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第34巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 筑紫の不知火
01 筑紫上陸
〔942〕
02 孫甦
〔943〕
03 障文句
〔944〕
04 歌垣
〔945〕
05 対歌
〔946〕
06 蜂の巣
〔947〕
07 無花果
〔948〕
08 暴風雨
〔949〕
第2篇 有情無情
09 玉の黒点
〔950〕
10 空縁
〔951〕
11 富士咲
〔952〕
12 漆山
〔953〕
13 行進歌
〔954〕
14 落胆
〔955〕
15 手長猿
〔956〕
16 楽天主義
〔957〕
第3篇 峠の達引
17 向日峠
〔958〕
18 三人塚
〔959〕
19 生命の親
〔960〕
20 玉卜
〔961〕
21 神護
〔962〕
22 蛙の口
〔963〕
23 動静
〔964〕
余白歌
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第一四章
落胆
(
らくたん
)
〔九五五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻
篇:
第2篇 有情無情
よみ(新仮名遣い):
うじょうむじょう
章:
第14章 落胆
よみ(新仮名遣い):
らくたん
通し章番号:
955
口述日:
1922(大正11)年09月13日(旧07月22日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
建日館にて、黒姫を案内してきた玉公は、幾公から臨時の門番を頼まれて門番部屋に詰め、門を守っていた。
そこへ虎公が、黒姫のお供を連れてきたと言って門の外から声をかけた。虎公、房公、芳公、玉公は門の内外で、おかしな掛け合いを続けている。
虎公は門の外、塀の小さな窓から酒席に向かって無花果の実を三四十ばかり投げ込むいたずらを始めた。酔った客たちは驚き、熊公は喧嘩を始めた。見かねた虎公は酒席に飛び込み、熊公をなだめた。
お種は虎公を見つけて声をかけた。虎公はようやく、お種に黒姫のお供が門の外にやってきていることを告げた。お種の注進を受けて、建日別一行は黒姫を伴って虎公のところにやってきて挨拶をなした。
房公と芳公は一同と目通りする。建日別夫婦は黒姫たちに、ゆっくりとするように勧めるが、黒姫は気が急くと言って火の国に向かってさっさと旅立ってしまう。
房公と芳公は、黒姫が建日別が息子でなかったことを気に病んで落ち込んでいると見て取り、心配になって後を追って黒姫の後を探ねて行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-16 09:18:26
OBC :
rm3414
愛善世界社版:
182頁
八幡書店版:
第6輯 427頁
修補版:
校定版:
190頁
普及版:
77頁
初版:
ページ備考:
001
此処
(
ここ
)
は
建国別
(
たけくにわけ
)
の
神館
(
かむやかた
)
の
表門前
(
おもてもんまへ
)
、
002
玉公
(
たまこう
)
は
門番
(
もんばん
)
の
幾公
(
いくこう
)
に
臨時
(
りんじ
)
代理
(
だいり
)
を
頼
(
たの
)
まれ、
003
ツクネンとして
門扉
(
もんぴ
)
を
閉
(
と
)
ぢ、
004
借
(
か
)
つて
来
(
き
)
た
狆
(
ちん
)
の
様
(
やう
)
におとなしく、
005
門番
(
もんばん
)
部屋
(
べや
)
の
縁側
(
えんがは
)
に
腰
(
こし
)
をかけ、
006
両手
(
りやうて
)
を
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
にチンと
置
(
お
)
いて、
007
コクリコクリと
居眠
(
ゐねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
008
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
から
虎公
(
とらこう
)
の
声
(
こゑ
)
、
009
虎公
(
とらこう
)
『
頼
(
たの
)
まう
頼
(
たの
)
まう』
010
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
玉公
(
たまこう
)
は
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし、
011
玉公
(
たまこう
)
『
誰
(
たれ
)
だい、
012
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
る
奴
(
やつ
)
ア。
013
此処
(
ここ
)
は
建国別
(
たけくにわけ
)
様
(
さま
)
の
神館
(
かむやかた
)
の
表門
(
おもてもん
)
だぞ。
014
チツと
謹慎
(
きんしん
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
せぬかい。
015
何処
(
どこ
)
の
誰
(
たれ
)
だか
知
(
し
)
らぬが
戸
(
と
)
をドンドンと
叩
(
たた
)
きやがつて、
016
ド
拍子
(
べうし
)
の
抜
(
ぬ
)
けた
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
しやがるのだ』
017
と
呶鳴
(
どな
)
り
返
(
かへ
)
した。
018
虎公
(
とらこう
)
『オイ、
019
幾
(
いく
)
の
門番
(
もんばん
)
、
020
誰
(
たれ
)
でも
無
(
な
)
い、
021
虎公
(
とらこう
)
だ。
022
摩利支
(
まりし
)
天
(
てん
)
でも
突
(
つ
)
き
倒
(
こか
)
すと
云
(
い
)
ふ
漆山
(
うるしやま
)
と
云
(
い
)
ふ
大相撲取
(
おほずもうとり
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのだ。
023
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬか
)
して
門
(
もん
)
を
開
(
あ
)
けぬと
云
(
い
)
ふと、
024
漆山
(
うるしやま
)
の
拳骨
(
げんこつ
)
で
叩
(
たた
)
き
割
(
わ
)
つて
這入
(
はい
)
つてやらうか』
025
玉公
(
たまこう
)
『
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
は
侠客
(
けふかく
)
の
虎公
(
とらこう
)
だないか。
026
チツと
静
(
しづか
)
にせぬかい。
027
漆山
(
うるしやま
)
なんて、
028
そんな
嫌
(
いや
)
らしい
名
(
な
)
の
相撲取
(
すもうとり
)
を
何
(
なん
)
の
為
(
た
)
めに
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのだ。
029
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
は
少
(
すこ
)
し
大変
(
たいへん
)
なお
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
つて、
030
ヤツサモツサの
最中
(
さいちう
)
だ。
031
暫
(
しばら
)
く
其処辺
(
そこら
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
れ。
032
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
の
方
(
はう
)
からお
許
(
ゆる
)
しが
下
(
さが
)
つたら
貴様
(
きさま
)
の
方
(
はう
)
が
開
(
あ
)
けなくても
此方
(
こちら
)
から
開
(
あ
)
けてやらア』
033
虎公
(
とらこう
)
『さう
言
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
は
玉公
(
たまこう
)
ぢや
無
(
な
)
いか』
034
玉公
(
たまこう
)
『
俺
(
おれ
)
は
幾公
(
いくこう
)
の
門番
(
もんばん
)
に
頼
(
たの
)
まれたので、
035
臨時
(
りんじ
)
門番
(
もんばん
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
るのだ。
036
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
開閉
(
かいへい
)
するのは
玉公
(
たまこう
)
の
権限
(
けんげん
)
にあるのだから、
037
まア
暫
(
しばら
)
く
其処
(
そこ
)
に
立
(
た
)
つて
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
らうよ』
038
虎公
(
とらこう
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
さまのお
伴
(
とも
)
の
奴
(
やつ
)
を、
039
たつた
二匹
(
にひき
)
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのだから、
040
待
(
ま
)
つと
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
にはゆかぬわい』
041
房公
(
ふさこう
)
『オイ
虎公
(
とらこう
)
、
042
二匹
(
にひき
)
とはチツとひどいぢやないか。
043
あまり
馬鹿
(
ばか
)
にすない』
044
虎公
(
とらこう
)
『
何
(
なに
)
馬鹿
(
ばか
)
にするものか。
045
男
(
をとこ
)
の
中
(
なか
)
の
男
(
をとこ
)
一匹
(
いつぴき
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
が、
046
両人
(
りやうにん
)
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るじやないか。
047
それだから
二匹
(
にひき
)
と
云
(
い
)
つたのだよ』
048
房公
(
ふさこう
)
『アハヽヽヽうまい
事
(
こと
)
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しやがつたな。
049
ヨシこれから
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
一匹
(
いつぴき
)
二匹
(
にひき
)
と
呼
(
よ
)
んでくれ。
050
本当
(
ほんたう
)
に
光栄
(
くわうえい
)
だ。
051
由縁
(
いはれ
)
を
聞
(
き
)
けば
何
(
なん
)
となく
有難
(
ありがた
)
いわ。
052
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
執拗
(
しつかう
)
言
(
い
)
ふと
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があらう。
053
あまり
沢山
(
たくさん
)
一匹
(
いつぴき
)
二匹
(
にひき
)
と
言
(
い
)
うてくれなよ。
054
時所位
(
じしよゐ
)
に
応
(
おう
)
じて
云
(
い
)
うてくれよ』
055
玉公
(
たまこう
)
は
門内
(
もんない
)
より
此
(
この
)
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
きはつり、
056
玉公
(
たまこう
)
『オイ
虎公
(
とらこう
)
、
057
虎
(
とら
)
が
一匹
(
いつぴき
)
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
るが、
058
其
(
その
)
外
(
ほか
)
に
猫
(
ねこ
)
でも
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのか』
059
虎公
(
とらこう
)
『
八釜
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふない。
060
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けぬか』
061
玉公
(
たまこう
)
『エー、
062
仕方
(
しかた
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
だなア。
063
そんならドツと
張
(
は
)
り
込
(
こ
)
んで、
064
今日
(
けふ
)
丈
(
だけ
)
は
治外
(
ちぐわい
)
法権
(
はふけん
)
だ。
065
開
(
あ
)
けてやらう』
066
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らサツと
白木
(
しらき
)
の
門
(
もん
)
を
左右
(
さいう
)
に
開
(
ひら
)
いた。
067
玉公
(
たまこう
)
『ヤア
虎公
(
とらこう
)
ばかりかと
思
(
おも
)
へば、
068
猫
(
ねこ
)
も
牛
(
うし
)
も
鼠
(
ねずみ
)
も
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのだな。
069
そして
其処
(
そこ
)
に
居
(
ゐ
)
る
奴
(
やつ
)
は
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
だい、
070
怪体
(
けたい
)
な
面
(
つら
)
をした
奴
(
やつ
)
だなア。
071
アハヽヽヽ
丁度
(
ちやうど
)
六匹
(
ろつぴき
)
だなア』
072
虎公
(
とらこう
)
『さうだ
六匹
(
ろつぴき
)
だ。
073
早
(
はや
)
く
奥
(
おく
)
へ
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
せ。
074
虎転別
(
とらてんわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
入
(
い
)
りだ』
075
玉公
(
たまこう
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのだい。
076
虎
(
とら
)
、
077
転
(
てん
)
と
別
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬわい。
078
大方
(
おほかた
)
鼬貂別
(
いたちてんわけ
)
位
(
くらゐ
)
のものだらう。
079
アハヽヽヽ』
080
と、
081
腹
(
はら
)
を
抱
(
かか
)
へ
腰
(
こし
)
を
揺
(
ゆす
)
つて
見
(
み
)
せる。
082
虎公
(
とらこう
)
『そのスタイルは
何
(
なん
)
だ。
083
みつともないぞ』
084
塀
(
へい
)
を
隔
(
へだ
)
てた
次
(
つぎ
)
の
屋敷
(
やしき
)
所謂
(
いはゆる
)
上館
(
かみやかた
)
の
広庭
(
ひろには
)
には、
085
数多
(
あまた
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
のワイワイと
悦
(
よろこ
)
び
騒
(
さわ
)
ぎ
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ふ
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
086
虎公
(
とらこう
)
『オイ
玉公
(
たまこう
)
、
087
あの
声
(
こゑ
)
は
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
だ』
088
玉公
(
たまこう
)
『あれかい、
089
ありや
貴様
(
きさま
)
、
090
俺
(
おれ
)
が
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
た
黒姫
(
くろひめ
)
さまと
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
が
出来
(
でき
)
たので、
091
あゝワイワイ
騒
(
さわ
)
いで
居
(
を
)
るのだ。
092
貴様
(
きさま
)
らは
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
が
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
つて
踊
(
をど
)
つて
居
(
を
)
るのを
神妙
(
しんめう
)
に
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだよ。
093
万一
(
まんいち
)
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
が
喧嘩
(
けんくわ
)
でもオツ
初
(
ぱじ
)
めよつたら、
094
喧嘩
(
けんくわ
)
の
仲裁
(
ちうさい
)
をするのだ。
095
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はあまり
喧嘩
(
けんくわ
)
が
無
(
な
)
いので、
096
侠客
(
けふかく
)
として
張合
(
はりあひ
)
が
脱
(
ぬ
)
けただらう。
097
屹度
(
きつと
)
喧嘩
(
けんくわ
)
があの
調子
(
てうし
)
では
突発
(
とつぱつ
)
するだらうから、
098
貴様
(
きさま
)
の
売出
(
うりだ
)
す
時機
(
じき
)
が
来
(
き
)
たのだ』
099
虎公
(
とらこう
)
『そいつは
面白
(
おもしろ
)
い。
100
早
(
はや
)
く
喧嘩
(
けんくわ
)
がオツ
初
(
ぱじ
)
まらぬかいなア』
101
房公
(
ふさこう
)
『モシモシ
門番
(
もんばん
)
さま、
102
本当
(
ほんたう
)
に
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
が
出来
(
でき
)
たのですか』
103
玉公
(
たまこう
)
『サア、
104
シツカリした
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
らないが、
105
あの
嬉
(
うれ
)
し
相
(
さう
)
な
声
(
こゑ
)
から
聞
(
き
)
くと
屹度
(
きつと
)
目出度
(
めでた
)
いに
違
(
ちが
)
ひない。
106
テツキリ
最前
(
さいぜん
)
来
(
き
)
た
黒姫
(
くろひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
婆
(
ばあ
)
さまは、
107
此処
(
ここ
)
の
大将
(
たいしやう
)
のお
母
(
かあ
)
さまらしいわい』
108
房公
(
ふさこう
)
『ヤアそりや
有難
(
ありがた
)
い。
109
これで
俺
(
おれ
)
も
肩
(
かた
)
の
荷
(
に
)
が
下
(
お
)
りたやうだ。
110
ナア
芳公
(
よしこう
)
、
111
嬉
(
うれ
)
しいぢやないか』
112
芳公
(
よしこう
)
『
俺
(
おれ
)
は
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
113
あんまり
嬉
(
うれ
)
しうないわ。
114
も
一
(
ひと
)
つ
何処
(
どこ
)
やらに
物足
(
ものた
)
らぬ
心持
(
こころもち
)
がしてならない。
115
そう
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
通
(
どほ
)
りうまく
行
(
い
)
つたか
知
(
し
)
らぬがなア』
116
房公
(
ふさこう
)
『あゝそれでもあの
通
(
とほ
)
り
嬉
(
うれ
)
しさうに
大勢
(
おほぜい
)
が
騒
(
さわ
)
いで
居
(
を
)
るぢやないか』
117
芳公
(
よしこう
)
『さあ、
118
それもさうだなア』
119
虎公
(
とらこう
)
『
今日
(
けふ
)
は
建国別
(
たけくにわけ
)
様
(
さま
)
が
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
へ
御
(
ご
)
養子
(
やうし
)
にお
入来
(
いで
)
遊
(
あそ
)
ばした
満
(
まん
)
一周
(
いつしう
)
年
(
ねん
)
のお
祝
(
いはひ
)
だから、
120
それで
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
が
祝酒
(
いはひざけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて
騒
(
さわ
)
いで
居
(
ゐ
)
るのだらうよ。
121
そこへ
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
其
(
その
)
大将
(
たいしやう
)
の
母親
(
ははおや
)
だつたら、
122
それこそ
大
(
たい
)
したものだ、
123
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
の
大騒動
(
おほさうどう
)
だ。
124
否
(
いや
)
大祝
(
おほいはひ
)
だ。
125
ナア
玉公
(
たまこう
)
、
126
お
前
(
まへ
)
は
如何
(
どう
)
思
(
おも
)
ふか』
127
虎公
(
とらこう
)
は
隔
(
へだ
)
ての
塀
(
へい
)
の
小
(
ちひ
)
さき
武者窓
(
むしやまど
)
から
背伸
(
せの
)
びをし
乍
(
なが
)
ら、
128
上館
(
かみやかた
)
の
庭前
(
ていぜん
)
の
酒宴
(
しゆえん
)
の
席
(
せき
)
を
一寸
(
ちよつと
)
眺
(
なが
)
め、
129
虎公
(
とらこう
)
『エー
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
行儀
(
げうぎ
)
の
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
ばつかりだ。
130
真裸
(
まつぱだか
)
になつて
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うて
無礼講
(
ぶれいかう
)
を
遺憾
(
ゐかん
)
なくやつて
居
(
ゐ
)
やがる。
131
俺
(
おれ
)
も
俄
(
にはか
)
に
何
(
なん
)
だか
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
みたくなつて
来
(
き
)
た。
132
此処
(
ここ
)
の
奴
(
やつ
)
は
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
奴
(
やつ
)
ばつかりだな。
133
虎公
(
とらこう
)
が
来
(
き
)
て
御座
(
ござ
)
るのに
徳利
(
とくり
)
一
(
ひと
)
つ
下
(
さ
)
げて
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
は
無
(
な
)
いと
見
(
み
)
えるわい。
134
ウン、
135
此処
(
ここ
)
に
無花果
(
いちじゆく
)
が
沢山
(
たくさん
)
になつて
居
(
ゐ
)
る。
136
之
(
これ
)
を
むし
つて
宴会
(
えんくわい
)
の
席
(
せき
)
に
放
(
ほ
)
かしてやらう。
137
随分
(
ずゐぶん
)
面白
(
おもしろ
)
うなるだらう』
138
と
独言
(
ひとりごと
)
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
139
三四十
(
さんしじふ
)
許
(
ばか
)
り
むし
つては
高塀
(
たかへい
)
越
(
ご
)
しに
投
(
な
)
げつける。
140
数多
(
あまた
)
の
泥酔者
(
よひどれ
)
は
垣
(
かき
)
の
外
(
そと
)
から、
141
虎公
(
とらこう
)
が
斯
(
こ
)
んな
悪戯
(
いたづら
)
をして
居
(
ゐ
)
るとは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らずに、
142
甲
(
かふ
)
『ヤイコラ、
143
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
144
俺
(
おれ
)
の
頭
(
あたま
)
に
無花果
(
いちじゆく
)
をカツつけやがつたのは
貴様
(
きさま
)
だらう』
145
乙
(
おつ
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのだ。
146
最前
(
さいぜん
)
から
俺
(
おれ
)
が
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
れば
俺
(
おれ
)
の
脳天
(
なうてん
)
へブツつけやがつて
俺
(
おれ
)
があてたなんて、
147
能
(
よ
)
うそんな
事
(
こと
)
が
言
(
い
)
へたものだ。
148
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
貴様
(
きさま
)
は
俺
(
おれ
)
に
喧嘩
(
けんくわ
)
を
買
(
か
)
ふ
積
(
つも
)
りだなア。
149
よし
斯
(
こ
)
う
見
(
み
)
えても
俺
(
おれ
)
は
虎公
(
とらこう
)
の
一
(
いち
)
の
乾児
(
こぶん
)
だぞ。
150
熊公
(
くまこう
)
の
腕
(
うで
)
を
見
(
み
)
せてやらうか』
151
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
152
徳利
(
とくり
)
を
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げて
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
す
其
(
その
)
権幕
(
けんまく
)
に、
153
一同
(
いちどう
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は『キヤツキヤツ』と
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
逃
(
に
)
げ
廻
(
まは
)
る。
154
熊公
(
くまこう
)
は
酒
(
さけ
)
の
勢
(
いきほひ
)
に
乗
(
じやう
)
じて
手当
(
てあた
)
り
次第
(
しだい
)
、
155
鉢
(
はち
)
を
投
(
な
)
げる、
156
徳利
(
とくり
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
す、
157
ガチヤンガチヤン ドタンバタンの
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎが
塀
(
へい
)
の
外
(
そと
)
迄
(
まで
)
手
(
て
)
にとる
如
(
ごと
)
く
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
158
虎公
(
とらこう
)
は
自分
(
じぶん
)
の
乾児
(
こぶん
)
の
熊公
(
くまこう
)
が
乱暴
(
らんばう
)
と
見
(
み
)
てとり、
159
矢庭
(
やには
)
に
高塀
(
たかへい
)
に
両手
(
りやうて
)
を
掛
(
か
)
け、
160
モンドリ
打
(
う
)
つて
園内
(
えんない
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
161
虎公
(
とらこう
)
『こりやこりや、
162
待
(
ま
)
て、
163
熊公
(
くまこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
164
何
(
なに
)
乱暴
(
らんばう
)
をするか』
165
熊公
(
くまこう
)
はヘベレケに
酔
(
よ
)
うて、
166
目
(
め
)
も
碌
(
ろく
)
に
見
(
み
)
えなくなつて
居
(
ゐ
)
た。
167
熊公
(
くまこう
)
『ナヽヽヽ
何
(
なん
)
だ。
168
俺
(
おれ
)
を
誰
(
たれ
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
169
武野
(
たけの
)
の
村
(
むら
)
に
隠
(
かく
)
れなき
大侠客
(
だいけふかく
)
、
170
虎公
(
とらこう
)
さまを
親分
(
おやぶん
)
に
持
(
も
)
つ
熊公
(
くまこう
)
だぞ。
171
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬか
)
すと
何方
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
生首
(
なまくび
)
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
いてやらうかい。
172
ヘン、
173
馬鹿
(
ばか
)
野郎
(
やらう
)
奴
(
め
)
、
174
何
(
なに
)
を
熊
(
くま
)
さまのする
事
(
こと
)
に
横鎗
(
よこやり
)
を
入
(
い
)
れやがるのだ。
175
糞面白
(
くそおもしろ
)
くも
無
(
ね
)
えや。
176
ゲヽヽヽヽガラガラガラ ウワツプツプツプツ』
177
虎公
(
とらこう
)
は
矢庭
(
やには
)
に
熊公
(
くまこう
)
の
横面
(
よこづら
)
を、
178
首
(
くび
)
も
飛
(
と
)
べよとばかり
平手
(
ひらて
)
でピシヤツと
殴
(
なぐ
)
りつけた。
179
熊公
(
くまこう
)
は
不意
(
ふい
)
を
喰
(
くら
)
つてヒヨロヒヨロと
五歩
(
いつあし
)
六歩
(
むあし
)
後
(
あと
)
に
下
(
さが
)
つてドスンと
仰向
(
あふむ
)
けに
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
180
虎公
(
とらこう
)
『オイ
熊
(
くま
)
、
181
しつかりせぬかい。
182
斯
(
こ
)
んな
目出度
(
めでた
)
い
席上
(
せきじやう
)
で
何
(
なに
)
乱暴
(
らんばう
)
するのだい』
183
熊公
(
くまこう
)
『こりやアこりやア
親方
(
おやかた
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか、
184
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ。
185
こない
暴
(
あば
)
れるのぢや
無
(
な
)
かつたけれど、
186
八公
(
はちこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
187
失礼
(
しつれい
)
な、
188
熊
(
くま
)
さまの
頭
(
あたま
)
へ
無花果
(
いちじゆく
)
をカツつけやがつたものだから……
俺
(
おれ
)
の
頭
(
あたま
)
は
虎公
(
とらこう
)
の
息
(
いき
)
がかかつた
頭
(
あたま
)
だ。
189
貴様
(
きさま
)
のやうな
奴
(
やつ
)
に
殴
(
なぐ
)
られて
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
つては
親分
(
おやぶん
)
の
面汚
(
つらよご
)
しだから、
190
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
立
(
た
)
つて
腸
(
はらわた
)
がニヽヽヽ
煮
(
に
)
え
繰返
(
くりかへ
)
つて、
191
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
酪酊
(
めいてい
)
して
斯
(
こ
)
んな
乱暴
(
らんばう
)
をやりました。
192
なア
親方
(
おやかた
)
、
193
右
(
みぎ
)
の
様
(
やう
)
な
次第
(
しだい
)
でげえすから
何卒
(
どうぞ
)
燗酒
(
かんざけ
)
に
見直
(
みなほ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
194
ゲープーあゝえらいえらいひどい
事
(
こと
)
、
195
酒
(
さけ
)
に
悪酔
(
わるよ
)
ひして
了
(
しま
)
つた。
196
何
(
なに
)
しろ
安価
(
やす
)
い
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
ましやがるものだから、
197
薩張
(
さつぱり
)
腸
(
はらわた
)
も
何
(
なに
)
も
台無
(
だいな
)
しにして
了
(
しま
)
つた』
198
虎公
(
とらこう
)
『
皆
(
みな
)
さま、
199
何卒
(
どうぞ
)
元
(
もと
)
のお
席
(
せき
)
にお
着
(
つ
)
き
下
(
くだ
)
さいませ。
200
熊公
(
くまこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
201
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
ひ
乱暴
(
らんばう
)
致
(
いた
)
しまして
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ。
202
私
(
わたし
)
が
代
(
かは
)
つてお
詫
(
わび
)
致
(
いた
)
します』
203
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
一同
(
いちどう
)
はヤツと
安心
(
あんしん
)
したものの
如
(
ごと
)
く
元
(
もと
)
の
座
(
ざ
)
に
着
(
つ
)
いた。
204
虎公
(
とらこう
)
は
熊公
(
くまこう
)
を
引抱
(
ひつかか
)
へ、
205
上館
(
かみやかた
)
の
表門
(
おもてもん
)
から
迂回
(
うくわい
)
して
門口
(
もんぐち
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
た。
206
此
(
この
)
時
(
とき
)
婢女
(
はしため
)
のお
種
(
たね
)
と
云
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
、
207
門口
(
かどぐち
)
の
騒
(
さわ
)
がしさに
不審
(
ふしん
)
を
起
(
おこ
)
し、
208
慌
(
あわただ
)
しく
襷
(
たすき
)
の
儘
(
まま
)
馳来
(
はせきた
)
り、
209
お
種
(
たね
)
『まアまアこれは
虎公
(
とらこう
)
さまで
御座
(
ござ
)
いますか。
210
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
211
何卒
(
どうぞ
)
まア、
212
お
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいまし』
213
虎公
(
とらこう
)
『いえいえ、
214
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
のお
許
(
ゆる
)
しある
迄
(
まで
)
は
此処
(
ここ
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
りませう。
215
然
(
しか
)
し
此処
(
ここ
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
さまと
言
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
が
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
る
筈
(
はず
)
だ。
216
其
(
その
)
黒姫
(
くろひめ
)
さまのお
伴
(
とも
)
の
芳公
(
よしこう
)
、
217
房公
(
ふさこう
)
と
云
(
い
)
ふ
二人
(
ふたり
)
の
者
(
もの
)
が
門口
(
かどぐち
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を、
218
一寸
(
ちよつと
)
奥
(
おく
)
へ
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さい』
219
お
種
(
たね
)
『
武野村
(
たけのむら
)
の
親分
(
おやぶん
)
虎公
(
とらこう
)
さま、
220
確
(
たしか
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます。
221
何卒
(
どうぞ
)
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい』
222
と
足軽
(
あしがる
)
に
中門
(
なかもん
)
の
中
(
なか
)
へ
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
仕舞
(
しま
)
つた。
223
暫
(
しばら
)
くすると
黒姫
(
くろひめ
)
は
建国別
(
たけくにわけ
)
、
224
建能姫
(
たけのひめ
)
、
225
建彦
(
たけひこ
)
、
226
幾公
(
いくこう
)
に
送
(
おく
)
られ、
227
中門
(
なかもん
)
をサツと
開
(
ひら
)
いて
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
徐々
(
しづしづ
)
とやつて
来
(
き
)
た。
228
虎公
(
とらこう
)
『ヤアこれはこれは
建国別
(
たけくにわけ
)
様
(
さま
)
、
229
建能姫
(
たけのひめ
)
様
(
さま
)
、
230
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
を
いかい
お
世話
(
せわ
)
で
御座
(
ござ
)
いましたらう。
231
如何
(
どう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたな、
232
御
(
ご
)
因縁
(
いんねん
)
の
解決
(
かいけつ
)
がつきましたか』
233
建国別
(
たけくにわけ
)
『ア、
234
貴方
(
あなた
)
は
虎公
(
とらこう
)
の
親分
(
おやぶん
)
さま、
235
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
236
さア
何卒
(
どうぞ
)
奥
(
おく
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
237
此処
(
ここ
)
は
門
(
もん
)
の
前
(
まへ
)
、
238
今日
(
けふ
)
は
幸
(
さいは
)
ひ
私
(
わたくし
)
が
此処
(
ここ
)
に
参
(
まゐ
)
つた
一周
(
いつしう
)
年
(
ねん
)
の
祝
(
いはひ
)
、
239
何卒
(
どうぞ
)
皆
(
みな
)
さま、
240
何
(
なに
)
もありませぬがお
酒
(
さけ
)
なつと
飲
(
あが
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
241
虎公
(
とらこう
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
242
乍併
(
しかしながら
)
此処
(
ここ
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
をして
参
(
まゐ
)
つた
房
(
ふさ
)
、
243
芳
(
よし
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
ります。
244
そして
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
は
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
縁類
(
えんるゐ
)
の
方
(
かた
)
ではありませぬでしたかな』
245
建国別
(
たけくにわけ
)
『はい、
246
全
(
まつた
)
く
違
(
ちが
)
ひました』
247
虎公
(
とらこう
)
『それはそれは
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
248
オイ
房公
(
ふさこう
)
、
249
芳公
(
よしこう
)
、
250
薩張
(
さつぱり
)
駄目
(
だめ
)
だ、
251
観念
(
かんねん
)
せい。
252
もう
斯
(
こ
)
うなりや
仕方
(
しかた
)
がないわ。
253
矢張
(
やつぱり
)
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
迄
(
まで
)
お
伴
(
とも
)
して
高山彦
(
たかやまひこ
)
、
254
黒姫
(
くろひめ
)
の
戦争
(
せんそう
)
を
観戦
(
くわんせん
)
するより
道
(
みち
)
はないわ』
255
房公
(
ふさこう
)
『
私
(
わたし
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
の
従者
(
じゆうしや
)
房公
(
ふさこう
)
、
256
芳公
(
よしこう
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
257
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
が
永
(
なが
)
らくお
邪魔
(
じやま
)
しましてお
忙
(
いそが
)
しい
中
(
なか
)
を
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ』
258
建国別
(
たけくにわけ
)
『いえいえ
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しまして……
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
御
(
ご
)
訪問
(
はうもん
)
下
(
くだ
)
さいまして
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
者
(
もの
)
は
感涙
(
かんるゐ
)
に
咽
(
むせ
)
んで
居
(
を
)
ります。
259
何卒
(
どうぞ
)
そんな
事
(
こと
)
言
(
い
)
はずに
奥
(
おく
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さつて、
260
お
酒
(
さけ
)
でも
一
(
ひと
)
つお
飲
(
あが
)
りなさつて
下
(
くだ
)
さいませ』
261
虎公
(
とらこう
)
『オイ
房公
(
ふさこう
)
、
262
芳公
(
よしこう
)
あの
通
(
とほ
)
り
親切
(
しんせつ
)
に
仰有
(
おつしや
)
るのだから、
263
折角
(
せつかく
)
のお
志
(
こころざし
)
だ、
264
無
(
む
)
にするのも
済
(
す
)
まないから
一杯
(
いつぱい
)
よばれて
来
(
こ
)
ようぢやないか』
265
房公
(
ふさこう
)
『さうだ。
266
一杯
(
いつぱい
)
頂戴
(
ちやうだい
)
したいものだね……なア
芳公
(
よしこう
)
、
267
貴様
(
きさま
)
もあまり
下戸
(
げこ
)
でもあるまい、
268
一
(
ひと
)
つ
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
にならうか』
269
建能姫
(
たけのひめ
)
『
何卒
(
どうぞ
)
皆
(
みな
)
さま
揃
(
そろ
)
うて
奥
(
おく
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
270
差上
(
さしあ
)
げる
物
(
もの
)
とては
別
(
べつ
)
に
何
(
なに
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬが、
271
お
酒
(
さけ
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
用意
(
ようい
)
してありますから、
272
早
(
はや
)
く
此方
(
こちら
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
273
サア
吾
(
わが
)
夫様
(
つまさま
)
、
274
奥
(
おく
)
へ
参
(
まゐ
)
りませう。
275
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
も
余
(
あま
)
りお
急
(
いそ
)
ぎでなくば、
276
お
伴
(
とも
)
の
方
(
かた
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
奥
(
おく
)
の
方
(
はう
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
して
下
(
くだ
)
さつたら
如何
(
どう
)
でせうか』
277
黒姫
(
くろひめ
)
『ハイ、
278
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
いますが、
279
妾
(
わたし
)
は
何
(
なん
)
となく
心
(
こころ
)
が
急
(
せ
)
きますから
是
(
これ
)
で
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
ります。
280
御縁
(
ごえん
)
が
御座
(
ござ
)
いますれば
又
(
また
)
お
目
(
め
)
にかかりませう』
281
建国別
(
たけくにわけ
)
『
何卒
(
どうぞ
)
、
282
先生
(
せんせい
)
にお
会
(
あ
)
ひになりましたら、
283
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
者
(
もの
)
が
宜
(
よろ
)
しく
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
つたとお
伝
(
つた
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ。
284
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
を
言
(
い
)
へば、
285
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
貴女
(
あなた
)
を
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
迄
(
まで
)
お
送
(
おく
)
り
申上
(
まをしあ
)
げるのが
本意
(
ほんい
)
ですが、
286
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
今日
(
けふ
)
は
斯様
(
かやう
)
の
次第
(
しだい
)
ですから
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
します。
287
せめて
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
下
(
くだ
)
さいますれば、
288
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
者
(
もの
)
が
御
(
お
)
送
(
おく
)
り
申上
(
まをしあ
)
げるのですが、
289
余
(
あま
)
り
貴女
(
あなた
)
がお
急
(
せ
)
き
遊
(
あそ
)
ばすから
致方
(
いたしかた
)
ありませぬ。
290
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
の
段
(
だん
)
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
291
黒姫
(
くろひめ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う。
292
永々
(
ながなが
)
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になりました。
293
房公
(
ふさこう
)
、
294
芳公
(
よしこう
)
、
295
二人
(
ふたり
)
はゆつくりお
酒
(
さけ
)
なつと
頂戴
(
ちやうだい
)
して
何処
(
どこ
)
なつと
行
(
ゆ
)
きなさい』
296
と
稍
(
やや
)
捨鉢
(
すてばち
)
気味
(
ぎみ
)
になつて
夫婦
(
ふうふ
)
に
目礼
(
もくれい
)
し、
297
サツサと
足早
(
あしばや
)
に
門前
(
もんぜん
)
の
小径
(
こみち
)
を
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
298
玉公
(
たまこう
)
外
(
ほか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
館
(
やかた
)
の
番頭役
(
ばんとうやく
)
たる
建彦
(
たけひこ
)
や
幾公
(
いくこう
)
に
勧
(
すす
)
められ、
299
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
300
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
つた
房公
(
ふさこう
)
、
301
芳公
(
よしこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ
舌
(
した
)
を
噛
(
か
)
み
稍
(
やや
)
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
呆
(
あき
)
れ
顔
(
がほ
)
……。
302
房公
(
ふさこう
)
『オイ
芳公
(
よしこう
)
、
303
如何
(
どう
)
しよう。
304
酒
(
さけ
)
も
呑
(
の
)
み
度
(
た
)
いが、
305
黒姫
(
くろひめ
)
さまのあの
気色
(
けしき
)
では、
306
目算
(
もくさん
)
が
外
(
はづ
)
れ、
307
落胆
(
らくたん
)
の
余
(
あま
)
り
谷川
(
たにがは
)
へ
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げて
死
(
し
)
ぬ
様
(
やう
)
な
勢
(
いきほひ
)
だつたよ。
308
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
しては
居
(
を
)
られない。
309
サア
之
(
これ
)
から
後
(
あと
)
を
追駆
(
おつかけ
)
て
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちの
無
(
な
)
い
様
(
やう
)
に
行
(
ゆ
)
かうぢや
無
(
な
)
いか』
310
芳公
(
よしこう
)
『おい、
311
さうだ。
312
お
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
しては
居
(
を
)
られない。
313
サア
行
(
ゆ
)
かう』
314
と
両人
(
りやうにん
)
は
捩鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をグツと
締
(
し
)
め、
315
尻端折
(
しりはしを
)
つて
元
(
もと
)
来
(
き
)
た
道
(
みち
)
をトントンと
地響
(
ぢひび
)
きさせ
乍
(
なが
)
ら、
316
黒姫
(
くろひめ
)
の
後
(
あと
)
を
探
(
たづ
)
ねて
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
317
(
大正一一・九・一三
旧七・二二
北村隆光
録)
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