま)()ると親類(しんるゐ)(かへ)つた(やう)(おも)つて、423はしやいでなりませぬワイ、424ウフヽ』
425悦子姫(よしこひめ)大分(だいぶん)音彦(おとひこ)さまが(おく)れなさつたよな塩梅(あんばい)ぢや。426(すこ)()()はせませうか』
427加米彦(かめひこ)『ヤツパリ()(かか)りますかな、428(おく)れとるのは音彦(おとひこ)ばつかりぢやありませぬ。429(こし)(まが)つた夏彦(なつひこ)にもチツとは()()れてやつて(くだ)さいナ。430あなたは博愛心(はくあいしん)がどうかしてますネー』
431悦子姫(よしこひめ)(なん)だかケンケン()つてるぢやありませぬか』
432加米彦(かめひこ)『エーあれや雉子(きじ)ですよ。433音彦(おとひこ)兄弟分(きやうだいぶん)ですがなア。434(ふた)()にはケンケンコンコンと()つては(あたま)()たれ、435(こし)()たれ、436攻撃(こうげき)()ばつかり()つて()ます。437雉子(きじ)()かねば()たれまい………と()ひましてなア……』
438悦子姫(よしこひめ)雉子(きじ)()(とり)はコンナ(ふか)(やま)()みて、439(なに)()つてるのでせう』
440加米彦(かめひこ)『アルタイ(ざん)蛇掴(へびつかみ)(やう)に、441(へび)ばつかり()つて()よるのです』
442悦子姫(よしこひめ)(まる)加米彦(かめひこ)さまの(やう)(とり)ですネー』
443加米彦(かめひこ)『ソラ(なに)仰有(おつしや)います。444(わたくし)何時(いつ)(へび)()ひましたか』
445悦子姫(よしこひめ)(へび)ぢやありませぬ。446あなたは何時(いつ)も、447ヘマばつかり()つてるぢやありませぬか、448ホヽヽヽ』
449加米彦(かめひこ)『ナアンダ、450(へー)でもない屁理屈(へりくつ)()(なら)べなさる。451あなたも随分(ずゐぶん)言霊(ことたま)練習(れんしふ)出来(でき)て、452(くち)(だけ)悦子姫(よしこひめ)ぢやなくて、453悪子姫(わるこひめ)になりましたなア』
454悦子姫(よしこひめ)『ホツホヽヽヽ』
455加米彦(かめひこ)『アヽ(なん)だか交通(かうつう)機関(きくわん)倦怠(けんたい)して()ました。456音彦(おとひこ)()るまで()つてやりませうかい』
457悦子姫(よしこひめ)重宝(ちようほう)なお(くち)だこと、458進退(しんたい)()(きは)まりて、459()つておあげなさるのでせう』
460加米彦(かめひこ)『ハハア、461あなた用心(ようじん)しなさいよ。462悪神(あくがみ)()いて()ますで………随分(ずゐぶん)言霊(ことたま)(にご)つて()ました。463(ひと)神霊(しんれい)注射(ちうしや)をやつてあげませうか』
464悦子姫(よしこひめ)有難(ありがた)う。465またユルユル(みな)さまの()協議(けふぎ)(うへ)で、466()(ねがひ)(いた)します』
467悦子姫(よしこひめ)(みの)()いて、468一年越(いちねんごし)霜枯(しもが)れの(かや)(うへ)にドツカとすわる。
469千歳(ちとせ)老松(らうしよう)(すぎ)(ひのき)
470(けやき)(かへで)雑木(ざふき)(こけ)()して
471(かむ)さび(たて)左右(さいう)密林(みつりん)
472躑躅(つつじ)(はな)此処(ここ)彼処(かしこ)
473(しろ)(くれなゐ)(あを)黄色(きいろ)
474(えん)(あらそ)(その)(なか)
475藪鶯(やぶうぐひす)山雀(やますずめ)
476四十雀(しじふがら)ガラ()()つる
477山路(やまぢ)()えて何時(いつ)しかに
478小広(こびろ)田圃(たんぼ)(なが)()
479(ふる)神代(かみよ)物語(ものがたり)
480(ただ)一言(ひとこと)()らさずに
481()(つた)へむと土筆(つくづくし)
482鉛筆(えんぴつ)(とが)らし(みち)()
483待構(まちかま)()るしほらしさ
484(むぎ)青葉(あをば)()()うち
485(ふで)(かく)して青々(あをあを)
486手具脛(てぐすね)ひいて()つて()
487(はな)一面(いちめん)()(おも)
488(えん)(きそ)ふて()きぬれど
489(とこ)には()くな、矢張(やはり)()()紫雲英(げんげばな)
490虎杖草(いたんどうり)のここかしこ
491万年筆(まんねんひつ)()()いて
492()()清書(せいしよ)準備顔(じゆんびがほ)
493(この)物語(ものがたり)主人公(しゆじんこう)
494四辺(あたり)景色(けしき)悦子姫(よしこひめ)
495音彦(おとひこ)加米彦(かめひこ)夏彦(なつひこ)
496吾子(わがこ)(ごと)(いた)はりつ
497(おや)になつたる気取(きど)りにて
498(やま)見当(めあ)てに(すす)()く。
499加米彦(かめひこ)『アーアナント()()景色(けしき)だらう。500……音彦(おとひこ)さま、501(むか)ふに(くも)被衣(かづき)()()るズンと(たか)高山(かうざん)がそれぢやないか』
502音彦(おとひこ)『さうだ、503あれが目的(もくてき)()花姫(はなひめ)()分霊(ぶんれい)(まつ)られてある弥仙(みせん)のお(やま)だ』
504加米彦(かめひこ)道理(だうり)で、505(くび)から(うへ)は、506(くも)(やつ)507スツカリ(つつ)みて、508(みね)姿(すがた)を……ミセン(やま)だな、509(しか)(なが)泰然(たいぜん)自若(じじやく)として(うご)かないあの姿(すがた)()ると、510(じつ)(しやく)(さは)るぢやないか。511(おれ)(たち)ばつかりにテクらせよつて、512一歩(ひとあし)(うご)かず、513ヂツとして、514(おれ)()たけら此処(ここ)まで御座(ござ)れ、515()塩梅(あんばい)(しき)だ。516(まる)吾々(われわれ)眼下(がんか)()くだし、517奴隷視(どれいし)して()るぢやないか。518(なん)だか軽蔑(けいべつ)せられる(やう)心持(こころもち)がしてきたワイ』
519音彦(おとひこ)『アハヽヽヽ、520()(こと)()いと、521(なん)なと()はねば()()まぬ(をとこ)だなア。522さう心配(しんぱい)するな、523(いま)に、524何程(なにほど)威張(ゐば)つて()弥仙山(みせんざん)でも、525(あたま)頂辺(てつぺん)を、526吾々(われわれ)(あし)()みにじる(やう)になるのだよ。527さうだから、528時節(じせつ)()て……と()ふのだよ』
529夏彦(なつひこ)(みな)さま、530(この)(うつく)しい紫雲英(げんげ)()で、531弁当(べんたう)でも(ひら)いて、532(やま)(をが)(なが)休息(きうそく)(いた)しませうか』
533加米彦(かめひこ)()()て、534女王(ぢよわう)(さま)()機嫌(きげん)(うかが)つた(うへ)535認可(にんか)してやらう。536(しばら)(ひか)へて()つて()らう』
537夏彦(なつひこ)随分(ずゐぶん)薬鑵(やくわん)()沸騰(たぎ)りますなア、538(いな)かめは()沸騰(ふつとう)しますナア、539アハヽヽヽ』
540悦子姫(よしこひめ)(みな)さま、541どうでせう、542(この)(うるは)しい野原(のはら)で、543(やま)遥拝(えうはい)(なが)ら、544くつろぎませうか』
545夏彦(なつひこ)『ソラ、546どうだい、547以心(いしん)伝心(でんしん)548吾輩(わがはい)身魂(みたま)暗々裡(あんあんり)に、549女王(ぢよわう)(さま)感応(かんのう)して()たのだ。550()うして()ると、551肉体(にくたい)主従(しゆじゆう)だが、552(みたま)は……』
553加米彦(かめひこ)『その(つぎ)()はぬかい、554霊魂(みたま)(なん)だい、555狸身魂(たぬきみたま)(いたち)みたまをして、556(なん)だか(もの)(くさ)(こと)()(やつ)だ、557()ンな怪体(けつたい)なスタイルをして、558()うソンナ(こと)()はれたものだワイ』
559夏彦(なつひこ)『ナーニ、560スタイルで(をんな)が……ウンニヤ、561ムニヤムニヤ』
562加米彦(かめひこ)(また)行詰(ゆきつま)りよつたナ、563閻魔(えんま)さまの浄玻璃(じやうはり)(かがみ)(まへ)では、564(こころ)(おく)まで(てら)されて、565(はづ)かしさに(たちま)(おし)とならねばなるまい。566グヅグヅして()ると、567(した)()かれて(しま)ふぞ』
568夏彦(なつひこ)(した)(いち)(まい)()(まい)()かれたとて、569沢山(たくさん)仕入(しい)れてあるから大丈夫(だいぢやうぶ)だよ。570(いま)人間(にんげん)(いち)(まい)()(まい)(した)(あま)ンじて()(やう)(もの)は、571それこそ不便(ふべん)(きは)まる片輪(かたわ)人足(にんそく)だ』
572加米彦(かめひこ)本当(ほんたう)()(まは)(した)だなア。573(おれ)此奴(こいつ)には一寸(ちよつと)ビツクリ(した)574イヤ感服(かんぷく)(した)575アツハヽヽヽ』
576 ()かる(ところ)へ、577小夜具(さやぐ)(ぞめ)半纒(はんてん)をまとひ、578あかざ(つゑ)()(なが)ら、579ヒヨコリヒヨコリと一人(ひとり)老翁(らうをう)580()(にん)(まへ)立現(たちあら)はれ、
581翁(豊彦)(みな)さま(たち)は、582弥仙(みせん)のお(やま)()参拝(さんぱい)のお(かた)見受(みう)けますが、583どうぞ(わたし)(うち)へお()(くだ)さいませぬか。584(ひと)つお(たづ)ねをしたり、585(ねが)ひしたい(こと)御座(ござ)います』
586 加米彦(かめひこ)はシヤシヤり()で、
587加米彦『ヤアお(まへ)さまは、588北光(きたてる)(かみ)さまの(やう)な、589崇高(すうかう)容貌(ようばう)をしたお(ぢい)さまだな、590コンナ(わか)宣伝使(せんでんし)や、591(わか)(をとこ)に、592老人(らうじん)(もの)(たづ)ねるとは、593チツと間違(まちが)つては()やせぬか。594(いち)(ねん)でも(さき)(この)()()()した(もの)は、595経験(けいけん)()み、596社会学(しやくわいがく)(たつ)して()(はず)だ、597怪体(けたい)(こと)()ふお(ぢい)さまだなア。598わしは(また)599(まへ)さまの姿(すがた)木蔭(こかげ)にチラと()えた(とき)から……ヤア(しめ)た、600(ひと)(くつ)でも穿()かして()げて、601張子房(ちやうしばう)ぢやないが、602太公望(たいこうばう)兵法(へいはふ)でも伝授(でんじゆ)して(もら)はうと(おも)うて(たの)しみて()たのだ』
603(ぢい)(豊彦)世界(せかい)(こと)なら、604(いち)(にち)でも(さき)(うま)れた(だけ)わしは兄貴(あにき)だ、605(をし)へても()げるが、606これ(だけ)長生(ながいき)をして、607()(なか)()いも(あま)いも(さと)りきつた(この)(おやぢ)に、608どう(かんが)へても合点(がてん)のいかぬ(こと)(ひと)つあるのだ。609これはどうしても(かみ)(さま)のお(みち)(ひと)()かなくては、610(わか)らぬ(こと)だと(おも)うて、611(やま)(まゐ)るお(かた)を、612(ばば)アと二人(ふたり)が、613茅屋(あばらや)()つて(もら)ひ、614種々(いろいろ)(たづ)ねて()るけれども、615どのお(かた)完全(くわんぜん)解決(かいけつ)(あた)へて(くだ)さらぬのだ。616(この)(あひだ)英子姫(ひでこひめ)さまとやら……(この)女中(ぢよちう)よりもズツと綺麗(きれい)な、617(かみ)(さま)のお使(つか)ひのお(かた)凛々(りり)(さう)なお従者(とも)()れて(とほ)らしやつたので、618(ひと)(たづ)ねてみた(ところ)619二人(ふたり)のお(かた)はニヤツと(わら)うて、620(なん)にも仰有(おつしや)つて(くだ)さらず、621やがて(をんな)一人(ひとり)(をとこ)(さん)(にん)一行(いつかう)が、622(やま)(まゐ)りをするから、623(その)(もの)()うて(たづ)ねて()れいと仰有(おつしや)つたので、624毎日(まいにち)日日(ひにち)(くび)(なが)うして()つて()つたのだ、625もしや、626(まへ)さま()(こと)ではあるまいかと(おも)うて、627(おも)(あし)()きずつて()()たのだ』
628加米彦(かめひこ)『アヽさうだつたか、629社会学(しやくわいがく)はまだ未完成(みくわんせい)だが、630(かみ)(さま)(こと)ならば、631ドンナ(こと)でも解決(かいけつ)をつけてあげよう。632英子姫(ひでこひめ)さまも流石(さすが)(えら)いワイ。633手柄(てがら)(おれ)(たち)(ゆづ)つてやらうと思召(おぼしめ)して、634昨夜(ゆうべ)()うた(とき)にも仰有(おつしや)らなかつたのだ。635流石(さすが)先見(せんけん)(めい)ありだ。636古今(ここん)(らい)(むな)しうして東西(とうざい)()(つく)したる、637世界(せかい)(そと)世界(せかい)(まで)()()んで、638宇宙(うちう)真相(しんさう)悉皆(しつかい)看破(かんぱ)したる、639(この)加米彦(かめひこ)がお()でになると()(こと)を、640流石(さすが)明智(めいち)英子姫(ひでこひめ)(さま)641予期(よき)して御座(ござ)つたと()える。642サアサア(なん)なりとお(たづ)ねなされ。643神界(しんかい)(くわん)する(こと)ならば(けつ)して退却(たいきやく)(いた)さぬ、644三五教(あななひけう)には退却(たいきやく)二字(にじ)()りませぬから………オツホン』
645(ぢい)(豊彦)『さうかな、646(わか)いにも似合(にあ)はず、647()うそこまで勉強(べんきやう)をなさつた、648感心(かんしん)々々(かんしん)649今時(いまどき)(わか)(もの)は、650(みな)心得(こころえ)(わる)くて、651(かみ)さまなンテ、652(この)()(なか)()るものか、653人間(にんげん)(かみ)さまだ、654(かみ)があるのなら、655一遍(いつぺん)()はして()れ、656そしたら(かみ)存在(そんざい)(みと)めてやるなンテ、657(だい)ソレた(こと)()時節(じせつ)だ。658それにお(まへ)さまは、659(なん)()御存(ごぞん)じとは、660(じつ)(えら)いお(かた)だ、661(この)(ぢい)今迄(いままで)コンナ(かた)()ひたいと(おも)うて、662()つて()ました……アヽ(かみ)(さま)663有難(ありがた)御座(ござ)います、664これと()ふのも(まつた)弥仙(みせん)のお(やま)()花姫(はなひめ)(さま)(あつ)()守護(しゆご)……』
665(そで)(なみだ)(ぬぐ)ふ。
666夏彦(なつひこ)『モシモシお(ぢい)さま、667此奴(こいつ)ア、668由良(ゆら)(みなと)秋山彦(あきやまひこ)門番(もんばん)をして()つた(をとこ)です。669(えら)さうに(くち)ばつかり(ひら)くのですよ。670(あさ)から(ばん)まで(もん)(ひら)くのが商売(しやうばい)だから、671(その)惰力(だりよく)(いま)だに(のこ)つて()つて、672大門(おほもん)(やう)(おほ)けな(くち)(ひら)きよるのだ。673相手(あひて)になりなさるな。674(この)(をとこ)()(くらゐ)(こと)は、675(わたし)だつて、676(とし)(こう)(まめ)()だ、677(まめ)()()()だ、678()()はヤツパリ(まめ)(こな)だ。679(しし)()(いぬ)は、680(いぬ)のどこやらに(すぐ)れた(ところ)()りますワイ。681(わたし)(をし)へてあげませう』
682加米彦(かめひこ)『コレコレお(ぢい)さま、683此奴(こいつ)はなア、684ウラナイ(けう)黒姫(くろひめ)()ふ、685(くち)ばつかり達者(たつしや)(やつ)(じふ)年間(ねんかん)(あさ)から(ばん)まで、686法螺(ほら)仕込(しこ)まれて()(やつ)だから、687(なに)()ふやら、688蜜柑(みかん)やら、689金柑桝(きんかんます)(はか)るやら、690なにも(わか)つた代物(しろもの)ぢやありませぬワイ』
691(ぢい)(豊彦)最前(さいぜん)から(この)老爺(ぢぢい)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(たの)みて()るのに、692(まへ)さま(たち)は、693(この)老人(としより)飜弄(ほんろう)するのかい、694エーエやつぱり英子姫(ひでこひめ)さまの仰有(おつしや)つた(えら)いお(かた)は、695(この)()連中(れんちう)ぢや()るまい。696アーア阿呆(あほ)らしい、697コンナ(こと)なら(この)(おも)(あし)を、698老人(らうじん)引摺(ひきず)つて()るのぢやなかつたのに……』
699音彦(おとひこ)『モシモシお(ぢい)さま、700さう(はら)()てて(くだ)さるな。701(これ)()二人(ふたり)雲雀(ひばり)(つばめ)親類(しんるゐ)ですから、702どうぞお(のぞ)みの(こと)を、703(わたくし)仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。704(わたくし)(ちから)(かぎ)(かみ)(さま)(うかが)つて()(こたへ)(いた)しませう』
705(ぢい)(豊彦)『アヽさうかなア、706(まへ)さまはどこやらが、707(しま)りのある(をとこ)だと(おも)うて()つた。708此処(ここ)では(はなし)出来(でき)ませぬから、709(まへ)さま一人(ひとり)710(わたくし)(うち)()(くだ)され、711(ばば)アや(むすめ)()つて()ります』
712音彦(おとひこ)『お(ぢい)さま、713それは有難(ありがた)御座(ござ)いますが、714(わたくし)の……此処(ここ)()主人(しゆじん)とも先生(せんせい)とも(あふ)悦子姫(よしこひめ)さまがいらつしやいます。715(この)(かた)吾々(われわれ)大先生(だいせんせい)御座(ござ)いますから、716(この)(かた)()てて(わたくし)ばつかり(まゐ)(わけ)にはゆきませぬ』
717(ぢい)(豊彦)『アーさうだらうさうだらう、718ソンナラ、719悦子姫(よしこひめ)さまの先生(せんせい)とお(まへ)さまと()(くだ)され、720()ンな(わか)(をとこ)此処(ここ)()たして()いたら(よろ)しからう』
721音彦(おとひこ)(しか)(なが)ら、722()(にん)はどうしても(はな)れないと()不文律(ふぶんりつ)(さだ)められてあるので、723(この)(をとこ)二人(ふたり)此処(ここ)放棄(はうき)して()(わけ)にはゆきませぬ、724()(にん)(とも)(まゐ)りませう。725それがお()()らねば仕方(しかた)がありませぬから()(ことわ)(まを)すより(みち)御座(ござ)いませぬ』
726(ぢい)(豊彦)『アヽソンナラ()(くだ)さいませ。727コレコレ二人(ふたり)のお(わか)いの、728(わたくし)(うち)()(くだ)さるのは(かま)ひませぬが、729あまり(やかま)しう()つて(くだ)さるな、730(むすめ)身体(からだ)(さは)ると(こま)りますから……』
731加米彦(かめひこ)『オイ(なつ)732貴様(きさま)一杯(いつぱい)(おご)らぬと冥加(みやうが)(わる)いぞ、733(この)(うち)一番(いちばん)年長(としがさ)だ、734それに「お(わか)いの」と()はれよつたぢやないか、735()れと()ふのも、736(おれ)好男子(かうだんし)余徳(よとく)()りて(わか)()られたのだよ。737それだから老爺(おぢい)さまが、738(むすめ)(からだ)(さは)ると(こま)ります……ナンテ予防線(よばうせん)()るのだよ。739険呑(けんのん)代物(しろもの)見込(みこ)まれたものだなア、740アツハヽヽヽ』
741音彦(おとひこ)『サア悦子姫(よしこひめ)さま、742()苦労(くらう)(なが)ら、743一寸(ちよつと)老爺(おぢい)さまの(うち)まで()つてあげて(くだ)さいませ』
744悦子姫(よしこひめ)不束(ふつつか)(わたし)でもお()()ひますれば、745(ぢい)さま(まゐ)ります』
746(ぢい)(豊彦)『ハア有難(ありがた)有難(ありがた)い、747()(れい)(あと)(いた)します。748老爺(ぢい)(うち)(この)(むか)ふの(もり)(ひと)(まは)つた(とこ)御座(ござ)います。749(わたくし)座敷(ざしき)から、750あなた(がた)此処(ここ)()休息(きうそく)になつて御座(ござ)るのが、751()()(やう)()えました(くらゐ)ですから、752ホンの一寸(ちよつと)(まは)りで御座(ござ)います』
753(さき)()ち、754ヨボヨボと(おの)家路(いへぢ)(ともな)()く。
755大正一一・四・二四 旧三・二八 松村真澄録)
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki