どこからともなく、赤子の声が聞こえてくる。幼児の鳴き声は、各人それぞれ違った方角から聞こえてきて、ばらばらの方角に探しに出たが、見つからない。
気がつくと、四人は天狗岩の根元に寝ていた。四人は山を駆け下りるが、その途中で玉照彦を抱いて上がってくる言照姫に出くわした。テルヂーと谷丸は、それぞれ自分たちの陣営に玉照彦を賜るように、と言照姫に懇願した。
言照姫は、互いに玉照彦の手を引っ張り合い、勝った方に玉照彦をやろう、と提案する。二人は玉照彦の手を引いて両側から引っ張り合うが、玉照彦が悲鳴をあげると、テルヂーは驚いて手を放してしまった。
谷丸は勝利を宣言するが、玉照彦本人が口を利いて、自分が痛がっているのに手を引き続けたバラモン教に行くのはいやだ、と言い出した。谷丸は言照姫に審判を仰ごうとするが、言照姫の姿は消えてしまっていた。
玉照彦は、こうなった以上は自分はどちらへ行くこともやめましょう、その代わり三五教の松姫という者が迎えに来るから、そちらに行くことにした、と語った。
そこへ松姫がやってきて、玉照彦に背を差し出し、背負って帰ろうとした。ウラル教とバラモン教の四人は目配せをすると、松姫に襲い掛かって打ちすえ、玉照彦を奪って逃げてしまった。
松姫はその場に気絶していたが、息を吹き返すと、そこには二柱の女神が立っていた。女神たちは、松姫に高熊山に行って玉照彦を奉迎するように、と言う。松姫が、玉照彦はウラル教とバラモン教に奪われてしまった、と言うと、女神たちは、彼らは貪欲に駆られて、石を玉照彦だと思い込んで運んでいったのだ、と明かした。
松姫はすっかり暮れた夜道を高熊山に向かって進んで行き、来勿止の関所までやってきた。松姫は通してくれるように頼むが、門番の勝公と竹公は門を開けない。そこへ来勿止神がやってきた。
松姫は平伏すると、来勿止神は、女神の報せによって、松姫が来るのを待っていたのだ、と伝えた。勝公は門を開いて松姫を通した。