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第56巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 自愛之柵
01 神慮
〔1431〕
02 恋淵
〔1432〕
03 仇花
〔1433〕
04 盗歌
〔1434〕
05 鷹魅
〔1435〕
第2篇 宿縁妄執
06 高圧
〔1436〕
07 高鳴
〔1437〕
08 愛米
〔1438〕
09 我執
〔1439〕
第3篇 月照荒野
10 十字
〔1440〕
11 惚泥
〔1441〕
12 照門颪
〔1442〕
13 不動滝
〔1443〕
14 方岩
〔1444〕
第4篇 三五開道
15 猫背
〔1445〕
16 不臣
〔1446〕
17 強請
〔1447〕
18 寛恕
〔1448〕
19 痴漢
〔1449〕
20 犬嘘
〔1450〕
余白歌
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第56巻
> 第4篇 三五開道 > 第19章 痴漢
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第一九章
痴漢
(
ちかん
)
〔一四四九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻
篇:
第4篇 三五開道
よみ(新仮名遣い):
あなないかいどう
章:
第19章 痴漢
よみ(新仮名遣い):
ちかん
通し章番号:
1449
口述日:
1923(大正12)年03月17日(旧02月1日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
小国姫は如意宝珠の玉を持ってオールスチン、ワックス、三千彦と共に玉発見の報告に小国別の病床を訪れた。三千彦は病人に、娘たちがもうすぐ帰還することを予言した。
オールスチンと看護人に病床を任せ、小国姫、三千彦、ワックスは居間に戻ってきた。三千彦はワックスに改心を促し、小国姫も反省を迫ったが、ワックスはかえって、自分は玉の紛失にはかかわっておらず、発見者である自分こそデビス姫と結婚する権利があると強弁を始めた。
三千彦は怒って、ワックスがそういう心づもりであれば赦すことはできないと言い渡した。ワックスは自棄になって一目散に逃げ出した。小国姫は僕のエルに追跡を命じた。しかしエルは牛の尻にぶつかって人事不省になってしまった。
慌て者のエルは、小国別はすでに亡くなり、跡継ぎは家令の息子ワックスに決まったと根拠のないことを語りだした。城下の人々はこれを伝え聞いて、小国別お訃報に悲しみ、また跡継ぎの婚礼を祝い、辻辻に幟を立ててはやしまわった。
町はずれの方から宣伝歌の声が涼しく聞こえてきた。これは求道居士がデビス姫、ケリナ姫を連れて帰ってきたのであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-07-17 12:36:42
OBC :
rm5619
愛善世界社版:
267頁
八幡書店版:
第10輯 245頁
修補版:
校定版:
282頁
普及版:
128頁
初版:
ページ備考:
001
館
(
やかた
)
の
主人
(
あるじ
)
、
002
小国別
(
をくにわけ
)
はソフアーの
上
(
うへ
)
に
横
(
よこた
)
はり
息
(
いき
)
も
絶
(
た
)
え
絶
(
だ
)
えに
苦
(
くる
)
しんでゐる。
003
二人
(
ふたり
)
の
看護手
(
かんごしゆ
)
は
寝食
(
しんしよく
)
を
忘
(
わす
)
れて
介抱
(
かいはう
)
に
余念
(
よねん
)
なかつた。
004
小国姫
(
をくにひめ
)
はオールスチン、
005
三千彦
(
みちひこ
)
、
006
ワツクスを
伴
(
ともな
)
ひ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
007
姫
(
ひめ
)
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
008
喜
(
よろこ
)
んで
下
(
くだ
)
さいませ。
009
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
によりまして
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
神宝
(
しんぱう
)
が
帰
(
かへ
)
りまして
厶
(
ござ
)
います。
010
之
(
これ
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさいませ』
011
と
包
(
つつ
)
みを
解
(
と
)
いて
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
につきつけた。
012
小国別
(
をくにわけ
)
は
病
(
や
)
み
疲
(
つか
)
れ、
013
衰
(
おとろ
)
へたる
目
(
め
)
の
光
(
ひか
)
りに
玉
(
たま
)
を
眺
(
なが
)
めてニヤリと
笑
(
わら
)
ひ
双手
(
もろて
)
を
合
(
あは
)
せて
感涙
(
かんるゐ
)
に
咽
(
むせ
)
んでゐる。
014
そして
只
(
ただ
)
「
有難
(
ありがた
)
う」と
一言
(
ひとくち
)
云
(
い
)
つたきり
後
(
あと
)
の
語
(
ご
)
を
次
(
つ
)
ぐ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
なかつた。
015
これは
衰弱
(
すゐじやく
)
の
甚
(
はなは
)
だしき
上
(
うへ
)
に、
016
余
(
あま
)
りの
喜
(
よろこ
)
びに
打
(
う
)
たれたからである。
017
三千彦
(
みちひこ
)
は
病人
(
びやうにん
)
の
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
寄
(
よ
)
り、
018
三千
(
みち
)
『この
通
(
とほ
)
り
御
(
ご
)
神宝
(
しんぱう
)
が
帰
(
かへ
)
りました
上
(
うへ
)
は、
019
又
(
また
)
もや
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
によりまして、
020
屹度
(
きつと
)
ケリナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
も
近
(
ちか
)
い
中
(
うち
)
にお
帰
(
かへ
)
りになるでせう。
021
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
022
と
詞
(
ことば
)
優
(
やさ
)
しく
慰
(
なぐさ
)
むれば
小国別
(
をくにわけ
)
は
掌
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ、
023
娘
(
むすめ
)
の
近
(
ちか
)
い
中
(
うち
)
に
帰
(
かへ
)
ると
云
(
い
)
ふ
証言
(
しようげん
)
を
聞
(
き
)
くより、
024
稍
(
やや
)
元気
(
げんき
)
づき、
025
小国
(
をくに
)
『
娘
(
むすめ
)
が
帰
(
かへ
)
りますか。
026
それは
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
027
到底
(
たうてい
)
私
(
わたし
)
は
今度
(
こんど
)
は、
028
もう
旅立
(
たびだち
)
をせなくてはなりませぬ。
029
せめてそれ
迄
(
まで
)
に
紛失
(
ふんしつ
)
した
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を、
030
もとに
還
(
かへ
)
し、
031
娘
(
むすめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
生前
(
せいぜん
)
に
一目
(
ひとめ
)
なりと
見
(
み
)
て
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
り
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
りましたが、
032
斯
(
か
)
う
弱
(
よわ
)
りきつては、
033
もう
三日
(
みつか
)
も
命
(
いのち
)
が
続
(
つづ
)
きますまい。
034
成
(
な
)
る
事
(
こと
)
ならば
一時
(
ひととき
)
も
早
(
はや
)
う
引寄
(
ひきよ
)
せて
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
います』
035
三千
(
みち
)
『もう
間
(
ま
)
もなくお
帰
(
かへ
)
りになりませう。
036
私
(
わたし
)
の
耳
(
みみ
)
の
側
(
そば
)
で
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がさう
仰
(
おほ
)
せになりました。
037
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
御
(
ご
)
病気
(
びやうき
)
に
障
(
さは
)
るとなりませぬから、
038
吾々
(
われわれ
)
は
控
(
ひか
)
へさして
頂
(
いただ
)
きませう』
039
小国
(
をくに
)
『
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
自由
(
じいう
)
にお
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
040
と
微
(
かすか
)
の
声
(
こゑ
)
で
挨拶
(
あいさつ
)
する。
041
家令
(
かれい
)
のオールスチンは
病人
(
びやうにん
)
の
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
くより、
042
オールス『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
043
何卒
(
どうぞ
)
気
(
き
)
を
確
(
しつか
)
りして
下
(
くだ
)
さいませ。
044
そして
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
盗
(
ぬす
)
んで
匿
(
かく
)
して
居
(
を
)
つたのは
私
(
わたくし
)
の
悴
(
せがれ
)
ワツクスで
厶
(
ござ
)
りました。
045
誠
(
まこと
)
に
偉
(
えら
)
い
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけまして
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
046
此
(
この
)
皺腹
(
しわばら
)
を
切
(
き
)
つて
申訳
(
まをしわけ
)
を
致
(
いた
)
さむと
覚悟
(
かくご
)
を
定
(
き
)
めた
所
(
ところ
)
を
奥様
(
おくさま
)
に
止
(
とど
)
められ、
047
惜
(
をし
)
からぬ
命
(
いのち
)
を
少時
(
しばし
)
延
(
の
)
ばしましたが、
048
何卒
(
どうぞ
)
貴方
(
あなた
)
が
命数
(
めいすう
)
尽
(
つ
)
きてお
国替
(
くにがへ
)
遊
(
あそ
)
ばすやうの
事
(
こと
)
あれば
屹度
(
きつと
)
私
(
わたくし
)
もお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
します。
049
何卒
(
どうぞ
)
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
主従
(
しゆじゆう
)
の
縁
(
えん
)
を
断
(
き
)
らぬやうにして
下
(
くだ
)
さいませ』
050
小国別
(
をくにわけ
)
は
微
(
かすか
)
に
首肯
(
うなづ
)
いた。
051
三千彦
(
みちひこ
)
はワツクスの
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
へと
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
052
二人
(
ふたり
)
の
看護人
(
かんごにん
)
とオールスチンに
小国別
(
をくにわけ
)
の
介抱
(
かいはう
)
を
頼
(
たの
)
み
置
(
お
)
き、
053
小国姫
(
をくにひめ
)
は
又
(
また
)
もや
三千彦
(
みちひこ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
来
(
きた
)
り
心配
(
しんぱい
)
さうな
顔
(
かほ
)
をして、
054
姫
(
ひめ
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
、
055
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
許
(
ばか
)
りかけまして
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬが、
056
主人
(
しゆじん
)
は
到底
(
たうてい
)
あきますまいかな』
057
三千
(
みち
)
『お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
058
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
仮令
(
たとへ
)
肉体
(
にくたい
)
はなくなつても
精霊
(
せいれい
)
は
活々
(
いきいき
)
として
若
(
わか
)
やぎ、
059
霊界
(
れいかい
)
に
於
(
おい
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
大活動
(
だいくわつどう
)
を
成
(
な
)
されますから、
060
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
061
人
(
ひと
)
は
諦
(
あきら
)
めが
肝腎
(
かんじん
)
で
厶
(
ござ
)
いますからな』
062
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
063
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
064
最早
(
もはや
)
覚悟
(
かくご
)
は
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
065
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
066
も
一
(
ひと
)
つ
心配
(
しんぱい
)
な
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いますが
一寸
(
ちよつと
)
伺
(
うかが
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬか』
067
三千
(
みち
)
『
何事
(
なにごと
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが
一寸
(
ちよつと
)
云
(
い
)
つて
御覧
(
ごらん
)
なさいませ』
068
姫
(
ひめ
)
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
私
(
わたし
)
の
娘
(
むすめ
)
デビス
姫
(
ひめ
)
と
申
(
まを
)
すのが、
069
今日
(
けふ
)
で
三七
(
さんしち
)
二十一
(
にじふいち
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
、
070
昼
(
ひる
)
さへ
人
(
ひと
)
のよう
行
(
ゆ
)
かぬアンブラツクの
滝
(
たき
)
へ、
071
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さるやう、
072
父
(
ちち
)
の
病気
(
びやうき
)
が
癒
(
なほ
)
るやう、
073
も
一
(
ひと
)
つは
妹
(
いもうと
)
の
所在
(
ありか
)
が
判
(
わか
)
るやうと、
074
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
毎晩
(
まいばん
)
二
(
に
)
里
(
り
)
の
道
(
みち
)
を
往復
(
わうふく
)
致
(
いた
)
し、
075
何時
(
いつ
)
も
夜明
(
よあ
)
け
方
(
がた
)
に
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
りますが、
076
今日
(
けふ
)
は
如何
(
どう
)
したものかまだ
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
りませぬ。
077
大方
(
おほかた
)
滝壺
(
たきつぼ
)
に
落
(
お
)
ちて
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てたのでは
厶
(
ござ
)
いますまいか。
078
但
(
ただ
)
しは
猛獣
(
まうじう
)
に
殺
(
ころ
)
されたのではありますまいか。
079
俄
(
にはか
)
に
胸騒
(
むなさわ
)
ぎがして
気
(
き
)
が
気
(
き
)
ぢやありませぬ』
080
三千
(
みち
)
『
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
081
半時
(
はんとき
)
経
(
た
)
たない
間
(
うち
)
に
御
(
ご
)
姉妹
(
きやうだい
)
打揃
(
うちそろ
)
ふて、
082
一人
(
ひとり
)
の
修験者
(
しうげんじや
)
に
送
(
おく
)
られて
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
られます。
083
間違
(
まちが
)
ひは
厶
(
ござ
)
いませぬからな』
084
姫
(
ひめ
)
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますかな。
085
娘
(
むすめ
)
二人
(
ふたり
)
が
帰
(
かへ
)
つて
呉
(
く
)
れたならば、
086
最早
(
もはや
)
心配事
(
しんぱいごと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
087
ああ
南無
(
なむ
)
大慈
(
だいじ
)
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
、
088
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
娘
(
むすめ
)
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
を
夫
(
をつと
)
の
命
(
いのち
)
のある
間
(
うち
)
に
見
(
み
)
せて
下
(
くだ
)
さいますやうお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
089
と
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
して
祈
(
いの
)
り
入
(
い
)
る。
090
三千
(
みち
)
『これ、
091
ワツクスさま、
092
お
前
(
まへ
)
は
大
(
だい
)
それた
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
成
(
な
)
さつたが、
093
これと
云
(
い
)
ふのもお
前
(
まへ
)
の
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
がやつたのだから、
094
茲
(
ここ
)
に
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
して
頂
(
いただ
)
き、
095
内分
(
ないぶん
)
で
済
(
す
)
ます
事
(
こと
)
になつてゐますから、
096
之
(
これ
)
から
心得
(
こころえ
)
て
貰
(
もら
)
はねばなりませぬぞ』
097
ワツクス『ハイ、
098
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります。
099
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
のない
不調法
(
ぶてうはふ
)
を
致
(
いた
)
しました。
100
今度
(
こんど
)
私
(
わたし
)
の
罪
(
つみ
)
をお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいますならば、
101
無
(
な
)
い
命
(
いのち
)
と
心得
(
こころえ
)
て
如何
(
いか
)
様
(
やう
)
なる
働
(
はたら
)
きも
致
(
いた
)
し、
102
屹度
(
きつと
)
御
(
ご
)
恩返
(
おんがへ
)
しを
致
(
いた
)
します。
103
モシ
奥様
(
おくさま
)
、
104
屹度
(
きつと
)
お
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいますか』
105
姫
(
ひめ
)
『
赦
(
ゆる
)
し
難
(
がた
)
い
罪人
(
ざいにん
)
なれど
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
のお
計
(
はか
)
らひにより
内証
(
ないしやう
)
で
済
(
す
)
ます
事
(
こと
)
にして
上
(
あ
)
げよう。
106
之
(
これ
)
からキツと
心得
(
こころえ
)
たがよいぞや。
107
年寄
(
としよ
)
つた
一人
(
ひとり
)
の
親
(
おや
)
に
心配
(
しんぱい
)
をかけ、
108
本当
(
ほんたう
)
にお
前
(
まへ
)
は
不孝
(
ふかう
)
な
者
(
もの
)
だ。
109
親
(
おや
)
ばかりか、
110
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
や
娘
(
むすめ
)
に
迄
(
まで
)
も
心配
(
しんぱい
)
苦労
(
くらう
)
をかけて
困
(
こま
)
らしたのだから、
111
今後
(
こんご
)
は
屹度
(
きつと
)
慎
(
つつし
)
んで
貰
(
もら
)
はねばならぬぞや』
112
ワツクス『ハイ、
113
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
114
これから
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
を
親様
(
おやさま
)
として
真心
(
まごころ
)
を
尽
(
つく
)
しお
仕
(
つか
)
へ
申
(
まを
)
します』
115
姫
(
ひめ
)
『これ、
116
ワツクス、
117
お
前
(
まへ
)
は
親
(
おや
)
があるぢやないか、
118
妾
(
わし
)
を
主人
(
しゆじん
)
として
仕
(
つか
)
へるべきものだ。
119
親
(
おや
)
として
仕
(
つか
)
へる
等
(
など
)
とはチツと
可笑
(
をか
)
しいぢやないか』
120
ワツクス『
義
(
ぎ
)
に
於
(
おい
)
ては
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
121
然
(
しか
)
し
情
(
じやう
)
に
於
(
おい
)
ては
親様
(
おやさま
)
と
存
(
ぞん
)
じてツヒ
不都合
(
ふつがふ
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しました。
122
然
(
しか
)
しお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さつた
以上
(
いじやう
)
は
私
(
わたくし
)
を
子
(
こ
)
として
下
(
くだ
)
さいませうな。
123
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はエキス、
124
ヘルマンの
両人
(
りやうにん
)
が
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
したので
厶
(
ござ
)
いますが、
125
私
(
わたくし
)
が
種々
(
いろいろ
)
と
苦心
(
くしん
)
をして
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
白状
(
はくじやう
)
させ、
126
お
家
(
いへ
)
の
為
(
ため
)
に
働
(
はたら
)
いたので
厶
(
ござ
)
います。
127
二人
(
ふたり
)
の
者
(
もの
)
を
助
(
たす
)
けたさに
私
(
わたくし
)
が
盗
(
と
)
つたと
父
(
ちち
)
に
申
(
まを
)
しましたが、
128
その
実
(
じつ
)
はヘルマン、
129
エキスの
両人
(
りやうにん
)
が
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
したので
厶
(
ござ
)
います。
130
それをば
父
(
ちち
)
に
匿
(
かく
)
して
金
(
かね
)
をやり、
131
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
まして
白状
(
はくじやう
)
させ、
132
ヤツとの
事
(
こと
)
で
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れたので
厶
(
ござ
)
います。
133
貴女
(
あなた
)
はお
忘
(
わす
)
れでも
厶
(
ござ
)
いますまいが
家中
(
かちう
)
一般
(
いつぱん
)
に
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
し、
134
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たものはデビス
姫
(
ひめ
)
の
養子
(
やうし
)
にすると
仰有
(
おつしや
)
つたぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか、
135
さすれば
仰
(
おほ
)
せの
通
(
とほ
)
り
私
(
わたくし
)
は
御
(
ご
)
養子
(
やうし
)
にして
頂
(
いただ
)
くべき
資格
(
しかく
)
があらうと
存
(
ぞん
)
じます』
136
姫
(
ひめ
)
『そりや、
137
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
138
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
探
(
さが
)
し、
139
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たものは
養子
(
やうし
)
にすると
云
(
い
)
ふて
置
(
お
)
いた。
140
然
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
は
親
(
おや
)
一人
(
ひとり
)
、
141
子
(
こ
)
一人
(
ひとり
)
、
142
家令
(
かれい
)
の
家
(
いへ
)
を
継
(
つ
)
がねばならぬ
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
だから、
143
それは
出来
(
でき
)
ますまい。
144
先祖
(
せんぞ
)
の
家
(
いへ
)
を
忽
(
おろそ
)
かにする
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
くまいからな』
145
ワツクス『いえ、
146
そんな
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
147
私
(
わたくし
)
が
養子
(
やうし
)
になり、
148
デビスさまとの
間
(
あひだ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
や
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
子
(
こ
)
が
出来
(
でき
)
ませうから、
149
其
(
その
)
中
(
うち
)
の
一人
(
ひとり
)
を
頂
(
いただ
)
いて、
150
私
(
わたくし
)
の
家
(
いへ
)
を
継
(
つ
)
がせば
宜
(
よろ
)
しいぢやありませぬか』
151
姫
(
ひめ
)
『もし
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
、
152
あんな
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しますが
如何
(
いかが
)
したら
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
いませうかな』
153
三千彦
(
みちひこ
)
はワツクスの
顔
(
かほ
)
をギユツと
睨
(
にら
)
みつけ
口
(
くち
)
をヘの
字
(
じ
)
に
結
(
むす
)
んでゐる。
154
ワツクスは
怖
(
こは
)
相
(
さう
)
に
少
(
すこ
)
しばかり
声
(
こゑ
)
を
慄
(
ふる
)
はし
乍
(
なが
)
ら、
155
ワツクス『モシ、
156
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
157
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたくし
)
を
約束通
(
やくそくどほ
)
り、
158
玉
(
たま
)
の
発見人
(
はつけんにん
)
ですから
養子
(
やうし
)
にして
下
(
くだ
)
さるやう
御
(
お
)
とり
成
(
な
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
159
三千
(
みち
)
『これ、
160
ワツクス、
161
お
前
(
まへ
)
は
吾々
(
われわれ
)
を
盲
(
めくら
)
にするのか、
162
否
(
いや
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
を
騙
(
たばか
)
る
積
(
つも
)
りか。
163
今
(
いま
)
云
(
い
)
つた
言葉
(
ことば
)
は
皆
(
みな
)
詐
(
いつは
)
りだらうがな。
164
お
前
(
まへ
)
はお
家
(
いへ
)
の
重宝
(
ぢうほう
)
を
匿
(
かく
)
し、
165
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
を
困
(
こま
)
らし、
166
往生
(
わうじやう
)
づくめでデビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
夫
(
をつと
)
にならうとの
計略
(
けいりやく
)
をやつたのであらう。
167
そんな
事
(
こと
)
に
誤魔化
(
ごまくわ
)
される
三千彦
(
みちひこ
)
ぢやありませぬぞ』
168
ワツクス『メメメ
滅相
(
めつさう
)
な。
169
さう
誤解
(
ごかい
)
をされては
困
(
こま
)
ります。
170
あれ
丈
(
だけ
)
苦心
(
くしん
)
してお
家
(
いへ
)
の
為
(
た
)
めになる
宝
(
たから
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れた
此
(
この
)
忠臣
(
ちうしん
)
を、
171
悪人扱
(
あくにんあつか
)
ひにされては
根
(
ね
)
つから
勘定
(
かんぢやう
)
が
合
(
あ
)
ひませぬ。
172
何卒
(
どうぞ
)
も
一度
(
いちど
)
お
考
(
かんが
)
へ
直
(
なほ
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
173
三千
(
みち
)
『お
黙
(
だま
)
りなさい。
174
左様
(
さやう
)
の
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
ると
最早
(
もはや
)
容赦
(
ようしや
)
はしませぬぞ。
175
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
め
唐丸籠
(
たうまるかご
)
に
乗
(
の
)
せてハルナの
都
(
みやこ
)
へ
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
けませうか。
176
又
(
また
)
何程
(
なにほど
)
お
前
(
まへ
)
がデビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
恋慕
(
れんぼ
)
して
居
(
を
)
つても、
177
肝腎
(
かんじん
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がお
嫌
(
きら
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばしたら
如何
(
どう
)
する
積
(
つも
)
りだ。
178
愛
(
あい
)
なき
結婚
(
けつこん
)
でもお
前
(
まへ
)
は
快
(
こころよ
)
う
思
(
おも
)
ふのか。
179
家令
(
かれい
)
の
悴
(
せがれ
)
にも
似
(
に
)
ず、
180
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るぢやないか』
181
ワツクス『
吾々
(
われわれ
)
を
威喝
(
ゐかつ
)
して
二人
(
ふたり
)
の
恋仲
(
こひなか
)
を
遮
(
さへぎ
)
り
後
(
あと
)
にヌツケリコとお
前
(
まへ
)
さまが
養子
(
やうし
)
に
這入
(
はい
)
りこむ
考
(
かんが
)
へだらう。
182
そんな
事
(
こた
)
あチヤーンと
此
(
こ
)
のワツクスは
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
まで
読
(
よ
)
んで
居
(
を
)
りますぞ』
183
三千
(
みち
)
『これはしたり、
184
迷惑
(
めいわく
)
千万
(
せんばん
)
、
185
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
おほ
)
せられるか。
186
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
187
大切
(
たいせつ
)
なるメツセージを
受
(
う
)
けて
或
(
ある
)
所
(
ところ
)
まで
進
(
すす
)
まねばならぬ
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
188
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れるなどとは
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
事
(
こと
)
。
189
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
を
以
(
もつ
)
て
吾々
(
われわれ
)
の
心
(
こころ
)
を
測量
(
そくりやう
)
するとは
些
(
ちつ
)
と
失礼
(
しつれい
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか』
190
ワツクス『
宣伝使
(
せんでんし
)
と
云
(
い
)
ふものは、
191
そんな
事
(
こと
)
をよく
云
(
い
)
ふものです。
192
口
(
くち
)
でこそ
立派
(
りつぱ
)
に
女嫌
(
をんなぎら
)
ひの
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ますが
蔭
(
かげ
)
に
廻
(
まは
)
ると、
193
もとが
人間
(
にんげん
)
ですから
駄目
(
だめ
)
ですわい。
194
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
欲
(
ほ
)
しけりや
欲
(
ほ
)
しいとハツキリ
云
(
い
)
ひなさい』
195
姫
(
ひめ
)
『これ、
196
ワツクス、
197
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すのだ。
198
玉盗人
(
たまぬすびと
)
はお
前
(
まへ
)
に
違
(
ちが
)
ひない。
199
現在
(
げんざい
)
お
前
(
まへ
)
の
親
(
おや
)
が
証明
(
しようめい
)
して
居
(
ゐ
)
るのぢやないか』
200
ワツクスは
自棄糞
(
やけくそ
)
になり、
201
尻
(
しり
)
をクレツと
捲
(
まく
)
つて
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
後
(
あと
)
に、
202
一目散
(
いちもくさん
)
に
表門
(
おもてもん
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
203
小国姫
(
をくにひめ
)
は
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つてエルを
招
(
まね
)
きワツクスの
後
(
あと
)
を
追跡
(
つゐせき
)
せよと
命
(
めい
)
じた。
204
狼狽者
(
あわてもの
)
のエルは
皆
(
みな
)
まで
聞
(
き
)
かず、
205
『ハイ、
206
承知
(
しようち
)
しました』と
又
(
また
)
もや
此処
(
ここ
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し
地響
(
ぢひび
)
きさせ
乍
(
なが
)
らドンドンドンと
門外
(
もんぐわい
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
207
道
(
みち
)
の
鍵
(
かぎ
)
の
手
(
て
)
になつた
所
(
とこ
)
を、
208
頭
(
あたま
)
を
先
(
さき
)
につき
出
(
だ
)
し
体
(
からだ
)
を
横
(
よこ
)
にして
走
(
はし
)
る
途端
(
とたん
)
に、
209
あまり
広
(
ひろ
)
くもない
道端
(
みちばた
)
の
柿
(
かき
)
の
木
(
き
)
に
大牛
(
おほうし
)
が
繋
(
つな
)
いであつた。
210
其
(
その
)
牛
(
うし
)
の
尻
(
しり
)
にドンと、
211
頭突
(
づつき
)
をかました。
212
牛
(
うし
)
は
驚
(
おどろ
)
いてポンと
蹴
(
け
)
つた
拍子
(
ひやうし
)
にエルはウンと
許
(
ばか
)
り
倒
(
たふ
)
れた。
213
牛
(
うし
)
は
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
尻
(
しり
)
を
振
(
ふ
)
つて
再
(
ふたた
)
びエルの
睾丸
(
きんたま
)
の
端
(
はし
)
をグツと
踏
(
ふ
)
み、
214
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れてグーツと
捻
(
ねぢ
)
た。
215
エルはキヤツキヤツと
悲鳴
(
ひめい
)
を
挙
(
あ
)
げてゐる。
216
通
(
とほ
)
りかかつた
旅人
(
たびびと
)
や
近所
(
きんじよ
)
の
家
(
いへ
)
からドヤドヤと
集
(
あつ
)
まつて
来
(
き
)
てエルを
助
(
たす
)
け、
217
傍
(
かたはら
)
の
或
(
ある
)
家
(
いへ
)
に
担
(
かつ
)
ぎ
込
(
こ
)
み、
218
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けばエルは
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
め
乍
(
なが
)
ら、
219
エル『
皆
(
みな
)
さま、
220
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
のお
宝
(
たから
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
りました。
221
そして
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けばワツクスが
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
した
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
に、
222
デビス
姫
(
ひめ
)
さまの
婿
(
むこ
)
になると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
ですよ。
223
それから
小国別
(
をくにわけ
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
危篤
(
きとく
)
で
何時
(
なんどき
)
息
(
いき
)
を
引
(
ひ
)
きとられるか
分
(
わか
)
りませぬ。
224
大方
(
おほかた
)
今頃
(
いまごろ
)
は
絶命
(
ことぎ
)
れたかも
知
(
し
)
れませぬ、
225
大変
(
たいへん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
226
何
(
どうぞ
)
皆
(
みな
)
さま、
227
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
う
各自
(
てんで
)
に
町内
(
ちやうない
)
を
触
(
ふ
)
れまはり
城内
(
じやうない
)
に
悔
(
くや
)
みに
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
228
とまだ
死
(
し
)
んでも
居
(
ゐ
)
ないのに、
229
手
(
て
)
まはしよく
死
(
し
)
んだものと
仮定
(
かてい
)
して
吹聴
(
ふゐちやう
)
した。
230
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いた
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は
次
(
つぎ
)
から
次
(
つぎ
)
へと、
231
尻
(
しり
)
はし
折
(
を
)
り
駄賃
(
だちん
)
とらずの
郵便
(
ゆうびん
)
配達
(
はいたつ
)
となつて、
232
(老若男女)
『
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
つた。
233
そして
小国別
(
をくにわけ
)
が
国替
(
くにが
)
へをなさつて、
234
ワツクスがデビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
婿
(
むこ
)
にきまつた』
235
と
一軒
(
いつけん
)
も
残
(
のこ
)
らず、
236
御
(
ご
)
丁寧
(
ていねい
)
に
布令
(
ふれ
)
まはつた。
237
テルモン
山
(
ざん
)
の
麓
(
ふもと
)
の
町
(
まち
)
は
俄
(
にはか
)
にガヤガヤと
騒
(
さわ
)
ぎ
出
(
だ
)
し、
238
衣裳
(
いしやう
)
を
着替
(
きか
)
へて
館
(
やかた
)
へ
悔
(
くや
)
みに
行
(
ゆ
)
くもの
引
(
ひ
)
きもきらず、
239
俄
(
にはか
)
に
大騒動
(
おほさうどう
)
が
起
(
おこ
)
つた
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
た。
240
エルは
睾丸
(
きんたま
)
の
端
(
はし
)
を
牛
(
うし
)
の
爪
(
つめ
)
に
むしり
とられ、
241
益々
(
ますます
)
体中
(
からだぢう
)
に
熱
(
ねつ
)
が
高
(
たか
)
まつて『
死
(
し
)
んだ
死
(
し
)
んだ』と
囈言
(
うさごと
)
ばかり
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
242
俄
(
にはか
)
に
小国別
(
をくにわけ
)
の
訃
(
ふ
)
を
聞
(
き
)
いて
泣
(
な
)
く
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
もあれば、
243
馬鹿
(
ばか
)
息子
(
むすこ
)
のワツクスがデビス
姫
(
ひめ
)
の
婿
(
むこ
)
になるげなと
驚
(
おどろ
)
いて
触
(
ふ
)
れる
奴
(
やつ
)
もあり、
244
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
が
帰
(
かへ
)
つたと
喜
(
よろこ
)
ぶものもあり、
245
テルモン
山
(
ざん
)
の
麓
(
ふもと
)
の
宮町
(
みやまち
)
は
此
(
この
)
噂
(
うはさ
)
で
持
(
も
)
ちきりとなつた。
246
気
(
き
)
の
早
(
はや
)
い
男
(
をとこ
)
は
早
(
はや
)
くも
幟
(
のぼり
)
を
立
(
た
)
て「
神司
(
かむつかさ
)
小国別
(
をくにわけ
)
の
御
(
ご
)
他界
(
たかい
)
を
弔
(
とむら
)
ふ」とか、
247
「
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
再出現
(
さいしゆつげん
)
」とか、
248
「デビス
姫
(
ひめ
)
ワツクスとの
御
(
ご
)
結婚
(
けつこん
)
を
祝
(
しゆく
)
す」とか
云
(
い
)
ふ
長
(
なが
)
い
幟
(
のぼり
)
を
立
(
た
)
てて、
249
ワツシヨ ワツシヨと
辻々
(
つじつじ
)
を
廻
(
まは
)
り
初
(
はじ
)
めた。
250
かかる
所
(
ところ
)
へ
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
涼
(
すず
)
しく
町外
(
まちはづ
)
れの
方
(
はう
)
から
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
251
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
は
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
がデビス
姫
(
ひめ
)
、
252
ケリナ
姫
(
ひめ
)
を
助
(
たす
)
けて
帰
(
かへ
)
り
来
(
く
)
るにぞありける。
253
(
大正一二・三・一七
旧二・一
於竜宮館
北村隆光
録)
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