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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第1巻(子の巻)
序
基本宣伝歌
発端
第1篇 幽界の探険
第1章 霊山修業
第2章 業の意義
第3章 現界の苦行
第4章 現実的苦行
第5章 霊界の修業
第6章 八衢の光景
第7章 幽庁の審判
第8章 女神の出現
第9章 雑草の原野
第10章 二段目の水獄
第11章 大幣の霊験
第2篇 幽界より神界へ
第12章 顕幽一致
第13章 天使の来迎
第14章 神界旅行(一)
第15章 神界旅行(二)
第16章 神界旅行(三)
第17章 神界旅行(四)
第18章 霊界の情勢
第19章 盲目の神使
第3篇 天地の剖判
第20章 日地月の発生
第21章 大地の修理固成
第22章 国祖御隠退の御因縁
第23章 黄金の大橋
第24章 神世開基と神息統合
第4篇 竜宮占領戦
第25章 武蔵彦一派の悪計
第26章 魔軍の敗戦
第27章 竜宮城の死守
第28章 崑崙山の戦闘
第29章 天津神の神算鬼謀
第30章 黄河畔の戦闘
第31章 九山八海
第32章 三個の宝珠
第33章 エデンの焼尽
第34章 シナイ山の戦闘
第35章 一輪の秘密
第36章 一輪の仕組
第5篇 御玉の争奪
第37章 顕国の御玉
第38章 黄金水の精
第39章 白玉の行衛
第40章 黒玉の行衛
第41章 八尋殿の酒宴(一)
第42章 八尋殿の酒宴(二)
第43章 丹頂の鶴
第44章 緑毛の亀
第45章 黄玉の行衛
第46章 一島の一松
第47章 エデン城塞陥落
第48章 鬼熊の終焉
第49章 バイカル湖の出現
第50章 死海の出現
附記 霊界物語について
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第1巻(子の巻)
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<<< 神界旅行(二)
(B)
(N)
神界旅行(四) >>>
第一六章
神界
(
しんかい
)
旅行
(
りよかう
)
の三〔一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
篇:
第2篇 幽界より神界へ
よみ(新仮名遣い):
ゆうかいよりしんかいへ
章:
第16章 神界旅行(三)
よみ(新仮名遣い):
しんかいりょこう(三)
通し章番号:
16
口述日:
1921(大正10)年10月19日(旧09月19日)
口述場所:
筆録者:
桜井重雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1921(大正10)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
さらに進んでいくと、母や祖母や隣人の声と姿を使って、怒ったような泣いたような顔で、自分の神界行きを妨害しようとする者がある。
そこへ「幸」という男が現れて助けてくれた。自分は執着を捨てて北へ北へと進んでいった。
川辺に老いた松が生え、左側には絶壁の山が立っている場所で、男女が道をふさいだ。そして、自分たちは幽界をしろしめす大王の肉身系統の者である、と語った。
男女は北へ行くと大王にあえるので、自分たちの言付けがあったと伝えてほしい、と言った。この者たちは信仰の強い者たちだが、恐ろしい顔の天狗と金毛九尾の白狐という容易ならない物に魅入られていた。
さらに北に進むと、狐を殺した罪で畜生道に落ちた女に出会った。また、強欲のために多くの人を不幸や死に追いやった「横」という男が、怨霊に苦しめられていた。天照大御神に「惟神霊幸倍坐世」と唱えて天然笛を吹くと、怨霊たちは解脱することができた。
真西には、山猟で多くの狐を殺した男が、狐たちの怨霊に苦しめられていた。自分は狐たちに、復讐に走るよりも、めいめい改心して人界へ生まれ変わったらどうか、と諭した。狐たちに変わって天地へお詫びを申し上げると、狐たちはたちまち男女の姿に変わることができた。
そのときの数十の狐の霊は、一部は今日でも神界の御用をしているものがある。途中で逃げてしまったものもあれば、再び畜生道に堕ちたものもあった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm0116
愛善世界社版:
80頁
八幡書店版:
第1輯 74頁
修補版:
校定版:
80頁
普及版:
42頁
初版:
ページ備考:
001
扇
(
あふぎ
)
でたとへると
丁度
(
ちやうど
)
骨
(
ほね
)
を
渡
(
わた
)
つて
白紙
(
はくし
)
のところへ
着
(
つ
)
いた。
002
ヤレヤレと
一息
(
ひといき
)
して
傍
(
かたはら
)
の
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
に
身
(
み
)
を
横
(
よこ
)
たへて
一服
(
いつぷく
)
してゐた。
003
するとはるか
遠
(
とほ
)
く
北方
(
ほつぱう
)
にあたつて、
004
細
(
ほそ
)
い
幽
(
かす
)
かな
悲
(
かな
)
しい
蚊
(
か
)
の
泣
(
な
)
くやうな
声
(
こゑ
)
で、
005
「オーイ、
006
オーイ」と
自分
(
じぶん
)
を
呼
(
よ
)
ぶいやらしい
声
(
こゑ
)
がしてきた。
007
自分
(
じぶん
)
は
思案
(
しあん
)
にくれてゐると、
008
南方
(
なんぱう
)
の
背後
(
はいご
)
から
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
声
(
こゑ
)
で
自分
(
じぶん
)
を
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
める
者
(
もの
)
がある。
009
母
(
はは
)
や
祖母
(
そぼ
)
や
隣人
(
りんじん
)
の
声
(
こゑ
)
にどこか
似
(
に
)
てゐる。
010
フト
南方
(
なんぱう
)
の
声
(
こゑ
)
に
気
(
き
)
をひかれ
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
けば、
011
自分
(
じぶん
)
の
身体
(
からだ
)
はいつのまにか
穴太
(
あなを
)
の
自宅
(
じたく
)
へ
帰
(
かへ
)
つてゐた。
012
これは
幽界
(
いうかい
)
のことだが、
013
母
(
はは
)
の
後
(
うしろ
)
に
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
をした、
014
非常
(
ひじやう
)
に
悲
(
かな
)
しさうに、
015
かつ
立腹
(
りつぷく
)
したやうな、
016
一口
(
ひとくち
)
に
言
(
い
)
へば
怒
(
おこ
)
つたのと
泣
(
な
)
いたのが
一緒
(
いつしよ
)
になつたやうな
顔
(
かほ
)
した
者
(
もの
)
が
付
(
つ
)
いてゐる。
017
それが
母
(
はは
)
の
口
(
くち
)
を
藉
(
か
)
つていふには、
018
『
今
(
いま
)
かうして
老母
(
らうぼ
)
や
子供
(
こども
)
を
放
(
ほ
)
つておいて
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
にゆくのは
結構
(
けつこう
)
だが、
019
祖先
(
そせん
)
の
後
(
あと
)
を
守
(
まも
)
らねばならぬ。
020
それに
今
(
いま
)
お
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
られたら、
021
八十
(
はちじふ
)
に
余
(
あま
)
る
老母
(
らうぼ
)
があり、
022
たくさんの
農事
(
のうじ
)
を
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
でやらねばならぬ。
023
とにかく
思
(
おも
)
ひ
止
(
とど
)
まつてくれ』
024
と
自分
(
じぶん
)
を
引
(
ひ
)
き
止
(
と
)
めて、
025
行
(
ゆ
)
かさうとはささぬ。
026
そこへまた
隣家
(
りんか
)
から「
松
(
まつ
)
」と「
正
(
まさ
)
」といふ
二人
(
ふたり
)
が
出
(
で
)
てきて、
027
祖先
(
そせん
)
になり
代
(
かは
)
つて
意見
(
いけん
)
すると
言
(
い
)
つて
頻
(
しき
)
りに
止
(
と
)
める。
028
二人
(
ふたり
)
は、
029
『お
前
(
まへ
)
、
030
神界
(
しんかい
)
とか
何
(
なん
)
とか
言
(
い
)
つたところで、
031
家庭
(
かてい
)
を
一体
(
いつたい
)
どうするのだ』
032
と
喧
(
やかま
)
しく
言
(
い
)
ひこめる。
033
その
時
(
とき
)
たちまち
老祖母
(
らうそぼ
)
の
衰弱
(
すゐじやく
)
した
姿
(
すがた
)
が
男
(
をとこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
変
(
かは
)
つてしまつた。
034
そして、
035
『
汝
(
なんぢ
)
は
神界
(
しんかい
)
の
命
(
めい
)
によつてするのであるから、
036
小
(
ちひ
)
さい
一身
(
いつしん
)
一家
(
いつか
)
の
事
(
こと
)
は
心頭
(
しんとう
)
にかくるな。
037
世界
(
せかい
)
を
此
(
こ
)
のままに
放
(
はう
)
つておけば、
038
混乱
(
こんらん
)
状態
(
じやうたい
)
となつて
全滅
(
ぜんめつ
)
するより
道
(
みち
)
はないから、
039
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
のために
謹
(
つつし
)
んで
神命
(
しんめい
)
を
拝受
(
はいじゆ
)
し、
040
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
れよ』
041
と
戒
(
いまし
)
められた。
042
すると
矢庭
(
やには
)
に「
松
(
まつ
)
」と「
正
(
まさ
)
」とが
自分
(
じぶん
)
の
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
を
奪
(
と
)
つて
丸裸
(
まるはだか
)
になし、
043
それから
鎮魂
(
ちんこん
)
の
玉
(
たま
)
をも
天然笛
(
てんねんぶえ
)
をも
引
(
ひつ
)
たくつて
池
(
いけ
)
の
中
(
なか
)
へ
投
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでしまつた。
044
そこへ「
幸
(
かう
)
」といふ
男
(
をとこ
)
が
出
(
で
)
てきて、
045
いきなり
自分
(
じぶん
)
が
裸
(
はだか
)
になり、
046
その
衣服
(
いふく
)
を
自分
(
じぶん
)
に
着
(
き
)
せてくれ、
047
天然笛
(
てんねんぶえ
)
も
鎮魂
(
ちんこん
)
の
玉
(
たま
)
も
池
(
いけ
)
の
中
(
なか
)
から
拾
(
ひろ
)
うて
私
(
わたし
)
に
渡
(
わた
)
してくれた。
048
自分
(
じぶん
)
は
一切
(
いつさい
)
の
執着
(
しふちやく
)
を
捨
(
す
)
てて、
049
神命
(
しんめい
)
のまにまに
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
んで、
050
知
(
し
)
らぬまに
元
(
もと
)
の
天
(
あめ
)
の
八衢
(
やちまた
)
へ
帰
(
かへ
)
つておつた。
051
これは
残念
(
ざんねん
)
なことをしたと
思
(
おも
)
つたが、
052
もと
来
(
き
)
た
道
(
みち
)
を
すう
と
通
(
とほ
)
つて、
053
扇形
(
あふぎがた
)
の
道
(
みち
)
を
通
(
とほ
)
りぬけ
白紙
(
はくし
)
の
所
(
ところ
)
へ
辿
(
たど
)
りついた。
054
その
時
(
とき
)
、
055
「
幸
(
かう
)
」が
白扇
(
はくせん
)
の
紙
(
かみ
)
の
半
(
なかば
)
ほどのところまで
裸
(
はだか
)
のまま
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
たが、
056
そこで
何処
(
どこ
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
消
(
け
)
してしまつた。
057
やはり
相変
(
あひかは
)
らず、
058
細
(
ほそ
)
い
悲
(
かな
)
しいイヤらしい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
059
その
時
(
とき
)
、
060
自分
(
じぶん
)
の
身体
(
からだ
)
は
電気
(
でんき
)
に
吸
(
す
)
ひつけられるやうに、
061
北方
(
きた
)
へ
北方
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
062
一方
(
いつぱう
)
には
大
(
おほ
)
きな
河
(
かは
)
が
流
(
なが
)
れてあり、
063
その
河辺
(
かはべり
)
には
面白
(
おもしろ
)
い
老松
(
らうしよう
)
が
並
(
なら
)
んでゐる。
064
左側
(
ひだりがは
)
には
絶壁
(
ぜつぺき
)
の
山
(
やま
)
が
屹立
(
きつりつ
)
して、
065
一方
(
いつぱう
)
は
河
(
かは
)
、
066
一方
(
いつぱう
)
は
山
(
やま
)
で、
067
其処
(
そこ
)
をどうしても
通
(
とほ
)
らねばならぬ
咽喉首
(
のどくび
)
である。
068
その
咽喉首
(
のどくび
)
の
所
(
ところ
)
へ
行
(
ゆ
)
くと、
069
地中
(
ちちゆう
)
から
頭
(
あたま
)
をヌツと
差出
(
さしだ
)
し、
070
つひには
全身
(
ぜんしん
)
を
顕
(
あら
)
はし、
071
狭
(
せま
)
い
道
(
みち
)
に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がつて、
072
進
(
すす
)
めなくさせる
男女
(
だんぢよ
)
のものがあつた。
073
そこで
鎮魂
(
ちんこん
)
の
姿勢
(
しせい
)
をとり
天然笛
(
てんねんぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
くと、
074
二人
(
ふたり
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
温順
(
おんじゆん
)
な
顔付
(
かほつき
)
にて、
075
女
(
をんな
)
は
自分
(
じぶん
)
に
一礼
(
いちれい
)
し、
076
『あなたは
予言者
(
よげんしや
)
のやうに
思
(
おも
)
ひますから、
077
私
(
わたくし
)
の
家
(
いへ
)
へお
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいまし。
078
色々
(
いろいろ
)
お
願
(
ねが
)
ひしたいことがございます』
079
と
言
(
い
)
つた。
080
その
時
(
とき
)
フト
小
(
ちひ
)
さな
家
(
いへ
)
が
眼前
(
がんぜん
)
にあらはれてきた。
081
その
夫婦
(
ふうふ
)
に
八頭
(
やつがしら
)
八尾
(
やつを
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
憑依
(
ひようい
)
してゐた。
082
夫婦
(
ふうふ
)
の
話
(
はなし
)
によれば、
083
『
大神
(
おほかみ
)
の
命
(
めい
)
により
神界
(
しんかい
)
旅行
(
りよかう
)
の
人
(
ひと
)
を
幾人
(
いくにん
)
も
捉
(
とら
)
へてみたが、
084
真
(
まこと
)
の
人
(
ひと
)
に
会
(
あ
)
はなかつたが、
085
はじめて
今日
(
こんにち
)
目的
(
もくてき
)
の
人
(
ひと
)
に
出会
(
であ
)
ひました。
086
実
(
じつ
)
は
私
(
わたくし
)
は、
087
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
にあつて
幽界
(
いうかい
)
を
知
(
し
)
ろしめす
大王
(
だいわう
)
の
肉身
(
にくしん
)
系統
(
けいとう
)
の
者
(
もの
)
です。
088
どうぞ
貴方
(
あなた
)
はこの
道
(
みち
)
を
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
取
(
と
)
つていつて
下
(
くだ
)
さい、
089
さうすれば
大王
(
だいわう
)
に
面会
(
めんくわい
)
ができます。
090
私
(
わたくし
)
が
言伝
(
ことづけ
)
をしたと
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
091
と
言
(
い
)
つて
頼
(
たの
)
む。
092
『
承知
(
しようち
)
した、
093
それなら
行
(
い
)
つて
来
(
こ
)
よう』
094
こう
言
(
い
)
つて
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
らうとする
時
(
とき
)
、
095
男女
(
だんぢよ
)
の
後
(
うしろ
)
に
角
(
つの
)
の
生
(
は
)
えた
恐
(
こわ
)
い
顔
(
かほ
)
をした
天狗
(
てんぐ
)
と、
096
白狐
(
びやくこ
)
の
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
になつたのが
眼
(
め
)
についた。
097
この
肉体
(
にくたい
)
としては
実
(
じつ
)
に
善
(
よ
)
い
人間
(
にんげん
)
で、
098
信仰
(
しんかう
)
の
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
だが、
099
その
背後
(
うしろ
)
には、
100
容易
(
ようい
)
ならぬ
物
(
もの
)
が
魅入
(
みい
)
つてゐることを
悟
(
さと
)
つた。
101
そのままにして
自分
(
じぶん
)
は
一直線
(
いつちよくせん
)
に
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
へ
進
(
すす
)
んで
行
(
い
)
つた。
102
トボトボと
暫
(
しばら
)
くのあひだ
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
みゆくと、
103
一
(
ひと
)
つの
木造
(
もくざう
)
の
大橋
(
おほはし
)
がある。
104
橋
(
はし
)
の
袂
(
たもと
)
へさしかかると
川
(
かは
)
の
向
(
むか
)
ふ
岸
(
ぎし
)
にあたり、
105
不思議
(
ふしぎ
)
な
人間
(
にんげん
)
の
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
や
狐
(
きつね
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えた。
106
自分
(
じぶん
)
はその
声
(
こゑ
)
をたどつて
道
(
みち
)
を
北
(
きた
)
へとつて
行
(
ゆ
)
くと、
107
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
が
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて、
108
穴
(
あな
)
にゐる
四匹
(
しひき
)
の
狐
(
きつね
)
を
叩
(
たた
)
き
殺
(
ころ
)
してゐた。
109
見
(
み
)
るみる
狐
(
きつね
)
は
殺
(
ころ
)
され、
110
同時
(
どうじ
)
にその
霊
(
れい
)
は
女
(
をんな
)
に
憑
(
つ
)
いてしまつた。
111
女
(
をんな
)
の
名
(
な
)
は「
民
(
たみ
)
」といふ。
112
女
(
をんな
)
は
狐
(
きつね
)
の
怨霊
(
おんりやう
)
のために
忽
(
たちま
)
ち
膨
(
ふく
)
れて
脹満
(
ちやうまん
)
のやうな
病体
(
びやうたい
)
になり、
113
俄然
(
がぜん
)
苦悶
(
くもん
)
しはじめた。
114
そこで
其
(
そ
)
の
膨
(
ふく
)
れた
女
(
をんな
)
にむかつて、
115
自分
(
じぶん
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
んで
鎮魂
(
ちんこん
)
をし、
116
神明
(
しんめい
)
に
祈
(
いの
)
つてやると、
117
その
体
(
たい
)
は
旧
(
もと
)
の
健康体
(
けんかうたい
)
に
復
(
ふく
)
し、
118
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
合掌
(
がつしやう
)
して
自分
(
じぶん
)
にむかつて
感謝
(
かんしや
)
する。
119
されど
彼
(
か
)
の
殺
(
ころ
)
された
四匹
(
しひき
)
の
狐
(
きつね
)
の
霊
(
れい
)
はなかなかに
承知
(
しようち
)
しない。
120
『
罪
(
つみ
)
なきものを
殺
(
ころ
)
されて、
121
これで
黙
(
だま
)
つてをられぬから、
122
あくまでも
仇討
(
あだうち
)
をせねばおかぬ』
123
と、
124
怨
(
うら
)
めしさうに
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
睨
(
にら
)
みつめてゐる。
125
狐
(
きつね
)
の
方
(
はう
)
ではその
肉体
(
にくたい
)
を
機関
(
きくわん
)
として、
126
四匹
(
しひき
)
ながら
這入
(
はい
)
つて
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けてゆきたいから、
127
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
願
(
ねが
)
つて
許
(
ゆる
)
していただきたいと
嘆願
(
たんぐわん
)
した。
128
自分
(
じぶん
)
はこの
場
(
ば
)
の
処置
(
しよち
)
に
惑
(
まど
)
うて、
129
天
(
てん
)
にむかひ
裁断
(
さいだん
)
を
仰
(
あふ
)
いだ。
130
すると
天
(
てん
)
の
一方
(
いつぱう
)
より
天使
(
てんし
)
が
顕
(
あら
)
はれ、
131
産土
(
うぶすな
)
の
神
(
かみ
)
も
顕
(
あら
)
はれたまひて、
132
『
是非
(
ぜひ
)
なし』
133
と
一言
(
いちごん
)
洩
(
も
)
らされた。
134
氏子
(
うぢこ
)
であるとは
言
(
い
)
ひながら、
135
罪
(
つみ
)
なきものを
打
(
う
)
ち
殺
(
ころ
)
したこの
女
(
をんな
)
は、
136
畜生道
(
ちくしやうだう
)
へ
堕
(
お
)
ちて
狐
(
きつね
)
の
容器
(
いれもの
)
とならねばならなかつた。
137
病気
(
びやうき
)
は
治
(
なほ
)
つたが、
138
極熱
(
ごくねつ
)
と
極寒
(
ごくかん
)
との
苦
(
くる
)
しみを
受
(
う
)
け、
139
数年後
(
すうねんご
)
に
国替
(
くにがへ
)
した。
140
現界
(
げんかい
)
で
言
(
い
)
へば
稲荷下
(
いなりさげ
)
のやうなことをやつたのである。
141
やや
西南方
(
せいなんぱう
)
にあたつてまた
非常
(
ひじやう
)
な
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えてきた。
142
すぐさま
自分
(
じぶん
)
は
声
(
こゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
行
(
い
)
つてみると、
143
盲目
(
めくら
)
の
親爺
(
おやぢ
)
に
狸
(
たぬき
)
が
憑依
(
ひようい
)
し、
144
また
沢山
(
たくさん
)
の
怨霊
(
おんりやう
)
が
彼
(
かれ
)
をとりまいて、
145
眼
(
め
)
を
痛
(
いた
)
めたり、
146
空中
(
くうちゆう
)
へ
身体
(
しんたい
)
を
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げたり、
147
さんざんに
親爺
(
おやぢ
)
を
虐
(
いぢ
)
めてゐる。
148
見
(
み
)
ると
親爺
(
おやぢ
)
の
肩
(
かた
)
の
下
(
した
)
のところに
棒
(
ぼう
)
のやうなものがあつて、
149
それに
綱
(
つな
)
がかかつてをり、
150
柱
(
はしら
)
の
真
(
しん
)
に
取付
(
とりつ
)
けられた
太綱
(
ふとづな
)
を
寄
(
よ
)
つてたかつて、
151
弛
(
ゆる
)
めたり
引
(
ひ
)
きしめたりしてゐるが、
152
落下
(
らくか
)
する
時
(
とき
)
は
川
(
かは
)
の
淵
(
ふち
)
までつけられ、
153
つり
上
(
あ
)
げられる
時
(
とき
)
は、
154
太陽
(
たいやう
)
の
極熱
(
ごくねつ
)
にあてられる。
155
そして
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げられたり、
156
曳
(
ひ
)
き
下
(
おろ
)
されたりする
上下
(
じやうげ
)
の
速
(
はや
)
さ。
157
この
親爺
(
おやぢ
)
は「
横
(
よこ
)
」といふ
男
(
をとこ
)
である。
158
なぜにこんな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ふのかと
理由
(
りいう
)
を
聞
(
き
)
けば、
159
この
男
(
をとこ
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
強欲
(
がうよく
)
で、
160
他人
(
ひと
)
に
金
(
かね
)
を
貸
(
か
)
しては
家
(
いへ
)
屋敷
(
やしき
)
を
抵当
(
ていたう
)
にとり、
161
ほとんど
何十軒
(
なんじつけん
)
とも
知
(
し
)
れぬほど、
162
その
手
(
て
)
でやつては
財産
(
ざいさん
)
を
作
(
つく
)
つてきた。
163
そのために
井戸
(
ゐど
)
にはまつたり、
164
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
つたり、
165
親子
(
おやこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
が
離散
(
りさん
)
したりした
者
(
もの
)
さへ
沢山
(
たくさん
)
にある。
166
その
霊
(
れい
)
がことごとく
怨念
(
おんねん
)
のために
畜生道
(
ちくしやうだう
)
へ
堕
(
お
)
ち
入
(
い
)
り、
167
狐
(
きつね
)
や
狸
(
たぬき
)
の
仲間
(
なかま
)
入
(
い
)
りをしてゐるのであつた。
168
そのすべての
生霊
(
いきりやう
)
や
亡霊
(
ぼうれい
)
が、
169
身体
(
からだ
)
の
中
(
なか
)
からも、
170
外
(
そと
)
からも、
171
攻
(
せ
)
めて
攻
(
せ
)
めて
攻
(
せ
)
めぬいて
命
(
いのち
)
をとりにきてゐるのである。
172
何
(
なに
)
ゆゑ
神界
(
しんかい
)
へ
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
において、
173
地獄道
(
ぢごくだう
)
のやうなことをしてゐるのを
神
(
かみ
)
がお
許
(
ゆる
)
しになつてゐるかと
問
(
と
)
へば、
174
天使
(
てんし
)
の
説明
(
せつめい
)
には、
175
『
懲戒
(
みせしめ
)
のために
神
(
かみ
)
が
許
(
ゆる
)
してある。
176
その
長
(
なが
)
い
太
(
ふと
)
い
綱
(
つな
)
は
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
つた
者
(
もの
)
の
綱
(
つな
)
が
凝固
(
かたま
)
つたのである。
177
毒
(
どく
)
を
嚥
(
の
)
んで
死
(
し
)
んだ
人
(
ひと
)
があるから、
178
毒
(
どく
)
が
身
(
み
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
はい
)
つてゐる。
179
川
(
かは
)
へはまつた
者
(
もの
)
があるから
川
(
かは
)
へ
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
まれる。
180
これが
済
(
す
)
めば
畜生道
(
ちくしやうだう
)
へ
墜
(
お
)
ちて
苦
(
くる
)
しみを
受
(
う
)
けるのである』
181
と。
182
あまり
可愛相
(
かあいさう
)
であるから
私
(
わたし
)
は
天照
(
あまてらす
)
大御神
(
おほみかみ
)
へお
願
(
ねが
)
ひして「
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
」と
唱
(
とな
)
へ
天然笛
(
てんねんぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
くと、
183
その
苦
(
くる
)
しみは
忽
(
たちま
)
ち
止
(
や
)
んでしまつた。
184
そして
狐狸
(
こり
)
に
化
(
くわ
)
してゐる
霊
(
れい
)
は
嬉々
(
きき
)
として
解脱
(
げだつ
)
した。
185
その
顔
(
かほ
)
には
桜色
(
さくらいろ
)
を
呈
(
てい
)
してきたものもある。
186
これらの
霊
(
れい
)
はすべて
老若
(
らうにやく
)
男女
(
だんぢよ
)
の
人間
(
にんげん
)
に
一変
(
いつぺん
)
した。
187
すると
産土
(
うぶすな
)
の
神
(
かみ
)
が
現
(
あら
)
はれて
喜
(
よろこ
)
び
感謝
(
かんしや
)
された。
188
自分
(
じぶん
)
もこれは
善
(
よ
)
い
修業
(
しうげふ
)
をしたと
神界
(
しんかい
)
へ
感謝
(
かんしや
)
し、
189
そこを
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
つた。
190
が、
191
「
横
(
よこ
)
」といふ
男
(
をとこ
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
ほど
経
(
へ
)
て
現界
(
げんかい
)
を
去
(
さ
)
つた。
192
それからまた
真西
(
まにし
)
にあたつて
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
がおこる。
193
猿
(
さる
)
を
責
(
せ
)
めるやうな
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
がする。
194
その
声
(
こゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねてゆくと、
195
本当
(
ほんたう
)
の
狐
(
きつね
)
が
数十匹
(
すうじつひき
)
集
(
あつ
)
まり、
196
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
を
中
(
なか
)
において
木
(
き
)
にくくりつけ、
197
「キヤツ、
198
キヤツ」と
言
(
い
)
はして
苦
(
くる
)
しめてゐる。
199
その
男
(
をとこ
)
の
手足
(
てあし
)
はもぎとられ、
200
骨
(
ほね
)
は
一本
(
いつぽん
)
々々
(
いつぽん
)
砕
(
くだ
)
かれ、
201
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
にやられてゐるのに
現体
(
げんたい
)
が
残
(
のこ
)
つたままそこに
立
(
た
)
つてゐる。
202
自分
(
じぶん
)
はこれを
救
(
すく
)
ふべく、
203
神名
(
しんめい
)
を
奉唱
(
ほうしやう
)
し
型
(
かた
)
のごとく
鎮魂
(
ちんこん
)
の
姿勢
(
しせい
)
をとるや
否
(
いな
)
や、
204
すべての
狐
(
きつね
)
は
平伏
(
へいふく
)
してしまつた。
205
何故
(
なぜ
)
そんな
事
(
こと
)
をするのかと
尋
(
たづ
)
ぬれば、
206
中
(
なか
)
でも
年老
(
としと
)
つた
狐
(
きつね
)
がすすみでて、
207
『この
男
(
をとこ
)
は
山猟
(
やまれふ
)
が
飯
(
めし
)
よりもすきで、
208
狐穽
(
きつねおとし
)
を
作
(
つく
)
つたり、
209
係蹄
(
わな
)
をこしらへたりして
楽
(
たのし
)
んでゐる
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
です。
210
それがために
吾々
(
われわれ
)
一族
(
いちぞく
)
のものは
皆
(
みな
)
命
(
いのち
)
をとられた。
211
生命
(
いのち
)
をとられるとは
知
(
し
)
りつつも、
212
油揚
(
あぶらあ
)
げなどの
好
(
す
)
きな
物
(
もの
)
があれば
つい
かかつて、
213
ここにゐるこれだけの
狐
(
もの
)
はことごとく
命
(
いのち
)
をとられました。
214
それでこの
男
(
をとこ
)
の
幽体
(
いうたい
)
現体
(
げんたい
)
共
(
とも
)
に
亡
(
ほろ
)
ぼして、
215
幽界
(
いうかい
)
で
十分
(
じふぷん
)
に
復讐
(
ふくしう
)
したい
考
(
かんが
)
へである』
216
といふ。
217
そこで
私
(
わたし
)
は、
218
『
命
(
いのち
)
をとられるのは
自分
(
じぶん
)
も
悪
(
わる
)
いからである。
219
それよりはいつそ
各自
(
めいめい
)
改心
(
かいしん
)
して
人界
(
じんかい
)
へ
生
(
うま
)
れたらどうだ』
220
と
言
(
い
)
へば、
221
『
人界
(
じんかい
)
へ
生
(
うま
)
れられますか』
222
と
尋
(
たづ
)
ねる。
223
自分
(
じぶん
)
は、
224
『
生
(
うま
)
れられるのだ』
225
と
答
(
こた
)
ふれば、
226
『
自分
(
じぶん
)
らはこんな
四
(
よ
)
ツ
足
(
あし
)
だから
駄目
(
だめ
)
だ』
227
といふ
絶望
(
ぜつぼう
)
の
意
(
い
)
を
表情
(
へうじやう
)
で
現
(
あら
)
はしたが、
228
自分
(
じぶん
)
は、
229
『
汝
(
なんぢ
)
らに
代
(
かは
)
つて
天地
(
てんち
)
へお
詫
(
わび
)
をしてやらう』
230
と
神々
(
かみがみ
)
へお
詫
(
わび
)
をするや
否
(
いな
)
や、
231
「
中
(
なか
)
」といふ
男
(
をとこ
)
の
幽体
(
いうたい
)
は
見
(
み
)
るまに
肉
(
にく
)
もつき
骨
(
ほね
)
も
完全
(
くわんぜん
)
になつて
旧
(
もと
)
の
身体
(
からだ
)
に
復
(
かへ
)
り、
232
いろいろの
狐
(
きつね
)
はたちまち
男
(
をとこ
)
や
女
(
をんな
)
の
人間
(
にんげん
)
の
姿
(
すがた
)
になつた。
233
その
時
(
とき
)
の
数十
(
すうじふ
)
の
狐
(
きつね
)
の
霊
(
れい
)
は、
234
一部分
(
いちぶぶん
)
今日
(
こんにち
)
でも
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
をしてゐるものもあり、
235
途中
(
とちゆう
)
で
逃
(
に
)
げたものもある。
236
中
(
なか
)
には
再
(
ふたた
)
び
畜生道
(
ちくしやうだう
)
へ
堕
(
お
)
ちたものもある。
237
(
大正一〇・一〇・一九
旧九・一九
桜井重雄
録)
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【第16章 神界旅行|第1巻|霊主体従|霊界物語|/rm0116】
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