霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 (しん)()か〔六三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第2篇 再探再険 よみ(新仮名遣い):さいたんさいけん
章:第6章 真か偽か よみ(新仮名遣い):しんかぎか 通し章番号:634
口述日:1922(大正11)年04月25日(旧03月29日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一行が真夜中に着いたところは、剣尖山ふもとの聖地であった。紫姫は、ここで神勅を得なければならない、という。その間、お供の一同は産釜、産盥で禊をし、神言を奏上して待つように命じた。
若彦、お節、馬公、鹿公の四人が、紫姫指定の場所で禊をしようとすると、そこにはウラナイ教の宣伝歌を一生懸命となえる婆が、二人の従者を従えて水垢離を取っている。
馬公が咎めると、婆は自分は世界の為に結構な神業をしているのだ、と馬公を非難する。鹿公は、悪魔が悪魔の仲間を集めているのだから、邪魔をするな、と茶々を入れる。
婆はしきりにウラナイ教の功徳を並べ立てて、入信を促している。真名井山には、変性女子の瑞の御霊の悪神が居る、と悪口を言う。
お節は黒姫とわかって、声をかける。黒姫は、青彦(若彦)、お節だと気づくと、またもやウラナイ教への改心を迫る。
どうしたことか、若彦は黒姫に元のとおりウラナイ教で使ってください、と申し出る。また、紫姫をウラナイ教に連れてくることも承諾する。
そこへ、紫姫がやってきて、黒姫に挨拶すると、紫姫は黒姫の神格を褒め称えて、自分からウラナイ教の教え乞う。
黒姫は得意げになって一行を引き連れて、魔窟ケ原に引き上げてくる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-09-09 05:26:48 OBC :rm1806
愛善世界社版:96頁 八幡書店版:第3輯 672頁 修補版: 校定版:100頁 普及版:43頁 初版: ページ備考:
001紫姫(むらさきひめ)(むらさき)
002姿(すがた)(よそほ)弥仙山(みせんざん)
003四尾(よつを)(やま)桶伏(をけふせ)
004(うづ)聖地(せいち)()(をが)
005西坂峠(にしさかたうげ)(あと)()
006若葉(わかば)もそよぐ若彦(わかひこ)
007(こころ)馬公(うまこう)鹿公(しかこう)
008(ともな)(すす)(はる)(みち)
009(やま)追々(おひおひ)(せま)()
010(こころ)(ほそ)谷道(たにみち)
011(つた)(つた)ひて河守(かうもり)
012(さと)左手(ゆんで)()(なが)
013船岡山(ふなをかやま)(みぎ)()
014()もやうやうに(とり)(こく)
015(やみ)(とばり)はおろされて
016一行(いつかう)ゆくてに(まよ)ひつつ
017(みち)のかたへの(ささ)やけき
018(かみ)(ほこら)立寄(たちよ)りて
019(いき)(やす)むる折柄(をりから)
020(にはか)(をんな)(さけ)(ごゑ)
021紫姫(むらさきひめ)()(あが)
022(みみ)(かたむ)()(をは)
023若彦(わかひこ)(うま)鹿(しか)(さん)(にん)
024(こゑ)する(かた)(つか)はして
025様子(やうす)(さぐ)らせ調(しら)ぶれば
026(おも)ひがけなき愛娘(まなむすめ)
027(やみ)(はやし)(しば)られて
028(いき)()()えと(くる)しみの
029(なか)(たす)けて(さん)(にん)
030(たちま)(のぼ)月影(つきかげ)
031(こころ)()らして(かへ)()
032何処(いづこ)(かた)(おとな)へば
033(わか)(をんな)物語(ものがたり)
034(おどろ)若彦(わかひこ)一同(いちどう)
035(たがひ)(いたは)りかばいつつ
036(つき)(ひかり)(ちから)とし
037四辺(あたり)注意(ちうい)()(なが)
038剣尖山(けんさきやま)(ふもと)なる
039(うづ)聖地(せいち)立向(たちむか)ふ。
040 三男(さんなん)二女(にぢよ)一隊(いつたい)は、041(つき)もる山道(やまみち)(やうや)くにして(すめ)大神(おほかみ)(いつ)(まつ)れる大宮(おほみや)(まへ)無事(ぶじ)参向(さんかう)する(こと)()たり。042(みづ)()(こく)(うし)(こく)()段々(だんだん)()(わた)り、043淙々(そうそう)たる谷川(たにがは)(みづ)(おと)(あつ)して(きこ)()(いの)りの(こゑ)044凄味(すごみ)()びて許々多久(ここたく)の、045(おに)大蛇(をろち)曲津見(まがつみ)の、046(みたま)()()言霊(ことたま)(にご)り、047(きよ)(なが)れの谷川(たにがは)にふさはしからぬ配合(はいがふ)なり。
048紫姫(むらさきひめ)皆様(みなさま)049(わたし)(かみ)(さま)のお(つげ)により、050半日(はんにち)(ばか)(この)(みや)(なか)()神勅(しんちよく)(うけたま)はらねばなりませぬ、051何卒(どうぞ)(その)(あひだ)052産釜(うぶがま)053産盥(うぶだらひ)河原(かはら)谷水(たにみづ)御禊(みそぎ)をなし、054神言(かみごと)奏上(そうじやう)して()つて()(くだ)さいませ』
055若彦(わかひこ)委細(ゐさい)承知(しようち)(つかまつ)りました。056サアサア馬公(うまこう)057鹿公(しかこう)058節殿(せつどの)059(まゐ)りませう』
060神前(しんぜん)礼拝(れいはい)(をは)(あま)岩戸(いはと)下方(しもて)061紫姫(むらさきひめ)指定(してい)場所(ばしよ)(すす)()く。062()はほのぼのと()けかかる。063(たに)向岸(むかうぎし)()れば一人(ひとり)(をんな)064二人(ふたり)従者(じゆうしや)らしき(もの)(とも)産釜(うぶがま)065産盥(うぶだらひ)(みづ)(しやく)にて()()げ、066頭上(づじやう)より()び、067一生(いつしやう)懸命(けんめい)皺枯(しわが)れた(こゑ)(しぼ)つてウラナイ(けう)宣伝歌(せんでんか)(とな)()る。068()(にん)はつかつかと(すす)()るを、069(ばば)アは(しき)りに()(にん)()たのも()らずに水垢離(みづごり)()()たり。
070馬公(うまこう)『モシモシ何処(どこ)()アさまか()らぬが、071この聖地(せいち)へやつて()て、072勿体(もつたい)ない(かみ)(さま)御手洗(みたらし)無雑作(むざふさ)(あたま)から(かぶ)り、073怪体(けたい)(うた)(うた)うて(なに)をして()るのだ、074(ちつ)心得(こころえ)なさい』
075 (ばば)076(みづ)(かぶ)りながら、
077婆(黒姫)何処(どこ)(かた)()らぬが、078(かみ)(さま)のため世界(せかい)のために(まこと)一心(いつしん)()てぬく、079日本(やまと)(だましひ)生粋(きつすゐ)真正(せうまつ)水晶魂(すゐしやうだま)守護神(しゆごじん)さまの命令(めいれい)によつて、080この結構(けつこう)なお(みづ)身魂(みたま)(きよ)め、081結構(けつこう)(うた)宇宙(うちう)神々(かみがみ)()べて()るのに、082(まへ)(なに)()ふのだい、083結構(けつこう)言霊(ことたま)がお(まへ)には(きこ)えぬのかい』
084馬公(うまこう)一向(いつかう)トンと(きこ)えませぬ(わい)085(なん)だか(その)言霊(ことたま)()くと悪魔(あくま)()つて()るやうだ』
086鹿公(しかこう)『オイ馬公(うまこう)087野暮(やぼ)(こと)()ふない、088(うし)(つめ)ぢやないが(さき)から(わか)つて()るぢやないか。089悪魔(あくま)大将(たいしやう)が、090悪魔(あくま)乾児(こぶん)(あつ)めやうと(おも)つて全力(ぜんりよく)(つく)し、091車輪(しやりん)活動(くわつどう)をやつて御座(ござ)るのだ、092(ひと)商売(しやうばい)妨害(ばうがい)するものでないぞ』
093馬公(うまこう)(べつ)妨害(ばうがい)はしようとは(おも)はぬが、094アンナ(こゑ)()しやがると(なん)だか(しやく)(さは)つて、095反吐(へど)()さうになつて()た。096オイ()アさま、097もう()加減(かげん)にやめたらどうだい。098この産盥(うぶだらひ)はお(まへ)一人(ひとり)専有物(せんいうぶつ)ぢやないぞ、099()加減(かげん)退却(たいきやく)したらどうだ』
100(ばば)(黒姫)何処(どこ)(わか)(しう)()らぬが老人(としより)世界(せかい)のため(みち)のため、101(いのち)がけで修業(しうげふ)をして()るのだ。102(わし)言霊(ことたま)(えら)いお()(さは)ると()えるが、103それは無理(むり)もない、104(まへ)()いて()悪魔(あくま)(おそ)れて()るのだ、105其処(そこ)辛抱(しんばう)して(しばら)(わし)言霊(ことたま)謹聴(きんちやう)しなされ、106さうして修業(しうげふ)仕方(しかた)(わし)のやり(かた)手本(てほん)として(あたま)(さき)から(あし)(うら)まで、107一分(いちぶ)一厘(いちりん)(あか)もない(ところ)まで(おと)しなされ、108さうしたら結構(けつこう)結構(けつこう)なウラナイ(けう)(かみ)(さま)のお(みち)入信(にふしん)(ゆる)して()げる。109今時(いまどき)(わか)(もの)(なん)でも()でも(あたら)しがつて(むかし)(もと)根本(こつぽん)(かみ)(さま)因縁(いんねん)性来(しやうらい)()らず、110(まこと)(こと)()うてやれば馬鹿(ばか)にしてホクソ(わら)ひをする(もの)(ばか)りぢや、111十万(じふまん)億土(おくど)()(くに)112(そこ)(くに)へと(おと)されて、113万劫(まんごふ)末代(まつだい)(あが)られぬやうな()()ふもの(ばか)りぢやから、114それが可憐相(かあいさう)()()けて()()れぬから、115世界(せかい)人民(じんみん)身魂(みたま)立替(たてかへ)立直(たてなほ)し、116大先祖(おほせんぞ)因縁(いんねん)から身魂(みたま)罪障(めぐり)(こと)から、117(なに)()()いて()かして(たす)けてやる結構(けつこう)のお(みち)ぢやぞよ。118(まへ)(えん)があればこそ、119コンナ結構(けつこう)(わし)(ぎやう)()せて(もら)うたのぢや。120ちと気分(きぶん)(わる)うても辛抱(しんばう)して()きなされ』
121馬公(うまこう)『それは(おほ)きに()親切(しんせつ)有難(ありがた)う、122(わたし)(もと)(みやこ)(うま)れたものだが、123()主人(しゆじん)(むすめ)さまと比沼(ひぬ)真名井(まなゐ)(さん)参拝(さんぱい)しようと(おも)うて()途中(とちう)で、124大江山(おほえやま)(おに)乾児(こぶん)(だま)され、125岩窟(がんくつ)(なか)()()まれ、126エライ()()うた。127そこへ(えら)(ひと)()()(わし)(たす)けて(くだ)さつたので、128(なん)でも(この)(へん)結構(けつこう)(かみ)(さま)御座(ござ)ると()いてお礼詣(れいまゐ)りに()たのだよ』
129 (ばば)は、130一生(いつしやう)懸命(けんめい)(みづ)(かぶ)りながら此方(こちら)()かず(こゑ)(あて)に、
131婆(黒姫)『さうだらう、132さうだらう、133真名井(まなゐ)(さん)(まゐ)つてお(かげ)どころか、134(おに)岩窟(いはや)()()まれたのだな。135真名井(まなゐ)(さん)()ふのは、136それや()(ぞこな)ひぢや、137あれは()()さまと()うて(かみ)(さま)(まが)ひぢや、138変性(へんじやう)女子(によし)()つの御霊(みたま)()うて、139どてらい悪神(あくがみ)変性(へんじやう)男子(なんし)日本(やまと)(だましひ)根本(こつぽん)生粋(きつすゐ)(かみ)(さま)真似(まね)をしよつて、140(ぜん)()せて(あく)(はたら)いとるのぢや、141(しばら)()ちなさい、142(わし)結構(けつこう)(こと)(をし)へて()げる、143三五教(あななひけう)とやら()(をしへ)三五(さんご)(つき)ぢやと()うて()るが、144三五(あななひ)(つき)なら満月(まんげつ)ぢや、145片割(かたわ)(づき)変性(へんじやう)女子(によし)だけの(をしへ)(なん)になるものか、146(くも)(かく)れて此処(ここ)半分(はんぶん)147(まこと)経綸(しぐみ)()きたければ(わし)について御座(ござ)れ、148三千(さんぜん)(ねん)(なが)苦労(くらう)艱難(かんなん)一厘(いちりん)経綸(しぐみ)を、149信仰(しんかう)次第(しだい)()つて()かして()げぬ(こと)もない、150マア其辺(そこら)にヘタつて此方(こちら)修業(しうげふ)がすむまで()つて()なさい』
151(また)もや(ばば)(しき)りに(みづ)(かぶ)る。152二人(ふたり)(をとこ)(かげ)(かたち)(したが)ふやうに、153(みづ)()()げてはザブザブと(くろ)(からだ)()びせて()る。154(ばば)(やうや)水行(すゐぎやう)(をは)り、155(あたま)(さき)から(あし)(うら)(まで)すつくり水気(すゐき)(ぬぐ)()り、156念入(ねんい)りにチヤンと(ふう)(ととの)へ、157紋付(もんつき)羽織(はおり)着用(ちやくよう)(およ)び、158二人(ふたり)(をとこ)(ともな)ひ、159谷川(たにがは)(あし)のかかる(いし)を、160(へび)(かわづ)(ねら)ふやうな()つきで、161ポイポイポイと兎渡(うさぎわた)りに(わた)りつき。
162 (こし)()両手(りやうて)をもみながら、
163(せつ)黒姫(くろひめ)先生(せんせい)(さま)164(ひさ)しうお()(かか)りませぬ、165健康(たつしや)でお目出度(めでた)う』
166黒姫(くろひめ)『ヤアお(まへ)はオヽお(せつ)ぢやつたか、167(なん)()つてもかと()うても、168ひつ(くく)つてでも(つかま)へてでも、169()かさにや()かぬは(をんな)一心(いつしん)170大慈(だいじ)大悲(だいひ)(こころ)をもつて(たす)けてやらうと、171(たき)172(いた)二人(ふたり)(あと)()はせたが、173何処(どこ)をお(まへ)迂路(うろ)ついとつたのだエ、174サアサア(わし)について御座(ござ)れ。175ヤアお(まへ)青彦(あをひこ)ぢやないか、176三五教(あななひけう)(とぼ)けてまだ()()めぬか』
177若彦(わかひこ)『ハイ有難(ありがた)う、178(かげ)ではつきり()()めました』
179黒姫(くろひめ)『さうだらう、180(わか)(もの)()()(かは)るもので、181彼方(あちら)迂路(うろ)々々(うろ)182此方(こちら)迂路(うろ)々々(うろ)して仕方(しかた)()いものぢや、183(まへ)(たす)けてやり()いと(おも)うて、184どれだけ(ほね)()つたか()れたものぢやない。185サア(ゆつ)くりと(わし)(ところ)までお(せつ)一緒(いつしよ)()()なされ、186三五教(あななひけう)も、187一寸(ちよつと)(もつと)もらしい(こと)()ひよるが、188(しまひ)には(はく)()げて何程(なにほど)金太郎(きんたらう)のお(まへ)でも愛想(あいさう)()きたらう、189肝腎要(かんじんかなめ)(いづ)(みたま)本家(ほんけ)(ないがしろ)にして、190新米(しんまい)出来(でき)(そこな)ひのやうな三五教(あななひけう)(とぼ)けて()(ところ)で、191(めし)(ほね)があつて(のど)(とほ)りやせまいがな。192一杯(いつぱい)二杯(にはい)(めづ)らしいので(のど)にも(さは)らないで鵜呑(うの)みにするが、193三杯目(さんばいめ)(くらゐ)からは、194ニチヤづいて(した)(さき)にザラザラ(さは)り、195それを無理(むり)()()めば(はら)具合(ぐあひ)(わる)くなつて下痢(げり)(もよほ)し、196(しまひ)(はて)にはソレ般若(はんにや)波羅(はら)蜜多(みつた)()うて(はら)()でたり、197(しり)具合(ぐあひ)(まで)(わる)くして雪隠(せつちん)へお千度(せんど)()み、198オンアボキヤ、199ビルシヤナブツ、200マカモダラニブツ、201ヂンラバ、202ハラバリタヤ密教の真言「光明真言」だと思われるが、語句は少々異なる。と、203陀羅尼(だらに)(しり)(とな)へるやうになつて仕舞(しま)ふ、204さうぢやから()つてみにや(わか)らぬのだ。205加減(かげん)()いウラナイ(けう)御飯(ごはん)(なが)らく()べて()つて、206栄耀(ゑいえう)(あま)つて(もち)(かは)()ぎ、207まだ(うま)(こと)があるかと(おも)うて、208三五教(あななひけう)(めづら)しい食物(くひもの)があるかと這入(はい)つて()たところ、209(あぢ)もしやしやりも()りやせまいがな、210三五教(あななひけう)ぢやなく、211味無(あぢな)(けう)ぢや、212アヽよい修業(しうげふ)をして御座(ござ)つた。213よもや後戻(あともど)りはしやしまいなア』
214若彦(わかひこ)『ヘイ、215()うして()うして三五教(あななひけう)ナンか(しん)じますものか、216これから貴方(あなた)頤使(いし)(したが)つて、217犬馬(けんば)(らう)をも()しまぬ覚悟(かくご)でございます』
218黒姫(くろひめ)『それは結構(けつこう)ぢや、219(せつ)220あの頑固(ぐわんこ)(ぢい)(ばば)アが、221国替(くにがへ)したので(かな)しいやら(うれ)しいやら、222(すき)青彦(あをひこ)気楽(きらく)()はれるやうになつたのも、223(まつた)くウラナイ(けう)のお(かげ)ぢやぞエ、224あのマア(なん)()(そろ)うた若夫婦(わかふうふ)ぢやなア』
225()つて(かは)つて機嫌(きげん)(なほ)し、226青彦(あをひこ)背中(せなか)をポンと(たた)いて(わら)ふ。
227馬公(うまこう)『お(やす)くない(ところ)拝見(はいけん)さして(もら)ひましてイヤもう羨望(せんばう)万望(まんばう)次第(しだい)御座(ござ)います(わい)
228鹿公(しかこう)(なん)(めう)ぢやないか、229此処(ここ)には産釜(うぶがま)230産盥(うぶだらひ)()うて眼鏡(めがね)のやうに夫婦(めをと)水溜(みづたま)りが綺麗(きれい)()いて()る、231(かは)(へだ)ててお(せつ)サンに若彦(わかひこ)232オツトドツコイ青彦(あをひこ)さま、233(なん)()配合(はいがふ)だ、234(おれ)(たち)(はや)誰人(だれ)かの媒妁(なかうど)配偶(はいぐう)したいものだ、235ナア馬公(うまこう)………』
236黒姫(くろひめ)『お(まへ)(はじ)めて()(かた)ぢやが、237青彦(あをひこ)弟子(でし)ぢやな、238さうして()(なん)()ふのぢや、239最前(さいぜん)から()いて()れば四足(よつあし)のやうな()()びて御座(ござ)るが、240本当(ほんたう)()()かして(くだ)さい、241大方(おほかた)(ふく)守護神(しゆごじん)()だらう、242一寸(ちよつと)()たところでは馬鹿(うましか)らしいお(かほ)ぢや、243何程(なにほど)立派(りつぱ)女房(にようばう)()しいと()うても、244そのスタイルでは駄目(だめ)ぢやなア、245四足(よつあし)守護神(しゆごじん)をこれからウラナイ(けう)()()()して、246結構(けつこう)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)()眷属(けんぞく)守護神(しゆごじん)()(かへ)()げよう、247()うぢや(うれ)しいか、248(はづ)かしさうに(をとこ)だてら(うつ)むいて、249()(よわ)(こと)だ。250(しか)其処(そこ)()(ところ)ぢや、251(やさ)しいものぢや、252人間(にんげん)(はづ)かしい(こと)(わす)れては駄目(だめ)ぢや、253サアサア()(にん)とも(わし)(ところ)へお(いで)なさい。254(この)二人(ふたり)(をとこ)一人(ひとり)弥仙山(みせんざん)の、255ではない弥仙山(みせんざん)木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)(かみ)(さま)()きと()つて大変(たいへん)信仰(しんかう)をして()つたが、256モウ(ひと)(えら)()出神(でのかみ)(さま)257竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)のある(こと)(さと)つて、258かうして一生(いつしやう)懸命(けんめい)信神(しんじん)をして()るのぢや』
259青彦(あをひこ)『アヽさうですか、260それは熱心(ねつしん)(こと)ですなア』
261馬公(うまこう)『お()アさま、262一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい、263(わたし)には一人(ひとり)(つれ)御座(ござ)います』
264黒姫(くろひめ)(きま)つたこつちや、265(まへ)(つれ)鹿(しか)ぢやないか』
266馬公(うまこう)『イヤイヤま一人(ひとり)267(もと)(わたし)()主人(しゆじん)であつた紫姫(むらさきひめ)()結構(けつこう)なお(かた)()られます』
268黒姫(くろひめ)『その(かた)何処(どこ)()られるのだ、269(はや)()びて()なさい』
270馬公(うまこう)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)に、271つい(この)(あひだ)からなられまして、272今日(けふ)(はじ)めて大神(おほかみ)(さま)()参拝(さんぱい)なされました。273(いま)(みや)()祈念(きねん)をして()られます』
274黒姫(くろひめ)『アーさうかな、275コレコレ青彦(あをひこ)276(まへ)改心(かいしん)をしてウラナイ(けう)(もど)つた土産(みやげ)に、277(その)紫姫(むらさきひめ)とやらを帰順(きじゆん)させて()なさい、278三五教(あななひけう)へも(しばら)這入(はい)つて()つたから、279長所(ちやうしよ)もあるけれど、280短所(たんしよ)沢山(たくさん)()つて()るだらう、281(その)(まへ)三五教(あななひけう)愛想(あいさう)()かした経歴(けいれき)でも()いて()かして、282その紫姫(むらさきひめ)(はや)()れて()なさい』
283青彦(あをひこ)(たしか)請合(うけあ)つて帰順(きじゆん)さして()ます、284どうぞ(わたくし)(たち)(もと)(ごと)くお使(つか)(くだ)さいませぬか』
285黒姫(くろひめ)使(つか)うて()げるとも、286ヤア(わし)使(つか)ふのではない、287竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)がお使(つか)(あそ)ばすのだ』
288 ()かる(ところ)静々(しづしづ)とやつて()たのは紫姫(むらさきひめ)なり。
289紫姫(むらさきひめ)若彦(わかひこ)さま、290馬公(うまこう)291鹿公(しかこう)292エローお()たせ(いた)しました。293サアサア下向(げかう)(いた)しませう』
294 一同(いちどう)は、
295一同『ハイ』
296と、297どことも()躊躇(ためらひ)気味(きみ)生返事(なまへんじ)をして()る。
298黒姫(くろひめ)『ヤアお(まへ)紫姫(むらさきひめ)()ふのか、299三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()(こと)ぢやが、300神界(しんかい)のために()苦労(くらう)(さま)御座(ござ)います、301どうぞ精々(せいぜい)302世界(せかい)のために活動(くわつどう)して(くだ)さい』
303 紫姫(むらさきひめ)304(うれ)しさうな(かほ)つきで、
305紫姫『ハア貴方(あなた)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)生宮(いきみや)306()(ところ)でお()にかかりました。307(わたし)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)になりましてから、308まだ()(あさ)御座(ござ)いますので、309(なに)(ぞん)じませぬ、310何卒(どうぞ)老練(らうれん)貴女(あなた)(さま)311(よろ)しく()教授(けうじゆ)(ねが)ひます』
312黒姫(くろひめ)『アヽ(よろ)しい(よろ)しい、313三五教(あななひけう)でも結構(けつこう)だ、314(いづ)(わし)(はなし)()いたらきつと(かぶと)()いでウラナイ(けう)にならねばならぬ。315発根(ほつこん)合点(がてん)のゆく(まで)316(まへ)矢張(やつぱり)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)肩書(かたがき)をもつて()なさるが宜敷(よろし)からう、317無理(むり)にウラナイ(けう)(はい)つて(くだ)さいとは(まを)しませぬ、318(かみ)(ひら)かにや(ひら)けぬぞよ、319無理(むり)引張(ひつぱり)には()つて(くだ)さるなと大神(おほかみ)(さま)仰有(おつしや)つてござる、320(こころ)から発根(ほつこん)改心(かいしん)でなければお(かげ)はないから』
321紫姫(むらさきひめ)一寸(ちよつと)見受(みう)(まを)しても、322立派(りつぱ)貴女(あなた)神格(しんかく)323一目(ひとめ)()れば貴女(あなた)(ほう)じたまふお(みち)(すぐ)れて()ることは(おろ)かな(わたし)にも観測(くわんそく)出来(でき)ます。324何卒(なにとぞ)宜敷(よろし)()指導(しだう)(ねが)ひます』
325黒姫(くろひめ)『ヤア(なん)賢明(けんめい)淑女(しゆくぢよ)ぢやなア、326コンナ(もの)()(わか)(かた)()うして三五教(あななひけう)のやうな(をしへ)(はい)つたのだらう、327()(なか)にはコンナ(ひと)がちよいちよい(かく)れて()るから、328何処迄(どこまで)(さが)(もと)めて、329(まこと)(ひと)(あつ)めねばならぬ。330(まこと)(もの)(ばか)()()せて大望(たいもう)経綸(しぐみ)成就(じやうじゆ)(いた)させるぞよとは、331大神(おほかみ)(さま)のお言葉(ことば)332アヽ(おそ)()りました。333変性(へんじやう)男子(なんし)霊様(みたまさま)334真実(ほんと)根本(こつぽん)変性(へんじやう)女子(によし)霊様(みたまさま)335サアサア皆様(みなさま)336(かみ)(さま)にお(れい)(まを)しませう』
337黒姫(くろひめ)意気(いき)揚々(やうやう)として祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、338得意(とくい)(いろ)満面(まんめん)(うか)べ、339(はな)をぴこつかせ、340(かた)(ゆす)り、341(あゆ)(ぶり)(つね)とは(かは)つて、342いそいそと崎嶇(きく)たる山道(やまみち)(さき)()ち、343魔窟(まくつ)(はら)隠家(かくれが)さして一行(いつかう)(はち)(にん)黒姫と従者2人、紫姫・若彦・馬公・鹿公・お節の、計8人。従者のうち1人は綾彦だということが第10章に記されている(もう1人は名前不明)。(すす)()く。
344大正一一・四・二五 旧三・二九 加藤明子録)
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