霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三七章 片輪(かたわ)(ぐるま)〔二三七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻 篇:第6篇 聖地の憧憬 よみ(新仮名遣い):せいちのどうけい
章:第37章 片輪車 よみ(新仮名遣い):かたわぐるま 通し章番号:237
口述日:1922(大正11)年01月12日(旧12月15日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年4月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
烈風ふきすさぶ埃及(エジプト)に現れた宣伝使一行はここに別れを告げ、月照彦神は東方を指して、祝部神一行はエルサレムを指して進んでいった。
風がおさまってからりと晴れた中、前方からやせ衰えた女人が車を引いて、北へと向かっているのに出くわした。車には、足がきかない様子の男子が乗っている。
祝部神はこの様を見て驚いた。女人は祝部神を見ると、袖にすがりつき、自分はモスコー八王の娘・春日姫であると明かした。そして、祝部神に、貴下は天山の八王・斎代彦ではないか、と問いかけた。
祝部神は黙って春日姫の口に手を当てた。春日姫はその意を悟り、そ知らぬふりで自分の思い違いであると宣し直した。祝部神は、自分はただ、素性の卑しい宣伝使であり、そのような尊き神人ではない、とだけ言った。
祝部神は車上の男子が鷹住別であると気づいて、驚いて声をかけた。鷹住別はたださめざめと涙を流すのみであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm0537
愛善世界社版:222頁 八幡書店版:第1輯 595頁 修補版: 校定版:225頁 普及版:95頁 初版: ページ備考:
001 烈風(れつぷう)吹荒(ふきすさ)埃及(エヂプト)()(あら)はれたる宣伝使(せんでんし)一行(いつかう)は、002ここに東西(とうざい)(たもと)(わか)つた。003月照彦(つきてるひこの)(かみ)東方(とうはう)()して膝栗毛(ひざくりげ)(おと)(たか)く、004(かぜ)(さか)らひつつ長髪(ちやうはつ)()(みだ)し、005つひに樹木(じゆもく)(かげ)姿(すがた)(ぼつ)した。006祝部(はふりべの)(かみ)杉高彦(すぎたかひこ)007祝彦(はふりひこ)をともなひ、008ヱルサレムをさして宣伝歌(せんでんか)をうたひつつ(みち)(いそ)いだ。
009 さしもの烈風(れつぷう)強雨(がうう)もカラリと()れて、010(くさ)そよぎ(とま)つた。011(はるか)前方(ぜんぱう)より尾羽(をば)うち()らし()(おとろ)へたる女人(によにん)一柱(ひとはしら)は、012(まつ)大木(たいぼく)輪切(わぎり)にしたる(くるま)()きつつ北方(ほつぱう)(むか)つて(すす)()たる。013よくよく()れば(くるま)(うへ)には(あし)なへ()えて一柱(ひとはしら)男子(をのこ)()つて()る。014ちようど箱根山(はこねやま)いざり勝五郎(かつごらう)(くるま)()せて初花(はつはな)()いて()るやうな光景(くわうけい)その(まま)であつた。
015 女人(によにん)(ほそ)(こゑ)(しぼ)りながら、016何事(なにごと)(うた)ひつつ(おも)たげに(くるま)徐々(しづしづ)()いて()る。
017(あめ)()()(かぜ)()
018顕恩郷(けんおんきやう)()でてより
019水瀬(みなせ)(はげ)しきエデン(がは)
020夫婦(ふうふ)()()()(かは)
021(わた)るこの()浮瀬(うきせ)をば
022()きつ(しづ)みつ南岸(なんがん)
023()くや()もなく橙園郷(とうゑんきやう)
024(ましら)()たる人々(ひとびと)
025手負(てお)ひの()をば()はれつつ
026深山(みやま)(おく)()()りて
027(ほし)をいただき(つき)()
028(ましら)千声(ちごゑ)百声(ももごゑ)
029(こころ)(いた)(むね)くだき
030やつと(のが)れた(おに)(くち)
031大蛇(をろち)棲処(すみか)(あと)にして
032(てん)(めぐ)みか()(おん)
033(くら)きわが()白雲(しらくも)
034他所(よそ)()()(あは)れなる
035夫婦(ふうふ)(もの)山奥(やまおく)
036(うゑ)(さむ)さに(たたか)ひつ
037昨日(きのふ)栄華(えいぐわ)引換(ひきか)へて
038今日(けふ)朽木(くちき)()れの(はて)
039(すす)むも()らず退(しりぞ)くも
040()らぬ深山(みやま)(たに)(ふか)
041()()くわが()果敢(はか)なみて
042(なみだ)(そで)(しぼ)りつつ
043夫婦(ふうふ)(たがひ)(いだ)()
044()いて()かせし(やみ)()
045(くさ)(まくら)幾度(いくたび)
046(いし)(つまづ)足破(あしやぶ)
047(やぶ)(かぶ)れの二人(ふたり)()
048(をつと)(やまひ)()(よる)
049(いた)(くる)しみ()(がた)
050(おも)ひに(しづ)春日姫(かすがひめ)
051(おも)へば(むかし)モスコーの
052八王神(やつわうじん)最愛(さいあい)
053(むすめ)(うま)れし()冥加(みやうが)
054(やま)より(たか)八千尋(やちひろ)
055(うみ)より(ふか)父母(ふぼ)(おん)
056(おや)(わす)れて常世(とこよ)()
057恋路(こひぢ)(やみ)(まよ)ひつつ
058鷹住別(たかすみわけ)(あと)()
059艱難(かんなん)辛苦(しんく)()(はて)
060常世(とこよ)(くに)八王神(やつわうじん)
061常世(とこよ)(ひこ)常世姫(とこよひめ)
062夫婦(ふうふ)(かみ)(いつくし)
063()()(わた)幾年(いくとせ)
064常世(とこよ)(やみ)にさまよひし
065その天罰(てんばつ)()のあたり
066一度(いちど)(かみ)御恵(みめぐ)みに
067顕恩郷(けんおんきやう)(すく)はれて
068南天王(なんてんわう)(つま)となり
069諸神人(しよしん)崇敬(すうけい)一身(いつしん)
070(あつ)めて栄華(えいぐわ)(ほこ)りたる
071(つき)(ゆき)(はな)夫婦(ふうふ)()
072天地(てんち)(みち)()(はづ)
073(よこ)さの(みち)(まよ)ひたる
074その()(はて)(おそ)ろしや
075(あゆ)みもならぬ(あし)なへ
076(をつと)()をば(たす)けむと
077因果(いんぐわ)(めぐ)小車(をぐるま)
078めぐり(ぐるま)埃及(エヂプト)
079はげしく野分(のわけ)(たたか)ひつ
080(あき)()()木枯(こがらし)
081()()くわが()(あさ)ましさ
082(しも)(つるぎ)幾度(いくたび)
083かよわき身魂(みたま)()けながら
084しのぎしのぎて(いま)ここに
085()くは()けども()きざるは
086わが()因果(いんぐわ)過去(くわこ)(つみ)
087()(かさ)ねたる罪悪(ざいあく)
088(おも)荷物(にもつ)何時(いつ)()
089科戸(しなど)(かぜ)(はら)はめや
090つらつら(そら)をながむれば
091月日(つきひ)(むかし)のそのままに
092天津(あまつ)御空(みそら)(かがや)きて
093四方(よも)木草(きぐさ)()らせども
094()らぬはわが()不仕合(ふしあは)
095(もと)古巣(ふるす)(かへ)らむと
096(こころ)千々(ちぢ)(くだ)けども
097いとしき(つま)のこの(やまひ)
098たとへ()(かみ)西天(せいてん)
099(のぼ)りますとも竜宮(りうぐう)
100(うみ)(そこ)ひは(かわ)くとも
101行末(ゆくすゑ)ながく(ちか)ひてし
102(こひ)しき夫神(ふしん)()てらりよか
103()きて甲斐(かひ)なきわが生命(いのち)
104いのちの瀬戸(せと)荒海(あらうみ)
105()()島田(しまだ)()りかかる
106わが()(すゑ)(おそ)ろしき
107あゝ天地(あめつち)()(すく)
108(かみ)はまさずや(おは)さずや
109あゝ天地(あめつち)()(すく)
110(かみ)はまさずや(おは)さずや』
111(あは)れげに(うた)ひつつ、112こなたに(むか)つて(すす)みくる。
113 祝部(はふりべの)(かみ)はこの女性(ぢよせい)姿(すがた)()て、114()けむばかりに(おどろ)いた。115祝部(はふりべの)(かみ)はものをも()はず、116この(やつ)れたる女性(によしやう)面影(おもかげ)をつくづくながめ、117(くび)(かたむ)何事(なにごと)思案(しあん)()るるものの(ごと)くであつた。118女人(によにん)()()ねたやうに祝部(はふりべの)(かみ)(そで)(すが)りつき、119(ほほ)やつれたる(かほ)(はら)(ほぞ)(あた)りにぴつたり()けながら(なみだ)(たき)のごとく(なが)し、120(しやく)()きさへ(きこ)ゆる。
121 祝部(はふりべの)(かみ)痛々(いたいた)しき面色(おももち)にて、122女人(によにん)(せな)幾度(いくたび)となく()(さす)つた。123女人(によにん)(やうや)(かほ)()げ、
124(はづ)かしき(いま)のわが()のありさま、125(おも)はぬ(ところ)にて()()にかかり、126(まを)()ぐる言葉(ことば)もなし。127(わらは)貴下(きか)()らるるごとく常世城(とこよじやう)(つか)へ、128常世(とこよ)会議(くわいぎ)席上(せきじやう)にて八島姫(やしまひめ)(とも)に、129(つき)(ゆき)(はな)(うた)はれしモスコーの八王(やつわう)道貫彦(みちつらひこ)長女(ちやうぢよ)春日姫(かすがひめ)にて(さふらふ)130貴下(きか)(わす)れもせぬ天山(てんざん)八王(やつわう)斎代彦(ときよひこ)にましまさずや』
131()ひかけた。
132 漂浪神(さすらひがみ)四辺(あたり)(はばか)りながら、133春日姫(かすがひめ)(くち)()をあてた。134春日姫(かすがひめ)はその()(さと)り、
135『これは失礼(しつれい)なことを(まを)()げました。136(わらは)(なが)(たび)(つか)れに精神(せいしん)(おとろ)(まなこ)くらみ、137(おも)はぬ粗忽(そこつ)無礼(ぶれい)(だん)(ゆる)されたし』
138素知(そし)らぬ(てい)(よそほ)うた。139祝部(はふりべの)(かみ)(あらた)めて、
140(いづ)れの女人(によにん)()らねども、141貴下(きか)()様子(やうす)()れば、142凡人(ただびと)ならぬ神人(しんじん)()(たね)見受(みう)(たてまつ)る。143(われ)天教山(てんけうざん)にまします木花姫(このはなひめの)(みこと)(めい)()り、144世界(せかい)立替(たてか)立直(たてなほ)しに先立(さきだ)ち、145地上(ちじやう)神人(しんじん)(むか)つて、146(あまね)(すく)ひの福音(ふくいん)宣伝(せんでん)する枝神(えだがみ)なり。147貴下(きか)()はるる(ごと)(たふと)素性(すじやう)(もの)(あら)ず』
148と、149(わざ)ととぼけ(がほ)をする。150祝部(はふりべの)(かみ)車上(しやじやう)神人(しんじん)()て、
151『やあ、152貴下(きか)は』
153頓狂(とんきやう)(こゑ)()りあげ、
154(なに)ゆゑ(くるま)()さるるや、155合点(がてん)ゆかぬ』
156()(まる)くし(くち)(とが)らせ、157(はな)をこすりながら()ひかけた。
158 車上(しやじやう)男子(をのこ)は、159さめざめと(なみだ)(ただよ)はし、160両手(りやうて)をもつて()(おほ)(かしら)()れた。
161 アヽこの結果(けつくわ)如何(いか)になるであらうか。
162大正一一・一・一二 旧大正一〇・一二・一五 外山豊二録)
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