霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 神界(しんかい)旅行(りよかう)の四〔一七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻 篇:第2篇 幽界より神界へ よみ(新仮名遣い):ゆうかいよりしんかいへ
章:第17章 神界旅行(四) よみ(新仮名遣い):しんかいりょこう(四) 通し章番号:17
口述日:1921(大正10)年10月19日(旧09月19日) 口述場所: 筆録者:谷口正治 校正日: 校正場所: 初版発行日:1921(大正10)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
神界の場面がたちまち一変し、また自分は元の大橋のたもとに立っていた。大祓詞の声が聞こえて来る方に行くと、五十がらみの爺と四十がらみの女が背中合わせにひっついて、天狗と稲荷をそれぞれ拝んでいた。
自分は神様にお願いして祝詞を奏上すると、二人の体は分離した。二人は感謝して神業に参加しようとしたが、男の方は強欲のために地獄に堕ちて肉体は滅びてしまった。
また光景が一変し、小さな十字街頭で、先ほど見た八つ頭八つ尾の霊が憑いた男が、車に乗るように進めてきたが、自分は断って徒歩で進んだ。
非常に険峻な山坂を三つ四つ越えると、そこには澄み切った河べりに、老いた松が青々と並んでいる景勝の地であった。自分はこここそ神界であると思った。またとぼとぼと進んでいくと、小さな町に出た。地形は蓮華台上にあり、高天原の中心と称してもよいような町であった。
山を下って少し北に進んだ小さな家で、かの幽庁におられた大王が、若い若い女の姿で自分を出迎えた。大王との再会を喜んで珍しい話を聞いていると、虎狼がうめくような声で祝詞が唱えられているのが聞こえた。
その祝詞の声であたりは暗黒に閉ざされ、「足」という鬼に「黒」という古狐が憑いているのが見えた。河からは大きな竜体が、どこからともなく悪魔が現れてきた。自分は「天照大御神」「産土神」を念じて祝詞を唱えると、一天にわかに晴れ渡った。
祝詞も悪魔の口から唱えられると、かえって世の中は混乱する。言霊は身も魂も清浄となった人が使ってはじめて、世の中を清めることができるのである。
自分は八衢に帰っていた。さきほどの鬼、狐、悪竜は自分を追ってきた。鬼は眷属を引き連れて自分を八方より襲撃し、口中から何十万本もの針を吹きかけた。しかし自分の体は神明の加護を受けており、何の影響もなかった。そのありがたさに感謝の祝詞を唱えると、すべての悪魔は消えてしまった。
「足」という鬼は、一見神に仕えるかのような服装をしていた。河から上ってきた竜は竜女に姿を変え、本来は大神御経綸に参加すべき身魂であった。しかし、「足」の鬼と肉体上の関係を結び、使命を台無しにしてしまった。
「足」の鬼は竜女と関係を持った罪のために滅びてしまった。
本来竜女は三千年の苦行を経て、ようやく人間として生まれてきたものであり、人間になった最初の一生は、男女の交わりを絶たなければ、再び竜体に堕ちてしまう。そのため、竜女を犯した者は竜神の祟りを受けて、末代まで苦しまなければならなくなるのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-03-29 03:17:04 文字数:3544 OBC :rm0117
愛善世界社版:90頁 八幡書店版:第1輯 78頁 修補版: 校定版:90頁 普及版:48頁 初版: ページ備考:
001 神界(しんかい)の場面(ばめん)が、002たちまち一変(いつぺん)したと思(おも)へば、003自分(じぶん)は又(また)もとの大橋(おほはし)の袂(たもと)に立(た)つてゐた。004どこからともなくにはかに大祓詞(おほはらひ)の声(こゑ)が聞(きこ)えてくる。005不思議(ふしぎ)なことだと思(おも)ひながら、006二三丁(にさんちやう)辿(たど)つて行(ゆ)くと、007五十(ごじふ)恰好(かつかう)の爺(ぢい)さんと四十(しじふ)かつかうの婦(をんな)とが背中(せなか)合(あは)せに引着(ひつつ)いて、008どうしても離(はな)れられないでもがいてゐる。009男(をとこ)は声(こゑ)をかぎりに天地金(てんちかね)の神(かみ)の御名(みな)を唱(とな)へてゐるが、010婦(をんな)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)に合掌(がつしやう)して稲荷(いなり)を拝(をが)んでゐる。011男(をとこ)の合掌(がつしやう)してゐる天(そら)には、012鼻(はな)の高(たか)い天狗(てんぐ)が雲(くも)の中(なか)に現(あら)はれて爺(ぢい)をさし招(まね)いてゐる。013婦(をんな)のをがむ方(はう)をみれば、014狐狸(こり)が一生(いつしやう)懸命(けんめい)山(やま)の中(なか)より手招(てまね)きしてゐる。015男(をとこ)が行(ゆ)かうとすると、016婦(をんな)の背中(せなか)にぴつたりと自分(じぶん)の背中(せなか)が吸(す)ひついて、017行(ゆ)くことができない。018婦(をんな)もまた行(ゆ)かうとして身悶(みもだ)えすれども、019例(れい)の背中(せなか)が密着(みつちやく)して進(すす)むことができない。020一方(いつぱう)へ二歩(にほ)行(い)つては後戻(あともど)り、021他方(たはう)へ二歩(にほ)行(い)つては、022又(また)あともどりといふ調子(てうし)で、023たがひに信仰(しんかう)を異(こと)にして迷(まよ)つてゐる。024自分(じぶん)はそこへ行(い)つて、025「惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)」と神(かみ)様(さま)にお願(ねが)ひして、026祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)した。027そのとき私(わたくし)は、028自分(じぶん)ながらも実(じつ)に涼(すず)しい清(きよ)らかな声(こゑ)が出(で)たやうな気(き)がした。
029 たちまち密着(みつちやく)してゐた両人(ふたり)の身体(からだ)は分離(ぶんり)することを得(え)た。030彼(かれ)らは大(おほ)いに自分(じぶん)を徳(とく)として感謝(かんしや)の辞(じ)を述(の)べ、031どこまでも自分(じぶん)に従(したが)つて、
032『神界(しんかい)の御用(ごよう)を勤(つと)めさしていただきます』
033と約束(やくそく)した。034やがて男(をとこ)の方(はう)は肉体(にくたい)をもつて、035一度(いちど)地(ち)の高天原(たかあまはら)に上(のぼ)つて神業(しんげふ)に参加(さんか)しやうとした。036しかし彼(かれ)は元来(ぐわんらい)が強欲(がうよく)な性情(たち)である上(うへ)、037憑依(ひようい)せる天狗(てんぐ)の霊(れい)が退散(たいさん)せぬため、038つひには盤古(ばんこ)大神(だいじん)の眷族(けんぞく)となり、039地(ち)の高天原(たかあまはら)の占領(せんりやう)を企(くわだ)て、040ために、041霊(れい)は神譴(しんけん)を蒙(かうむ)りて地獄(ぢごく)に堕(お)ち、042肉体(にくたい)は二年後(にねんご)に滅(ほろ)びてしまつた。043さうしてその婦(をんな)は、044今(いま)なほ肉体(にくたい)を保(たも)つて遠(とほ)く神(かみ)に従(したが)ふてゐる。
045 この瞬間(しゆんかん)、046自分(じぶん)の目(め)の前(まへ)の光景(くわうけい)は忽(たちま)ち一転(いつてん)した。047不思議(ふしぎ)にも自分(じぶん)はある小(ちひ)さな十字(じふじ)街頭(がいとう)に立(た)つてゐた。048そこへ前(まへ)に見(み)た八頭(やつがしら)八尾(やつを)の霊(れい)の憑(つ)いた男(をとこ)が俥(くるま)を曳(ひ)いてやつて来(き)て、
049『高天原(たかあまはら)にお伴(とも)させていただきますから、050どうかこの俥(くるま)にお召(め)し下(くだ)さい』
051といふ。052しかし「自分(じぶん)は神界(しんかい)修業(しうげふ)の身(み)なれば、053俥(くるま)になど乗(の)るわけにはゆかぬ」と強(しひ)て断(ことわ)つた上(うへ)、054徒歩(とほ)でテクテク西(にし)へ西(にし)へと歩(あゆ)んで行(い)つた。055非常(ひじやう)に嶮峻(けんしゆん)な山坂(やまさか)を三(み)つ四(よ)つ越(こ)えると、056やがてまた広(ひろ)い清(きよ)い河(かは)のほとりに到着(たうちやく)した。057河(かは)には澄(すみ)きつた清澄(せいちやう)な水(みづ)が流(なが)れてをり、058川縁(かはぶち)には老松(らうしやう)が翠々(あをあを)と並(なら)んでゐる実(じつ)に景勝(けいしよう)の地(ち)であつた。059自分(じぶん)はこここそ神界(しんかい)である、060こんな処(ところ)に長(なが)らくゐたいものだといふ気(き)がした。061また一人(ひとり)とぼとぼと進(すす)んで行(ゆ)けば、062とある小(ちひ)さい町(まち)に出(で)た。063左方(さはう)を眺(なが)むれば小(ちひ)さな丘(をか)があり、064山(やま)は紫(むらさき)にして河(かは)は帯(おび)のやうに流(なが)れ、065蓮華台(れんげだい)上(じやう)と形容(けいよう)してよからうか、066高天原(たかあまはら)の中心(ちゆうしん)と称(しよう)してよからうか、067自分(じぶん)はしばしその風光(ふうくわう)に見惚(みと)れて、068そこを立去(たちさ)るに躊躇(ちうちよ)した。
069 山(やま)を降(くだ)つて少(すこ)しく北(きた)に進(すす)んで行(ゆ)くと、070小(ちひ)さな家(いへ)が見(み)つかつた。071自分(じぶん)は電気(でんき)に吸着(すひつ)けらるるごとく、072忽(たちま)ちその門口(かどぐち)に着(つ)いてゐた。073そこには不思議(ふしぎ)にも、074かの幽庁(いうちやう)にゐられた大王(だいわう)が、075若(わか)い若(わか)い婦(をんな)の姿(すがた)と化(くわ)して自分(じぶん)を出迎(でむか)へ、076やがて小(ちひ)さい居間(ゐま)へ案内(あんない)された。077自分(じぶん)はこの大王(だいわう)との再会(さいくわい)を喜(よろこ)んで、078いろいろの珍(めづ)らしい話(はな)しを聞(き)いてゐると、079にはかに虎(とら)が唸(うな)るやうな、080また狼(おほかみ)が呻(うめ)くやうな声(こゑ)が聞(きこ)えてきた。081よく耳(みみ)を澄(す)まして聞(き)けば、082天津(あまつ)祝詞(のりと)や大祓(おほはらひ)の祝詞(のりと)の声(こゑ)であつた。083それらの声(こゑ)とともに四辺(あたり)は次第(しだい)に暗黒(あんこく)の度(ど)を増(ま)しきたり、084密雲(みつうん)濛々(もうもう)と鎖(とざ)して、085日光(につくわう)もやがては全(まつた)く見(み)えなくなり、086暴風(ばうふう)にはかに吹(ふ)き起(おこ)つて、087家(いへ)も倒(たふ)れよ、088地上(ちじやう)のすべての物(もの)は吹(ふ)き散(ち)れよとばかり凄(すさま)じき光景(くわうけい)となつた。089その濛々(もうもう)たる黒雲(こくうん)の中(なか)より「足(あし)」といふ古(ふる)い顔(かほ)の鬼(おに)が現(あら)はれてきた。090それには「黒(くろ)」といふ古狐(ふるぎつね)がついてゐて、091下界(げかい)を睥睨(へいげい)してゐる。092その時(とき)にはかに河水(かはみづ)鳴(な)りとどろき河中(かはなか)より大(おほ)いなる竜体(りゆうたい)が現(あら)はれ、093またどこからともなく、094何(なん)とも形容(けいよう)のしがたい悪魔(あくま)があらはれてきた。095大王(だいわう)の居間(ゐま)も附近(ふきん)も、096この時(とき)すつかり暗黒(あんこく)となつて、097咫尺(しせき)すら弁(べん)じがたき暗(やみ)となり、098かの優(やさ)しい大王(だいわう)の姿(すがた)もまた暗中(あんちゆう)に没(ぼつ)してしまつた。099ただ目(め)に見(み)ゆるは、100烈風中(れつぷうちゆう)に消(き)えなむとして瞬(またた)いてゐる一(ひと)つのかすかな燈光(とうくわう)ばかりである。101自分(じぶん)は今(いま)こそ神(かみ)を祈(いの)るべき時(とき)であると不図(ふと)心付(こころづ)き、102「天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)」と「産土(うぶすなの)神(かみ)」をひたすらに念(ねん)じ、103悠々(いういう)として祝詞(のりと)をすずやかな声(こゑ)で奏上(そうじやう)した。104一天(いつてん)にはかに晴(は)れわたり、105一点(いつてん)の雲翳(うんえい)すらなきにいたる。
106 祝詞(のりと)はすべて神明(しんめい)の心(こころ)を和(やはら)げ、107天地人(てんちじん)の調和(てうわ)をきたす結構(けつこう)な神言(しんげん)である。108しかしその言霊(げんれい)が円満(ゑんまん)清朗(せいろう)にして始(はじ)めて一切(いつさい)の汚濁(をだく)と邪悪(じやあく)を払拭(ふつしき)することができるのである。109悪魔(あくま)の口(くち)より唱(とな)へらるる時(とき)はかへつて世(よ)の中(なか)はますます混乱(こんらん)悪化(あくくわ)するものである。110蓋(けだ)し悪魔(あくま)の使用(しよう)する言霊(げんれい)は世界(せかい)を清(きよ)める力(ちから)なく、111欲心(よくしん)、112嫉妬(しつと)、113憎悪(ぞうを)、114羨望(せんばう)、115憤怒(ふんど)などの悪念(あくねん)によつて濁(にご)つてゐる結果(けつくわ)、116天地(てんち)神明(しんめい)の御心(みこころ)を損(そこな)ふにいたるからである。117それ故(ゆゑ)、118日本(にほん)は言霊(ことたま)の幸(さち)はふ国(くに)といへども、119身(み)も魂(たましひ)も本当(ほんたう)に清浄(せいじやう)となつた人(ひと)が、120その言霊(ことたま)を使(つか)つて始(はじ)めて、121世(よ)のなかを清(きよ)めることができ得(う)るのである。122これに反(はん)して身魂(みたま)の汚(けが)れた人(ひと)が言霊(ことたま)を使(つか)へば、123その言霊(ことたま)には一切(いつさい)の邪悪(じやあく)分子(ぶんし)を含(ふく)んでゐるから、124世(よ)の中(なか)はかへつて暗黒(あんこく)になるものである。
125 さて自分(じぶん)は八衢(やちまた)に帰(かへ)つてみると、126前刻(さつき)の鬼(おに)、127狐(きつね)および大(おほ)きな竜(りゆう)の悪霊(あくれい)は、128自分(じぶん)を跡(あと)から追(お)つてきた。129「足(あし)」の鬼(おに)は、130今度(こんど)は多(おほ)くの眷族(けんぞく)を引連(ひきつ)れ来(き)たり、131自分(じぶん)を八方(はつぱう)より襲撃(しふげき)し、132おのおの口中(こうちゆう)より噴霧(ふんむ)のやうに幾十万(いくじふまん)本(ぼん)とも数(かぞ)へられぬほどの針(はり)を噴(ふ)きかけた。133しかし自分(じぶん)の身体(からだ)は神明(しんめい)の加護(かご)を受(う)けてゐた。134あたかも鉄板(てつぱん)のやうに針(はり)を弾(は)ね返(かへ)して少(すこ)しの痛痒(つうよう)をも感(かん)じない。135その有難(ありがた)さに感謝(かんしや)のため祝詞(のりと)を奏(あ)げた。136その声(こゑ)に、137すべての悪魔(あくま)は煙(けむり)のごとく消滅(せうめつ)して見(み)えなくなつた。
138 ここで一寸(ちよつと)附言(ふげん)しておく。139「足(あし)」の鬼(おに)といふのは烏帽子(ゑぼし)直垂(ひたたれ)を着用(ちやくよう)して、140あたかも神(かみ)に仕(つか)へるやうな服装(ふくさう)をしてゐた。141しかし本来(ほんらい)非常(ひじやう)に猛悪(まうあく)な顔貌(がんばう)なのだが、142一見(いつけん)立派(りつぱ)な容子(ようす)に身(み)をやつしてゐる。143また河(かは)より昇(のぼ)れる竜(りゆう)は、144たちまち美人(びじん)に化(ば)けてしまつた。145この竜女(りゆうぢよ)は、146竜宮界(りゆうぐうかい)の大使命(だいしめい)を受(う)けてゐるものであつて、147大神(おほかみ)御(ご)経綸(けいりん)の世界(せかい)改造(かいざう)運動(うんどう)に参加(さんか)すべき身魂(みたま)であつたが、148美(うつく)しい肉体(にくたい)の女(をんな)に変(へん)じて「足(あし)」の鬼(おに)と肉体(にくたい)上(じやう)の関係(くわんけい)を結(むす)び神界(しんかい)の使命(しめい)を台(だい)なしにしてしまつた。149竜女(りゆうぢよ)に変化(かは)つたその肉体(にくたい)は、150現在(げんざい)生(い)き残(のこ)つて河(かは)をへだてて神(かみ)に仕(つか)へてゐる。151彼女(かのぢよ)が竜女(りゆうぢよ)であるといふ証拠(しようこ)には、152その太腿(ふともも)に竜(りゆう)の鱗(うろこ)が三(さん)枚(まい)もできてゐる。153神界(しんかい)の摂理(せつり)は三界(さんかい)に一貫(いつくわん)し、154必(かなら)ずその報(むく)いが出(で)てくるものであるから、155神界(しんかい)の大使命(だいしめい)を帯(お)びたる竜女(りゆうぢよ)を犯(をか)すことは、156神界(しんかい)としても現界(げんかい)としても、157末代(まつだい)神(かみ)の譴(いまし)めを受(う)けねばならぬ。158「足(あし)」の鬼(おに)はその神罰(しんばつ)により、159その肉体(にくたい)の一子(いつし)は聾(つんぼ)となり、160一女(いちぢよ)は顔(かほ)一面(いちめん)に菊石(あばた)を生(しやう)じ、161醜(みにく)い竜(りゆう)の葡匐(ほふく)するやうな痕跡(こんせき)をとどめてゐた。162さて一女(いちぢよ)まづ死(し)し、163ついでその一子(いつし)も滅(ほろ)んだ。164かれは罪(つみ)のために国常立(くにとこたちの)尊(みこと)に谷底(たにぞこ)に蹴落(けおと)され胸骨(きようこつ)を痛(いた)めた結果(けつくわ)、165霊肉(れいにく)ともに滅(ほろ)んでしまつた。166かくて「足(あし)」の肉体(にくたい)もついに大神(おほかみ)の懲戒(いましめ)を蒙(かうむ)り、167日(ひ)に日(ひ)に痩衰(やせおとろ)へ家計(かけい)困難(こんなん)に陥(おちい)り、168肺結核(はいけつかく)を病(や)んで悶死(もんし)してしまつた。
169 以上(いじやう)の一男(いちなん)一女(いちぢよ)は「足(あし)」の前妻(ぜんさい)の子女(しぢよ)であるが、170竜女(りゆうぢよ)と「足(あし)」の鬼(おに)との間(あひだ)にも、171一男(いちなん)が生(うま)れた。172「足(あし)」の鬼(おに)は二人(ふたり)の子女(しぢよ)を失(うしな)つたので、173彼(かれ)は自分(じぶん)の後継者(こうけいしや)として、174その男(をとこ)の子(こ)を立(た)てやうとする。175竜女(りゆうぢよ)の方(はう)でも、176自分(じぶん)の肉体(にくたい)の後継者(こうけいしや)としやうとして焦(あせ)つてゐる。177一方(いつぱう)竜女(りゆうぢよ)には厳格(げんかく)な父母(ふぼ)があつた。178彼(かれ)らもその子(こ)を自分(じぶん)の家(いへ)の相続者(さうぞくしや)としやうとして離(はな)さぬ。179「足(あし)」の鬼(おに)の方(はう)は無理(むり)にこれを引(ひき)とらうとして、180一人(ひとり)の肉体(にくたい)を、181二(ふた)つに引(ひ)きち切(ぎ)つて殺(ころ)してしまつた。182霊界(れいかい)でかうして引裂(ひきさ)かれて死(し)んだ子供(こども)は現界(げんかい)では、183父(ちち)につけば母(はは)にすまぬ、184母(はは)につけば父(ちち)にすまぬと、185煩悶(はんもん)の結果(けつくわ)、186肺結核(はいけつかく)を病(や)んで死(し)んだのである。187かうして「足(あし)」の鬼(おに)の方(はう)は霊肉(れいにく)ともに一族(いちぞく)断絶(だんぜつ)したが、188竜女(りゆうぢよ)は今(いま)も後継者(こうけいしや)なしに寡婦(くわふ)の孤独(こどく)な生活(せいくわつ)を送(おく)つてゐる。
189 本来(ほんらい)竜女(りゆうぢよ)なるものは、190海(うみ)に極寒(ごくかん)極熱(ごくねつ)の一千(いつせん)年(ねん)を苦行(くぎやう)し、191山中(さんちゆう)にまた一千(いつせん)年(ねん)、192河(かは)にまた一千(いつせん)年(ねん)を修業(しうげふ)して、193はじめて人間界(にんげんかい)に生(うま)れ出(い)づるものである。194その竜体(りゆうたい)より人間(にんげん)に転生(てんしやう)した最初(さいしよ)の一生涯(いつしやうがい)は、195尼(あま)になるか、196神(かみ)に仕(つか)へるか、197いづれにしても男女(だんぢよ)の交(まじは)りを絶(た)ち、198聖浄(きよらか)な生活(せいくわつ)を送(おく)らねばならないのである。199もしこの禁断(きんだん)を犯(をか)せば、200三千(さんぜん)年(ねん)の苦行(くぎやう)も水(みづ)の沫(あわ)となつて再(ふたた)び竜体(りゆうたい)に堕落(だらく)する。201従(したが)つて竜女(りゆうぢよ)といふものは男子(だんし)との交(まじは)りを喜(よろこ)ばず、202かつ美人(びじん)であり、203眼(まなこ)鋭(するど)く、204身体(しんたい)のどこかに鱗(うろこ)の数片(すうへん)の痕跡(こんせき)を止(とど)めてゐるものも偶(たま)にはある。205かかる竜女(りゆうぢよ)に対(たい)して種々(しゆじゆ)の人間界(にんげんかい)の情実(じやうじつ)、206義理(ぎり)、207人情(にんじやう)等(とう)によつて、208強(しひ)て竜女(りゆうぢよ)を犯(をか)し、209また犯(をか)さしめるならば、210それらの人(ひと)は竜神(りゆうじん)よりの恨(うらみ)をうけ、211その復讐(ふくしう)に会(あ)はずにはゐられない。212通例(つうれい)竜女(りゆうぢよ)を犯(をか)す場合(ばあひ)は、213その夫婦(ふうふ)の縁(えん)は決(けつ)して安全(あんぜん)に永続(ゑいぞく)するものではなく、214夫(をつと)は大抵(たいてい)は夭死(えうし)し、215女(をんな)は幾度(いくど)縁(えん)をかゆるとも、216同(おな)じやうな悲劇(ひげき)を繰返(くりかへ)し、217犯(をか)したものは子孫(しそん)末代(まつだい)まで、218竜神(りゆうじん)の祟(たた)りを受(う)けて苦(くる)しまねばならぬ。
219(大正一〇・一〇・一九 旧九・一九 谷口正治録)
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