霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 馬鹿(ばか)正直(しやうぢき)〔六五五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻 篇:第3篇 至誠通神 よみ(新仮名遣い):しせいつうしん
章:第10章 馬鹿正直 よみ(新仮名遣い):ばかしょうじき 通し章番号:655
口述日:1922(大正11)年05月08日(旧04月12日) 口述場所: 筆録者:藤津久子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
松姫館の門では、門番の竜若、熊彦、虎彦の三人が、四方山話の中で、ウラナイ教の凋落を嘆きあっていた。
三人は、三五教の隆盛や、黒姫が出し抜かれて玉照姫を奪われた経緯から、松姫館にお節が入り込んで松姫の信任を得ていることを警戒し、嘆いている。
そこへ馬公と鹿公がやってきた。熊彦と虎彦は、三五教の輩を入れるわけにはいかない、と言って六尺棒や拳で殴りかかった。
馬公と鹿公は、大神の教えを思って怒りをこらえている。虎彦と熊彦は二人をさらに虐待すると、門を閉めてしまった。
馬公と鹿公は、お互いに試練に耐えたことを讃えあい、忍び泣きに泣いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-04-04 18:21:59 OBC :rm1910
愛善世界社版:162頁 八幡書店版:第4輯 89頁 修補版: 校定版:165頁 普及版:74頁 初版: ページ備考:
001(くも)()()てそそり()
002高城山(たかしろやま)峰伝(みねづた)
003松樹(しようじゆ)(しげ)れる(かみ)(やま)
004()()(ひらめ)十曜(とえう)神紋(もん)
005国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)
006埴安(はにやす)(かみ)()(はな)
007(ひめ)(みこと)御教(みをしへ)
008四方(よも)(つた)ふるウラナイの
009(かみ)(をしへ)出社(でやしろ)
010()(ひび)きたる神館(かむやかた)
011五六七(みろく)御世(みよ)松姫(まつひめ)
012(あさ)(ゆふ)なに真心(まごころ)
013こめて(いの)りの言霊(ことたま)
014(もも)(かみ)たち()(つど)
015(しこ)(をしへ)()(なが)
016御国(みくに)(おも)()(おも)
017(その)御心(みこころ)(うべ)なひて
018(まも)らせ(たま)ふぞ(たふと)けれ。
019 松姫館(まつひめやかた)表門(おもてもん)には、020受付(うけつけ)(けん)門番(もんばん)(たま)(どころ)(まう)けられてある。021竜若(たつわか)022熊彦(くまひこ)023虎彦(とらひこ)(さん)(にん)は、024あどけなき(はなし)(ふゆ)(みじか)()(つぶ)して()る。
025竜若(たつわか)(この)(はる)(ごろ)陽気(やうき)()し、026日々(ひび)()()()(やう)に、027求道者(きうだうしや)(くびす)(せつ)し、028随分(ずゐぶん)吾々(われわれ)受付(うけつけ)(もん)開閉(かいへい)繁忙(はんばう)(きは)めたものだが、029(はる)()き、030(なつ)()ぎ、031(あき)()り、032(ふゆ)(きた)今日(けふ)(この)(ごろ)033(ゆき)()らつく、034(こがらし)()く、035(こずゑ)真裸(まつぱだか)となり(しろ)(しろ)(はな)()(やう)になつた(やう)に、036ウラナイ(けう)(この)(やかた)も、037一葉(ひとは)()ちて天下(てんか)(あき)()(どころ)か、038全葉(ぜんえふ)()ちて寂寥(せきれう)(きは)まる天下(てんか)(ふゆ)となつて()たぢやないか。039如何(いか)栄枯(ゑいこ)盛衰(せいすゐ)()(なら)ひだと()つても、040ウラナイ(けう)凋落(てうらく)()つたら、041(じつ)(あは)(はか)なき有様(ありさま)だ。042我々(われわれ)()うチヨコナンとして(よう)()いのに、043()つて()(ちん)(やう)にして()るのも、044(なん)だか()()かない。045松姫(まつひめ)(さま)(たい)しても()(どく)(やう)()がしてならないワ。046嗚呼(ああ)ウラナイ(けう)にも、047冷酷(れいこく)無残(むざん)(ふゆ)()たのかなア』
048熊彦(くまひこ)『それが身魂(みたま)恩頼(ふゆ)だ。049(ふゆ)()りやこそ(はる)()るのだ。050(かみ)(さま)引懸(ひつか)(もど)しの仕組(しぐみ)ぢやと仰有(おつしや)るぢやないか。051(うみ)(なみ)だつて(かぜ)だつて(その)(とほ)りだ。052七五三(しちごさん)(かぜ)()き、053(なみ)()つ、054ウラナイ(けう)(この)(はる)(ごろ)(しち)(かぜ)()き、055(しち)(なみ)()つて()た。056(なつ)になると()(かぜ)()(なみ)057(あき)(すゑ)から(ふゆ)のかかりにかけて、058(さん)(かぜ)()き、059(さん)(なみ)()つて()(やう)なものだ。060(また)()(なか)歴史(れきし)繰返(くりかへ)すものだから、061(はな)()(はる)屹度(きつと)ウラナイ(けう)見舞(みま)うて()るよ。062天下(てんか)(はる)にウラナイ(けう)(ばか)何時迄(いつまで)も、063(ふゆ)冷酷(れいこく)(なが)めて()(やう)(こと)はあるまい、064さう悲観(ひくわん)したものぢやないよ』
065虎彦(とらひこ)熊公(くまこう)066随分(ずゐぶん)(まへ)楽観者(らくくわんしや)だなア。067蜘蛛(くも)()をかけて、068(むし)()つかかるのを()()ける(やう)なやり(かた)では何時迄(いつまで)()つても、069ウラナイ(けう)(はる)見舞(みま)うて()れない。070矢張(やつぱり)(あた)(かぎ)最善(さいぜん)努力(どりよく)(つひ)やさねば駄目(だめ)だ。071(うん)()ふものは()(つか)ねて()つて()たつて、072()るものではない。073矢張(やつぱり)こちらから、074活動(くわつどう)開始(かいし)せねばならないぢやないか。075それに(この)(ごろ)(やかた)松姫(まつひめ)(さま)も、076宣伝使(せんでんし)布教(ふけう)をお()めなさつたぢやないか。077一体(いつたい)吾々(われわれ)諒解(りやうかい)(くるし)まざるを()ないのだ』
078竜若(たつわか)吾々(われわれ)一同(いちどう)宣伝使(せんでんし)()神慮(しんりよ)(かな)つて()ないのだから、079十分(じふぶん)(この)(しづ)かな(うち)に、080身魂(みたま)(みが)()げ、081()神慮(しんりよ)(さと)り、082本当(ほんたう)(かみ)(さま)大御心(おほみこころ)体得(たいとく)して、083(かみ)(さま)から()れなら宣伝(せんでん)をしにやつても差支(さしつか)()いと()(みと)めになる(まで)084吾々(われわれ)修行(しうぎやう)をさされて()るのだ。085月日(つきひ)(こま)(ふたた)(かへ)(きた)らず、086一日(いちじつ)(ふたた)(あした)()(がた)し、087(この)機会(きくわい)に、088吾々(われわれ)充分(じゆうぶん)魂磨(たまみが)きをやつて()くのだ。089今迄(いままで)(やう)脱線(だつせん)だらけの宣伝(せんでん)をしたつて、090()(なか)益々(ますます)混乱(こんらん)誑惑(けうわく)させるだけだ。091(いつ)かど立派(りつぱ)(かみ)(さま)御用(ごよう)(つと)めた(つも)りで、092邪魔(じやま)(ばか)りして()たのだから、093(かみ)(さま)(いまし)めの(ため)に、094(この)(ごろ)(やう)宣伝(せんでん)もお()めなさつたり、095求道者(きうだうしや)もお()せにならないのだらうよ。096吾々(われわれ)一同(いちどう)(もの)が、097本当(ほんたう)(まこと)神心(かみごころ)(わか)つたならば、098宣伝(せんでん)にもやつて(くだ)さらうし、099因縁(いんねん)身魂(みたま)()せて(くだ)さるだらう。100(かみ)(さま)何処(どこ)から何処迄(どこまで)()()()いからなア』
101熊彦(くまひこ)『それに()いても三五教(あななひけう)比較(ひかく)(てき)隆盛(りうせい)ぢやないか。102高姫(たかひめ)さまや、103黒姫(くろひめ)さまの大頭株(おほあたまかぶ)得意(とくい)神算(しんさん)鬼智(きち)発輝(はつき)して、104玉照姫(たまてるひめ)(さま)をウラナイ(けう)奉迎(ほうげい)せむとなさつたが、105薩張(さつぱり)三五教(あななひけう)紫姫(むらさきひめ)や、106青彦(あをひこ)(やつ)(うら)をかかれて馬鹿(ばか)()たと()ふのだから、107油断(ゆだん)(すき)もあつたものぢやない。108それに(また)合点(がてん)のゆかぬは松姫(まつひめ)さまぢや。109青彦(あをひこ)裏返(うらがへ)(もの)女房(にようばう)(せつ)が、110(この)(あひだ)から猫撫(ねこな)(ごゑ)()しよつて、111(うま)松姫(まつひめ)さまに()()り、112(いま)では(おく)()御用(ごよう)(つと)めて()るぢやないか。113(また)黒姫(くろひめ)()(まひ)(えん)じてアフンとなさる(やう)(こと)はあるまいかなア。114何程(なにほど)115清濁(せいだく)(あは)()大海(たいかい)(やう)松姫(まつひめ)さまの御心(みこころ)でも、116(せつ)(やう)危険(きけん)人物(じんぶつ)(おく)()()ませて()くのは、117爆裂弾(ばくれつだん)(かか)へて()(やう)なものだ。118(この)(くらゐ)(わか)()つた道理(だうり)がどうして松姫(まつひめ)さまは()()かぬのだらうか』
119虎彦(とらひこ)(なに)()もあれ、120権謀(けんぼう)術数(じゆつすう)(いた)らざるなき、121素盞嗚(すさのをの)(みこと)悪神(あくがみ)一派(いつぱ)だから千変(せんぺん)万化(ばんくわ)()(やつ)し、122大胆(だいたん)不敵(ふてき)にも、123(をんな)分際(ぶんざい)としてこんな(ところ)へ、124(おそ)()もなくやつて来居(きを)つた危険性(きけんせい)()びた化物(ばけもの)だから、125(ひと)つでもお(せつ)欠点(けつてん)発見(はつけん)したら、126それを機会(きくわい)松姫(まつひめ)大将(たいしやう)(なん)仰有(おつしや)つても、127吾々(われわれ)(しよく)()してお(いさ)(まを)し、128(せつ)をおつ()()さねばなるまいぞ』
129竜若(たつわか)『それもそうだ。130(をんな)でさへも三五教(あななひけう)這入(はい)つた(やつ)は、131あれだけの胆力(たんりよく)()わつて()るのだから、132(をとこ)尚更(なほさら)()()はぬ(やつ)(ばか)りだ。133(また)何時(なんどき)三五教(あななひけう)(やつ)がやつて来居(きを)つて、134魔窟(まくつ)(はら)岩窟(いはや)()()ひをやらうと(かか)るかも()れないから()()()けて、135三五教(あななひけう)連中(れんちう)だつたら、136(この)門内(もんない)一足(ひとあし)でも()れさす(こと)出来(でき)ないぞ。137(はうき)掃出(はきだ)すか、138それも()かねば六尺棒(ろくしやくぼう)袋叩(ふくろだた)きにしても()らしめてやらねば、139ウラナイ(けう)何時(なんどき)根底(こんてい)から顛覆(てんぷく)さされるやら(わか)つたものぢやない。140松姫(まつひめ)さまは(おほかみ)であらうが、141(とら)であらうが、142老若(らうにやく)男女(なんによ)区別(くべつ)なく、143物食(ものぐ)ひがよいから(こま)つて(しま)ふ。144(はら)(なか)毒薬(どくやく)()()んで平気(へいき)()るのだから(じつ)剣呑(けんのん)千万(せんばん)だ。145もうこれからは、146一々(いちいち)()()(やつ)誰何(すゐか)して、147身魂(みたま)調(しら)べた(うへ)でなければ、148通行(つうかう)させる(こと)出来(でき)ないぞ。149(この)(もん)出入(しゆつにふ)許否(きよひ)するは吾々(われわれ)一同(いちどう)権限(けんげん)でもあり大責任(だいせきにん)だから、150今後(こんご)吾々(われわれ)三角(さんかく)同盟(どうめい)形造(かたちづく)り、151結束(けつそく)(かた)うして、152毛色(けいろ)(かは)つた(あや)しき人物(じんぶつ)は、153断乎(だんこ)として通過(つうくわ)させない(こと)にして締盟(ていめい)仕様(しやう)ぢやないか、154()出神(でのかみ)生宮(いきみや)でも竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまの生宮(いきみや)でも、155月夜(つきよ)(かま)()かれた(やう)馬鹿(ばか)らしい、156悲惨(みじめ)()()はされ(たま)ふのだから、157余程(よほど)警戒(けいかい)厳重(げんぢう)にせなくては国家(こくか)一大事(いちだいじ)だ。158(この)(もん)(ひと)つが危急(ききふ)存亡(そんばう)(わか)るる(ところ)だからなア』
159 ()かる(ところ)(うま)160鹿(しか)両人(りやうにん)161(くぐ)()をガラガラと()けて這入(はい)()たり。
162熊彦(くまひこ)『ヤア、163門番(もんばん)吾々(われわれ)(なん)応答(こたへ)もなく、164(くぐ)()()けて這入(はい)つて()るとは、165()しからぬぢやないか、166サア()(くだ)さい』
167馬公(うまこう)『ヤアこれは(まこと)失礼(しつれい)(いた)しました。168(あま)森閑(しんかん)として()たものですから、169貴方(あなた)(がた)(いかめ)しい()装束(しやうぞく)をして(もん)(まも)つて御座(ござ)るとは(つゆ)()らず、170(こころ)()(まま)ついお応答(こたへ)もせず()無礼(ぶれい)(いた)しました。171何卒(どうぞ)(この)不都合(ふつがふ)は、172神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)(くだ)さいまして通過(つうくわ)させて(くだ)さいませ』
173熊彦(くまひこ)()らぬと()つたら絶対(ぜつたい)にならぬのだ。174(こと)(しな)によつたら(とほ)してやらぬ(こと)もないが、175貴様(きさま)(かぎ)つて(とほ)(こと)出来(でき)(わい)176(その)理由(りいう)とする(ところ)(いま)貴様(きさま)が、177神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)()(なほ)して()れと()つたぢやないか。178そんな文句(もんく)(とな)へる(もの)は、179(この)(ひろ)世界(せかい)にウラナイ(けう)三五教(あななひけう)二派(には)あるのみだ。180(しか)(なが)貴様(きさま)はウラナイ(けう)人間(にんげん)ぢやない。181てつきり三五教(あななひけう)瓦落多(がらくた)だらう。182貴様(きさま)(やう)(やつ)(この)(やかた)侵入(しんにふ)させ(やう)ものなら、183それこそ(やかた)(なか)(たちま)ちぢや、184さうならば、185我々(われわれ)何々(なになに)何々(なになに)しられては矢張(やつぱり)(たちま)ちぢや。186(たちま)(かは)(あき)(そら)187(ふゆ)()るのにブルブルと、188(つら)(かは)()ぎオツポリ()されて、189(しち)(しやく)男子(だんし)矢張(やつぱり)(たちま)ちぢや』
190馬公(うまこう)『ヤアヤアそれは(まこと)()親切(しんせつ)有難(ありがた)う。191我々(われわれ)三五教(あななひけう)(うま)192鹿(しか)二人(ふたり)此処(ここ)(まゐ)(こと)を、193流石(さすが)明智(めいち)松姫(まつひめ)(さま)御存(ごぞん)(あそ)ばして、194門番(もんばん)(めい)吾々(われわれ)歓迎(くわんげい)()立待(たちま)ちさせて()かしやつたのだな。195たちまち(ひら)(こころ)(もん)196()れから(いよいよ)()()守護(しゆご)になるであらう、197サア鹿公(しかこう)198御免(ごめん)(かうむ)つて(おく)(まゐ)りませうかい』
199熊彦(くまひこ)(なん)だ、200()(たい)な、201(うま)だとか鹿(しか)だとか、202道理(だうり)馬鹿(うましか)面付(つらつき)をして()やがる(わい)203コラコラ(この)(もん)善一筋(ぜんひとすぢ)204(まこと)(ひと)つの(かみ)(さま)人間(にんげん)通行門(つうかうもん)だ。205四足(よつあし)(とほ)るべき(ところ)ぢやない。206トツトと(かへ)らぬか』
207馬公(うまこう)如何(いか)にも吾々(われわれ)()(うま)208鹿(しか)209四足(よつあし)間違(まちが)ひありませぬが、210(この)御門(ごもん)御覧(ごらん)なさい、211これも矢張(やつぱり)四足(よつあし)ぢやないか。212それにお(まへ)()も、213(たつ)とか(くま)とか、214(とら)とか()うぢやないか。215矢張(やつぱり)四足(よつあし)だらう。216四足門(よつあしもん)を、217四足(よつあし)(まも)るとは、218余程(よほど)よいコントラストだ、219アハヽヽヽ』
220虎彦(とらひこ)『トラ(なに)(ぬか)しやがるのだ。221それ(ほど)コントラストが(のぞ)みなら、222貴様(きさま)薬鑵(やかん)(この)棍棒(こんぼう)でコントラストと(たた)()けてやらうか』
223()ふより(はや)(かたはら)六尺棒(ろくしやくぼう)(もつ)て、224(うま)225鹿(しか)前頭部(ぜんとうぶ)(ふた)()(なぐ)()けた。
226鹿公(しかこう)随分(ずゐぶん)ウラナイ(けう)は、227手荒(てあら)(こと)をなされますなア』
228虎彦(とらひこ)(なに)229ウラナイ(けう)手荒(てあら)(こと)をするのだ()い、230貴様(きさま)悪心(あくしん)(この)虎彦(とらひこ)をして、231貴様(きさま)()たしめるのだ。232(こころ)(とら)()()めると()ふのは(この)(こと)だ。233名詮(めいせん)自性(じしやう)234馬鹿(うましか)(こと)()つて通過(つうくわ)懇望(こんもう)するものだからそれで()註文(ちゆうもん)(どほ)り、235棍棒(こんぼう)(いただ)かしてやつたのだ。236今後(こんご)(つつし)んで、237斯様(かやう)乱暴(らんばう)(こと)(いた)すでないぞよ。238(うま)239鹿(しか)守護神(しゆごじん)240勿体(もつたい)なくも、241虎彦(とらひこ)さんの肉体(にくたい)使(つか)つて馬鹿(うましか)にしてけつかる、242アハヽヽヽ』
243馬公(うまこう)重々(ぢうぢう)(わたくし)(わる)御座(ござ)いました。244何卒(どうぞ)()勘弁(かんべん)(くだ)さいませ』
245熊彦(くまひこ)(わる)いと()(こと)(わか)つたか。246(わる)かつたら勘弁(かんべん)せい、247()つて、248それで勘弁(かんべん)出来(でき)ると(おも)ふか。249結構(けつこう)()神門(しんもん)を、250四足門(よつあしもん)だの、251吾々(われわれ)(さん)(にん)四足(よつあし)だのと失敬(しつけい)千万(せんばん)な、252劫託(ごふたく)(ほざ)きやがつて、253(なん)だ、254三五教(あななひけう)はそんな無茶(むちや)身勝手(みがつて)理屈(りくつ)(とほ)るか()らぬが、255誠一途(まこといちづ)のウラナイ(けう)ではそんな屁理屈(へりくつ)(とほ)らぬぞ』
256鹿公(しかこう)『イヤもう、257(とほ)つても(とほ)らひでも結構(けつこう)です、258吾々(われわれ)目的(もくてき)(この)(もん)(とほ)りさへすれば()いのだ。259(だま)つて(もん)()けたのは(まこと)()まないけれど、260(ことわざ)にも「桃李(たうり)(もの)()はず」と()(こと)がある。261それだから、262物静(ものしづ)かに敬虔(けいけん)態度(たいど)(もつ)通行(つうかう)したのです』
263虎彦(とらひこ)『エヽツベコベと、264よう(さへづ)(やつ)だ。265愚図(ぐづ)々々(ぐづ)(ぬか)すと、266(おに)(わらび)がお見舞(みま)(まを)すぞ』
267(ほね)だらけの握拳(にぎりこぶし)(かた)めて、268鹿(しか)(かほ)(ふた)()つガツンとやつた。
269鹿公(しかこう)『アイタヽヽ、270随分(ずゐぶん)気張(きば)(ごたへ)があります(わい)
271虎彦(とらひこ)(きま)つた(こと)だ、272()()えても、273(あさ)から(ばん)(まで)274剣術(けんじゆつ)柔術(じうじゆつ)(きた)()げた百段(ひやくだん)免状(めんじやう)()りだ。275全身(ぜんしん)(くろがね)(もつ)(かた)めた、276虎彦(とらひこ)さまの鉄身(てつしん)277鉄腸(てつちやう)278(やり)でも鉄砲(てつぱう)でも()つて()て、279()つなと、280()くなとやつて()よ。281鋼鉄艦(かうてつかん)にブトが襲撃(しふげき)する(やう)なものだ、282アハヽヽヽ』
283得意(とくい)(はな)(うごめ)かし、284四角(しかく)(かた)不恰好(ぶかつかう)(こし)(まで)(ゆす)つて嘲笑(てうせう)する。285馬公(うまこう)286鹿公(しかこう)堪忍袋(かんにんぶくろ)()(いま)やプツリと(きれ)かけた。287エヽ残念(ざんねん)だ、288もう(この)(うへ)(ぜん)(あく)もあつたものかい、289(さん)(にん)(やつ)(かた)(ぱし)から(うち)のめし、290三五教(あななひけう)腕力(わんりよく)()せてやらうか。291イヤイヤ、292なる勘忍(かんにん)(たれ)もする、293ならぬ堪忍(かんにん)するが堪忍(かんにん)だ。294(わけ)(わか)らぬ下劣(げれつ)(やつ)相手(あひて)にしての(あらそ)ひは(みづか)(この)んで人格(じんかく)失墜(しつつゐ)するのみならず、295()いては、296大神(おほかみ)(さま)御心(みこころ)(そむ)き、297三五教(あななひけう)名誉(めいよ)毀損(きそん)する生死(せいし)(さかひ)だ。298仮令(たとへ)(たた)(ころ)されても柔和(にうわ)(まこと)(もつ)て、299(かれ)()悪人(あくにん)(こころ)(そこ)より、300改心(かいしん)させるのが吾々(われわれ)信者(しんじや)第一(だいいち)(つと)めだ。301国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)(さま)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)(おん)(こと)(おも)へば、302これ(くらゐ)口惜(くやし)残念(ざんねん)(よひ)(くち)だ。303(いか)りに(じやう)手向(てむか)ひすれば、304(いち)()(むね)(をさ)まるだらうが、305(たた)かれた(もの)は、306安楽(あんらく)夜分(やぶん)()られる、307(たた)いた(もの)夜分(やぶん)()られぬといふ(こと)だ。308嗚呼(ああ)309何事(なにごと)大慈(だいじ)大悲(だいひ)大神(おほかみ)(さま)深遠(しんゑん)なる(めぐみ)(むち)だ。310吾々(われわれ)大神(おほかみ)(さま)試錬(しれん)()けて()るのだ。311紫姫(むらさきひめ)(さま)のお()(うへ)(くわん)する(やう)失敗(しつぱい)(えん)じては()まない。312と、313(うま)314鹿(しか)両人(りやうにん)一度(いちど)に、315心中(しんちう)光明(くわうみやう)(てら)されて、316(うれ)(なみだ)をタラタラと(なが)大地(だいち)にカヂリ()いて神恩(しんおん)感謝(かんしや)して()る。
317虎彦(とらひこ)『オイ(うま)318鹿(しか)319どうだ、320往生(わうじやう)(いた)したか。321(はじ)めの高言(かうげん)()ずメソメソと泣面(なきづら)()きやがつてチヨロ(くさ)い。322女郎(めらう)(くさ)つた(やう)(やつ)だなア。323貴様(きさま)何時(いつ)()にか、324睾丸(きんたま)(おと)して()やがつたのだらう。325オイ熊彦(くまひこ)326貴様(きさま)(うま)睾丸(きんたま)検査(けんさ)するのだ。327(おれ)鹿(しか)睾丸(きんたま)実地(じつち)検分(けんぶん)してやらう』
328()()見合(みあは)両人(りやうにん)(しり)引捲(ひきまく)り、329()()臀部(でんぶ)(たた)き、
330虎彦(とらひこ)『ヤア腰抜(こしぬ)けだと(おも)つたら、331矢張(やつぱり)此奴(こいつ)(からだ)(をんな)出来(でき)()やがる。332骨盤(こつばん)非常(ひじやう)(でか)いぞ。333ヤア(なが)睾丸(きんたま)()らして()やがる』
334とギユツと(にぎ)り、335無理(むり)無体(むたい)後向(うしろむ)けに引張(ひつぱ)つた。
336 (うま)337鹿(しか)両人(りやうにん)睾丸(きんたま)引張(ひつぱ)られ(いた)さに(たま)らず、338後向(うしろむ)けにノタノタと()(なが)ら、339(もん)(そと)引摺(ひきず)()された。
340 熊彦(くまひこ)341虎彦(とらひこ)両人(りやうにん)は、342手早(てばや)門内(もんない)駆入(かけい)り、343(くぐ)()錠前(ぢやうまへ)()ろし、
344(くま)345(とら)『アハヽヽヽ、346(ざま)()やがれ、347ノソノソとやつて()ると(また)こんなものだぞ。348(はや)(かへ)つて三五教(あななひけう)(やつ)に、349(えら)()()はされましたと報告(はうこく)しやがれ』
350馬公(うまこう)『モシモシ、351それは(あま)りで御座(ござ)います。352()けて(くだ)さいと無理(むり)(まを)しませぬ、353何卒(どうぞ)354(うま)355鹿(しか)両人(りやうにん)が、356(もん)(そと)(まで)(まゐ)りました、357松姫(まつひめ)さまに報告(はうこく)して(くだ)さいませ』
358虎彦(とらひこ)報告(はうこく)すると、359せぬとは、360吾々(われわれ)自由(じいう)権利(けんり)だ。361(いぬ)遠吠(とほぼえ)(やう)に、362()つともない、363(もん)(そと)で、364ワンワン(ぬか)すな』
365鹿公(しかこう)左様(さやう)御座(ござ)いませうが、366どうぞ、367(なに)かのお(はなし)(ついで)に、368一言(ひとこと)でも(よろ)しいから、369仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ』
370虎彦(とらひこ)(おほ)きな(こゑ)で)『(やかま)しう()ふない。371貴様(きさま)()つて()れなと()つたつて、372(この)手柄話(てがらばなし)(だま)つて()馬鹿(ばか)何処(どこ)にあるかい。373ウラナイ(けう)邪魔(じやま)(ばか)(いた)す、374三五教(あななひけう)(うま)375鹿(しか)両人(りやうにん)睾丸(きんたま)(つか)んで、376門外(もんぐわい)におつ()()してやつたと()ふ、377古今(ここん)独歩(どつぽ)378珍無類(ちんむるゐ)功名(こうみやう)手柄(てがら)(つつ)(かく)必要(ひつえう)があるか、379(えん)(した)(まひ)は、380我々(われわれ)()らざる(ところ)だ、381(いち)()(はや)(かへ)らぬか、382愚図(ぐづ)々々(ぐづ)(いた)して()ると、383薬鑵(やかん)熱湯(ねつたう)()びせてやらうか。384シーツ、385シー、386こん畜生(ちくしやう)ツ、387アハヽヽヽ。388()れで(おれ)日頃(ひごろ)鬱憤(うつぷん)()れ、389溜飲(りういん)(さが)つた。390サアこれから、391松姫(まつひめ)(さま)申上(まをしあ)げて(よろこ)んで(いただ)かう、392さうすれば(また)393()褒美(ほうび)()神酒(みき)一升(いつしよう)もお()(くだ)さるかも()れぬぞ、394オホヽヽヽ』
395馬公(うまこう)『オイ鹿公(しかこう)396随分(ずゐぶん)結構(けつこう)(かみ)(さま)試錬(しれん)()つたぢやないか。397ようお(まへ)辛抱(しんばう)して()れた。398(わし)は、399(まへ)短気(たんき)(おこ)しはせぬかと(おも)つて、400どれだけ(むね)怯々(びくびく)さして心配(しんぱい)したか()れなかつたよ。401それでこそ(おれ)親友(しんいう)だ、402有難(ありがた)い、403(この)(とほ)りだ、404()(あは)して(をが)むワ』
405(なみだ)(たき)(ごと)くに(なが)男泣(をとこな)きに()(しづ)む。
406鹿公(しかこう)『そうだな、407本当(ほんたう)結構(けつこう)()神徳(かげ)(いただ)いた。408これで(おれ)(たち)も、409余程(よほど)410身魂(みたま)(ちから)出来(でき)(どう)()わつた。411身魂(みたま)千人力(せんにんりき)()神徳(しんとく)(あた)へて(くだ)さつた。412アヽ(かみ)(さま)413あなたの(ふか)(ひろ)御恵(みめぐ)み、414()()(わた)つて有難(ありがた)感謝(かんしや)(いた)します』
415(うれ)(なみだ)()きくれる。
416馬公(うまこう)『オー鹿公(しかこう)417よう()うて()れた。418(うれ)しい』
419と、420しがみ()く。421鹿公(しかこう)(また)422馬公(うまこう)(からだ)しがみ()き、423(たがひ)(いだ)()ひ、424(しの)()きに()いて()る。
425 (あき)名残(なご)りの(かき)()426(ただ)(ふた)つ、427冬枯(ふゆが)れの(こずゑ)(さび)しげにブラ(さが)つて()る。
428 (こがらし)(あふ)られて、429(からす)雌雄(めをと)()れは(たちま)(この)(かき)()(はね)(やす)め、430(かな)しさうに可愛(かあ)可愛(かあ)いと()()てる。
431 嗚呼(ああ)(この)結果(けつくわ)は、432如何(いかが)なるならむか。
433大正一一・五・八 旧四・一二 藤津久子録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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