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第二四章 礼祭(れいさい)〔一四九九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻 篇:第4篇 猩々潔白 よみ(新仮名遣い):しょうじょうけっぱく
章:第24章 礼祭 よみ(新仮名遣い):れいさい 通し章番号:1499
口述日:1923(大正12)年03月30日(旧02月14日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
祭典の準備の間、三千彦は神饌物の調理をしながらバーチルと改宗の話をした。バーチルは三五教の神様を第一に祀り、先祖の霊も三五教式で祭りたいので、玉国別に伺ってもらいたいと三千彦にたのんだ。
三千彦は玉国別に尋ねる中で、玉国別は祭礼について教示を垂れた。祖霊祭については、子孫の真心よりする供物や祭典は、霊界にあるものを歓喜せしめ、子孫の幸福を守るという。
中有界にある精霊は、なにほど遅くても三十年以上はいないが、その精霊が現世に人間として再生して霊界にいなくなっても、祭祀を厚くされた人の霊は現界でもその供物の歓喜を受けるものであるという。
地獄に堕ちていれば子孫の祭祀の善徳によって中有界に進んで天国に昇ることを得る。また天国にあっても、祖霊祭によって極めて安逸な生涯を得られ、その歓喜が子孫に伝わって繁栄を守るという。
改宗したとしても、人の精霊や天人は、霊界に在って絶えず智慧・正覚・善真を得て向上しようと望んでいるので、現界の子孫が最も善と真とに透徹した宗教を信じて、その教えに準拠して祭祀を行ってくれることを非常に歓喜するものであるという。
また祠の森の聖場でさえも大自在天様を祀ってあるのだから、三五教に改宗しても、引き続き大自在天様を祀り続けるようにするのが良いと教示した。
アヅモス山には大自在天のお宮が立っているが、そこも祠の森のように合祀するかどうかについては、建造が必要になるので、玉国別はバーチルと直々に相談したいと三千彦に伝えた。
やってきたバーチルは、アヅモス山は先祖代々お祀りしてきたなり、猩々の眷属たちが守ってきた聖地であるので、にわかに三五教に祀り変えることはどうかと思うと答えた。玉国別は、大自在天のお宮はそのまま残し、新たに三五教の大神を祀るお宮を建造することにしたらどうかと提案した。
そして猩々ヶ島の子猿たちを迎えに行ってアヅモス山に返し、また島に置いてきたバラモンの三人を助けに船を出すようにと勧めた。
アヅモス山のお宮の建築は準備に取り掛かることとして、当面はこの家に三五教の大神とバラモンの大神を並べて祭り、家の者たちを参拝に与らせることになった。
祭典の準備は整い、玉国別は祭主となって天津祝詞を奏上し、感謝の歌を奉った。感謝祭は無事に終了し、玉国別一行は閑静な離れ座敷を与えられ、海上の長旅の疲労を癒すべく休養した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-04-17 16:25:04 OBC :rm5824
愛善世界社版:290頁 八幡書店版:第10輯 472頁 修補版: 校定版:308頁 普及版:117頁 初版: ページ備考:
001 (いよいよ)祭典(さいてん)準備(じゆんび)にとりかかるべく三千彦(みちひこ)002デビス(ひめ)003バーチル、004サーベルの二夫婦(ふたふうふ)下男(げなん)にも下女(げぢよ)にも(かま)はさず、005せつせと神饌物(しんせんもの)調理(てうり)熱中(ねつちう)して()る。
006三千(みち)『もし、007バーチルさま、008(わたし)はお(さつ)しの(とほ)三五教(あななひけう)のヘボ宣伝使(せんでんし)ですが、009バラモンの大神(おほかみ)(さま)神饌(しんせん)(こしら)へるのは(いま)(はじ)めてで(ござ)いますよ。010(なん)だか奥歯(おくば)(もの)が、011こまつた「つまつた」の誤字か?(やう)気分(きぶん)(いた)しますわ。012ハハハハハ』
013バーチル『うつかりして()ましたが如何(いか)にも吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(たす)けられ、014(また)三五教(あななひけう)大神(おほかみ)(さま)()神徳(しんとく)感謝(かんしや)してる(もの)(ござ)いますから、015どうしても三五(あななひ)(かみ)(さま)祭典(さいてん)第一(だいいち)(いた)さねばなりませぬ。016如何(どう)でせうか』
017三千(みち)『さうですな。018(かみ)(さま)はもとは一株(ひとかぶ)ですから、019どちらにしても(おな)(やう)なものの神代(かみよ)からの歴史(れきし)(かんが)へて()ますと、020三五教(あななひけう)国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)(さま)021(その)(ほか)諸々(もろもろ)(かみ)(さま)から押籠(おしこ)められた(はう)(かみ)(さま)で、022大自在天(だいじざいてん)(さま)とは、023人間(にんげん)同士(どうし)なら敵同志(かたきどうし)(やう)(もの)ですが、024(しか)(かみ)(さま)のお(こころ)人間(にんげん)(こころ)(ちが)つて寛大(くわんだい)なもので、025(すこ)しも左様(さやう)(こと)()頓着(とんちやく)なく、026大自在天(だいじざいてん)(さま)をお(たす)(あそ)ばさうと(おも)つて、027バラモン(けう)言向和(ことむけやは)(ため)吾々(われわれ)をお(つか)はしになるのですからね。028(しか)(わたし)では到底(とても)決断(けつだん)がつきませぬから、029一寸(ちよつと)(これ)からお師匠(ししやう)(さま)(うかが)つて(まゐ)ります』
030バーチル『はい、031それは有難(ありがた)(ござ)います。032(ついで)先祖(せんぞ)(さま)(みたま)三五教(あななひけう)(まつ)つて(いただ)()(ござ)いますが、033(これ)差支(さしつかへ)がないか(うかが)つて()(くだ)さいませぬか』
034 三千彦(みちひこ)は『承知(しようち)(いた)しました』と(この)()()つて玉国別(たまくにわけ)居間(ゐま)打通(うちとほ)り、035バーチルがバラモン(けう)脱退(だつたい)し、036三五教(あななひけう)入信(にふしん)し、037三五(あななひ)大神(おほかみ)(まつ)つて(もら)()(こと)038(ならび)祖霊祭(それいさい)三五教(あななひけう)にて(いとな)()(こと)(など)(ねがひ)()げ、039玉国別(たまくにわけ)(たい)()第一(だいいち)祖霊祭(それいさい)()いて教示(けうじ)()ふた。
040三千(みち)先生(せんせい)041人間(にんげん)現世(げんせ)()つて霊界(れいかい)()つた(とき)は、042極善者(ごくぜんしや)霊身(れいしん)(ただ)ちに天国(てんごく)(のぼ)りて天人(てんにん)相伍(あひご)天国(てんごく)生活(せいくわつ)(いとな)み、043現界(げんかい)との連絡(れんらく)()れるとすれば、044現界(げんかい)にある子孫(しそん)父祖(ふそ)霊祭(れいさい)などをする必要(ひつえう)()いものの(やう)(おも)はれますが、045それでも祖霊祭(それいさい)()なくてはならないのでせうか。046吾々(われわれ)(かんが)へでは(まこと)無益(むえき)無意義(むいぎ)なことの(やう)(かん)じられますがなア』
047玉国(たまくに)何程(なにほど)天国(てんごく)()つて地上(ちじやう)現人(げんじん)との連絡(れんらく)()たれたと()つても、048(あい)(ぜん)(しん)(しん)とは天地(てんち)貫通(くわんつう)して(すこ)しも遅滞(ちたい)せないものである。049子孫(しそん)(かう)のためにする愛善(あいぜん)信真(しんしん)()もつた(ただ)しき(きよ)祭典(さいてん)(とど)かないと()道理(だうり)(けつ)して()い。050天国(てんごく)にあつても矢張(やは)衣食住(いしよくぢう)必要(ひつえう)がある。051子孫(しそん)真心(まごころ)よりする供物(くもつ)祭典(さいてん)は、052霊界(れいかい)にあるものをして歓喜(くわんき)せしめ、053()つその子孫(しそん)幸福(かうふく)(まも)らしむるものである』
054三千(みち)中有界(ちううかい)にある精霊(せいれい)何程(なにほど)(おそ)くても三十(さんじふ)(ねん)以上(いじやう)()ないといふ(をしへ)()きましたが、055その精霊(せいれい)現世(げんせ)再生(さいせい)して人間(にんげん)(うま)れた以上(いじやう)は、056祖霊祭(それいさい)必要(ひつえう)()いやうですが、057()ういふ場合(ばあひ)でも矢張(やは)祖霊祭(それいさい)必要(ひつえう)があるのですか』
058玉国(たまくに)顕幽(けんいう)一致(いつち)神律(しんりつ)()つて、059(たと)へその精霊(せいれい)現界(げんかい)再生(さいせい)して人間(にんげん)となり霊界(れいかい)()らなくても、060矢張(やは)祭典(さいてん)立派(りつぱ)執行(しつかう)するのが祖先(そせん)(たい)する子孫(しそん)(つと)めである。061祭祀(さいし)(あつ)くされた(ひと)(みたま)霊界(れいかい)現界(げんかい)区別(くべつ)なく、062その供物(くもつ)歓喜(くわんき)して()けるものである。063現世(げんせ)(うま)れて()ながら(なほ)()依然(いぜん)として霊祭(みたままつり)厳重(げんぢう)(おこな)ふて(もら)ふて()現人(げんじん)日々(にちにち)生活(せいくわつ)(じやう)においても、064大変(たいへん)幸福(かうふく)(あぢ)はふことになるのである。065(ゆゑ)祖霊(それい)祭祀(さいし)三十(さんじふ)(ねん)どころか、066相成(あひな)るべくは(せん)(ねん)(まん)(ねん)祖霊(それい)も、067子孫(しそん)たるものは厳粛(げんしゆく)(つと)むべきものである。068地獄(ぢごく)()ちた祖霊(それい)などは子孫(しそん)祭祀(さいし)善徳(ぜんとく)()つて、069(たちま)中有界(ちううかい)(のぼ)(すす)んで天国(てんごく)(のぼ)ることを()るものである。070(また)子孫(しそん)祭祀(さいし)(あつ)くして()れる天人(てんにん)は、071天国(てんごく)(おい)ても(きは)めて安逸(あんいつ)生涯(しやうがい)(おく)()られ、072その天人(てんにん)歓喜(くわんき)余波(よは)(かなら)子孫(しそん)自然(しぜん)(つた)はり子孫(しそん)繁栄(はんえい)(まも)るものである。073()んとなれば(あい)(ぜん)(しん)(しん)天人(てんにん)神格(しんかく)現人(げんじん)子孫(しそん))の人格(じんかく)とに内流(ないりう)して何処迄(どこまで)断絶(だんぜつ)せないからである』
074三千(みち)『ウラル(けう)波羅門(ばらもん)(けう)儀式(ぎしき)()つて祖霊(それい)(まつ)つたものは、075各自(かくじ)その所主(しよしゆ)天国(てんごく)()つて()るでせう。076()れを三五教(あななひけう)改式(かいしき)した(とき)はその祖霊(それい)()うなるものでせうか』
077玉国(たまくに)(ひと)精霊(せいれい)(また)天人(てんにん)なるものは、078霊界(れいかい)()つて()えず智慧(ちゑ)証覚(しようかく)善真(ぜんしん)了得(れうとく)して向上(かうじやう)せむことをのみ(のぞ)んで()るものです。079(ゆゑ)現界(げんかい)()子孫(しそん)(もつと)(ぜん)(しん)とに透徹(とうてつ)した宗教(しうけう)(しん)じて、080その(をしへ)準拠(じゆんきよ)して祭祀(さいし)(おこな)つて()れることを非常(ひじやう)歓喜(くわんき)するものである。081天人(てんにん)(いへど)(もと)人間(にんげん)から向上(かうじやう)したものだから人間(にんげん)祖先(そせん)たる以上(いじやう)は、082仮令(たとへ)天国(てんごく)安住(あんぢう)するとも(あい)(しん)との情動(じやうどう)内流(ないりう)(てき)連絡(れんらく)して()るものだから、083子孫(しそん)証覚(しようかく)(もつと)(すぐ)れた宗教(しうけう)()り、084その(しう)儀式(ぎしき)()つて、085自分(じぶん)(たち)(れい)(まつ)(なぐさ)めて()れることは、086天人(てんにん)(およ)精霊(せいれい)(また)地獄(ぢごく)()ちた霊身(れいしん)()つても、087最善(さいぜん)(すく)ひと()り、088歓喜(くわんき)となるものである。089天国(てんごく)天人(てんにん)にも(ぜん)(しん)との向上(かうじやう)(のぞ)んで()るのだから、090現在(げんざい)地上人(ちじやうじん)最善(さいぜん)思惟(しゐ)する宗教(しうけう)(しん)じ、091()(また)祖先(そせん)(ほう)じて()宗教(しうけう)()めて三五教(あななひけう)入信(にふしん)した(ところ)で、092(べつ)祖霊(それい)(たい)して迷惑(めいわく)をかけるものでない。093(また)祖霊(それい)光明(くわうみやう)(むか)つて(すす)むのだから(けつ)して(まよ)ふやうな(こと)()いのだ。094(いな)(かへつ)祖霊(それい)(これ)歓喜(くわんき)し、095天国(てんごく)()つて(その)地位(ちゐ)(たか)()るものである。096(ゆゑ)吾々(われわれ)現身人(げんしんじん)祖先(そせん)(たい)して孝養(かうやう)のために最善(さいぜん)(みと)めた宗教(しうけう)信仰(しんかう)(すす)め、097その(をしへ)()つて祖先(そせん)(れい)満足(まんぞく)(あた)へ、098子孫(しそん)たるの(つと)めを大切(たいせつ)遵守(じゆんしゆ)せなくてはならぬのである。099アア惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
100三千(みち)『はい、101有難(ありがた)(ござ)いました。102当家(たうけ)主人(しゆじん)も、103それで安心(あんしん)(いた)しませう。104それから、105(ひと)つお(たづ)ねが(ござ)いますが、106バラモンの(かみ)(さま)如何(どう)いたしたら(よろ)しいでせう』
107玉国(たまくに)(ほこら)(もり)聖場(せいぢやう)でさへも()三体(さんたい)大神(おほかみ)(さま)(はじ)大自在天(だいじざいてん)(さま)(まつ)つてあるのだから、108(べつ)排斥(はいせき)するに(およ)ばぬぢやないか。109(いま)(まで)(この)(いへ)もバラモン(がみ)神徳(しんとく)()けて()たのだから、110そんな薄情(はくじやう)(こと)出来(でき)まい』
111三千(みち)『アヅモス(さん)聖地(せいち)にはバラモン大自在天(だいじざいてん)(さま)のお(みや)()つて()るさうですが、112(この)(さい)主人(しゆじん)吩咐(いひつ)けて(ほこら)(もり)(やう)にお(みや)()てさせ、113あの(しき)大自在天(だいじざいてん)(さま)(わき)(まつ)つたら如何(いかが)(ござ)いませうか』
114玉国(たまくに)一度(いちど)主人(しゆじん)()んで()()れ。115(みや)()てるとなると、116さう軽々(かるがる)しくは()かぬから一応(いちおう)意見(いけん)()いて()(つも)りだ』
117三千(みち)『はい、118承知(しようち)(いた)しました。119直様(すぐさま)()んで(まゐ)ります』
120と、121もとの神饌(しんせん)調理室(てうりしつ)引返(ひきかへ)し、122祖霊祭(それいさい)(くわん)する玉国別(たまくにわけ)教示(けうじ)(つた)へ、123(かつ)……神霊(しんれい)奉斎(ほうさい)()いて師匠(ししやう)(さま)がお(たづ)ねし()いと仰有(おつしや)るから一寸(ちよつと)()(くだ)さい……とバーチルを(いざな)ひ、124玉国別(たまくにわけ)()居間(ゐま)(かへ)つて()た。
125玉国(たまくに)『あ、126バーチルさま、127貴方(あなた)はアヅモスの(もり)天王(てんわう)(さま)のお(みや)を、128如何(どう)なさるお(かんが)へで(ござ)いますか』
129バーチル『はい、130先祖(せんぞ)代々(だいだい)(まつ)りして()たお宮様(みやさま)なり、131(また)(わたし)精霊(せいれい)眷族(けんぞく)として(つか)へて()つたのですから、132(いま)(にはか)三五教(あななひけう)這入(はい)つたと()つて(すぐ)(まつ)()へる(こと)如何(どう)かと(かんが)へます。133これに()いては貴方(あなた)(さま)にゆるゆるお(たづ)(いた)()いと(おも)つてゐました。134先生(せんせい)のお(かんが)へは如何(いかが)(ござ)いませうか』
135玉国(たまくに)(わたし)(かんが)へとしてはアヅモス(さん)森林(しんりん)(あらた)にお(みや)二棟(ふたむね)建造(けんざう)し、136一方(いつぱう)三五(あななひ)大神(おほかみ)(さま)137一方(いつぱう)(いま)天王(てんわう)(さま)奉斎(ほうさい)し、138さうして猩々(しやうじやう)(しま)(のこ)つて()小猿(こざる)を、139数十艘(すうじつさう)(ふね)用意(ようい)して(むか)(きた)り、140(ついで)にバラモン(ぐみ)(さん)(にん)(たす)けて(かへ)(やう)にし()いもので(ござ)います。141それが(かみ)(さま)(たい)しても、142貴方(あなた)守護神(しゆごじん)(たい)しても最善(さいぜん)方法(はうはふ)だと(かんが)へます』
143バーチル『有難(ありがた)(ござ)います。144(じつ)(ところ)最前(さいぜん)から何卒(どうぞ)さう(ねが)()いものだと、145家内(かない)とひそびそ(はなし)をして()りました。146あの小猿(こざる)(ども)(みな)猩々姫(しやうじやうひめ)()(ござ)いますから、147如何(どう)しても自分(じぶん)手近(てぢか)引寄(ひきよ)()いのは当然(たうぜん)(ござ)います。148(わたし)(なん)だか猩々(しやうじやう)(おや)になつた(やう)な、149(めう)気分(きぶん)(いた)します。150何卒(どうぞ)さうして(くだ)さらば、151これに()したる(よろこ)びは(ござ)いませぬ』
152玉国(たまくに)貴方(あなた)決心(けつしん)(きま)れば直様(すぐさま)153その準備(じゆんび)にかかる(こと)(いた)しませう。154(しか)(なが)今日(けふ)(ただ)大神(おほかみ)(さま)感謝(かんしや)祭典(さいてん)をする(ばか)りですから、155三五(あななひ)大神(おほかみ)とバラモンの大神(おほかみ)(なら)べて(まつ)り、156下男(げなん)下女(げぢよ)(はし)(いた)(まで)参拝(さんぱい)させておやりなさるが(よろ)しう(ござ)いませう』
157バーチル『はい、158(なに)から(なに)(まで)()親切(しんせつ)なお気付(きづ)け、159有難(ありがた)(ござ)います。
160(ひと)(おや)(さる)より()でしと()きつるに
161(さる)(おや)とぞなりにけるかな。
162さる(むかし)(とほ)神代(かみよ)(いにし)より
163きれぬ(えにし)につながれし(われ)
164玉国別(たまくにわけ)天王(てんわう)(もり)(なが)らく(つか)へたる
165その神徳(しんとく)(ひと)宿(やど)かる。
166肉体(からたま)はよし猩々(しやうじやう)(うま)るとも
167霊魂(みたま)(きよ)(かみ)御使(みつかひ)
168バーチル『有難(ありがた)()(なほ)したる()(きみ)
169言葉(ことば)(つま)(さぞ)(いさ)むらむ。
170人猿(じんゑん)仮令(たとへ)世人(よびと)(わら)ふとも
171(つみ)をとりさる(かみ)となりなむ』
172 かく(うた)(あは)ただしく神饌所(しんせんしよ)引返(ひきかへ)し、173用意(ようい)万端(ばんたん)(ととの)へて(ここ)芽出度(めでた)感謝祭(かんしやさい)執行(しつかう)する(こと)となつた。174玉国別(たまくにわけ)主人(しゆじん)(こひ)()つて祭主(さいしゆ)となり、175天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、176(をは)つて感謝(かんしや)(うた)(たてまつ)つた。
 
177玉国別(たまくにわけ)朝日(あさひ)()夕日(ゆふひ)()らすアヅモスの、178 常磐(ときは)堅磐(かきは)(もり)()に、179 (いや)永久(とこしへ)(しづ)まり(たま)ふ、180 大国彦(おほくにひこ)大神(おほかみ)の、181 (うづ)使(つかひ)(つか)へたる、182 猩々彦(しやうじやうひこ)精霊(せいれい)の、183 (かか)(たま)へる(やかた)主人(あるじ)184 バーチル(つかさ)(かは)玉国別(たまくにわけ)神司(かむづかさ)185 三五教(あななひけう)大御神(おほみかみ)186 バラモン(けう)大神(おほかみ)の、187 (うづ)御前(みまへ)(つつし)みて、188 吾々(われわれ)一行(いつかう)()ふも(さら)189 バーチル(はじ)めアンチーが、190 三年(みとせ)()きを(しの)ぎつつ、191 (やうや)くここに(かへ)りけるは、192 (すめ)大神(おほかみ)のお(はか)らひと、193 (よろこ)(うやま)大御恵(おほみめぐ)みの、194 千重(ちへ)一重(ひとへ)にも(むく)(まつ)らむとして、195 山海(やまうみ)河野(かはの)種々(くさぐさ)珍味(うましもの)を、196 八足(やたり)机代(つくゑしろ)に、197 (ところ)()(まで)()(なら)べ、198 神酒(みき)(みか)()(みか)(はら)()(なら)べて、199 御水(みもひ)堅塩(かたしほ)大御饌(おほみけ)(たてまつ)(こと)(よし)を、200 完全(うまら)委曲(つばら)聞召(きこしめ)し、201 これの(やかた)人々(ひとびと)(はじ)め、202 三五教(あななひけう)神司(かむづかさ)203 スマの(さと)人々(ひとびと)を、204 (あつ)(まも)らせ(たま)へかしと、205 大御前(おほみまへ)摺伏(ひれふ)して、206 (かしこ)(かしこ)(つか)(たてまつ)る  惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
207(うた)(をは)り、208感謝祭(かんしやさい)無事(ぶじ)終了(しうれう)した。209玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)(うる)はしき閑静(かんせい)(はな)座敷(ざしき)(あた)へられ、210海上(かいじやう)疲労(つかれ)()やすべく、211師弟(してい)()(にん)(あし)()ばして休養(きうやう)する(こと)となつた。
212大正一二・三・三〇 旧二・一四 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
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