お寅は昔自分が捨てた夫の熊公に暴れこまれて千両の金をとられ、業を煮やして信仰上のぐらつきをはじめだし、ウラナイ教の神をののしったが、最後に自ら舌を噛んだことで神に心を向けた。
五三公はこれをきっかけにお寅の迷いをさまそうと、ウラナイ教の神は高姫の罪悪によって天の八衢にさまよったときに移った古狐が造ったものだと歌った。
教祖の高姫と黒姫は、極悪無道の神だと思っていた神素盞嗚大神の仁慈の徳に打たれて三五教に帰順し、宣伝使たちの薫陶によって迷いの雲は心から取り除かれた。
しかし蠑螈別は依然として高姫の衣鉢を継いでウラナイ教を支持していた。それは、高姫と黒姫の肉体を機関として三五教をかく乱しようと企んでいた悪魔たちが、高姫・黒姫の帰順によってその肉体から逃げ出し、蠑螈別・魔我彦・お寅に宿変えしてしまったのである。
蠑螈別は以前は軍人で教育もあるが、そういう人間ほど悪神にとっては道具として便利なのである。悪神に憑依された三人はもはや善悪正邪を判断する力を失っていた。
蠑螈別はありがたがって観物三昧経を常々唱えていたが、これは釈迦弟子どもの偽作であって、中身は釈迦のひいきの引き倒しのようなお経である。
万公、五三公、アク、タク、テクの五人がヘグレ神社をぶらぶらしていたところ、蠑螈別が熱心に経文を唱えるのが聞こえてきた。五三公は、このお経は釈迦が妻帯したことについてこじつけの説明をするあまり、釈迦の肉体について馬鹿馬鹿しい話をでっち上げた内容なのだと解説した。
万公たちは五三公の解説に感心する。五三公は先生のような口調になって冗談を言い、仲間を茶化す。