大国常立尊は地の世界最高の山頂に登って四方を見渡せば、日月星辰は顕現し、地に山川草木は発生してたとは言え、樹草の類はまだか弱い柔らかいものであった。そこで息吹を放つと、十二の神々が御出現した。
十二の神々の起こした風で樹木は吹き倒されたので、大国常立尊はご自身の骨を粉々に噛み砕き、四方に散布された。その骨の粉末を吸収して、動物には骨が出来、植物は特有の形を取ることになった。また、岩石鉱物が発生した。これが岩の神である。
依然として太陽は強烈な光熱を放射し、月が地上の水を吸収し続けているので、大国常立尊はもろもろの竜神に命じて、海水を持ってこさせた。国祖が海水を天に息吹くと、雲が起こり雨が降り始めた。この竜神たちを雨の神と名づけられた。
国祖は、雨を調節するために太陽の熱を吸って放射した。この熱から火竜神が生まれた。
ここまで書いた天地造成には、数十億年の歳月を要しているのである。
国祖は人類を始め動物、植物をおつくりになられた。人間には日の大神と月の大神の霊魂を付与し、肉体は国常立尊の主宰とした。そして、神のご意思を実行する機関とされた。これが人生の目的である。神示に『神は万物普遍の霊にして人は天地経綸の大司宰なり』とあるのも、この理によっているのである。
地の一方では、天地間にかすのように残っていた邪気が凝って、悪竜、悪蛇、悪狐、邪鬼、妖魅となって人間に憑依し、邪霊の世界を作ることを企て始めた。大国常立大神は憤りから深い吐息を吐き給い、八種の雷神や荒れの神が生まれた。
荒れの神、地震の神が発動するのは、人類への警告である。
大国常立尊が天地を修理固成してからほとんど十万年の期間は、区画された国家もなかった。しかし世がだんだんと悪化して、大神のご神慮にかなわぬことが始まった。そこで大神は再び地上の修理固成を企画し、大声を発して地団駄を踏んだ。これにより現今のアフリカ、南北アメリカの大陸が出現した。また、太平洋ができ、そこに竜形の島が現れた。
日本の国土は大国常立尊の竜体の形そのものである。もと黄金の柱が立っていた場所にあり、柱が東北から西南に倒れた場所である。そこで、自転倒嶋(おのころじま)と言う。
この嶋が四方を海に囲まれているのは、神々のお休みどころとするためであり、日本の土地全体は、大神の御肉体である。
それから大神は、太陽と太陰から陽気と陰気を吸い込んで、息吹の狭霧を吐き出した。この狭霧から、稚姫君命が現れた。
この再度の修理固成により、地上の生き物はほとんど絶滅した。そこで大神は、再び神々と人間を生む必要を感じ、稚姫君命は天稚彦という夫神をもって、三男五女の神を生みたもうた。
再度の修理固成を行うに至ったのは、天が乱れると地が乱れ、地が乱れると天が乱れることで、その乱れが互いに現れて来るからである。