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第58巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 玉石混淆
01 神風
〔1476〕
02 多数尻
〔1477〕
03 怪散
〔1478〕
04 銅盥
〔1479〕
05 潔別
〔1480〕
第2篇 湖上神通
06 茶袋
〔1481〕
07 神船
〔1482〕
08 孤島
〔1483〕
09 湖月
〔1484〕
第3篇 千波万波
10 報恩
〔1485〕
11 欵乃
〔1486〕
12 素破抜
〔1487〕
13 兎耳
〔1488〕
14 猩々島
〔1489〕
15 哀別
〔1490〕
16 聖歌
〔1491〕
17 怪物
〔1492〕
18 船待
〔1493〕
第4篇 猩々潔白
19 舞踏
〔1494〕
20 酒談
〔1495〕
21 館帰
〔1496〕
22 獣婚
〔1497〕
23 昼餐
〔1498〕
24 礼祭
〔1499〕
25 万歳楽
〔1500〕
余白歌
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第二五章
万歳楽
(
ばんざいらく
)
〔一五〇〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻
篇:
第4篇 猩々潔白
よみ(新仮名遣い):
しょうじょうけっぱく
章:
第25章 万歳楽
よみ(新仮名遣い):
ばんざいらく
通し章番号:
1500
口述日:
1923(大正12)年03月30日(旧02月14日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
テクは番頭頭になった気持ちで蔵から酒を担ぎ出し、酒を飲みながら他愛もなくしゃべり続けている。邸内には数百人の里人が、庄屋の旦那が帰られたとのことでお祝いに詰めかけ、酒を飲んで歌い舞い踊りなどして騒いでいる。
テクは番頭頭気分で、アキスとカールによく気を付けてお客様の世話をするようにと酔って説教をしている。アキスとカールは適当にいなし、ア主人夫婦に天王の森の猩々の霊が憑いているといったうわさ話にふけっている。
門の方がにぎやかになってきたので二人が表口へ駆け出すと、テクが大柄杓を肩にかけながら、酔った勢いで勝手な歌を歌い踊っている。
そこへキヨの港を守るバラモン軍のキャプテン・チルテルが数十人の部下を連れてやってきた。チルテルは、三五教の宣伝使・玉国別たちがこの館に潜んでいるとの情報で召し捕りにやってきたと大音声に告げた。
テク、アキス、カールは酒をなみなみと汲んで、チルテルの前に突きだした。チルテルは酒と聞いてたまらず、馬を下りてガブリガブリと呑みはじめた。チルテルの部下も群衆に交じって酒を飲み、肝心の使命を忘れて踊っている。
空中には迦陵頻伽、鳳凰、孔雀らの瑞鳥が舞っている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5825
愛善世界社版:
300頁
八幡書店版:
第10輯 476頁
修補版:
校定版:
318頁
普及版:
122頁
初版:
ページ備考:
001
テクは、
002
アキス、
003
カールと
共
(
とも
)
に
番頭頭
(
ばんとうがしら
)
になつたやうな
気持
(
きもち
)
で、
004
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をしながら
褌
(
まはし
)
一
(
ひと
)
つになり
倉
(
くら
)
から
酒
(
さけ
)
を
担
(
かつ
)
ぎ
出
(
だ
)
し、
005
樽
(
たる
)
の
詰
(
つめ
)
を
抜
(
ぬ
)
いて、
006
柄杓
(
ひしやく
)
の
口
(
くち
)
からグイと
一口
(
ひとくち
)
呑
(
の
)
んでは
他愛
(
たあい
)
もなく
喋
(
しやべ
)
りつづけて
居
(
ゐ
)
る。
007
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
里人
(
さとびと
)
は
貴賤
(
きせん
)
老若
(
らうにやく
)
の
隔
(
へだ
)
てなく、
008
『バーチルさまが
帰
(
かへ
)
られた。
009
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
無事
(
ぶじ
)
お
帰
(
かへ
)
りだ』
010
と
目
(
め
)
やに
を
溜
(
た
)
めた
婆
(
ば
)
アさま、
011
鼻
(
はな
)
を
垂
(
た
)
らしたお
爺
(
ぢい
)
さま、
012
鼻曲
(
はなまが
)
り、
013
聾
(
つんぼ
)
、
014
盲
(
めくら
)
迄
(
まで
)
が
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
り、
015
広
(
ひろ
)
き
邸内
(
ていない
)
に
酒樽
(
さかだる
)
の
鏡
(
かがみ
)
を
抜
(
ぬ
)
いて
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
唄
(
うた
)
ひ
舞
(
ま
)
ひなどして
底
(
そこ
)
ぬけ
騒
(
さわ
)
ぎをして
居
(
ゐ
)
る。
016
テクは
得意
(
とくい
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
し、
017
テク『オイ、
018
アキス、
019
カール
確
(
しつか
)
りせないか、
020
よくお
客
(
きやく
)
さまの
様子
(
やうす
)
を
調
(
しら
)
べ、
021
落
(
お
)
ち
度
(
ど
)
のないやうに
一人
(
ひとり
)
もお
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
かぬ
落伍者
(
らくごしや
)
のないやう
気
(
き
)
をつけるのだよ。
022
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふても
俺
(
おれ
)
のやうな
清浄
(
しやうじやう
)
潔白
(
けつぱく
)
の
霊
(
みたま
)
でないものは
隅々
(
すみずみ
)
迄
(
まで
)
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
かないからな。
023
走
(
はし
)
り
元
(
もと
)
、
024
雪隠
(
せつちん
)
の
中
(
なか
)
、
025
物置
(
ものおき
)
の
隅々
(
すみずみ
)
迄
(
まで
)
も
気
(
き
)
の
付
(
つ
)
く
奴
(
やつ
)
でないと
誠
(
まこと
)
の
御用
(
ごよう
)
は
務
(
つと
)
まらぬぞよ。
026
ああ
甘
(
うま
)
い
酒
(
さけ
)
だ。
027
俺
(
おれ
)
は
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
部下
(
ぶか
)
だ、
028
猩々
(
しやうじやう
)
位
(
ぐらゐ
)
呑
(
の
)
み
倒
(
たふ
)
したつて、
029
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つたつてイヅミの
国
(
くに
)
切
(
き
)
つての
豪家
(
がうか
)
だから
大
(
たい
)
したものだ。
030
「
立寄
(
たちよ
)
れば
大樹
(
たいじゆ
)
の
蔭
(
かげ
)
だ。
031
箸
(
はし
)
と
親方
(
おやかた
)
は
大
(
おほ
)
きなのがよい」と
云
(
い
)
ふから、
032
俺
(
おれ
)
も
今日
(
けふ
)
からスパイを
廃
(
や
)
めて、
033
バーチルさまの
一
(
いち
)
の
番頭
(
ばんとう
)
に
自分
(
じぶん
)
から
定
(
き
)
めて
成
(
な
)
つたのだから、
034
今後
(
こんご
)
は
俺
(
おれ
)
の
命令
(
めいれい
)
に
従
(
したが
)
ふのだよ。
035
よいか、
036
アキス、
037
カール、
038
のうアキス、
039
カール、
040
それでよいだらう。
041
ヨイトサのヨイトサ、
042
好
(
よ
)
い
酒
(
さけ
)
、
043
好
(
よ
)
い
酒
(
さけ
)
、
044
酔
(
よ
)
うて
酔
(
よ
)
うておいしうてようて、
045
酔
(
よひ
)
が
廻
(
まは
)
つて、
046
酔
(
よ
)
うて、
047
甘
(
うま
)
うて
酔
(
よ
)
うて、
048
ヨイヨイのテクテクだ。
049
猩々彦
(
しやうじやうひこ
)
の
四
(
よ
)
つ
手
(
で
)
のテクさまと
云
(
い
)
へば
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だぞ。
050
なんぼテクさまと
云
(
い
)
ふても
手癖
(
てくせ
)
は
悪
(
わる
)
くないから、
051
其
(
その
)
積
(
つもり
)
で
居
(
を
)
つて
呉
(
く
)
れ』
052
アキス『ヘン、
053
俄
(
にはか
)
に
番頭顔
(
ばんとうがほ
)
をしよつて
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない。
054
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今日
(
けふ
)
はお
目出度
(
めでた
)
い
日
(
ひ
)
だから、
055
喧嘩
(
けんくわ
)
はやめて
置
(
お
)
かう。
056
今日
(
けふ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
の
番頭
(
ばんとう
)
だから、
057
何
(
なん
)
なりと
勝手
(
かつて
)
の
熱
(
ねつ
)
を
吹
(
ふ
)
いたがよいわ。
058
のうカール』
059
カール『ウンさうだ。
060
テクが
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのぢやない、
061
振舞
(
ふるま
)
ひ
酒
(
ざけ
)
が
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
062
酒
(
さけ
)
と
云
(
い
)
ふものは
狂水
(
きやうすい
)
と
云
(
い
)
ふが、
063
ほんとに
面白
(
おもしろ
)
いものだなア。
064
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
下戸
(
げこ
)
でも
一口
(
ひとくち
)
呑
(
の
)
めば
気持
(
きもち
)
がハキハキして
来
(
く
)
るやうだ』
065
アキス『オイ、
066
たつた
一口
(
ひとくち
)
と
云
(
い
)
ふたが、
067
最前
(
さいぜん
)
から
随分
(
ずゐぶん
)
沢山
(
どつさり
)
引
(
ひ
)
つかけたぢやないか。
068
まるで
牛
(
うし
)
か
象
(
ざう
)
かが、
069
雑水
(
ざふすゐ
)
を
呑
(
の
)
むやうだつたよ』
070
カール『
定
(
き
)
まつた
事
(
こと
)
だよ。
071
五升
(
ごしよう
)
徳利
(
どつくり
)
に
一口
(
ひとくち
)
ぢやほんの
少々
(
せうせう
)
ながら、
072
ごしよごしよとやつて
見
(
み
)
たら、
073
俺
(
おれ
)
の
頬
(
ほほ
)
べたにほんのりと
紅
(
くれなゐ
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
きかけたのだ、
074
エヘヘヘヘ』
075
アキス『オイ
貴様
(
きさま
)
は
奥様
(
おくさま
)
から、
076
余
(
あま
)
り
円
(
まる
)
い
顔
(
かほ
)
をして
居
(
ゐ
)
るので
望月
(
もちづき
)
とか
餅
(
もち
)
が
好
(
す
)
きだとか
云
(
い
)
はれたぢやないか。
077
餅
(
もち
)
の
好
(
す
)
きな
奴
(
やつ
)
は
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
まぬものだが、
078
貴様
(
きさま
)
は
山川
(
やまかは
)
道楽
(
だうらく
)
だな。
079
俺
(
おれ
)
は
酒
(
さけ
)
は
一滴
(
いつてき
)
も
呑
(
の
)
まないと
云
(
い
)
ふて
赤
(
あか
)
い
顔
(
かほ
)
をしたり、
080
熟柿
(
じゆくし
)
臭
(
くさ
)
い
息
(
いき
)
をしたりしたのは
内証
(
ないしよう
)
で
呑
(
の
)
んで
居
(
ゐ
)
たのだな、
081
たうとう
化
(
ばけ
)
を
現
(
あら
)
はしやがつたな、
082
化虎
(
ばけとら
)
め』
083
カール『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だい。
084
いつも
酒倉
(
さかぐら
)
の
番
(
ばん
)
許
(
ばか
)
りやらされて
居
(
ゐ
)
るのだもの、
085
樽
(
たる
)
に
錐穴
(
きりあな
)
をあけ、
086
麦藁
(
むぎわら
)
を
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
んで、
087
チウチウと
鼠鳴
(
ねずみな
)
きをして
居
(
ゐ
)
たのだ。
088
そして
其
(
その
)
後
(
あと
)
へ
釘
(
くぎ
)
を
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
んで
置
(
お
)
くのだ。
089
貴様
(
きさま
)
は
長
(
なが
)
らく
俺
(
おれ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
の
奉公
(
ほうこう
)
しておきながらノロ
作
(
さく
)
だなア』
090
アキス『
併
(
しか
)
し
此方
(
こなた
)
の
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は、
091
昔
(
むかし
)
から
酒
(
さけ
)
許
(
ばか
)
り
沢山
(
たくさん
)
作
(
つく
)
つて
売
(
う
)
るでもなく、
092
二十
(
にじつ
)
戸前
(
とまへ
)
の
倉
(
くら
)
に
酒
(
さけ
)
を
蓄
(
たくは
)
へて
居
(
ゐ
)
るのは
不思議
(
ふしぎ
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たら、
093
矢張
(
やつぱり
)
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
の
間
(
ま
)
に
合
(
あは
)
さうと
思
(
おも
)
つて
準備
(
じゆんび
)
して
居
(
ゐ
)
たのだな。
094
ほんとに
偉
(
えら
)
い
人
(
ひと
)
ぢやないか』
095
カール『
併
(
しか
)
しアキス、
096
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
と
奥
(
おく
)
さまに
天王
(
てんのう
)
の
森
(
もり
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
が
憑
(
つい
)
て
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
ぢやないか。
097
俺
(
おれ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
から
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
たが、
098
ほんとに
不思議
(
ふしぎ
)
の
事
(
こと
)
だ。
099
貴様
(
きさま
)
どう
思
(
おも
)
ふか』
100
アキス『ウンそれが、
101
しやうじやうむく
(
清浄
(
しやうじやう
)
無垢
(
むく
)
)の
霊
(
みたま
)
と
云
(
い
)
ふのだらうかい。
102
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
も
奥様
(
おくさま
)
も
人民
(
じんみん
)
を
憐
(
あはれ
)
みなさるから
里人
(
さとびと
)
の
人望
(
うけ
)
はよし、
103
あんな
慈悲
(
じひ
)
深
(
ぶか
)
い
人
(
ひと
)
が、
104
なぜ
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
離島
(
はなれじま
)
へ
行
(
い
)
つて
苦労
(
くらう
)
をなさつたかと
思
(
おも
)
へば、
105
神
(
かみ
)
も
仏
(
ほとけ
)
も
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
かと
思
(
おも
)
ふは。
106
併
(
しか
)
しまアまア
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さつて
奥様
(
おくさま
)
は
云
(
い
)
ふに
及
(
およ
)
ばず、
107
スマの
里人
(
さとびと
)
がどれ
丈
(
だ
)
け
喜
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
か
知
(
し
)
れないのう。
108
何
(
なん
)
ぢや
門
(
もん
)
の
方
(
はう
)
が
大変
(
たいへん
)
賑
(
にぎや
)
かうなつて
来
(
き
)
た。
109
一
(
ひと
)
つ
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ようか』
110
と
表口
(
おもてぐち
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
た。
111
見
(
み
)
ればテクは
大柄杓
(
おほびしやく
)
を
肩
(
かた
)
にかつぎ
乍
(
なが
)
ら
大勢
(
おほぜい
)
の
中央
(
まんなか
)
に
立
(
た
)
つて、
112
自
(
みずか
)
ら
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
113
大勢
(
おほぜい
)
は
囃
(
はや
)
し
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
る。
114
テク『エーーーさても
目出
(
めで
)
たや
115
此方
(
こなた
)
の
館
(
やかた
)
、ヨイヨイ
116
三年振
(
さんねんぶり
)
に
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
が
117
目出度
(
めでたく
)
お
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
118
第一
(
だいいち
)
奥
(
おく
)
さまのお
喜
(
よろこ
)
び
119
其
(
その
)
次
(
つぎ
)
坊
(
ぼつ
)
ちやま
番頭
(
ばんとう
)
さま
120
アキス、カールを
初
(
はじ
)
めとし
121
ヨイヨイ
122
イヅミの
国
(
くに
)
のスマの
里
(
さと
)
123
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
がより
集
(
つど
)
ひ
124
二十
(
にじつ
)
戸前
(
とまへ
)
の
酒倉
(
さかぐら
)
を
125
ヨイヨイ
126
開放
(
かいはう
)
遊
(
あそ
)
ばし
皆
(
みな
)
さまに
127
呑
(
の
)
んで
呉
(
く
)
れよと
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
した
128
その
肝玉
(
きもだま
)
の
太
(
ふと
)
い
事
(
こと
)
129
ヨイヨイ
130
此
(
この
)
テクさまは
今日
(
けふ
)
よりは
131
バーチル
館
(
やかた
)
の
番頭
(
ばんとう
)
さま
132
バラモン
教
(
けう
)
のスパイをば
133
さつぱりこんと
辞職
(
じしよく
)
して
134
お
酒
(
さけ
)
の
倉
(
くら
)
の
監督
(
かんとく
)
だ
135
皆
(
みな
)
さま
勇
(
いさ
)
んで
下
(
くだ
)
さんせ
136
ヨイヨイ
137
これからテクが
居
(
を
)
る
上
(
うへ
)
は
138
これの
館
(
やかた
)
の
米
(
こめ
)
麦
(
むぎ
)
や
139
お
酒
(
さけ
)
をどつさり
皆
(
みな
)
さまに
140
望
(
のぞ
)
み
通
(
どほ
)
りに
与
(
あた
)
へませう
141
なに
程
(
ほど
)
宝
(
たから
)
があつたとて
142
命
(
いのち
)
がなければ
仕様
(
しやう
)
がない
143
ヨイヨイ
144
死
(
し
)
んだと
思
(
おも
)
ふた
主
(
あるじ
)
さま
145
目出度
(
めでたく
)
家
(
いへ
)
に
帰
(
かへ
)
られて
146
祝
(
いはひ
)
の
印
(
しるし
)
に
皆
(
みな
)
さまに
147
お
酒
(
さけ
)
を
振舞
(
ふるまひ
)
なさるのだ
148
固
(
かた
)
く
結
(
むす
)
んだ
握
(
にぎ
)
り
飯
(
めし
)
149
お
腹
(
なか
)
が
膨
(
ふく
)
れて
瓢箪
(
へうたん
)
に
150
なる
所
(
とこ
)
までも
食
(
く
)
はしやんせ
151
ヨイヨイ
152
ほんに
目出度
(
めでた
)
いお
目出度
(
めでた
)
い
153
天王
(
てんわう
)
の
森
(
もり
)
の
神
(
かみ
)
さまが
154
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
を
遊
(
あそ
)
ばし
御
(
お
)
夫婦
(
ふたり
)
を
155
目出度
(
めでたく
)
茲
(
ここ
)
に
顔
(
かほ
)
合
(
あは
)
せ
156
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
をドツサリと
157
流
(
なが
)
させ
給
(
たま
)
ふた
有難
(
ありがた
)
さ
158
ヨイヨイ
159
其
(
その
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
にて
160
生
(
うま
)
れて
此方
(
このかた
)
一度
(
ひとたび
)
も
161
味
(
あぢ
)
はふた
事
(
こと
)
のない
甘酒
(
うまざけ
)
を
162
鱈腹
(
たらふく
)
呑
(
の
)
んで
勇
(
いさ
)
ましく
163
舞
(
ま
)
へよ
狂
(
くる
)
へよ
踊
(
をど
)
れよと
164
神
(
かみ
)
直々
(
ぢきぢき
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
165
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
あろか
166
ヨイヨイ
167
アキスやカールの
番頭
(
ばんとう
)
さま
168
元来
(
ぐわんらい
)
肝玉
(
きもだま
)
小
(
ちひ
)
さくて
169
是程
(
これほど
)
沢山
(
たくさん
)
ある
酒
(
さけ
)
を
170
番頭
(
ばんとう
)
の
職
(
しよく
)
にありながら
171
己
(
おのれ
)
も
飲
(
の
)
まず
人
(
ひと
)
さまに
172
振舞
(
ふるま
)
ひもせず
捨
(
す
)
て
置
(
お
)
いた
173
冥加
(
みやうが
)
知
(
し
)
らずの
罰当
(
ばちあた
)
り
174
ヨイヨイ
175
テクが
是
(
これ
)
から
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
176
一
(
いち
)
の
番頭
(
ばんとう
)
となるからは
177
ケチなやり
方
(
かた
)
致
(
いた
)
さない
178
村中
(
むらぢう
)
上下
(
うへした
)
隔
(
へだ
)
てなく
179
睦
(
むつ
)
び
親
(
した
)
しみ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
180
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
を
感謝
(
かんしや
)
して
181
お
神酒
(
みき
)
を
沢山
(
たくさん
)
頂
(
いただ
)
けよ
182
こんな
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
あろか
183
ヨイヨイ
184
猩々
(
しやうじやう
)
の
彦
(
ひこ
)
や
猩々姫
(
しやうじやうひめ
)
185
不思議
(
ふしぎ
)
の
縁
(
えん
)
で
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
186
お
夫婦
(
ふたり
)
様
(
さま
)
の
体
(
たい
)
を
借
(
か
)
り
187
これの
館
(
やかた
)
のお
夫婦
(
ふたり
)
は
188
足
(
あし
)
が
二
(
ふた
)
つに
手
(
て
)
が
六
(
む
)
ツつ
189
夫婦
(
ふうふ
)
合
(
あは
)
して
四
(
よ
)
つの
足
(
あし
)
190
十二
(
じふに
)
のお
手々
(
てて
)
を
打
(
う
)
ち
鳴
(
な
)
らし
191
アヅモス
山
(
さん
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
192
御前
(
みまへ
)
に
感謝
(
かんしや
)
の
太祝詞
(
ふとのりと
)
193
宣
(
の
)
らせたまへる
崇高
(
けだか
)
さよ
194
ヨイヨイ
195
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
196
目
(
め
)
の
玉国別
(
たまくにわけ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
197
心
(
こころ
)
まつ
黒
(
くろ
)
真純彦
(
ますみひこ
)
198
頭
(
あたま
)
たたかれ
伊太彦
(
いたひこ
)
や
199
お
酒
(
さけ
)
は
樽
(
たる
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
の
200
綺麗
(
きれい
)
なお
嬶
(
かか
)
のデビス
姫
(
ひめ
)
201
デビスかエビスか
知
(
し
)
らねども
202
大黒
(
だいこく
)
さまの
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
203
降
(
くだ
)
つて
湧
(
わ
)
いたる
此
(
この
)
家
(
いへ
)
と
204
酒
(
さけ
)
のイヅミの
国人
(
くにびと
)
は
205
嘸
(
さぞ
)
や
喜
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
だらう
206
皆
(
みな
)
さま
揃
(
そろ
)
ふて
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
てよ
207
ヨイヨイ
208
酔
(
よひ
)
が
廻
(
まは
)
つたテクさまは
209
息
(
いき
)
が
苦
(
くる
)
しうなつて
来
(
き
)
た
210
皆
(
みな
)
さまこれから
隠
(
かく
)
し
芸
(
げい
)
を
211
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して
212
今日
(
けふ
)
の
目出度
(
めでた
)
いお
祝
(
いはひ
)
に
213
花
(
はな
)
を
咲
(
さ
)
かして
下
(
くだ
)
されよ
214
ヨイヨイ』
215
と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
音頭
(
おんどう
)
を
取
(
と
)
り、
216
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
が
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
217
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へキヨの
港
(
みなと
)
の
関所
(
せきしよ
)
を
固
(
かた
)
めて
居
(
ゐ
)
るバラモン
軍
(
ぐん
)
のチルテルは
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ
馬
(
うま
)
に
跨
(
またが
)
り、
218
シトシトと
門内
(
もんない
)
さして
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
219
馬上
(
ばじやう
)
に
立
(
た
)
ちて
大音声
(
だいおんじやう
)
、
220
チルテル『ヤアヤア
某
(
それがし
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
関所
(
せきしよ
)
を
守
(
まも
)
る、
221
キャプテンのチルテルだ。
222
当館
(
たうやかた
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
223
玉国別
(
たまくにわけ
)
以下
(
いか
)
の
潜
(
ひそ
)
みゐると、
224
スパイの
注進
(
ちうしん
)
により
召捕
(
めしとり
)
に
向
(
むか
)
ふたり。
225
ヤアヤア
村人
(
むらびと
)
ども
宣伝使
(
せんでんし
)
の
所在
(
ありか
)
へ
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
せ』
226
と
呶鳴
(
どな
)
りつけて
居
(
ゐ
)
る。
227
これを
聞
(
き
)
くより、
228
柄杓
(
ひしやく
)
にテク、
229
アキス、
230
カールは
酒
(
さけ
)
をなみなみと
汲
(
く
)
みチルテルの
鼻先
(
はなさき
)
に
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
した。
231
チルテルは
酒
(
さけ
)
と
聞
(
き
)
くより
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
も
耐
(
たま
)
らず
馬
(
うま
)
をヒラリと
飛
(
と
)
び
降
(
お
)
り、
232
餓鬼
(
がき
)
が
水
(
みづ
)
を
呑
(
の
)
むやうな
勢
(
いきほひ
)
で、
233
ガブリガブリと
呑
(
の
)
み
初
(
はじ
)
めた。
234
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
れる
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
も
群衆
(
ぐんしう
)
に
交
(
まじ
)
つて、
235
吾
(
われ
)
劣
(
おと
)
らずガブ
飲
(
の
)
みを
初
(
はじ
)
め、
236
肝腎
(
かんじん
)
の
使命
(
しめい
)
を
忘
(
わす
)
れ、
237
各
(
おのおの
)
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をして、
238
尻
(
しり
)
ふりながら、
239
ステテコ
踊
(
をどり
)
を
夢中
(
むちう
)
になつてやつて
居
(
ゐ
)
る。
240
中空
(
ちうくう
)
には
迦陵
(
かりよう
)
頻伽
(
びんが
)
、
241
鳳凰
(
ほうわう
)
、
242
孔雀
(
くじやく
)
の
瑞鳥
(
ずゐてう
)
、
243
翼
(
つばさ
)
寛
(
ゆた
)
かに
舞
(
ま
)
ひ
狂
(
くる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
244
ああ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
245
(
大正一二・三・三〇
旧二・一四
於皆生温泉浜屋
加藤明子
録)
246
(昭和一〇・六・一五 王仁校正)
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