霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第八章 女神(めがみ)の出現(しゆつげん)〔八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻 篇:第1篇 幽界の探険 よみ(新仮名遣い):ゆうかいのたんけん
章:第8章 女神の出現 よみ(新仮名遣い):めがみのしゅつげん 通し章番号:8
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:1921(大正10)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
玉は次第に大きくなり、たちまちうるわしい女神の姿に変化した。全身金色にして紫摩黄金の肌で玲瓏透明にましまし、白の衣装と緋のはかまという出で立ちの、愛情あふれるばかりの女神であった。
女神は、自分は「大便所の神である」と告げ、懐から八寸ばかりの比礼を授けると、再会を約して電光石火のごとく天に帰って行った。
後に教祖のお話にあった金勝要神であることがわかって神界の微妙なる御経綸に驚かざるを得なかった。
女神と分かれた後、太陽も月も星も見えない山野を進んでいった。冷たい道の傍らに汚い水溜りがあり、その中に三十歳余りの青年が陥って虫にたかられ、苦しんでいた。
思わず「天照大神、惟神霊幸倍坐世」と繰り返すと、青年は水溜りから這い上がることができた。
青年は感謝の念を述べ、竜女を犯した自分と祖先の罪により、あのような罰を受けていたと語った。
それから自分は天照大神の御神号を一心不乱に唱えつつ前進した。すると神力著しく、たちまち全身が温かくなった。
四五十丁も行くと、断崖に突き当たった。後ろからは鋭利な刃物が迫ってきており、下を見ると、谷川の流れに落ちた旅人を、恐ろしい怪物が口にくわえて、浮き沈みしていた。
自分は神号を唱えると、怪物の姿は消えてしまった。怪物の難から助かった旅人は、舟木と言った。彼は喜んで自分の道連れとなった。
二人連れで進んでいくと、口の大きな怪物が、二人を逃がすな、と長剣をふるって襲い掛かってきた。神号を唱えても効果がなく、進退窮まったところへ、先ほどの女神が現れて、比礼を振るようにと言った。比礼を振ると、怪物は退却してしまった。
やれやれと思うまもなく、突然大蛇が現れて二人を飲み込んでしまった。そして轟然とした音と共に、奈落の底へ落ちていった。
気がつくと、幾千丈とも知れない滝の下に、両人は身を横たえていた。周囲は鋭い氷の柱で囲まれており、身動きすれば氷の剣に身を貫かれてしまう態であった。
自分は満身の力をこめて、「アマテラスオホミカミサマ」と唱えると、身体が自由になり、滝もどこともなく消えうせてしまった。
今度は、茫々たる雪の原野が現れた。雪の中には幾百人ともわからないほど、人間の手足や頭の一部が出ていた。にわかに、山が崩れるかという響きがして雪塊が落下し、自分を埋めて身動きができなくなってしまった。
一生懸命、惟神霊幸倍坐世をなんとか唱えると、ようやく身体の自由が利くようになってきた。舟木の全身が雪にうずもれていたので、比礼を振ると、舟木は雪の中から全身を現した。
天の一方より、またまた金色の光が現れて雪の原野は一度にぱっと消え、短い雑草の野原に変わった。
雪に埋もれていたあまたのひとびとは自分の前にひれ伏し、救世主の出現と感謝した。救世主と一緒に、神業に参加したいと希望する人もたくさんあった。その中には実業家、教育家、医者、学者なども混じっていた。
以上は水獄の中でも一番軽いところであった。第二段、第三段となると、このような軽々しい苦痛ではなかった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-03-29 03:05:03 文字数:2850 OBC :rm0108
愛善世界社版:37頁 八幡書店版:第1輯 58頁 修補版: 校定版:36頁 普及版:19頁 初版: ページ備考:
001 不思議(ふしぎ)に堪(た)へずして、002自分(じぶん)は金色(きんしよく)燦爛(さんらん)たる珍玉(ちんぎよく)の明光(めいくわう)を拝(はい)して、003何(なん)となく力強(ちからづよ)く感(かん)じられ、004眺(なが)めてゐた。005次第(しだい)々々(しだい)に玉(たま)は大(おお)きくなるとともに、006水晶(すゐしやう)のごとくに澄(す)みきり、007たちまち美(うる)はしき女神(めがみ)の御姿(みすがた)と変化(へんくわ)した。008全身(ぜんしん)金色(こんじき)にして仏祖(ぶつそ)のいはゆる、009紫摩(しま)黄金(わうごん)の肌(はだ)で、010その上(うへ)に玲瓏(れいろう)透明(とうめい)にましまし、011白(しろ)の衣裳(いしやう)と、012下(した)は緋(ひ)の袴(はかま)を穿(うが)ちたまふ、013愛情(あいじやう)あふるるばかりの女神(めがみ)であつた。014女神(めがみ)は、015自分(じぶん)の手(て)をとり笑(ゑみ)を含(ふく)んで、
016『われは大便所(かはや)の神(かみ)なり。017汝(なんぢ)に之(これ)を捧(ささ)げむ』
018と言下(げんか)に御懐中(みふところ)より、019八寸(はつすん)ばかりの比礼(ひれ)を自分(じぶん)の左手(ゆんで)に握(にぎ)らせたまひ、020再会(さいくわい)を約(やく)して、021また元(もと)のごとく金色(こんじき)の玉(たま)となりて中空(ちゆうくう)に舞(ま)ひ上(のぼ)り、022電光(でんくわう)石火(せきくわ)のごとく、023九重(ここのへ)の雲(くも)深(ふか)く天上(てんじやう)に帰(かへ)らせたまうた。
024 その当時(たうじ)は、025いかなる神(かみ)様(さま)なるや、026また自分(じぶん)にたいして何(なに)ゆゑに、027かくのごとき珍宝(ちんぽう)を、028かかる寂寥(せきれう)の境域(きやうゐき)に降(くだ)りて、029授(さづ)けたまひしやが疑問(ぎもん)であつた。030しかし参綾後(さんれうご)はじめて氷解(ひようかい)ができた。
031教祖(けうそ)の御(お)話(はなし)に、
032『金勝要(きんかつかねの)神(かみ)は、033全身(ぜんしん)黄金色(わうごんしよく)であつて、034大便所(かはや)に永年(ながねん)のあひだ落(おと)され、035苦労(くらう)艱難(かんなん)の修行(しうぎやう)を積(つ)んだ大地(だいち)の金神(こんじん)様(さま)である。036その修行(しうぎやう)が積(つ)んで、037今度(こんど)は世(よ)に出(で)て、038結構(けつこう)な御用(ごよう)を遊(あそ)ばすやうになりたのであるから、039人間(にんげん)は大便所(かはや)の掃除(さうぢ)から、040歓(よろこ)んで致(いた)すやうな精神(せいしん)にならぬと、041誠(まこと)の神(かみ)の御用(ごよう)はできぬ。042それに今(いま)の人民(じんみん)さんは、043高(たか)い処(ところ)へ上(あが)つて、044高(たか)い役(やく)をしたがるが、045神(かみ)の御用(ごよう)をいたすものは、046汚穢所(きたないところ)を、047美(うつく)しくするのを楽(たのし)んで致(いた)すものでないと、048三千(さんぜん)世界(せかい)の大洗濯(おほせんだく)、049大掃除(おほさうぢ)の御用(ごよう)は、050到底(たうてい)勤(つと)め上(あが)りませぬ』
051との御(お)言葉(ことば)を承(うけたま)はり、052かつ神諭(しんゆ)の何処(いづこ)にも記(しる)されたるを拝(はい)して、053奇異(きい)の感(かん)に打(う)たれ、054神界(しんかい)の深遠(しんゑん)微妙(びめう)なる御(ご)経綸(けいりん)に驚(おどろ)いた。
055 女神(めがみ)に別(わか)れ、056ただ一人(ひとり)、057太陽(たいやう)も月(つき)も星(ほし)も見(み)えぬ山野(さんや)を深(ふか)く進(すす)みゆく。
 
058 山(やま)深(ふか)く分(わ)け入(い)る吾(われ)は日(ひ)も月(つき)も
059  星(ほし)さへも見(み)ぬ狼(おほかみ)の声(こゑ)
 
060 冷(つめ)たい途(みち)の傍(かたはら)に沼(ぬま)とも、061池(いけ)とも知(し)れぬ汚(きたな)い水溜(みづたま)りがあつて、062その水(みづ)に美(うつく)しい三十(さんじつ)歳(さい)余(あま)りの青年(せいねん)が陥(おちい)り、063諸々(もろもろ)の虫(むし)に集(たか)られ、064顔(かほ)はそのままであるが首(くび)から下(した)は全部(ぜんぶ)蚯蚓(みみず)になつてしまひ、065見(み)るまに顔(かほ)までがすつかり数万(すうまん)の蛆虫(うじむし)になつてしまつた。066私(わたくし)は思(おも)はず、067「天照(あまてらす)大神(おほかみ)、068産土(うぶすなの)神(かみ)、069惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)」と二回(にくわい)ばかり繰返(くりかへ)した。070不思議(ふしぎ)にも元(もと)の美(うつく)しい青年(せいねん)になつて、071その水溜(みづたま)りから這(は)ひ上(あが)り、072嬉(うれ)しさうな顔(かほ)して礼(れい)を述(の)べた。073その青年(せいねん)の語(かた)るところによると、
074『竜女(りゆうぢよ)を犯(をか)した祖先(そせん)の罪(つみ)によつて、075自分(じぶん)もまた悪(わる)い後継者(こうけいしや)となつて竜女(りゆうぢよ)を犯(をか)しました。076その罪(つみ)によつて、077かういふ苦(くる)しみを受(う)くることになつたのでありますが、078今(いま)、079あなたの神文(しんもん)を聞(き)いて忽(たちま)ちこの通(とほ)りに助(たす)かりました』
080といつて感謝(かんしや)する。
081 それから自分(じぶん)は、082天照(あまてらす)大神(おほかみ)の御(ご)神号(しんがう)を一心(いつしん)不乱(ふらん)に唱(とな)へつつ前進(ぜんしん)した。083月(つき)もなく、084烏(からす)もなく、085霜(しも)は天地(てんち)に充(み)ち、086寒(さむ)さ酷(きび)しく膚(はだへ)を断(き)るごとく、087手(て)も足(あし)も棒(ぼう)のやうになり息(いき)も凍(こご)らむとする時(とき)、088またもや「天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)、089惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)」と口唱(こうしやう)し奉(まつ)つた。090不思議(ふしぎ)にも言霊(ことたま)の神力(しんりき)著(いちじる)しく、091たちまち全身(ぜんしん)に暖(だん)を覚(おぼ)え、092手(て)も足(あし)も湯(ゆ)に入(い)りしごとくなつた。
093 アゝ地獄(ぢごく)で神(かみ)とは、094このことであると、095感謝(かんしや)の涙(なみだ)は滝(たき)と流(なが)るるばかりであつた。096四五十(しごじつ)丁(ちやう)も辿(たど)り行(ゆ)くと、097そこに一(ひと)つの断崕(だんがい)に衝(つ)き当(あた)る。098止(や)むをえず、099引(ひ)き返(かへ)さむとすれば鋭利(えいり)なる槍(やり)の尖(さき)が、100近(ちか)く五六寸(ごろくすん)の処(ところ)にきてゐる。101この上(うへ)は神(かみ)に任(まか)し奉(まつ)らむと決意(けつい)して、102氷(こほり)に足(あし)をすべらせつつ右手(めて)を見(み)れば、103深(ふか)き谷川(たにがは)があつて激潭(げきたん)飛沫(ひまつ)、104流声(りうせい)物(もの)すごき中(なか)に、105名(な)も知(し)れぬ見(み)た事(こと)もなき恐(おそ)ろしき動物(どうぶつ)が、106川(かは)へ落(お)ちたる旅人(たびびと)を口(くち)にくはへて、107谷川(たにがは)の流(なが)れに浮(う)いたり、108沈(しづ)んだり、109旅人(たびびと)は「助(たす)けて助(たす)けて」と、110一点張(いつてんばり)に叫(さけ)んでゐる。111自分(じぶん)は、112ふたたび神号(しんがう)を奉唱(ほうしやう)すると、113旅人(たびびと)をくはへてゐた怪物(くわいぶつ)の姿(すがた)は沫(あわ)と消(き)えてしまつた。
114 助(たす)かつた旅人(たびびと)の名(な)は舟木(ふなき)といふ。115彼(かれ)は喜(よろこ)んで自分(じぶん)の後(あと)に跟(つ)いてきた。116一人(ひとり)の道連(みちづ)れを得(え)て、117幾分(いくぶん)か心(こころ)は丈夫(ぢやうぶ)になつてきた。118危(あやふ)き断崕(だんがい)を辛(から)うじて五六十(ごろくじつ)丁(ちやう)ばかり進(すす)むと、119途(みち)が無(な)くなつた。120薄暗(うすぐら)い途(みち)を行(ゆ)く二人(ふたり)は、121ここに停立(ていりつ)して思案(しあん)にくれてゐた。122さうすると何処(どこ)ともなく大声(おほごゑ)で、
123『ソレ彼(かれ)ら二人(ふたり)を、124免(の)がすな』
125と呼(よ)ぶ。126にはかに騒々(さうざう)しき物音(ものおと)しきりに聞(きこ)え来(き)たり、127口(くち)の巨大(きよだい)なる怪物(くわいぶつ)が幾百(いくひやく)ともなく、128二人(ふたり)の方(はう)へ向(むか)つて襲(おそ)ひくる様子(やうす)である。129二人(ふたり)は進退(しんたい)これ谷(きは)まり、130いかがはせむと狼狽(らうばい)の体(てい)であつた。131何(なに)ほど神号(しんがう)を唱(とな)へても、132少(すこ)しも退却(たいきやく)せずますます迫(せま)つてくる。133今(いま)まで怪物(くわいぶつ)と思(おも)つたのが、134不思議(ふしぎ)にもその面部(めんぶ)だけは人間(にんげん)になつてしまつた。135その中(なか)で巨魁(きよくわい)らしき魔物(まもの)は、136たちまち長剣(ちやうけん)を揮(ふる)つて両人(りやうにん)に迫(せま)りきたり、137今(いま)や斬(き)り殺(ころ)されむとする刹那(せつな)に、138白衣(びやくい)金膚(きんぷ)の女神(めがみ)が、139ふたたびその場(ば)に光(ひか)りとともに現(あら)はれた。140そして、141「比礼(ひれ)を振(ふ)らせたまへ」と言(い)つて姿(すがた)は忽(たちま)ち消(き)えてしまつた。142懐中(ふところ)より神器(しんき)の比礼(ひれ)を出(だ)すや否(いな)や、143上下(じやうげ)左右(さいう)に祓(はら)つた。144怪物(くわいぶつ)はおひおひと遠(とほ)く退却(たいきやく)する。145ヤレ嬉(うれ)しやと思(おも)ふまもなく、146忽然(こつぜん)として大蛇(をろち)が現(あら)はれ、147巨口(きよこう)を開(ひら)いて両人(りやうにん)を呑(の)んでしまつた。148両人(りやうにん)は大蛇(をろち)の腹(はら)の中(なか)を探(さぐ)り探(さぐ)り進(すす)んで行(ゆ)く。149今(いま)まで寒(さむ)さに困(こま)つてゐた肉体(にくたい)は、150どこともなく、151暖(あたたか)い湯(ゆ)に浴(よく)したやうな心持(こころもち)であつた。152轟然(ぐわうぜん)たる音響(おんきやう)とともに幾百千(いくひやくせん)丈(ぢやう)ともわからぬ、153奈落(ならく)の底(そこ)へ落(お)ちゆくのであつた。
154 ふと気(き)がつけば幾千丈(いくせんぢやう)とも知(し)れぬ、155高(たか)い滝(たき)の下(した)に両人(りやうにん)は身(み)を横(よこ)たへてゐた。156自分(じぶん)の周囲(しうゐ)は氷(こほり)の柱(はしら)が、157幾万本(いくまんぼん)とも知(し)れぬほど立(た)つてをる。158両人(りやうにん)は、159この高(たか)い瀑布(ばくふ)から、160地底(ちてい)へ急転(きふてん)直落(ちよくらく)したことを覚(さと)つた。161一寸(いつすん)でも、162一分(いちぶ)でも身動(みうご)きすれば、163冷(ひえ)きつた氷(こほり)の剣(つるぎ)で身(み)を破(やぶ)る。164起(お)きるにも起(お)きられず、165同伴(どうはん)の舟木(ふなき)を見(み)ると、166魚(うを)を串(くし)に刺(さ)したやうに、167長(なが)い鋭(するど)い氷剣(ひようけん)に胴(どう)のあたりを貫(つらぬ)かれ、168非常(ひじやう)に苦(くる)しんでゐる。169自分(じぶん)は満身(まんしん)の力(ちから)をこめて、170「アマテラスオホミカミサマ」と、171一言(ひとこと)づつ切(き)れ切(ぎ)れに、172やうやくにして唱(とな)へ奉(まつ)つた。173神徳(しんとく)たちまち現(あら)はれ、174自分(じぶん)も舟木(ふなき)も身体(しんたい)自由(じいう)になつてきた。175今(いま)までの瀑布(ばくふ)は、176どこともなく、177消(き)え失(う)せて、178ただ茫々(ばうばう)たる雪(ゆき)の原野(げんや)と化(くわ)してゐた。
179 雪(ゆき)の中(なか)に、180幾百(いくひやく)人(にん)とも分(わか)らぬほど人間(にんげん)の手(て)や足(あし)や頭(あたま)の一部(いちぶ)が出(で)てゐる。181自分(じぶん)の頭(あたま)の上(うへ)から、182にはかに山岳(さんがく)も崩(くづ)るるばかりの響(ひびき)がして、183雪塊(ゆきだま)が落下(らくか)し来(きた)り、184自分(じぶん)の全身(ぜんしん)を埋(うづ)めてしまふ。185にはかに比礼(ひれ)を振(ふ)らうとしたが、186容易(ようい)に手(て)がいふことをきかぬ。187丁度(ちやうど)鉄(てつ)でこしらへた手(て)のやうになつた。188一生(いつしやう)懸命(けんめい)に「惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)」を漸(やうや)く一言(ひとこと)づつ唱(とな)へた。189幸(さいはひ)に自分(じぶん)の身体(しんたい)は自由(じいう)が利(き)くやうになつた。190四辺(あたり)を見(み)れば、191舟木(ふなき)の全身(ぜんしん)が、192また雪(ゆき)に埋(うづ)められ、193頭髪(とうはつ)だけが現(あら)はれてゐる。194その上(うへ)を比礼(ひれ)をもつて二三回(にさんくわい)左右左(さいうさ)と振(ふ)りまはすと、195舟木(ふなき)は苦(くる)しさうな顔(かほ)をして、196雪中(せつちゆう)から全身(ぜんしん)をあらはした。197天(てん)の一方(いつぱう)より、198またまた金色(こんじき)の光(ひかり)現(あら)はれて二人(ふたり)の身辺(しんぺん)を照(てら)した。199原野(げんや)の雪(ゆき)は、200見渡(みわた)すかぎり、201一度(いちど)にパツト消(き)えて、202短(みじか)い雑草(ざつさう)の原(はら)と変(かは)つた。
203 あまたの人々(ひとびと)は満面(まんめん)笑(ゑみ)を含(ふく)んで自分(じぶん)の前(まへ)にひれ伏(ふ)し、204救主(すくひぬし)の出現(しゆつげん)と一斉(いつせい)に感謝(かんしや)の意(い)を表(へう)し、205今後(こんご)は救主(すくひぬし)とともに、206三千(さんぜん)世界(せかい)の神業(しんげふ)に参加(さんか)奉仕(ほうし)せむことを希望(きばう)する人々(ひとびと)も沢山(たくさん)あつた。207その中(なか)には実業家(じつげふか)もあれば、208教育家(けういくか)もあり、209医者(いしや)や、210学者(がくしや)も、211沢山(たくさん)に混(まじ)つてをつた。
212 以上(いじやう)は、213水獄(すゐごく)の中(なか)にて第一番(だいいちばん)の処(ところ)であつた。214第二段(だいにだん)、215第三段(だいさんだん)となると、216こんな軽々(かるがる)しき苦痛(くつう)ではなかつたのである。217自分(じぶん)は、218今(いま)この時(とき)のことを思(おも)ひだすと、219慄然(りつぜん)として肌(はだへ)に粟(あは)を生(しやう)ずる次第(しだい)である。
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