霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 玉照姫(たまてるひめ)〔六四五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第5篇 五月五日祝 よみ(新仮名遣い):ごがついつかのいわい
章:第17章 玉照姫 よみ(新仮名遣い):たまてるひめ 通し章番号:645
口述日:1922(大正11)年04月28日(旧04月02日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
常彦ら三人は、四継王山の麓にできた、悦子姫の館に逃げて帰ってきた。そして、加米彦と夏彦に、事の顛末を報告し、青彦たちがウラナイ教に寝返ったことを伝えた。
加米彦は慌てて魔窟ケ原に乗り込もうとするが、夏彦は落ち着いて加米彦を引き止める。夏彦は一日ゆっくりしていれば、青彦、紫姫らの動向がきっとわかる、と落ち着いている。
翌日、悦子姫と音彦が、五十子姫を伴って館に帰ってきた。加米彦と夏彦は慌てて大掃除をして一行を迎える。そこへ、ウラナイ教に潜入していた馬公と鹿公が、けっこうな神様を奉戴して戻ってきた、と報告に来る。
丹州を先頭に、玉照姫を抱いたお玉を連れて、青彦ら一行が館に戻ってきた。悦子姫は嬉し涙を流して玉照姫を迎えた。
青彦はこれまでの経緯を宣伝歌に込めて歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-03-26 18:20:24 OBC :rm1817
愛善世界社版:275頁 八幡書店版:第3輯 739頁 修補版: 校定版:282頁 普及版:125頁 初版: ページ備考:
001自転倒(おのころ)(じま)第一(だいいち)
002霊地(れいち)()にも()りひびく
003世界(せかい)無二(むに)神策地(しんさくち)
004(みづ)御霊(みたま)(かく)場所(ばしよ)
005青葉(あをば)も、そよぐ夏彦(なつひこ)
006万世(ばんせい)不動(ふどう)瑞祥(ずゐしやう)
007(いは)加米彦(かめひこ)諸共(もろとも)
008()つの手足(てあし)(はたら)かせ
009(あさ)(ゆふ)なに勉強(いそし)みて
010(あるじ)留守(るす)(まも)()
011世継王(よつわう)(やま)夕嵐(ゆふあらし)
012雨戸(あまど)(たた)(をり)からに
013(いき)もせきせき(たづ)()
014三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
015(つね)(かは)りし常彦(つねひこ)
016(かほ)紅葉(もみぢ)()らしつつ
017(おと)もサワサワ滝公(たきこう)
018(こころ)(いた)むる板公(いたこう)
019これの(いほり)打叩(うちたた)
020(たの)(たの)もと(おと)なへば
021オウと(こた)へて加米彦(かめひこ)
022雨戸(あまど)ガラリと引開(ひきあ)けて
023(この)真夜中(まよなか)(ひと)()
024(おと)なふ(かみ)何者(なにもの)
025(おに)大蛇(をろち)曲神(まがかみ)
026まさか(ちが)へば木常彦(きつねひこ)
027(ただ)一言(いちごん)言霊(ことたま)
028愛想(あいさう)もコソも夕嵐(ゆふあらし)
029()(はら)はむと夕月夜(ゆふづくよ)
030キツと(すか)して(なが)むれば
031(なん)とは、なしに見覚(みおぼ)えの
032姿(すがた)(こころ)(やは)らげつ
033(はやし)(なか)(ひと)(いえ)
034(おと)なふ(ひと)何人(なにびと)
035御名(みな)名乗(なの)らせ(たま)へよと
036いと慇懃(いんぎん)言霊(ことたま)
037()(なほ)すれば常彦(つねひこ)
038(かうべ)をかたげ(こし)()
039両手(りやうて)(ひざ)(うへ)()
040(おに)(じやう)にて(わか)れたる
041()れは常彦(つねひこ)宣伝使(せんでんし)
042(なれ)加米彦(かめひこ)夏彦(なつひこ)
043申上(まをしあ)げたき仔細(しさい)あり
044紫姫(むらさきひめ)青彦(あをひこ)
045三五教(あななひけう)にアキの(そら)
046天津(あまつ)御空(みそら)黒姫(くろひめ)
047(しこ)魔風(まかぜ)(つつ)まれて
048(まこと)(みち)()りはづし
049悪魔(あくま)(とりこ)となりにける
050(とも)身魂(みたま)(すく)はむと
051()()についで遥々(はるばる)
052(ここ)まで(たづ)(きた)りしぞ。
053 加米彦(かめひこ)はこれを()くより、
054加米彦『ナニ、055紫姫(むらさきひめ)056青彦(あをひこ)がウラナイ(けう)沈没(ちんぼつ)しましたか。057それは大変(たいへん)058()()づお這入(はい)(くだ)さいませ……ヤア見馴(みなれ)(かた)が、059しかもお二人(ふたり)
060 (たき)061(いた)一度(いちど)に、
062滝公、板公(わたくし)常彦(つねひこ)(さま)のお(とも)(いた)して(まゐ)りました新参者(しんざんもの)御座(ござ)います、063何卒(なにとぞ)(よろ)しうお(ねがひ)(いた)します』
064加米彦(かめひこ)『アーよしよし、065()(たがひ)にお心安(こころやす)(ねが)ひませう。066……夏彦(なつひこ)(おん)大将(たいしやう)067(なに)をグヅグヅして御座(ござ)る。068天変(てんぺん)地妖(ちえう)大事変(だいじへん)出来(しゆつたい)(いた)しましたぞ』
069 夏彦(なつひこ)(おく)()より、070ノソノソ()(きた)り、
071夏彦『ヤア常彦(つねひこ)さま、072(しばら)くでしたネ、073ようこそお(いで)(くだ)さいました。074マアマアお(あが)(くだ)さいませ。075ユツクリと内開(うちあ)(ばなし)でも(いた)しませうか』
076加米彦(かめひこ)『コレコレ夏彦(なつひこ)大将(たいしやう)077そんな陽気(やうき)(ところ)ぢやありませぬワ』
078夏彦(なつひこ)『そう(あは)てずとも(よろ)しいワイ。079何事(なにごと)(みな)(かみ)(さま)のなさる(こと)ぢや。080ヤア常彦(つねひこ)さま、081(けつ)して(けつ)して()心配(しんぱい)()りませぬ。082(いま)紫姫(むらさきひめ)083青彦(あをひこ)も、084意気(いき)揚々(やうやう)として此家(ここ)(かへ)つて()ますよ』
085常彦(つねひこ)『そうかは(ぞん)じませぬが、086只今(ただいま)(ところ)では非常(ひじやう)(いきほひ)御座(ござ)います。087(わたくし)青彦(あをひこ)088紫姫(むらさきひめ)堕落(だらく)(すく)はむ(ため)に、089ワザワザ(てき)本城(ほんじやう)侵入(しんにふ)し、090忠告(ちうこく)(くは)へてやりました。091そうした(ところ)092青彦(あをひこ)人格(じんかく)はガラリと悪化(あくくわ)し、093終結(しまひ)()てには乱暴(らんばう)狼藉(ろうぜき)094棍棒(こんぼう)(もつ)吾々(われわれ)身体(しんたい)を、095(ところ)(かま)はず滅多(めつた)()ち、096()かる乱暴者(らんばうもの)最早(もはや)(すく)ふべき手段(しゆだん)なしと、097()(もの)取敢(とりあへ)(この)二人(ふたり)(ともな)ひ、098悦子姫(よしこひめ)(さま)(はじ)めあなた(がた)に、099(なん)とか()智慧(ちゑ)()りたいと(おも)つて、100一先(ひとま)引返(ひきかへ)して()ました。101そう楽観(らくくわん)出来(でき)ませぬ』
102加米彦(かめひこ)『ヤア其奴(そいつ)大変(たいへん)だ。103悦子姫(よしこひめ)さまは竹生島(ちくぶしま)へ、104英子姫(ひでこひめ)さまの(あと)()うてお()でになつた不在中(ふざいちゆう)105こんな突発(とつぱつ)事件(じけん)等閑(とうかん)()して()くと()(こと)は、106不忠実(ふちうじつ)(きは)まりだ。107サア常彦(つねひこ)さま、108(とき)(うつ)さず魔窟(まくつ)(はら)黒姫(くろひめ)本陣(ほんぢん)乗込(のりこ)み、109言霊戦(ことたません)大攻撃(だいこうげき)(いた)しませう』
110(はや)くも(しり)ひつからげ()()さむとする。
111夏彦(なつひこ)『アハヽヽヽ、112よく(あは)てる(やつ)だなア。113これだから(わか)(やつ)(こま)るのだ。114マアゆるゆると(ひさ)(ぶり)だ、115神酒(みき)でも(いただ)いて、116作戦(さくせん)計画(けいくわく)をやらうぢやないか。117()いては(こと)仕損(しそん)ずる』
118加米彦(かめひこ)()かねば(こと)()()はぬ。119芽出度(めでたく)凱旋(がいせん)した(その)(うへ)で、120ゆるゆるお神酒(みき)をあがる(こと)にせう。121刻一刻(こくいつこく)(こころ)(そこ)浸潤(しんじゆん)(きた)るウラナイ(けう)悪霊(あくれい)誘拐(いうかい)()()()(はげ)しくなるであらう、122老耄爺(おいぼれおやぢ)夏彦(なつひこ)腰折(こしお)れ、123モウ(おれ)愛想(あいさう)()きた。124悦子姫(よしこひめ)(さま)()命令(めいれい)だから、125(ひめ)(さま)(つか)へると(おも)つて、126今迄(いままで)如何(いか)なる愚論(ぐろん)拙策(せつさく)も、127()(ふさ)いで盲従(まうじゆう)して()たが、128それは平安時(へいあんじ)(とき)(こと)だ。129危急(ききふ)存亡(そんばう)(この)場合(ばあひ)130臨機(りんき)応変(おうへん)処置(しよち)()らねばならぬ。131平和(へいわ)(とき)宰相(さいさう)には、132カナリ適当(てきたう)かは()らぬが国家(こくか)興亡(こうばう)危機(きき)一髪(いつぱつ)(この)(さい)133仮令(たとへ)上官(じやうくわん)夏彦(なつひこ)命令(めいれい)たりとも、134服従(ふくじゆう)すべき(かぎ)りにあらずだ。135サアサア常彦(つねひこ)(ほか)両人(りやうにん)加米彦(かめひこ)(つづ)かせられい……』
136夏彦(なつひこ)『アツハヽヽヽ、137石亀(いしがめ)地団駄(ぢだんだ)138何程(なにほど)(さわ)いだ(ところ)駄目(だめ)だよ。139マアゆつくりと落着(おちつ)いたが()からう。140(おれ)一寸(ちよつと)紫姫(むらさきひめ)(さま)()意中(いちう)以心(いしん)伝心(でんしん)(てき)感得(かんとく)して()るから、141滅多(めつた)(こと)()い。142(なに)(ふか)いお(かんが)へが()つての(こと)だ。143万一(まんいち)紫姫(むらさきひめ)(はじ)め、144青彦(あをひこ)(その)()(もの)145一人(ひとり)にてもウラナイ(けう)黒姫(くろひめ)籠絡(ろうらく)さるる(やう)(こと)実現(じつげん)したら、146(この)夏彦(なつひこ)(ひと)つより()(くび)を、147(いく)つでも加米彦(かめひこ)148常彦(つねひこ)さまに献上(けんじやう)する』
149加米彦(かめひこ)今日(けふ)(かぎ)つて夏彦(なつひこ)大将(たいしやう)150糞落(くそお)(つき)()()いて御座(ござ)るぢやないか。151コラちと(へん)黒姫(くろひめ)悪霊(あくれい)憑依(ひようい)して()るのではなからうかなア。152(ひと)厳重(げんぢう)なる審神(さには)施行(しかう)するの余地(よち)充分(じゆうぶん)あるワイ』
153 夏彦(なつひこ)154二人(ふたり)耳元(みみもと)(くち)()せ、155何事(なにごと)(ささや)いた。
156加米彦(かめひこ)『アーさうか、157ア、158それなら安心(あんしん)だ。159ナア常彦(つねひこ)160肝腎(かんじん)(こと)(おれ)(たち)()つて()れぬものだから、161()らぬ()()んだぢやないか』
162夏彦(なつひこ)身魂(みたま)にチツとでも(くも)りの()(うち)は、163(かみ)(いま)今迄(いままで)(まこと)仕組(しぐみ)(まを)さぬぞよ。164(まこと)()きたくば、165()()りて(うま)赤児(あかご)(こころ)になり、166水晶(すゐしやう)身魂(みたま)(みが)いて(くだ)されよ。167(かみ)(まこと)()かしてやりたいなれど、168(あく)身魂(みたま)(まじ)りて()守護神(しゆごじん)には、169実地(じつち)正真(しやうまつ)(こと)()うてやれぬぞよ……とお筆先(ふでさき)(あら)はれて()りますぞ』
170加米彦(かめひこ)『ヤアさうすると常彦(つねひこ)さま、171吾々(われわれ)二人(ふたり)はまだ(かず)()つて()らぬのだ。172なんとムツカしいものだなア』
173夏彦(なつひこ)()(かく)174(かみ)(さま)にお(れい)申上(まをしあ)げ、175此処(ここ)(いち)(にち)二日(ふつか)休養(きうやう)して(くだ)さい。176(その)(あひだ)にキツと紫姫(むらさきひめ)(さま)177青彦(あをひこ)消息(せうそく)(わか)るでせう』
178加米彦(かめひこ)流石(さすが)(おん)大将(たいしやう)179イヤもう今日(こんにち)(かぎ)り、180何事(なにごと)盲従(まうじゆう)(いた)しませう。181(しか)(なが)間違(まちが)つたら、182約束(やくそく)(とほ)り、183常彦(つねひこ)加米彦(かめひこ)が、184夏彦(なつひこ)御首(みしるし)頂戴(ちやうだい)(つかまつ)るから……()覚悟(かくご)(たしか)でせうな』
185夏彦(なつひこ)『アハヽヽヽ、186たしかだ たしかだ』
187 ()(はなし)(ふけ)(なが)ら、188(その)()主客(しゆきやく)()(にん)(まくら)(なら)べて(しん)()いた。
189 連日(れんじつ)連夜(れんや)(くも)()てたる五月(さつき)(そら)も、190今日(けふ)はカラリと日本晴(にほんばれ)好天気(かうてんき)191()りつく(やう)大空(おほぞら)に、192朝鮮燕(てうせんつばめ)幾十(いくじふ)となく(どろ)(ふく)みて、193前後(ぜんご)左右(さいう)()()有様(ありさま)を、194夏彦(なつひこ)(ほか)()(にん)(まど)(ひら)いて愉快気(ゆくわいげ)(なが)めて()る。
195加米彦(かめひこ)随分(ずゐぶん)よく活動(くわつどう)をしたものだなア。196我々(われわれ)(つばめ)(なら)つて、197一層(いつそう)雄飛(ゆうひ)活躍(くわつやく)をやらねばなるまい。198……ヤア(むか)うの(はう)へ、199(しろ)(かさ)()らついて()たぞ』
200(はな)(をり)しも、201(いきほひ)よく此方(こなた)(むか)つて、202青葉(あをば)(なか)(なみ)()たせつつ(すす)(きた)れる饅頭笠(まんじうがさ)203三本(さんぼん)金剛杖(こんがうづゑ)204(くろ)(あし)二本(にほん)205(しろ)(あし)四本(しほん)
206加米彦(かめひこ)『モシモシ夏彦(なつひこ)大将(たいしやう)207青彦(あをひこ)がどうやら凱旋(がいせん)()えますワイ。208(ひと)万歳(ばんざい)三唱(さんしやう)しませうか。209祝砲(しゆくはう)でも()げませうか』
210()ひも(をは)らず「プツプツプウ」と放射(はうしや)する。
211夏彦(なつひこ)『アーア煙硝(えんせう)(くさ)い、212屋内(をくない)花火(はなび)()げるのは険呑(けんのん)だ、213(そと)()つてやつて(くだ)さい』
214加米彦(かめひこ)『モウ(うら)言霊(ことたま)材料(ざいれう)欠乏(けつぼう)215これから(おもて)言霊(ことたま)だ……ウローウロー』
216(ただ)一人(ひとり)呶鳴(どな)つて()る。217(ちか)づいた(さん)(にん)男女(だんぢよ)
218三人(音彦、悦子姫、五十子姫)『ヤア加米彦(かめひこ)さま、219エライ元気(げんき)だなア』
220加米彦(かめひこ)『サア エライ元気(げんき)だ。221紫姫(むらさきひめ)に、222青彦(あをひこ)に、223一人(ひとり)は……大方(おほかた)(せつ)だらう。224よう(かへ)つて(くだ)さつた。225サアサア奮戦(ふんせん)情況(じやうきやう)226委細(つぶさ)夏彦(なつひこ)(おん)大将(たいしやう)言上(ごんじやう)(あそ)ばせ』
227男(音彦)『アハヽヽヽ』
228一人(ひとり)(をとこ)(かさ)()ぐ。
229加米彦(かめひこ)『ヤアお(まへ)音彦(おとひこ)(さま)か。230……アヽこれはしたり、231悦子姫(よしこひめ)(さま)……ア(なん)だ、232五十子(いそこ)(ひめ)(さま)……ヤア音彦(おとひこ)(さま)233芽出度(めでた)う。234悦子(よしこ)女王(ぢよわう)()らせられなかつたら、235大変(たいへん)()夫婦(ふうふ)愉快(ゆくわい)()りましただらうに……ヤアもう()(なか)(おも)(やう)()かぬものですナア音彦と五十子姫は夫婦である。
236悦子姫(よしこひめ)『オホヽヽヽ』
237加米彦(かめひこ)(なか)(へだ)つる悦子川(よしこがは)かなア、238可哀相(かはいさう)に、239(こが)(こが)れたコガの(すけ)240(かほ)()(なが)(まま)ならぬ……と()ふ、241喜劇(きげき)242悲劇(ひげき)活動(くわつどう)写真(しやしん)……ヤア()(かく)這入(はい)(くだ)さいませ』
243音彦(おとひこ)(しか)らば(ゆる)しめされよ』
244加米彦(かめひこ)姫御前(ひめごぜん)道中(だうちう)(あそ)ばしたお(かげ)で、245大変(たいへん)言霊(ことたま)向上(かうじやう)しました。246……サア夏彦(なつひこ)さま、247今日(けふ)(かぎ)吾々(われわれ)同僚(どうれう)だ、248何時(いつ)までも女王(ぢよわう)(かは)りは出来(でき)ませぬぞ。249……サア悦子姫(よしこひめ)女王(ぢよわう)250ズツと(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ』
251悦子姫(よしこひめ)加米彦(かめひこ)さま、252夏彦(なつひこ)さま、253よく神妙(しんめう)にお留守(るす)をして(くだ)さいました。254あなた(がた)健実(まめ)(こと)255よく()()けて(くだ)さると()えて、256風流(ふうりう)夏草(なつくさ)(いへ)周囲(まはり)一杯(いつぱい)()えて()ります。257小蛇(こへび)でも()そうに御座(ござ)いますな。258オホヽヽヽ』
259 加米彦(かめひこ)260(あたま)()(なが)ら、
261加米彦『イヤもう……エー(そと)惟神(かむながら)(まか)し、262(うち)一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、263内容(ないよう)充実(じゆうじつ)(しゆ)(いた)しました。264これが所謂(いはゆる)内主(ないしゆ)外従(ぐわいじゆう)()ふものです』
265悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ、266成程(なるほど)(そと)には茫々(ばうばう)(うつく)しい(くさ)()天道(てんだう)(さま)のお(かげ)繁茂(はんも)して()ます。267室内(しつない)はザツクバラン、268沢山(たくさん)紙片(かみぎれ)散乱(さんらん)して、269まるで花見(はなみ)(には)(やう)です』
270加米彦(かめひこ)『イヤ此間(こなひだ)から、271夏彦(なつひこ)(かり)大将(たいしやう)272寝冷(ねび)えを(いた)し、273風邪(かぜ)()いたものですから、274鼻紙(はながみ)をそこら(ぢう)()らして()いたのです。275……一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい。276(はうき)(いま)()いて()けます、277ウツカリ()んで(もら)へば、278(あし)(うら)にニチヤツとひつつきます。279……オイ夏彦(なつひこ)鼻紙(はながみ)大将(たいしやう)280(なに)をグヅグヅして()るのだ。281(この)加米彦(かめひこ)何事(なにごと)盲従(まうじゆう)して()たのだ。282どうだ、283(この)鼻紙(はながみ)(はうき)()()らしても、284(しか)りは御座(ござ)いませぬかなア』
285夏彦(なつひこ)『これはこれは悦子姫(よしこひめ)(さま)286(いま)煤掃(すすはき)最中(さいちう)へお(かへ)(くだ)さいまして、287(まこと)申訳(まをしわけ)御座(ござ)いませぬ。288どうぞ(しばら)く、289(うら)森林(しんりん)(うつく)しい(はな)()いて()ます、290恰度(ちやうど)菖蒲(あやめ)()(さか)り、291(さん)(にん)(とも)(しばら)御覧(ごらん)なし(くだ)さいませ。292(その)(あひだ)夏季(かき)(だい)清潔法(せいけつはふ)執行(しつかう)(いた)します。293……オイ加米彦(かめひこ)294(はうき)だ、295(みづ)()め、296采払(さいはらひ)だ……』
297加米彦(かめひこ)貴様(きさま)はジツとして()()さずに、298(あご)ばつかりで……そう一度(いちど)に……千手(せんじゆ)観音(くわんのん)(さま)ぢやあるまいに、299(みづ)()む、300采払(さいはらひ)使(つか)ふ、301(はうき)使(つか)うと()(こと)出来(でき)るものか。302貴様(きさま)(ひと)活動(くわつどう)せぬか。303門外(かど)(つばめ)活動(くわつどう)を、304チツと(なら)へ』
305夏彦(なつひこ)『ハイハイ(かしこ)まりました』
306(たすき)をかけ、
307夏彦『わしはお(いへ)掃除(さうぢ)する。308(まへ)(には)掃除(さうぢ)して()れ…』
309 (にはか)にバタバタ、310ガタガタ……、
311夏彦(なつひこ)『オイ常彦(つねひこ)312(いた)313(たき)314手伝(てつだ)ひして()れぬか。315……ヤアどつか()きやがつたなア』
316(まど)(のぞ)き、
317夏彦『ヤア一生(いつしやう)懸命(けんめい)(くさ)をひいて()るワイ』
318 半時(はんとき)ばかりかかつて大掃除(おほさうぢ)を、319吐血(とけつ)()こつた(やう)(さわ)ぎでやつてのけた。320(とき)見計(みはか)らひ悦子姫(よしこひめ)321音彦(おとひこ)322五十子(いそこ)(ひめ)323ニコニコし(なが)ら、
324音彦(おとひこ)『ヤア(にはか)(まゐ)りまして、325エライ()雑作(ざふさ)をかけました』
326加米彦(かめひこ)『ヤア有難(ありがた)う。327()()(こと)()ければ、328モウ一月(ひとつき)()たぬ(うち)に、329(この)(いへ)(くさ)(なか)沈没(ちんぼつ)する(ところ)でした。330アハヽヽヽ』
331音彦(おとひこ)身魂(みたま)相応(さうおう)()住宅(ぢうたく)で……』
332悦子姫(よしこひめ)『オホヽヽヽ』
333 (ここ)(やつ)つの(かさ)(だい)は、334(たたみ)(うへ)二列(にれつ)並列(へいれつ)した。335悦子姫(よしこひめ)(はじ)一同(いちどう)は、336(たがひ)久濶(きうくわつ)(じよ)し、337打解話(うちとけばなし)(とき)(うつ)す。338(をり)しも門口(かどぐち)(あら)はれ(きた)馬公(うまこう)339鹿公(しかこう)
340馬公、鹿公『モシモシ夏彦(なつひこ)さま、341(うま)342鹿(しか)両人(りやうにん)です。343()注進(ちうしん)(まゐ)りました』
344門口(かどぐち)より呶鳴(どな)()んだ。
345夏彦(なつひこ)『ヤア馬公(うまこう)鹿公(しかこう)346よう(かへ)つて()た。347(しか)今日(けふ)(おく)(めづ)らしいお(きやく)さまだ。348()主人公(しゆじんこう)紫姫(むらさきひめ)さま(はじ)青彦(あをひこ)はどうなつた』
349馬公(うまこう)只今(ただいま)結構(けつこう)生神(いきがみ)さまの玉子(たまご)奉迎(ほうげい)して、350これへお(かへ)りになります。351どうぞ座敷(ざしき)片付(かたづ)けて、352充分(じゆうぶん)清潔(せいけつ)にして()つて()()れいとの、353青彦(あをひこ)さまの()命令(めいれい)354(ちう)()んで()報告(はうこく)(まゐ)りました。355やがて()入来(じゆらい)になりませう』
356夏彦(なつひこ)『アーそれはそれは()苦労(くらう)でした。357マア一服(いつぷく)して(くだ)さい』
358とイソイソとして(おく)()り、
359夏彦悦子姫(よしこひめ)(さま)360只今(ただいま)紫姫(むらさきひめ)(さま)361青彦(あをひこ)がこれへ(かへ)つて()るそうで御座(ござ)います』
362悦子姫(よしこひめ)『アーそうだらう。363(とこ)()もよく掃除(さうぢ)して()待受(まちう)けを(いた)しませう。364キツと玉照姫(たまてるひめ)(さま)()光来(いで)でせう』
365夏彦(なつひこ)『そんな(こと)御座(ござ)いませうかなア。366どうして(また)それが(わか)りますか』
367悦子姫(よしこひめ)何事(なにごと)英子姫(ひでこひめ)(さま)()経綸(けいりん)368キツと(いま)にお()しになります』
369 ()()(ところ)へ、370丹州(たんしう)先頭(せんとう)に、371(たま)玉照姫(たまてるひめ)(うやうや)しく捧持(ほうぢ)し、372紫姫(むらさきひめ)373青彦(あをひこ)374(せつ)一行(いつかう)ゾロゾロと(この)(ひと)()(いきほひ)よく()(きた)る。375加米彦(かめひこ)376(あわて)()んで()で、
377加米彦(かめひこ)『ヤア(あんず)るより(もも)(やす)い。378今日(けふ)はモモだらけだ。379モウモウ(いそが)しうて(いそが)しうて、380(うれ)しいやら面白(おもしろ)いやら、381(いさ)ましいやら、382()つから、383()つから見当(けんたう)()れなくなつた。384改心(かいしん)(いた)すとマサカの(とき)に、385(うれ)しうてキリキリ(まひ)(いた)身魂(みたま)と、386(つら)うてキリキリ(まひ)(いた)身魂(みたま)とが出来(でき)るぞよ……とは(この)(こと)だ。387サアサア(みな)さま、388ズツと(おく)へ、389キリキリ()ひもつてお這入(はい)(くだ)さいませ……ドツコイシヨのヤツトコシヨ…』
390面白(おもしろ)()つきをして(をど)つて()る。391青彦(あをひこ)
392青彦(あをひこ)『コレコレ加米彦(かめひこ)さま、393(はや)玉照姫(たまてるひめ)(さま)を、394悦子姫(よしこひめ)(さま)()紹介(せうかい)して(くだ)さい』
395 悦子姫(よしこひめ)(おく)より(はし)(きた)り、396(うやうや)しく拍手(はくしゆ)し、397(うれ)(なみだ)をタラタラと(なが)(なが)ら、
398悦子姫(よしこひめ)玉照姫(たまてるひめ)(さま)399よくもお()(くだ)さいました。400これで(いよいよ)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)(うたがひ)なし。401アヽ有難(ありがた)し、402(かたじけ)なし』
403()つた()り、404(うれ)(なみだ)()れて、405(かほ)さへあげず()きいる。
406加米彦(かめひこ)『これはこれは悦子姫(よしこひめ)女王(ぢよわう)(さま)407(なに)(この)芽出度(めでた)(とき)に、408メソメソお()(あそ)ばすのだ。409ヤツパリ(をんな)(をんな)だなア。410涙脆(なみだもろ)いと()えるワイ。411アヽ矢張(やつぱ)(おれ)(なん)だか()きたくなつて()た、412アンアンアン』
413 青彦(あをひこ)(うた)ふ、
414青彦(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
415御言(みこと)(かしこ)(くも)りたる
416()(てら)さむと英子姫(ひでこひめ)
417(かみ)仕組(しぐみ)奥山(おくやま)
418(こころ)(ふか)(つつ)みつつ
419(かく)して容易(ようい)弥仙山(みせんざん)
420万代(よろづよ)(いは)亀彦(かめひこ)
421(ともな)聖地(せいち)(あと)にして
422(くに)(さか)えも豊彦(とよひこ)
423(むすめ)のお(たま)木花(このはな)
424(ひめ)(みこと)分霊(わけみたま)
425咲耶(さくや)(ひめ)()()けて
426(あと)白雲(しらくも)(かへ)()
427(こころ)(はる)山家道(やまがみち)
428(をり)こそよけれ悦子姫(よしこひめ)
429音彦(おとひこ)加米彦(かめひこ)夏彦(なつひこ)
430川辺(かはべ)木蔭(こかげ)立寄(たちよ)りて
431英子(ひでこ)(ひめ)神界(しんかい)
432それとはなしに秘事(ひめごと)
433以心(いしん)伝心(でんしん)(かた)りつつ
434(ちち)近江(あふみ)竹生島(ちくぶしま)
435(あし)(はや)めて()(たま)ふ。
436悦子(よしこ)(ひめ)急坂(きふはん)
437三人(みたり)(をとこ)諸共(もろとも)
438辿(たど)りて、やうやう弥仙山(みせんざん)
439(ふもと)()てる豊彦(とよひこ)
440(しづ)伏家(ふせや)立寄(たちよ)りて
441(にはか)産婆(さんば)神業(しんげふ)
442(おも)ひも()らぬ(うづ)(こゑ)
443(たま)(はら)()つて()
444玉照姫(たまてるひめ)()りあげて
445イソイソ(かへ)世継王(よつわう)
446(やま)(ふもと)霊場(れいぢやう)
447(ぼく)して(いほり)(むす)びつつ
448二人(ふたり)(をとこ)留守(るす)をさせ
449紫姫(むらさきひめ)何事(なにごと)
450(ささや)()ひて右左(みぎひだ)
451悦子(よしこ)(ひめ)近江路(あふみぢ)
452紫姫(むらさきひめ)青彦(あをひこ)
453(うま)鹿(しか)二人(ふたり)(ともな)ひて
454西北(せいほく)()して(すす)()
455船岡山(ふなをかやま)山麓(さんろく)
456かかる(をり)しも夕闇(ゆふやみ)
457(すか)して(きこ)ゆる(さけ)(ごゑ)
458青彦(あをひこ)(うま)鹿(しか)(さん)(にん)
459(こゑ)(たづ)ねて(やみ)(みち)
460(すす)(をり)しもウラナイの
461(みち)(をしへ)(たき)(いた)
462一人(ひとり)(をんな)引捉(ひつとら)
463(まつ)古木(こぼく)(しば)りつけ
464権謀(けんぼう)術数(じゆつすう)最中(さいちう)
465(やみ)(さいは)黒姫(くろひめ)
466声色(こわいろ)使(つか)鹿公(しかこう)
467早速(さつそく)頓智(とんち)(たき)(いた)
468おののき(おそ)幽霊(いうれい)
469(おも)(あやま)谷底(たにそこ)
470スツテンコロリと転落(てんらく)
471腰骨(こしぼね)()つてウンウンと
472(やみ)(くるし)(あは)れさよ
473紫姫(むらさきひめ)(さん)(にん)
474(をとこ)にお(せつ)(まも)らせつ
475(すす)んで(きた)元伊勢(もといせ)
476稜威(いづ)御前(みまへ)参拝(さんぱい)
477天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)
478神示(しんじ)(あふ)(とき)もあれ
479(たに)(きこ)ゆる言霊(ことたま)
480(あや)しき(ひびき)青彦(あをひこ)
481紫姫(むらさきひめ)(ともな)ひて
482剣先山(けんさきやま)深谷(ふかたに)
483(たづ)ねて()けば、こは如何(いか)
484顔色(かほいろ)(くろ)黒姫(くろひめ)
485二人(ふたり)(をとこ)諸共(もろとも)
486一心(いつしん)不乱(ふらん)水垢離(みづごうり)
487(その)熱烈(ねつれつ)信仰(しんかう)
488(いづ)れも(きも)(ひや)しつつ
489紫姫(むらさきひめ)青彦(あをひこ)
490(なに)(こころ)(うなづ)きつ
491(にはか)(かは)るウラナイの
492(かみ)(をしへ)宣伝使(せんでんし)
493馬公(うまこう)鹿公(しかこう)諸共(もろとも)
494魔窟(まくつ)(はら)(きづ)きたる
495黒姫館(くろひめやかた)(いで)()
496高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
497相好(さうがう)(くづ)してニコニコと
498(たちま)(かは)地蔵顔(ぢざうがほ)
499()(ほこ)りたる会心(くわいしん)
500(ゑみ)にあたりの雰囲気(ふんゐき)
501乾燥(かんさう)無味(むみ)岩窟(がんくつ)
502(たちま)(はる)(はな)()いて
503()めよ(さわ)げの(にぎ)はしさ
504大洪水(だいこうずゐ)氾濫(はんらん)
505堤防(ていぼう)(くづ)した(ごと)くなる
506乱痴気(らんちき)(さわ)ぎの最中(さいちう)
507阿修羅(あしゆら)(ごと)(いきほひ)
508(あら)はれ(きた)常彦(つねひこ)
509滝公(たきこう)板公(いたこう)(ともな)ひて
510青彦(あおひこ)さまが(むね)(うち)
511()らぬが(ほとけ)黒姫(くろひめ)
512折柄(をりから)(きた)れる高姫(たかひめ)
513()つてかかつた可笑(おか)しさよ
514可哀相(かあいさう)とは()(なが)
515(とき)(つくろ)青彦(あをひこ)
516早速(さそく)頓智(とんち)棍棒(こんぼう)
517()()()()常彦(つねひこ)
518(からだ)()がけて滅多打(めつたうち)
519地蟹(づがに)(やう)(あわ)()いて
520(なみだ)(なが)滝公(たきこう)
521痛々(いたいた)しげに板公(いたこう)
522(くも)(かすみ)(にげ)()
523この振舞(ふるまひ)高姫(たかひめ)
524(みち)(まよ)うた黒姫(くろひめ)
525(はじ)めてヤツと()(ゆる)
526紫姫(むらさきひめ)青彦(あをひこ)
527大事(だいじ)大事(だいじ)宝物(たからもの)
528玉照姫(たまてるひめ)人質(ひとじち)
529(なん)()もなく吾々(われわれ)
530(わた)して()れた(その)(かげ)
531綾彦(あやひこ)、お(たみ)(ともな)ひて
532(こころ)イソイソ山坂(やまさか)
533(みぎ)(ひだり)()()えつ
534於与岐(およぎ)(さと)豊彦(とよひこ)
535(やかた)(いた)りいろいろと
536一伍(いちぶ)一什(しじふ)物語(ものがた)
537紫姫(むらさきひめ)言霊(ことたま)
538豊彦(とよひこ)夫婦(ふうふ)雀踊(こをど)りし
539(たま)()へて玉照(たまてる)
540(ひめ)(みこと)(うづ)御子(みこ)
541(いち)()もなく(たてまつ)
542大願(たいぐわん)成就(じやうじゆ)大勝利(だいしようり)
543長居(ながゐ)(おそ)(また)御意(ぎよい)
544(かは)らぬ(うち)(かへ)らむと
545丹州(たんしう)、お(たま)(おく)られて
546イヨイヨ聖地(せいち)()()れば
547(おも)ひかけぬは悦子姫(よしこひめ)
548科戸(しなど)(かぜ)音彦(おとひこ)
549(こころ)いそいそ五十子(いそこ)(ひめ)
550(なら)()(ぐわつ)雛祭(ひなまつり)
551悠々然(いういうぜん)(かま)()
552此方(こなた)(すみ)(なが)むれば
553(つね)(かは)つた常彦(つねひこ)
554むつかしい(かほ)(ひも)()
555滝公(たきこう)板公(いたこう)(したが)へて
556(すわ)つて御座(ござ)(いさ)ましさ
557剽軽者(へうきんもの)加米彦(かめひこ)
558主人(あるじ)留守(るす)(さいは)ひに
559なまくら、したる(その)(むく)
560捻鉢巻(ねぢはちまき)(しり)からげ
561(には)()くやら采払(さいはら)
562そこらバタバタ(たた)くやら
563戸口(とぐち)(そと)(なが)むれば
564(かわづ)(へび)巣窟(さうくつ)
565なつた(には)をば(たき)(いた)
566二人(ふたり)(たちま)(ほほ)かぶり
567(あせ)をタラタラ(なが)しつつ
568狼狽(うろた)(さわ)(くさ)むしり
569蓬ケ原(よもぎがはら)()()けて
570黄金(こがね)(はな)()今日(けふ)(そら)
571黄金(こがね)(みね)(あら)はれし
572木花姫(このはなひめ)分霊(わけみたま)
573咲耶(さくや)(ひめ)再来(さいらい)
574(あふ)玉照姫(たまてるひめ)(かみ)
575(むか)(まつ)りて三五(あななひ)
576(をしへ)(まも)元津(もとつ)(かみ)
577国武彦(くにたけひこ)(かく)れます
578世継王(よつわう)(ざん)表口(おもてぐち)
579朝日(あさひ)(かがや)夕日(ゆうひ)()
580これの聖地(せいち)永久(とこしへ)
581(しづ)まり()まして常闇(とこやみ)
582(あま)岩戸(いはと)(ひら)きます
583ミロクの御代(みよ)(いしずゑ)
584寿(ことほ)ぎまつる今日(けふ)(そら)
585壬戌(みづのえいぬ)(うる)()(ぐわつ)
586五日(いつか)(よひ)(この)仕組(しぐみ)
587イツカは()れて(まつ)()
588(さかえ)()るぞ目出度(めでた)けれ
589アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
590御霊(みたま)(さち)はへましませよ』
591青彦(あをひこ)(こゑ)(すず)しく(うた)(をは)りぬ。592十八(じふはち)バムの仮名(かな)(ちな)みし(まつ)神代(かみよ)物語(ものがたり)593松竹梅(まつたけうめ)(いは)(をさ)むる。
594大正一一・四・二八 旧四・二 松村真澄録)
595(昭和一〇・六・三 王仁校正)
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