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第34巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 筑紫の不知火
01 筑紫上陸
〔942〕
02 孫甦
〔943〕
03 障文句
〔944〕
04 歌垣
〔945〕
05 対歌
〔946〕
06 蜂の巣
〔947〕
07 無花果
〔948〕
08 暴風雨
〔949〕
第2篇 有情無情
09 玉の黒点
〔950〕
10 空縁
〔951〕
11 富士咲
〔952〕
12 漆山
〔953〕
13 行進歌
〔954〕
14 落胆
〔955〕
15 手長猿
〔956〕
16 楽天主義
〔957〕
第3篇 峠の達引
17 向日峠
〔958〕
18 三人塚
〔959〕
19 生命の親
〔960〕
20 玉卜
〔961〕
21 神護
〔962〕
22 蛙の口
〔963〕
23 動静
〔964〕
余白歌
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第二二章
蛙
(
かはづ
)
の
口
(
くち
)
〔九六三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻
篇:
第3篇 峠の達引
よみ(新仮名遣い):
とうげのたてひき
章:
第22章 蛙の口
よみ(新仮名遣い):
かわずのくち
通し章番号:
963
口述日:
1922(大正11)年09月14日(旧07月23日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
矢方の村の大蛇の三公の館では、三公が子分たちの慰労会を開いていた。高公は、三公がお愛を殺し、二人の男を生き埋めにしたことを気分悪く思い、そのことを愚痴にしてやけ酒を飲んでいる。
徳公は、実は親分はお愛を殺しておらず、生きたまま息ができるようにして埋めておいて、自分に掘り出させて恩義を感じさせる計略なのだ、と酒の席で明かしてしまう。一方で六公たちを遣わして虎公を亡き者にし、お愛の心を靡かせようというのである。
与三公は、徳公にお愛を掘り出しに行けと催促するが、徳公は酒を飲みすぎて管を巻いている。そこへ六公の一団が帰ってきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-20 13:43:27
OBC :
rm3422
愛善世界社版:
278頁
八幡書店版:
第6輯 462頁
修補版:
校定版:
288頁
普及版:
120頁
初版:
ページ備考:
001
矢方
(
やかた
)
の
村
(
むら
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
が
館
(
やかた
)
には、
002
何
(
なん
)
となく
物騒
(
ものさわ
)
がしき
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
003
夜前
(
やぜん
)
の
一件
(
いつけん
)
に
就
(
つい
)
て、
004
三公
(
さんこう
)
は
兄弟分
(
きやうだいぶん
)
や
乾児
(
こぶん
)
に
対
(
たい
)
し
慰労会
(
ゐらうくわい
)
を
催
(
もよほ
)
して
居
(
ゐ
)
たのであつた。
005
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
は
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りにうまい
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うて、
006
口々
(
くちぐち
)
に
四辺
(
あたり
)
構
(
かま
)
はず
喋
(
しやべ
)
り
出
(
だ
)
した。
007
甲
(
かふ
)
(徳公)
『オイ、
008
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
009
何
(
なん
)
と
甘
(
うめ
)
え
酒
(
さけ
)
で
無
(
ね
)
えか。
010
俺
(
おれ
)
ア
今日
(
けふ
)
で
丁度
(
ちやうど
)
二
(
に
)
ケ
月
(
げつ
)
ばかり
斯
(
こ
)
んな
甘
(
うめ
)
え
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだ
事
(
こと
)
はないわ。
011
時々
(
ときどき
)
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
があれば
宜
(
え
)
えけどな』
012
乙
(
おつ
)
(高公)
『こりや、
013
徳
(
とく
)
、
014
貴様
(
きさま
)
はこんな
水臭
(
みづくさ
)
い
酒
(
さけ
)
を
甘
(
うめ
)
えと
吐
(
ぬか
)
しやがつたが、
015
余程
(
よほど
)
下司口
(
げすぐち
)
だな。
016
こんな
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
む
位
(
ぐらゐ
)
なら
泥水
(
どろみづ
)
でも
飲
(
の
)
んだ
方
(
はう
)
が、
017
何程
(
なにほど
)
気持
(
きもち
)
がいいか
分
(
わか
)
りやしないよ』
018
徳
(
とく
)
は
泣声
(
なきごゑ
)
になつて、
019
徳公
(
とくこう
)
『こりや、
020
高公
(
たかこう
)
、
021
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
勿体
(
もつたい
)
無
(
ね
)
え
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふのだ。
022
それ
程
(
ほど
)
悪
(
わる
)
い
酒
(
さけ
)
なら
何故
(
なぜ
)
ガブガブと
飲
(
の
)
んだのだい』
023
高公
(
たかこう
)
『あまり
此処
(
ここ
)
の
親分
(
おやぶん
)
が
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
をしやがるので
癪
(
しやく
)
に
触
(
さは
)
つて
仕方
(
しかた
)
がないから、
024
焼糞
(
やけくそ
)
になつて
一杯
(
いつぱい
)
飲
(
の
)
んでやつたのだ。
025
酒
(
さけ
)
なつと
飲
(
の
)
まねばお
愛
(
あい
)
の
幽霊
(
いうれい
)
が
何時
(
いつ
)
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るか
分
(
わか
)
つたものぢやないわ、
026
小気味
(
こぎみ
)
が
悪
(
わる
)
い。
027
それだから
味
(
あぢ
)
なくもない
嫌
(
きら
)
ひ……でも
無
(
な
)
い
酒
(
さけ
)
を
辛抱
(
しんばふ
)
して
飲
(
の
)
んでやるのだ』
028
徳公
(
とくこう
)
『
勿体
(
もつたい
)
ない
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふな。
029
こんな
結構
(
けつこう
)
な
酒
(
さけ
)
があるものか。
030
貴様
(
きさま
)
今
(
いま
)
幽霊
(
いうれい
)
が
出
(
で
)
ると
吐
(
ぬか
)
しやがつたが、
031
生
(
いき
)
た
人間
(
にんげん
)
は
幽霊
(
いうれい
)
になつて
堪
(
たま
)
るかい』
032
高公
(
たかこう
)
『それだといつて、
033
お
愛
(
あい
)
を
現在
(
げんざい
)
殺
(
ころ
)
したぢやないか。
034
さうして
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
をフン
縛
(
じば
)
つて
生埋
(
いきうめ
)
にしたぢやないか。
035
どんな
強
(
つよ
)
い
男
(
をとこ
)
だつて
土中
(
どちう
)
に
埋
(
う
)
められ、
036
あんな
重
(
おも
)
たい
石
(
いし
)
を
載
(
の
)
せられちや
往生
(
わうじやう
)
せずには
居
(
を
)
られないわ。
037
屹度
(
きつと
)
今夜
(
こんや
)
あたり
貴様
(
きさま
)
の
素首
(
そつくび
)
を
引
(
ひ
)
つこ
抜
(
ぬ
)
きに
来
(
く
)
るから
用心
(
ようじん
)
せいよ』
038
徳公
(
とくこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
039
そこには
底
(
そこ
)
があり
蓋
(
ふた
)
もあるのだ。
040
お
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
ア
決
(
けつ
)
して
死
(
し
)
んでは
居
(
ゐ
)
やせぬ。
041
彼奴
(
あいつ
)
ずるいから
死真似
(
しにまね
)
をして
居
(
ゐ
)
やがつたのだ。
042
親分
(
おやぶん
)
が
ちやん
と
其
(
その
)
呼吸
(
こきふ
)
を
計
(
はか
)
つて
死
(
し
)
んだにして
了
(
しま
)
つたのだ。
043
外
(
ほか
)
の
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
だつて
其
(
その
)
通
(
とほ
)
り
疵
(
きず
)
一
(
ひと
)
つした
奴
(
やつ
)
はない、
044
兼公
(
かねこう
)
の
野郎
(
やらう
)
でも
只
(
ただ
)
縛
(
しば
)
りあげた
丈
(
だけ
)
の
事
(
こと
)
だ。
045
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
一所
(
いつしよ
)
にまつべて
置
(
お
)
いたのは
互
(
たがひ
)
の
温味
(
ぬくみ
)
を
保
(
たも
)
たす
為
(
た
)
めだ。
046
そして
頭
(
あたま
)
の
処
(
ところ
)
に
細
(
ほそ
)
い
穴
(
あな
)
をあけ、
047
息
(
いき
)
の
通
(
かよ
)
ふ
様
(
やう
)
にしてあるのだよ。
048
そこは
与三公
(
よさこう
)
哥兄
(
あにい
)
が
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで、
049
如才
(
じよさい
)
なくしてあるのだよ。
050
お
前
(
まへ
)
は
端
(
はし
)
くれの
人足
(
にんそく
)
だからそこ
迄
(
まで
)
は
分
(
わか
)
るめえ』
051
高公
(
たかこう
)
『それでも、
052
あれ
丈
(
だ
)
け
重
(
おも
)
たい
石
(
いし
)
を
沢山
(
たくさん
)
載
(
の
)
せられちや、
053
身体
(
からだ
)
も
何
(
なに
)
も
潰
(
め
)
げて
了
(
しま
)
ふぢやないか』
054
徳公
(
とくこう
)
『
貴様
(
きさま
)
は
馬鹿
(
ばか
)
だな。
055
あれ
丈
(
だ
)
け
親分
(
おやぶん
)
が
恋慕
(
れんぼ
)
して
居
(
ゐ
)
るお
愛
(
あい
)
を、
056
さうムザムザと
殺
(
ころ
)
しさうな
筈
(
はず
)
があるかい。
057
之
(
これ
)
には
深
(
ふか
)
い
計略
(
けいりやく
)
があるのだ。
058
あの
沢山
(
たくさん
)
に
積
(
つ
)
んだ
岩
(
いは
)
の
下
(
した
)
には、
059
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
決
(
けつ
)
して
埋
(
いか
)
つてあるのぢやない。
060
うまく
其
(
その
)
上
(
うへ
)
が
外
(
はづ
)
してあるのだ』
061
高公
(
たかこう
)
『
何
(
なん
)
で
又
(
また
)
そんな
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
をしたのだい』
062
徳公
(
とくこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
だなア、
063
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
には
親分
(
おやぶん
)
の
神謀
(
しんぼう
)
鬼策
(
きさく
)
は
分
(
わか
)
るものぢやない。
064
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
るなら
云
(
い
)
つて
聞
(
き
)
かせてやらう。
065
如何
(
どう
)
だ
他言
(
たごん
)
はせぬか』
066
高公
(
たかこう
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
誰
(
たれ
)
にも
云
(
い
)
はないから、
067
俺
(
おれ
)
に
其
(
その
)
訳
(
わけ
)
を
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れえ』
068
徳公
(
とくこう
)
『やあ
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて
寝
(
ふせ
)
りよつたな。
069
与三公
(
よさこう
)
の
哥兄
(
あにい
)
迄
(
まで
)
ズブ
六
(
ろく
)
に
酔
(
よ
)
うて
居
(
を
)
らあ。
070
そんなら
云
(
い
)
つてやらう。
071
抑
(
そもそ
)
も
其
(
その
)
理由
(
りいう
)
は
斯
(
こ
)
うだ。
072
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
はな、
073
遠国
(
ゑんごく
)
から
来
(
き
)
たものだからまだ
虎公
(
とらこう
)
やお
愛
(
あい
)
に
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
られて
居
(
を
)
らないのだ。
074
それを
幸
(
さいはひ
)
に
親分
(
おやぶん
)
から
頼
(
たの
)
まれたのだ。
075
之
(
これ
)
から
旅人
(
たびびと
)
の
装束
(
しやうぞく
)
をして
道
(
みち
)
に
迷
(
まよ
)
うた
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をし、
076
昨夕
(
ゆうべ
)
の
喧嘩場
(
けんくわば
)
へやつて
行
(
い
)
つて
土
(
つち
)
をクワイクワイと
掘上
(
ほりあ
)
げ、
077
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
を
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
し
先
(
ま
)
ず
一番
(
いちばん
)
にお
愛
(
あい
)
の
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
き
親切
(
しんせつ
)
さうに
水
(
みづ
)
でも
飲
(
の
)
まし、
078
懐中
(
ふところ
)
から
薬
(
くすり
)
でも
出
(
だ
)
して
与
(
あた
)
へてやり……
何処
(
どこ
)
のお
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
りませぬが
危
(
あやふ
)
い
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いました、
079
ネ、
080
わつちや
旅
(
たび
)
の
者
(
もの
)
でげえすが、
081
夜前
(
やぜん
)
此
(
この
)
辺
(
あたり
)
に
大喧嘩
(
おほげんくわ
)
があつたと
聞
(
き
)
き、
082
一寸
(
ちよつと
)
道寄
(
みちよ
)
りをして
探
(
さが
)
して
見
(
み
)
た
処
(
ところ
)
、
083
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
此処
(
ここ
)
に
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
大
(
おほ
)
きな
石
(
いし
)
が
積
(
つ
)
んである。
084
見
(
み
)
れば
土
(
つち
)
は
新
(
あたら
)
しい、
085
何
(
ど
)
うやら
昨夜
(
さくや
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
で
何人
(
なにびと
)
かが
殺
(
ころ
)
され、
086
埋
(
い
)
けられて
居
(
ゐ
)
るのであらう。
087
あゝ
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な、
088
何
(
なん
)
とかして
助
(
たす
)
けてやらうと
思
(
おも
)
ひやして、
089
之
(
これ
)
御覧
(
ごらん
)
なされ、
090
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
大
(
おほ
)
きな
石
(
いし
)
を
此処
(
ここ
)
に
積
(
つ
)
み
上
(
あ
)
げ
土
(
つち
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
けて
見
(
み
)
れば、
091
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
御
(
ご
)
遭難
(
さうなん
)
、
092
此奴
(
こいつ
)
ア
一
(
ひと
)
つ
助
(
たす
)
けねばなるまいと、
093
秘蔵
(
ひざう
)
の
薬
(
くすり
)
を
与
(
あた
)
へ
水
(
みづ
)
を
飲
(
の
)
ませた
処
(
ところ
)
が、
094
お
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
生
(
い
)
き
還
(
かへ
)
つて、
095
何
(
なん
)
と
斯
(
こ
)
んな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ……と
一
(
ひと
)
つかち
込
(
こ
)
むのだ。
096
さうするとお
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
、
097
優
(
やさ
)
しい
目
(
め
)
をしやがつて……
妾
(
わたし
)
は
虎公
(
とらこう
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
の
女房
(
にようばう
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
098
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
と
云
(
い
)
ふ
大親分
(
おほおやぶん
)
の
為
(
た
)
めに
斯
(
こ
)
んな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされ、
099
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
う
)
められて
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
ふ
処
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いましたが、
100
お
前
(
まへ
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
可惜
(
あたら
)
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
かり
斯
(
こ
)
んな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ、
101
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
の
旅人
(
たびびと
)
様
(
さま
)
、
102
何卒
(
どうぞ
)
妾
(
わたし
)
を
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
可愛
(
かあい
)
がつて
下
(
くだ
)
さいませ、
103
虎公
(
とらこう
)
が
何程
(
なにほど
)
偉
(
えら
)
いと
云
(
い
)
つても、
104
女房
(
にようばう
)
がこれ
丈
(
だ
)
け
偉
(
えら
)
い
目
(
め
)
に
合
(
あ
)
うて
居
(
ゐ
)
るのに、
105
夢
(
ゆめ
)
にも
御存
(
ごぞん
)
じないとはあまり
情
(
つれ
)
ない
男
(
をとこ
)
だ。
106
何卒
(
どうぞ
)
旅
(
たび
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
、
107
妾
(
わたし
)
の
力
(
ちから
)
になつて
下
(
くだ
)
さい…ヘン…なんて
吐
(
ぬか
)
しやがるのだ。
108
さアそうなれば
占
(
し
)
めたものだよ。
109
そこで
俺
(
おれ
)
が……これこれお
女中
(
ぢよちう
)
、
110
お
礼
(
れい
)
は
却
(
かへつ
)
て
痛
(
いた
)
み
入
(
い
)
る。
111
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
相見互
(
あひみたがひ
)
だ……とかますのだ。
112
さうするとお
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
は
俺
(
おれ
)
の
男前
(
をとこまへ
)
と
気前
(
きまへ
)
に
ぞつこん
惚込
(
ほれこ
)
みやがつて、
113
俺
(
おれ
)
が
右
(
みぎ
)
へ
向
(
む
)
けと
云
(
い
)
へばハイと
言
(
い
)
つて
右
(
みぎ
)
を
向
(
む
)
き、
114
左
(
ひだり
)
へ
向
(
む
)
けと
云
(
い
)
へばハイと
云
(
い
)
つて
左
(
ひだり
)
へ
向
(
む
)
くなり、
115
死
(
し
)
ねと
云
(
い
)
へばハイと
云
(
い
)
つて
死
(
し
)
ぬし、
116
肩
(
かた
)
を
打
(
う
)
てと
云
(
い
)
へば
肩
(
かた
)
を
打
(
う
)
つし、
117
随分
(
ずゐぶん
)
もてたものだよ。
118
オホヽヽヽ』
119
高公
(
たかこう
)
『オイ
徳
(
とく
)
、
120
涎
(
よだれ
)
が
落
(
お
)
ちるぞ。
121
見
(
み
)
つとも
無
(
な
)
い。
122
捕
(
とら
)
ぬ
狸
(
たぬき
)
の
皮算用
(
かはざんよう
)
しても
駄目
(
だめ
)
だぞ』
123
徳公
(
とくこう
)
『
何
(
なに
)
、
124
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
125
チヤーンと
確信
(
かくしん
)
があるのだから
滅多
(
めつた
)
に
外
(
はづ
)
れつこは
無
(
な
)
いわ』
126
高公
(
たかこう
)
『さうして
其
(
その
)
お
愛
(
あい
)
を
手
(
て
)
に
入
(
いれ
)
て
貴様
(
きさま
)
の
者
(
もの
)
にするのか。
127
大親分
(
おほおやぶん
)
に
返上
(
へんじやう
)
するのだらうな』
128
徳公
(
とくこう
)
『そこは、
129
うまく
徳公
(
とくこう
)
の
弁舌
(
べんぜつ
)
でチヨロまかし、
130
或
(
ある
)
山奥
(
やまおく
)
へ
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
131
一寸
(
ちよつと
)
した
小屋
(
こや
)
を
結
(
むす
)
んで……お
前
(
まへ
)
と
妾
(
わたし
)
と
添
(
そ
)
ふならば、
132
竹
(
たけ
)
の
柱
(
はしら
)
に
萱
(
かや
)
の
屋根
(
やね
)
、
133
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
の
棲処
(
すみか
)
でも
決
(
けつ
)
して
厭
(
いと
)
ひはせぬ
程
(
ほど
)
に、
134
コレ
徳
(
とく
)
さま、
135
何卒
(
どうぞ
)
妾
(
わたし
)
を
何
(
いづ
)
れの
山奥
(
やまおく
)
なりと
連
(
つ
)
れて
往
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
136
虎公
(
とらこう
)
や
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
にでも
見付
(
みつ
)
けられたら
大変
(
たいへん
)
だから……と
向方
(
むかう
)
から
急
(
せ
)
きたてられるのだ。
137
そこで
態
(
わざ
)
と
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
は
落
(
お
)
ちつき
払
(
はら
)
ひ……これお
愛
(
あい
)
、
138
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
、
139
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
が
居
(
ゐ
)
る
間
(
あひだ
)
は
虎公
(
とらこう
)
の
千匹
(
せんびき
)
や
万匹
(
まんびき
)
、
140
又
(
また
)
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
がどんなに
不足相
(
ふそくさう
)
に
云
(
い
)
つて
来
(
き
)
ても
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ……と
太
(
ふと
)
う
出
(
で
)
てやるのだ。
141
さうするとお
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
……
否々
(
いやいや
)
何程
(
なにほど
)
お
前
(
まへ
)
が
強
(
つよ
)
うても、
142
欺
(
だま
)
すに
手
(
て
)
なしと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
んす。
143
さあ
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
妾
(
わたし
)
を
奥山
(
おくやま
)
へ
連
(
つ
)
れていつて
下
(
くだ
)
さい……とお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばすにチヤンと
定
(
きま
)
つてるのだ。
144
そこで
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
が……エー
仕方
(
しかた
)
がない、
145
女子
(
ぢよし
)
と
小人
(
せうにん
)
は
養
(
やしな
)
ひ
難
(
がた
)
しだ、
146
然
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
がそれ
程
(
ほど
)
怖
(
こわ
)
がるのなら
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
山奥
(
やまおく
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つてやらう。
147
然
(
しか
)
し
決
(
けつ
)
して
夫婦
(
ふうふ
)
にならう
等
(
など
)
との
野心
(
やしん
)
を
起
(
おこ
)
しちや
可
(
い
)
けないぞ……と
高尚
(
かうしやう
)
に
出
(
で
)
るのだ。
148
さうするとお
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
、
149
益々
(
ますます
)
感心
(
かんしん
)
しやがつて、
150
終
(
しま
)
ひの
果
(
は
)
てにや
本気
(
ほんき
)
になつて
惚
(
ほ
)
れて
来
(
き
)
やがるのだ。
151
その
時
(
とき
)
甘
(
あま
)
い
顔
(
かほ
)
しちや
可
(
い
)
けない。
152
ピンと
一
(
ひと
)
つ
肱鉄砲
(
ひぢでつぱう
)
を
喰
(
か
)
ますのだ。
153
……
思
(
おも
)
ひきつて……さうするとお
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
益々
(
ますます
)
恋慕心
(
れんぼしん
)
が
募
(
つの
)
つて
来
(
く
)
る。
154
弾
(
はじ
)
かれた
女
(
をんな
)
には
益々
(
ますます
)
男
(
をとこ
)
が
熱心
(
ねつしん
)
になる
様
(
やう
)
に、
155
女
(
をんな
)
の
意地
(
いぢ
)
を
立
(
た
)
てておかねばならないと
妙
(
めう
)
な
処
(
ところ
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて、
156
俺
(
おれ
)
を
手込
(
てご
)
みにしようとするのだ。
157
そこで
俺
(
おれ
)
はツンと
澄
(
す
)
ました
顔
(
かほ
)
して……これこれ
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
としてあられもない
事
(
こと
)
をなさいますな。
158
みつともない……と
喰
(
くら
)
はすのだ。
159
お
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
益々
(
ますます
)
カツカとなり…(サワリ)ほんにまあ
女
(
をんな
)
の
心
(
こころ
)
と
男
(
をとこ
)
とは、
160
夫
(
それ
)
ほど
迄
(
まで
)
に
違
(
ちが
)
ふものかいな。
161
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
と
思
(
おも
)
ひつめ、
162
ホンに
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
男
(
をとこ
)
ぢやと、
163
思
(
おも
)
ひ
初
(
そ
)
めたが
病
(
や
)
みつきで、
164
恋
(
こひ
)
の
虜
(
とりこ
)
となりました。
165
もう
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は
徳公
(
とくこう
)
さま、
166
焚
(
た
)
いて
喰
(
く
)
はうと
煎
(
い
)
つて
炙
(
あぶ
)
つて
喰
(
く
)
はうとも、
167
貴方
(
あなた
)
のお
好
(
す
)
きに
紫壇竿
(
しだんざを
)
、
168
一筋縄
(
ひとすぢなは
)
で
行
(
ゆ
)
かぬ
此
(
この
)
女
(
をんな
)
、
169
何卒
(
どうぞ
)
三筋
(
みすぢ
)
の
糸
(
いと
)
で
引
(
ひ
)
き
殺
(
ころ
)
して
下
(
くだ
)
しやんせ、
170
拝
(
をが
)
むわいなと
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
し、
171
口説
(
くど
)
き
嘆
(
なげ
)
けば
徳公
(
とくこう
)
も、
172
轟
(
とどろ
)
く
胸
(
むね
)
をジツと
抑
(
おさ
)
へ、
173
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
は
察
(
さつ
)
すれども、
174
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
にも
国許
(
くにもと
)
には
可愛
(
かあい
)
い
女房
(
にようばう
)
がある。
175
如何
(
どう
)
して
二度目
(
にどめ
)
の
妻
(
つま
)
が
持
(
も
)
たれようか。
176
そこ
放
(
はな
)
しや……プリンと
背中
(
せなか
)
を
向
(
む
)
けるのだ。
177
さうするとお
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
……そんならもう
仕方
(
しかた
)
がない、
178
妾
(
わたし
)
は
之
(
これ
)
で
死
(
し
)
にます……と
九寸
(
くすん
)
五分
(
ごぶ
)
をスラリと
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
き、
179
アハヤ
喉
(
のんど
)
につき
立
(
た
)
てむとする。
180
徳公
(
とくこう
)
慌
(
あはただ
)
しく
引
(
ひ
)
き
止
(
と
)
め……やれ
待
(
ま
)
てお
愛
(
あい
)
、
181
お
前
(
まへ
)
の
心底
(
しんてい
)
見届
(
みとど
)
けた。
182
此
(
この
)
世
(
よ
)
は
愚
(
おろ
)
か
七生
(
しちしやう
)
迄
(
まで
)
も
誠
(
まこと
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
……と
喰
(
くは
)
すと
宜
(
よ
)
いのだが、
183
其処
(
そこ
)
はそれ、
184
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
と
云
(
い
)
ふ
大親分
(
おほおやぶん
)
が
後
(
あと
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
るのだから、
185
お
愛
(
あい
)
を
山奥
(
やまおく
)
の
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
に
連
(
つ
)
れ
行
(
ゆ
)
き……これお
愛
(
あい
)
どの、
186
一寸
(
ちよつと
)
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
は
買物
(
かひもの
)
にいつて
来
(
く
)
るから、
187
淋
(
さび
)
しからうが
留守
(
るす
)
をして
下
(
くだ
)
さい。
188
直
(
すぐ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るから……と
喰
(
か
)
まして
置
(
お
)
いてフイと
其処
(
そこ
)
を
外
(
はづ
)
すのだ。
189
さうすると
大蛇
(
をろち
)
の
親分
(
おやぶん
)
が、
190
与三公
(
よさこう
)
、
191
勘公
(
かんこう
)
等
(
ら
)
の
面々
(
めんめん
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れ、
192
其
(
その
)
小屋
(
こや
)
を
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
に
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
かせ
置
(
お
)
き、
193
自分
(
じぶん
)
が
否応
(
いやおう
)
云
(
い
)
はさず
責
(
せ
)
め
立
(
た
)
てるのだ。
194
何程
(
なにほど
)
嫌
(
いや
)
がつた
女
(
をんな
)
でも、
195
一辺
(
いつぺん
)
ウンと
云
(
い
)
はすれば、
196
もう
此方
(
こつち
)
の
者
(
もの
)
だ。
197
チヤンと
斯
(
こ
)
んな
段取
(
だんどり
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
るのだから
驚
(
おどろ
)
いたものだらう。
198
俺
(
おれ
)
の
責任
(
せきにん
)
も
重
(
ぢう
)
且
(
かつ
)
大
(
だい
)
なりと
云
(
い
)
ふべしだ』
199
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
200
一升
(
いつしよう
)
徳利
(
どくり
)
の
口
(
くち
)
から
又
(
また
)
もや
喇叭
(
らつぱ
)
飲
(
の
)
みを
初
(
はじ
)
める。
201
与三公
(
よさこう
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
行歩
(
かうほ
)
蹣跚
(
まんさん
)
として
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
202
与三
(
よさ
)
『やあ
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
意地
(
いぢ
)
汚
(
きたな
)
く
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れて
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
やがるな。
203
何
(
なん
)
だ、
204
そこら
中
(
ぢう
)
に
八百屋
(
はほや
)
を
開店
(
かいてん
)
しやがつて
臭
(
くさ
)
くて
居
(
を
)
られたものぢやない。
205
ヤアお
前
(
まへ
)
は
徳公
(
とくこう
)
じやないか』
206
徳公
(
とくこう
)
『へい、
207
徳利
(
とつくり
)
で
御座
(
ござ
)
います。
208
トク
とお
改
(
あらた
)
め
下
(
くだ
)
さいませ。
209
徳公
(
とくこう
)
の
徳利飲
(
とつくりの
)
みでげえすから
何卒
(
どうぞ
)
トク
心
(
しん
)
の
行
(
ゆ
)
くとこ
迄
(
まで
)
飲
(
の
)
まして
下
(
くだ
)
さい。
210
お
愛
(
あい
)
に
又
(
また
)
トク
りと
納
(
なつ
)
トク
をさせねばなりませぬ。
211
トク
命
(
めい
)
全権
(
ぜんけん
)
公使
(
こうし
)
だから
トク
に
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
212
与三
(
よさ
)
『そんな
事
(
こと
)
で
トク
別
(
べつ
)
の
使命
(
しめい
)
が
勤
(
つと
)
まると
思
(
おも
)
ふか。
213
もう
時刻
(
じこく
)
だ。
214
トク
トク
行
(
ゆ
)
かねばなるまいぞ。
215
貴様
(
きさま
)
は
酒癖
(
さけくせ
)
が
悪
(
わる
)
いから
トク
りと
心中
(
しんぢう
)
するかも
知
(
し
)
れやしない。
216
トク
りと
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ』
217
徳公
(
とくこう
)
『
八釜
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふない。
218
俺
(
おれ
)
だけは
トク
別
(
べつ
)
待遇
(
たいぐう
)
をやつて
呉
(
く
)
れ。
219
斯
(
こ
)
んな
役
(
やく
)
に
行
(
ゆ
)
くのは
俺
(
おい
)
ら
一寸
(
ちよつと
)
気
(
き
)
が
進
(
すす
)
まないのではないけれどな、
220
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
へば
哥兄
(
あにい
)
、
221
お
前
(
まへ
)
が
トク
派
(
は
)
される
処
(
ところ
)
だつたが、
222
生憎
(
あいにく
)
トク
(
禿
(
とく
)
)
頭病
(
とうびやう
)
の
様
(
やう
)
な
頭
(
あたま
)
をして
居
(
ゐ
)
るから、
223
お
愛
(
あい
)
の
奴
(
やつ
)
によく
顔
(
かほ
)
を
知
(
し
)
られて
居
(
を
)
るなり、
224
又
(
また
)
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
土瓶
(
どびん
)
章魚
(
たこ
)
禿
(
はげ
)
ではお
愛
(
あい
)
だつて
釣
(
つ
)
れはしないし、
225
如何
(
どう
)
しても
此
(
この
)
徳公
(
とくこう
)
ぢやなくちや
勤
(
つと
)
まらないのだから、
226
トク
別
(
べつ
)
大切
(
たいせつ
)
にするのだよ』
227
与三
(
よさ
)
『エヽ
俺
(
おれ
)
の
頭
(
あたま
)
の
批評
(
ひへう
)
までしやがつて
仕方
(
しかた
)
の
無
(
ね
)
え
奴
(
やつ
)
だ。
228
貴様
(
きさま
)
は
如何
(
どう
)
やら
秘密
(
ひみつ
)
を
此
(
この
)
高公
(
たかこう
)
に
打
(
うち
)
あけた
様
(
やう
)
だ。
229
よもやそんな
事
(
こと
)
あ
致
(
いた
)
しちや
居
(
を
)
るまいなア』
230
徳公
(
とくこう
)
『
高
(
たか
)
が
知
(
し
)
れた
高公
(
たかこう
)
位
(
くらゐ
)
に
言
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
で、
231
ナニそれが
邪魔
(
じやま
)
になりますけエ。
232
高
(
たか
)
を
括
(
くく
)
つて
云
(
い
)
つたのだからそう
声高
(
こはだか
)
にケンケン
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるな。
233
相互
(
たがひ
)
に
迷惑
(
めいわく
)
だからエヽガラガラガラ、
234
エ、
235
酒
(
さけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
236
あと
戻
(
もど
)
りをしやがる。
237
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ、
238
ウンウンウン』
239
与三
(
よさ
)
『いい
加減
(
かげん
)
に
準備
(
こしらへ
)
をして
行
(
ゆ
)
かないと
遅
(
おそ
)
くなるぞ』
240
徳公
(
とくこう
)
『
八釜
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふない。
241
死
(
し
)
んだつて
何
(
なん
)
だい。
242
お
愛
(
あい
)
が
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
になると
云
(
い
)
ふではなし、
243
折角
(
せつかく
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
成功
(
せいこう
)
さした
処
(
ところ
)
が
鹿猪
(
ろくちよ
)
つきて
猟狗
(
れふく
)
煮
(
に
)
らると
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ふかも
知
(
し
)
れないからな。
244
まあ
酒
(
さけ
)
の
飲
(
の
)
まれる
時
(
とき
)
に
飲
(
の
)
んだ
方
(
はう
)
が
余程
(
よほど
)
利口
(
りこう
)
だなア。
245
自分
(
じぶん
)
の
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
にするのが
人間
(
にんげん
)
と
生
(
うま
)
れた
身
(
み
)
の
一生
(
いつしやう
)
の
徳利
(
とくり
)
だ。
246
オツハツヽヽヽ』
247
斯
(
か
)
く
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
く
処
(
ところ
)
へ
門前
(
もんぜん
)
俄
(
にはか
)
に
騒
(
さわ
)
がしき
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
……
其処
(
そこ
)
へ
勘公
(
かんこう
)
がやつて
来
(
き
)
て、
248
勘公
(
かんこう
)
『オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
249
宜
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
起
(
お
)
きぬか。
250
今
(
いま
)
六公
(
ろくこう
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たから
席
(
せき
)
をあけねばなるまい』
251
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
一同
(
いちどう
)
はムクムクと
頭
(
あたま
)
を
上
(
あ
)
げ、
252
ヒヨロヒヨロし
乍
(
なが
)
ら
裏
(
うら
)
の
田圃
(
たんぼ
)
へ
駆出
(
かけだ
)
し、
253
風
(
かぜ
)
に
酒
(
さけ
)
の
酔
(
ゑい
)
を
醒
(
さ
)
まして
居
(
ゐ
)
る。
254
(
大正一一・九・一四
旧七・二三
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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