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第45巻(申の巻)
序文
総説
第1篇 小北の特使
01 松風
〔1191〕
02 神木
〔1192〕
03 大根蕪
〔1193〕
04 霊の淫念
〔1194〕
第2篇 恵の松露
05 肱鉄
〔1195〕
06 唖忿
〔1196〕
07 相生の松
〔1197〕
08 小蝶
〔1198〕
09 賞詞
〔1199〕
第3篇 裏名異審判
10 棚卸志
〔1200〕
11 仲裁
〔1201〕
12 喜苔歌
〔1202〕
13 五三の月
〔1203〕
第4篇 虎風獣雨
14 三昧経
〔1204〕
15 曲角狸止
〔1205〕
16 雨露月
〔1206〕
17 万公月
〔1207〕
18 玉則姫
〔1208〕
19 吹雪
〔1209〕
20 蛙行列
〔1210〕
余白歌
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第八章
小蝶
(
こてふ
)
〔一一九八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻
篇:
第2篇 恵の松露
よみ(新仮名遣い):
めぐみのしょうろ
章:
第8章 小蝶
よみ(新仮名遣い):
こちょう
通し章番号:
1198
口述日:
1922(大正11)年12月12日(旧10月24日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月12日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
お千代は館の戸を開けて面に出た。すると魔我彦が腰を曲げて差し足抜き足で逃げて行く。お千代は魔我彦の後ろから笑い出した。
魔我彦は驚いて振り返り、お千代に対して、松彦と松姫の関係を蠑螈別やお寅に注進して仲を妨害してやると脅す。お千代は反対に、ウラナイ教の教義上からも二人は夫婦の身魂であると反論し、逆に逃げ腰の魔我彦を嘲笑する。
松彦と松姫は、侠客に育てられて気が強く型にはまらないお千代の気性を心配している。松彦はお千代がいつまでも魔我彦をそしる歌を歌っているので、中に入るようにと呼びにきた。
松彦と松姫はお千代を諭すが、自分はお寅みたいな中途半端な女侠客ではなく、フサの国と月の国の大親分になるつもりだと大きく出て両親をやきもきさせたり笑わせたりする。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-02-25 18:28:18
OBC :
rm4508
愛善世界社版:
132頁
八幡書店版:
第8輯 298頁
修補版:
校定版:
138頁
普及版:
53頁
初版:
ページ備考:
001
松彦
(
まつひこ
)
松姫
(
まつひめ
)
両人
(
りやうにん
)
は
002
いとし
盛
(
ざか
)
りの
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
003
千代子
(
ちよこ
)
と
共
(
とも
)
に
歌垣
(
うたがき
)
に
004
たちて
心
(
こころ
)
の
誠
(
まこと
)
をば
005
語
(
かた
)
らひ
居
(
ゐ
)
たる
折
(
をり
)
もあれ
006
突然
(
とつぜん
)
起
(
おこ
)
る
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
007
瓦
(
かはら
)
をぶちあけた
其
(
その
)
如
(
ごと
)
く
008
ガラガラガラといやらしく
009
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
れる
其
(
その
)
音色
(
ねいろ
)
010
嫉妬
(
しつと
)
嘲笑
(
てうせう
)
交
(
まじ
)
り
来
(
き
)
て
011
いとも
不穏
(
ふおん
)
に
聞
(
きこ
)
えけり
012
娘
(
むすめ
)
のお
千代
(
ちよ
)
は
門口
(
かどぐち
)
を
013
引開
(
ひきあ
)
け
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
むれば
014
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや
魔我彦
(
まがひこ
)
が
015
両手
(
りやうて
)
で
耳
(
みみ
)
を
抑
(
おさ
)
へつつ
016
腰
(
こし
)
を
く
の
字
(
じ
)
に
曲
(
ま
)
げ
乍
(
なが
)
ら
017
差足
(
さしあし
)
抜足
(
ぬきあし
)
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
018
お
千代
(
ちよ
)
は
後
(
あと
)
を
顧
(
かへり
)
みて
019
やさしき
声
(
こゑ
)
をふり
絞
(
しぼ
)
り
020
紅葉
(
もみぢ
)
の
様
(
やう
)
な
手
(
て
)
をふつて
021
ホヽヽヽヽと
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
す
022
お
千代
(
ちよ
)
の
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
023
後
(
あと
)
振返
(
ふりかへ
)
る
魔我彦
(
まがひこ
)
は
024
真赤
(
まつか
)
な
顔
(
かほ
)
に
団栗
(
どんぐり
)
の
025
はぢけた
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いて
026
舌
(
した
)
を
噛
(
か
)
み
出
(
だ
)
し
腮
(
あご
)
しやくり
027
イヒヽヽヽヽ、イヒヽヽヽ
028
勝手
(
かつて
)
な
熱
(
ねつ
)
を
吹
(
ふ
)
きよつて
029
しつぽり
泣
(
な
)
いたがよからうぞ
030
之
(
これ
)
から
俺
(
おれ
)
は
蠑螈別
(
いもりわけ
)
031
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまの
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
て
032
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
物語
(
ものがた
)
り
033
二人
(
ふたり
)
の
恋
(
こひ
)
を
何処
(
どこ
)
までも
034
妨害
(
ばうがい
)
せなくちやおかないぞ
035
覚
(
おぼ
)
えてゐよと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
036
お
千代
(
ちよ
)
を
睨
(
ね
)
めつけスタスタと
037
館
(
やかた
)
をさして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
038
お
千代
(
ちよ
)
は
又
(
また
)
もや
打笑
(
うちわら
)
ひ
039
お千代
『ホヽヽヽヽ
魔我彦
(
まがひこ
)
が
040
曲
(
まが
)
つた
心
(
こころ
)
の
恋衣
(
こひごろも
)
041
今
(
いま
)
は
敢
(
あへ
)
なく
破
(
やぶ
)
れけり
042
破
(
やぶ
)
れかぶれの
負惜
(
まけをし
)
み
043
立派
(
りつぱ
)
な
夫
(
をつと
)
のある
人
(
ひと
)
を
044
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
にあり
乍
(
なが
)
ら
045
女房
(
にようばう
)
にしようとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
046
横恋慕
(
よこれんぼ
)
も
程
(
ほど
)
がある
047
枉
(
まが
)
の
憑
(
かか
)
つた
魔我彦
(
まがひこ
)
は
048
恋
(
こひ
)
に
眼
(
まなこ
)
を
晦
(
くら
)
ませて
049
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
の
大道
(
おほみち
)
を
050
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
したる
浅間
(
あさま
)
しさ
051
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とは
昔
(
むかし
)
から
052
天下
(
てんか
)
晴
(
は
)
れての
夫婦仲
(
ふうふなか
)
053
誰
(
たれ
)
に
憚
(
はばか
)
る
事
(
こと
)
あろか
054
笑
(
わら
)
へば
笑
(
わら
)
へ
誹
(
そし
)
るなら
055
何程
(
いくら
)
なりとも
誹
(
そし
)
れかし
056
私
(
わたし
)
と
云
(
い
)
ふものある
上
(
うへ
)
は
057
仮令
(
たとへ
)
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまが
058
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
はうとも
構
(
かま
)
やせぬ
059
ウラナイ
教
(
けう
)
のお
道
(
みち
)
から
060
云
(
い
)
うても
父
(
ちち
)
はユラリ
彦
(
ひこ
)
061
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
062
母
(
はは
)
の
命
(
みこと
)
は
上義姫
(
じやうぎひめ
)
063
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
から
云
(
い
)
うたなら
064
戯
(
たは
)
けた
話
(
はなし
)
であるけれど
065
ウラナイ
教
(
けう
)
の
道
(
みち
)
として
066
何
(
なん
)
とか
彼
(
か
)
とか
神
(
かみ
)
の
名
(
な
)
を
067
つけて
喜
(
よろこ
)
んで
居
(
ゐ
)
る
上
(
うへ
)
は
068
仮令
(
たとへ
)
松彦
(
まつひこ
)
父上
(
ちちうへ
)
が
069
ユラリの
彦
(
ひこ
)
となりすまし
070
母
(
はは
)
の
命
(
みこと
)
は
上義姫
(
じやうぎひめ
)
071
神
(
かみ
)
と
神
(
かみ
)
との
夫婦
(
ふうふ
)
ぢやと
072
云
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
で
何悪
(
なにわる
)
い
073
蠑螈別
(
いもりわけ
)
もお
寅
(
とら
)
さまも
074
とつくに
承知
(
しようち
)
の
上
(
うへ
)
ぢやないか
075
何程
(
なにほど
)
魔我
(
まが
)
さまがゴテゴテと
076
曲
(
まが
)
つて
来
(
こ
)
やうが
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
も
077
二人
(
ふたり
)
の
仲
(
なか
)
にたつものか
078
ホヽヽヽヽあた
可笑
(
をか
)
しい
079
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
との
久方
(
ひさかた
)
の
080
睦言葉
(
むつみことば
)
を
外面
(
そとも
)
から
081
立聞
(
たちぎ
)
きなして
妬
(
や
)
け
起
(
おこ
)
し
082
悋気
(
りんき
)
の
焔
(
ほのほ
)
に
包
(
つつ
)
まれて
083
外聞
(
ぐわいぶん
)
の
悪
(
わる
)
い
門口
(
かどぐち
)
で
084
カヽヽヽカツと
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
す
085
一丈
(
いちぢやう
)
二
(
に
)
尺
(
しやく
)
の
褌
(
まはし
)
をば
086
締
(
し
)
めた
男
(
をとこ
)
のすることか
087
恥
(
はぢ
)
を
知
(
し
)
らぬも
程
(
ほど
)
がある
088
こんなお
方
(
かた
)
が
副教主
(
ふくけうしゆ
)
089
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
片腕
(
かたうで
)
と
090
なつて
厶
(
ござ
)
ると
思
(
おも
)
うたら
091
仏壇
(
ぶつだん
)
の
底
(
そこ
)
めげぢやないけれど
092
阿弥陀
(
あみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れて
来
(
く
)
るぢやないか
093
オホヽヽヽヽオホヽヽヽ
094
魔我彦
(
まがひこ
)
さまのスタイルは
095
何
(
なん
)
と
仮令
(
たとへ
)
て
宜
(
よ
)
からうか
096
溝
(
どぶ
)
に
落
(
お
)
ちたる
痩鼠
(
やせねずみ
)
097
雪隠
(
せんち
)
に
落
(
お
)
ちた
鶏
(
にはとり
)
が
098
尾羽
(
をは
)
打枯
(
うちか
)
らし
腰
(
こし
)
曲
(
ま
)
げて
099
犬
(
いぬ
)
の
遠吠
(
とほぼ
)
え
卑怯
(
ひけふ
)
にも
100
笑
(
わら
)
つて
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
浅間
(
あさま
)
しさ
101
オツトドツコイ
惟神
(
かむながら
)
102
神
(
かみ
)
のお
道
(
みち
)
にあり
乍
(
なが
)
ら
103
腹立
(
はらだ
)
ち
紛
(
まぎ
)
れに
魔我彦
(
まがひこ
)
の
104
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
悪口
(
わるくち
)
を
105
子供
(
こども
)
の
身
(
み
)
として
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てた
106
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
107
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
108
道理
(
だうり
)
を
知
(
し
)
らぬ
年若
(
としわか
)
の
109
娘
(
むすめ
)
の
云
(
い
)
つた
世迷言
(
よまひごと
)
110
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
111
悪言
(
あくげん
)
暴語
(
ばうご
)
の
罪科
(
つみとが
)
を
112
何卒
(
なにとぞ
)
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さんせ
113
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
との
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
114
思
(
おも
)
ひにあまつて
思
(
おも
)
はざる
115
脱線
(
だつせん
)
振
(
ぶ
)
りを
発揮
(
はつき
)
した
116
乙女心
(
をとめごころ
)
を
憐
(
あは
)
れみて
117
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
へ
三五
(
あななひ
)
の
118
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
119
慎
(
つつし
)
み
敬
(
うやま
)
ひ
詫奉
(
わびまつ
)
る』
120
松彦
(
まつひこ
)
『
千代子
(
ちよこ
)
は
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
たきり、
121
何
(
なん
)
だか
謡
(
うた
)
つてゐる
様
(
やう
)
だな。
122
うつかりした
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
魔我彦
(
まがひこ
)
さまの
機嫌
(
きげん
)
を
損
(
そこな
)
つてはならないがな』
123
松姫
(
まつひめ
)
『お
千代
(
ちよ
)
は
何分
(
なにぶん
)
有名
(
いうめい
)
な
侠客
(
けふかく
)
に
育
(
そだ
)
てられ、
124
小
(
ちひ
)
さい
時
(
とき
)
からスレツからしに
育
(
そだ
)
て
上
(
あ
)
げられたものだから、
125
肝玉
(
きもだま
)
も
太
(
ふと
)
く、
126
年
(
とし
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
早熟
(
ませ
)
くさりで
随分
(
ずゐぶん
)
偉
(
えら
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひますよ。
127
時々
(
ときどき
)
脱線
(
だつせん
)
振
(
ぶ
)
りをやつて
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまや
魔我彦
(
まがひこ
)
さまをアフンとさせ、
128
ヤンチヤ
娘
(
むすめ
)
の
名
(
な
)
を
擅
(
ほしいまま
)
にして
居
(
を
)
ります。
129
それ
故
(
ゆゑ
)
私
(
わたし
)
も
名乗
(
なの
)
つてやり
度
(
た
)
かつたなれど、
130
故意
(
わざ
)
とに
隠
(
かく
)
して
居
(
を
)
りました』
131
松彦
(
まつひこ
)
『お
千代
(
ちよ
)
には
如何
(
どう
)
云
(
い
)
ふ
機
(
はづみ
)
でお
前
(
まへ
)
は
会
(
あ
)
うたのだ』
132
松姫
(
まつひめ
)
『あのお
寅
(
とら
)
さまが
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのですよ。
133
同
(
おな
)
じ
侠客
(
けふかく
)
同志
(
どうし
)
で
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
かつたと
見
(
み
)
えて、
134
親
(
おや
)
も
兄弟
(
きやうだい
)
もない
娘
(
むすめ
)
だから、
135
ここで
立派
(
りつぱ
)
に
育
(
そだ
)
て
上
(
あ
)
げ
度
(
た
)
いと
云
(
い
)
つて
親切
(
しんせつ
)
に
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのです。
136
それから
私
(
わたし
)
が
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
れば
全
(
まつた
)
く
私
(
わたし
)
の
娘
(
むすめ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
り、
137
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
も
堪
(
たま
)
らず
嬉
(
うれ
)
しうなつて
来
(
き
)
ましたが、
138
今
(
いま
)
名乗
(
なの
)
つては、
139
あの
子
(
こ
)
の
為
(
た
)
めによくないと
思
(
おも
)
ひ、
140
今日
(
けふ
)
が
日
(
ひ
)
までも
隠
(
かく
)
して
居
(
を
)
りました。
141
本当
(
ほんたう
)
に
子供
(
こども
)
と
云
(
い
)
ふものは
教育
(
けういく
)
が
大切
(
たいせつ
)
ですな。
142
親
(
おや
)
のない
子
(
こ
)
が
泥棒
(
どろばう
)
になつたり、
143
大悪人
(
だいあくにん
)
になるのは
世間
(
せけん
)
に
沢山
(
たくさん
)
ある
習
(
なら
)
ひですから、
144
これから
十分
(
じふぶん
)
に
気
(
き
)
をつけて
教育
(
けういく
)
をしてやらねばなりますまい。
145
十二
(
じふに
)
や
三
(
さん
)
で
婆
(
ばば
)
の
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふのですから
困
(
こま
)
つて
了
(
しま
)
ひますわ』
146
松彦
(
まつひこ
)
『さうだな。
147
子供
(
こども
)
は
教育
(
けういく
)
が
肝腎
(
かんじん
)
だ。
148
子供
(
こども
)
と
云
(
い
)
ふものは
模倣性
(
もはうせい
)
を
持
(
も
)
つてゐるから
見聞
(
みきき
)
した
事
(
こと
)
を
自分
(
じぶん
)
が
直
(
すぐ
)
に
実行
(
じつかう
)
したがるものだ。
149
子供
(
こども
)
は
親
(
おや
)
の
真似
(
まね
)
をして
遊
(
あそ
)
びたがるものなり、
150
大人
(
おとな
)
は
亦
(
また
)
白
(
しろ
)
い
石
(
いし
)
や
黒
(
くろ
)
い
石
(
いし
)
を
並
(
なら
)
べて
子供
(
こども
)
の
真似
(
まね
)
をしたがるものだ。
151
これもヤツパリ
因碁
(
いんごう
)
だらうよ。
152
アハヽヽヽヽ』
153
松姫
(
まつひめ
)
『
私
(
わたし
)
だつて、
154
貴郎
(
あなた
)
だつて
今
(
いま
)
こそ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
に
仕
(
つか
)
へて
人
(
ひと
)
に
崇
(
あが
)
められて
先生顔
(
せんせいがほ
)
をして
居
(
を
)
りますが、
155
あの
子
(
こ
)
の
出来
(
でき
)
た
時分
(
じぶん
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
なつて
居
(
ゐ
)
ませぬでしたな。
156
あの
時
(
とき
)
の
魂
(
たましひ
)
で
宿
(
やど
)
つた
子
(
こ
)
だもの、
157
碌
(
ろく
)
な
子
(
こ
)
が
生
(
うま
)
れさうな
事
(
こと
)
がありませぬわ。
158
まだまア
不具
(
かたわ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
こ
)
なんだのが、
159
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
恵
(
めぐ
)
みですよ』
160
松彦
(
まつひこ
)
『
然
(
しか
)
しお
千代
(
ちよ
)
は
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
外
(
そと
)
に
立
(
た
)
つて
魔我彦
(
まがひこ
)
だとか、
161
何
(
なん
)
とか
謡
(
うた
)
つてるぢやないか。
162
困
(
こま
)
つたものだな。
163
どれお
千代
(
ちよ
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
こ
)
う』
164
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
松彦
(
まつひこ
)
は
立
(
た
)
つて
門口
(
かどぐち
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
ひら
)
き
外
(
そと
)
を
覗
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
んだ。
165
お
千代
(
ちよ
)
はイーンイーンをしたり、
166
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いたり
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて
何
(
なん
)
だか
人
(
ひと
)
の
頭
(
あたま
)
でも
殴
(
なぐ
)
る
様
(
やう
)
な
真似
(
まね
)
して、
167
空中
(
くうちう
)
を
殴
(
なぐ
)
つてゐる。
168
松彦
(
まつひこ
)
『これこれお
千代
(
ちよ
)
、
169
お
前
(
まへ
)
、
170
そりや
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだい』
171
千代
(
ちよ
)
『はい、
172
これはこれは
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
173
上義姫
(
じやうぎひめ
)
との
御
(
ご
)
再会
(
さいくわい
)
を
祝
(
しゆく
)
するため
きつく
姫
(
ひめ
)
が
岩戸
(
いはと
)
の
外
(
そと
)
で
神楽
(
かぐら
)
を
奏
(
あ
)
げて
居
(
を
)
りますのよ。
174
何
(
なん
)
ぼ
娘
(
むすめ
)
だつて
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りの
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
に
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
になつては、
175
ならないと
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かして
居
(
を
)
りますのよ。
176
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
にお
母
(
か
)
アさまと、
177
とつくり
泣
(
な
)
いたり
笑
(
わら
)
うたり、
178
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
お
芝居
(
しばゐ
)
を
成
(
な
)
さいませ。
179
お
父
(
とう
)
さまやお
母
(
かあ
)
さまのお
楽
(
たの
)
しみのお
邪魔
(
じやま
)
になつてはなりませぬからな』
180
松彦
(
まつひこ
)
『
何
(
なん
)
と
呆
(
あき
)
れたお
転婆
(
てんば
)
だなア。
181
これ、
182
千代
(
ちよ
)
サン、
183
そんな
斟酌
(
しんしやく
)
は
要
(
い
)
らない、
184
とつと
と
入
(
はい
)
つておいで』
185
千代
(
ちよ
)
『もう
暫
(
しばら
)
くここで
遊
(
あそ
)
ばして
下
(
くだ
)
さいな』
186
松彦
(
まつひこ
)
『
遊
(
あそ
)
ぶのはいいが
魔我彦
(
まがひこ
)
が
何
(
ど
)
うだの
斯
(
か
)
うだのと
憎
(
にく
)
まれ
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
いちやいけないよ』
187
千代
(
ちよ
)
『だつてお
父
(
とう
)
さま
魔我彦
(
まがひこ
)
さまは
仕方
(
しかた
)
のない
男
(
をとこ
)
だもの。
188
チツと
位
(
くらゐ
)
恥
(
はぢ
)
をかかしてやらねば
後
(
のち
)
の
為
(
た
)
めになりませぬわ。
189
男
(
をとこ
)
の
癖
(
くせ
)
に
間
(
ま
)
がな
隙
(
すき
)
がな、
190
お
母
(
か
)
アさまの
居間
(
ゐま
)
へやつて
来
(
き
)
て、
191
味噌
(
みそ
)
ばつかり
摺
(
す
)
るのですもの、
192
好
(
す
)
かぬたらしい。
193
あたい
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
堪
(
たま
)
らぬのよ。
194
今日
(
けふ
)
まで
辛抱
(
しんばう
)
して
居
(
を
)
つたのだけれど、
195
お
父
(
とう
)
さまとお
母
(
かあ
)
さまが
分
(
わか
)
つたからは、
196
もう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
。
197
魔我彦
(
まがひこ
)
位
(
ぐらゐ
)
が
何
(
なん
)
ぼ
束
(
そく
)
でやつて
来
(
き
)
ても
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですわ。
198
親
(
おや
)
の
光
(
ひかり
)
は
七里
(
ななさと
)
光
(
ひか
)
ると
云
(
い
)
ふぢやありませぬか。
199
永
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
親
(
おや
)
なしぢや
親
(
おや
)
なしぢやと
云
(
い
)
つて
軽蔑
(
けいべつ
)
され、
200
悔
(
くや
)
し
残念
(
ざんねん
)
を
今
(
いま
)
まで
耐
(
こば
)
つて
居
(
を
)
つたのですよ。
201
其
(
その
)
中
(
なか
)
でも
魔我
(
まが
)
が
一番
(
いちばん
)
私
(
わたし
)
を
軽蔑
(
けいべつ
)
したの。
202
さうだから
日頃
(
ひごろ
)
の
鬱憤
(
うつぷん
)
が
破裂
(
はれつ
)
して
一人
(
ひとり
)
口
(
くち
)
から
悪罵
(
あくば
)
が
破裂
(
はれつ
)
するのですもの。
203
チツとは
云
(
い
)
はして
下
(
くだ
)
さいな。
204
まだこれ
位
(
くらゐ
)
云
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
で
三番叟
(
さんばそう
)
ですわ』
205
松彦
(
まつひこ
)
『お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
になれば
無理
(
むり
)
も
無
(
な
)
からうが、
206
そこを
辛抱
(
しんばう
)
するのが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
道
(
みち
)
だ。
207
さうズケズケと
云
(
い
)
ひたい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
人
(
ひと
)
に
憎
(
にく
)
まれるものではない。
208
子供
(
こども
)
は
子供
(
こども
)
の
様
(
やう
)
にして
居
(
を
)
ればいいのだよ』
209
千代
(
ちよ
)
『
魔我彦
(
まがひこ
)
に
憎
(
にく
)
まれたつて
構
(
かま
)
はぬぢやありませぬか。
210
お
父
(
とう
)
さまとお
母
(
かあ
)
さまに
可愛
(
かあい
)
がつて
貰
(
もら
)
ひさへすれば
宜
(
よろ
)
しいわ、
211
ねえ』
212
松彦
(
まつひこ
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
母
(
かあ
)
さまが
待
(
ま
)
つてゐるからお
這入
(
はい
)
りなさい』
213
お
千代
(
ちよ
)
はニコニコとして
松彦
(
まつひこ
)
の
後
(
うしろ
)
に
従
(
したが
)
ひ
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
214
松彦
(
まつひこ
)
『お
千代
(
ちよ
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
スレツからしになつたものだ。
215
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だな』
216
松姫
(
まつひめ
)
『
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
りますよ。
217
これが
私
(
わたし
)
の
娘
(
むすめ
)
だと
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
では
云
(
い
)
はれないのですもの。
218
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つちまいます。
219
こんな
子
(
こ
)
が
成人
(
せいじん
)
したら
又
(
また
)
博奕
(
ばくち
)
打
(
う
)
ちの
親方
(
おやかた
)
にでもなりやせまいかと
思
(
おも
)
へば
末
(
すゑ
)
が
恐
(
おそ
)
ろしう
厶
(
ござ
)
いますわ』
220
千代
(
ちよ
)
『お
母
(
かあ
)
さま、
221
私
(
わたし
)
侠客
(
けふかく
)
になるつもりなのよ。
222
弱
(
よわ
)
きを
助
(
たす
)
け、
223
強
(
つよ
)
きを
挫
(
くじ
)
き、
224
大
(
おほ
)
きな
荒男
(
あらをとこ
)
を
頤
(
あご
)
で
使
(
つか
)
ひ
女王
(
ぢよわう
)
気取
(
きど
)
りになり、
225
姐貴
(
あねき
)
姐貴
(
あねき
)
と
称
(
たた
)
へられて
名
(
な
)
を
遠近
(
ゑんきん
)
に
轟
(
とどろ
)
かすのが
人生
(
じんせい
)
第一
(
だいいち
)
の
望
(
のぞみ
)
ですわ。
226
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまを
見
(
み
)
なさい。
227
侠客
(
けふかく
)
だつたお
蔭
(
かげ
)
で
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまのお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りになつて
居
(
ゐ
)
らつしやるぢやありませぬか』
228
松姫
(
まつひめ
)
『これお
千代
(
ちよ
)
、
229
お
前
(
まへ
)
はお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまの
様
(
やう
)
になりたいのかい』
230
千代
(
ちよ
)
『あたい、
231
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまの
様
(
やう
)
な
中途半
(
ちうとはん
)
の
女侠客
(
をんなけふかく
)
は
嫌
(
きら
)
ひよ。
232
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
、
233
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
きつての
大親分
(
おほおやぶん
)
にならうと
思
(
おも
)
つてゐるの』
234
松彦
(
まつひこ
)
『
困
(
こま
)
つたな、
235
偉
(
えら
)
いものを
生
(
う
)
んだものだ。
236
やつぱり
種子
(
たね
)
は
争
(
あらそ
)
はれぬものかいな』
237
千代
(
ちよ
)
『ホヽヽヽヽ
茄子
(
なす
)
の
種子
(
たね
)
は
茄子
(
なす
)
、
238
瓜
(
うり
)
の
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
けば
瓜
(
うり
)
の
苗
(
なへ
)
が
生
(
は
)
えます。
239
私
(
わたし
)
はお
父
(
とう
)
さま、
240
お
母
(
かあ
)
さまのヤンチヤ
身魂
(
みたま
)
から
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
うま
)
れ、
241
其
(
その
)
上
(
うへ
)
侠客
(
けふかく
)
の
手
(
て
)
に
育
(
そだ
)
てられたものだもの、
242
斯
(
こ
)
んな
心
(
こころ
)
になるのは
当然
(
あたりまへ
)
ですわ』
243
松彦
(
まつひこ
)
『お
前
(
まへ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
になるのが
宜
(
い
)
いか、
244
侠客
(
けふかく
)
になるのが
宜
(
よ
)
いか』
245
千代
(
ちよ
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
なんて
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かぬじやありませぬか。
246
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
婆嬶
(
ばばかか
)
や
時代
(
じだい
)
遅
(
おく
)
れの
老爺
(
ぢい
)
さまや、
247
剛欲
(
がうよく
)
の
人間
(
にんげん
)
や、
248
盲
(
めくら
)
や
唖
(
おし
)
に、
249
不具
(
ふぐ
)
に
病身者
(
びやうしんもの
)
、
250
一人
(
ひとり
)
だつて
満足
(
まんぞく
)
のものが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
処
(
ところ
)
へ
寄
(
よ
)
つて
来
(
き
)
ますか。
251
たまたま
体
(
からだ
)
の
丈夫
(
ぢやうぶ
)
な
男女
(
だんぢよ
)
が
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
へば
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
に
欠陥
(
けつかん
)
のある
人間
(
にんげん
)
ばつかり、
252
そんな
人
(
ひと
)
に
崇
(
あが
)
められたとて
何
(
なに
)
が
面白
(
おもしろ
)
う
厶
(
ござ
)
りませう。
253
理解
(
りかい
)
の
上
(
うへ
)
に
崇
(
あが
)
められたのなら
愉快
(
ゆくわい
)
ですが、
254
無理解
(
むりかい
)
者
(
もの
)
から
持
(
も
)
て
囃
(
はや
)
されたつて
何
(
なに
)
が
光栄
(
くわうえい
)
ですか。
255
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
らしく
消
(
き
)
え
度
(
た
)
くなつて
了
(
しま
)
ひますわ。
256
それよりも
侠客
(
けふかく
)
になつて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
257
裸百貫
(
はだかひやくくわん
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
、
258
霊肉
(
れいにく
)
ともに
欠陥
(
けつかん
)
のない、
259
男
(
をとこ
)
の
中
(
なか
)
の
男
(
をとこ
)
が
集
(
あつ
)
まつて
来
(
き
)
て
義
(
ぎ
)
に
勇
(
いさ
)
み、
260
誠
(
まこと
)
を
立
(
た
)
て、
261
悪人
(
あくにん
)
を
懲
(
こら
)
し、
262
まるで
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
様
(
やう
)
な
欲
(
よく
)
のない、
263
宵越
(
よひご
)
しの
銭
(
ぜに
)
を
使
(
つか
)
はぬ
綺麗
(
きれい
)
薩張
(
さつぱ
)
りした
人間
(
にんげん
)
ばかりに
姐貴
(
あねき
)
々々
(
あねき
)
とたてられて、
264
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
送
(
おく
)
るほど
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
がありますか。
265
あたいは
何処迄
(
どこまで
)
も
女侠客
(
をんなけふかく
)
になるのが
望
(
のぞ
)
みです』
266
松彦
(
まつひこ
)
『ハヽヽヽヽ
困
(
こま
)
つたな。
267
親
(
おや
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
、
268
子
(
こ
)
は
女侠客
(
をんなけふかく
)
、
269
どうも
反
(
そり
)
が
合
(
あ
)
はぬ
様
(
やう
)
だ』
270
千代
(
ちよ
)
『お
父
(
とう
)
さま、
271
大工
(
だいく
)
の
子
(
こ
)
は
大工
(
だいく
)
を
営
(
いとな
)
み、
272
医者
(
いしや
)
の
子
(
こ
)
は
何処迄
(
どこまで
)
も
医者
(
いしや
)
をやらねばならぬと
云
(
い
)
ふ
規則
(
きそく
)
はありますまい。
273
各自
(
めいめい
)
に
人間
(
にんげん
)
には、
274
それ
相応
(
さうおう
)
の
天才
(
てんさい
)
があつて
凡
(
すべ
)
ての
事業
(
じげふ
)
に
適不適
(
てきふてき
)
があるものです。
275
自分
(
じぶん
)
の
天才
(
てんさい
)
を
十二分
(
じふにぶん
)
に
発揮
(
はつき
)
するのが
教育
(
けういく
)
の
精神
(
せいしん
)
でせう。
276
圧迫
(
あつぱく
)
教育
(
けういく
)
を
施
(
ほどこ
)
して
児童
(
じどう
)
の
本能
(
ほんのう
)
を
傷
(
きず
)
つけ、
277
桝
(
ます
)
できり
揃
(
そろ
)
へた
様
(
やう
)
な
団栗
(
どんぐり
)
の
背競
(
せいくら
)
べの
様
(
やう
)
な
人間
(
にんげん
)
ばかり
作
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げる
様
(
やう
)
な
現在
(
げんざい
)
の
教育
(
けういく
)
では
大人物
(
だいじんぶつ
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぜ。
278
植物
(
しよくぶつ
)
だつて、
279
枝
(
えだ
)
を
曲
(
ま
)
げたり、
280
切
(
き
)
つたり、
281
針金
(
はりがね
)
で
括
(
くく
)
つたり、
282
いろいろと
干渉
(
かんせう
)
教育
(
けういく
)
を
施
(
ほどこ
)
すと、
283
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の
置物
(
おきもの
)
よりなりますまい。
284
山
(
やま
)
の
谷
(
たに
)
で
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
成育
(
せいいく
)
した
樹木
(
じゆもく
)
は
成人
(
せいじん
)
して
立派
(
りつぱ
)
な
柱
(
はしら
)
になりませう。
285
さうだから
人間
(
にんげん
)
は
如何
(
どう
)
しても
天才
(
てんさい
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
発揮
(
はつき
)
させる
様
(
やう
)
に
教育
(
けういく
)
させなくては
駄目
(
だめ
)
ですわ』
286
松彦
(
まつひこ
)
『
松姫
(
まつひめ
)
、
287
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り、
288
何
(
なん
)
とまアこましやくれた
娘
(
むすめ
)
だな。
289
随分
(
ずゐぶん
)
社会
(
しやくわい
)
教育
(
けういく
)
を
受
(
う
)
けたと
見
(
み
)
えるな』
290
松姫
(
まつひめ
)
『
到底
(
たうてい
)
私
(
わたし
)
の
手
(
て
)
には
合
(
あ
)
はない
娘
(
むすめ
)
ですよ』
291
松彦
(
まつひこ
)
『さうだな。
292
いや
却
(
かへつ
)
て
干渉
(
かんせう
)
せない
方
(
はう
)
がよいかも
知
(
し
)
れない。
293
一六
(
いちろく
)
ものだ。
294
大変
(
たいへん
)
な
善人
(
ぜんにん
)
になるか、
295
悪人
(
あくにん
)
になるか、
296
先
(
さき
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
らねば
分
(
わか
)
るまい。
297
到底
(
たうてい
)
親
(
おや
)
の
力
(
ちから
)
では
駄目
(
だめ
)
だ。
298
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せするが
一等
(
いつとう
)
だ』
299
千代
(
ちよ
)
『それが
所謂
(
いはゆる
)
惟神
(
かむながら
)
教育
(
けういく
)
ですよ。
300
貴方
(
あなた
)
だつて、
301
いつも
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
と
仰有
(
おつしや
)
るのですもの』
302
松彦
(
まつひこ
)
『アハヽヽヽヽ』
303
松姫
(
まつひめ
)
『オホヽヽヽヽ』
304
千代
(
ちよ
)
『
惟神
(
かむながら
)
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せば
自
(
おのづか
)
ら
305
松
(
まつ
)
の
緑
(
みどり
)
は
千代
(
ちよ
)
に
栄
(
さか
)
ゑむ
306
相生
(
あひおひ
)
の
松
(
まつ
)
の
下露
(
したつゆ
)
日
(
ひ
)
を
受
(
う
)
けて
307
生
(
は
)
え
出
(
い
)
でにけり
味良
(
あぢよ
)
き
茸
(
きのこ
)
は』
308
(
大正一一・一二・一二
旧一〇・二四
北村隆光
録)
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(B)
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第六歌集『霧の海』
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【08 小蝶|第45巻(申の巻)|霊界物語/rm4508】
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