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第五章 鷹魅(ようみ)〔一四三五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第1篇 自愛之柵 よみ(新仮名遣い):じあいのしがらみ
章:第5章 鷹魅 よみ(新仮名遣い):ようみ 通し章番号:1435
口述日:1923(大正12)年03月14日(旧01月27日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
宣伝歌を歌いながらやってきた婆は高姫であった。高姫はこの原野は自分の管轄区域だと言うと、四人の男女に声をかけて招いた。
高姫はここは現界だと言い張ると、半ば強引に四人を自分の館に招いた。谷川のほとりに、高姫の中有界における住処である小さな萱吹きの家が建っていた。一行は橋を渡って高姫館に着いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5605
愛善世界社版:56頁 八幡書店版:第10輯 166頁 修補版: 校定版:59頁 普及版:25頁 初版: ページ備考:
001(この)()(つく)りし元津祖(もとつおや)
002弥勒(みろく)(かみ)高姫(たかひめ)
003(にく)のお(みや)(うつ)りたる
004()出神(でのかみ)とこじつけて
005金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
006(その)(ほか)(もも)神宝(しんぱう)
007執着(しふちやく)(つよ)四方(よも)(くに)
008海洋(かいやう)万里(ばんり)(なみ)(わた)
009(さわ)ぎまはりし(その)結果(けつくわ)
010仁慈(じんじ)無限(むげん)瑞御霊(みづみたま)
011(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
012(みづ)()らさぬ執成(とりなし)
013(こころ)(そこ)から悔悟(くわいご)して
014(まこと)(みち)()(かへ)
015(しば)らく聖地(せいち)(あら)はれて
016(をしへ)(つた)()たりしが
017淡路(あはぢ)(さと)東助(とうすけ)
018昔馴染(むかしなじみ)()きしより
019(ふたた)(くる)心猿(しんゑん)意馬(いば)
020()()もなしに躍動(やくどう)
021生田(いくた)(もり)(あと)にして
022(なが)海山(うみやま)打渡(うちわた)
023(こころ)いそいそ斎苑(いそ)(やかた)
024ウブスナ(やま)聖場(せいぢやう)
025(まう)(きた)りて東助(とうすけ)
026()ぎし(むかし)物語(ものがたり)
027シツポリなして旧交(きうかう)
028回復(くわいふく)せむと恋愛(れんあい)
029(くも)(つつ)まれ村肝(むらきも)
030(こころ)(やみ)となりにけり
031信心(しんじん)堅固(けんご)東助(とうすけ)
032(こひ)(くる)へる高姫(たかひめ)
033(ただ)一瞥(いちべつ)もくれずして
034いと素気(すげ)なくも()ねつける
035(こころ)(くも)りし高姫(たかひめ)
036(いよいよ)自暴(じばう)自棄(じき)となり
037(また)もやもとの悪身魂(あくみたま)
038再発(さいはつ)なして河鹿山(かじかやま)
039(あらし)(おもて)(さら)しつつ
040(はぢ)名誉(めいよ)()らばこそ
041玉国別(たまくにわけ)(きづ)きたる
042(ほこら)(もり)立寄(たちよ)りて
043ここに教主(けうしゆ)となりすまし
044(やかた)主人(あるじ)珍彦(うづひこ)
045眼下(がんか)見下(みくだ)()たる(をり)
046大雲山(だいうんざん)(わだか)まる
047八岐(やまた)大蛇(をろち)片腕(かたうで)
048兇党界(きようたうかい)にて()(たか)
049妖幻坊(えうげんばう)(あやつ)られ
050斎苑(いそ)(やかた)時置師(ときおかし)
051杢助(もくすけ)総務(そうむ)誤解(ごかい)して
052うまく()()一旗(ひとはた)
053()げて聖地(せいち)立籠(たてこ)もる
054東野別(あづまのわけ)(むか)()
055(こひ)意趣(いしう)()らさむと
056(たく)()たりし(をり)もあれ
057初稚姫(はつわかひめ)(あら)はれて
058千変(せんぺん)万化(ばんくわ)活動(くわつどう)
059居堪(ゐたま)りかねて妖幻坊(えうげんばう)
060高姫(たかひめ)諸共(もろとも)森林(しんりん)
061(くぐ)つてスタスタ()(いだ)
062小北(こぎた)(やま)神殿(しんでん)
063夫婦(ふうふ)気取(きどり)(すす)()
064(かみ)(ひかり)()らされて
065曲輪(まがわ)(たま)(おと)しつつ
066高姫(たかひめ)諸共(もろとも)()(いだ)
067妖幻坊(えうげんばう)杢助(もくすけ)
068高姫司(たかひめつかさ)諸共(もろとも)
069バラモン(ぐん)(たむろ)せし
070浮木(うきき)(もり)(あら)はれて
071あらゆる魔法(まはふ)(おこな)ひつ
072世人(よびと)(なや)()たる(をり)
073三五教(あななひけう)()(たか)
074天女(てんによ)(ひと)しき神司(かむつかさ)
075初稚姫(はつわかひめ)やスマートの
076(こゑ)(おどろ)妖幻坊(えうげんばう)
077黒雲(くろくも)(おこ)高姫(たかひめ)
078小脇(こわき)(かか)空中(くうちう)
079()()(をり)しもデカタンの
080大高原(だいかうげん)中央(まんなか)
081高姫司(たかひめつかさ)遺失(ゐしつ)して
082(くも)(かすみ)()げて()
083高姫(たかひめ)(そら)より墜落(つゐらく)
084人事(じんじ)不省(ふせい)(おちい)りて
085霊肉(れいにく)脱離(だつり)関門(くわんもん)
086(やうや)()えて遥々(はるばる)
087八衢(やちまた)関所(せきしよ)()()れば
088さも(いさ)ましき赤白(あかしろ)
089守衛(しゆゑい)行途(ゆくて)(さへぎ)られ
090三歳(みとせ)(あひだ)中有(ちうう)
091世界(せかい)()りて精霊(せいれい)
092(みが)(きよ)むる()となりぬ
093さは()(なが)高姫(たかひめ)
094身魂(みたま)地獄(ぢごく)(せき)()
095高天原(たかあまはら)霊光(れいくわう)
096(おそ)(をのの)()(きら)
097一歳(ひととせ)()ちし今日(けふ)()
098中有界(ちううかい)をブラブラと
099彷徨(さまよ)(めぐ)(まよ)()
100(もも)精霊(せいれい)相対(あひたい)
101現実界(げんじつかい)にありし(ごと)
102脱線(だつせん)だらけの宣伝(せんでん)
103つづけ()たるぞ(おろか)なれ
104エリシナ(だに)(かく)れたる
105ケリナの(ひめ)やバラモンの
106軍人(いくさびと)なるヘル、シャルや
107六造(ろくざう)()(にん)(みち)()
108(くさ)(かく)るる姿(すがた)をば
109目敏(めざと)(なが)立止(たちど)まり
110皺枯声(しわがれごゑ)張上(はりあ)げて
111日出(ひのでの)(かみ)義理(ぎり)天上(てんじやう)
112弥勒(みろく)(かみ)()先達(せんだつ)
113高姫司(たかひめつかさ)生宮(いきみや)
114(なんぢ)()()(にん)()をつける
115(はや)草原(くさはら)()()して
116(わが)生宮(いきみや)(まへ)()
117如何(いか)如何(いか)にと()()てる
118(その)スタイルぞ可笑(をか)しけれ
119ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
120(まよ)()つたる霊魂(たましひ)
121(かみ)(ちから)如何(いかん)とも
122(すく)はむ手段(てだて)もなかりけり。
123 高姫(たかひめ)(みち)()(なが)(くさ)(なか)(かく)れてゐる()(にん)男女(なんによ)(むか)(こゑ)(とが)らし(なが)ら、124言葉(ことば)尻口(しりくち)をピンとあげて口角(こうかく)(あわ)()ばし、125アトラスの(やう)(かほ)(まへ)にニユツと()(ふた)()ツつ(あご)をしやくり(かた)(ゆす)り、126(まね)(ねこ)(やう)()つきをして(ふた)()ツつ(くう)()(なが)ら、
127高姫(たかひめ)『これこれ、128何処(どこ)(かた)()らぬが(この)原野(げんや)(この)高姫(たかひめ)管轄(くわんかつ)区域(くゐき)だ。129何故(なぜ)こんな(ところ)まで(だま)つて()たのだい。130まア、131ちつと此方(こちら)()なさい。132結構(けつこう)(はなし)をしてやらう。133エーエー、134辛気(しんき)(くさ)い。135(はや)()なさらんかいな。136蟋蟀(いとど)螽斯(ばつた)(やう)(くさ)(なか)何時(いつ)(まで)すつこんで()つても(らち)()きませぬぞや』
137 ()(にん)怖々(こはごは)(くさ)()けガサガサと高姫(たかひめ)二三間(にさんげん)手前(てまへ)まで(あら)はれて()た。138さうして不思議(ふしぎ)(さう)(やや)俯向(うつむき)気味(きみ)になつて高姫(たかひめ)(かほ)をチラチラと(ぬす)(やう)()てゐた。
139高姫(たかひめ)『これ(みな)さま、140(まへ)がここへ()途中(とちう)(ひと)つの(いへ)があつただらう。141何故(なぜ)そこを(だま)つて(とほ)つて()たのだい。142(この)高姫(たかひめ)はもとは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)143(いま)はウラナイ(けう)のエンゼルだぞえ。144(てん)弥勒(みろく)(さま)根本(こつぽん)根本(こつぽん)大柱(おほはしら)大弥勒(おほみろく)(さま)で、145義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)(ござ)るぞや。146あんまり現界(げんかい)人間(にんげん)身魂(みたま)(くも)つてゐるので、147どうぞ(たす)けて天国(てんごく)へやつてやり()いと(おも)つて化身(けしん)(はふ)使(つか)ひ、148高姫(たかひめ)肉宮(にくみや)使(つか)つて(この)大野(おほの)(はら)往来(ゆきき)する人民(じんみん)片端(かたつぱし)から()(つか)まへて、149(まこと)(をしへ)()かしてゐるのだ。150さア(はや)()()なさい』
151六造(ろくざう)『お(まへ)さまは(おと)名高(なだか)高姫(たかひめ)さまで(ござ)いましたか。152()(うけたま)はつてゐましたが、153()にかかるのは(はじ)めてです』
154高姫(たかひめ)『うん、155さうかな。156(わし)()(なん)()つても宇宙(うちう)根本(こつぽん)大神(おほかみ)(さま)生宮(いきみや)だから津々(つつ)浦々(うらうら)(まで)(ひび)いてゐる(はず)だ。157(さん)(にん)のお(かた)158(まへ)(たち)(わし)()()いて()つただらうな』
159ヘル『ハイ、160()つから()いた(こと)(ござ)いませぬ。161(わたし)初稚姫(はつわかひめ)さまだとか、162清照姫(きよてるひめ)とか()立派(りつぱ)(かた)()()いて()ますが、163高姫(たかひめ)さまと()()今日(こんにち)(はじ)めてです』
164高姫(たかひめ)『さうかいな。165(なん)とまア(おく)(みみ)だこと。166天地(てんち)(あひだ)義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)()()らぬものは一人(ひとり)()(はず)だが、167矢張(やつぱり)身魂(みたま)因縁(いんねん)がないと、168(かみなり)(やう)(こゑ)()ばつても(みみ)這入(はい)らぬと()えるわい。169さア此処(ここ)()ふたを(さいは)ひ、170高姫(たかひめ)姿(すがた)拝見(はいけん)しお(こゑ)をよく()いておきなさい。171(けつ)して高姫(たかひめ)()ふのぢやありませぬぞや。172底津(そこつ)磐根(いはね)根本(こつぽん)大弥勒(おほみろく)(さま)仰有(おつしや)るのだから(あだ)()いては(ばち)(あた)りますぞえ』
173ヘル『(なん)だか()りませぬが、174貴方(あなた)のお(こゑ)()くと(あたま)(いた)くなりますわ。175(かほ)()ても気分(きぶん)がよく(ござ)いませぬわい』
176高姫(たかひめ)『そら、177さうだらう。178霊国(れいごく)天国(てんごく)()ねた天人(てんにん)身魂(みたま)だから、179身魂(みたま)(くも)つた(あく)守護神(しゆごじん)高姫(たかひめ)光明(くわうみやう)()らされて、180()(くら)善言(ぜんげん)美詞(びし)言霊(ことたま)にあてられて、181(みみ)()(あたま)(いた)むのだよ。182チツと(しつか)りしなさらんか。183(いま)ここで取違(とりちが)ひしたら、184万劫(まんごふ)末代(まつだい)(うか)ばれませぬぞや』
185ヘル『ヘイヘイ、186(かしこ)まりました。187(また)御縁(ごえん)(ござ)いましたらお世話(せわ)になりやせう』
188高姫(たかひめ)『ホホホホホ(わけ)(わか)らぬ癲狂(てんきやう)痴呆(ちはう)だこと。189あああ大慈(だいじ)大悲(だいひ)根本(こつぽん)大弥勒(おほみろく)さまも、190こんな没分暁漢(わからずや)済度(さいど)なさらなならぬのか、191ホンにおいとしいわいのう、192オーンオーンオーン、193(しか)(なが)(この)(をとこ)はヘルとか()いたが、194余程(よほど)馬鹿(ばか)(やつ)()える。195おい、196そこに()る、197一人(ひとり)(をとこ)198(まへ)高姫(たかひめ)()(ぐらゐ)()いてゐるだらうな』
199シャル『ハイ、200()いて()りますが、201(わたし)()いてる高姫(たかひめ)貴女(あなた)では(ござ)いますまい。202世界(せかい)(おな)()沢山(たくさん)(ござ)いますからな』
203高姫(たかひめ)『お(まへ)()いてる高姫(たかひめ)()ふのは如何(どん)性質(せいしつ)(ひと)だ。204一寸(ちよつと)()つて御覧(ごらん)なさい』
205シャル『ヘイ、206吾々(われわれ)親方(おやかた)にして()(やう)なお(かた)ですわ。207(なん)でも三五教(あななひけう)とやらに這入(はい)つて金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(うつつ)()かし大勢(おほぜい)(もの)(きら)はれ、208()()(かみ)とか糞出(くそで)(かみ)とか()つて(みづか)()(ある)き、209(しま)ひの(はて)には(ばば)(くせ)(こひ)()ち、210妖幻坊(えうげんばう)()古狸(ふるだぬき)につままれて何処(どこ)かへ(さら)はれて()つたと()(こと)です。211その高姫(たかひめ)なら()いてゐますが随分(ずゐぶん)(わたし)(むら)では(わる)(ばば)だと()評判(ひやうばん)()つて()りますよ』
212高姫(たかひめ)『さうかな。213矢張(やつぱり)(わし)()()(ばば)があると()えるワイ。214(あんま)(わし)()(たか)いものだから悪神(あくがみ)(あら)はれて高姫(たかひめ)()(かた)り、215三五教(あななひけう)這入(はい)つて、216(また)もや日出(ひのでの)(かみ)()(かた)り、217色々(いろいろ)(こと)(いた)したのだらう。218どうも油断(ゆだん)のならぬ時節(じせつ)だ。219(しか)(わし)(おな)高姫(たかひめ)でも、220そんな(もの)とは(ちが)ひますぞや。221(つき)(すつぽん)222(ゆき)(すみ)223(おな)じものと()られましては……ヘン……(この)高姫(たかひめ)()つから引合(ひきあ)ひませんわい。224オホホホホホ』
225シャル『(わたし)(いま)()うして泥坊(どろばう)商売(しやうばい)(かは)りましたが、226(いま)(まで)はバラモン(けう)軍人(ぐんじん)鬼春別(おにはるわけ)部下(ぶか)(つか)へたものです。227その(とき)三五教(あななひけう)幹部(かんぶ)(れん)人相書(にんさうがき)絵姿(ゑすがた)(まは)つて()ましたが、228妖幻坊(えうげんばう)(だま)されたと()高姫(たかひめ)に、229(まへ)さまそつくりですよ。230よもや(その)高姫(たかひめ)では(ござ)いますまいな。231彼奴(あいつ)()(こと)なら(くち)(こころ)裏表(うらおもて)だから(けつ)して()いてはならないと、232バラモン(けう)()ふに(およ)ばず三五教(あななひけう)のピユリタンでさへも()つて()ますよ』
233高姫(たかひめ)『ホホホホホ、234盗人(ぬすびと)分際(ぶんざい)として高姫(たかひめ)真偽(しんぎ)(わか)つて(たま)らうか。235あの高姫(たかひめ)()(やつ)(じつ)(ところ)はバラモン(けう)()つた蜈蚣姫(むかでひめ)()ふのだよ。236それが(わし)()(かた)つて、237あんな(こと)をやつたのだ。238三五教(あななひけう)(やつ)馬鹿(ばか)だから、239あまり御光(ごくわう)(つよ)いので見分(みわ)けがつかず贋者(にせもの)(つか)んで()つたのだ。240(なに)()もあれ、241この高姫(たかひめ)(かく)()(まで)いらつしやい。242(けつ)して利益(ため)にならぬ(こと)()はぬ。243(みんな)天国(てんごく)(たす)けてやるのだからな』
244シャル『オイ、245ヘルにケリナに、246六公(ろくこう)247如何(どう)しようかな。248(ひと)(この)(ばば)アの(はなし)()いてやらうか』
249六造(ろくざう)『うん』
250高姫(たかひめ)『エー、251そりや(なに)()ふのだ。252(この)(ばば)(はなし)()いてやらうも、253(くそ)もあつたものかい。254底津(そこつ)磐根(いはね)弥勒(みろく)(さま)生宮(いきみや)だ。255(なん)()つても(たす)けにや()かぬ、256さア()なされ()なされ。257これ、258其処(そこ)(わか)いお女中(ぢよちう)259(まへ)一寸(ちよつと)()(とこ)仲々(なかなか)()()いて()る。260(こと)(しな)とによつたら(わし)脇立(わきだち)使(つか)つてやらうまいものでもない。261(なに)せよ、262(くも)りきつた(みたま)(すぐ)天国(てんごく)()くと()ふのは(あんま)()()すぎる。263中途(ちうと)墜落(おち)(やう)(こと)をしてはならず、264苦労(くらう)(はな)()()(なか)だから……天国(てんごく)紫微宮(しびきう)から人間(にんげん)姿(すがた)となつて(くだ)つて()たのだ。265そして苦労(くらう)手本(てほん)()せて(みな)改心(かいしん)させる(やく)だぞえ。266(まへ)()()苦労(くらう)をしなさい』
267ケリナ『ハイ、268有難(ありがた)(ござ)います。269(じつ)(ところ)八衢(やちまた)関所(せきしよ)(まで)(まゐ)りました(ところ)270まだ生命(いのち)現世(げんせ)(のこ)つて()るから(かへ)れ、271仰有(おつしや)つたから(かへ)つて()たのです。272最早(もはや)此処(ここ)現界(げんかい)(ござ)いますか』
273高姫(たかひめ)『きまつた(こと)だよ。274此処(ここ)現界(げんかい)現界(げんかい)275大現界(おほげんかい)だ。276現幽神(げんいうしん)三界(さんかい)(すく)(ぬし)だから()現界(げんかい)人間(にんげん)から(たす)けてやるのだよ』
277ヘル『あああ、278(なに)(なん)だか(わけ)(わか)らなくなつて()た。279(しか)しさう()くと現界(げんかい)(やう)にもあるし、280(ひと)(こころ)(そこ)疑念(ぎねん)(のこ)つて()る。281こんな道端(みちばた)()つて()(ところ)仕方(しかた)()い。282()づお()アの(あと)()いて(なん)でも()いから(さぐ)らして(もら)(こと)にしようかい。283のう二男(になん)一女(いちによ)()連中(れんちう)
284高姫(たかひめ)(さぐ)らして(もら)ふなんて、285そりや(なに)()ふのだい。286(かみ)(をしへ)正真(しやうじき)一方(いつぱう)だ。287水晶(すいしやう)(やう)につきぬけて()るのだぞえ。288スパイか(なん)ぞの(やう)(さぐ)るなんて、289(こころ)(きたな)(こと)()ふのぢやありませぬわい。290さアさア()なさい』
291()ばたきし(なが)欣々(いそいそ)(ひがし)()して小径(こみち)(あゆ)()した。292()(にん)()(かく)293(ばあ)さまの(やかた)()つて休息(きうそく)せむと(おも)(あし)引摺(ひきず)(なが)()いて()く。
294 谷川(たにがは)(ほとり)(かや)()いた二間作(ふたまづく)りの(ささや)かな(いへ)()つて()た。295これが高姫(たかひめ)中有界(ちううかい)()ける住家(すみか)である。296ヒヨヒヨした(いた)一枚橋(いちまいばし)(あやふ)(わた)(なが)(やうや)くにして()(にん)高姫(たかひめ)(やかた)にやつと()いた。
297大正一二・三・一四 旧一・二七 於竜宮館 北村隆光録)
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