霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第48巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 変現乱痴
01 聖言
〔1255〕
02 武乱泥
〔1256〕
03 観音経
〔1257〕
04 雪雑寝
〔1258〕
05 鞘当
〔1259〕
06 狂転
〔1260〕
第2篇 幽冥摸索
07 六道の辻
〔1261〕
08 亡者苦雑
〔1262〕
09 罪人橋
〔1263〕
第3篇 愛善信真
10 天国の富
〔1264〕
11 霊陽山
〔1265〕
12 西王母
〔1266〕
13 月照山
〔1267〕
14 至愛
〔1268〕
第4篇 福音輝陣
15 金玉の辻
〔1269〕
16 途上の変
〔1270〕
17 甦生
〔1271〕
18 冥歌
〔1272〕
19 兵舎の囁
〔1273〕
20 心の鬼
〔1274〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。
実験用サイト
|
サブスク
霊界物語
>
第48巻
> 第1篇 変現乱痴 > 第5章 鞘当
<<< 雪雑寝
(B)
(N)
狂転 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第五章
鞘当
(
さやあて
)
〔一二五九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻
篇:
第1篇 変現乱痴
よみ(新仮名遣い):
へんげんらんち
章:
第5章 鞘当
よみ(新仮名遣い):
さやあて
通し章番号:
1259
口述日:
1923(大正12)年01月12日(旧11月26日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年10月25日
概要:
舞台:
浮木の森のバラモン軍の陣営
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
ランチ将軍が奥の居間に帰ってみると、清照姫と初稚姫は片彦将軍を囲んで笑い語らっている。ランチ将軍は嫉妬を抑えて、将軍が女にうつつを抜かすとは何事かと自分を棚に上げてたしなめた。
しかしランチ将軍があらわれると、二人の女はどうしたことか急に片彦に冷たくなり、ランチ将軍にまとわりつきだした。片彦が何を言っても二人の女は邪険に答え、得意になったランチ将軍は、片彦に退室を命じた。
ランチ将軍は二人の女をはべらせて雪見の宴を開こうと駕籠を呼んだ。アーク、タール、エキスらも呼ぼうとしたが、彼らは泥酔して雪に埋もれたため発見できなかった。そこで二人の副官(ガリヤ、ケース)と二人の美人だけ伴って雪をかきわけ、物見やぐらに到着した。
片彦はお民をくどこうとしていたが、ランチ将軍が三五教の二人の美人を連れて物見やぐらに雪見の宴を張っていると聞くと、お民を伴って物見やぐらに進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-05-18 09:10:54
OBC :
rm4805
愛善世界社版:
63頁
八幡書店版:
第8輯 610頁
修補版:
校定版:
65頁
普及版:
32頁
初版:
ページ備考:
001
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
慌
(
あわただ
)
しく
奥
(
おく
)
の
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ると、
002
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
003
初稚姫
(
はつわかひめ
)
及
(
およ
)
び
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
がニコニコとして、
004
火鉢
(
ひばち
)
を
真中
(
まんなか
)
に
三
(
み
)
つ
巴形
(
どもゑがた
)
となつて
喋々
(
てふてふ
)
喃々
(
なんなん
)
と
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
を
洩
(
も
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
005
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
てやけて
耐
(
たま
)
らず、
006
忽
(
たちま
)
ち
一刀
(
いつたう
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
き、
007
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
をめがけて
梨割
(
なしわり
)
にする
所
(
ところ
)
だが、
008
遉
(
さすが
)
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
にはしたない
男
(
をとこ
)
と
思
(
おも
)
はれてはとの
考
(
かんが
)
へから、
009
腹立
(
はらだち
)
をグツと
圧
(
おさ
)
へ、
010
態
(
わざ
)
と
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
011
されど
其
(
その
)
唇
(
くちびる
)
と
云
(
い
)
ひ
手
(
て
)
と
云
(
い
)
ひ
足
(
あし
)
の
先
(
さき
)
迄
(
まで
)
激
(
はげ
)
しき
震動
(
しんどう
)
を
感
(
かん
)
じて
居
(
ゐ
)
た。
012
怒
(
いか
)
りの
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
した
時
(
とき
)
は
全身
(
ぜんしん
)
が
激
(
はげ
)
しく
動
(
うご
)
くものである。
013
片彦
(
かたひこ
)
はランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
りしを
見
(
み
)
て、
014
眥
(
まなじり
)
を
下
(
さ
)
げ、
015
片彦
『ヤア
是
(
これ
)
は
是
(
これ
)
は
将軍殿
(
しやうぐんどの
)
、
016
何処
(
どこ
)
におはせられた。
017
いやもう
二人
(
ふたり
)
のナイスに
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
かれ、
018
甘酒
(
うまざけ
)
にもりつぶされ、
019
いかい
酩酊
(
めいてい
)
を
致
(
いた
)
して
厶
(
ござ
)
る、
020
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
の
段
(
だん
)
は
平
(
ひら
)
にお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
021
ランチ
『
別
(
べつ
)
に
尖
(
とが
)
めも
致
(
いた
)
さぬが、
022
苟
(
いやし
)
くも
将軍
(
しやうぐん
)
の
身
(
み
)
をもつて、
023
即
(
すなは
)
ち
三軍
(
さんぐん
)
を
指揮
(
しき
)
する
尊
(
たふと
)
き
職権
(
しよくけん
)
を
有
(
いう
)
しながら、
024
作法
(
さはふ
)
を
弁
(
わきま
)
へず、
025
拙者
(
せつしや
)
の
不在中
(
ふざいちゆう
)
に
女
(
をんな
)
に
現
(
うつつ
)
をぬかし、
026
何
(
なん
)
の
態
(
ざま
)
で
厶
(
ござ
)
る。
027
些
(
ち
)
とおたしなみなさい』
028
片彦
『ヤアお
説
(
せつ
)
一応
(
いちおう
)
御尤
(
ごもつと
)
も、
029
拙者
(
せつしや
)
も
部下
(
ぶか
)
に
対
(
たい
)
して
模範
(
もはん
)
を
示
(
しめ
)
さねばならない
重要
(
ぢうえう
)
の
地位
(
ちゐ
)
に
立
(
た
)
てるもの、
030
女
(
をんな
)
なんかに
心
(
こころ
)
を
蕩
(
とろ
)
かすやうな
柔弱
(
にうじやく
)
なものでは
厶
(
ござ
)
らぬ。
031
併
(
しか
)
し
此
(
これ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
、
032
某
(
それがし
)
に
熱烈
(
ねつれつ
)
なる
恋愛
(
れんあい
)
を
注
(
そそ
)
ぎ
申
(
まを
)
すにより、
033
無下
(
むげ
)
に
捨
(
す
)
つるも
男
(
をとこ
)
の
情
(
なさけ
)
ならじと、
034
迷惑
(
めいわく
)
ながら
女
(
をんな
)
に
導
(
みちび
)
かれ
此処
(
ここ
)
に
参
(
まゐ
)
つた
処
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
035
イヤ
如何
(
いか
)
に
固造
(
かたざう
)
の
かた
彦
(
ひこ
)
も、
036
女
(
をんな
)
の
魔力
(
まりよく
)
には
敵
(
てき
)
し
得
(
え
)
ず、
037
骨
(
ほね
)
も
節
(
ふし
)
もゆるみ、
038
さつぱりガタ
彦
(
ひこ
)
となつて
了
(
しま
)
ひました。
039
先程
(
さきほど
)
迄
(
まで
)
は
此
(
この
)
ナイス、
040
貴方
(
あなた
)
に
熱烈
(
ねつれつ
)
なる
愛
(
あい
)
を
捧
(
ささ
)
げて
居
(
ゐ
)
たやうですが、
041
もはや
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り、
042
屋外
(
をくぐわい
)
に
冷
(
つめ
)
たき
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
つて
居
(
を
)
りますれば、
043
貴下
(
きか
)
に
対
(
たい
)
する
両人
(
りやうにん
)
の
恋情
(
れんじやう
)
も
冷
(
ひや
)
やかになつたと
見
(
み
)
えますわい。
044
どうかして
此
(
この
)
中
(
うち
)
の
一人
(
ひとり
)
を
貴方
(
あなた
)
の
御用
(
ごよう
)
をさせたいと
思
(
おも
)
ひますが、
045
どうしたものか、
046
両人
(
りやうにん
)
共
(
とも
)
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
047
ランチキ
将軍
(
しやうぐん
)
のお
世話
(
せわ
)
にならうとも
又
(
また
)
お
世話
(
せわ
)
をしようとも
申
(
まを
)
しませぬ、
048
イヤもう
此
(
この
)
片彦
(
かたひこ
)
も
かた
がたもつて
迷惑
(
めいわく
)
でも
何
(
なん
)
でも
厶
(
ござ
)
らぬ。
049
アハヽヽヽ』
050
清照
(
きよてる
)
『モシ、
051
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
052
どこへ
往
(
い
)
つてゐやしたの、
053
妾
(
あたい
)
、
054
どんなに
探
(
たづ
)
ねて
居
(
ゐ
)
たか
知
(
し
)
れませぬよ』
055
ランチは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
生返
(
いきかへ
)
つたやうな
心持
(
こころもち
)
になり、
056
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
まで
勇
(
いさ
)
ましく、
057
頓
(
にはか
)
に
元気
(
げんき
)
づき、
058
ランチ
『ヤア
清照姫
(
きよてるひめ
)
殿
(
どの
)
、
059
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませなんだ、
060
実
(
じつ
)
は
軍務
(
ぐんむ
)
上
(
じやう
)
の
件
(
けん
)
につき
調査
(
てうさ
)
すべき
事
(
こと
)
があり、
061
暫
(
しばら
)
く
席
(
せき
)
を
外
(
はづ
)
して
居
(
を
)
りました』
062
清照姫
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
063
そりや
嘘
(
うそ
)
でせう。
064
妾
(
あたい
)
がイヤになつたものだから、
065
何処
(
どこ
)
かへ
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
やしやつたのでせう、
066
妾
(
あたい
)
残念
(
ざんねん
)
ですわ、
067
アンアンアン、
068
オンオンオン』
069
ランチ
『エヘヽヽヽ、
070
オイ
片彦
(
かたひこ
)
殿
(
どの
)
、
071
如何
(
どう
)
で
厶
(
ござ
)
る、
072
可愛
(
かあい
)
いもので
厶
(
ござ
)
らうがな』
073
片彦
『コレコレ
清照姫
(
きよてるひめ
)
殿
(
どの
)
、
074
貴女
(
あなた
)
は
又
(
また
)
変心
(
へんしん
)
をしましたか』
075
清照姫
『ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
さまが、
076
あの
大
(
おほ
)
きな
目
(
め
)
をむいて
私
(
わたし
)
に
電波
(
でんぱ
)
、
077
イヤ
電信
(
でんしん
)
を
送
(
おく
)
つて
下
(
くだ
)
さつたから、
078
どうしても
返信
(
へんしん
)
(
変心
(
へんしん
)
)をすべき
義務
(
ぎむ
)
があるぢやありませぬか、
079
ホヽヽヽヽ』
080
片彦
『アヽどうも
仕方
(
しかた
)
がない。
081
どうせ
片彦
(
かたひこ
)
が
二人
(
ふたり
)
の
美女
(
びぢよ
)
を
左右
(
さいう
)
に
侍
(
はべ
)
らせ、
082
ナイスを
一人
(
ひとり
)
で
独占
(
どくせん
)
して
居
(
ゐ
)
ても
仕方
(
しかた
)
がない。
083
清照姫
(
きよてるひめ
)
が
変心
(
へんしん
)
したのも
天
(
てん
)
の
配剤
(
はいざい
)
だらう、
084
イヤ
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
085
拙者
(
せつしや
)
は
寛大
(
くわんだい
)
なる
勇猛心
(
ゆうまうしん
)
を
発揮
(
はつき
)
して、
086
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
にお
任
(
まか
)
せ
申
(
まを
)
す。
087
唯今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
片彦
(
かたひこ
)
の
事
(
こと
)
は
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り、
088
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
に
貞節
(
ていせつ
)
を
尽
(
つく
)
したがよからう』
089
清照姫
『オホヽヽヽ、
090
あの
片彦
(
かたひこ
)
さまの
虫
(
むし
)
のよい
事
(
こと
)
、
091
自惚
(
うぬぼれ
)
もよい
加減
(
かげん
)
にして
置
(
お
)
かんせいなア。
092
思
(
おも
)
ひもかけぬものに
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
れとは、
093
マア
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
自惚者
(
うぬぼれもの
)
だらう。
094
好
(
す
)
かぬたらしい。
095
男
(
をとこ
)
と
云
(
い
)
ふものは、
096
ほんとに
自惚
(
うぬぼれ
)
の
強
(
つよ
)
いものだよ』
097
片彦
『ランチ
殿
(
どの
)
、
098
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
で
厶
(
ござ
)
らうのう、
099
エーン、
100
エーン、
101
拙者
(
せつしや
)
は
大
(
おほい
)
に
譲歩
(
じやうほ
)
致
(
いた
)
して、
102
年
(
とし
)
の
若
(
わか
)
い
初稚姫
(
はつわかひめ
)
で
満足
(
まんぞく
)
致
(
いた
)
す、
103
どうか
拙者
(
せつしや
)
の
雅量
(
がりやう
)
を
認
(
みと
)
めて
下
(
くだ
)
さい』
104
ランチ
『
何
(
なん
)
なりと
勝手
(
かつて
)
に
仰有
(
おつしや
)
い、
105
両人
(
りやうにん
)
共
(
とも
)
拙者
(
せつしや
)
の
女
(
をんな
)
で
厶
(
ござ
)
るぞ。
106
ヘン
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい、
107
拙者
(
せつしや
)
が
黙言
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
るかと
思
(
おも
)
つてよい
気
(
き
)
になり、
108
図々
(
づづ
)
しいにも
程
(
ほど
)
がある』
109
片彦
『
仰
(
おほ
)
せられなランチ
殿
(
どの
)
、
110
拙者
(
せつしや
)
が
何
(
ど
)
う
致
(
いた
)
したのでもない、
111
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
から
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
り、
112
女
(
をんな
)
に
頼
(
たの
)
まれて
約束
(
やくそく
)
致
(
いた
)
せし
迄
(
まで
)
の
事
(
こと
)
、
113
其
(
その
)
女
(
をんな
)
を
拙者
(
せつしや
)
が
貴下
(
あなた
)
にお
任
(
まか
)
せしようと
云
(
い
)
ふのだから、
114
吾々
(
われわれ
)
は
感謝
(
かんしや
)
をこそ
受
(
う
)
くべけれ、
115
そのやうな、
116
榎
(
えのき
)
で
鼻
(
はな
)
をこすつたやうな
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
は
承
(
うけたま
)
はりたくない、
117
コレ
初稚姫
(
はつわかひめ
)
殿
(
どの
)
、
118
こんな
分
(
わか
)
らない
将軍
(
しやうぐん
)
の
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
らうよりも、
119
私
(
わたし
)
の
居間
(
ゐま
)
に
参
(
まゐ
)
りませう、
120
貴女
(
あなた
)
は
永久
(
えいきう
)
に
愛
(
あい
)
します』
121
初稚姫
『エヽすかぬたらしい、
122
私
(
わたし
)
がいつ
貴方
(
あなた
)
を
好
(
す
)
きました。
123
私
(
わたし
)
は
姉
(
ねえ
)
さまが
好
(
す
)
きな
人
(
ひと
)
が
好
(
す
)
きなのです、
124
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
125
片彦
『
何
(
なん
)
だか
外
(
そと
)
の
陽気
(
やうき
)
が
変
(
かは
)
つたと
思
(
おも
)
へば、
126
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
鼻息
(
はないき
)
までが
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
たわい、
127
ハヽ、
128
ウン、
129
分
(
わか
)
つた、
130
恥
(
はづ
)
かしいのだな、
131
人前
(
ひとまへ
)
を
作
(
つく
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだな。
132
ウンウンヨシヨシ
可愛
(
かあい
)
いものだな』
133
と
口
(
くち
)
の
奥
(
おく
)
で
呟
(
つぶや
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
134
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
鋭敏
(
えいびん
)
な
耳
(
みみ
)
に
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
き
知
(
し
)
り、
135
初稚姫
『モシ、
136
片彦
(
かたひこ
)
さま、
137
「
可愛
(
かあい
)
いものだ」などと
云
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さいますな、
138
妾
(
あて
)
、
139
胸
(
むね
)
が
悪
(
わる
)
くなりました』
140
ランチ
『アハヽヽヽ、
141
片彦
(
かたひこ
)
殿
(
どの
)
、
142
如何
(
どう
)
で
厶
(
ござ
)
る、
143
色
(
いろ
)
は
年増
(
としま
)
が
艮刺
(
とどめさ
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
御存
(
ごぞん
)
じかな。
144
アハヽヽヽ』
145
片彦
『チヨツ、
146
エーエイ』
147
ランチ
『
片彦
(
かたひこ
)
殿
(
どの
)
、
148
チヨツ、
149
エーエイとは
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか、
150
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
だ、
151
この
場
(
ば
)
を
退却
(
たいきやく
)
めされ』
152
片彦
(
かたひこ
)
は
鶴
(
つる
)
の
一声
(
ひとこゑ
)
、
153
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
154
片彦
『ヘーエ』
155
と
嫌
(
いや
)
さうな
返事
(
へんじ
)
をしながら
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
心
(
こころ
)
を
残
(
のこ
)
し、
156
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
157
襖
(
ふすま
)
の
外
(
そと
)
から
上下
(
うへした
)
の
歯
(
は
)
を
喰
(
く
)
ひ
締
(
し
)
めたまま
唇
(
くちびる
)
をパツと
開
(
ひら
)
き、
158
片彦
『イーン』
159
と
云
(
い
)
ひながら、
160
拳骨
(
げんこつ
)
で
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
つ
空
(
くう
)
を
打
(
う
)
ち、
161
片彦
『チヨツ、
162
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
だなんて、
163
チヨツ、
164
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
る、
165
併
(
しか
)
し
仕方
(
しかた
)
がない、
166
俺
(
おれ
)
も
上燗
(
じやうかん
)
で
一杯
(
いつぱい
)
やる
事
(
こと
)
にしよう、
167
お
民
(
たみ
)
でも
相手
(
あひて
)
にして』
168
と
云
(
い
)
ひながら、
169
すごすごと
帰
(
かへ
)
り
往
(
ゆ
)
く。
170
ランチは
片彦
(
かたひこ
)
を
室外
(
しつぐわい
)
に
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
し、
171
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
の
中央
(
まんなか
)
に
色男
(
いろをとこ
)
気取
(
きど
)
りで
胡床
(
あぐら
)
をかき、
172
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
くしながら、
173
ランチ
『これは
清照姫
(
きよてるひめ
)
殿
(
どの
)
、
174
其方
(
そなた
)
は
此
(
この
)
ランチの
眼
(
め
)
をよけて、
175
いつの
間
(
ま
)
にか
片彦
(
かたひこ
)
と
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
とやらをやつて
居
(
ゐ
)
たのぢやないか』
176
清照姫
『ハイ
別
(
べつ
)
に
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
はありませぬ。
177
併
(
しか
)
しながら
貴方
(
あなた
)
も
好
(
す
)
きですが、
178
片彦
(
かたひこ
)
さまの
抱持
(
はうぢ
)
さるる
思想
(
しさう
)
が
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りましたから、
179
それで
私
(
わたし
)
は
片彦
(
かたひこ
)
さまは
何
(
ど
)
うでも
宜敷
(
よろし
)
いが、
180
新
(
あたら
)
しい
思想
(
しさう
)
だと
思
(
おも
)
つて、
181
其
(
その
)
思想
(
しさう
)
に
惚
(
ほ
)
れ
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
ます。
182
貴方
(
あなた
)
が、
183
私
(
わたし
)
の
思想
(
しさう
)
と
同
(
おな
)
じ
思想
(
しさう
)
をもつて
下
(
くだ
)
さらば、
184
此
(
この
)
位
(
くらゐ
)
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
はありませぬ。
185
実
(
じつ
)
は
貴方
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
しては
肉体美
(
にくたいび
)
を
愛
(
あい
)
し、
186
片彦
(
かたひこ
)
さまに
対
(
たい
)
しては
其
(
その
)
思想
(
しさう
)
を
愛
(
あい
)
して
居
(
ゐ
)
るのですよ』
187
ランチ
『
片彦
(
かたひこ
)
の
新思想
(
しんしさう
)
とはどんな
思想
(
しさう
)
だ、
188
俺
(
おれ
)
だつて
思想
(
しさう
)
については、
189
先繰
(
せんぐ
)
り
新
(
あたら
)
しい
書物
(
しよもつ
)
をあさつて
居
(
ゐ
)
るから、
190
片彦
(
かたひこ
)
には
負
(
ま
)
けない
積
(
つも
)
りだ、
191
一体
(
いつたい
)
どんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて
居
(
を
)
るのだな』
192
清照姫
『ハイ、
193
片彦
(
かたひこ
)
さまの
思想
(
しさう
)
はどうかと
存
(
ぞん
)
じまして
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
ました
所
(
ところ
)
、
194
本当
(
ほんたう
)
に
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れするやうな
思想
(
しさう
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
195
かいつまんで
申
(
まを
)
せば、
196
軍備
(
ぐんび
)
不必要
(
ふひつえう
)
論者
(
ろんじや
)
です、
197
武備
(
ぶび
)
撤廃
(
てつぱい
)
論者
(
ろんじや
)
ですよ、
198
そして
平和
(
へいわ
)
な
耽美
(
たんび
)
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
りたいと
云
(
い
)
ふ、
199
ほんとに
新
(
あたら
)
しい
思想
(
しさう
)
ですよ』
200
ランチ
『
片彦
(
かたひこ
)
身
(
み
)
軍籍
(
ぐんせき
)
にありながら
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
したかな、
201
それは
中々
(
なかなか
)
もつて
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
……ぢやない、
202
吾
(
わが
)
意
(
い
)
を
得
(
え
)
たる、
203
マヽヽヽ
思想
(
しさう
)
だ。
204
ウン、
205
さうして
武術
(
ぶじゆつ
)
の
事
(
こと
)
については、
206
何
(
ど
)
う
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
たな』
207
清照姫
『
武術家
(
ぶじゆつか
)
は
臆病者
(
おくびやうもの
)
だと
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
られました。
208
臆病者
(
おくびやうもの
)
なるが
故
(
ゆゑ
)
に
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
恐
(
おそ
)
ろしくなり、
209
疑心
(
ぎしん
)
暗鬼
(
あんき
)
を
生
(
しやう
)
じ、
210
敵
(
てき
)
なきに
敵
(
てき
)
を
作
(
つく
)
り、
211
何人
(
なにびと
)
か
自分
(
じぶん
)
を
害
(
がい
)
するものはなきかと、
212
心中
(
しんちう
)
戦々
(
せんせん
)
兢々
(
きようきよう
)
として
安
(
やす
)
らかならず、
213
常
(
つね
)
に
自己
(
じこ
)
保護
(
ほご
)
の
迷夢
(
めいむ
)
に
襲
(
おそ
)
はれ、
214
武術
(
ぶじゆつ
)
を
練
(
ね
)
り、
215
柔術
(
じうじゆつ
)
などを
稽古
(
けいこ
)
するのだと
云
(
い
)
うて
居
(
を
)
られました。
216
ほんとに
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
愛善
(
あいぜん
)
の
徳
(
とく
)
さへあれば、
217
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
でも
悦服
(
えつぷく
)
して、
218
決
(
けつ
)
して
其
(
その
)
人
(
ひと
)
に
敵
(
てき
)
するものではありませぬ。
219
況
(
ま
)
して
人間
(
にんげん
)
に
於
(
おい
)
てをやです、
220
私
(
わたし
)
はこの
思想
(
しさう
)
が
大
(
おほい
)
に
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りました。
221
心
(
こころ
)
に
邪悪
(
じやあく
)
分子
(
ぶんし
)
を
含
(
ふく
)
んで
居
(
ゐ
)
るものは、
222
徒
(
いたづら
)
に
人
(
ひと
)
を
怖
(
こは
)
がり
人
(
ひと
)
を
恐
(
おそ
)
るるものです。
223
かかる
人間
(
にんげん
)
が
身
(
み
)
を
護
(
まも
)
るために
剣術
(
けんじゆつ
)
柔術
(
じうじゆつ
)
を
学
(
まな
)
ぶものです。
224
地獄界
(
ぢごくかい
)
に
籍
(
せき
)
を
有
(
いう
)
し、
225
八衢
(
やちまた
)
に
彷徨
(
さまよ
)
うて
居
(
ゐ
)
るものが
武術
(
ぶじゆつ
)
を
志
(
こころざ
)
すものです、
226
低脳児
(
ていなうじ
)
や
殺人狂
(
さつじんきやう
)
の
徒
(
と
)
が
喜
(
よろこ
)
んで
人命
(
じんめい
)
を
奪
(
うば
)
ひ
財産
(
ざいさん
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
227
或
(
あるひ
)
は
人
(
ひと
)
の
国土
(
こくど
)
を
奪
(
うば
)
ひ
或
(
あるひ
)
は
人
(
ひと
)
の
子女
(
しぢよ
)
を
辱
(
はづ
)
かしめ、
228
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
限
(
かぎり
)
を
尽
(
つく
)
して
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
と
誇
(
ほこ
)
り、
229
其
(
その
)
驕慢券
(
けうまんけん
)
とも
云
(
い
)
ふべき
窘笑
(
くんせう
)
を、
230
胸
(
むね
)
にブラブラ
下
(
さ
)
げて
居
(
ゐ
)
るのは、
231
本当
(
ほんたう
)
に
時代後
(
じだいおく
)
れだと
片彦
(
かたひこ
)
さまが
仰有
(
おつしや
)
いましたよ』
232
ランチ
『それだと
云
(
い
)
うて、
233
世界
(
せかい
)
に
国家
(
こくか
)
として
存在
(
そんざい
)
する
以上
(
いじやう
)
は
軍備
(
ぐんび
)
は
必要
(
ひつえう
)
だ。
234
仮令
(
たとへ
)
ミロクの
世
(
よ
)
となつても
軍備
(
ぐんび
)
の
撤廃
(
てつぱい
)
は
出来
(
でき
)
ない、
235
さう
新思想
(
しんしさう
)
にかぶれて
仕舞
(
しま
)
つては
駄目
(
だめ
)
だ。
236
一方
(
いつぱう
)
に
偏
(
へん
)
せず
片寄
(
かたよ
)
らず、
237
其
(
その
)
中庸
(
ちうよう
)
を
往
(
ゆ
)
くのが
最
(
もつと
)
も
安全
(
あんぜん
)
の
道
(
みち
)
だらうよ』
238
初稚姫
『
姉
(
ねえ
)
さま、
239
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
さまのお
言葉
(
ことば
)
は、
240
本当
(
ほんたう
)
に
間然
(
かんぜん
)
する
所
(
ところ
)
ありませぬが、
241
併
(
しか
)
しながら
三五教
(
あななひけう
)
の
治国別
(
はるくにわけ
)
さまとやらを、
242
深
(
ふか
)
い
陥穽
(
おとしあな
)
へ
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
み
遊
(
あそ
)
ばしたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
をチラリと
聞
(
き
)
きましたが、
243
それを
聞
(
き
)
くと、
244
本当
(
ほんたう
)
にゾツと
致
(
いた
)
しますね』
245
清照姫
『さう、
246
さうなの、
247
アヽいやらしい、
248
何
(
なん
)
とランチさまも
甚
(
ひど
)
い
事
(
こと
)
をなさいます、
249
私
(
わたし
)
それを
聞
(
き
)
いて
俄
(
にはか
)
にこの
人
(
ひと
)
がどことはなしに
嫌
(
いや
)
になつて
来
(
き
)
ましたよ。
250
矢張
(
やつぱり
)
片彦
(
かたひこ
)
さまがお
優
(
やさ
)
しくて、
251
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
が
新
(
あたら
)
しうて、
252
胸
(
むね
)
の
琴線
(
きんせん
)
に
触
(
ふ
)
れるやうですわ』
253
ランチは
慌
(
あわ
)
てて、
254
ランチ
『イヤイヤ
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
がしたのではない、
255
片彦
(
かたひこ
)
の
計
(
はか
)
らひで
致
(
いた
)
したのだ。
256
彼奴
(
あいつ
)
は
偽善者
(
きぜんしや
)
だから、
257
其
(
その
)
方
(
はう
)
達
(
たち
)
の
前
(
まへ
)
でそんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
るのだ。
258
彼奴
(
あいつ
)
は
武断派
(
ぶだんは
)
の
隊長
(
たいちやう
)
、
259
軍国
(
ぐんこく
)
主義
(
しゆぎ
)
の
張本
(
ちやうほん
)
だ。
260
併
(
しか
)
しながらあの
治国別
(
はるくにわけ
)
及
(
およ
)
び
竜公
(
たつこう
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
261
どうしても
許
(
ゆる
)
す
事
(
こと
)
の
出来
(
でき
)
ない
奴
(
やつ
)
だ。
262
これを
許
(
ゆる
)
さうものなら、
263
バラモン
軍
(
ぐん
)
は
根底
(
こんてい
)
より
破壊
(
はくわい
)
せられなくてはならない、
264
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
様
(
さま
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
ない、
265
又
(
また
)
竜公
(
たつこう
)
とやら、
266
吾
(
わが
)
軍
(
ぐん
)
の
秘書役
(
ひしよやく
)
を
勤
(
つと
)
めながら
敵
(
てき
)
に
裏返
(
うらがへ
)
つたのだから、
267
陥穽
(
おとしあな
)
に
陥
(
おちい
)
つて
斃
(
くたば
)
るのも
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
だ、
268
仮令
(
たとへ
)
愛
(
あい
)
する
汝
(
なんぢ
)
のためなればとて、
269
是
(
これ
)
ばかりは
赦
(
ゆる
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない』
270
清照姫
『
妾
(
あて
)
この
館
(
やかた
)
に
左様
(
さやう
)
の
人
(
ひと
)
が
九死
(
きうし
)
一生
(
いつしやう
)
の
苦
(
くるし
)
みをしてゐらしやるかと
思
(
おも
)
へば、
271
恐
(
おそ
)
ろしくて
仕方
(
しかた
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
272
どうか
何処
(
どこ
)
かへ
雪見
(
ゆきみ
)
にでも
連
(
つ
)
れて
往
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな』
273
ランチ
『アハヽヽヽ、
274
遉
(
さすが
)
は
女
(
をんな
)
だな。
275
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものだ。
276
併
(
しか
)
し
其
(
その
)
弱
(
よわ
)
いのが
女
(
をんな
)
の
特色
(
とくしよく
)
だ、
277
女
(
をんな
)
の
可愛
(
かあい
)
い
所
(
ところ
)
なのだ。
278
さらば、
279
これより
早速
(
さつそく
)
雪見
(
ゆきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
催
(
もよほ
)
すため、
280
入口
(
いりぐち
)
の
風景
(
ふうけい
)
の
佳
(
よ
)
き
物見
(
ものみ
)
へ
往
(
い
)
つて、
281
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
み
交
(
かは
)
しながら
楽
(
たの
)
しむ
事
(
こと
)
と
致
(
いた
)
さう』
282
清照姫
『ハイ、
283
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
284
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります。
285
サア
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さま、
286
将軍
(
しやうぐん
)
の
後
(
あと
)
について、
287
少
(
すこ
)
し
遠
(
とほ
)
うは
厶
(
ござ
)
いますが、
288
物見櫓
(
ものみやぐら
)
までお
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう』
289
ランチ
『この
積雪
(
せきせつ
)
に、
290
女
(
をんな
)
の
足
(
あし
)
では
行歩
(
かうほ
)
になやむだらう。
291
幸
(
さいは
)
ひ
駕籠
(
かご
)
があるから、
292
従卒
(
じゆうそつ
)
に
舁
(
かつ
)
がしてやる』
293
初稚姫
『
姉
(
ねえ
)
さま、
294
さう
願
(
ねが
)
ひませうかな』
295
清照姫
『
此
(
これ
)
丈
(
だけ
)
の
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
、
296
どうせ
駕籠
(
かご
)
で
送
(
おく
)
つて
貰
(
もら
)
はねば、
297
とても
歩
(
ある
)
けませぬわ』
298
ランチはポンポンと
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つた。
299
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
た
二人
(
ふたり
)
の
副官
(
ふくくわん
)
は
慌
(
あわただ
)
しく
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り、
300
二人の副官
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
301
何
(
なに
)
か
御用
(
ごよう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
302
ランチ
『ウン、
303
今日
(
けふ
)
は
稀
(
まれ
)
なる
大雪
(
おほゆき
)
だ。
304
四方
(
しはう
)
は
一面
(
いちめん
)
の
銀世界
(
ぎんせかい
)
、
305
雪見
(
ゆきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
催
(
もよほ
)
すから、
306
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
も
供
(
とも
)
をせい。
307
そして
駕籠
(
かご
)
を
五六挺
(
ごろくちやう
)
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
いと
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れ』
308
二人
(
ふたり
)
の
副官
(
ふくくわん
)
は、
309
二人の副官
『ハイ』
310
と
云
(
い
)
つたきり
早々
(
さうさう
)
に
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
出
(
い
)
でて
往
(
ゆ
)
く。
311
ランチは、
312
アーク、
313
タール、
314
エキス、
315
蠑螈別
(
いもりわけ
)
等
(
など
)
の
所在
(
ありか
)
を
従卒
(
じゆうそつ
)
に
命
(
めい
)
じ
探
(
さが
)
さしめ、
316
雪見
(
ゆきみ
)
に
伴
(
ともな
)
ひ
往
(
ゆ
)
かむとしたが、
317
折柄
(
をりから
)
の
積雪
(
せきせつ
)
に
埋
(
うづ
)
もつて
居
(
ゐ
)
たため
発見
(
はつけん
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
なかつた。
318
此
(
この
)
時
(
とき
)
お
民
(
たみ
)
は
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
招
(
まね
)
かれて、
319
いろいろと
片彦
(
かたひこ
)
の
意味
(
いみ
)
ありげな
話
(
はなし
)
に、
320
膝
(
ひざ
)
をモヂモヂさせながら
苦
(
くる
)
しさうに
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
321
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
の
見
(
み
)
えざるに、
322
どこか
雪見
(
ゆきみ
)
でもする
積
(
つも
)
りで
郊外
(
かうぐわい
)
に
往
(
い
)
つたのだらうと
思
(
おも
)
ひ、
323
二人
(
ふたり
)
の
副官
(
ふくくわん
)
と
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
324
五人
(
ごにん
)
連
(
づ
)
れ
駕籠
(
かご
)
に
揺
(
ゆ
)
られながら
物見櫓
(
ものみやぐら
)
をさして
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く。
325
地上
(
ちじやう
)
二
(
に
)
尺
(
しやく
)
許
(
ばか
)
りの
積雪
(
せきせつ
)
に、
326
駕籠舁
(
かごかき
)
の
足音
(
あしおと
)
はザク、
327
ザク、
328
ザクと
馬丁
(
ばてい
)
が
押切
(
おしき
)
りにて
馬糧
(
まぐさ
)
を
切
(
き
)
るやうな
音
(
おと
)
をさせ、
329
綺麗
(
きれい
)
な
雪道
(
ゆきみち
)
にスバル
星
(
せい
)
を
数多
(
あまた
)
印
(
いん
)
しながら、
330
漸
(
やうや
)
くにして
物見櫓
(
ものみやぐら
)
に
安着
(
あんちやく
)
した。
331
此処
(
ここ
)
に
炭火
(
すみび
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
332
酒
(
さけ
)
の
燗
(
かん
)
をなし、
333
雪見
(
ゆきみ
)
の
酒宴
(
しゆえん
)
を
催
(
もよほ
)
す
事
(
こと
)
となつた。
334
一方
(
いつぱう
)
片彦
(
かたひこ
)
はランチ
将軍
(
しやうぐん
)
が
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
335
物見櫓
(
ものみやぐら
)
に
雪見
(
ゆきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
張
(
は
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を、
336
従卒
(
じゆうそつ
)
の
内報
(
ないはう
)
によつて
聞
(
き
)
き
知
(
し
)
り、
337
大方
(
おほかた
)
蠑螈別
(
いもりわけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
も
同伴
(
どうはん
)
せしならむと、
338
二挺
(
にちやう
)
の
駕籠
(
かご
)
を
命
(
めい
)
じ、
339
お
民
(
たみ
)
と
共
(
とも
)
に
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
んで
物見櫓
(
ものみやぐら
)
をさして
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く。
340
(
大正一二・一・一二
旧一一・一一・二六
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 雪雑寝
(B)
(N)
狂転 >>>
霊界物語
>
第48巻
> 第1篇 変現乱痴 > 第5章 鞘当
Tweet
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【05 鞘当|第48巻(亥の巻)|霊界物語/rm4805】
合言葉「みろく」を入力して下さい→