霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第九章 我執(がしふ)〔一四三九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第2篇 宿縁妄執 よみ(新仮名遣い):しゅくえんもうしゅう
章:第9章 我執 よみ(新仮名遣い):がしゅう 通し章番号:1439
口述日:1923(大正12)年03月16日(旧01月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
求道居士が吹いたほら貝の音に、求道居士とベル、ヘル、ケリナの三人は煙のごとく姿を消した。高姫はシャルと六造に向かって、彼らは義理天上に逆らったから消されてしまったのだ、と息巻いている。
六造は人が少なくなったのを見て、高姫相手に強盗を働こうと凄んだ。高姫は出刃包丁をシャルに渡して、六造と張り合うように命令した。
シャルはふるえていたが、宣伝歌の声が遠くから聞こえてくると、六造は煙となって窓から逃げ出してしまった。
高姫とシャルが話していると、微妙の音楽が聞こえ、麗しい天人が現れた。天人は中間天国のエンゼル・文治別命と名乗った。文治別命は、自分はかつて小北山で受付をしていた文助であることを明かした。
高姫は文助がエンゼルになれるわけがないと、文治別命を魔神だと疑った。文治別命は高姫に悔い改めを勧めに来たのだが、高姫はまるで聞き入れない。文治別命はシャルにも忠告したが、二人は耳を貸さなかった。
文治別命はなんとかかつての師匠高姫を改心させたいと思案に暮れている。高姫の伏せ家の周りには天人が隊を成して取り巻き、あたりには芳香が薫じ嚠喨とした音楽がしきりに聞こえている。
高姫は突然もだえ苦しみだした。エンゼルたちは高姫を救おうと天津祝詞を奏上し、数歌を歌った。高姫はますます忌み嫌い、裏口を開けて裏山を指して四つ這いに逃げて行った。シャルもこの態を見て高姫の後を追った。
高姫は禿山を二つ三つ越えて広い沼のほとりに着いた。後からシャルも声を呼ばわりやってきた。高姫とシャルには、天人たちが恐い顔をして金棒を持った鬼に見えていた。
高姫は天人たちを振り切ったと思って、シャルの前で強がって見せた。そこへ文治別命が数百人の天人を従えて降ってきた。高姫は負け惜しみを言いながら、青い顔をして次の山を駆け上って逃げ出した。シャルもその後を追っていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-06-19 19:48:43 OBC :rm5609
愛善世界社版:119頁 八幡書店版:第10輯 190頁 修補版: 校定版:126頁 普及版:57頁 初版: ページ備考:
001 求道(きうだう)居士(こじ)(いき)をこめて()()てた法螺貝(ほらがひ)()にベル、002ヘル、003ケリナの(さん)(にん)(この)()より(けぶり)(ごと)姿(すがた)()した。004求道(きうだう)居士(こじ)(かげ)もいつしか()えて(かす)かに法螺(ほら)()(とほ)(きこ)えてゐる。005高姫(たかひめ)はシャル、006六造(ろくざう)二人(ふたり)(むか)ひ、
007高姫(たかひめ)『コレ、008シャル、009六造(ろくざう)両人(りやうにん)010(なん)高姫(たかひめ)神力(しんりき)(えら)いものだらうがなア。011(あま)()(つよ)いに()つて、012義理(ぎり)天上(てんじやう)(さま)勘忍袋(かんにんぶくろ)をお()らし(あそ)ばし、013ホンの一寸(ちよつと)(にら)(あそ)ばすと(とも)に、014あの法螺(ほら)(ふき)もベル、015ヘルの両人(りやうにん)もハイカラ(をんな)も、016(みな)一度(いちど)煙散(えんさん)霧消(むせう)跡型(あとかた)もなくなりにけり……といふ悲惨(ひさん)有様(ありさま)だ。017(これ)()改心(かいしん)をしなされ。018(ろく)さんは(また)(おし)(なに)かのやうに一言(ひとこと)もいはずに、019(いま)(まで)どこに()つたのだえ』
020六造(ろくざう)『ヘー、021(あま)法螺(ほら)(かひ)(おそ)ろしいので、022一寸(ちよつと)(かはや)(なか)隠居(いんきよ)して()りました。023随分(ずいぶん)(つよ)(やつ)がやつて()(もの)ですな。024それにしてもベルの(やつ)025(わたし)をライオン(がは)()()みやがつた天罰(てんばつ)(けぶり)(ごと)()えて(しま)つたのは小気味(こぎみ)のよいこつて(ござ)います。026(これ)(まつた)高姫(たかひめ)(さま)()神力(しんりき)(いた)(ところ)と、027有難(ありがた)感謝(かんしや)(いた)して()ります』
028高姫(たかひめ)『それだから(かみ)(もた)れてさへ()りたら(かみ)(かたき)()つてやらうと仰有(おつしや)るのだ。029(いま)(まで)のヤンチヤをスツカリ改良(かいりやう)して、030何事(なにごと)(この)生宮(いきみや)(まを)(とほ)りにするが()いぞや』
031六造(ろくざう)『ハイ、032(なん)でも(いた)しますが、033(しか)(なん)だか気分(きぶん)(わる)くなつて()ました。034一杯(いつぱい)おごつて(もら)いませぬと、035元気(げんき)()きませぬワ』
036高姫(たかひめ)『エーエ()(あが)りのした、037(まへ)はそれだから()かぬのだ。038(まへ)(かたき)をあの(とほ)消滅(せうめつ)さしてやり、039結構(けつこう)(をしへ)()かして()るのに、040一杯(いつぱい)()ませなんて、041(なん)()(あつ)かましい(こと)()ふのだいなア』
042六造(ろくざう)『イエ(わたし)(さけ)()ましてくれと()つたのぢや(ござ)いませぬ。043(まへ)さまの()つて()出刃(でば)(ふところ)()まして()しいと()つたのです。044どうか一口(ひとくち)(いただ)(わけ)には()きませぬかな』
045高姫(たかひめ)『ならんならん、046出刃(でば)のやうな兇器(きようき)()つて、047()うする(つもり)だい、048(また)出刃亀(でばがめ)にでもなる(つもり)だらう』
049六造(ろくざう)『イエ、050出刃亀(でばがめ)ぢやありませぬ、051出刃六(でばろく)になる(かんが)へです。052(これ)(もつ)風呂屋(ふろや)障子(しやうじ)四角(しかく)()り、053三助(さんすけ)やおさんの活動(くわつどう)(のぞ)(かんが)へです。054三助(さんすけ)とおさんと()れば(ろく)でせう。055そこへ(ろく)さんが這入(はい)ると六六三(ろくろくさん)十五夜(じふごや)満月(まんげつ)になりませうがな。056(まへ)さまは最前(さいぜん)小声(こごゑ)(うた)つてゐたでせう……十五夜(じふごや)片割月(かたわれづき)があるものか、057(くも)(かく)れてここに半分(はんぶん)……と()きましたよ。058十五夜(じふごや)片割月(かたわれづき)(あま)目出度(めでた)くありませぬから、059(わたし)(これ)から出刃六(でばろく)となり、060三五(さんご)(つき)となりて第一(だいいち)霊国(れいごく)(のぼ)り、061(つき)大神(おほかみ)(さま)に、062(まへ)さまの(いま)有様(ありさま)報告(はうこく)せうと(おも)つてゐるのだ。063どうです、064名案(めいあん)でせう』
065高姫(たかひめ)明暗(めいあん)顕幽(けんいう)もあるものか、066(まへ)(みたま)(やみ)(あん)だ。067それだから暗本丹(あんぽんたん)(ひと)()はれるのだよ。068(ろく)でなしだから、069()(まで)六造(ろくざう)だ。070どうで(つき)(くに)()けるやうな代物(しろもの)ぢやない。071六道(ろくだう)辻代物(つじしろもの)だ。072イヒヒヒヒ』
073六造(ろくざう)『コリヤ(たか)074(おれ)何方(どなた)心得(こころえ)てるンでえ、075エエン。076(いま)(まで)法螺(ほら)(ぷき)先生(せんせい)()よつたので、077(おれ)(いささ)面喰(めんくら)つてすつ()んでゐたのだが、078モウ()うなりや(しめ)たものだ。079(たれ)(はばか)(もの)もなし、080(ばば)一匹(いつぴき)二匹(にひき)(おれ)自由(じいう)自在(じざい)だ。081サア有金(ありがね)をスツパリ(わた)すか、082さなくば、083衣類(いるゐ)一切(いつさい)をここへつん()して、084あやまるか、085どうだ。086(きさま)(やり)(おれ)が、087(じつ)(ところ)はボキボキに()つといたのだ。088ゴテゴテ(まを)すと(いのち)がないぞ』
089高姫(たかひめ)『コレ、090シャル、091(まへ)(わたし)家来(けらい)ぢやないか、092(なに)をグヅグヅしてゐるのだい。093サ、094(この)出刃(でば)()すから、095(まけ)(おと)らず、096此奴(こやつ)対抗(たいかう)して()つつめてやりなさい。097(ぜん)(たす)(あく)(こら)すは(かみ)(みち)だ。098こんな(もの)()(なか)にウヨウヨしてゐると、099世界(せかい)にどれ(だけ)(がい)(なが)すか(わか)らない。100サア、101(これ)(しつか)(にぎ)つて強圧(きやうあつ)(てき)()るのだよ』
102シャル『高姫(たかひめ)さま、103チツト()れは自愛(じあい)ぢやありませぬか、104(わたし)(なん)だか地獄(ぢごく)()(かた)のやうに(おも)へてなりませぬがな、105威喝(ゐかつ)憤怒(ふんぬ)復讐(ふくしう)などは、106(かみ)(くに)には(かげ)さへもないぢやありませぬか』
107高姫(たかひめ)『エーエ、108()()かぬ(をとこ)だな、109正当(せいたう)防衛(ばうゑい)といふ(こと)()つてゐるかい。110何程(なにほど)(まこと)(みち)だと()つても、111ジツとして()つたら、112(この)高姫(たかひめ)生宮(いきみや)がどんな()()はされまいものでもない。113(この)生宮(いきみや)大神(おほかみ)(さま)大切(たいせつ)なお道具(だうぐ)だから、114それを守護(しゆご)するのはお(まへ)役目(やくめ)だ。115サアお(まへ)手柄(てがら)(あら)はす(とき)だ。116かういふものの(この)高姫(たかひめ)は、117(ろく)のやうな(もの)千匹(せんびき)万匹(まんびき)(たば)になつて()たとて()とも(おも)うて()ないが、118(まへ)弟子入(でしい)りした初陣(うひぢん)功名(こうみやう)に、119此奴(こいつ)をとつつめさしてやるのだから、120生宮(いきみや)(さま)のお(うま)(さき)功名(こうみやう)だ。121サア、122結構(けつこう)()神徳(しんとく)(いただ)くのは(いま)だぞえ。123エーエ、124(ふる)つてゐるのかいな、125(なん)()のチヨろい。126そんな(こと)で、127よう(いま)(まで)盗人(ぬすびと)出来(でき)たものだなア』
128六造(ろくざう)『ワツハハハハ、129オイ、130シャル、131(その)ザマは(なん)だ。132随分(ずいぶん)(からだ)微細(びさい)にワク……ワクと(うご)いてゐるぢやないか、133エヘヘヘヘ』
134シャル『オイ(ろく)135(おれ)(けつ)してお(まへ)抵抗(ていかう)する意志(いし)はないのだから、136(おれ)には(けつ)して危害(きがい)(くは)へないやうにしてくれ、137そして高姫(たかひめ)(なに)から(なに)まで()えすく生宮(いきみや)だから、138天下(てんか)(ため)(これ)傷付(きずつ)けるやうな(こと)があつては大変(たいへん)損害(そんがい)だよつて、139何卒(どうぞ)140そんな無理(むり)(こと)()はずに、141トツトと(かへ)つてくれ、142(たの)みだからなア』
143六造(ろくざう)『オイ(たか)144ツベコベと(ひと)受売(うけうり)(ばか)りしやがつて、145日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)標榜(へうばう)してゐるが、146一遍(いつぺん)(その)出刃(でば)此方(こつち)(わた)せ、147(じつ)(ところ)はお(まへ)(はら)()()つて、148日出(ひのでの)(かみ)出現(しゆつげん)(ねが)(つもり)だ。149日出(ひのでの)(かみ)もこんな肉体(にくたい)這入(はい)つて(ござ)つてはお()(どく)だからなア』
150 高姫(たかひめ)(やや)(ふる)(なが)ら、151ワザと空元気(からげんき)()し、
152高姫(この)生宮(いきみや)(なん)とお(まへ)心得(こころえ)てるのか、153ヘグレのヘグレのヘグレ武者(むしや)154(ある)(とき)(てん)(わだか)まる(りう)ともなり、155(ある)(とき)蠑螈(いもり)となつて()(ひそ)め、156千変(せんぺん)万化(ばんくわ)活動(くわつどう)をいたして、157(この)()守護(しゆご)(いた)弥勒(みろく)(さま)太柱(ふとばしら)だ。158左様(さやう)(こと)(まを)すと神罰(しんばつ)(あた)つて、159(たちま)地獄行(ぢごくゆき)(いた)さねばならぬぞや』
160六造(ろくざう)(なん)だか(おれ)はお(まへ)(つら)()るとムカついて仕方(しかた)がないのだ。161地獄(ぢごく)(おと)されうが、162そんなこたア、163(かま)ふものかい。164地獄(ぢごく)()ちるのが(いや)だと()つて、165(こころ)にもないおベツカを使(つか)ふのは、166自分(じぶん)(いさぎよ)しとせざる(ところ)だ。167そんな(こころ)になれば、168(まへ)最前(さいぜん)()はれたやうに自愛心(じあいしん)になるのだから、169()つといて()れ。170それよりも一旦(いつたん)()()したらば(あと)へは()かぬ六造(ろくざう)だ。171サア、172キレーサツパリと、173(なに)もかも(わた)して(もら)ひませう』
174 シャルは一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、
175シャル義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)(さま)176一時(いつとき)(はや)(この)六造(ろくざう)改心(かいしん)さして(くだ)さいませ。177生宮(いきみや)(さま)()難儀(なんぎ)(ござ)います。178惟神(かむながら)(たま)()はひませ』
179小声(こごゑ)(いの)つてゐる。180高姫(たかひめ)はツト()つて(この)()()()(さう)様子(やうす)()えた。181(ろく)背後(うしろ)からグツと首筋(くびすぢ)引掴(ひつつか)み、182(ちから)(まか)して引倒(ひきたふ)した。183シャルは(これ)()て、184(わが)()一大事(いちだいじ)と、185矢庭(やには)(ろく)胸倉(むなぐら)()り、186(ちから)(かぎ)りに()めつけた。187不思議(ふしぎ)(ろく)はスボツと()けて三間(さんげん)(ばか)(うしろ)につつ()ち、188大口(おほぐち)をあけて、
189六造(ろくざう)『アツハハハ』
190(わら)つてゐる。191そこへ何処(どこ)ともなしに宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(きこ)えて()た。192(この)(こゑ)()くより(ろく)は、193天井(てんじやう)(まど)から(けぶり)(ごと)逃出(にげだ)して(しま)つた。194高姫(たかひめ)はヤツと安心(あんしん)し、195(また)もや法螺(ほら)吹出(ふきだ)した。
196高姫(たかひめ)『オホホホホ、197コレ、198シャル、199日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)()神徳(しんとく)(えら)いものだらう。200あの(とほ)()神徳(しんとく)(おそ)れて()えて(しま)ふのだからな』
201シャル『それでも、202貴方(あなた)203大変(たいへん)(からだ)がフラックツァールしてゐたぢやありませぬか。204(この)シャルは高姫(たかひめ)さまが(おそ)れて精神(せいしん)動揺(どうえう)(あそ)ばしたのだと(おも)ひ、205随分(ずいぶん)心配(しんぱい)(いた)しましたよ』
206高姫(たかひめ)『ホホホホ、207(わたし)がフラックツァールしたのは一厘(いちりん)のお仕組(しぐみ)(あら)はしてみたのだよ。208彼奴(あいつ)(かげ)代物(しろもの)だから、209此方(こちら)()(とほ)りになるのだ。210(かげ)(かたち)(したが)ふものだ。211()()(ところ)()て、212(からだ)(うご)かして()なさい、213キツと影法師(かげぼふし)(うご)くだらう。214さうだから高姫(たかひめ)動揺(どうえう)して()せたのは、215影人足(かげにんそく)六公(ろくこう)をゆり()らす(かみ)()神法(しんぱふ)だ。216(なん)()神力(しんりき)といふものは結構(けつこう)なものだらうがなア』
217シャル『成程(なるほど)矢張(やつぱり)貴女(あなた)は、218チェンジェーブルの(じゆつ)()けてゐられますな。219それでヘグレのヘグレのヘグレ武者(むしや)といふ(こと)合点(がつてん)(まゐ)りました。220イヤもう大変(たいへん)()神徳(しんとく)(いただ)きました。221サンキューサンキュー』
222高姫(たかひめ)『コレ、223サンキューとは(なに)()ふのだい。224(ろく)()んだと(おも)へば、225(また)三九(さんきう)だのと、226三九(さんきう)(かず)十二(じふに)ぢやないか、227(なん)()意味(いみ)だい。228ハツキリと()かして(もら)ひませう。229チェンジェーブルだの、230三九(さんきう)だのと、231(とり)のなくやうな(こゑ)()して……(かみ)には(わか)りませぬぞや』
232シャル『(べつ)にお(まへ)さまの()(かんが)(あそ)ばすやうな(ふか)意味(いみ)があるのぢや(ござ)いませぬ、233サンキュー()つたのは有難(ありがた)うと感謝(かんしや)したので(ござ)います。234チェンジェーブルと()つたのは、235(なに)にもよく(へん)(あそ)ばす(たふと)(かみ)(さま)だと感心(かんしん)したので(ござ)います』
236高姫(たかひめ)『ウン成程(なるほど)237そんなら(これ)から(せい)()して、238(わたし)をチェンジェーブルの大神(おほかみ)(さま)といふのだよ。239サンキューも(ゆる)しますから、240(せい)()してサンキュー サンキューと()ひなさい』
241シャル『チェンジェーブル大神(おほかみ)(さま)242サンキュー サンキュー、243サンキュー サンキュー サンキュー、244(ひと)つサンキューまだサンキュー、245……サンキュー サンキュー サンキュー、246モシモシ(これ)でお()()りますかな』
247高姫(たかひめ)『エーエ、248()ぎたるは(およ)ばざるが(ごと)しといふぢやないか、249サンキューも()いかげんにしときなさい、250融通(ゆうづう)()かぬ(をとこ)だなア』
251シャル『コルブス コルブス、252サークイ サークイ』
253高姫(たかひめ)(また)(わか)らぬことを()ふぢやないか、254コルブスとは(なん)(こと)だい』
255シャル『ハイ、256コルブスといふ(こと)は、257死体(したい)といふ(こと)です、258サークイといふ(こと)(くさ)いといふ(こと)です』
259高姫(たかひめ)『エー、260増長(ぞうちよう)するも(ほど)がある。261何程(なにほど)したいと()つても、262ヘン、263(まへ)()相手(あひて)になる生宮(いきみや)ぢやありませぬぞや。264そして(くさ)いとは、265(なん)といふ無礼(ぶれい)(こと)をほざくのだい。266()れほど(くさ)ければ、267そこに()つて(くだ)さるな』
268シャル『(じつ)(ところ)死体(したい)のやうな(くさ)(にほ)ひがしたといふのです。269それは(たか)……オツトドツコイ(たか)(まど)から()けて()にやがつた(ろく)(こと)ですよ。270本当(ほんたう)(くさ)(やつ)でしたなア』
271高姫(たかひめ)『お(まへ)()(とほ)鼻持(はなもち)のならぬ代物(しろもの)だつた。272マアマア悪魔(あくま)(はら)へて結構(けつこう)だ。273サア(これ)からお(まへ)何事(なにごと)(わたし)()(とほ)りに(いた)すのだよ』
274シャル『一旦(いつたん)貴女(あなた)(からだ)(まか)した以上(いじやう)(なん)でも()きますが、275(しか)(なが)らかうして男女(なんによ)二人(ふたり)(ひと)()住居(すまゐ)をし(なが)ら、276両方(りやうはう)がセリバシー生活(せいくわつ)をやつてゐるのも無駄(むだ)ぢやありませぬか。277(なん)とかそこは妥協(だけふ)余地(よち)がありさうなものですなア』
278高姫(たかひめ)『ホホホホ、279チツトお(まへ)のスタイルと相談(さうだん)して御覧(ごらん)280そんな(こと)()へた義理(ぎり)ぢやありますまい。281(とし)から()つても三十(さんじふ)(ばか)りも(ちが)ふぢやないか、282せうもない(こと)()つて生宮(いきみや)をおだてるものぢやありませぬぞや』
283シャル『お(まへ)さまは(かみ)(さま)のアボッスルだから、284到底(たうてい)(わたし)のやうな俗人(ぞくじん)(そば)へおよりになつても神格(しんかく)(よご)れるでせう。285無理(むり)とは(まを)しませぬ、286(しか)(なが)肉体(にくたい)(じやう)から()へば、287貴女(あなた)(わたし)もウルスヴルングは(みな)(かみ)から(はつ)してゐるのですから、288(みたま)()(かく)として、289さう軽蔑(けいべつ)するものぢやありませぬワイ』
290高姫(たかひめ)『ウルスヴルングなんて、291(また)怪体(けたい)(こと)()ふぢやないか、292どこ(まで)もうるさく口説(くど)くといふのかなア。293そんな野心(やしん)はやめたがよからう。294師匠(ししやう)(さま)生宮(いきみや)(むか)つて、295チと無礼(ぶれい)ぢやないか』
296シャル『貴女(あなた)何処(どこ)までもセリバシー生活(せいくわつ)(つづ)けて()(かんが)へですか、297四十(しじふ)後家(ごけ)()つても五十(ごじふ)後家(ごけ)()たぬといふぢやありませぬか。298何程(なにほど)表面(おもて)立派(りつぱ)男嫌(をとこぎらひ)標榜(へうばう)してる(をんな)でも、299何時(いつ)とはなしに(その)インスチンクトが(あら)はれて、300(つひ)には(みさを)(やぶ)るのが()(べか)らざる(をんな)境遇(きやうぐう)ですよ。301さうだから露骨(ろこつ)素直(すなほ)(この)シャルが直接(ちよくせつ)交渉(かうせふ)(ひら)いたのです。302(わたし)だつてハタの友達(ともだち)(みな)(まへ)さまの(せつ)反抗(はんかう)するにも(かかは)らず同情(どうじやう)(へう)し、303味方(みかた)になつたのも、304そこにはそれ、305(ひと)(いは)因縁(いんねん)がなくちや(かな)ひますまい』
306高姫(たかひめ)『エー、307(きたな)い、308インスだとか、309チンクトだとか、310(ろく)なこた()はせぬのぢやないか、311そんな(こと)(まを)すと、312風俗(ふうぞく)壊乱(くわいらん)になりますぞや、313チツとたしなみなされ』
314シャル『あああ、315サツパリ サツパリだ。316(をとこ)(うま)れて(しか)もこんなお(ばあ)さまに、317エッパッパをくはされちや、318どうして(をとこ)(かほ)()つものか。319エー()(まで)初志(しよし)貫徹(くわんてつ)するのが(をとこ)だ。320コレ高姫(たかひめ)さま、321(なん)()つても駄目(だめ)ですよ。322何程(なにほど)(まへ)さまが神力(しんりき)(つよ)いと()つても、323肉体(にくたい)肉体(にくたい)(あらそ)へば、324到底(たうてい)(をとこ)には(かな)ひますまい』
325 高姫(たかひめ)厳然(げんぜん)として威儀(ゐぎ)(ただ)し、
326高姫『コリヤ、327シャル、328(なん)心得(こころえ)てゐる。329(この)肉体(にくたい)勿体(もつたい)なくも、330時置師(ときおかしの)(かみ)331斎苑(いそ)(やかた)総務(そうむ)をして(ござ)つた杢助(もくすけ)(さま)奥方(おくがた)だぞえ、332(なん)心得(こころえ)てゐるか』
333シャル『ヘー、334さうで(ござ)いましたか、335(なん)でも杢助(もくすけ)さまといふ宣伝使(せんでんし)(えら)神力(しんりき)(そな)はつてゐると()いて()りましたが、336その杢助(もくすけ)(さま)(いま)何処(どこ)にゐられますか』
337高姫(たかひめ)『お(まへ)(また)それを(たづ)ねてどうする(かんが)へだ』
338シャル『(べつ)()うせうと()(かんが)へも(ござ)いませぬが、339一遍(いつぺん)()にかかつてみたいのです』
340高姫(たかひめ)『オホホホホ、341()にかかりたければ、342モツと(みたま)(みが)きなされ、343杢助(もくすけ)(さま)神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)(じゆつ)使(つか)つて、344(くも)()り、345(てん)(のぼ)られたのだ。346(てん)では時置師(ときおかしの)(かみ)(さま)天人(てんにん)(みたま)守護(しゆご)(あそ)ばされ、347()では高姫(たかひめ)(けが)れた(みたま)洗濯(せんたく)をしてゐるのだ。348(いづ)(くだ)つて(ござ)るに(ちが)ひないから、349(その)(とき)()(くら)まぬやうに、350何事(なにごと)高姫(たかひめ)(まを)(とほ)り、351神妙(しんめう)御用(ごよう)(いた)すのだ。352今後(こんご)一切(いつさい)口答(くちごた)へなどしてはなりませぬぞや、353そして(をんな)などには(こころ)()せることは出来(でき)ませぬぞ。354(まへ)立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)になつた以上(いじやう)は、355(わし)相当(さうたう)女房(にようばう)(えら)んで(あた)へてやるから、356それ(まで)辛抱(しんばう)なさい』
357 かかる(ところ)美妙(びめう)音楽(おんがく)(きこ)え、358(うる)はしき三十(さんじふ)前後(ぜんご)天人(てんにん)(あら)はれ(きた)りぬ。359高姫(たかひめ)()るより仰天(ぎやうてん)し、360アツと(ばか)りに(その)()(たふ)れたり。361シャルは()(ふさ)ぎ、362床上(きじやう)喰付(くひつ)いて(ふる)うてゐる。363天人(てんにん)言葉(ことば)(しづ)かに高姫(たかひめ)耳許(みみもと)にて、
364天人(てんにん)(われ)こそは中間(ちうかん)天国(てんごく)のエンゼル文治別(あやはるわけの)(みこと)(ござ)る。365其方(そなた)高姫(たかひめ)では(ござ)らぬか』
366 (この)(こゑ)高姫(たかひめ)(なん)となく(ちから)()て、367()(ひら)き、368目映(まば)(さう)(かほ)をし(なが)ら、
369高姫(たかひめ)『お(まへ)さまは一寸(ちよつと)()()いたエンゼルとみえるが、370杢助(もくすけ)さまのお使(つかひ)()たのかい。371底津(そこつ)岩根(いはね)根本(こつぽん)弥勒(みろく)生宮(いきみや)372(この)高姫(たかひめ)にお(まへ)(なに)御用(ごよう)があつて()たのだなア。373オホホホホ、374(なん)とまア(わか)(をとこ)だこと、375随分(ずいぶん)天国(てんごく)では、376それ(だけ)(うつく)しいと、377(をんな)にもてるだらうな』
378文治(あやはる)高姫(たかひめ)殿(どの)379拙者(せつしや)をお(わす)れになりましたか。380小北山(こぎたやま)受付(うけつけ)(いた)して()つた文助(ぶんすけ)(ござ)るぞや』
381高姫(たかひめ)『ナニ、382(まへ)があの(めくら)文助(ぶんすけ)かい、383ホホホホホ、384そんな(うそ)()ふものでない。385そんな立派(りつぱ)(ふう)をして()けて()ても、386(この)日出(ひのでの)(かみ)(ふた)つの()(にら)んだら、387(ちが)ひは(いた)しませぬぞや。388(まへ)大方(おほかた)中界(ちうかい)魔神(まがみ)だらう、389(いま)(いま)とて(この)シャル()390せうもない(こと)()ひよる(なり)391(また)中界(ちうかい)魔神(まがみ)(まで)高姫(たかひめ)姿(すがた)にラブして(くだ)つて()ても、392いつかな いつかな、393(うご)きませぬぞや。394容貌(きれう)(わか)(とし)(ほれ)るやうな柔弱(にうじやく)高姫(たかひめ)とは、395ヘン、396チツと(ちが)ひますぞや。397(をとこ)とも(をんな)とも(わか)らぬやうな(つら)をして(だま)しに(きた)つて、398そんな(こと)()るやうな生宮(いきみや)ぢや(ござ)いませぬぞえ。399サアサア(あきら)めて、400トツトと(かへ)つて(くだ)さい』
401文治(あやはる)高姫(たかひめ)殿(どの)402文助(ぶんすけ)間違(まちがひ)(ござ)らぬ、403拙者(せつしや)(しばら)中有界(ちううかい)(おい)修行(しゆぎやう)(いた)(やうや)諸天人(しよてんにん)(をしへ)()いて(こころ)(みが)き、404(いま)(この)(とほ)第二(だいに)霊国(れいごく)のエンゼルとなり、405中有界(ちううかい)地獄界(ぢごくかい)宣伝(せんでん)(まは)つて()ります。406(まへ)さまも(はや)()(あらた)めて、407この中有界(ちううかい)脱出(だつしゆつ)し、408(はや)天国(てんごく)(のぼ)つて(くだ)さい。409(この)(まま)にしておけば、410貴女(あなた)地獄(ぢごく)()ちるより(みち)(ござ)いませぬぞ。411生前(せいぜん)交誼(よしみ)()つて、412一応(いちおう)()注意(ちうい)(ため)(あら)はれて()たのです』
413高姫(たかひめ)『ホホホホ、414ようまア仰有(おつしや)いますワイ。415第一(だいいち)霊国(れいごく)天人(てんにん)(みたま)高姫(たかひめ)光明(くわうみやう)がお(まへ)さまには()えませぬかな。416(かみ)至仁(しじん)至愛(しあい)だから現界(げんかい)(あら)はれて衆生(しゆじやう)済度(さいど)を、417糞糟(くそかす)()をおとしてやつてゐるのだ。418文助(ぶんすけ)なぞと、419そんな(いつは)りを()つてもあきませぬぞや。420(いま)正体(しやうたい)(あら)はしてやるから、421(その)(つもり)でゐなさい、422オホホホホ、423油断(ゆだん)(すき)もあつたものぢやない』
424()(なが)両手(りやうて)(あは)せ、
425高姫(たかひめ)底津(そこつ)岩根(いはね)弥勒(みろく)大神(おほかみ)(さま)426義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)(さま)427末代(まつだい)()(わう)(てん)大神(おほかみ)(さま)
428(いの)()した。429文治別(あやはるわけ)のエンゼルは高姫(たかひめ)(あま)りの脱線振(だつせんぶ)りに取付(とりつ)(しま)もなく、430(かたはら)(たふ)れてゐるシャルを(ゆす)(おこ)し、
431文治(あやはる)『お(まへ)はバラモンのシャルといふ(をとこ)ぢやないか。432こんな(ところ)何時(いつ)(まで)()つても仕方(しかた)がない。433まだ現界(げんかい)生命(せいめい)(のこ)つてゐるから、434(いま)(うち)に、435サア(はや)(かへ)つたがよからう。436グヅグヅしてゐると肉体(にくたい)腐敗(ふはい)して(かへ)ることが出来(でき)なくなりますぞ』
437シャル『ハイ、438(わたし)(この)(とほ)肉体(にくたい)()つてをります。439(この)(ほか)にまだ肉体(にくたい)があるとは合点(がつてん)(まゐ)りませぬ。440そんな(こと)()つて、441(だま)さうとなさつても、442高姫(たかひめ)さまの片腕(かたうで)となつた(この)シャルは、443いつかな いつかな(だま)されませぬ。444そんな(こと)()はずに、445何卒(どうぞ)(かへ)つて(くだ)さいませ。446あとで高姫(たかひめ)(さま)()機嫌(きげん)(わる)いと(こま)りますから……』
447文治(あやはる)『お(まへ)(たち)()うしても()()めないのかな。448(また)高姫(たかひめ)さまも高姫(たかひめ)さまだ。449中有界(ちううかい)彷徨(さまよ)(なが)ら、450ヤツパリここを現界(げんかい)(おも)つてゐると()えて、451(わたし)姿(すがた)()化物(ばけもの)(うたが)つてゐるらしい。452ああ(もと)肉体(にくたい)になつてみせてやりたいが、453さうすれば(たちま)神格(しんかく)(くだ)つて、454(ふたた)(いま)地位(ちゐ)になるのは容易(ようい)(こと)ではなし、455どうしたら(たす)けることが出来(でき)やうかなア』
456()()んで思案(しあん)にくれてゐる。457四辺(あたり)芳香(はうかう)(くん)じ、458嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)()(しき)りに(きこ)え、459(この)伏家(ふせや)周囲(しうゐ)には(もも)天人(てんにん)(たい)()して取巻(とりま)いてゐる。460高姫(たかひめ)(ほと)んど()(くる)はむ(ばか)りに(もだ)(くる)しみ()した。461エンゼルはいかにもして高姫(たかひめ)(すく)はむと、462天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、463数歌(かずうた)(うた)つた。464高姫(たかひめ)益々(ますます)()(きら)ひ、465手足(てあし)をヂタバタさせ(なが)ら、466裏口(うらぐち)()けるや(いな)や、467エンゼルの(あひだ)(くぐ)つて(うら)禿山(はげやま)()して、468野猪(のじし)(ごと)四這(よつば)ひになつて()げゆく。469シャルは(この)(てい)()るなり、470(また)もや高姫(たかひめ)(あと)()ひ、471数多(あまた)のエンゼルの(あひだ)(くぐ)()け、472()けり()く。
473 (これ)より高姫(たかひめ)禿山(はげやま)(ふた)()()え、474四面(しめん)(やま)(つつ)まれた赤濁(せきだく)()なり(ひろ)(ぬま)(ほとり)()いた。475(さう)して(ぬま)(みづ)()(すく)うて一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かつ)をいやしてゐる。476皺枯声(しわがれごゑ)()()げ、
477『オーイオイ』
478()ばはり(なが)ら、479禿山(はげやま)(うへ)から、480(ころ)げる(やう)にやつて()たのはシャルであつた。
481シャル『ああ、482先生(せんせい)483()うマア此処(ここ)()つて(くだ)さいました、484大変(たいへん)(こと)(ござ)いましたなア。485ありや一体(いつたい)(なん)(ござ)いませう。486何万(なんまん)とも()れぬ(こは)(かほ)した(おに)()鉄棒(かなぼう)()つて(いへ)のぐるりを取巻(とりま)き、487(いや)らしい鳴物(なりもの)()らし、488(はな)(ふさ)がるやうな(にほ)ひをさして()めかけた(とき)(こは)さ、489(つら)さ、490生宮(いきみや)さまでさへもお()(あそ)ばす(くらゐ)だから、491到底(たうてい)自分(じぶん)(たす)かりつこはないと、492(あと)(した)うて此処(ここ)(まで)()げて(まゐ)りました。493モウ()つかけて()気遣(きづか)ひは(ござ)いますまいかなア』
494高姫(たかひめ)『ホホホホ仮令(たとへ)幾万(いくまん)(おに)()ようとも、495そんな(こと)にビクともする高姫(たかひめ)ぢや(ござ)いませぬぞや。496(これ)(かみ)秘密(ひみつ)(はふ)()つて、497あの悪魔(あくま)をここ(まで)(さそ)()し、498(この)()(いけ)(みな)()りこむ算段(さんだん)で、499ワザとに()げて()たのだよ。500(せん)(まん)(おに)()()すやうな高姫(たかひめ)(おも)つて(もら)つちや片腹痛(かたはらいた)いわいの、501オホホホホ』
502(むね)(おどろ)きを(かく)して、503ワザと何気(なにげ)なき(てい)(よそほ)(わら)つて()る。
504シャル『高姫(たかひめ)さま、505そんな(つよ)(さう)(こと)仰有(おつしや)いますけれど、506あの(とき)貴女(あなた)のスタイルには随分(ずいぶん)狼狽(らうばい)のサマがみえて()りました、507不減口(へらずぐち)ぢや(ござ)いますまいかな』
508高姫(たかひめ)『まだお(まへ)(まで)(わたし)(うたが)うてをるのかい、509(こま)つた(をとこ)だなア。510文助(ぶんすけ)(みたま)だなどと()ひやがつて、511()けて()よつたのを看破(かんぱ)する(だけ)()神力(しんりき)があるのだから、512到底(たうてい)(まへ)では、513(この)高姫(たかひめ)真価(しんか)(わか)りますまい、514マア(だま)つてゐなさい。515(さう)して高姫(たかひめ)のする(こと)(かんが)へてをれば、516成程(なるほど)と、517二三(にさん)(にち)(うち)には合点(がつてん)がゆくだらう。518オホホホホ、519あのまア(こは)(さう)(かほ)はいの。520これだから弱虫(よわむし)()れてゐると、521足手(あして)まとひになつて、522本当(ほんたう)神力(しんりき)()すことが出来(でき)ないのだ。523(まへ)さへゐなかつたら、524あんな(やつ)ア、525一人(ひとり)(のこ)さず、526最前(さいぜん)のやうに(けぶり)にして(しま)ふのだけれど、527(まへ)(くも)つた(みたま)邪魔(じやま)をするものだから、528とうとう位置(ゐち)(てん)じて第二(だいに)作戦(さくせん)計画(けいくわく)をせなけりやならぬ面倒(めんだう)(おこ)つたのだよ。529(しか)流石(さすが)(おに)此処(ここ)(まで)530ヨモヤ高姫(たかひめ)神力(しんりき)(おそ)れて追掛(おひかけ)ては()ますまい。531まア(ちつ)落着(おちつ)きなさい』
532 ()かる(ところ)(また)もや音楽(おんがく)(こゑ)533(やま)(いただき)より文治別(あやはるわけ)先頭(せんとう)()ち、534数百(すうひやく)(にん)天人(てんにん)(したが)へて(くだ)つて()る。
535シャル『モシモシ高姫(たかひめ)さま、536やつて()ました、537サア、538此処(ここ)見事(みんごと)539彼奴(あいつ)(ほろ)ぼして(くだ)さいませ。540(わたし)()では彼奴(あいつ)(おに)()えたり、541(また)綺麗(きれい)天人(てんにん)()えたりして仕方(しかた)がありませぬワ……それそれ、542大速力(だいそくりよく)此方(こちら)(くだ)つて()ませうがな、543(はや)準備(じゆんび)をして(くだ)され』
544高姫(たかひめ)『エー、545準備(じゆんび)をせうと(おも)ふておつたのに、546(まへ)()()て、547せうもない(こと)(しやべ)り、548肝腎(かんじん)時間(じかん)(つぶ)さして(しま)つたものだから、549悪魔(あくま)(はう)(はや)()よつたのだ。550ああ此処(ここ)でも具合(ぐあひ)(わる)い、551第三(だいさん)計画(けいくわく)(うつ)らう』
552()(なが)ら、553(かほ)真青(まつさを)になし、554(また)もや(つぎ)(やま)()けつ(まろ)びつ()(のぼ)る。555シャルも是非(ぜひ)なく(くろ)(ふんどし)をたらし(なが)ら、556高姫(たかひめ)足型(あしがた)(たづ)ねて、557(いき)(くる)しげに()いて()く。
558大正一二・三・一六 旧一・二九 於竜宮館 松村真澄録)
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki