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第一五章 哀別(あいべつ)〔一四九〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻 篇:第3篇 千波万波 よみ(新仮名遣い):せんぱばんぱ
章:第15章 哀別 よみ(新仮名遣い):あいべつ 通し章番号:1490
口述日:1923(大正12)年03月29日(旧02月13日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玉国別一行は初稚丸を猩々島の磯辺に付けた。見れば、大なる猩々が人間とも猿ともわからぬ子を抱いている。その傍には髯をむしゃむしゃと生やした人間が立っている。
伊太彦の呼びかけに、バーチルは答えて身の上を話しだした。猩々たちは人間たちがたくさんやってきたので遠巻きにして様子をうかがっている。
玉国別はバーチルとの間に子をなした猩々を憐れに思い、一緒に船に乗せて帰ることはできないかと聞いた。バーチルは、この猩々の女王は自分の群れを島のさまざまな危険から守っているため、仲間を捨てて人間と共に島を出ることはないだろうと答えた。
ともあれ、バーチルを故郷に帰すことになった。バラモン組のヤッコス、サボール、ハールの三人が猩々の子供らを追いかけて遊んでいる間に、初稚丸はバーチルを乗せて島を離れた。
猩々の女王はバーチルが去っていくのを見て悲鳴を上げ、子供を示してバーチルの帰還を促したが、バーチルが帰ってこないのを悟ると、子供を絞め殺して自分も藤蔓に重い石をくくりつけて入水してしまった。この惨状を船上から見て、玉国別の一行は悲嘆にくれた。
ヤッコス、サボール、ハールの三人は自分たちが置いて行かれたことに気が付いて磯端で地団太を踏んで叫んでいる。メートとダルの二人は、悪事を企んだ報いだと三人を嘲笑した。初稚丸は西南指して進んで行く。
船上の一行は、猩々島での一件を述懐の歌にそれぞれ歌いこんだ。船は潮流に乗って進んでいたが、イールは船が魔の海の潮流に流れ込み、方向転換ができないことを告げた。バーチルの故郷・スマの港には遠回りになるが、それほど危険はないことを宣伝使たちに報告した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5815
愛善世界社版:178頁 八幡書店版:第10輯 434頁 修補版: 校定版:190頁 普及版:71頁 初版: ページ備考:
001 玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)初稚丸(はつわかまる)猩々島(しやうじやうじま)磯辺(いそべ)につけ、002よくよく()れば、003(すぐ)れて(だい)なる猩々(しやうじやう)が、004人間(にんげん)とも(さる)とも()れぬ()()いて()る。005(そば)(ひげ)むしやむしやと()えた、006人間(にんげん)(さる)(わか)らぬ人間(にんげん)一人(ひとり)()つて()る。007伊太彦(いたひこ)(その)(をとこ)(むか)つて、
008伊太(いた)『オイ其処(そこ)()つて()るのは人間(にんげん)か、009人間(にんげん)ならものを()つて()れ』
010 バーチルは三年振(さんねんぶ)りで人間(にんげん)(かほ)()011人間(にんげん)(こゑ)()いて、012(なつか)しさ(うれ)しさに、013(なみだ)をハラハラと(なが)した。014そして、
015バーチル『ハイ(わたくし)人間(にんげん)です。016どうか(たす)けて(くだ)さい、017(さん)(ねん)以前(いぜん)(この)(しま)漂着(へうちやく)し、018()(とほ)猩々(しやうじやう)(むれ)一緒(いつしよ)(さび)しい生活(せいくわつ)(おく)つて()りました』
019伊太(いた)『ヤア、020そいつは奇妙(きめう)(はなし)だ、021(ふか)様子(やうす)があるだらう。022()(かく)023とつくりと()かして(もら)はう。024もし先生(せんせい)025こいつは(ひと)上陸(じやうりく)して()ませう。026ひよつとしたら宝石(はうせき)(しま)かも()れませぬぞや』
027玉国(たまくに)『ウン、028()(かく)上陸(じやうりく)して、029様子(やうす)(さぐ)つて()よう。030サア(みな)さま一同(いちどう)上陸(じやうりく)しなさい』
031()(なが)ら、032ポイと()んで磯辺(いそばた)(くだ)つた。033(つづ)いて一同(いちどう)船頭(せんどう)(のこ)したまま、034(みな)好奇心(かうきしん)にかられて(あが)つて()た。035猩々(しやうじやう)沢山(たくさん)凛々(りり)しい(をとこ)がやつて()たので、036(やや)怯気(おぢけ)(しやう)じ、037猩々(しやうじやう)(わう)()()いて七八間(しちはちけん)(あと)退(しりぞ)き、038(くび)(かた)げて様子(やうす)(かんが)へて()る。039沢山(たくさん)小猿(こざる)一緒(いつしよ)(あつ)まつてキャキャ()(なが)(またた)きもせず、040(みつ)めて()る。
041玉国(たまくに)『アア、042(まへ)さまはどこの(ひと)ですか。043どうしてまアこんな(はな)(じま)猩々(しやうじやう)なんかと同棲(どうせい)して()たのです。044一通(ひととほ)(はな)して()(くだ)さい。045(わたし)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)046(ひと)(たす)けるのが(やく)です。047(けつ)して()(あん)じなさるやうな人間(にんげん)ぢや(ござ)いませぬ。048安心(あんしん)してお(はなし)(ねが)ひます』
049バーチル『ハイ、050有難(ありがた)(ござ)います。051(わたくし)はイヅミの(くに)052スマの(さと)首陀(しゆだ)で、053バーチルと(まを)百姓(ひやくしやう)(ござ)いますが、054大変(たいへん)(れふ)()きな(ところ)より、055()模様(もやう)(うみ)(をか)して(しもべ)(とも)(さん)(ねん)以前(いぜん)湖中(こちう)(とほ)(すなどり)をやつて()りますと、056(にはか)暴風(しけ)()船体(せんたい)(なみ)にのまれ、057(わたくし)はお(かげ)(この)(しま)につき、058猩々(しやうじやう)(わう)(たす)けられ今日(けふ)(まで)(いのち)(たも)つて(まゐ)りました。059(さぞ)国元(くにもと)には女房(にようばう)心配(しんぱい)して()(こと)(ござ)いませう。060何卒(どうぞ)(たす)けをお(ねが)(いた)します』
061玉国(たまくに)成程(なるほど)それは()難儀(なんぎ)でしたらう。062もう()うなる(うへ)()心配(しんぱい)なさるな。063(この)(ふね)貴方(あなた)(すく)ふて(かへ)りませう』
064バーチル『ハイ、065何分(なにぶん)宜敷(よろし)くお(ねが)(まをし)ます。066(さん)(ねん)以来(いらい)(この)(しま)猩々(しやうじやう)(たす)けられ食物(しよくもつ)不自由(ふじゆう)(いた)しませぬが、067(なに)()ふても相手(あひて)畜生(ちくしやう)(こと)068言葉(ことば)(つう)じないので(こま)りました』
069 かく(はな)(をり)070猩々(しやうじやう)(わう)(あか)(ばう)()いて(その)()(あら)はれ(きた)り、071()(ゆびさ)しては(わか)らぬ(こと)をキャキャと(さけ)んで()る。072伊太彦(いたひこ)はつくづくと(その)()()て、
073伊太(いた)『アア(この)()人間(にんげん)(さる)との混血児(あひのこ)ぢやな。074ハハア(めう)(こと)があるものだ。075()しバーチルさま、076こりやお(まへ)さまと猩々(しやうじやう)さまとの(なか)出来(でき)(かすがひ)ぢやなからうなア』
077バーチル『ハイ、078(じつ)にお(はづ)かしい(こと)(ござ)いますが、079あの猩々(しやうじやう)(わう)夫婦(ふうふ)になつたお(かげ)で、080今日(けふ)(まで)(いのち)(たも)てたので(ござ)います。081因果(いんぐわ)(たね)宿(やど)つてあのやうな()出来(でき)ました。082(じつ)(こま)つたもので(ござ)います。083畜生(ちくしやう)(はら)出来(でき)たとは()(なが)(わたくし)(じつ)未練(みれん)(のこ)ります。084(しか)しあんなものを()れて(かへ)(わけ)にも(まゐ)りませず、085(また)猩々(しやうじやう)女房(にようばう)()れて(かへ)(わけ)にも(まゐ)りませぬ。086(じつ)畜生(ちくしやう)()ひながら親切(しんせつ)なもので(ござ)います。087(くに)(かへ)りたいは山々(やまやま)(ござ)いますが、088()()へばお(わら)ひなさるか()れませぬが、089(じつ)にあの猩々(しやうじやう)可愛(かあい)さうです』
090玉国(たまくに)(じつ)にお(さつ)(まを)します。091こりや可愛(かあい)さうな(こと)だ。092バーチルさまを()れて(かへ)れば(いへ)(おく)さまはお(よろこ)びなさるだらうが、093第二(だいに)夫人(ふじん)猩々姫(しやうじやうひめ)(こころ)(さつ)せらるる。094(なん)とかして()れて(かへ)(わけ)には(まゐ)りますまいかな』
095バーチル『ハイ有難(ありがた)(ござ)いますが、096(しか)猩々(しやうじやう)(けつ)して(この)(しま)(はな)れは(いた)しませぬ。097あれだけ沢山(たくさん)猩々(しやうじやう)が、098時々(ときどき)(あら)はれる大蛇(をろち)にも()まれず、099ああして()るのはあの(わう)があるからで(ござ)います。100あの猩々(しやうじやう)()れて(かへ)れば眷族(けんぞく)見殺(みごろし)にせねばなりませぬ。101(また)猩々(しやうじやう)自分(じぶん)眷族(けんぞく)見殺(みごろし)にして吾々(われわれ)()いては(まゐ)りますまい、102(じつ)(なさけ)(ぶか)動物(どうぶつ)ですから』
103伊太(いた)(さん)(ねん)畜生(ちくしやう)とは()(なが)夫婦(ふうふ)となつて(くら)して()たとすれば、104さうも未練(みれん)(のこ)るものかな。105アアてもさても人間(にんげん)心理(しんり)状態(じやうたい)()ふものは(わか)らぬものだなア』
106玉国(たまくに)人間(にんげん)であらうが(けだもの)であらうが、107(けつ)して愛情(あいじやう)(かは)りはない。108(まし)人間(にんげん)()(やつ)(すこ)しく()()はねば女房(にようばう)()()したり、109(をつと)()てたりするものだが、110畜生(ちくしやう)(その)(てん)になれば(えら)いものだ。111(そら)()(とり)さへも一方(いつぱう)(ひと)()られるとか、112(また)()んで仕舞(しま)ふとかすれば、113(かり)にも二度目(にどめ)(をす)()つたり、114(めす)()つたりしないものだ。115これを(おも)へば、116人間(にんげん)(とり)(けだもの)(おと)つて()るやうだ』
117伊太(いた)成程(なるほど)感心(かんしん)なものですな。118これ三千彦(みちひこ)さま、119(まへ)さまも(いま)先生(せんせい)のお(はなし)(はら)()れて、120(けつ)してデビス(ひめ)()したりしてはなりませぬぞや。121(また)仮令(たとへ)(おく)さまが()くなつても、122二度目(にどめ)(おく)さまは()たないやうになさいませ。123(おく)さまも(おく)さまですよ、124どんな(こと)があつても(けつ)して二度目(にどめ)(をつと)()つたり、125(しり)をふつてはなりませぬぞや』
126三千(みち)『ハハハ。127(なに)から(なに)(まで)有難(ありがた)(ござ)います。128(けつ)して(おほせ)(そむ)くやうな(こと)(いた)しませぬから、129()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
130伊太(いた)本当(ほんたう)だよ、131(けつ)して伊太彦(いたひこ)(はなし)(かる)()いてはなりませぬぞや。132いやもう、133(いま)(はなし)(じつ)(なみだ)(こぼ)れました』
134玉国(たまくに)『どうも、135何時(いつ)(まで)(くや)んで()(ところ)仕方(しかた)がない、136()(かく)バーチルさま(この)(ふね)にお()りなさい。137一先(ひとま)(かへ)つて(おく)さまに安心(あんしん)させたが(よろ)しからう』
138バーチル『ハイ、139有難(ありがた)(ござ)います。140何卒(どうぞ)(よろ)しく(ねが)ひます』
141 子猿(こざる)はキャッキャッと()(なが)ら、142追々(おひおひ)(ちか)よつて()る。143バラモン(ぐみ)のヤッコス、144ハール、145サボールの(さん)(にん)小猿(こざる)(むれ)面白(おもしろ)がつて()つかけ(なが)ら、146()(まは)つて()る。147(その)(あひだ)(ふね)(さん)(にん)(のこ)して、148磯辺(いそばた)七八間(しちはちけん)(ばか)(はな)れた。149猩々(しやうじやう)(わう)悲鳴(ひめい)()げて磯辺(いそばた)(たたず)み、150(あか)(ばう)をつき()し、151バーチルの(かほ)(なが)めて(なみだ)をハラハラと(なが)し、152(くち)には()はねど、153(この)()貴方(あなた)154可愛(かあい)(ござ)いませぬか。155(つま)見捨(みす)てて(かへ)るとは惨酷(ざんこく)では(ござ)いませぬか』との表情(へうじやう)(しめ)し、156地団駄(ぢだんだ)()んで()る。157時々(ときどき)小猿(こざる)(また)から()()(さま)()せて脅喝(けふかつ)(こころ)みた。158(しか)一同(いちどう)(こころ)(おに)にして、159()むを()今日(けふ)場合(ばあひ)(ふね)()(はじ)めた。160猩々王(しやうじやうわう)は、161()()自分(じぶん)()(のど)()めて(ころ)し、162自分(じぶん)藤蔓(ふぢかづら)(おも)(いし)(くく)りつけ、163ドンブと(ばか)海中(かいちう)()(とう)じて仕舞(しま)つた。
164 (この)惨状(さんじやう)()て、165玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)悲歎(ひたん)(なみだ)()れた。166ヤッコス、167ハール、168サボールの(さん)(にん)(ふね)()たのを()(おどろ)磯辺(いそばた)(あわ)ただしく()(きた)り、
169(さん)(にん)『オーイ オーイ()つた()つた、170(おれ)(たち)(さん)(にん)此処(ここ)(のこ)つて()るぢやないか。171(その)(ふね)(かへ)せ』
172地団駄(ぢだんだ)()んで(さけ)んで()る。173メート、174ダルの二人(ふたり)は、175舷頭(げんとう)()(めう)恰好(かつかう)して(あご)をしやくり、176幾度(いくたび)となく拳骨(げんこつ)(くう)()(なが)ら、
177『イヒヒヒ、178ウフフフ。179オーイ(さん)(にん)悪人(あくにん)()180貴様(きさま)はキヨの(みなと)(おれ)(たち)一同(いちどう)捕縛(ほばく)する計略(けいりやく)をやつて()るやうだが、181そんな(こと)はちやんと三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)御存(ごぞん)じだ。182(それ)だから貴様(きさま)()(さん)(にん)此処(ここ)()()りにしてお(かへ)(あそ)ばすのだ。183まア猿島(さるじま)(わう)となり、184(さる)夫婦(めをと)となり子孫(しそん)繁栄(はんゑい)(みち)(かう)じたらよからう。185アバヨ、186()(どく)(さま)187御悠(ごゆつく)りと、188左様(さやう)なら』
189所有(あらゆる)嘲笑(てうせう)をなし、190(さん)(にん)磯辺(いそばた)()つて()るのに素知(そし)らぬ(かほ)をしながら、191(をり)から()()る、192微風(びふう)()()げて西南(せいなん)(はう)さして(すべ)()く。
193 船頭(せんどう)()をゆるやかに(あやつ)(なが)(すず)しい(こゑ)(うた)()した。
194船頭(せんどう)『ヤンサモンサで(おき)()(ふね)
195女郎(ぢよらう)(まね)けば()んと(いそ)による、
196ヤンサ、女郎(ぢよらう)(まね)くとも
197(いそ)にども()るな
198ナント女郎(ぢよらう)化物(ばけもの)昼狐(ひるぎつね)
199ヤンサヨー
200泥坊(どろばう)泥坊(どろばう)三人(さんにん)(づれ)
201(こゑ)()らして(まね)くとも
202ヤンサー、(いそ)には()るな
203彼奴(あいつ)盗人(ぬすびと)昼狐(ひるぎつね)
204キヨの(みなと)についたなら
205ヤンサー、エンサー
206ヤンヤーノヤー
207目付(めつけ)(やつ)()(しめ)()
208数百(すうひやく)手下(てした)()()れて
209ヤンサー コレワイサー
210玉国別(たまくにわけ)宣伝使(せんでんし)
211(その)(ほか)一同(いちどう)生神(いきがみ)
212一網(いちまう)打尽(だじん)にして()りよと
213手具脛(てぐすね)()いて()つて()
214(その)()()つて(たま)らうか
215ヤンサ、エーンサーノ
216エンヤラヤー
217猩々(しやうじやう)(しま)にと蟄居(ちつきよ)して
218猩々姫(しやうじやうひめ)をば(よめ)()
219結構(けつこう)()だらけ()()んで
220キヤツキヤツと()いて(くら)しやんせ
221これが(この)()懲戒(みせしめ)
222ほんにお(まへ)(えら)(やつ)
223猩々(しやうじやう)(しま)(わう)となり
224治外(ちぐわい)法権(はふけん)生涯(しやうがい)
225(おく)らしやんせよいつ(まで)
226これもお(まへ)さまの()(さび)
227折角(せつかく)(いのち)(たす)けられ
228ヤンサ、エンサ
229エンヤラサー
230(こころ)(そこ)悪企(わるだく)
231それを(さと)つた宣伝使(せんでんし)
232(おれ)()もすつかり()つて()
233ほんに貴様(きさま)()(どく)ぢや
234(つき)()()涼風(すずかぜ)()
235(なみ)(しづか)にさやさやと
236面白(おもしろ)おかしく(いさぎよ)
237キヨの(みなと)にや()かないで
238イヅミの(くに)のスマの(うら)
239バラモン(けう)目付(めつけ)()
240(はな)をあかして
241吃驚(びつくり)さしてやらう
242エンサ、エンサノ
243エンヤラヤー』
244()をふり(あし)をふり(さん)(にん)嘲弄(てうろう)(なが)ら、245追々(おひおひ)(しま)(とほ)ざかり()く。
246バーチル『久方(ひさかた)天津(あまつ)御空(みそら)(すく)(がみ)
247天降(あもり)ましたる今日(けふ)(うれ)しき。
248さりながら三年(みとせ)(あひだ)(わが)(つま)
249(いつくしみ)たる(ひめ)こそ(あは)れ。
250猩々(しやうじやう)(ひめ)宿(やど)りし(わが)(たね)
251見殺(みごろし)にする(こころ)(くる)しさ。
252(つま)となり(をつと)となるも(さき)()
253(ふか)(えにし)白浪(しらなみ)(うへ)
254白浪(しらなみ)(うへ)()(わた)(この)(ふね)
255(もも)(あは)れを()せて(はし)れる。
256()(ひと)もなき荒島(あらしま)(のこ)されし
257三人(みたり)(をとこ)(こころ)しのばゆ。
258村肝(むらきも)(こころ)(おに)にせめられて
259かく(あさ)ましき()とぞなりしか』
260真純彦(ますみひこ)大空(おほぞら)(みづ)(そこ)ひもすみ(わた)
261さはさり(なが)(こころ)(かな)しき。
262猩々(しやうじやう)(あはれ)最後(さいご)()るにつけ
263(こら)()ねたる(わが)(なみだ)かな』
264メート『(さん)(にん)悪漢(わるもの)どもを(しま)におき
265(かへ)りて()かむ(われ)(うれ)しき。
266ヤッコスは(さぞ)今頃(いまごろ)磯辺(いそばた)
267(わが)(ふね)(なが)()きくづれ()む』
268ダル『何事(なにごと)(こころ)(つみ)()きし(たね)
269猩々(しやうじやう)(しま)()えしなるらむ。
270少々(せうせう)(あやま)ちなれば()(かく)
271(そら)(おそ)ろしき曲神(まがかみ)(つみ)
272三千彦(みちひこ)(かな)しさは(なみだ)(つぼ)三千彦(みちひこ)
273()むすべもなき今日(けふ)(あは)れさ』
274デビス(ひめ)三柱(みはしら)(しこ)(つかさ)皇神(すめかみ)
275(あつ)(まも)りに(やす)()むらむ』
276玉国別(たまくにわけ)『スマの(うら)(なみ)()(ぎは)につきし(うへ)
277態人(わざびと)をもて(むか)(たす)けむ』
278(おのおの)述懐(じゆつくわい)()(なが)ら、279潮流(てうりう)()つて湖上(こじやう)(みぎ)(ひだり)(すべ)()く。280(はる)前方(ぜんぱう)(あた)つて(かすみ)のやうに(うか)びたる(ちひ)さき島影(しまかげ)()についた。281イールは目敏(めざと)(これ)()て、
282イール『ああ仕舞(しま)つた、283たうとう()(うみ)(ふね)(なが)()みました。284あれへ(まは)れば三四十(さんしじふ)()(まは)(みち)(ござ)いますが、285この(みづうみ)はもうあの潮流(てうりう)()つたが最後(さいご)286方向(はうかう)(てん)ずる(こと)出来(でき)ませぬ。287(しか)(なが)暗礁(あんせう)のない(かぎ)滅多(めつた)危険(きけん)(こと)(ござ)いませぬ。288(みな)さま()安心(あんしん)(くだ)さいませ。289スマの(みなと)()かうと(おも)へば余程(よほど)(まは)りですが、290これも()(ゆき)だと(あきら)めて(くだ)さい』
291玉国(たまくに)(なに)かの(かみ)(さま)()都合(つがふ)だらう。292(なみ)のまにまに(まか)して、293充分(じゆうぶん)()をつけてやつて()れ。294(また)大変(たいへん)獲物(えもの)があるかも()れないから』
295イール『ハイ、296有難(ありがた)う、297それで(わたし)安心(あんしん)(いた)しました』
298鉢巻(はちまき)をしながら、299(はち)(にん)水夫(かこ)指揮(しき)し、300一生(いつしやう)懸命(けんめい)301真裸体(まつぱだか)となつて()(はじ)めた。302(ふね)蜒々(えんえん)として(なみ)のまにまに(ただよ)()く。
303大正一二・三・二九 旧二・一三 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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