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第45巻(申の巻)
序文
総説
第1篇 小北の特使
01 松風
〔1191〕
02 神木
〔1192〕
03 大根蕪
〔1193〕
04 霊の淫念
〔1194〕
第2篇 恵の松露
05 肱鉄
〔1195〕
06 唖忿
〔1196〕
07 相生の松
〔1197〕
08 小蝶
〔1198〕
09 賞詞
〔1199〕
第3篇 裏名異審判
10 棚卸志
〔1200〕
11 仲裁
〔1201〕
12 喜苔歌
〔1202〕
13 五三の月
〔1203〕
第4篇 虎風獣雨
14 三昧経
〔1204〕
15 曲角狸止
〔1205〕
16 雨露月
〔1206〕
17 万公月
〔1207〕
18 玉則姫
〔1208〕
19 吹雪
〔1209〕
20 蛙行列
〔1210〕
余白歌
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第二章
神木
(
しんぼく
)
〔一一九二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
篇:
第1篇 小北の特使
よみ(新仮名遣い):
こぎたのとくし
章:
第2章 神木
よみ(新仮名遣い):
しんぼく
通し章番号:
1192
口述日:
1922(大正11)年12月11日(旧10月23日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月12日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
お寅は松彦に向かって河鹿川の川岸の老松を指し、八百万の大神様がお休みする世界一の生き松であり、松彦の本守護神だという。万公がそれを茶化して、またお寅婆さんと言い合いになりながら進んで行く。
お寅は松の木の根に肝心のお仕組場があり、その因縁がわからなければ小北山の因縁がわからないと言って一同を引っ張っていく。松彦はいやいやながら付いていくと、大きな岩に玉垣をめぐらし、切り口の石を畳んで高いところに祀ってある。
そこには蠑螈別の筆跡で「さかえの神政松の御神木」と記してある。五三公がこれは何かと尋ねると、お寅は実のところは素盞嗚尊の生魂をここへ封じ込み、永遠に出てこれないようにしているのだという。
ウラナイ教総出で二十日間も寝ずに大岩を引っ張ってきて、素盞嗚尊の悪神をここに封じ込めたから、三五教は八方ふさがりになった。それで三五教の信者を小北山に引っ張り込もうという蠑螈別の御神策なのだと得意気に説明した。
万公と五三公は怒ってお寅をつかんで引き倒そうとするが、ビクともしない。二人はなぜか大岩を引っ張っており、お寅に馬鹿にされてしまう。
お寅が大門神社へ案内する急坂の途中で、松彦たちは腰を下ろして休息する。お寅は後を振り返って、万公がへたばっているのをなじる歌を歌い、万公はお寅をののしりかえす。一同は一通り歌でやり取りをした後、お寅についていく。
万公と五三公は婆の乙姫だとお寅をそしって一同の笑いを買う。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-02-21 18:21:36
OBC :
rm4502
愛善世界社版:
23頁
八幡書店版:
第8輯 261頁
修補版:
校定版:
24頁
普及版:
10頁
初版:
ページ備考:
001
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまは
松彦
(
まつひこ
)
に
向
(
むか
)
ひ
河鹿川
(
かじかがは
)
の
川岸
(
かはぎし
)
に
枝振
(
えだぶ
)
りのよい
老松
(
らうしよう
)
が
蜒々
(
えんえん
)
として
枝
(
えだ
)
を
四方
(
しはう
)
に
広
(
ひろ
)
げ
川
(
かは
)
の
上
(
うへ
)
にヌツと
突
(
つ
)
き
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るのを
指
(
さ
)
し、
002
お
寅
(
とら
)
『もし、
003
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
004
あの
松
(
まつ
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
005
立派
(
りつぱ
)
なものぢや
厶
(
ござ
)
りませぬか』
006
松彦
(
まつひこ
)
『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
、
007
川
(
かは
)
の
景色
(
けしき
)
と
云
(
い
)
ひ、
008
あの
枝振
(
えだぶ
)
りと
云
(
い
)
ひ
青々
(
あをあを
)
とした
艶
(
つや
)
と
云
(
い
)
ひ、
009
実
(
じつ
)
に
云
(
い
)
ひ
分
(
ぶん
)
のない
眺
(
なが
)
めですな。
010
随分
(
ずゐぶん
)
鶴
(
つる
)
が
巣籠
(
すごも
)
りをするでせうな』
011
お
寅
(
とら
)
『ハイハイ、
012
鶴
(
つる
)
どころか、
013
あの
松
(
まつ
)
には
日
(
ひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
014
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め
八百万
(
やほよろづ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
がお
休
(
やす
)
み
遊
(
あそ
)
ばす
世界一
(
せかいいち
)
の
生松
(
いきまつ
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
015
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の、
016
あれが
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
で
厶
(
ござ
)
ります』
017
松彦
(
まつひこ
)
『さうすると、
018
あの
松
(
まつ
)
は
私
(
わたし
)
の
御霊
(
みたま
)
の
変化
(
へんげ
)
ではあるまいかな』
019
お
寅
(
とら
)
『
滅相
(
めつさう
)
な、
020
変化
(
へんげ
)
どころか、
021
あれが
貴方
(
あなた
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
ですよ。
022
時節
(
じせつ
)
と
云
(
い
)
ふものは
恐
(
こは
)
いものですな。
023
たうとう
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
の
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
がお
越
(
こ
)
しなさる
様
(
やう
)
になつたのだから、
024
ウラナイ
教
(
けう
)
は
朝日
(
あさひ
)
の
豊栄昇
(
とよさかのぼ
)
り
彦
(
ひこの
)
命
(
みこと
)
になります。
025
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
教祖
(
けうそ
)
が
仰有
(
おつしや
)
つた
事
(
こと
)
は
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
違
(
ちが
)
ひませぬがな』
026
万公
(
まんこう
)
『アハヽヽヽ
松彦
(
まつひこ
)
さま、
027
貴方
(
あんた
)
は
不自由
(
ふじゆう
)
な
体
(
からだ
)
ですな、
028
いつもあの
川辺
(
かはべ
)
に
水鏡
(
みづかがみ
)
ばつかり
見
(
み
)
て
鳶
(
とんび
)
鷹
(
たか
)
鷲
(
わし
)
等
(
など
)
に
頭
(
あたま
)
から
糞
(
ふん
)
を
引
(
ひ
)
つかけられ
泰然
(
たいぜん
)
自若
(
じじやく
)
として
川端柳
(
かはばたやなぎ
)
を
気取
(
きど
)
つて
厶
(
ござ
)
るのですな。
029
道理
(
だうり
)
で
足
(
あし
)
が
重
(
おも
)
いと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
た。
030
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
があの
松
(
まつ
)
の
大木
(
たいぼく
)
だと
分
(
わか
)
つての
上
(
うへ
)
は、
031
松彦
(
まつひこ
)
さまの
無精
(
ぶしやう
)
なのも、
032
あながち
責
(
せめ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きますまい。
033
エヘヽヽヽ』
034
お
寅
(
とら
)
『これこれブラリ
彦
(
ひこ
)
、
035
又
(
また
)
口
(
くち
)
八釜
(
やかま
)
しい。
036
左兵衛治
(
さひやうゑぢ
)
をするものぢやない』
037
万公
(
まんこう
)
『これ
婆
(
ばあ
)
さま、
038
わしは
左兵衛治
(
さひやうゑぢ
)
なんて、
039
そんな
老爺
(
おやぢ
)
めいた
名
(
な
)
ぢやありませぬぞ。
040
万古
(
まんご
)
末代
(
まつだい
)
生通
(
いきとほ
)
しと
云
(
い
)
ふ
生々
(
いきいき
)
した
万公
(
まんこう
)
さまだ。
041
余
(
あんま
)
り
見損
(
みそこな
)
ひをして
貰
(
もら
)
ひますまいかい』
042
お
寅
(
とら
)
『オホヽヽヽ
何
(
なん
)
と
頭
(
あたま
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
だな。
043
左兵衛治
(
さひやうゑぢ
)
と
云
(
い
)
つたら
差出物
(
さしでもの
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
044
何
(
なん
)
でもかンでもよく
差出
(
さしで
)
て
邪魔
(
じやま
)
ばつかり
致
(
いた
)
すから、
045
左兵衛治
(
さひやうゑぢ
)
と
云
(
い
)
つたのだよ。
046
大松
(
おほまつ
)
のお
前
(
まへ
)
が
差出
(
さしで
)
る
処
(
ところ
)
ぢやない、
047
芋掘奴
(
いもほりやつこ
)
めが』
048
万公
(
まんこう
)
『
俺
(
おれ
)
や、
049
あんな
大松
(
おほまつ
)
とはチツと
違
(
ちが
)
ふのだ。
050
なんぼ
大松
(
おほまつ
)
だつて
松
(
まつ
)
の
寿命
(
じゆみやう
)
は
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
だ。
051
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
の
寿命
(
じゆみやう
)
を
保
(
たも
)
つ
万公
(
まんこう
)
さまだ。
052
あんまり
安
(
やす
)
う
買
(
か
)
うて
貰
(
もら
)
ひますまいかい』
053
お
寅
(
とら
)
『エーエ、
054
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
教育
(
けういく
)
してやらねば
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
困
(
こま
)
つた
男
(
をとこ
)
だな。
055
大松
(
おほまつ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
大喰
(
おほぐひ
)
人足
(
にんそく
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
の
代名詞
(
だいめいし
)
だ。
056
野良
(
のら
)
へやれば
蕪
(
かぶら
)
をぬいて
食
(
く
)
ふ、
057
大根
(
だいこん
)
をかじる、
058
人参
(
にんじん
)
を
喰
(
く
)
ふ、
059
薩摩芋
(
さつまいも
)
から
南瓜
(
かぼちや
)
の
生
(
なま
)
まで、
060
噛
(
か
)
じる
喰
(
くら
)
ひぬけだから、
061
それで
大松
(
おほまつ
)
と
云
(
い
)
ふのだ』
062
万公
(
まんこう
)
『
大喰
(
おほぐ
)
ひするものを
大松
(
おほまつ
)
と
云
(
い
)
ふのは
可笑
(
をか
)
しいぢやないか。
063
其
(
その
)
言葉
(
ことば
)
の
起源
(
きげん
)
を
説明
(
せつめい
)
して
貰
(
もら
)
ひたいものだな』
064
お
寅
(
とら
)
『エーエ、
065
合点
(
がてん
)
の
悪
(
わる
)
い
代物
(
しろもの
)
だ、
066
ライオン
川
(
がは
)
の
杭
(
くひ
)
は、
067
みんな
長
(
なが
)
い
大
(
おほ
)
きな
奴
(
やつ
)
が
要
(
い
)
るので、
068
それで
大杭
(
おほくひ
)
の
長杭
(
ながくひ
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
069
その
大杭
(
おほくひ
)
の
長杭
(
ながくひ
)
は
大松
(
おほまつ
)
ぢやなければ
出来
(
でき
)
ぬのだから
大松
(
おほまつ
)
と
云
(
い
)
つたのだよ』
070
万公
(
まんこう
)
は
妙
(
めう
)
な
手付
(
てつき
)
をして、
071
万公
(
まんこう
)
『あゝさうで
おまつ
か、
072
ヘーン、
073
松彦
(
まつひこ
)
さまもさうすると
松
(
まつ
)
に
因縁
(
いんねん
)
があるから
大松
(
おほまつ
)
でせうね』
074
お
寅
(
とら
)
『お
前
(
まへ
)
の
松
(
まつ
)
は
杭
(
くひ
)
になつた
松
(
まつ
)
だ。
075
此
(
この
)
お
方
(
かた
)
の
松
(
まつ
)
は、
076
あの
通
(
とほ
)
り
生々
(
いきいき
)
した
生命
(
せいめい
)
のある
松
(
まつ
)
だよ。
077
万古
(
まんご
)
末代
(
まつだい
)
生通
(
いきとほ
)
しの
松
(
まつ
)
と、
078
幹
(
みき
)
を
切
(
き
)
られ
枝
(
えだ
)
を
払
(
はら
)
はれ、
079
年
(
ねん
)
が
年中
(
ねんぢう
)
頭
(
あたま
)
を
削
(
けづ
)
られて
逆
(
さか
)
トンボリにされ
尻
(
けつ
)
を
叩
(
たた
)
かれて、
080
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
まれて
居
(
ゐ
)
る
大松
(
おほまつ
)
とは、
081
松
(
まつ
)
が
違
(
ちが
)
ふのだ。
082
善悪
(
ぜんあく
)
混淆
(
こんかう
)
して
貰
(
もら
)
うては
大変
(
たいへん
)
困
(
こま
)
りますわい。
083
然
(
しか
)
し
松彦
(
まつひこ
)
さま、
084
あの
松
(
まつ
)
の
木
(
き
)
の
根元
(
ねもと
)
に
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
がしてあるのだから
大門
(
おほもん
)
神社
(
じんしや
)
に
行
(
ゆ
)
く
迄
(
まで
)
に
一寸
(
ちよつと
)
そこの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
参拝
(
さんぱい
)
して
貰
(
もら
)
ひたいのです』
085
松彦
(
まつひこ
)
『あの
松
(
まつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
祀
(
まつ
)
つてあるのですかな』
086
お
寅
(
とら
)
『ハイハイ、
087
あそこが
肝腎
(
かんじん
)
な
御
(
お
)
仕組場
(
しぐみば
)
だ。
088
あの
因縁
(
いんねん
)
が
分
(
わか
)
らねば
小北山
(
こぎたやま
)
の
因縁
(
いんねん
)
が
分
(
わか
)
りませぬ。
089
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものです』
090
万公
(
まんこう
)
『さうすると、
091
まだ
外
(
ほか
)
に
神
(
かみ
)
さまが
祀
(
まつ
)
つてあるのか。
092
一遍
(
いつぺん
)
に
見
(
み
)
せると
食滞
(
しよくたい
)
すると
受付
(
うけつけ
)
の
爺
(
ぢい
)
さまが
云
(
い
)
ふた
神
(
かみ
)
さまだな。
093
一
(
ひと
)
つ
見
(
み
)
るも
二
(
ふた
)
つ
見
(
み
)
るも
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ。
094
序
(
ついで
)
に
観覧
(
くわんらん
)
して
来
(
こ
)
ようかな。
095
おい、
096
五三公
(
いそこう
)
、
097
アク、
098
タク、
099
テク、
100
何
(
ど
)
うだ、
101
貴様
(
きさま
)
も
一
(
ひと
)
つ
見物
(
けんぶつ
)
する
気
(
き
)
はないか』
102
一同
(
いちどう
)
『ウン、
103
面白
(
おもしろ
)
からうな。
104
参考
(
さんかう
)
の
為
(
ため
)
にお
寅
(
とら
)
さまの、
105
亡者案内
(
もさひき
)
で
見物
(
けんぶつ
)
して
来
(
こ
)
ようかい。
106
お
寅
(
とら
)
さま、
107
亡者案内
(
もさひき
)
賃
(
ちん
)
は
安
(
やす
)
うして
置
(
お
)
いてくれや、
108
見掛
(
みかけ
)
どりをやられると
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
吾々
(
われわれ
)
はチツとばかり
手許
(
てもと
)
不如意
(
ふによい
)
なのだから
困
(
こま
)
りますぞえ』
109
お
寅
(
とら
)
『
観覧
(
くわんらん
)
だの、
110
見物
(
けんぶつ
)
だのと、
111
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
勿体
(
もつたい
)
ない
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るのだ。
112
見
(
み
)
に
行
(
ゆ
)
くのだない、
113
参拝
(
さんぱい
)
に
行
(
ゆ
)
くのだ。
114
何故
(
なぜ
)
参拝
(
さんぱい
)
さして
頂
(
いただ
)
きますと
云
(
い
)
はぬのだ』
115
万公
(
まんこう
)
『
三杯
(
さんばい
)
どころか、
116
もう
之
(
これ
)
丈
(
だ
)
け
沢山
(
たくさん
)
に
誤託宣
(
ごたくせん
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
いた
上
(
うへ
)
は
腹一杯
(
はらいつぱい
)
胸一杯
(
むねいつぱい
)
だ、
117
アハヽヽヽ』
118
お
寅
(
とら
)
『サア、
119
末代
(
まつだい
)
様
(
さま
)
、
120
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう。
121
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
について
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
122
松彦
(
まつひこ
)
はいやいや
乍
(
なが
)
ら
婆
(
ばば
)
アの
後
(
あと
)
に
一行
(
いつかう
)
と
共
(
とも
)
に
枝振
(
えだぶ
)
りのよい
大松
(
おほまつ
)
の
麓
(
ふもと
)
まで
進
(
すす
)
んで
行
(
い
)
つた。
123
見
(
み
)
れば
途方
(
とはう
)
途徹
(
とてつ
)
もない
大
(
おほ
)
きな
岩
(
いは
)
が
玉垣
(
たまがき
)
を
囲
(
めぐ
)
らし
切口
(
きりくち
)
の
石
(
いし
)
を
畳
(
たた
)
んで
置物
(
おきもの
)
の
様
(
やう
)
にチヨンと
高
(
たか
)
い
処
(
ところ
)
に
立派
(
りつぱ
)
に
祀
(
まつ
)
つてある。
124
さうして
傍
(
かたはら
)
に
案内石
(
あんないいし
)
が
立
(
た
)
ち
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
筆跡
(
ひつせき
)
で、
125
「さかえの
神政松
(
しんせいまつ
)
の
御
(
ご
)
神木
(
しんぼく
)
」
126
と
記
(
しる
)
してある。
127
五三
(
いそ
)
『もしお
婆
(
ばあ
)
さま、
128
此
(
この
)
大
(
おほ
)
きな
岩
(
いは
)
は
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
だい。
129
さうして
御
(
ご
)
神木
(
しんぼく
)
と
記
(
しる
)
してあるが、
130
こりや
木
(
き
)
ぢやない、
131
岩
(
いは
)
ぢやないか』
132
お
寅
(
とら
)
『そんな
事
(
こと
)
は
気
(
き
)
にかけいでも、
133
理屈
(
りくつ
)
いはいでも、
134
いいぢやないか。
135
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
神木
(
しんぼく
)
する
様
(
やう
)
に「さかえの
神政松
(
しんせいまつ
)
の
御
(
ご
)
神木
(
しんぼく
)
」と
書
(
か
)
いてあるのだよ。
136
ここは
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
との
境
(
さかひ
)
だから
小北山
(
こぎたやま
)
の
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
へ
悪神
(
あくがみ
)
の
這入
(
はい
)
つて
来
(
こ
)
ぬ
様
(
やう
)
に
千引岩
(
ちびきいは
)
が
斯
(
か
)
うして
置
(
お
)
いてあるのだ。
137
表向
(
おもてむ
)
きは
弥勒
(
みろく
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
だと
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
るのだ。
138
さうして
十六柱
(
じふろくばしら
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
祀
(
まつ
)
りしてある
標
(
しるし
)
だと
云
(
い
)
つて
十六本
(
じふろくぽん
)
の
小松
(
こまつ
)
が
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
植
(
う
)
ゑてあるのだ。
139
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
之
(
これ
)
は
表向
(
おもてむ
)
き、
140
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
生魂
(
いきだま
)
をここへ
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
んで
動
(
うご
)
きのとれぬ
様
(
やう
)
に
周囲
(
ぐるり
)
八方
(
はつぱう
)
石畳
(
いしだたみ
)
を
囲
(
めぐ
)
らし、
141
上
(
うへ
)
から
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
を
載
(
の
)
せて、
142
万古
(
まんご
)
末代
(
まつだい
)
上
(
あが
)
れぬ
様
(
やう
)
に
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
めておいたのだ。
143
そのために
瑞
(
みづ
)
の
魂
(
みたま
)
の
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
は
八方
(
はつぱう
)
塞
(
ふさ
)
がり
同様
(
どうやう
)
で、
144
二
(
に
)
ツ
進
(
ち
)
も
三
(
さ
)
ツ
進
(
ち
)
もならぬ
様
(
やう
)
になり
困
(
こま
)
つてゐやがるのだ。
145
此
(
この
)
石
(
いし
)
をここへ
運
(
はこ
)
ぶ
時
(
とき
)
にも
随分
(
ずゐぶん
)
苦労
(
くらう
)
をしたのだよ。
146
第一
(
だいいち
)
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さま、
147
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
148
大将軍
(
たいしやうぐん
)
さま、
149
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
等
(
たち
)
の
奮励
(
ふんれい
)
努力
(
どりよく
)
と
云
(
い
)
つたら
大
(
たい
)
したものだつた。
150
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
も
二十日
(
はつか
)
ばかり
寝
(
ね
)
ずに
活動
(
くわつどう
)
して
到頭
(
たうとう
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
悪神
(
あくがみ
)
を
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
めてやつたのだ。
151
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
は
何
(
なん
)
にも
知
(
し
)
らずに
馬鹿
(
ばか
)
だからヤツパリ
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
現
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
うてゐるのだよ。
152
斯
(
か
)
うしておけば
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
を
鼠
(
ねづみ
)
が
餅
(
もち
)
ひく
様
(
やう
)
に
皆
(
みな
)
小北山
(
こぎたやま
)
に
引張込
(
ひつぱりこ
)
むと
云
(
い
)
ふ
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまの
御
(
ご
)
神策
(
しんさく
)
だ。
153
何
(
なん
)
と
偉
(
えら
)
いものだらうがな』
154
万公
(
まんこう
)
、
155
五三公
(
いそこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
はクワツと
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て
両方
(
りやうはう
)
から
婆
(
ばば
)
の
手
(
て
)
をグツと
ひん
握
(
にぎ
)
り、
156
万公
(
まんこう
)
『こりや
糞婆
(
くそばば
)
、
157
もう
量見
(
れうけん
)
ならねえ。
158
此
(
この
)
川
(
かは
)
へ
水葬
(
すゐさう
)
してやるから、
159
さう
思
(
おも
)
へ。
160
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
す』
161
五三
(
いそ
)
『こりや、
162
お
寅
(
とら
)
、
163
蛙
(
かへる
)
は
口
(
くち
)
から、
164
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
した
上
(
うへ
)
からは、
165
もはや
量見
(
れうけん
)
ならぬぞ。
166
サア
覚悟
(
かくご
)
せい。
167
おい
万公
(
まんこう
)
、
168
其方
(
そつち
)
の
足
(
あし
)
をとれ、
169
俺
(
おれ
)
も
此
(
この
)
足
(
あし
)
を
持
(
も
)
つて
川
(
かは
)
の
深淵
(
ふかぶち
)
へ
担
(
かつ
)
いで
行
(
い
)
つて
放
(
はふ
)
り
込
(
こ
)
んでやるのだ』
170
お
寅
(
とら
)
『オホヽヽヽ、
171
地
(
ち
)
から
生
(
は
)
えた
木
(
き
)
の
様
(
やう
)
なものだ。
172
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
がお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
や
五
(
ご
)
人
(
にん
)
に
動
(
うご
)
かされる
様
(
やう
)
なヘドロい
婆
(
ばば
)
か。
173
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
頂
(
いただ
)
いた
上
(
うへ
)
に
艮
(
うしとらの
)
金神
(
こんじん
)
様
(
さま
)
の
分
(
わ
)
け
魂
(
みたま
)
のお
憑
(
かか
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
丑
(
うし
)
の
年
(
とし
)
生
(
うま
)
れの
寅
(
とら
)
さまだ。
174
丑寅
(
うしとら
)
婆
(
ば
)
アさまを
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てるのだ』
175
万公
(
まんこう
)
『おい、
176
五三公
(
いそこう
)
、
177
随分
(
ずゐぶん
)
重
(
おも
)
い
婆
(
ばば
)
だな。
178
本当
(
ほんたう
)
にビクともしやがらぬわ』
179
アク『アハヽヽヽ、
180
ビクともせぬ
筈
(
はず
)
だよ。
181
婆
(
ば
)
アさまは
其処
(
そこ
)
に
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
182
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は、
183
岩
(
いは
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
動
(
うご
)
かさうとしたつて
動
(
うご
)
くものかい。
184
それが
婆
(
ば
)
アさまに
見
(
み
)
えたのか』
185
五三
(
いそ
)
『いや、
186
ほんにほんに
岩
(
いは
)
だつたな。
187
おけおけ
馬鹿
(
ばか
)
らしい。
188
お
寅婆
(
とらばば
)
は
彼処
(
あすこ
)
にけつかるぢやないか』
189
お
寅
(
とら
)
『オホヽヽヽ
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
の
眼力
(
がんりき
)
は
偉
(
えら
)
いものだな。
190
お
寅
(
とら
)
さまとお
岩
(
いは
)
さまと
取違
(
とりちが
)
へするのだから』
191
万公
(
まんこう
)
『エー』
192
アク、
193
タク、
194
テク
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『アハヽヽヽ、
195
又
(
また
)
いかれやがつたな』
196
お
寅
(
とら
)
『あまり
疑
(
うたが
)
うて
居
(
ゐ
)
ると
真逆
(
まさか
)
の
時
(
とき
)
に
眩惑
(
めまひ
)
がくるぞよ、
197
足許
(
あしもと
)
の
深溜
(
ふかだまり
)
が
目
(
め
)
に
見
(
み
)
えぬ
様
(
やう
)
になるぞよ。
198
ウフヽヽヽ』
199
松彦
(
まつひこ
)
『お
婆
(
ばあ
)
さま、
200
いや
如何
(
どう
)
も
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
201
これから
一
(
ひと
)
つ
大門
(
おほもん
)
神社
(
じんしや
)
へ
参
(
まゐ
)
りませう』
202
お
寅
(
とら
)
『あ、
203
お
前
(
まへ
)
さまは
末代
(
まつだい
)
様
(
さま
)
だ。
204
身霊
(
みたま
)
が
綺麗
(
きれい
)
だと
見
(
み
)
える。
205
あんなガラクタは
後廻
(
あとまは
)
しで
宜
(
よろ
)
しい。
206
お
寅
(
とら
)
さまの
後
(
あと
)
から
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
なさい。
207
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
末代
(
まつだい
)
さまを
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう』
208
松彦
(
まつひこ
)
『ありがたう。
209
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
連中
(
れんちう
)
を
捨
(
す
)
てて
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かぬから
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
かう』
210
お
寅
(
とら
)
『それは
貴方
(
あなた
)
、
211
末代
(
まつだい
)
さまの
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
にして
下
(
くだ
)
さい。
212
サア
斯
(
か
)
うおいで
成
(
な
)
さいませや』
213
と
頭
(
かしら
)
をペコペコさせ
頻
(
しき
)
りに
媚
(
こび
)
を
呈
(
てい
)
し
乍
(
なが
)
ら、
214
もと
来
(
き
)
し
道
(
みち
)
に
引返
(
ひつかへ
)
し
急坂
(
きふはん
)
を
一行
(
いつかう
)
の
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
215
急坂
(
きふはん
)
を
二三丁
(
にさんちやう
)
ばかり
登
(
のぼ
)
つた
処
(
ところ
)
にロハ
台
(
だい
)
が
並
(
なら
)
んでゐる。
216
万公
(
まんこう
)
『もし
松彦
(
まつひこ
)
さま、
217
一寸
(
ちよつと
)
ここで
休息
(
きうそく
)
して
行
(
ゆ
)
きませうか』
218
松彦
(
まつひこ
)
『ウン、
219
よからう』
220
と
腰
(
こし
)
をかけ
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
める。
221
お
寅
(
とら
)
は
怪嫌
(
けげん
)
な
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら
後
(
あと
)
ふり
返
(
かへ
)
り、
222
お
寅
(
とら
)
『
逆理屈
(
さかりくつ
)
ばかり
囀
(
さへづ
)
る
万公
(
まんこう
)
が
223
坂
(
さか
)
の
中央
(
なかば
)
で
屁古垂
(
へこた
)
れにけり。
224
偉相
(
えらさう
)
に
腮
(
あご
)
をたたいて
居
(
ゐ
)
た
万公
(
まんこう
)
225
此
(
この
)
弱
(
よわ
)
り
様
(
やう
)
は
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい。
226
鼈
(
すつぽん
)
に
蓼
(
たで
)
食
(
く
)
はした
様
(
よ
)
な
息
(
いき
)
づかひ
227
万々
(
まんまん
)
々公
(
まんこう
)
も
休
(
やす
)
むがよからう』
228
万公
(
まんこう
)
『
迷信
(
めいしん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
んだお
寅
(
とら
)
さま
229
底
(
そこ
)
知
(
し
)
れぬ
淵
(
ふち
)
へバサンとはまつて。
230
之
(
これ
)
程
(
ほど
)
にきつい
坂
(
さか
)
をばスタスタと
231
登
(
のぼ
)
るは
狐
(
きつね
)
狸
(
たぬき
)
なるらむ。
232
登
(
のぼ
)
り
坂
(
さか
)
上手
(
じやうづ
)
な
奴
(
やつ
)
は
馬兎
(
うまうさぎ
)
233
丑寅
(
うしとら
)
婆
(
ば
)
さまの
十八番
(
おはこ
)
なるらむ』
234
お
寅
(
とら
)
『
糞
(
ばば
)
垂
(
た
)
れて
婆
(
ば
)
さまの
登
(
のぼ
)
る
山道
(
やまみち
)
を
235
屁古垂
(
へこた
)
れよつた
万公
(
まんこう
)
の
尻
(
けつ
)
。
236
芋
(
いも
)
蕪
(
かぶら
)
大根
(
だいこん
)
人参
(
にんじん
)
あつたなら
237
万
(
まん
)
の
野郎
(
やらう
)
に
喰
(
く
)
はせ
度
(
た
)
きもの。
238
大根
(
だいこん
)
や
蕪
(
かぶら
)
がきれて
息
(
いき
)
つまり
239
何
(
なん
)
と
茄子
(
なすび
)
の
溝漬
(
どぶづ
)
け
男
(
をとこ
)
』
240
万公
(
まんこう
)
『
臭
(
くさ
)
い
奴
(
やつ
)
吾
(
わが
)
一行
(
いつかう
)
の
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ
241
腋臭
(
わきが
)
とべら
の
婆
(
ばば
)
の
尻糞
(
しりくそ
)
』
242
お
寅
(
とら
)
『こりや
万公
(
まんこう
)
、
臭
(
くさ
)
い
奴
(
やつ
)
とは
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふ
243
貴様
(
きさま
)
は
臭
(
くさ
)
い
穴探
(
あなさが
)
しぞや。
244
彼岸
(
ひがん
)
過
(
す
)
ぎになつても
穴
(
あな
)
の
無
(
な
)
い
蛇
(
へび
)
は
245
そこら
辺
(
あた
)
りをのたくり
廻
(
まは
)
る。
246
穴
(
あな
)
ばかり
探
(
さが
)
して
歩
(
ある
)
く
万公
(
まんこう
)
を
247
岩窟
(
いはや
)
の
穴
(
あな
)
へ
入
(
い
)
れてやり
度
(
た
)
い』
248
万公
(
まんこう
)
『
何
(
なに
)
吐
(
ぬか
)
す
丑寅
(
うしとら
)
婆
(
ばば
)
の
尻糞
(
しりくそ
)
奴
(
め
)
249
尻
(
けつ
)
が
呆
(
あき
)
れて
雪隠
(
せんち
)
が
踊
(
をど
)
る』
250
松彦
(
まつひこ
)
『ロハ
台
(
だい
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
掛
(
かけ
)
て
万公
(
まんこう
)
が
251
尻
(
しり
)
のつぼめの
合
(
あ
)
はぬ
事
(
こと
)
言
(
い
)
ふ』
252
五三公
(
いそこう
)
『ロハ
台
(
だい
)
に
尻
(
しり
)
を
下
(
おろ
)
した
万公
(
まんこう
)
さま
253
糞落
(
くそお
)
ちつきのないも
道理
(
だうり
)
よ』
254
アク『アクアクと
互
(
たがひ
)
に
誹
(
そし
)
り
妬
(
ねた
)
み
合
(
あ
)
ひ
255
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
口
(
くち
)
をアクかな』
256
タク『いろいろとタクみし
証拠
(
しようこ
)
は
千引岩
(
ちびきいは
)
257
松
(
まつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
沢山
(
たくさん
)
にある』
258
テク『
山坂
(
やまさか
)
をテクる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
は
何
(
なん
)
となく
259
足腰
(
あしこし
)
だるくなりにけるかな。
260
面白
(
おもしろ
)
もない
婆
(
ばあ
)
さまに
導
(
みちび
)
かれ
261
登
(
のぼ
)
るも
辛
(
つら
)
し
針
(
はり
)
の
山坂
(
やまさか
)
』
262
お
寅
(
とら
)
『
万公
(
まんこう
)
よアク、テク、タクの
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
263
此
(
この
)
坂道
(
さかみち
)
は
神
(
かみ
)
の
坂
(
さか
)
だよ。
264
神
(
かみ
)
になり
鬼
(
おに
)
になるのも
此
(
この
)
坂
(
さか
)
を
265
越
(
こ
)
えぬ
事
(
こと
)
には
分
(
わか
)
るまいぞや』
266
アク『
登
(
のぼ
)
りつめアクになつたら
何
(
なん
)
とせう
267
丑寅
(
うしとら
)
婆
(
ば
)
さまに
欺
(
あざむ
)
かれつつ』
268
お
寅
(
とら
)
『
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らして
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
が
269
後
(
あと
)
に
来
(
く
)
る
身
(
み
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だよ』
270
松彦
(
まつひこ
)
『サア
一同
(
いちどう
)
、
271
もう
行
(
い
)
つてもよからう。
272
乙姫
(
おとひめ
)
さま、
273
宜
(
よろ
)
しう
頼
(
たの
)
みます』
274
お
寅
(
とら
)
『ホヽヽヽヽ
末代
(
まつだい
)
様
(
さま
)
、
275
サア
参
(
まゐ
)
りませう』
276
万公
(
まんこう
)
『ヘン、
277
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
やがる。
278
婆
(
ばば
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまも
見初
(
みはじ
)
めだ。
279
なア
五三公
(
いそこう
)
』
280
五三
(
いそ
)
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
281
逆様
(
さかさま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だもの、
282
乙姫
(
おとひめ
)
さまだつて
世界
(
せかい
)
のために
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
遊
(
あそ
)
ばして
厶
(
ござ
)
るのだもの、
283
チツたあ
年
(
とし
)
も
寄
(
よ
)
らうかい。
284
アハヽヽヽ』
285
一同
(
いちどう
)
『ウフヽヽヽ』
286
(
大正一一・一二・一一
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