ランチ将軍、片彦、ガリヤ、ケースの四人は、冥界の罪人橋の傍らにたたずみ、肌を切るばかりの寒風にさらされながら、かすかに聞こえる宣伝歌の声をせめてもの力として、ふるえながら声が近づいてくるのを待っていた。
我利我利亡者たちの姿は消えたが、同時に冥官たちもくぐってきた穴も消えてしまっていた。宣伝歌の声はおいおい高くなり、それに次いで数百人の声が前後左右から響いてきた。四人は絶望の淵に沈んでいた。
そこへ突然女神が二人の侍女を伴って現れた。四人は女神に向かって窮状を訴え、助けを求めた。女神は、自分は兜率天にまします日の大神のおそばに仕えるものであると述べた。そして、四人が体主霊従の行いを改めればきっと助けると答えた。
女神は、今聞こえてくる宣伝歌は三五教の宣伝使が四人を救うべく神に祈っている歌だと教え、懐中から大幣を出して左右左に打ち振った。四人の耳はたちまち開けて、歌の意味が明瞭になってきた。四人は両手を合わせ、大地にひざまずいてその歌に聞きいった。
よくよく見れば、その歌は女神の口から歌われていた。これまでのランチ将軍たちの罪悪を挙げて、改心を促す内容であった。
ランチ将軍は女神を紫姫だと知り、歌で自ら懺悔を述べ、救いを願った。片彦、ガリヤ、ケースもそれぞれ懺悔の歌を歌って改心の意を紫姫に現した。
紫姫は四人の改心の意を受け取り、ただ現界に戻るためには金勝要大神の御許しがいると一度姿を隠し給うた。ランチと片彦は互いに罪を謝し合い、ガリヤとケースは二人の物語を聞いて感嘆の息を洩らしている。
そこへ治国別、松彦、竜公、万公、アク、タク、テクたちの三五教宣伝使一行が宙を飛んで走り来たり、四人の前に整列した。そして、四人の悔悟の念が金勝要大神に通じお許しが出たことを告げた。
四人が目を覚ますと、物見やぐらに横たわって多くの人々に介抱されていた。またお民はお寅に救われていた。ふと見れば、先ほど罪人橋に迎えに来た三五教の宣伝使・治国別たちが枕元にいた。
彼ら四人は、治国別と松彦の一隊によって死体を河中から救い上げられ、天津祝詞と天の数歌の功力によってよみがえったのであった。お民も気が付けば、蠑螈別をはじめエキス、タール、アーク、お寅らが親切に介抱していた。
これよりランチ将軍をはじめ幽冥旅行の面々は心の底より前非を悔い、はじめて神素盞嗚大神の御前に両手を合わせ、罪を陳謝し、三五教に帰順することとなった。