霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三〇章 真帆(まほ)片帆(かたほ)〔二三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻 篇:第5篇 宇宙精神 よみ(新仮名遣い):うちゅうせいしん
章:第30章 真帆片帆 よみ(新仮名遣い):まほかたほ 通し章番号:230
口述日:1922(大正11)年01月11日(旧12月14日) 口述場所: 筆録者:井上留五郎 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年4月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
暗澹とした天地の光景は一変し、穏やかな日となった。地中海の渡船場にひとりの異様な旅姿の宣伝使があらわれ、乗船を迫った。
船戸神は宣伝使を差し招き、一点の雲もない空の下、穏やかな海面を船は出港した。風のない海面で船は遅々として進まずに漂っていた。神人らは四方山話にふけって時を費やしていた。
連日の無聊に退屈した神人らは、ウラル教の宣伝歌を歌って騒ぎ始めた。これを聞いていた宣伝使は身を起こし、涼しい声を張り上げて天教山の宣伝歌を歌い、手をうち足を踏みとどろかして舞い狂った。
神人らはこの歌声につり出されてともに興に乗って踊り始めた。
この光景に苦々しい面構えをした巨大な神人が立ち上がった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:2063 OBC :rm0530
愛善世界社版:177頁 八幡書店版:第1輯 580頁 修補版: 校定版:179頁 普及版:77頁 初版: ページ備考:
001 さしも暗澹(あんたん)たりし天地(てんち)の光景(くわうけい)はここに一変(いつぺん)して、002空(そら)には燦然(さんぜん)たる天津(あまつ)日(ひ)の影(かげ)うららかに下界(げかい)を照(てら)し、003地(ち)は東風(とうふう)おもむろに吹(ふ)いて紺碧(こんぺき)の海面(かいめん)に漣(さざなみ)を立(た)て、004これに日光(につくわう)映射(えいしや)して波(なみ)のきらめく有様(ありさま)は、005あたかも鯛魚(たいぎよ)の鱗(うろこ)を敷(し)き詰(つ)めたるがごとき地中海(ちちうかい)の渡船場(とせんば)に、006息(いき)急(せ)き切(き)つて現(あら)はれた宣伝使(せんでんし)があつた。007今(いま)や船(ふね)は静(しづ)かな風(かぜ)に真帆(まほ)を打揚(うちあ)げ、008西南(せいなん)に向(むか)つて出帆(しゆつぱん)せむとする時(とき)である。
009 ここに現(あら)はれた宣伝使(せんでんし)は、010太(ふと)き竹(たけ)に教示(けうじ)を記(しる)したるを甲斐(かひ)々々(がひ)しく左肩(さけん)より右(みぎ)の腋下(わきした)に斜交(はすかひ)に背負(せお)ひながら、011紫(むらさき)の紐(ひも)もて乳房(ちぶさ)のあたりに確(しか)と結(むす)び、012片手(かたて)に杖(つゑ)をつきながら、013紫(むらさき)の被面布(ひめんぷ)を被(かぶ)り、014ときどき左(ひだり)の手(て)をもつてこの被面布(ひめんぷ)を額(ひたひ)のあたりまでめくり上(あ)げ、015右(みぎ)の手(て)にて鼻柱(はなばしら)をこぢあげ、016そのまま右(みぎ)の眼瞼(まぶた)より左(ひだり)の目尻(めじり)にかけてつるりと撫(な)で、017再(ふたた)び鼻(はな)の下(した)を手(て)の甲(かふ)にて擦(こす)り、018左(ひだり)の手(て)にて再(ふたた)び被面布(ひめんぷ)を顔(かほ)に覆(おほ)ひながら乗船(じやうせん)を迫(せま)つた。
019 あまたの船客(せんきやく)は、020この異様(いやう)の扮装(いでたち)に怪訝(けげん)の眼(め)を見張(みは)つた。021船戸(ふなどの)神(かみ)は快(こころよ)く右手(めて)を揚(あ)げてさしまねき、022早(はや)く乗(の)れよとの暗示(あんじ)を与(あた)へた。023宣伝使(せんでんし)はつかつかと乗場(のりば)に近(ちか)づき、024船(ふね)を目(め)がけて飛(と)び込(こ)んだ。025その響(ひびき)に船(ふね)は激動(げきどう)して、026畳(たたみ)のごとき海面(かいめん)に時(とき)ならぬ波(なみ)の皺(しわ)を描(ゑが)いた。027海辺(かいへん)の長(なが)き太(ふと)き樹(き)は海底(かいてい)に向(むか)つて倒(さかし)まにその影(かげ)を沈(しづ)め、028波(なみ)につれて竜(りう)の天(てん)に昇(のぼ)るがごとく、029樹木(じゆもく)の幹(みき)は左右(さいう)に蜿蜒(えんえん)として、030地上(ちじやう)目(め)がけて上(のぼ)り来(く)るのであつた。
031 空(そら)には一点(いつてん)の雲(くも)なくまた風(かぜ)もなき海面(かいめん)は、032あたかも玻璃鏡(はりきやう)を渡(わた)るがごとく、033帆(ほ)は痩(や)せ萎(しを)れ、034船脚(ふなあし)遅々(ちち)として進(すす)まず、035この海上(かいじやう)に漂(ただよ)ふこと数日(すうじつ)に及(およ)んだのである。036神人(かみがみ)らは四方山(よもやま)の無駄話(むだばなし)に時(とき)を費(つひや)し、037無聊(むれう)を慰(なぐさ)めつつあつた。
038 日(ひ)は西山(せいざん)に没(ぼつ)し、039海上(かいじやう)を飛(と)び交(か)ふ諸鳥(もろどり)は塒(ねぐら)を求(もと)めておのおの巣(す)に帰(かへ)り行(ゆ)く。040半弦(はんげん)の月(つき)は西天(せいてん)に懸(かか)り、041利鎌(とがま)のごとき光(ひかり)を海上(かいじやう)に投(な)げた。042空(そら)は一面(いちめん)に天書(てんしよ)の光(ひかり)梨地色(なしぢいろ)に輝(かがや)き、043月(つき)は天(あま)の河(かは)を流(なが)れて海(うみ)の涯(はて)に沈(しづ)むの感(かん)があつた。
044 海(うみ)の底(そこ)には一面(いちめん)の星光(せいくわう)輝(かがや)き、045天(てん)にも銀河(ぎんが)横(よこ)たはり、046海底(かいてい)にもまた燦爛(さんらん)たる銀河(ぎんが)流(なが)れ、047河(かは)二(ふた)つ月(つき)二(ふた)つ、048実(じつ)に蓮華(れんげ)の台(うてな)に身(み)を托(たく)したる如(ごと)き爽快(さうくわい)の念(ねん)に打(う)たれつつ、049静(しづ)かに船(ふね)は西南(せいなん)に向(むか)つて進(すす)んでゐる。
050 船(ふね)は渡(わた)る海底(かいてい)の空(そら)を、051棹(さを)は穿(うが)つ海底(かいてい)の星(ほし)を、052海月(くらげ)の幾十百(いくじふひやく)ともなく波(なみ)に漂(ただよ)ふ有様(ありさま)は、053俄(にはか)に天上(てんじやう)の月(つき)幾十(いくじふ)ともなく降(くだ)り来(きた)りて、054船(ふね)を支(ささ)へまもるの感(かん)じがしたのである。
055 昨日(きのふ)の惨澹(さんたん)たる天地(てんち)の光景(くわうけい)に引換(ひきか)へ、056今日(けふ)のこの静(しづ)けさは、057夕立(ゆふだち)の後(あと)の快晴(くわいせい)か、058嵐(あらし)の後(あと)の静(しづ)けさか、059天地(てんち)寂(せき)として声(こゑ)なく、060蚯蚓(みみず)のささやく声(こゑ)さへ耳(みみ)に通(かよ)ふやうであつた。
061 連日(れんじつ)の航海(かうかい)に船中(せんちう)の神人(かみがみ)は何(いづ)れも無聊(むれう)に苦(くる)しみ、062船(ふね)の四隅(よすみ)には、
063『アーアー』
064と大口(おほぐち)を開(あ)けて欠伸(あくび)をする神人(かみ)が現(あら)はれた。065何(いづ)れもこの欠伸(あくび)に感染(かんせん)して、066一斉(いつせい)に両手(りやうて)の拳(こぶし)を握(にぎ)り頭上(づじやう)高(たか)く延長(えんちやう)しながら、067大口(おほぐち)を開(あ)けて、
068『アーアー』
069と云(い)ひながら、070欠伸(あくび)を吾(われ)劣(おと)らずと始(はじ)めかけた。071一時(いつとき)ばかりはあたかも欠伸(あくび)の競争場(きやうそうば)のごとき感(かん)があつた。072最早(もはや)欠伸(あくび)の種(たね)も尽(つ)き、073船(ふね)の一隅(いちぐう)には辺(あた)りをはばかりてか、074小声(こごゑ)に鼻唄(はなうた)さへ謡(うた)ふ神人(かみ)が現(あら)はれた。075これに感染(かんせん)されてか、076またもや小声(こごゑ)に何事(なにごと)をか小唄(こうた)を謡(うた)ひ始(はじ)めた。077遂(つひ)には狎(な)れて大声(おほごゑ)をあげ、078遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく船中(せんちう)に立(た)ち上(あが)り、079両手(りやうて)を頬(ほほ)に当(あ)てながら、
080『飲(の)めよ騒(さわ)げーよ一寸先(いつすんさき)あー闇(やみ)ーよー
081闇(やみ)のーあとーにはー月(つき)がーでるー
082船(ふね)がー浮(う)くならー心(こころ)もー浮(う)かせー
083心(こころ)沈(しづ)めばー船(ふね)沈(しづ)むー
084さあさ浮(う)いたり浮(う)いたり浮(う)いたりなー
085浮(う)いたー浮世(うきよ)はどうなろとままよー
086儘(まま)にならぬが浮世(うきよ)と云(い)へどー
087わしはー時節(じせつ)で浮(う)いてーゐる
088時鳥(ほととぎす)声(こゑ)は聞(き)けどもー姿(すがた)は見(み)せぬ
089見(み)せぬ姿(すがた)は魔(ま)か鬼(おに)か
090若(もし)も鬼(おに)奴(め)が出(で)て来(き)たら
091手足(てあし)を縛(しば)りー角(つの)を折(を)り
092叩(たた)いて炙(あぶ)つて食(く)てしまへ
093たとへ牛(うし)虎(とら)狼(おおかみ)獅子(しし)も
094力(ちから)のーよわき山羊(やまひつじ)
095猿(さる)の千疋(せんびき)ー万疋(まんびき)もー
096掻(か)いて集(あつ)めて引(ひ)き縛(しば)り
097西(にし)の海(うみ)へとさらりとほかせ
098さらりとーほかせー
099よいよいーよいとさのーよいとさつさ』
100 神人(かみがみ)らは異口(いく)同音(どうおん)に声(こゑ)を合(あは)して、101節(ふし)面白(おもしろ)く手(て)を拍(う)つて謡(うた)ひ始(はじ)めた。
102 宣伝使(せんでんし)は黙然(もくねん)としてこの騒(さわ)ぎを心(こころ)なげに、103見(み)るともなしに眺(なが)めてゐた。104暫(しばら)くあつて神人(かみがみ)らは疲労(ひらう)を感(かん)じたと見(み)え、105さしも騒(さわ)がしかりし波(なみ)の上(うへ)も、106水(みづ)を打(う)つたる如(ごと)くたちまち静粛(せいしゆく)に帰(き)し、107風(かぜ)の音(おと)さへも聞(きこ)えぬ閑寂(かんじやく)の気(き)に打(う)たるるばかりになつた。
108 宣伝使(せんでんし)はやをら身(み)を起(おこ)し、109船中(せんちう)の小高(こだか)き所(ところ)に立(た)ち現(あら)はれ、110涼(すず)しき声(こゑ)を張(は)りあげて、
111『高(たか)い山(やま)からー谷底(たにそこ)見(み)れば
112憂(う)しや奈落(ならく)の泥(どろ)の海(うみ)
113三千(さんぜん)世界(せかい)一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)
114開(ひら)いて散(ち)りて実(み)を結(むす)ぶ
115月日(つきひ)と土(つち)の恩(おん)を知(し)れ
116この世(よ)を救(すく)ふ生神(いきがみ)は
117天教山(てんけうざん)に現(あら)はれる
118この世(よ)を教(をし)ふる生神(いきがみ)は
119地教(ちけう)の山(やま)にあらはれた
120朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
121月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
122たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むとも
123誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ
124誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ』
125と手(て)を拍(う)ち足踏(あしふ)み轟(とどろ)かし舞(ま)ひ狂(くる)ふ。
126 神人(かみがみ)らはこの声(こゑ)に釣(つ)り出(だ)さるる心地(ここち)して、127一斉(いつせい)に立(た)ち上(あが)り、128手(て)を拍(う)ち足踏(あしふ)み轟(とどろ)かし、129一心(いつしん)不乱(ふらん)に興(きよう)に乗(の)りて踊(をど)り狂(くる)ふ。
130 このとき船中(せんちう)の一隅(いちぐう)より、131苦々(にがにが)しき面構(つらがまへ)の巨大(きよだい)なる神人(しんじん)は、132すつくと立(た)ち上(あが)り、133宣伝使(せんでんし)をはつたと睨(ね)めつけた。134その光景(くわうけい)は、135あたかも閻羅王(えんらわう)の怒髪(どはつ)天(てん)を衝(つ)いて立(た)ち現(あら)はれたごとくであつた。136あゝこの神人(かみ)は何物(なにもの)ならむか。
137(大正一一・一・一一 旧大正一〇・一二・一四 井上留五郎録)
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