神霊界には、正神界と邪神界の二大区別がある。正神界は至善至美なる神人の安住する聖域であり、邪神界は至悪至醜なる鬼畜の住居する暗黒界である。
邪神界は常に正神界の隆盛を羨み、これを破壊しかく乱しようとあらゆる力をつくすものであり、かつまた正神界を呪い、自らの境遇を忘却して邪神界にいながら自ら正神界の神業を立派に奉仕しているものの如く確信しているのである。
自ら邪神界に墜落しているということが悟り得られれば、必ず改心する端緒が開けてくるものである。しかし邪神はその霊性が暗愚にして他を顧みる余裕なく、世人みな濁れり、我ひとりのみ澄めり、一日も早くこの暗黒な世界を善の光明に照らし、もって至善至美なる天国を招来しようと焦慮しつつあるのである。
どれほど海底を不二山頂たらしめようと焦慮しても到底不可能である。それよりもその海底を一日も早く浮かび出て自ら歩行の労を積み、徐に山頂に登る以外にないのである。
邪神界にあるものは到底真の天国を解するの明なく、また神の福音を聞くことはできない。小北山のウラナイ教の神域に集まっている諸霊や人間の霊身はすでにその身を根底の国に籍を置き、邪神の団体に加入しているから、なにほど言葉を尽くして説示しても駄目である。
諭せば諭すほど反対に取り、どこまでも自分が実見した天の八衢や地獄のほかには霊の世界はないものと考えているのである。
本巻の物語を読んで、大本信者のある部分の人々は少しく反省されることがあれば、瑞月にとっては望外の喜びである。