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第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
01 復活祭
〔1807〕
02 逆襲
〔1808〕
03 草居谷底
〔1809〕
04 誤霊城
〔1810〕
05 横恋慕
〔1811〕
第2篇 鬼薊の花
06 金酒結婚
〔1812〕
07 虎角
〔1813〕
08 擬侠心
〔1814〕
09 狂怪戦
〔1815〕
10 拘淫
〔1816〕
第3篇 開花落花
11 狂擬怪
〔1817〕
12 開狂式
〔1818〕
13 漆別
〔1819〕
14 花曇
〔1820〕
15 騒淫ホテル
〔1821〕
第4篇 清風一過
16 誤辛折
〔1822〕
17 茶粕
〔1823〕
18 誠と偽
〔1824〕
19 笑拙種
〔1825〕
20 猫鞍干
〔1826〕
21 不意の官命
〔1827〕
22 帰国と鬼哭
〔1828〕
余白歌
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第四章
誤霊城
(
ごれいじやう
)
〔一八一〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第1篇 復活転活
よみ(新仮名遣い):
ふっかつてんかつ
章:
第4章 誤霊城
よみ(新仮名遣い):
ごれいじょう
通し章番号:
1810
口述日:
1925(大正14)年08月19日(旧06月30日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
御霊城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-25 08:24:38
OBC :
rm64b04
愛善世界社版:
47頁
八幡書店版:
第11輯 513頁
修補版:
校定版:
48頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
お
花
(
はな
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
002
日
(
ひ
)
の
丸
(
まる
)
の
掛軸
(
かけぢく
)
の
前
(
まへ
)
に
暗祈
(
あんき
)
黙祷
(
もくたう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
003
両眼
(
りやうがん
)
から
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
き
涙
(
なみだ
)
をたらし、
004
聖地
(
せいち
)
の
宣伝
(
せんでん
)
も
予期
(
よき
)
した
如
(
ごと
)
くに
行
(
ゆ
)
かず、
005
未
(
いま
)
だに
一人
(
ひとり
)
の
信徒
(
しんと
)
も
出来
(
でき
)
ぬ
矢先
(
やさき
)
、
006
お
寅
(
とら
)
、
007
守宮別
(
やもりわけ
)
の
在所
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
らなくなつたので、
008
太
(
ふと
)
い
吐息
(
といき
)
を
洩
(
も
)
らしてゐると、
009
そこへ
受付
(
うけつけ
)
のヤクが
慌
(
あわた
)
だしく
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
010
ヤク
『コレもし、
011
お
花
(
はな
)
さま、
012
お
花
(
はな
)
さま』
013
と
何回
(
なんくわい
)
も
矢継早
(
やつぎばや
)
に
呼
(
よ
)
ばはれ
共
(
ども
)
、
014
お
花
(
はな
)
はキヨロリとヤクの
顔
(
かほ
)
を
見乍
(
みなが
)
ら、
015
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をしてゐる。
016
ヤク
『もしお
花
(
はな
)
さま、
017
これ
丈
(
だけ
)
私
(
わたし
)
が
呼
(
よ
)
んでゐるのに、
018
なぜ
返事
(
へんじ
)
をして
下
(
くだ
)
さらぬのですか、
019
聾
(
つんぼ
)
になられたのですか、
020
余
(
あま
)
り
苛
(
ひど
)
いぢやありませぬか』
021
お花
『ソンナ
人
(
ひと
)
は
居
(
ゐ
)
ないよ』
022
とプリンと
横
(
よこ
)
を
向
(
む
)
く。
023
ヤク
『ハヽヽハア、
024
コリヤ ヤクが
悪
(
わる
)
かつた。
025
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
026
あやめの
花子
(
はなこ
)
殿
(
どの
)
、
027
一寸
(
ちよつと
)
こつちやを
向
(
む
)
いて
下
(
くだ
)
さい』
028
お花
『お
前
(
まへ
)
はヤクかい。
029
何
(
なん
)
の
用
(
よう
)
だなア』
030
とすましてゐる。
031
ヤク
『
何
(
なん
)
の
用
(
よう
)
もかんの
用
(
よう
)
もありますかいな。
032
乙姫
(
おとひめ
)
さまは
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
さまの
所在
(
ありか
)
が
知
(
し
)
れないのに、
033
何
(
なに
)
して
厶
(
ござ
)
るのですか』
034
お花
『
何
(
なに
)
もして
居
(
ゐ
)
ないよ。
035
おつつけ
帰
(
かへ
)
つて
厶
(
ござ
)
るといふ
御
(
ご
)
神示
(
しんじ
)
があつたから、
036
余
(
あま
)
り
慌
(
あわ
)
てるには
及
(
およ
)
びませぬワイ。
037
チトお
前
(
まへ
)
さまも
落
(
おち
)
つきなさい。
038
ここの
受付
(
うけつけ
)
になつてから、
039
殆
(
ほとん
)
ど
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
にも
成
(
な
)
りますが、
040
月給
(
げつきふ
)
取
(
と
)
る
許
(
ばか
)
りで、
041
一人
(
ひとり
)
の
信者
(
しんじや
)
も
出来
(
でき
)
たでなし、
042
私
(
わたし
)
だつて
困
(
こま
)
るぢやないか、
043
些
(
ちつ
)
と
活動
(
くわつどう
)
して
下
(
くだ
)
さいな。
044
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
が
悪者
(
わるもの
)
に
攫
(
さら
)
はれて
行
(
ゆ
)
かれるのを
見
(
み
)
て
居
(
を
)
り
乍
(
なが
)
ら、
045
助
(
たす
)
けにも
行
(
ゆ
)
かぬといふやうな、
046
ヤクザ
人足
(
にんそく
)
のヤクさまには、
047
もう
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
も
相手
(
あひて
)
にはなりませぬワイな』
048
ヤク
『
私
(
わたし
)
は
此処
(
ここ
)
の
受付
(
うけつけ
)
になつてから、
049
余
(
あま
)
り
暇
(
ひま
)
なので、
050
これでは
堪
(
たま
)
らないと
思
(
おも
)
ひ、
051
エルサレムの
町中
(
まちぢう
)
歩
(
ある
)
いて
紳士
(
しんし
)
紳商
(
しんしやう
)
を
一々
(
いちいち
)
訪問
(
はうもん
)
し、
052
ウラナイ
教
(
けう
)
の
宣伝
(
せんでん
)
をやり、
053
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
威徳
(
ゐとく
)
を
盛
(
さか
)
んに
吹聴
(
ふいちやう
)
して
居
(
を
)
ります。
054
何
(
いづ
)
れも
一旦
(
いつたん
)
は
感心
(
かんしん
)
して、
055
一辺
(
いつぺん
)
お
話
(
はなし
)
が
聞
(
き
)
きたい、
056
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
信者
(
しんじや
)
になり
度
(
た
)
いなどと、
057
異口
(
いく
)
同音
(
どうおん
)
に
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
に
免
(
めん
)
じて
賛成
(
さんせい
)
しては
下
(
くだ
)
さいますが、
058
何
(
なに
)
しろ
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
脱線
(
だつせん
)
がひどいので、
059
何時
(
いつ
)
も
駄目
(
だめ
)
になつて
了
(
しま
)
ふのですよ。
060
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
なら
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
らしう、
061
何時
(
いつ
)
もチヤンと
霊城
(
れいじやう
)
に
立籠
(
たてこ
)
もつて、
062
声
(
こゑ
)
なくして
人
(
ひと
)
を
呼
(
よ
)
ぶといふ
態度
(
たいど
)
をお
取
(
と
)
りになつて
居
(
を
)
れば
可
(
い
)
いのに、
063
フンゾ
喰
(
くら
)
ひの、
064
ドブ
酒
(
ざけ
)
飲
(
の
)
みの
守宮別
(
やもりわけ
)
を
連
(
つ
)
れて、
065
アトラスの
様
(
やう
)
な
面
(
つら
)
をして、
066
徳利
(
とくり
)
をブラ
下
(
さ
)
げた
様
(
やう
)
な
尻
(
けつ
)
をして、
067
市中
(
しちう
)
をブラつかれるものだから、
068
あのスタイルでは、
069
どうも
尊敬
(
そんけい
)
の
心
(
こころ
)
が
起
(
おこ
)
らない。
070
そして
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
徹底
(
てつてい
)
してゐないから、
071
要
(
えう
)
するに
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
気違
(
きちがひ
)
だらうといふ
噂
(
うはさ
)
が
立
(
た
)
つて、
072
誰
(
たれ
)
も
聞
(
き
)
くものがありませぬ
哩
(
わい
)
。
073
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
、
074
かう
受付
(
うけつけ
)
にチヨコナンとコマ
犬
(
いぬ
)
のやうに
坐
(
すわ
)
つて
居
(
を
)
つても
用
(
よう
)
は
無
(
な
)
し、
075
ダンジヤコを
並
(
なら
)
べた
様
(
やう
)
な
筆先
(
ふでさき
)
を
写
(
うつ
)
さして
貰
(
もら
)
うて
居
(
を
)
つても、
076
余
(
あま
)
り
有難
(
ありがた
)
くはありませぬがな。
077
お
前
(
まへ
)
さまも、
078
ようマア、
079
あんな
生宮
(
いきみや
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
にこんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
き
)
て、
080
能
(
よ
)
う
嫌
(
いや
)
にならぬ
事
(
こと
)
ですな』
081
お花
『コレ、
082
ヤクさま、
083
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なん
)
といふ
勿体
(
もつたい
)
ない
事
(
こと
)
をいふのだい、
084
どうも
霊
(
みたま
)
に
因縁
(
いんねん
)
のない
者
(
もの
)
は
仕方
(
しかた
)
のない
者
(
もの
)
だなア。
085
あんな
立派
(
りつぱ
)
な
救世主
(
きうせいしゆ
)
が、
086
お
前
(
まへ
)
さまも
矢張
(
やつぱ
)
り
世間並
(
せけんなみ
)
に
悪
(
わる
)
く
見
(
み
)
えるのかいな』
087
ヤク
『ハイ、
088
何程
(
なにほど
)
贔屓目
(
ひいきめ
)
にみても、
089
普通
(
あたりまへ
)
の
人間
(
にんげん
)
とより
見
(
み
)
えませぬわ。
090
第一
(
だいいち
)
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
が
筋
(
すぢ
)
が
立
(
た
)
つてゐませぬもの。
091
教義
(
けうぎ
)
が
支離
(
しり
)
滅裂
(
めつれつ
)
で
掴
(
つか
)
まへ
所
(
どころ
)
が
無
(
な
)
くつて、
092
既成
(
きせい
)
宗教
(
しうけう
)
の
方
(
はう
)
が、
093
どれ
丈
(
だけ
)
立派
(
りつぱ
)
だか
知
(
し
)
れませぬよ。
094
私
(
わたし
)
も
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
からいろいろと
就職口
(
しうしよくぐち
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
りましたが、
095
半気違
(
はんきちがひ
)
の
生宮
(
いきみや
)
さま
所
(
とこ
)
に
居
(
を
)
つた
者
(
もの
)
だからといつて、
096
だアれも
使
(
つか
)
つてくれないのです。
097
それで
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
098
不快
(
ふくわい
)
で
不快
(
ふくわい
)
でたまらないのを、
099
辛抱
(
しんばう
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
100
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
101
躓
(
つまづ
)
く
石
(
いし
)
も
縁
(
えん
)
のはしとやら、
102
縁
(
えん
)
あればこそ
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
のお
側
(
そば
)
で
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
たものだと
思
(
おも
)
ひ、
103
昨夜
(
ゆうべ
)
も
昨夜
(
ゆうべ
)
とて、
104
お
寅
(
とら
)
さまの
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
ふべく、
105
会計
(
くわいけい
)
の
金
(
かね
)
を
六十
(
ろくじふ
)
円
(
ゑん
)
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
してお
寅
(
とら
)
さまを
助
(
たす
)
ける
工夫
(
くふう
)
をしたのですよ。
106
其
(
その
)
六十
(
ろくじふ
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
かつて
御
(
ご
)
ろうじ、
107
生宮
(
いきみや
)
さまは
其
(
その
)
場
(
ば
)
で
袋叩
(
ふくろだだ
)
きに
会
(
あ
)
ひ、
108
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
になつて
居
(
ゐ
)
られるかも
知
(
し
)
れませぬよ。
109
夜前
(
やぜん
)
トツクにお
帰
(
かへ
)
りの
筈
(
はず
)
だのに、
110
まだ
帰
(
かへ
)
つてゐられぬのは、
111
チツト
不思議
(
ふしぎ
)
ですなア』
112
お花
『ヘン、
113
能
(
よ
)
う
言
(
い
)
へます
哩
(
わい
)
、
114
現
(
げん
)
に
生宮
(
いきみや
)
さまがアラブに
取
(
と
)
つ
掴
(
つか
)
まへられた
時
(
とき
)
、
115
お
前
(
まへ
)
さまはジツとして
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたぢやないか。
116
そんな
嘘
(
うそ
)
を
云
(
い
)
つても、
117
私
(
わたし
)
がチヤンと
見
(
み
)
て
居
(
を
)
りますぞや』
118
ヤク
『
乙姫
(
おとひめ
)
さま……だつて、
119
ジツとして
見
(
み
)
て
厶
(
ござ
)
つたぢやありませぬか。
120
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でさへ
手出
(
てだ
)
しのできぬ
乱暴者
(
らんばうもの
)
に、
121
どうしてヤクが
手出
(
てだ
)
しが
出来
(
でき
)
ませうぞ。
122
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
事情
(
じじやう
)
をマア
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
123
さうすれば
私
(
わたし
)
の
忠勤振
(
ちうきんぶり
)
がチツトは
分
(
わか
)
るでせう』
124
お花
『ヘン、
125
おいて
貰
(
もら
)
ひませうかい、
126
現在
(
げんざい
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
主人
(
しゆじん
)
の
危難
(
きなん
)
を
見乍
(
みなが
)
ら、
127
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
能
(
よ
)
う
出
(
だ
)
さぬクセに、
128
忠勤振
(
ちうきんぶる
)
なぞと
鼠
(
ねづみ
)
が
笑
(
わら
)
ひますぞや。
129
此
(
この
)
上
(
うへ
)
文句
(
もんく
)
があるなら
言
(
い
)
つて
御覧
(
ごらん
)
』
130
ヤク
『あります
共
(
とも
)
、
131
真面目
(
まじめ
)
に
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
132
今夜
(
こんや
)
はキリストの
聖日
(
せいじつ
)
でもあり、
133
僧院
(
そうゐん
)
ホテルで
大
(
だい
)
演説会
(
えんぜつくわい
)
があり、
134
生宮
(
いきみや
)
さまも
大々
(
だいだい
)
的
(
てき
)
獅子吼
(
ししく
)
をなさるといふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
つたので、
135
万一
(
まんいち
)
を
慮
(
おもんばか
)
り、
136
警戒
(
けいかい
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
つて
居
(
を
)
りますと、
137
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
が
衆人
(
しうじん
)
環視
(
くわんし
)
の
前
(
まへ
)
で、
138
ブラバーサさまを
罵
(
ののし
)
り、
139
言語
(
ごんご
)
道断
(
どうだん
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るので、
140
日頃
(
ひごろ
)
ブラバーサさまを
信頼
(
しんらい
)
してゐる
信者
(
しんじや
)
連
(
れん
)
が
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て、
141
あの
気違婆
(
きちがひばば
)
をやツつけてやらうかと、
142
私
(
わたし
)
が
居
(
ゐ
)
るとは
知
(
し
)
らずに、
143
コソコソ
相談
(
さうだん
)
をやつてゐますので、
144
此奴
(
こいつ
)
アたまらぬ、
145
何
(
なん
)
とかして
生宮
(
いきみや
)
さまを
助
(
たす
)
け
出
(
だ
)
さねばなるまいと、
146
傍
(
かたはら
)
を
見
(
み
)
ればアラブが
三
(
さん
)
人
(
にん
)
居
(
を
)
つたので、
147
ソツと
金
(
かね
)
をわたし、
148
一
(
いち
)
時
(
じ
)
どつかへ
生宮
(
いきみや
)
を
隠
(
かく
)
してくれと
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
、
149
アラブは
早速
(
さつそく
)
諾
(
うなづ
)
いて、
150
あの
通
(
とほ
)
りお
二人
(
ふたり
)
の
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
つたのです。
151
夕
(
ゆふ
)
べの
騒
(
さわ
)
ぎで
市中
(
しちう
)
は
喧
(
やかま
)
しい
噂
(
うはさ
)
が
立
(
た
)
ち、
152
警察
(
けいさつ
)
の
活動
(
くわつどう
)
となつて
居
(
ゐ
)
る
相
(
さう
)
ですから、
153
一
(
いち
)
時
(
じ
)
生宮
(
いきみや
)
さまもイキリぬきにどつかへ
遊覧
(
いうらん
)
に
行
(
い
)
つてゐられるのでせう。
154
これでも
私
(
わたし
)
の
忠勤振
(
ちうきんぶり
)
が
分
(
わか
)
りませぬかなア』
155
お花
『ても
偖
(
さて
)
も、
156
何
(
な
)
んといふ
下手
(
へた
)
な
事
(
こと
)
をするのぢやいな。
157
何程
(
なにほど
)
ブラバーサの
信者
(
しんじや
)
が
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
をせうと
思
(
おも
)
つても、
158
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
には
歯節
(
はぶし
)
は
立
(
た
)
ちませぬぞや。
159
それに
猶更
(
なほさら
)
、
160
立派
(
りつぱ
)
な
警察
(
けいさつ
)
もあり、
161
人目
(
ひとめ
)
もあるのだから、
162
そんな
心配
(
しんぱい
)
は
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
だ、
163
お
前
(
まへ
)
さまは
永
(
なが
)
らく
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
の
側
(
そば
)
に
居
(
を
)
つて、
164
あれ
丈
(
だけ
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
分
(
わか
)
らないのかな、
165
ホンに
盲
(
めくら
)
聾
(
つんぼ
)
といふ
者
(
もの
)
は
仕方
(
しかた
)
のない
者
(
もの
)
だなア』
166
ヤク
『もし、
167
お
花
(
はな
)
さま、
168
イヤ、
169
ドツコイ、
170
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さま、
171
余
(
あま
)
り
盲々
(
めくらめくら
)
といふて
下
(
くだ
)
さいますな、
172
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
の
程度
(
ていど
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
ればこそ、
173
私
(
わたし
)
が
案
(
あん
)
じて、
174
ああいふ
手段
(
しゆだん
)
を
取
(
と
)
つたのですよ、
175
乙姫
(
おとひめ
)
さまは
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
さまの
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
買
(
かひ
)
かぶつて
居
(
を
)
りますな』
176
お花
『かもうて
下
(
くだ
)
さるな、
177
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
のやうな
子供
(
こども
)
に
分
(
わか
)
つてたまるかな。
178
大
(
だい
)
それた、
179
大枚
(
たいまい
)
六十
(
ろくじふ
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
をアラブにやるなぞと、
180
誰
(
たれ
)
に
許可
(
きよか
)
を
得
(
え
)
て
支出
(
ししゆつ
)
したのだえ。
181
生宮
(
いきみや
)
さまも
乙姫
(
おとひめ
)
も
許
(
ゆる
)
した
覚
(
おぼ
)
えはありませぬぞや。
182
其
(
その
)
金
(
かね
)
こちらへ
返
(
かへ
)
して
下
(
くだ
)
さい、
183
返
(
かへ
)
すことが
出来
(
でき
)
にや
此
(
この
)
月分
(
つきぶん
)
と
来月分
(
らいげつぶん
)
とで
勘定
(
かんぢやう
)
する。
184
お
前
(
まへ
)
さまは
受付
(
うけつけ
)
だ、
185
支払
(
しはら
)
ひ
役
(
やく
)
は
命
(
めい
)
じて
無
(
な
)
い
筈
(
はず
)
だ。
186
委托金
(
いたくきん
)
費消罪
(
ひせうざい
)
で
訴
(
うつた
)
へませうか』
187
ヤク
『
二
(
ふた
)
つ
目
(
め
)
には
法律
(
はふりつ
)
をかへるとか、
188
警察
(
けいさつ
)
もいらぬよにするとか
仰有
(
おつしや
)
るクセに、
189
猫
(
ねこ
)
がクシヤミしたやうな
事
(
こと
)
でも
警察
(
けいさつ
)
へ
訴
(
うつた
)
へるのですか、
190
何
(
なん
)
とマア
偉
(
えら
)
い
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
ですな。
191
お
前
(
まへ
)
さまは
最前
(
さいぜん
)
も
雪隠
(
せつちん
)
の
中
(
なか
)
から
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
192
ブラバーサやマリヤさまに
向
(
むか
)
つて、
193
世界中
(
せかいぢう
)
から
数珠
(
じゆず
)
つなぎに
信者
(
しんじや
)
が
参
(
まゐ
)
つて
来
(
く
)
ると、
194
エライ
駄法螺
(
だぼら
)
を
吹
(
ふ
)
いて
厶
(
ござ
)
つたが、
195
ここ
一年程
(
いちねんほど
)
の
間
(
あひだ
)
に
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
一疋
(
いつぴき
)
訪問
(
はうもん
)
した
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いぢやありませぬか。
196
誠一
(
まことひと
)
つで
開
(
ひら
)
くウラナイの
道
(
みち
)
だからと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
197
ようマア、
198
あんな
嘘
(
うそ
)
が
言
(
い
)
へました。
199
霊城
(
れいじやう
)
なぞと
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れます
哩
(
わい
)
』
200
お花
『ホヽヽヽヽ、
201
マア
何
(
なん
)
と
分
(
わか
)
らぬ
代物
(
しろもの
)
だこと、
202
これ
程
(
ほど
)
諸国
(
しよこく
)
の
霊
(
れい
)
が、
203
数珠
(
じゆず
)
つなぎになつて、
204
生宮
(
いきみや
)
さまの
神徳
(
しんとく
)
を
慕
(
した
)
つて
参拝
(
さんぱい
)
するのに
分
(
わか
)
らぬのかいな。
205
それだから、
206
教会
(
けうくわい
)
とも
宣伝所
(
せんでんしよ
)
ともいはないで、
207
御
(
ご
)
霊城
(
れいじやう
)
と
書
(
か
)
いてあるのだよ』
208
ヤク
『ソンナラ、
209
私
(
わたし
)
の
受付
(
うけつけ
)
は
必要
(
ひつえう
)
がないぢやありませぬか。
210
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
の
受付
(
うけつけ
)
をするのですか』
211
お花
『
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
に
仍
(
よ
)
つて、
212
悪者
(
わるもの
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たり、
213
詐欺漢
(
さぎかん
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たりせぬ
様
(
やう
)
に、
214
番犬
(
ばんいぬ
)
の
御用
(
ごよう
)
がさしてあつたのだよ、
215
霊
(
れい
)
なんか
到底
(
たうてい
)
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
にや
分
(
わか
)
らないから、
216
テンデそんなこた
当
(
あて
)
にしてゐないのだ。
217
頭
(
あたま
)
から
信用
(
しんよう
)
のないこた
分
(
わか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだからな』
218
ヤク
『ソンナラ
何故
(
なぜ
)
宣伝
(
せんでん
)
に
行
(
ゆ
)
け
行
(
ゆ
)
けと
私
(
わたし
)
に
仰有
(
おつしや
)
るのですか』
219
お花
『
現幽
(
げんいう
)
一致
(
いつち
)
の
御教
(
みをしへ
)
だから、
220
現界
(
げんかい
)
の
人間
(
にんげん
)
も
宣伝
(
せんでん
)
する
必要
(
ひつえう
)
があるのだ。
221
けれ
共
(
ども
)
お
前
(
まへ
)
の
魂
(
たましひ
)
がテンで
物
(
もの
)
になつてゐないものだから
物
(
もの
)
にならないのだよ。
222
無用
(
むよう
)
の
長物
(
ちやうぶつ
)
娑婆
(
しやば
)
ふさぎ、
223
穀潰
(
ごくつぶ
)
しの
糞造器
(
ふんざうき
)
とはお
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
だ。
224
こんな
糞造器
(
ふんざうき
)
でも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
だから、
225
助
(
たす
)
けてやらうと
思
(
おも
)
つて、
226
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
も
月給
(
げつきふ
)
を
出
(
だ
)
して
飼
(
か
)
つてやつて
居
(
ゐ
)
るのだよ。
227
世間
(
せけん
)
に
目
(
め
)
の
開
(
あ
)
いた
奴
(
やつ
)
があつたら……
何
(
なん
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
といふものは
偉
(
えら
)
い
者
(
もの
)
だ。
228
エルサレム
中
(
ぢう
)
で
相手
(
あひて
)
にしてのない
蚰蜒
(
げぢげぢ
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
でも、
229
生神
(
いきがみ
)
さまならこされ、
230
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
も
月給
(
げつきふ
)
をやつておいて
置
(
お
)
けるのだ。
231
神
(
かみ
)
さまといふ
者
(
もの
)
は
偖
(
さて
)
も
偖
(
さて
)
も
感心
(
かんしん
)
な
者
(
もの
)
だ。
232
……と
此
(
この
)
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
うて
青
(
あを
)
い
鳥
(
とり
)
が
引
(
ひつ
)
かかつて
来
(
く
)
る
様
(
やう
)
に、
233
つまり、
234
おとりにおいて
有
(
あ
)
るのだ……オツトドツコイこりや
云
(
い
)
ふのぢやなかつた。
235
コレ、
236
ヤクさま、
237
こりや
嘘
(
うそ
)
だよ。
238
お
前
(
まへ
)
の
副守
(
ふくしゆ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わたし
)
の
体内
(
たいない
)
を
借
(
か
)
つて
云
(
い
)
ふのだから、
239
屹度
(
きつと
)
気
(
き
)
にさへて
下
(
くだ
)
さるなや、
240
オホヽヽヽ』
241
ヤク
『これで
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
はすつかり
分
(
わか
)
りました。
242
私
(
わたし
)
も
可
(
よ
)
い
馬鹿
(
ばか
)
でした。
243
月給
(
げつきふ
)
も
何
(
なに
)
もいりませぬ。
244
気好
(
きよ
)
うお
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
さい。
245
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
覚
(
おぼ
)
えてゐなさい。
246
ヒヤツとする
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
にあわして
上
(
あ
)
げますから。
247
お
前
(
まへ
)
さま
方
(
がた
)
のカラクリを、
248
これから、
249
エルサレムの
町中
(
まちぢう
)
演説
(
えんぜつ
)
して
歩
(
ある
)
きますから、
250
足許
(
あしもと
)
の
明
(
あか
)
るい
内
(
うち
)
トツトと
帰
(
かへ
)
りなさい。
251
イヒヽヽヽヽ。
252
ヤアこれで
一
(
ひと
)
つ
俺
(
おれ
)
も
活気
(
くわつき
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
た。
253
悪魔
(
あくま
)
退治
(
たいぢ
)
の
張本人
(
ちやうほんにん
)
となり
正々
(
せいせい
)
堂々
(
だうだう
)
の
陣
(
ぢん
)
を
張
(
は
)
り、
254
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
力比
(
ちからくら
)
べだ。
255
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い、
256
ウツフヽヽヽ』
257
お
花
(
はな
)
は
顔
(
かほ
)
を
曇
(
くも
)
らせ
乍
(
なが
)
ら、
258
お花
『コレ、
259
ヤクさま、
260
皆
(
みな
)
嘘
(
うそ
)
だよ。
261
お
前
(
まへ
)
は
正直
(
しやうぢき
)
だから、
262
直
(
すぐ
)
に
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てて
仕方
(
しかた
)
がない。
263
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
此
(
この
)
乙姫
(
おとひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が、
264
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にもない
大切
(
たいせつ
)
な
宝
(
たから
)
として、
265
お
前
(
まへ
)
を
重宝
(
ちようほう
)
がつてるのだ。
266
そんな
水臭
(
みづくさ
)
い
事
(
こと
)
をいふものぢやありませぬがな』
267
と
皺
(
しわ
)
の
寄
(
よ
)
つた
顔
(
かほ
)
の
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うして、
268
ヤクの
背中
(
せなか
)
をポンと
叩
(
たた
)
く。
269
年
(
とし
)
は
老
(
と
)
つて
居
(
を
)
つても、
270
浪速
(
なには
)
の
水
(
みづ
)
で
洗
(
あら
)
ひさらした
肌
(
はだ
)
、
271
まだ
何処
(
どこ
)
やらに
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
が
残
(
のこ
)
つてゐる。
272
其
(
その
)
手
(
て
)
でお
釈迦
(
しやか
)
の
顔撫
(
かほな
)
でた
式
(
しき
)
に、
273
お
花
(
はな
)
の
色目
(
いろめ
)
につり
込
(
こ
)
まれ、
274
ヤクはつり
上
(
あが
)
つた
眉毛
(
まゆげ
)
を
一寸
(
いつすん
)
許
(
ばか
)
り
下
(
した
)
へおろし、
275
目尻
(
めじり
)
迄
(
まで
)
下
(
さ
)
げて、
276
時計
(
とけい
)
の
八
(
はち
)
時
(
じ
)
二十分
(
にじふぶん
)
の
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
277
ヤク
『ヘヽヽヽヽ、
278
ソンナ
優
(
やさ
)
しいお
心
(
こころ
)
とは
知
(
し
)
らず、
279
つい
副守
(
ふくしゆ
)
があんな
事
(
こと
)
を
囁
(
ささや
)
きました。
280
どうぞ
生宮
(
いきみや
)
さまがお
帰
(
かへ
)
りになつても、
281
今
(
いま
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
はない
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さいや』
282
お花
『
何
(
なん
)
ぢやいな、
283
ヤクさま、
284
眉毛
(
まゆげ
)
や
目尻
(
めじり
)
が
眠
(
ねむ
)
り
草
(
ぐさ
)
の
様
(
やう
)
に、
285
サツパリ
下
(
さが
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
286
七
(
しち
)
時
(
じ
)
二十五
(
にじふご
)
分
(
ふん
)
の
顔
(
かほ
)
ソツクリぢやないかい』
287
ヤク
『
乙姫
(
おとひめ
)
さまのお
顔
(
かほ
)
にも
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
低気圧
(
ていきあつ
)
が
襲来
(
しふらい
)
し、
288
眉毛
(
まゆげ
)
が
十一
(
じふいち
)
時
(
じ
)
五分
(
ごふん
)
になつて
居
(
ゐ
)
ましたよ』
289
お花
『ソンナ
時計
(
とけい
)
の
話
(
はなし
)
や
何
(
ど
)
うでもよい、
290
人
(
ひと
)
の
顔
(
かほ
)
と
時計
(
とけい
)
とゴツチヤ
交
(
ま
)
ぜにしられちや
困
(
こま
)
るからなア』
291
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
して
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
へ、
292
ドヤドヤ
人
(
ひと
)
の
入
(
い
)
り
来
(
く
)
る
足音
(
あしおと
)
、
293
ヤクは
素早
(
すばや
)
く
表
(
おもて
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
294
ヤク
『ヤ、
295
これはお
寅様
(
とらさま
)
、
296
能
(
よ
)
くマアお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいました。
297
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
大変
(
たいへん
)
なお
待
(
ま
)
ちかねで
厶
(
ござ
)
います。
298
サアサアとつとと
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
りなさいませ』
299
お寅
『お
前
(
まへ
)
はヤクザ
者
(
もの
)
のヤクぢやないかい。
300
妾
(
わし
)
がアンナ
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに
傍観
(
ばうくわん
)
してるとは
余
(
あんま
)
りぢやないか。
301
何程
(
なにほど
)
名
(
な
)
はヤクでも、
302
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たぬ
代物
(
しろもの
)
だなア』
303
ヤク
『ハイお
花
(
はな
)
さま……オツトドツコイ
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
さまに、
304
惨々
(
さんざん
)
そんな
事
(
こと
)
をいつて
油
(
あぶら
)
を
絞
(
しぼ
)
られて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
ですから、
305
どうぞ
二重
(
にぢう
)
成敗
(
せいばい
)
は
勘弁
(
かんべん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
306
といひ
乍
(
なが
)
ら
狭
(
せま
)
い
路地
(
ろぢ
)
を
伝
(
つた
)
うて
入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
307
お
花
(
はな
)
は
嬉
(
うれ
)
しさうに
手
(
て
)
をつかへて、
308
お花
『ヤ、
309
これはこれは、
310
能
(
よ
)
う
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
311
日出
(
ひので
)
様
(
さま
)
、
312
大変
(
たいへん
)
待
(
ま
)
ちかねて
居
(
を
)
りました。
313
今
(
いま
)
ヤクと
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ』
314
お寅
『ヘン、
315
有難
(
ありがた
)
う、
316
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りました。
317
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
には……ブラバーサの
計略
(
けいりやく
)
にかかり、
318
谷底
(
たにぞこ
)
へつれ
込
(
こ
)
まれ、
319
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られ
様
(
やう
)
と
致
(
いた
)
しましたが、
320
幸
(
さいはひ
)
に
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
によりまして、
321
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
322
乙姫
(
おとひめ
)
さま、
323
さぞ
面
(
めん
)
くらつたでせう。
324
ヤクと
二人
(
ふたり
)
寄
(
よ
)
つて、
325
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
居
(
を
)
らなくなつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
326
此
(
この
)
霊城
(
れいじやう
)
の
主人
(
あるじ
)
となり、
327
一大
(
いちだい
)
飛躍
(
ひやく
)
を
試
(
こころ
)
みむとして
厶
(
ござ
)
つた
所
(
ところ
)
を、
328
目的
(
もくてき
)
と
牛
(
うし
)
の
尻
(
しり
)
がひとは、
329
向
(
むか
)
ふから
外
(
はづ
)
れるとか
申
(
まを
)
しましてね……
誠
(
まこと
)
にお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さま。
330
ヘン
巧言
(
かうげん
)
令色
(
れいしよく
)
、
331
偽善
(
ぎぜん
)
の
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
は
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
ひませうかい』
332
お
花
(
はな
)
は
泣声
(
なきごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
333
お花
『コレ、
334
モウシ、
335
お
寅
(
とら
)
さま、
336
余
(
あま
)
りぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか、
337
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
が
分
(
わか
)
りませぬか。
338
余
(
あま
)
り
殺生
(
せつしやう
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬかい。
339
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
此
(
この
)
方
(
かた
)
真心
(
まごころ
)
を
尽
(
つく
)
して、
340
世間
(
せけん
)
の
非難
(
ひなん
)
攻撃
(
こうげき
)
を
受
(
う
)
け
乍
(
なが
)
ら、
341
身命
(
しんめい
)
を
賭
(
と
)
して、
342
貴女
(
あなた
)
に
付
(
つ
)
いて
来
(
き
)
た
私
(
わたし
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
343
御
(
ご
)
冗談
(
じやうだん
)
仰有
(
おつしや
)
るにも
程
(
ほど
)
がありますわ』
344
お寅
『
冗談
(
ぜうだん
)
ぢやありませぬよ。
345
誠生粋
(
まこときつすゐ
)
の
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
ですから、
346
慎
(
つつし
)
んでお
聞
(
き
)
きなさい。
347
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
が
分
(
わか
)
らぬか……と
仰有
(
おつしや
)
つたが、
348
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
らこそ、
349
お
前
(
まへ
)
さまに
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
して
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか。
350
第一
(
だいいち
)
の
証拠
(
しようこ
)
は……いつも
貴女
(
あなた
)
言
(
い
)
ふて
居
(
を
)
つたでせう。
351
仮令
(
たとへ
)
地獄
(
ぢごく
)
のドン
底
(
そこ
)
へでも、
352
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
にお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
しますと、
353
口癖
(
くちぐせ
)
の
様
(
やう
)
に、
354
うるさい
程
(
ほど
)
、
355
百万遍
(
ひやくまんべん
)
をくる
様
(
やう
)
に、
356
云
(
い
)
つておき
乍
(
なが
)
ら、
357
人
(
ひと
)
の
危難
(
きなん
)
を
見
(
み
)
て、
358
助
(
たす
)
けようともせず、
359
ヤクと
一緒
(
いつしよ
)
に、
360
ぬつけりことして
霊城
(
れいじやう
)
にをさまり
返
(
かへ
)
り、
361
第二
(
だいに
)
の
計画
(
けいくわく
)
をやつて
居
(
を
)
つたのでせう、
362
それに
違
(
ちがひ
)
ありますまい。
363
お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
な
水臭
(
みづくさ
)
いお
方
(
かた
)
は、
364
主
(
しゆ
)
でもなけら、
365
家来
(
けらい
)
でもない。
366
又
(
また
)
師匠
(
ししやう
)
でも
無
(
な
)
ければ
弟子
(
でし
)
でもありませぬ。
367
乙姫
(
おとひめ
)
さまなぞと、
368
チヤンチヤラ
可笑
(
をか
)
しい、
369
もう
之
(
これ
)
から
云
(
い
)
ふて
下
(
くだ
)
さるな』
370
お花
『
私
(
わたし
)
は
素
(
もと
)
よりあやめのお
花
(
はな
)
といつて、
371
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
いましたが、
372
貴女
(
あなた
)
が
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だと
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さるので、
373
それを
誠
(
まこと
)
と
信
(
しん
)
じ、
374
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
乙姫
(
おとひめ
)
で
通
(
とほ
)
して
来
(
き
)
ましたが、
375
云
(
い
)
ふてくれるなと
仰有
(
おつしや
)
るのなら、
376
モウ
之
(
これ
)
から
言
(
い
)
ひませぬ。
377
さうすると、
378
お
前
(
まへ
)
さまの
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
さまも
可
(
い
)
いかげんなものぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
379
誰
(
たれ
)
が
阿呆
(
あはう
)
らしい、
380
乙姫
(
おとひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
思
(
おも
)
へばこそ、
381
住
(
すみ
)
なれた
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
立
(
た
)
つて、
382
コンナ
他国
(
たこく
)
で、
383
不自由
(
ふじゆう
)
な
生活
(
せいくわつ
)
を
辛抱
(
しんばう
)
してゐるのですよ』
384
ヤクは
鼻息
(
はないき
)
あらく、
385
ヤク
『もしもし
乙姫
(
おとひめ
)
さま、
386
否
(
いな
)
お
花
(
はな
)
さまにしておきませう。
387
コンナ
糞婆
(
くそばば
)
と
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
りなさいませ。
388
私
(
わたし
)
がお
前
(
まへ
)
さまの
参謀長
(
さんぼうちやう
)
となつて、
389
お
寅
(
とら
)
さまの
向方
(
むかふ
)
を
張
(
は
)
り、
390
立派
(
りつぱ
)
に
一旗
(
ひとはた
)
挙
(
あ
)
げて
御覧
(
ごらん
)
にいれませう、
391
私
(
わたし
)
がお
花
(
はな
)
さまの
赤心
(
まごころ
)
は
能
(
よ
)
う
知
(
し
)
つてゐます。
392
側
(
そば
)
から
聞
(
き
)
いてゐても
余
(
あま
)
り
無体
(
むたい
)
な
事
(
こと
)
いふ
婆
(
ばば
)
だから、
393
愛相
(
あいさう
)
が
尽
(
つ
)
きた。
394
お
花
(
はな
)
さま、
395
可
(
よ
)
い
縁
(
えん
)
の
切時
(
きりどき
)
だから、
396
覚悟
(
かくご
)
なさいませ』
397
お
花
(
はな
)
は、
398
お花
『サア、
399
それでもナア』
400
と
首
(
くび
)
を
傾
(
かた
)
むけてゐる。
401
お寅
『コリヤ、
402
ヤク、
403
何
(
なに
)
を
横槍
(
よこやり
)
入
(
い
)
れるのだ。
404
お
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
が
弟子
(
でし
)
に
向
(
む
)
かつて
意見
(
いけん
)
をしてるのに、
405
ヤクザ
人足
(
にんそく
)
がゴテゴテいふと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか、
406
ひつ
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
なさい、
407
お
前
(
まへ
)
の
出
(
で
)
る
幕
(
まく
)
ぢやない。
408
お
前
(
まへ
)
とお
花
(
はな
)
さまと
寄
(
よ
)
つて、
409
妾
(
わし
)
をあんな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はしたのだろがな。
410
チヤンと
此処
(
ここ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
証拠人
(
しようこにん
)
が
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
てあるのだから……』
411
ヤク
『アヽア、
412
分
(
わか
)
らずや
許
(
ばか
)
りの
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
つても
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
いワ。
413
お
花
(
はな
)
さま、
414
左様
(
さやう
)
なら、
415
又
(
また
)
お
目
(
め
)
にかかりませう、
416
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさま
左様
(
さやう
)
なら、
417
守宮別
(
やもりわけ
)
と
精々
(
せいぜい
)
意茶
(
いちや
)
つきなさい。
418
私
(
わたし
)
は
私
(
わたし
)
の
考
(
かんが
)
へを
以
(
もつ
)
て、
419
何処迄
(
どこまで
)
もお
前
(
まへ
)
さまの
目的
(
もくてき
)
の
妨害
(
ばうがい
)
をして
上
(
あ
)
げますから、
420
イヒヽヽヽヽ』
421
と
腮
(
あご
)
をしやくり、
422
そこにあつた
箒
(
はうき
)
を
一本
(
いつぽん
)
かたげたまま、
423
尻
(
しり
)
ひんまくり、
424
何処
(
どこ
)
ともなく
駆出
(
かけだ
)
して
了
(
しま
)
つた。
425
此奴
(
こいつ
)
逃
(
に
)
がしてなるものかと、
426
お
寅
(
とら
)
は
金切声
(
かなきりごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げ、
427
でつかいお
尻
(
しり
)
をプリンプリンと
振廻
(
ふりまは
)
し
乍
(
なが
)
ら、
428
埃
(
ごみ
)
に
汚
(
よご
)
れた
雑踏
(
ざつたふ
)
の
街
(
まち
)
を
人目
(
ひとめ
)
も
恥
(
は
)
ぢず
追
(
お
)
つかけて
行
(
ゆ
)
く。
429
お
寅
(
とら
)
はヤツと
追付
(
おつつ
)
き、
430
首筋
(
くびすぢ
)
を
掴
(
つか
)
まむとするや、
431
ヤクは
箒
(
はうき
)
で
大道
(
だいだう
)
の
砂埃
(
すなほこり
)
をまぜ
返
(
かへ
)
し、
432
お
寅
(
とら
)
の
顔
(
かほ
)
をポンと
撲
(
なぐ
)
り
乍
(
なが
)
ら
又
(
また
)
もや
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す、
433
お
寅
(
とら
)
は
両眼
(
りやうがん
)
に
土埃
(
つちぼこり
)
を
浴
(
あ
)
び、
434
皺枯声
(
しわがれごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げ、
435
お寅
『オーイオーイ
誰
(
たれ
)
でも
可
(
よ
)
いから、
436
其
(
その
)
ヤクを
掴
(
つか
)
まへて
呉
(
く
)
れ』
437
と
叫
(
さけ
)
んでゐる。
438
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
く
人
(
ひと
)
は
黒山
(
くろやま
)
の
如
(
ごと
)
くお
寅
(
とら
)
の
周囲
(
まはり
)
を
取
(
とり
)
まき、
439
見世物
(
みせもの
)
でも
見
(
み
)
る
様
(
やう
)
に
口々
(
くちぐち
)
に
罵
(
ののし
)
り
居
(
ゐ
)
たりける。
440
(
大正一四・八・一九
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松村真澄
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