霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三二章 波瀾(はらん)重畳(ちようでふ)〔二三二〕

インフォメーション
著者: 巻: 篇: よみ(新仮名遣い):
章: よみ(新仮名遣い): 通し章番号:
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: 文字数: OBC :rm0532
愛善世界社版: 八幡書店版: 修補版: 校定版: 普及版: 初版: ページ備考:
001 神人(かみがみ)らは強(つよ)き酒(さけ)にへべれけに酔(よ)ひつぶれ、002ほとんど船中(せんちう)の客(きやく)たる事(こと)を忘(わす)るる位(くらゐ)であつた。003このとき祝部(はふりべの)神(かみ)の「三千(さんぜん)世界(せかい)云々(うんぬん)」の歌(うた)に神人(しんじん)らは何(なに)ゆゑか、004頭(あたま)を鉄槌(てつつゐ)にて打(う)ち砕(くだ)かれ、005胸(むね)は引(ひ)き裂(さ)かるるがごとき苦痛(くつう)に襲(おそ)はれた。
006 夜(よ)は深々(しんしん)と更(ふ)け渡(わた)り、007万物(ばんぶつ)寂(せき)として声(こゑ)なき丑満(うしみつ)頃(ごろ)となつた。008聞(きこ)ゆるものはただ神人(かみがみ)らの酒(さけ)に酔(よ)ひ潰(つぶ)れて呻(うめ)く苦悶(くもん)の声(こゑ)のみである。009折(をり)しも東北(とうほく)の空(そら)に当(あた)つて一団(いちだん)の黒雲(こくうん)が現(あら)はるるよと見(み)る間(ま)に、010前後(ぜんご)左右(さいう)に電光(でんくわう)石火(せきくわ)の速力(そくりよく)をもつて押(お)し拡(ひろ)がり、011満天(まんてん)墨(すみ)を流(なが)したるがごとく、012海上(かいじやう)また咫尺(しせき)を弁(べん)ぜざるに至(いた)つた。013忽(たちま)ち颶風(ぐふう)吹(ふ)き起(おこ)り、014さしも平和(へいわ)の海面(かいめん)は、015ここに虎嘯(とらうそぶ)き竜(りう)躍(をど)り、016海馬(かいば)は白(しろ)き浪(なみ)の鬣(たてがみ)を振(ふる)うて船体(せんたい)に噛(か)みつき始(はじ)めた。017船(ふね)は木葉(このは)のごとく中天(ちうてん)に捲(ま)き上(あ)げらるるやと見(み)る間(ま)に、018又(また)もや浪(なみ)と浪(なみ)との千仭(せんじん)の谷間(たにま)に突(つ)き落(おと)され、019檣(ほばしら)折(を)れ、020舵(かぢ)はむしられ、021艫(ろ)は中心(ちうしん)より折(を)れて進退(しんたい)の自由(じいう)を失(うしな)ひ、022ただ風(かぜ)と浪(なみ)との翻弄(ほんろう)するに任(まか)すより外(ほか)は無(な)かつた。
023 神人(かみがみ)らは一度(いちど)に酔(よひ)も醒(さ)め、024顔(かほ)は真青(まつさを)となつて、025地獄(ぢごく)より火(ひ)を貰(もら)ひに来(き)た餓鬼(がき)の相好(さうがう)の其(その)侭(まま)となつて仕舞(しま)つた。026鼻(はな)つままれても分(わか)らぬ真暗(まつくら)な海上(かいじやう)に潮(しほ)を浴(あ)び、027全身(ぜんしん)濡(ぬ)れ鼠(ねずみ)となつて震(ふる)ひ戦(をのの)くその光景(くわうけい)は、028死線(しせん)を越(こ)えて処(どころ)の騒(さわ)ぎでは無(な)かつた。
029 忽(たちま)ち前方(ぜんぱう)に当(あた)つて一道(いちだう)の光明(くわうみやう)が赫灼(かくしやく)と放射(はうしや)するのを見(み)た。030これは高杉別(たかすぎわけ)の従者(じうしや)杉高(すぎたか)の瑠璃光(るりくわう)の玉(たま)の光(ひかり)であつた。031船戸(ふなどの)神(かみ)は船体(せんたい)をその光(ひかり)の方(はう)に向(む)けむとしたが、032舵(かぢ)は千切(ちぎ)られ、033艫(ろ)は折(を)れ、034檣(ほばしら)は挫(くじ)け、035帆(ほ)はむしられて如何(いかん)ともするよしなく、036ただ天(てん)を仰(あふ)ぎ救助(きうじよ)を乞(こ)ふのみであつた。037酒(さけ)のために空元気(からげんき)を装(よそほ)うてゐた数多(あまた)の神人(かみがみ)らは、038恐怖心(きようふしん)にかられ、039青菜(あをな)に塩(しほ)か、040蛭(ひる)に塩(しほ)、041しほしほとして辛(から)い目(め)に遇(あ)ふ事(こと)よと溜息(ためいき)を吐(つ)き、042中(なか)には卑怯(ひけふ)にも泣声(なきごゑ)をしぼる者(もの)さへ現(あら)はれた。043祝部(はふりべの)神(かみ)は此処(ここ)ぞと言(い)はぬばかり暗中(あんちう)声(こゑ)を励(はげ)まし、044荒(あ)れ狂(くる)ふ怒濤(どたう)の浪音(なみおと)を圧(あつ)するばかりの大音声(だいおんじやう)で、
045『三千(さんぜん)世界(せかい)一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)
046朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
047月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
048牛雲別(うしくもわけ)は浪(なみ)に浚(さら)はれ死(し)ぬるとも
049酒(さけ)を喰(く)らうた神々(かみがみ)は
050海(うみ)の藻屑(もくず)となるとても
051何(なん)と鳴戸(なると)や瀬戸(せと)の海(うみ)
052命(いのち)の瀬戸(せと)のいまはの際(きは)に
053神(かみ)の恵(めぐみ)も白波(しらなみ)の
054馬鹿者(ばかもの)どもよ
055命(いのち)惜(を)しくば天地(てんち)に詫(わ)びよ
056詫(わび)が叶(かな)へば許(ゆる)してやるぞ
057一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(いつ)六(むゆ)七(なな)八(や)九(ここの)十(たり)百(もも)千(ち)万(よろづ)
058万(よろづ)の罪咎(つみとが)さらりと海(うみ)に
059流(なが)してしまへ
060涙(なみだ)ばかりを流(なが)すぢやないぞ
061心(こころ)の垢(あか)も身(み)の罪(つみ)も
062流(なが)して泣(な)かせて腹(はら)の中(なか)
063泣(な)かぬ日(ひ)はなき時鳥(ほととぎす)
064八千八(はつせんや)声(こゑ)の血(ち)を吐(は)いて
065へどまで吐(は)いて今(いま)のざま
066苦(くる)しいときの神頼(かみだの)み
067それでも頼(たの)まにや助(たす)からぬ
068よいとさ、よいとさ
069暗(やみ)に鉄砲(てつぽう)数打(かずう)ちやあたる
070何(なん)でも構(かま)はぬ神(かみ)様(さま)祈(いの)れ
071よいとさのよいとさ
072生(い)きるか死(し)ぬかの瀬戸際(せとぎは)ぞ
073一(ひと)つの命(いのち)を瀬戸(せと)の海(うみ)
074一(ひと)つの島(しま)なる一(ひと)つ松(まつ)
075一(ひと)つの玉(たま)の御光(みひかり)に
076心(こころ)を照(てら)して改(あらた)めよ
077荒浪(あらなみ)如何(いか)に高(たか)くとも
078荒風(あらかぜ)如何(いか)に強(つよ)くとも
079現(あら)はれ出(い)でたる神島(かみじま)の
080神(かみ)の光(ひかり)に村肝(むらきも)の
081心(こころ)の空(そら)も凪(な)ぎわたり
082浪路(なみぢ)も凪(な)ぎて珍(うづ)の島(しま)
083よいさよいとさ
084宵(よひ)から喰(くら)うた酒(さけ)の酔(よひ)
085一度(いちど)に醒(さ)ませよ心(こころ)の迷(まよ)ひ
086迷(まよ)ひの果(は)ては悟(さと)りの船(ふね)よ
087覚(さと)りは救(すく)ひの船(ふね)と知(し)れ』
088と止(と)め度(ど)もなく、089口(くち)から出(で)まかせに歌(うた)つた。090祝部(はふりべの)神(かみ)の容貌(ようばう)は暗夜(あんや)のため確(しか)と見(み)ることは出来(でき)なかつた。091されどその謡(うた)ひ振(ぶ)りによつて、092その相貌(さうばう)や手足(てあし)の振(ふ)り方(かた)など、093歴然(れきぜん)白昼(はくちう)を見(み)るが如(ごと)き感(かん)がした。094忽(たちま)ち船底(ふなそこ)がガラガラと音(おと)がした。095見(み)れば一(ひと)つの島(しま)にうち上(あ)げられてゐた。096あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
097(大正一一・一・一一 旧大正一〇・一二・一四 加藤明子録)
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