霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三九章 海辺(うみべ)の雑話(ざつわ)〔二三九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻 篇:第6篇 聖地の憧憬 よみ(新仮名遣い):せいちのどうけい
章:第39章 海辺の雑話 よみ(新仮名遣い):うみべのざつわ 通し章番号:239
口述日:1922(大正11)年01月13日(旧12月16日) 口述場所: 筆録者:井上留五郎 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年4月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
西に高山、東に万里の海を控えた浜辺に立って、怒涛のごとく荒れ狂う波を眺めながら、雑談にふける四五人の男たちがあった。
男たちは、宣伝使が最近あちこちに現れては、三千世界一度に開く梅の花、大地が沈むとも真の神は世を救う、という福音を宣伝していることについて、あれこれと品評をしていた。
そんなことがあるものか、といって互いにけなしあいながら、おかしな話をしていた。乙はウラル教の教えこそ天国の福音だ、と言う者もいた。
そこへはるか前方から三人の宣伝使が、予言の宣伝歌を歌いながらやってくると、ウラル教を賛美していた乙は、顔をしかめてしゃがみこんでしまった。暴風はますます激しくなり、一同は山へ逃げ込んでしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-04-04 11:56:38 文字数:2893 OBC :rm0539
愛善世界社版:234頁 八幡書店版:第1輯 600頁 修補版: 校定版:238頁 普及版:99頁 初版: ページ備考:
001 西(にし)に高山(かうざん)を控(ひか)へ東(ひがし)に縹渺(へうべう)たる万里(ばんり)の海(うみ)を控(ひか)へたる浜辺(はまべ)に立(た)ち、002山嶽(さんがく)のごとき怒濤(どたう)の荒(あ)れ狂(くる)ふ光景(くわうけい)を眺(なが)めて雑談(ざつだん)に耽(ふけ)る四五(しご)の男(をとこ)があつた。
003甲(かふ)『あゝ世(よ)の中(なか)は変(へん)になつて来(き)たではないか、004あの濤(なみ)を見(み)よ。005海(うみ)か山(やま)か判(わか)らぬではないか。006この間(あひだ)も宣伝使(せんでんし)とやらが遣(や)つてきて、007海(うみ)は変(へん)じて山(やま)となり、008山(やま)は変(へん)じて海(うみ)となると、009大声(おほごゑ)に叫(さけ)んで吾々(われわれ)の度胆(どぎも)を抜(ぬ)いた。010されど「馬鹿(ばか)いへ、011この深(ふか)い海(うみ)が山(やま)になつてたまるものか」と冷笑(れいせう)してゐた。012それにあの濤(なみ)は爺(ぢぢ)の代(だい)からまだ見(み)たこともない。013この間(あひだ)もタコマ山(やま)の半腹(はんぷく)まで海嘯(つなみ)が押(お)し寄(よ)せると云(い)つて、014宣伝使(せんでんし)が呶鳴(どな)つてゐたよ。015この辺(へん)も今(いま)に海嘯(つなみ)で浚(さら)はれるかも知(し)れない。016汝(おまへ)らも一(ひと)つ思案(しあん)して、017タコマ山(やま)の頂辺(てつぺん)か、018地教山(ちけうざん)へでも避難(ひなん)したらどうだらうね』
019と首(くび)を傾(かたむ)けて思案顔(しあんがほ)に言(い)つた。020乙(おつ)は冷笑(れいせう)を浮(うか)べながら、
021『なに、022ソンナ馬鹿(ばか)なことがあつてたまるかい。023この間(あひだ)の宣伝使(せんでんし)といふ奴(やつ)は、024ありや気違(きちが)ひだよ、025星(ほし)が降(ふ)るとか、026洪水(こうずゐ)が出(で)るとか、027人(ひと)が三分(さんぶ)になるとか、028訳(わけ)の判(わか)らぬ、029舁(か)いて走(はし)るやうな法螺(ほら)ばかり吹(ふ)きよつて、030吾々(われわれ)をびつくりさせて喜(よろこ)んで居(ゐ)るのよ。031この世(よ)に神(かみ)もなければ、032又(また)ソンナ大変動(だいへんどう)があつてたまるものぢやない、033万々一(まんまんいち)ソンナ事(こと)があれば世間並(せけんなみ)ぢやないか。034この世(よ)の神人(かみがみ)が全部(ぜんぶ)死(し)んで了(しま)つて、035僅(わづか)に二分(にぶ)や三分(さんぶ)残(のこ)つたつて淋(さび)しくて仕様(しやう)がない。036ソンナことを云(い)つてくれな、037それよりもこの前(まへ)に来(き)た宣伝使(せんでんし)のいふことあ気(き)が利(き)いて居(ゐ)たよ』
038丙(へい)『気(き)が利(き)いて居(ゐ)るつて、039ドンナことを云(い)つたのだい』
040乙(おつ)『ドンナ事(こと)をいつたつて、041そりや大変(たいへん)な結構(けつこう)なことだよ。042天来(てんらい)の福音(ふくいん)といつたら、043まあアンナことをいふのだらう』
044甲(かふ)『天来(てんらい)の福音(ふくいん)て何(なに)か、045「三千(さんぜん)世界(せかい)一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)」とか、046「たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むとも、047誠(まこと)の神(かみ)は世(よ)を救(すく)ふ」と云(い)ふことだらう』
048乙(おつ)[※ここから章末まで乙が九箇所、丙が一箇所あるが、校正本では乙と丙が入れ替わっているようだ。入れ替わっていると考えないと文脈がおかしくなる。校定版も愛世版も乙と丙を入れ替えている。霊界物語ネットも入れ替えた。]『馬鹿(ばか)いふない、049この天地(てんち)は自然(しぜん)に出来(でき)たのだ。050雨(あめ)が降(ふ)るのも風(かぜ)が吹(ふ)くのも浪(なみ)が高(たか)くなるのも海嘯(つなみ)も、051みな時節(じせつ)だよ。052この世(よ)は浮世(うきよ)といつて水(みづ)の上(うへ)に浮(う)いてゐるのだ。053ソンナけち臭(くさ)い恐怖心(きようふしん)を起(おこ)すやうな、054たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むともなぞと、055吾々(われわれ)はちつと気(き)に喰(く)わないよ。056アンナ歌(うた)を聞(き)くと、057吾々(われわれ)の頭(あたま)はガンガンいつて、058今(いま)の彼(あ)の浪(なみ)よりも業腹(ごふばら)が立(た)つよ。059吾々(われわれ)の聞(き)いた福音(ふくいん)といふのは、060ソンナけち臭(くさ)い白痴(こけ)おどしの腐(くさ)れ文句(もんく)ぢやない。061古今(ここん)独歩(どつぽ)、062珍無類(ちんむるい)、063奇妙(きめう)奇天烈(きてれつ)の福音(ふくいん)だ。064まあコンナ大事(だいじ)なことはとつとこうかい。065汝(おまへ)らに聞(き)かしたら吃驚(びつくり)して癲癇(てんかん)でも起(おこ)すと迷惑(めいわく)だからな』
066丙(へい)『何(なん)だい、067貴(き)さまの云(い)ふことあ一体(いつたい)訳(わけ)が判(わか)らぬぢやないかい、068偉(えら)さうに人(ひと)の受売(うけうり)を勿体(もつたい)ぶつて天来(てんらい)の福音(ふくいん)だなぞと、069おほかた駄法螺(だぼら)でも吹音(ふくいん)だらう、070癲癇(てんかん)の泡吹音(あわふくいん)くらゐが関(せき)の山(やま)だ』
071乙(おつ)『だまつて聞(き)いてゐろよ、072たとへ大地(だいち)が沈(しづ)むとも間男(まをとこ)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふのだ。073弱蟲(よわむし)や腰抜蟲(こしぬけむし)の前(まへ)でコンナことを云(い)つたら、074冥加(みやうが)に盡(つき)て天罰(てんばつ)が当(あた)るかも知(し)れぬ。075やつぱり却(かへ)つて汝(おまへ)らの迷惑(めいわく)になるから止(や)めておこかい』
076丁(てい)『あまり勿体(もつたい)ぶるない、077三文(さんもん)の大神楽(だいかぐら)で口(くち)ばつかりだよ、078こいつな、079この間(あひだ)も自分(じぶん)の小忰(こせがれ)が井戸(ゐど)へはまりよつただ。080その時(とき)に狼狽(うろた)へよつて矢庭(やには)に手(て)を合(あは)せて「お天(てん)とさま、081お天(てん)とさま」と吐(ぬ)かしてな、082吠面(ほえづら)かわきよつて拝(をが)み仆(たふ)してゐたのよ。083その間(あひだ)にその小忰(こせがれ)がぶくぶくと泡(あわ)をふきよつて沈(しづ)んでしまつたのだ。084その時(とき)に自暴糞(やけくそ)になりよつてな、085この世(よ)に神(かみ)も糞(くそ)もあるものか。086全智(ぜんち)全能(ぜんのう)の神(かみ)だつて、087尻(しり)が呆(あき)れて雪隠(せつちん)が踊(おど)る、088小便壺(せうべんつぼ)がお出(い)で、089お出(い)でをすると吐(ぬ)かして怨(うら)んでゐたよ』
090乙(おつ)『要(い)らぬことをいふない、091人(ひと)の欠点(あら)までコンナとこで曝(さら)け出(だ)しよつて、092貴様(きさま)の嬶(かかあ)が死(し)んだ時(とき)どうだつたい。093男(をとこ)らしくもない、094冷(つめ)たうなつて踏(ふ)ん伸(の)びて、095石(いし)の様(やう)に硬(かた)うなつた奴(やつ)を……こら女房(にようばう)、096お前(まへ)は儂(わし)を後(あと)に遺(のこ)してなぜ先(さき)に死(し)んだ、097も一度(いちど)夫(をつと)といつてくれ……ナンテ死(し)んだ奴(やつ)に物(もの)をいへと吐(ぬ)かすやうな没暁漢(わからずや)だからね』
098丁(てい)『馬鹿(ばか)云(い)へ、099俺(おれ)の嬶(かかあ)、100神(かみ)さまだ。101貴様(きさま)の嬶(かかあ)のやうな蜴(とかげ)の欠伸(あくび)したやうな変(へん)な面付(つらつき)した嬶(かかあ)とは種(たね)が違(ちが)ふだよ。102死(し)んでからでも毎晩(まいばん)々々(まいばん)おれの枕許(まくらもと)へきて介抱(かいほう)する、103そりやホントに親切(しんせつ)だよ。104そして天人(てんにん)の天降(あまくだ)つたやうな立派(りつぱ)な装束(しやうぞく)を着(き)てゐるよ』
105乙(おつ)『一遍(いつぺん)手水(てうづ)を使(つか)うて来(こ)い、106そりや幻(まぼろし)だよ、107すべた嬶(かかあ)にうつつ三太郎(さんたらう)になりよつて、108毎日(まいにち)日日(ひにち)息(いき)のある間(あひだ)はお嬶(かか)大明神(だいみやうじん)と崇(あが)めよつて、109朝晩(あさばん)に屁(へ)つぴり腰(ごし)をしよつて、110嬶(かかあ)のお給仕(きふじ)に涎(よだれ)を垂(た)らしてをつたお目出度(めでた)い奴(やつ)だからね』
111 一同(いちどう)転(ころ)げて笑(わら)ふ。112このとき海鳴(うみなり)ますます激(はげ)しく浪(なみ)は脚下(あしもと)まで襲(おそ)うてきた。113これは大変(たいへん)と真蒼(まつさを)な顔(かほ)して一丁(いつちやう)ばかり山(やま)へかけ登(のぼ)つた。
114丁(てい)『偉(えら)さうに太平楽(たいへいらく)のへらず口(ぐち)ばかり並(なら)べよつたが、115そのざま何(なん)だい。116浪(なみ)が来(き)たつて真蒼(まつさを)な顔(かほ)しやがつて、117腰(こし)を抜(ぬ)かさぬ許(ばか)りに山(やま)へ駆登(かけのぼ)つたそのぶざまつたらないぢやないか。118見(み)られたざまでないよ、119ソンナざまして天来(てんらい)の福音(ふくいん)なんて福音(ふくいん)が聞(き)いて呆(あき)れらあ、120呆(あき)れ入谷(いりや)の鬼子(きし)母神(もじん)だ。121それもつと早(はや)く意茶(いちや)つかさずに癲癇(てんかん)の泡吹音(あわふくいん)とやらを、122吾々(われわれ)御(ご)一統(いつとう)の前(まへ)に畏(かしこ)み畏(かしこ)み奏聞(そうもん)仕(つかまつ)るが後生(ごしやう)のためだよ』
123乙(おつ)『その後生(ごしやう)で思(おも)ひだした、124この間(あひだ)もな、125ウラル彦(ひこ)の宣伝使(せんでんし)だと云(い)つて五升樽(ごしやうだる)を供(とも)に担(かつ)がして大道(だいだう)を呶鳴(どな)つて来(き)たのだ。126それだ、127天国(てんごく)の福音(ふくいん)といふのは』
128丁(てい)『何(なん)の事(こと)だい、129べらべらと序文(じよぶん)ばつかり並(なら)べよつて、130おほかた酒(さけ)を喰(くら)ふことだらう。131まあこいつらの福音(ふくいん)といふのは樽(たる)さへ見(み)せたらよいのだ。132口(くち)に唾(つばき)一(いつ)ぱい溜(た)めよつて、133蟹(かに)のやうな泡(あわ)をふきよつてな、134喉(のど)をぢりぢり焦(こ)げつかして、135餓鬼(がき)が飲(の)みたい水(みづ)を飲(の)まれぬ時(とき)のやうな憐(あは)れな面付(つらつき)をして、136その宣伝使(せんでんし)の後(あと)から跟(つ)きまはつて、137犬(いぬ)が猪(しし)の後(あと)をつけるやうに鼻(はな)ばかりぴこつかして歩(ある)いていつたということだ。138こいつ等(ら)の福音(ふくいん)といふことは、139酒(さけ)の匂(にほ)ひを嗅(か)ぎつけて、140よう飲(の)みもせず、141けなりさうに指(ゆび)をくはへて、142宣伝使(せんでんし)の臭(くさ)い尻(しり)からついて歩(ある)きよつて、143宣伝使(せんでんし)が厠(かはや)へでも這入(はい)つてゐるまに、144樽(たる)のつめをポンと抜(ぬ)いて、145長(なが)い舌(した)を樽(たる)の中(なか)へ入(い)れべそべそやつて居(を)ると、146雪隠(せつちん)の窓(まど)から宣伝使(せんでんし)に見(み)つけられて平謝(ひらあやま)りに謝(あやま)つて、147その代償(だいしやう)として立派(りつぱ)な美(うつく)しいお尻(けつ)を拭(ふ)かしてもらつた臭(くさ)い奴(やつ)があるといふ評判(ひやうばん)だつた。148大方(おほかた)こいつ等(ら)のことだらうよ。149天国(てんごく)の福音(ふくいん)でなくつて糞放(くそこき)の尻拭音(しりふくいん)だよ。150馬鹿(ばか)々々(ばか)しい、151糞(くそ)が呆(あき)れらあ』
152 乙(おつ)は拳(こぶし)を握(にぎ)り、153むつとした顔付(かほつ)きで、
154『貴様(きさま)アよい頬桁(ほほげた)だなあ』
155丁(てい)『頬桁(ほほげた)より桐下駄(きりげた)がよいのだ、156あまり穿(は)きちがひするなよ』
157乙(おつ)『穿(は)きちがひは貴様(きさま)のこつた、158人(ひと)の下駄(げた)で人(ひと)を踏(ふ)みつけやうとしよつて、159泥足(どろあし)で三千(さんぜん)世界(せかい)泥(どろ)の海(うみ)なんて、160泥棒(どろばう)の言(い)ひ草(ぐさ)みたいなことを吐(ぬか)してな、161馬鹿(ばか)らしい、162それよりも酒(さけ)の代(かは)りに泥水(どろみづ)でも飲(の)んだら、163ちつと天来(てんらい)の福音(ふくいん)が聞(き)けるだらう。
164飲(の)めよ騒(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)や暗(やみ)よ
165暗(やみ)のあとには月(つき)が出(で)る
166 ヨイトサ、167ヨイトサ』
168丁(てい)『酒(さけ)もないのに酒(さけ)を飲(の)んだ気(き)になりよつて、169踊(をど)る奴(やつ)があるものかい』
170乙(おつ)『ごてごていふない、171早(はや)う帰(かへ)つて嬶(かかあ)の幽霊(いうれい)になと会(あ)つてこい、172かまふない』
173とたがひに腕(うで)を捲(まく)りあげ格闘(かくとう)を初(はじ)めたとたんに、174はるか前方(ぜんぱう)より三柱(みはしら)の宣伝使(せんでんし)は、
175『三千(さんぜん)世界(せかい)一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)、176開(ひら)いて散(ち)りて実(み)を結(むす)ぶ』
177と謡(うた)つてくる。178乙(おつ)は矢庭(やには)に眼(め)を塞(ふさ)ぎ、179顔(かほ)を顰(しか)め、180両手(りやうて)に頭(あたま)を抑(おさ)へながら、
181『こいつはたまらぬ』
182と大地(だいち)にしやがんだ。
183 折(をり)しも暴風(ばうふう)ますます激(はげ)しく、184浪(なみ)は脚下(あしもと)へ襲(おそ)うてくる。185一同(いちどう)は先(さき)を争(あらそ)うて又(また)もや山上(さんじやう)めがけて逃(に)げ出(だ)した。
186(大正一一・一・一三 旧大正一〇・一二・一六 井上留五郎録)
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