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第58巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 玉石混淆
01 神風
〔1476〕
02 多数尻
〔1477〕
03 怪散
〔1478〕
04 銅盥
〔1479〕
05 潔別
〔1480〕
第2篇 湖上神通
06 茶袋
〔1481〕
07 神船
〔1482〕
08 孤島
〔1483〕
09 湖月
〔1484〕
第3篇 千波万波
10 報恩
〔1485〕
11 欵乃
〔1486〕
12 素破抜
〔1487〕
13 兎耳
〔1488〕
14 猩々島
〔1489〕
15 哀別
〔1490〕
16 聖歌
〔1491〕
17 怪物
〔1492〕
18 船待
〔1493〕
第4篇 猩々潔白
19 舞踏
〔1494〕
20 酒談
〔1495〕
21 館帰
〔1496〕
22 獣婚
〔1497〕
23 昼餐
〔1498〕
24 礼祭
〔1499〕
25 万歳楽
〔1500〕
余白歌
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第一八章
船待
(
ふなまち
)
〔一四九三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻
篇:
第3篇 千波万波
よみ(新仮名遣い):
せんぱばんぱ
章:
第18章 船待
よみ(新仮名遣い):
ふなまち
通し章番号:
1493
口述日:
1923(大正12)年03月29日(旧02月13日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
スマの浜辺では、バーチル家の僕アキスとカールが水平線を眺めていた。バーチル家では、主人のバーチルと僕のアンチーが漁に出たまま三年も帰らないため、二人を死んだものとして葬儀を出していた。
しかし女主人のサーベルが三日前から突然、旦那のバーチルが帰ってくるから浜に迎えに行けと僕たちに命令し始めた。二人は命令にしたがって浜に来ているが、合点がゆかず、サーベルの命令への文句やバーチル家の行く末についてあれこれ話している。
そこへ酒に酔ったテクという男がやってきてアキスとカールに絡み始めた。テクはバラモン軍から金をもらって目付をやっている男であった。テクは二人をひとしきり言い争いをした後、ひょろひょろと千鳥足で港方面を指して去って行った。
アキスとカールはその様子を見て笑い歌っている。するとはるか向こうの水面に船の白帆が見えだした。二人は半信半疑で近づく船を眺めて待ちあぐんでいる。
白帆の形は次第に大きくなり、へさきに立っている人の影も見えるくらいに近づいてきた。二人は何とはなしに心勇み磯端に飛び回っている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5818
愛善世界社版:
218頁
八幡書店版:
第10輯 448頁
修補版:
校定版:
231頁
普及版:
87頁
初版:
ページ備考:
001
スマの
浜辺
(
はまべ
)
の
青芝草
(
あをしばぐさ
)
の
上
(
うへ
)
に
胡床
(
あぐら
)
をかき、
002
湖水
(
こすい
)
の
波
(
なみ
)
を
眺
(
なが
)
めて
欠伸
(
あくび
)
をきざみ
乍
(
なが
)
ら
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
があつた。
003
此
(
この
)
二人
(
ふたり
)
はバーチルが
家
(
いへ
)
の
僕
(
しもべ
)
アキス、
004
カールであつた。
005
アキス『おい、
006
カール、
007
昨日
(
きのふ
)
から
今日
(
けふ
)
で
三日
(
みつか
)
が
間
(
あひだ
)
、
008
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
案山子
(
かがし
)
か
何
(
なに
)
かの
様
(
やう
)
に
湖
(
みづうみ
)
の
面
(
つら
)
ばつかり
眺
(
なが
)
めて
頬辺
(
ほほべた
)
を
蟆子
(
ぶと
)
に
咬
(
か
)
まれ、
009
待
(
ま
)
つてるのも
宜
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
のものぢやないか。
010
まるで
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
だな、
011
俺
(
おれ
)
ヤもう
斯
(
こ
)
んな
事
(
こた
)
ア
嫌
(
いや
)
になつた。
012
さつぱりアキスだよ』
013
カール『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
が
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
行衛
(
ゆくゑ
)
が
分
(
わか
)
らず、
014
何時
(
いつ
)
カールか、
015
帰
(
かへ
)
らぬか
分
(
わか
)
らないのだからな。
016
奥
(
おく
)
さまがあつても
主人
(
あるじ
)
が
居
(
を
)
らなけりや
矢張
(
やつぱり
)
アキス
見
(
み
)
たやうなものだ。
017
然
(
しか
)
しまあアキス
狙
(
ねら
)
ひが
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ぬので、
018
まア
結構
(
けつこう
)
だ。
019
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
奥
(
おく
)
さまは
神経
(
しんけい
)
興奮
(
こうふん
)
して
主人
(
あるじ
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るから、
020
迎
(
むか
)
へに
行
(
ゆ
)
け
迎
(
むか
)
へに
行
(
ゆ
)
けと
尻
(
しり
)
に
火
(
ひ
)
がついた
様
(
やう
)
に
仰有
(
おつしや
)
るものだから、
021
かう
来
(
き
)
たものの、
022
奥
(
おく
)
さまは
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
たのだらうかのう。
023
本当
(
ほんたう
)
に
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
仲
(
なか
)
の
良
(
よ
)
いものだつたが、
024
ああ
鰥鳥
(
やもめどり
)
となると
何
(
なん
)
とはなしに
淋
(
さび
)
しうなつて
来
(
き
)
てチツとは
気
(
き
)
も
変
(
へん
)
になつて
来
(
こ
)
やうかい。
025
奥
(
おく
)
さまは
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
漁
(
れふ
)
に
行
(
い
)
つたきり、
026
番頭
(
ばんとう
)
のアンチーを
連
(
つ
)
れて、
027
十日
(
とをか
)
経
(
た
)
つても
二十日
(
はつか
)
経
(
た
)
つても
姿
(
すがた
)
をお
見
(
み
)
せ
遊
(
あそ
)
ばさないので、
028
到頭
(
たうとう
)
出
(
で
)
られた
日
(
ひ
)
を
命日
(
めいにち
)
として
鄭重
(
ていちよう
)
な
葬式
(
さうしき
)
を
遊
(
あそ
)
ばし、
029
石塔
(
せきたふ
)
までお
拵
(
こしら
)
へになつた
位
(
くらゐ
)
だから、
030
もう
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
帰
(
かへ
)
らぬと
諦
(
あきら
)
めて
居
(
を
)
られると
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つたのに、
031
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
何
(
なに
)
かイソイソとして
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ると
仰有
(
おつしや
)
るが
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つて
了
(
しま
)
ふわ』
032
アキス『それでも
今年
(
ことし
)
で
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
にもなるのに
後添
(
のちぞ
)
ひも
入
(
い
)
れず
神妙
(
しんめう
)
に
貞淑
(
ていしゆく
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
なさる
所
(
ところ
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
見上
(
みあ
)
げたものだよ。
033
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもスマきつての
財産家
(
ざいさんか
)
だから
種々
(
いろいろ
)
の
男
(
をとこ
)
が
色
(
いろ
)
と
欲
(
よく
)
とで
言
(
い
)
ひ
寄
(
よ
)
り、
034
初
(
はじ
)
めの
間
(
うち
)
は
淋
(
さび
)
しからうとか、
035
留守
(
るす
)
見舞
(
みまひ
)
だとか
云
(
い
)
つて
出入
(
でい
)
りする
罪
(
つみ
)
深
(
ふか
)
い
奴
(
やつ
)
が
沢山
(
たくさん
)
あつたが、
036
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
皆
(
みな
)
エッパッパを
喰
(
く
)
はされて、
037
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
だと
諦
(
あきら
)
めて
性悪
(
しやうわる
)
男
(
をとこ
)
の
影
(
かげ
)
も
見
(
み
)
ない
様
(
やう
)
になつたのは、
038
まだしもの
幸
(
さいはひ
)
だ。
039
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
大変
(
たいへん
)
な
神経質
(
しんけいしつ
)
ぢやないか。
040
あの
一年祭
(
いちねんさい
)
の
法事
(
はふじ
)
を
勤
(
つと
)
められた
時
(
とき
)
、
041
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
石碑
(
せきひ
)
の
前
(
まへ
)
で
祭典
(
さいてん
)
を
行
(
おこな
)
ひ、
042
奥様
(
おくさま
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
泣声
(
なきごゑ
)
を
出
(
だ
)
して
口説
(
くど
)
いて
厶
(
ござ
)
つた
時
(
とき
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
側
(
そば
)
に
居
(
ゐ
)
る
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
も
涙
(
なみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れたよ。
043
夫婦
(
ふうふ
)
の
情
(
じやう
)
と
云
(
い
)
ふものは
斯
(
こ
)
んなものかと
感心
(
かんしん
)
したよ。
044
本当
(
ほんたう
)
に
貞淑
(
ていしゆく
)
な
女
(
をんな
)
だなア』
045
カール『うん、
046
さうさう、
047
俺
(
おれ
)
もその
時
(
とき
)
には
本当
(
ほんたう
)
に
涙
(
なみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れたよ。
048
やがて
三年祭
(
さんねんさい
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るのだが、
049
あの
時
(
とき
)
の
様
(
やう
)
な
滑稽
(
こつけい
)
は
今度
(
こんど
)
はあるまいね。
050
奥様
(
おくさま
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
石塔
(
せきたふ
)
に
向
(
むか
)
つて
仰有
(
おつしや
)
るのには、
051
「もし、
052
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
053
貴方
(
あなた
)
は
可愛
(
かあい
)
い
妻子
(
つまこ
)
を
振
(
ふ
)
り
棄
(
す
)
てて
私
(
わたし
)
がお
諫
(
いさ
)
め
申
(
まを
)
すのもお
聞
(
き
)
き
遊
(
あそ
)
ばさず、
054
番頭
(
ばんとう
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
性凝
(
しやうこ
)
りもなく
殺生
(
せつしやう
)
をしておいで
遊
(
あそ
)
ばした。
055
その
天罰
(
てんばつ
)
と
申
(
まを
)
しますか、
056
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
すか
知
(
し
)
りませぬが
到頭
(
たうとう
)
貴方
(
あなた
)
は
魚
(
さかな
)
の
為
(
ため
)
に
尊
(
たふと
)
い
命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
られたぢやありませぬか。
057
もし
貴方
(
あなた
)
に
霊
(
れい
)
があるのなれば
何
(
なん
)
とか
証
(
しるし
)
を
見
(
み
)
せて
下
(
くだ
)
さい」とそれはそれは
人目
(
ひとめ
)
も
憚
(
はばか
)
らずお
泣
(
な
)
き
遊
(
あそ
)
ばした
時
(
とき
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
側
(
そば
)
に
居
(
ゐ
)
るのも
苦
(
くる
)
しい
様
(
やう
)
だつた。
058
そした
所
(
ところ
)
、
059
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
石塔
(
せきたふ
)
がガタガタと
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
した。
060
俺
(
おれ
)
は
吃驚
(
びつくり
)
して
魂
(
たましひ
)
が
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
ぶ
様
(
やう
)
になつて
居
(
ゐ
)
た。
061
それでも
奥様
(
おくさま
)
は
泰然
(
たいぜん
)
自若
(
じじやく
)
たるもので、
062
「
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
063
貴方
(
あなた
)
は
石塔
(
せきたふ
)
になつてからも
私
(
わたし
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ふて
下
(
くだ
)
さいますと
見
(
み
)
えまして、
064
只今
(
ただいま
)
石塔
(
せきたふ
)
がお
動
(
うご
)
き
遊
(
あそ
)
ばしたのは、
065
全
(
まつた
)
く
性念
(
しやうねん
)
がお
在
(
あ
)
りになるので
厶
(
ござ
)
いませう。
066
何卒
(
どうぞ
)
一言
(
ひとこと
)
女房
(
にようばう
)
と
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
067
お
願
(
ねが
)
ひで
厶
(
ござ
)
います」と
泣
(
な
)
いて
口説
(
くど
)
かれた
時
(
とき
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
堪
(
たま
)
らなかつたぢやないか。
068
後
(
あと
)
から
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
れば
石塔
(
せきたふ
)
が
動
(
うご
)
いたのは
丁度
(
ちやうど
)
その
時
(
とき
)
、
069
地震
(
ぢしん
)
があつたのだ。
070
あの
時
(
とき
)
、
071
ケルの
家
(
いへ
)
もタク
公
(
こう
)
の
家
(
いへ
)
もメチヤメチヤに
壊
(
こは
)
されて
了
(
しま
)
つたぢやないか。
072
その
時
(
とき
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
石塔
(
せきたふ
)
が
動
(
うご
)
いたのかと
思
(
おも
)
つて、
073
どれ
丈
(
だ
)
け
俺
(
おれ
)
は
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
したか
分
(
わか
)
らなかつたよ。
074
後
(
あと
)
で
思
(
おも
)
つて
見
(
み
)
れば
実
(
じつ
)
に
滑稽
(
こつけい
)
だつたな』
075
アキス『うん、
076
そんな
事
(
こと
)
があつたね。
077
然
(
しか
)
し
余
(
あんま
)
り
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で、
078
地震
(
ぢしん
)
で
動
(
うご
)
いたのだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
079
奥様
(
おくさま
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
矢張
(
やつぱ
)
り
石塔
(
せきたふ
)
が
奥様
(
おくさま
)
の
誠
(
まこと
)
に
感
(
かん
)
じて
動
(
うご
)
いたのだと
信
(
しん
)
じて
厶
(
ござ
)
るのだから、
080
本当
(
ほんたう
)
にお
憐
(
いとし
)
いものだ。
081
然
(
しか
)
しどうだらうな、
082
本当
(
ほんたう
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
がお
帰
(
かへ
)
りになるのだらうか。
083
昨日
(
きのふ
)
の
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れ
頃
(
ごろ
)
に
海賊船
(
かいぞくせん
)
が
七八艘
(
しちはつそう
)
、
084
向
(
むか
)
ふの
方
(
はう
)
を
通
(
とほ
)
りキヨの
港
(
みなと
)
に
行
(
い
)
つたきり、
085
漁船
(
ぎよせん
)
も
通
(
とほ
)
らねば
船
(
ふね
)
らしいものは、
086
此方
(
こちら
)
に
来
(
こ
)
ないぢやないか。
087
奥様
(
おくさま
)
の
話
(
はなし
)
によれば
立派
(
りつぱ
)
な
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つて
沢山
(
たくさん
)
の
人
(
ひと
)
に
送
(
おく
)
られて
帰
(
かへ
)
つて
厶
(
ござ
)
ると
仰有
(
おつしや
)
るが、
088
まるで
雲
(
くも
)
を
掴
(
つか
)
む
様
(
やう
)
な
話
(
はなし
)
ぢやないか。
089
この
炎天
(
えんてん
)
に
頭
(
あたま
)
を
曝
(
さら
)
されてはやりきれないわ。
090
木
(
き
)
の
蔭
(
かげ
)
でもあれば
辛抱
(
しんばう
)
が
出来
(
でき
)
るのだが、
091
見渡
(
みわた
)
す
限
(
かぎ
)
り
木
(
き
)
一本
(
いつぽん
)
もない
此
(
この
)
浜辺
(
はまべ
)
に
居
(
ゐ
)
るのは、
092
もうアキスだ。
093
何処
(
どこ
)
か
友達
(
ともだち
)
の
処
(
ところ
)
にでも
行
(
い
)
つて
悠
(
ゆつ
)
くり
休息
(
きうそく
)
して
帰
(
かへ
)
らうぢやないか』
094
カール『それだと
云
(
い
)
つて、
095
もしや、
096
ひよつと
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
帰
(
かへ
)
られたなら、
097
それこそ
大変
(
たいへん
)
なお
目玉
(
めだま
)
を
喰
(
くら
)
はねばならぬよ。
098
あれ
丈
(
だ
)
け
奥様
(
おくさま
)
が
喧
(
やかま
)
しく
狂人
(
きちがひ
)
の
様
(
やう
)
に
仰有
(
おつしや
)
るのだから
間違
(
まちがひ
)
なからうと
思
(
おも
)
ふよ』
099
『
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか
帰
(
かへ
)
つて
厶
(
ござ
)
る
様
(
やう
)
な
気持
(
きもち
)
もするなり、
100
帰
(
かへ
)
られぬ
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
もするなり、
101
変
(
へん
)
な
気
(
き
)
になつて
来
(
き
)
た。
102
もしや
気
(
き
)
が
違
(
ちが
)
ふのぢやあるまいかな。
103
余
(
あんま
)
り
炎天
(
えんてん
)
に
照
(
て
)
らされたので
頭
(
あたま
)
がカンカンする
様
(
やう
)
になつたのだから
可怪
(
をか
)
しいものだぞ』
104
斯
(
かか
)
る
所
(
ところ
)
へ
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
、
105
ヒヨロリ ヒヨロリと
千鳥足
(
ちどりあし
)
に
真赤
(
まつか
)
な
顔
(
かほ
)
し
乍
(
なが
)
ら
歩
(
あゆ
)
み
来
(
きた
)
り、
106
男
(
をとこ
)
『エ、
107
ベランメー、
108
貴様
(
きさま
)
は
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
此
(
この
)
暑
(
あつ
)
いのに、
109
斯
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
に
屁太
(
へた
)
りやがつて、
110
何
(
なに
)
をしてけつかるのだ。
111
何程
(
なにほど
)
湖水
(
こすい
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
を
)
つても、
112
滅多
(
めつた
)
に
魚
(
さかな
)
はお
前
(
まへ
)
の
前
(
まへ
)
へ
跳
(
と
)
んで
来
(
く
)
る
気遣
(
きづか
)
ひは
無
(
な
)
いぞ。
113
空
(
そら
)
飛
(
た
)
つ
鳥
(
とり
)
がお
前
(
まへ
)
の
前
(
まへ
)
へパタリと
落
(
お
)
ちて
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
もなからう。
114
何
(
なん
)
だ、
115
用
(
よう
)
もないのに
荒男
(
あらをとこ
)
が
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
欠伸
(
あくび
)
ばつかりしやがつて
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
野郎
(
やらう
)
だな。
116
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はチツと
逆上
(
のぼ
)
せて
居
(
ゐ
)
やがるのだな。
117
お
前
(
まへ
)
の
宅
(
うち
)
の
女主人
(
をんなしゆじん
)
が
変
(
へん
)
な
事
(
こと
)
を
口走
(
くちばし
)
るものだから、
118
狂人
(
きちがひ
)
が
伝染
(
でんせん
)
しよつて、
119
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
斯
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
に
烏
(
からす
)
の
嚇
(
おど
)
しの
様
(
やう
)
に
来
(
き
)
やがつて、
120
何
(
なん
)
だ。
121
措
(
お
)
け
措
(
お
)
け、
122
それよりも
俺
(
おれ
)
の
所
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
酒
(
さけ
)
の
一杯
(
いつぱい
)
も
飲
(
の
)
んだ
方
(
ほう
)
が
面白
(
おもしろ
)
いぞ。
123
此
(
この
)
テクさまは
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
124
バラモンさまから
結構
(
けつこう
)
な
御
(
お
)
手当
(
てあて
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
して
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
や
信者
(
しんじや
)
を
探
(
さが
)
し
廻
(
まは
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
125
何
(
なん
)
でも
今日
(
けふ
)
明日
(
あす
)
の
中
(
うち
)
にキヨの
港
(
みなと
)
へ
着
(
つ
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
126
其奴
(
そいつ
)
でも
取
(
と
)
ツ
捉
(
つか
)
まへて
見
(
み
)
よ。
127
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
を
頂
(
いただ
)
いて、
128
甘
(
うめ
)
え
酒
(
さけ
)
が
鱈腹
(
たらふく
)
飲
(
の
)
めるのだ。
129
チツと
俺
(
おれ
)
の
宅
(
うち
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
酸
(
す
)
ツぱい
酒
(
さけ
)
の
一杯
(
いつぱい
)
もやつて
一働
(
ひとはたら
)
きする
気
(
き
)
はないか。
130
こんな
所
(
ところ
)
へ
屁太張
(
へたば
)
つて
居
(
ゐ
)
ても
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かねーや』
131
アキス『おい、
132
テク、
133
貴様
(
きさま
)
は
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
つ
払
(
ぱら
)
つて、
134
どうして
其
(
その
)
金
(
かね
)
が
出来
(
でき
)
るかと
思
(
おも
)
つたらバラモンのスパイをやつてるのだな。
135
それではスパイ
酒
(
ざけ
)
でも
飲
(
の
)
める
筈
(
はず
)
だ。
136
然
(
しか
)
し
人間
(
にんげん
)
と
生
(
うま
)
れて
犬
(
いぬ
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
はせぬものだな』
137
テク『
何
(
なに
)
、
138
犬
(
いぬ
)
とは
何
(
なん
)
だ。
139
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
140
そんな
事
(
こと
)
申
(
まを
)
すと、
141
貴様
(
きさま
)
を
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
と
申
(
まを
)
し
立
(
た
)
て、
142
関所
(
せきしよ
)
へ「
恐
(
おそ
)
れながら……」と
密告
(
みつこく
)
するが
如何
(
どう
)
だ』
143
アキス『ヘン、
144
そんな
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
を
喰
(
く
)
う
様
(
やう
)
な
俺
(
おれ
)
かい。
145
俺
(
おれ
)
の
主人
(
しゆじん
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
信者
(
しんじや
)
だ。
146
そこの
宅
(
うち
)
に
奉公
(
ほうこう
)
してる
俺
(
おれ
)
だぞ。
147
いつもバラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
何
(
なん
)
だか
難
(
むつ
)
かしいお
教
(
きやう
)
を
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
霊前
(
れいぜん
)
に
唱
(
とな
)
へに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さる
位
(
くらゐ
)
だから、
148
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つたつて、
149
お
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げになるものかい』
150
テク『やア、
151
そいつア
失敗
(
しま
)
つた。
152
それぢや
物
(
もの
)
にならぬわ。
153
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴様
(
きさま
)
に
云
(
い
)
つて
置
(
お
)
くが、
154
ひよつとしたら
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
き
廻
(
まは
)
しで
此
(
この
)
磯端
(
いそばた
)
へ
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
が
漂着
(
へうちやく
)
するかも
知
(
し
)
れぬから、
155
その
時
(
とき
)
俺
(
おれ
)
の
所
(
ところ
)
へソツと
知
(
し
)
らせに
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ。
156
さうすりや
沢山
(
たくさん
)
の
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
を
戴
(
いただ
)
いて、
157
うまい
酒
(
さけ
)
を
鱈腹
(
たらふく
)
飲
(
の
)
まうと
儘
(
まま
)
だからなア』
158
アキス『
俺
(
おれ
)
は
酒
(
さけ
)
は
嫌
(
きら
)
ひだ。
159
もとより
下戸
(
げこ
)
だからのう。
160
そんな
人
(
ひと
)
の
嫌
(
いや
)
がる
事
(
こと
)
をして
金
(
かね
)
を
貰
(
もら
)
ひ、
161
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだ
所
(
ところ
)
が
腸
(
はらわた
)
を
腐
(
くさ
)
らす
許
(
ばか
)
りで、
162
何
(
なん
)
の
得
(
う
)
る
所
(
ところ
)
もないから、
163
まア
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
つとこかい』
164
テク『ヘン
措
(
お
)
きやがれ。
165
唐変木
(
たうへんぼく
)
奴
(
め
)
、
166
酒
(
さけ
)
の
趣味
(
しゆみ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
数
(
かず
)
の
子
(
こ
)
舌
(
した
)
では
話
(
はなし
)
がないわい。
167
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
168
これから
一
(
ひと
)
つ
浜辺
(
はまべ
)
を
迂路
(
うろ
)
ついてよい
鳥
(
とり
)
を
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
して
酒銭
(
さかて
)
を
拵
(
こしら
)
へよう。
169
まア
貴様
(
きさま
)
等
(
たち
)
は
其処
(
そこ
)
で
悠
(
ゆつ
)
くり
酒甕
(
さけがめ
)
の
背
(
せな
)
を
干
(
ほ
)
して
居
(
ゐ
)
るが
宜
(
よ
)
からうぞ』
170
カール『
構
(
かま
)
ふて
呉
(
く
)
れない。
171
お
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しけりや
奥
(
おく
)
さまに
何程
(
なんぼ
)
でも
俺
(
おれ
)
は
頂戴
(
ちやうだい
)
するのだ。
172
チツと
貴様
(
きさま
)
とは
境遇
(
きやうぐう
)
が
違
(
ちが
)
ふのだからな』
173
テク『ナナナナ
何
(
なん
)
だ。
174
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
を
借
(
か
)
る
古狐
(
ふるぎつね
)
奴
(
め
)
、
175
主人
(
しゆじん
)
が
何程
(
なんぼ
)
金持
(
かねもち
)
だつて、
176
それが
何
(
なん
)
になる。
177
貴様
(
きさま
)
はド
甲斐性
(
がひしやう
)
の
無
(
な
)
い、
178
「ヘーヘー、
179
ハイハイ」と
首陀
(
しゆだ
)
の
家
(
いへ
)
に、
180
こき
使
(
つか
)
はれ
五斗米
(
ごとべい
)
に
腰
(
こし
)
を
屈
(
くつ
)
する
卑劣
(
ひれつ
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
181
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
独立
(
どくりつ
)
独歩
(
どくぽ
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
で
十日
(
とをか
)
に
十人口
(
じふにんぐち
)
だ。
182
こんな
大家族
(
だいかぞく
)
を
支
(
ささ
)
へて
行
(
ゆ
)
く
丈
(
だ
)
けの
腕前
(
うでまへ
)
があるのだからな。
183
ヘン、
184
チツと
身魂
(
みたま
)
の
製造
(
せいざう
)
が
違
(
ちが
)
ふのだから、
185
余
(
あんま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
にして
貰
(
もら
)
ふまいかい』
186
アキス『アハハハハ、
187
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
をし
乍
(
なが
)
ら
十人口
(
じふにんぐち
)
の
大家族
(
だいかぞく
)
だなんて、
188
何
(
なに
)
、
189
馬鹿
(
ばか
)
吐
(
こ
)
きやがるのだ。
190
俺
(
おれ
)
だつて
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
に
百人口
(
ひやくにんぐち
)
だ。
191
十人口
(
じふにんぐち
)
の
家族
(
かぞく
)
よりも
百人口
(
ひやくにんぐち
)
の
家族
(
かぞく
)
の
方
(
はう
)
が
余程
(
よつぽど
)
世帯
(
しよたい
)
が
大
(
おほ
)
きいぞ。
192
よい
加減
(
かげん
)
に
酒喰
(
さけくら
)
ひは、
193
ここを
立去
(
たちさ
)
つて
呉
(
く
)
れ。
194
熟柿
(
じゆくし
)
臭
(
くさ
)
くて
鼻
(
はな
)
が
曲
(
まが
)
りさうだ、
195
八百屋
(
やほや
)
店
(
みせ
)
でも
広
(
ひろ
)
げられ
様
(
やう
)
ものなら
堪
(
こば
)
りきれないからのう』
196
テク『エー、
197
こんな
没分暁漢
(
わからずや
)
に
係
(
かか
)
り
合
(
あ
)
つて
居
(
を
)
つても
鐚
(
びた
)
一文
(
いちもん
)
にもならないわ。
198
此
(
この
)
テクさまも
一
(
ひと
)
つテクテクと
其処辺
(
そこら
)
中
(
ぢう
)
をテクツて
見
(
み
)
て、
199
犬
(
いぬ
)
ぢやないが
棒
(
ぼう
)
に
当
(
あた
)
つて
見
(
み
)
ようかい。
200
酒
(
さけ
)
も
酒
(
さけ
)
も
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
だなア』
201
と
悪垂
(
あくた
)
れ
口
(
ぐち
)
を
吐
(
つ
)
き
乍
(
なが
)
らヒヨロリ ヒヨロリ
浜辺
(
はまべ
)
伝
(
づた
)
ひにキヨの
港
(
みなと
)
方面
(
はうめん
)
さして
足許
(
あしもと
)
危
(
あやふ
)
く
歩
(
あゆ
)
み
行
(
ゆ
)
く。
202
アキス、
203
カールの
両人
(
りやうにん
)
はテクの
後姿
(
うしろすがた
)
を
見送
(
みおく
)
つて、
204
時
(
とき
)
にとつての
慰
(
なぐさ
)
みと
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
笑
(
わら
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
205
アキス『テクテクとテクの
棒
(
ぼう
)
奴
(
め
)
がやつて
来
(
き
)
て
206
グデングデンと
舌
(
した
)
を
捲
(
ま
)
きつつ。
207
千鳥足
(
ちどりあし
)
ヒヨロリヒヨロリと
浜伝
(
はまづた
)
ひ
208
酒
(
さけ
)
の
肴
(
さかな
)
を
漁
(
あさ
)
りつつ
行
(
ゆ
)
く』
209
カール『いつとてもテクの
棒
(
ぼう
)
奴
(
め
)
がスパイをば
210
勤
(
つと
)
めてスツパイ
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むなり。
211
バラモンの
俺
(
おれ
)
はスパイと
偉
(
えら
)
さうに
212
法螺
(
ほら
)
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らしスパイ
屁
(
へ
)
を
放
(
ひ
)
る』
213
アキス『
待
(
ま
)
ち
詫
(
わ
)
びし
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
は
帰
(
かへ
)
りまさず
214
家
(
いへ
)
に
帰
(
かへ
)
りて
如何
(
いか
)
に
答
(
こた
)
へむ。
215
あてもなき
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
を
待
(
ま
)
ち
詫
(
わび
)
て
216
暑
(
あつ
)
さに
悩
(
なや
)
む
吾
(
われ
)
ぞ
果敢
(
はか
)
なき』
217
カール『どうしても
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
が
帰
(
かへ
)
りますと
218
云
(
い
)
ひきり
玉
(
たま
)
ふ
奥様
(
おくさま
)
の
口
(
くち
)
。
219
口
(
くち
)
ばかり
帰
(
かへ
)
る
帰
(
かへ
)
ると
云
(
い
)
つたとて
220
向
(
むか
)
ふみずなる
湖
(
うみ
)
に
影
(
かげ
)
なし』
221
アキス『
今日
(
けふ
)
も
亦
(
また
)
空
(
むな
)
しく
待
(
ま
)
ちし
信天翁
(
あはうどり
)
222
羽
(
は
)
ばたきするも
心
(
こころ
)
曳
(
ひ
)
かるる。
223
鵜
(
う
)
の
様
(
やう
)
に
首
(
くび
)
を
傾
(
かた
)
げて
待
(
ま
)
つ
二人
(
ふたり
)
224
只
(
ただ
)
海風
(
うなかぜ
)
の
音
(
おと
)
のみぞ
聞
(
き
)
く』
225
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ふ
折
(
をり
)
しも
遥
(
はる
)
か
向
(
むか
)
ふの
水面
(
すいめん
)
に
霞
(
かすみ
)
の
間
(
あひだ
)
から
小
(
ちひ
)
さき
白帆
(
しらほ
)
が
浮
(
うか
)
んで
居
(
ゐ
)
るのが
目
(
め
)
についた。
226
アキスは
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
打喜
(
うちよろこ
)
び、
227
アキス『
有難
(
ありがた
)
し
向
(
むか
)
ふに
見
(
み
)
ゆる
白帆
(
しらほ
)
こそ
228
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
の
御船
(
みふね
)
なるらむ』
229
カール『
船
(
ふね
)
見
(
み
)
れば
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
と
思
(
おも
)
ひ
込
(
こ
)
む
230
その
喜
(
よろこ
)
びは
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
ぞや』
231
アキス『
今日
(
けふ
)
で
三日
(
みつか
)
船
(
ふね
)
の
姿
(
すがた
)
も
見
(
み
)
ざりけり
232
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
床
(
ゆか
)
しくぞ
思
(
おも
)
ふ』
233
カール『
頼
(
たの
)
みなき
船
(
ふね
)
を
眺
(
なが
)
めて
吾
(
わが
)
主人
(
あるじ
)
234
帰
(
かへ
)
りますぞと
思
(
おも
)
ふ
果敢
(
はか
)
なさ』
235
アキス『
何
(
なん
)
となく
心
(
こころ
)
の
勇
(
いさ
)
み
来
(
く
)
るを
見
(
み
)
れば
236
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
と
信
(
しん
)
ぜられける』
237
カール『あの
船
(
ふね
)
にもしも
主人
(
あるじ
)
の
在
(
ま
)
しまさば
238
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
疲
(
つか
)
れ
頓
(
とみ
)
に
癒
(
い
)
ゆべし。
239
さり
乍
(
なが
)
ら
竿
(
さを
)
にて
星
(
ほし
)
をがらつ
様
(
やう
)
な
240
果敢
(
はか
)
なき
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
る
人
(
ひと
)
ぞ
憐
(
あは
)
れ』
241
アキス『
何故
(
なにゆゑ
)
か
白帆
(
しらほ
)
の
影
(
かげ
)
は
懐
(
なつか
)
しく
242
思
(
おも
)
はれにけり
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて』
243
カール『
真帆
(
まほ
)
片帆
(
かたほ
)
揚
(
あ
)
げて
通
(
かよ
)
ふ
此
(
この
)
湖
(
うみ
)
は
244
量
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
魔
(
ま
)
の
湖
(
うみ
)
と
聞
(
き
)
く。
245
吾々
(
われわれ
)
が
迷
(
まよ
)
ふ
心
(
こころ
)
を
推
(
お
)
し
量
(
はか
)
り
246
醜
(
しこ
)
の
魔神
(
まがみ
)
の
図
(
はか
)
るなるらむ』
247
アキス『
待
(
ま
)
ち
詫
(
わ
)
びし
船
(
ふね
)
の
姿
(
すがた
)
を
眺
(
なが
)
むれば
248
半
(
なかば
)
心
(
こころ
)
は
安
(
やす
)
まりにける。
249
吾
(
わが
)
主人
(
あるじ
)
もしも
居
(
ゐ
)
まさぬその
時
(
とき
)
は
250
一
(
ひと
)
つの
首
(
くび
)
を
汝
(
なれ
)
に
与
(
あた
)
ふる』
251
カール『
面白
(
おもしろ
)
い
自信
(
じしん
)
の
強
(
つよ
)
い
其
(
その
)
言葉
(
ことば
)
252
アタ
邪魔臭
(
じやまくさ
)
い
首
(
くび
)
を
貰
(
もら
)
ふか』
253
アキス『
此
(
この
)
首
(
くび
)
は
一生
(
いつしやう
)
使
(
つか
)
ふ
吾
(
わが
)
宝
(
たから
)
254
うかうか
渡
(
わた
)
す
馬鹿
(
ばか
)
があらうか。
255
吾
(
わが
)
主人
(
あるじ
)
乗
(
の
)
ります
船
(
ふね
)
と
知
(
し
)
りしより
256
かたき
誓
(
ちか
)
ひを
立
(
た
)
てしものぞや』
257
カール『
誠
(
まこと
)
ならば
吾
(
われ
)
も
喜
(
よろこ
)
び
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
258
雀踊
(
すずめをど
)
りを
舞
(
ま
)
ふて
見
(
み
)
せなむ』
259
アキス『おひおひに
近
(
ちか
)
づく
船
(
ふね
)
の
影
(
かげ
)
見
(
み
)
れば
260
心
(
こころ
)
楽
(
たの
)
しくなり
増
(
ま
)
さり
行
(
ゆ
)
く。
261
かたい
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふぢやなけれど
彼
(
あ
)
の
船
(
ふね
)
は
262
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
が
屹度
(
きつと
)
在
(
ま
)
します。
263
もし
之
(
これ
)
が
違
(
ちが
)
ふた
時
(
とき
)
は
約束
(
やくそく
)
の
264
首
(
くび
)
をお
前
(
まへ
)
に
渡
(
わた
)
す
覚悟
(
かくご
)
だ』
265
カール『ほんにまアお
前
(
まへ
)
の
強
(
つよ
)
い
自我心
(
じがしん
)
に
266
俺
(
おれ
)
も
呆
(
あき
)
れて
物
(
もの
)
が
云
(
い
)
はれぬ。
267
あの
船
(
ふね
)
にもしも
主人
(
あるじ
)
が
在
(
ま
)
しまさば
268
お
餅
(
もち
)
を
搗
(
つ
)
いて
大祝
(
おほいは
)
ひせむ』
269
アキス『
村中
(
むらぢう
)
に
酒
(
さけ
)
や
肴
(
さかな
)
に
餅
(
もち
)
配
(
くば
)
り
270
十日
(
とをか
)
二十日
(
はつか
)
と
祝
(
いは
)
ひつづけむ。
271
奥様
(
おくさま
)
が
俺
(
おれ
)
に
確
(
しつか
)
り
云
(
い
)
はしやつた
272
主人
(
あるじ
)
の
顔
(
かほ
)
は
望月
(
もちつき
)
の
神
(
かみ
)
』
273
斯
(
か
)
く
二人
(
ふたり
)
は
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られ、
274
近
(
ちか
)
づき
来
(
きた
)
る
船
(
ふね
)
を
眺
(
なが
)
めて
首
(
くび
)
を
鶴
(
つる
)
の
如
(
ごと
)
く
延
(
の
)
ばして、
275
もどかしげに
待
(
ま
)
ち
倦
(
あぐ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
276
白帆
(
しらほ
)
の
形
(
かたち
)
は
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
大
(
おほ
)
きくなつて
舳
(
へさき
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る
人
(
ひと
)
の
影
(
かげ
)
さへ
肉眼
(
にくがん
)
にて
認
(
みと
)
め
得
(
う
)
る
迄
(
まで
)
近
(
ちか
)
づいて
来
(
き
)
た。
277
二人
(
ふたり
)
は
手
(
て
)
をつなぎ
磯端
(
いそばた
)
にキリキリ
舞
(
まひ
)
をして、
278
何
(
なん
)
とはなしに
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み
跳
(
と
)
び
廻
(
まは
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
279
空
(
そら
)
には
巨鳥
(
きよてう
)
が
一文字
(
いちもんじ
)
に
羽
(
はね
)
を
拡
(
ひろ
)
げ
微風
(
びふう
)
をきつて、
280
いと
鷹揚
(
おうやう
)
げに
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
自動
(
じどう
)
飛行機
(
ひかうき
)
の
演習
(
えんしふ
)
をやつて
居
(
ゐ
)
る。
281
(
大正一二・三・二九
旧二・一三
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
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