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第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
01 復活祭
〔1807〕
02 逆襲
〔1808〕
03 草居谷底
〔1809〕
04 誤霊城
〔1810〕
05 横恋慕
〔1811〕
第2篇 鬼薊の花
06 金酒結婚
〔1812〕
07 虎角
〔1813〕
08 擬侠心
〔1814〕
09 狂怪戦
〔1815〕
10 拘淫
〔1816〕
第3篇 開花落花
11 狂擬怪
〔1817〕
12 開狂式
〔1818〕
13 漆別
〔1819〕
14 花曇
〔1820〕
15 騒淫ホテル
〔1821〕
第4篇 清風一過
16 誤辛折
〔1822〕
17 茶粕
〔1823〕
18 誠と偽
〔1824〕
19 笑拙種
〔1825〕
20 猫鞍干
〔1826〕
21 不意の官命
〔1827〕
22 帰国と鬼哭
〔1828〕
余白歌
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第一〇章
拘淫
(
こういん
)
〔一八一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第2篇 鬼薊の花
よみ(新仮名遣い):
おにあざみのはな
章:
第10章 拘淫
よみ(新仮名遣い):
こういん
通し章番号:
1816
口述日:
1925(大正14)年08月20日(旧07月1日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
橄欖山の坂道
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-02-23 20:11:07
OBC :
rm64b10
愛善世界社版:
128頁
八幡書店版:
第11輯 542頁
修補版:
校定版:
130頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
坂道
(
さかみち
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
のドルーズ
人
(
じん
)
や、
002
アラブや、
003
猶太人
(
ユダヤじん
)
が
労働服
(
らうどうふく
)
を
着
(
き
)
た
儘
(
まま
)
面白相
(
おもしろさう
)
に
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
りゐる。
004
その
中
(
なか
)
の
一人
(
ひとり
)
なるバルガンは、
005
バルガン
『オイ、
006
ガクシー、
007
汝
(
きさま
)
は
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
戦争
(
せんそう
)
に
行
(
い
)
つたといふ
話
(
はなし
)
だが、
008
金鵄
(
きんし
)
勲章
(
くんしやう
)
でも
貰
(
もら
)
つたのか。
009
花々
(
はなばな
)
しき
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
をして
帰
(
かへ
)
るなぞと
云
(
い
)
ひよつて、
010
近所
(
きんじよ
)
合壁
(
がつぺき
)
に
送
(
おく
)
られ、
011
大変
(
たいへん
)
な
勢
(
いきほひ
)
であつたが、
012
凱旋祝
(
がいせんいはひ
)
も
根
(
ね
)
つから
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
もなし、
013
いつの
間
(
ま
)
にか
吾々
(
われわれ
)
労働者
(
らうどうしや
)
仲間
(
なかま
)
に
舞戻
(
まひもど
)
つて
来
(
き
)
よつたが、
014
一体
(
いつたい
)
戦
(
たたか
)
ひの
状況
(
じやうきやう
)
は
何
(
ど
)
うなつたのぢやい』
015
ガクシー
『ドルーズ
族
(
ぞく
)
のあの
叛乱
(
はんらん
)
によつて
仏軍
(
ふつぐん
)
から
雇
(
やと
)
はれ、
016
ジエーベル・ドルーズの
都
(
みやこ
)
、
017
ジエールに
進軍
(
しんぐん
)
した
時
(
とき
)
、
018
ドルーズ
族
(
ぞく
)
の
勢
(
いきほひ
)
猖獗
(
しやうけつ
)
にして、
019
仏軍
(
ふつぐん
)
は
手
(
て
)
もなく
打破
(
うちやぶ
)
られ、
020
みじめな
態
(
ざま
)
で
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
へ、
021
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
散乱
(
さんらん
)
して
了
(
しま
)
つたのだ。
022
其
(
その
)
時
(
とき
)
俺
(
おれ
)
は
軍夫
(
ぐんぷ
)
として、
023
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
に
輸送
(
ゆそう
)
をやつてゐたが、
024
大砲
(
たいはう
)
の
弾
(
たま
)
が、
025
間近
(
まぢか
)
にドンドン
落
(
お
)
ちて
来
(
く
)
るので、
026
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし、
027
肝腎
(
かんじん
)
の
軍夫
(
ぐんぷ
)
が、
028
兵隊
(
へいたい
)
に
担架
(
たんか
)
に
乗
(
の
)
せられて
運
(
はこ
)
ばれるといふ
惨
(
みぢ
)
めな
態
(
ざま
)
だつたよ』
029
バルガン
『あれ
丈
(
だけ
)
軍器
(
ぐんき
)
の
整
(
ととの
)
うたフランスの
精兵
(
せいへい
)
が、
030
なぜ
又
(
また
)
暴民
(
ばうみん
)
団体
(
だんたい
)
たるドルーズ
族
(
ぞく
)
に
脆
(
もろ
)
くも
打破
(
うちやぶ
)
られたのだ。
031
チとバランスがとれぬぢやないか』
032
ガクシー
『そこが
所謂
(
いはゆる
)
戦争
(
せんそう
)
は
水物
(
みづもの
)
といふのだ。
033
兵数
(
へいすう
)
の
多
(
おほ
)
い
方
(
はう
)
が
勝
(
か
)
つ
共
(
とも
)
、
034
武器
(
ぶき
)
の
整頓
(
せいとん
)
した
方
(
はう
)
が
勝
(
か
)
つとも、
035
又
(
また
)
は
武器
(
ぶき
)
の
調
(
ととの
)
はない
兵数
(
へいすう
)
の
少
(
すく
)
ない
方
(
はう
)
が
勝
(
か
)
つとも、
036
それは
時
(
とき
)
の
運
(
うん
)
だから
分
(
わか
)
らないワ。
037
何
(
なに
)
しろドルーズ
族
(
ぞく
)
は
一兵卒
(
いつぺいそつ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
地理
(
ちり
)
には
精通
(
せいつう
)
して
居
(
ゐ
)
る
上
(
うへ
)
、
038
人
(
ひと
)
の
和
(
わ
)
を
得
(
え
)
てる
上
(
うへ
)
、
039
あれ
丈
(
だけ
)
の
人気
(
にんき
)
だつたから、
040
其
(
その
)
虚勢
(
きよせい
)
丈
(
だけ
)
ででも
勝
(
か
)
たねばならぬ
道理
(
だうり
)
だ。
041
僅
(
わづ
)
か
二万
(
にまん
)
位
(
ぐらひ
)
の
叛乱軍
(
はんらんぐん
)
に
五万
(
ごまん
)
のフランス
兵
(
へい
)
が、
042
飛行機
(
ひかうき
)
も
大砲
(
たいはう
)
も
輜重車
(
しちようしや
)
も、
043
何
(
なに
)
もかも
打
(
うつ
)
ちやつて、
044
命
(
いのち
)
カラガラ
敗北
(
はいぼく
)
して
了
(
しま
)
ひ、
045
ドルーズは
敵
(
てき
)
の
武器
(
ぶき
)
を
応用
(
おうよう
)
して、
046
あく
迄
(
まで
)
も
頑強
(
ぐわんきやう
)
に
戦
(
たたか
)
ひを
続
(
つづ
)
けるものだから、
047
仏軍
(
ふつぐん
)
はたうとうジェーダの
首都
(
しゆと
)
を
占領
(
せんりやう
)
されて
了
(
しま
)
つたのだい。
048
本当
(
ほんたう
)
に
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
の
弱
(
よわ
)
い、
049
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
の
強
(
つよ
)
い
時節
(
じせつ
)
になつたものだ』
050
バルガン
『さうすると、
051
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
社会
(
しやくわい
)
の
弱者
(
じやくしや
)
として、
052
地平線
(
ちへいせん
)
下
(
か
)
に
汗
(
あせ
)
にひたつて
蠢動
(
しゆんどう
)
してゐるのだが、
053
何時
(
いつ
)
か
又
(
また
)
頭
(
あたま
)
をあげる
時
(
とき
)
があるだらうかな』
054
ガクシー
『あらいでかい、
055
有為
(
うゐ
)
転変
(
てんぺん
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
056
いつ
迄
(
まで
)
も
世
(
よ
)
は
持切
(
もちきり
)
にはさせぬと、
057
どつかの
神
(
かみ
)
さまもいつてゐる
相
(
さう
)
だから、
058
未来
(
みらい
)
は
必
(
かなら
)
ず
吾々
(
われわれ
)
プロレタリヤの
天下
(
てんか
)
だ。
059
まあまあクヨクヨ
思
(
おも
)
はずに、
060
暫
(
しばら
)
く
辛抱
(
しんばう
)
するのだな、
061
今日
(
けふ
)
も
今日
(
けふ
)
とて、
062
エルサレムの
町
(
まち
)
を
温順
(
おとなし
)
う
歩
(
ある
)
いてゐると、
063
俺
(
おれ
)
の
風体
(
ふうてい
)
が
醜
(
みにく
)
いとか
怪
(
あや
)
しいとか
云
(
い
)
ひやがつて、
064
スパイの
奴
(
やつ
)
、
065
何処迄
(
どこまで
)
も
尾行
(
びかう
)
してうせるのだ。
066
そして
吐
(
ぬか
)
す
事
(
こと
)
にや……
君
(
きみ
)
はどつから
来
(
き
)
た、
067
そして
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
く。
068
何
(
なん
)
の
用
(
よう
)
だ。
069
年
(
とし
)
は
幾
(
いく
)
つだ。
070
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
といふ……などと
三文
(
さんもん
)
にもならぬ
おせつかい
を
遊
(
あそ
)
ばすのだから、
071
道
(
みち
)
も
安心
(
あんしん
)
して
歩
(
ある
)
けやしないワ。
072
丸
(
まる
)
で
上
(
うへ
)
に
立
(
た
)
つてゐる
役人
(
やくにん
)
共
(
ども
)
は、
073
子供
(
こども
)
につつかれた
蜂
(
はち
)
の
巣
(
す
)
の
番兵蜂
(
ばんぺいばち
)
の
様
(
やう
)
な
神経
(
しんけい
)
過敏
(
くわびん
)
になつてゐやがるのだからのう』
074
バルガン
『
本当
(
ほんたう
)
に
約
(
つま
)
らぬ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だの、
075
何時迄
(
いつまで
)
も
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
こうものなら、
076
世界
(
せかい
)
はメチヤメチヤになるだらうよ。
077
どうしても
此
(
この
)
調子
(
てうし
)
では
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
たたぬ
内
(
うち
)
に
大革命
(
だいかくめい
)
が
起
(
おこ
)
るだらうと
思
(
おも
)
つてゐるのだ』
078
ガクシー
『そらさうだ、
079
生活難
(
せいくわつなん
)
や
就職難
(
しうしよくなん
)
の
叫
(
さけ
)
びがこれ
丈
(
だけ
)
喧
(
やかま
)
しくなつて
居
(
ゐ
)
るのだもの。
080
ブル
階級
(
かいきふ
)
や
役人
(
やくにん
)
共
(
ども
)
も
可
(
い
)
いかげんに
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
ましやがらぬと、
081
たつた
今
(
いま
)
、
082
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
と
地位
(
ちゐ
)
転倒
(
てんたう
)
して
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
は
惨
(
みじ
)
めな
態
(
ざま
)
になるだらうよ。
083
俺
(
おれ
)
や
其
(
その
)
世
(
よ
)
が
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
は
死
(
し
)
んでも
死
(
し
)
なれないのだ。
084
先祖
(
せんぞ
)
代々
(
だいだい
)
から
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
に
虐
(
しひた
)
げられて
来
(
き
)
たのだもの、
085
祖先
(
そせん
)
の
恥
(
はぢ
)
を
雪
(
すす
)
ぐのは、
086
吾々
(
われわれ
)
子孫
(
しそん
)
たる
者
(
もの
)
の
義務
(
ぎむ
)
だからなア。
087
最前
(
さいぜん
)
も
此
(
この
)
山麓
(
さんろく
)
でトロッキーとかいふ
男
(
をとこ
)
が、
088
労働団
(
らうどうだん
)
や
農民団
(
のうみんだん
)
を
集
(
あつ
)
めて
過激
(
くわげき
)
な
演説
(
えんぜつ
)
をやつて
居
(
を
)
つたが、
089
聴
(
き
)
いてみれば
一
(
いち
)
から
十
(
じふ
)
迄
(
まで
)
御尤
(
ごもつと
)
も
至極
(
しごく
)
だ。
090
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
091
あんな
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
らうものなら、
092
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
をはつた
如
(
ごと
)
き
警察
(
けいさつ
)
の
網
(
あみ
)
にかかつて、
093
厭応
(
いやおう
)
なしに、
094
暗
(
くら
)
い
所
(
ところ
)
へブチ
込
(
こ
)
まれちや
大変
(
たいへん
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
095
君子
(
くんし
)
は
危
(
あやふ
)
きに
近付
(
ちかづ
)
かずといふ
筆法
(
ひつぱふ
)
で、
096
ここ
迄
(
まで
)
スタスタやつて
来
(
く
)
りや、
097
君
(
きみ
)
たち
御
(
ご
)
連中
(
れんちう
)
の
御
(
ご
)
集会
(
しふくわい
)
、
098
屹度
(
きつと
)
今頃
(
いまごろ
)
にや、
099
何
(
なに
)
か
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎが
始
(
はじ
)
まつてるかも
知
(
し
)
れないよ』
100
バルガン
『
誰
(
たれ
)
でも
可
(
い
)
いから、
101
確
(
しつか
)
りした
犠牲者
(
ぎせいしや
)
が
現
(
あら
)
はれると
可
(
い
)
いのだがなア。
102
さうすりや
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
ア、
103
漁夫
(
ぎよふ
)
の
利
(
り
)
を
占
(
しめ
)
て
安楽
(
あんらく
)
に
暮
(
くら
)
せるのだけれど、
104
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
小
(
こ
)
ざかしい
人間
(
にんげん
)
許
(
ばか
)
りで、
105
自分
(
じぶん
)
の
身命
(
しんめい
)
を
賭
(
と
)
して
矢面
(
やおもて
)
に
立
(
た
)
つといふ
大馬鹿
(
おほばか
)
が
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
んで、
106
サツパリ
駄目
(
だめ
)
だ。
107
かういふ
時
(
とき
)
にや、
108
どうしても
大馬鹿
(
おほばか
)
でなけりや、
109
世界
(
せかい
)
の
改造
(
かいざう
)
が
出来
(
でき
)
ないからのう』
110
ガクシー
『そらさうだ。
111
ドルーズ
族
(
ぞく
)
の
酋長
(
しうちやう
)
カンバスでさへも、
112
始
(
はじ
)
めは
大変
(
たいへん
)
な
勢
(
いきほひ
)
で
矢面
(
やおもて
)
に
立
(
た
)
ち、
113
二万
(
にまん
)
の
民衆
(
みんしう
)
に
武器
(
ぶき
)
を
携帯
(
けいたい
)
させ、
114
フランス
軍
(
ぐん
)
と
勇敢
(
ゆうかん
)
に
戦
(
たたか
)
ひ、
115
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
大勝利
(
だいしようり
)
を
博
(
はく
)
しよつたが、
116
いよいよ
茲
(
ここ
)
といふ
所
(
ところ
)
で、
117
俄
(
にはか
)
に
怖気立
(
おぢけだ
)
ち、
118
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
に
身
(
み
)
を
逃
(
のが
)
れよつたものだから、
119
全軍
(
ぜんぐん
)
の
士気
(
しき
)
頓
(
とみ
)
に
阻喪
(
そさう
)
し、
120
折角
(
せつかく
)
取
(
と
)
つた
首都
(
みやこ
)
も
再
(
ふたた
)
び
仏軍
(
ふつぐん
)
の
手
(
て
)
に
帰
(
き
)
し、
121
重立
(
おもだ
)
つた
者
(
もの
)
は
何
(
いづ
)
れも
縛
(
ばく
)
につき、
122
ドルーズ
族
(
ぞく
)
へは
莫大
(
ばくだい
)
な
賠償金
(
ばいしやうきん
)
を
云
(
い
)
ひ
付
(
つ
)
けられ、
123
ヤツトの
事
(
こと
)
で、
124
カンバスの
哀願
(
あいぐわん
)
に
仍
(
よ
)
つて、
125
大赦令
(
たいしやれい
)
を
布
(
し
)
かれ、
126
一件
(
いつけん
)
落着
(
らくちやく
)
するはしたものの、
127
ドルーズは
酷
(
えら
)
い
破目
(
はめ
)
に
陥
(
おちい
)
つたものだ。
128
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
にどこ
迄
(
まで
)
も
犠牲
(
ぎせい
)
になるといふ
奴
(
やつ
)
さへあれば、
129
あんな
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いのだけれどな、
130
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
烏合
(
うがふ
)
の
衆
(
しう
)
だから、
131
バラモンには
最後
(
さいご
)
迄
(
まで
)
敵
(
てき
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
やしないワ。
132
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
ふと
吾々
(
われわれ
)
プロレタリヤの
前途
(
ぜんと
)
も
暗澹
(
あんたん
)
たるものだないか。
133
腹
(
はら
)
いせまぎれに、
134
夜中
(
やちう
)
密
(
ひそ
)
かに
役所
(
やくしよ
)
の
門
(
もん
)
に
小便
(
せうべん
)
を
屁
(
ひ
)
りかけたり、
135
糞
(
くそ
)
を
垂
(
た
)
れた
位
(
くらゐ
)
では
何
(
なん
)
にも
効
(
かう
)
はないし、
136
大頭
(
おほあたま
)
の
一疋
(
いつぴき
)
や
二疋
(
にひき
)
爆弾
(
ばくだん
)
でやつてみた
所
(
ところ
)
で、
137
飯
(
めし
)
の
上
(
うへ
)
の
蠅
(
はへ
)
を
追
(
お
)
ふやうなものだ。
138
先
(
せん
)
ぐり
先
(
せん
)
ぐり
次
(
つぎ
)
から
次
(
つぎ
)
へと、
139
だんだん
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
が
現
(
あら
)
はれて、
140
益々
(
ますます
)
吾々
(
われわれ
)
に
対
(
たい
)
して
厳
(
きび
)
しい
法律
(
はふりつ
)
を
発布
(
はつぷ
)
したり、
141
三
(
さん
)
人
(
にん
)
寄
(
よ
)
つて
話
(
はなし
)
をしても
拘引
(
こういん
)
するといふ、
142
石
(
いし
)
で
手
(
て
)
をつめたやうな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はすのだから、
143
矢張
(
やつぱり
)
、
144
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
の
弱
(
よわ
)
い、
145
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
の
強
(
つよ
)
い
時節
(
じせつ
)
だ……と
云
(
い
)
つても
仕方
(
しかた
)
がない。
146
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
の
弱
(
よわ
)
い、
147
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
の
強
(
つよ
)
い
時節
(
じせつ
)
は
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
に
一度
(
いちど
)
位
(
ぐらゐ
)
しか、
148
廻
(
めぐ
)
つて
来
(
く
)
るものぢやない。
149
何
(
なん
)
だか
日出島
(
ひのでじま
)
からブラバーサとかいふ
宣伝使
(
せんでんし
)
がやつて
来
(
き
)
て、
150
今
(
いま
)
に
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
現
(
あら
)
はれるとか、
151
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
けするとか、
152
下
(
した
)
が
上
(
うへ
)
になり、
153
上
(
うへ
)
が
下
(
した
)
になるとか、
154
ほざいてゐるやうだが、
155
これも
一種
(
いつしゆ
)
の
宗教
(
しうけう
)
拡
(
ひろ
)
めの
広告
(
くわうこく
)
に
過
(
す
)
ぎないだらう。
156
何程
(
なにほど
)
宗教
(
しうけう
)
が
愛
(
あい
)
を
説
(
と
)
いても、
157
パンを
与
(
あた
)
へてくれなくちや、
158
吾々
(
われわれ
)
は
生存権
(
せいぞんけん
)
を
保持
(
ほぢ
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないのだからなア。
159
……ヤ、
160
何
(
なん
)
だか
山下
(
やました
)
に
当
(
あた
)
つて、
161
騒
(
さわ
)
がしい
声
(
こゑ
)
がし
出
(
だ
)
したぞ。
162
トロッキーの
奴
(
やつ
)
、
163
どうやら
警官隊
(
けいくわんたい
)
と
格闘
(
かくとう
)
を
始
(
はじ
)
めたらしいワイ。
164
ソロソロ
降
(
お
)
りて
壮快
(
さうくわい
)
な
戦闘
(
せんとう
)
振
(
ぶ
)
りを
見物
(
けんぶつ
)
せうぢやないか。
165
獅子
(
しし
)
の
子
(
こ
)
か
何
(
なん
)
ぞのやうに、
166
かう
木
(
き
)
かげに
潜伏
(
せんぷく
)
して、
167
世
(
よ
)
を
呪
(
のろ
)
ひ、
168
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
居
(
を
)
つても、
169
一文
(
いちもん
)
の
所得
(
しよとく
)
もなし、
170
愉快
(
ゆくわい
)
もないからのう』
171
バルガン
『おけおけ、
172
コンナ
時
(
とき
)
に
出
(
で
)
るものぢやない。
173
側杖
(
そばづゑ
)
をくつて
打
(
ぶ
)
ち
込
(
こ
)
まれちや
大変
(
たいへん
)
だ、
174
先
(
ま
)
づ
嵐
(
あらし
)
の
後
(
あと
)
の
静
(
しづ
)
けさを
見聞
(
けんぶん
)
するのが、
175
処世
(
しよせい
)
上
(
じやう
)
悧巧
(
りかう
)
なやり
方
(
かた
)
だ。
176
それよりも
腹
(
はら
)
いせに
何
(
なに
)
か
面白
(
おもしろ
)
い
話
(
はなし
)
をせうぢやないか』
177
ガクシー
『
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
面白
(
おもしろ
)
い
話
(
はなし
)
があつて
堪
(
たま
)
らうかい、
178
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
までブル
階級
(
かいきふ
)
に
酷
(
こ
)
きつかはれ、
179
僅
(
わづか
)
な
賃銭
(
ちんせん
)
を
恵
(
めぐ
)
まれて、
180
孜々
(
しし
)
として
僅
(
わづか
)
に
露命
(
ろめい
)
をつないでる
悲惨
(
ひさん
)
な
境遇
(
きやうぐう
)
にあつては、
181
到底
(
たうてい
)
面白
(
おもしろ
)
い
味
(
あぢ
)
も
分
(
わか
)
らず、
182
苦
(
くる
)
しい
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
りだ。
183
俺
(
おれ
)
が
五六
(
ごろく
)
年前
(
ねんぜん
)
の
事
(
こと
)
だつたが、
184
仕方
(
しかた
)
がないので、
185
人力車
(
じんりきしや
)
夫
(
ふ
)
をやつてゐると、
186
家主
(
やぬし
)
の
奴
(
やつ
)
、
187
人並
(
ひとなみ
)
よりも
高
(
たか
)
い
店賃
(
たなちん
)
を
取
(
と
)
り
乍
(
なが
)
ら、
188
従僕
(
じゆうぼく
)
か
何
(
なに
)
かのようにガクシーガクシーと
口
(
くち
)
ぎたなく
呼
(
よび
)
つけにしやがつて、
189
雪隠
(
せつちん
)
の
掃除
(
さうぢ
)
までいひ
付
(
つ
)
けくさる。
190
劫腹
(
ごふはら
)
でたまらないが、
191
怒
(
おこ
)
れば
家
(
いへ
)
を
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
けと
云
(
い
)
ひやがるし、
192
裏店
(
うらだな
)
の
隅々
(
すみずみ
)
迄
(
まで
)
貧民
(
ひんみん
)
でつまつてゐる
此
(
この
)
際
(
さい
)
、
193
此処
(
ここ
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
されたが
最後
(
さいご
)
、
194
忽
(
たちま
)
ち
親子
(
おやこ
)
が
野宿
(
のじゆく
)
をせなくちやならず、
195
仕方
(
しかた
)
がないので
辛抱
(
しんばう
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
196
しまひの
果
(
はて
)
にや、
197
おれの
嬶
(
かかあ
)
の
名
(
な
)
を
呼捨
(
よびすて
)
にさらすのだ。
198
けつたいの
悪
(
わる
)
いの
胸糞
(
むねくそ
)
が
悪
(
わる
)
いのつて、
199
胸
(
むね
)
が
張裂
(
はりさ
)
ける
様
(
やう
)
だつた。
200
そこで
俺
(
おれ
)
は
道路
(
だうろ
)
の
端
(
はた
)
に
餓
(
う
)
ゑて、
201
死
(
し
)
にかけてる
野良犬
(
のらいぬ
)
を
一疋
(
いつぴき
)
拾
(
ひろ
)
つて
来
(
き
)
て、
202
そいつに
家主
(
やぬし
)
の
名
(
な
)
を
付
(
つ
)
け、
203
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で、
204
……コラ
権州
(
ごんしう
)
々々
(
ごんしう
)
……と
口汚
(
くちぎた
)
なく
喚
(
わめ
)
き
立
(
た
)
て、
205
其
(
その
)
度
(
たび
)
毎
(
ごと
)
に
拳骨
(
げんこつ
)
で
頭
(
あたま
)
を、
206
大家
(
おほや
)
の
権州
(
ごんしう
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
207
撲
(
なぐ
)
りつけてやつた。
208
其
(
その
)
時
(
とき
)
や、
209
チツと
許
(
ばか
)
り
痛快
(
つうくわい
)
だつたが、
210
野良犬
(
のらいぬ
)
の
奴
(
やつ
)
、
211
大変
(
たいへん
)
な
大喰
(
おほぐらひ
)
をしよるので
女房
(
にようばう
)
子供
(
こども
)
の
腮
(
あご
)
が
干上
(
ひあが
)
り
相
(
さう
)
になつた。
212
此奴
(
こいつ
)
にや
一
(
ひと
)
つ
俺
(
おれ
)
も
面
(
めん
)
くらはざるを
得
(
え
)
なかつたが、
213
それでも
人間
(
にんげん
)
は
意地
(
いぢ
)
だ。
214
こんな
所
(
ところ
)
で
屁古
(
へこ
)
たれちや、
215
男
(
をとこ
)
が
立
(
た
)
たないと、
216
要
(
い
)
らぬ
所
(
ところ
)
へ
力瘤
(
ちからこぶ
)
をいれ、
217
働
(
はたら
)
いても
働
(
はたら
)
いても、
218
皆
(
みな
)
犬
(
いぬ
)
にしてやられる。
219
苦
(
くるし
)
み
果
(
は
)
ててる
矢先
(
やさき
)
へ、
220
大家
(
おほや
)
の
権州
(
ごんしう
)
奴
(
め
)
、
221
大
(
おほ
)
きな
犬
(
いぬ
)
を
俄
(
には
)
かに
三疋
(
さんびき
)
も
飼
(
か
)
ひやがつて、
222
其奴
(
そいつ
)
に
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
と
女房
(
にようばう
)
の
名
(
な
)
と
伜
(
せがれ
)
の
名
(
な
)
を
付
(
つ
)
けやがつて、
223
家内中
(
かないぢう
)
が
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
呼
(
よ
)
びつけにしやがるので、
224
俺
(
おれ
)
もこんな
所
(
ところ
)
で
屁古垂
(
へこた
)
れちや
仕方
(
しかた
)
がない。
225
もつと
犬
(
いぬ
)
を
集
(
あつ
)
めて
大家
(
おほや
)
の
家内中
(
かないぢう
)
の
名
(
な
)
をつけて、
226
呼
(
よび
)
つけにしてやらうと
思
(
おも
)
つたが、
227
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へてみれば、
228
大
(
おほ
)
きな
家
(
うち
)
に
三夫婦
(
みふうふ
)
もけつかつて、
229
子
(
こ
)
や
孫
(
まご
)
総計
(
そうけい
)
二十八
(
にじふはち
)
匹
(
ひき
)
も
居
(
ゐ
)
やがるものだから、
230
たうとう
根負
(
こんまけ
)
して
旗
(
はた
)
をまき、
231
矛
(
ほこ
)
を
収
(
をさ
)
めて、
232
一時
(
いちぢ
)
ジェールの
都
(
みやこ
)
迄
(
まで
)
逃出
(
にげだ
)
して
了
(
しま
)
つたのだ。
233
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のないものだよ』
234
バルガン
『ハヽヽヽヽ、
235
そら
失敗
(
しつぱい
)
だつたね。
236
さうだから、
237
昔
(
むかし
)
の
賢人
(
けんじん
)
とか
君子
(
くんし
)
とかいふ
阿呆者
(
あはうもの
)
が、
238
長
(
なが
)
い
者
(
もの
)
にまかれよ……とか、
239
衆寡
(
しうくわ
)
敵
(
てき
)
せず……とか、
240
ほざきよつたのだ。
241
何程
(
なんぼ
)
面白
(
おもしろ
)
い
話
(
はなし
)
が
無
(
な
)
いといつても、
242
失敗
(
しつぱい
)
許
(
ばか
)
りぢやあるまい。
243
お
前
(
まへ
)
だつて、
244
永
(
なが
)
い
事
(
こと
)
人力屋
(
じんりきや
)
をして
居
(
を
)
れば、
245
些
(
ちつ
)
と
位
(
ぐらゐ
)
ボロい
事
(
こと
)
もあつただらう』
246
ガクシー
『いやもう
失敗
(
しつぱい
)
だらけだ。
247
エー、
248
コーツと、
249
何時
(
いつ
)
やらの
夕
(
ゆふ
)
まぐれだつた。
250
ジェールの
都
(
みやこ
)
の
郊外
(
かうぐわい
)
を
歩
(
ある
)
いてると、
251
大
(
おほ
)
きなデーツプリと
太
(
ふと
)
つた、
252
布袋
(
ほてい
)
のやうな
男
(
をとこ
)
がやつて
来
(
き
)
よつて、
253
俺
(
おれ
)
は
万民
(
ばんみん
)
に
福
(
ふく
)
を
与
(
あた
)
へる
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
だから、
254
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
許
(
ばか
)
り
乗
(
の
)
せて
呉
(
く
)
れないか、
255
……と
云
(
い
)
ひよつたので、
256
お
金
(
かね
)
は
幾
(
いく
)
ら
下
(
くだ
)
さるか……といへば、
257
お
前
(
まへ
)
に
金
(
かね
)
をやつては
福
(
ふく
)
が
退
(
い
)
ぬ。
258
俺
(
おれ
)
さへ
乗
(
の
)
せておけば、
259
屹度
(
きつと
)
汝
(
そなた
)
の
内
(
うち
)
は
明日
(
あす
)
から
繁昌
(
はんじやう
)
すると
云
(
い
)
ひよつたので、
260
此奴
(
こいつ
)
ア
願
(
ねが
)
うてもない
事
(
こと
)
だ、
261
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
許
(
ばか
)
り
無料働
(
ただばたらき
)
しても
構
(
かま
)
はぬ、
262
八卦
(
はつけ
)
みて
貰
(
もら
)
つても
三十銭
(
さんじつせん
)
五十銭
(
ごじつせん
)
は
取
(
と
)
られるのだ……と
思
(
おも
)
ひ、
263
クソ
重
(
おも
)
たい、
264
太
(
ふと
)
い
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
を
乗
(
の
)
せて、
265
町中
(
まちぢう
)
を
右
(
みぎ
)
へ
左
(
ひだり
)
へウロつきまはつた
所
(
ところ
)
、
266
モウ
之
(
これ
)
で
可
(
い
)
いと
言
(
い
)
ひよつたので
梶棒
(
かぢぼう
)
下
(
お
)
ろしよると、
267
一寸
(
ちよつと
)
便所
(
べんじよ
)
へ
行
(
い
)
つて
来
(
く
)
ると
吐
(
ぬか
)
しよつてなア。
268
便所
(
べんじよ
)
へ
入
(
はい
)
ると
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつて
了
(
しま
)
つたので、
269
それから
俺
(
おれ
)
も
便
(
べん
)
が
催
(
もよほ
)
したので
便所
(
べんじよ
)
に
入
(
はい
)
り、
270
沢山
(
たくさん
)
の
雪隠
(
せつちん
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けて、
271
一々
(
いちいち
)
点検
(
てんけん
)
してみたが、
272
影
(
かげ
)
も
形
(
かたち
)
もない。
273
此奴
(
こいつ
)
アいよいよ
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
だ、
274
姿
(
すがた
)
が
消
(
き
)
えたのだ。
275
キツと
明日
(
あす
)
から
福
(
ふく
)
があるに
違
(
ちが
)
ひないと、
276
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
277
車
(
くるま
)
をしまはうとすると、
278
そこへ
財布
(
さいふ
)
が
残
(
のこ
)
つてゐる。
279
下
(
さ
)
げてみると
中々
(
なかなか
)
重
(
おも
)
い。
280
ヤ
此奴
(
こいつ
)
アしめた。
281
いかにも
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だわイ。
282
有難
(
ありがた
)
う
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しますと
五六遍
(
ごろくぺん
)
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
へ
捧
(
ささ
)
げ、
283
神棚
(
かみだな
)
へまつり、
284
塩
(
しほ
)
をふつて、
285
其処辺
(
そこら
)
中
(
ぢう
)
清
(
きよ
)
め、
286
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
、
287
大枚
(
たいまい
)
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
の
丸金
(
まるきん
)
が
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いてけつかる。
288
コリヤ、
289
祝
(
いはひ
)
をせにやなるまいと、
290
俥引
(
くるまひき
)
友達
(
ともだち
)
や
近所
(
きんじよ
)
合壁
(
がつぺき
)
を
集
(
あつ
)
めて、
291
其
(
その
)
中
(
なか
)
の
金
(
かね
)
を
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
許
(
ばか
)
りはり
込
(
こ
)
んだ
積
(
つも
)
りで、
292
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
を
料理屋
(
れうりや
)
に
見
(
み
)
せつけて
置
(
お
)
き、
293
仕出
(
しだ
)
しをさして、
294
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
さまを
讃美
(
さんび
)
し、
295
呑
(
の
)
めや
唄
(
うた
)
への
大散財
(
おほさんざい
)
をやつて
居
(
を
)
ると、
296
昨夜
(
さくや
)
の
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
奴
(
め
)
、
297
ポリスと
共
(
とも
)
にやつて
来
(
き
)
よつて、
298
棚
(
たな
)
の
上
(
うへ
)
にある
財布
(
さいふ
)
に
目
(
め
)
をつけ、
299
……これは
昨夜
(
さくや
)
俥
(
くるま
)
の
上
(
うへ
)
に
忘
(
わす
)
れて
置
(
お
)
いた
金
(
かね
)
だとぬかし、
300
有難
(
ありがた
)
うとも
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
とも
吐
(
ぬか
)
さず、
301
ポリスの
奴
(
やつ
)
おまけに、
302
拾得物
(
しふとくぶつ
)
の
隠匿罪
(
いんとくざい
)
ででもあるやうな
面
(
つら
)
して、
303
睨
(
ね
)
めつけて
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
ひやがつた。
304
怪体
(
けたい
)
が
悪
(
わる
)
いの
悪
(
わる
)
くないのつて、
305
其
(
その
)
時
(
とき
)
丈
(
だ
)
けは
女房
(
にようばう
)
にも
申訳
(
まをしわけ
)
立
(
た
)
たず、
306
穴
(
あな
)
でもあれば
入
(
はい
)
りたい
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がしたよ。
307
それから
料理屋
(
れうりや
)
の
奴
(
やつ
)
、
308
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
の
催促
(
さいそく
)
に
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
やつて
来
(
き
)
やがる。
309
どれ
丈
(
だけ
)
働
(
はたら
)
いたつて、
310
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
はおろか
三
(
さん
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
も
出来
(
でき
)
ないので、
311
女房
(
にようばう
)
に
因果
(
いんぐわ
)
を
含
(
ふく
)
め、
312
又
(
また
)
もや
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
端
(
はし
)
つぱへ
宿替
(
やどかへ
)
をしてやつたのだ。
313
ホンの
一晩
(
ひとばん
)
ヌカ
喜
(
よろこ
)
びをした
丈
(
だけ
)
だつたよ。
314
運
(
うん
)
の
悪
(
わる
)
い
者
(
もの
)
といふ
奴
(
やつ
)
ア、
315
する
事
(
こと
)
なす
事
(
こと
)
悪
(
わる
)
いものだ。
316
あゝあ、
317
本当
(
ほんたう
)
に
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
厭
(
いや
)
になつて
了
(
しま
)
つたワイ』
318
バルガン
『ウツフヽヽ、
319
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
嬶
(
かか
)
の
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
たかつたのう』
320
ガクシー
『
丸切
(
まるき
)
り
出来損
(
できそこな
)
ひの
今戸焼
(
いまどやき
)
のダルマみた
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をしてふくれた
時
(
とき
)
にや、
321
俺
(
おれ
)
も
聊
(
いささ
)
か
面目玉
(
めんぼくだま
)
をつぶしたよ。
322
エーエ、
323
怪体
(
けたい
)
の
悪
(
わる
)
い、
324
序
(
ついで
)
にも
一
(
ひと
)
つ
話
(
はな
)
してやろ。
325
これも
人力
(
じんりき
)
引
(
ひ
)
いてゐた
時
(
とき
)
の
話
(
はなし
)
だ。
326
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
が
西
(
にし
)
の
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に
半身
(
はんしん
)
を
隠
(
かく
)
された
時分
(
じぶん
)
、
327
一人
(
ひとり
)
のお
客
(
きやく
)
がやつて
来
(
き
)
て、
328
……オイ
俥屋
(
くるまや
)
、
329
俺
(
おれ
)
はジェールの
都
(
みやこ
)
を
見物
(
けんぶつ
)
に
来
(
き
)
た
者
(
もの
)
だが、
330
人
(
ひと
)
の
顔
(
かほ
)
の
見
(
み
)
えぬ
様
(
やう
)
になる
迄
(
まで
)
、
331
十銭
(
じつせん
)
与
(
や
)
るから
乗
(
の
)
せて
呉
(
く
)
れぬか、
332
……と
吐
(
ぬか
)
すので、
333
此奴
(
こいつ
)
あボロい、
334
三町
(
さんちやう
)
か
五町
(
ごちやう
)
歩
(
ある
)
きや、
335
ズツポリと
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れるだろ。
336
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
十銭
(
じつせん
)
の
金
(
かね
)
まうけはボロいと、
337
二
(
ふた
)
つ
返事
(
へんじ
)
でお
客
(
きやく
)
を
乗
(
の
)
せ、
338
ゴロゴロと
引張
(
ひつぱり
)
出
(
だ
)
した
所
(
ところ
)
、
339
二
(
に
)
時間
(
じかん
)
たつても
三
(
さん
)
時間
(
じかん
)
たつても
下
(
お
)
りようとぬかさず、
340
とうと、
341
夜明
(
よあ
)
け
頃
(
ごろ
)
迄
(
まで
)
俥
(
くるま
)
を
引
(
ひ
)
かされた。
342
それでもまだ、
343
人
(
ひと
)
の
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
えるぢやないか、
344
とお
客
(
きやく
)
は
吐
(
ぬか
)
す。
345
可怪
(
をか
)
しいと
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで
見
(
み
)
ると、
346
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ、
347
十四日
(
じふよつか
)
の
月夜
(
つきよ
)
だつた』
348
バルガン
『ハヽヽ
可
(
い
)
い
馬鹿
(
ばか
)
だな。
349
どうで
運
(
うん
)
の
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
のする
事
(
こと
)
はそんなものだ。
350
おまけに
余程
(
よほど
)
の
頓馬
(
とんま
)
だからな、
351
フヽヽヽ』
352
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
労働者
(
らうどうしや
)
も
共
(
とも
)
に
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へてゲラゲラと
笑
(
わら
)
つてゐる。
353
そこへ
守宮別
(
やもりわけ
)
、
354
お
花
(
はな
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
何
(
なん
)
だか
意茶
(
いちや
)
つき
乍
(
なが
)
ら
坂路
(
さかみち
)
を
上
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
355
バルガン
『オイオイ、
356
彼奴
(
あいつ
)
が
日出島
(
ひのでじま
)
からやつて
来
(
き
)
たといふ、
357
フンゾ
喰
(
ぐら
)
ひの
泥酔
(
どろよひ
)
の
守宮別
(
やもりわけ
)
といふ
奴
(
やつ
)
だ。
358
そしてあの
婆
(
ばば
)
は
石灰
(
いしばひ
)
ガマの
鼬
(
いたち
)
のやうにコテコテと
白粉
(
おしろい
)
をぬつて
若
(
わか
)
う
見
(
み
)
せてゐやがるが、
359
お
寅
(
とら
)
といふ
気違婆
(
きちがひばば
)
に
違
(
ちがひ
)
ないよ。
360
一
(
ひと
)
つ
腹
(
はら
)
いせに
嬲
(
なぶ
)
つてやらうぢやないか』
361
ガクシー
『なぶつたつて
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
362
何
(
なん
)
とか
因縁
(
いんねん
)
をつけて、
363
懐
(
ふところ
)
の
金
(
かね
)
でも、
364
おつぽり
出
(
だ
)
さすよにせなけや、
365
忽
(
たちま
)
ち
明日
(
あす
)
の
生計
(
せいけい
)
が
立
(
た
)
たないからの』
366
バルガン
『それもさうだ、
367
一
(
ひと
)
つ
相手
(
あひて
)
になつてみよう』
368
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
369
守宮別
(
やもりわけ
)
の
前
(
まへ
)
にツカツカと
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
り、
370
バルガン
『エ、
371
一寸
(
ちよつと
)
物
(
もの
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まをし
)
ますが、
372
日出島
(
ひのでじま
)
からお
越
(
こし
)
になつてゐる、
373
守宮別
(
やもりわけ
)
さまといふ
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
は
貴方
(
あなた
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
374
守宮別
『ウン、
375
俺
(
おれ
)
は
守宮別
(
やもりわけ
)
だ。
376
何
(
なん
)
ぞ
用
(
よう
)
かな』
377
バルガン
『ハイ、
378
別
(
べつ
)
に
用
(
よう
)
といふては
厶
(
ござ
)
いませぬが』
379
守宮別
『
何
(
なん
)
だい、
380
用
(
よう
)
がなけりや、
381
アタ
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
い、
382
尋
(
たづ
)
ねるに
及
(
およ
)
ばぬぢやないか』
383
バルガン
『オイ、
384
ガクシー、
385
之
(
これ
)
から
汝
(
きさま
)
の
番
(
ばん
)
だ。
386
何
(
なん
)
だか
尋
(
たづ
)
ねる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
があるやうに
云
(
い
)
つてたぢやないか。
387
ドンドンと、
388
それ、
389
物
(
もの
)
になる
迄
(
まで
)
尋
(
たづ
)
ねるのだぞ』
390
ガクシー
『ヨシ
来
(
き
)
た。
391
之
(
これ
)
からが
俺
(
おれ
)
の
本舞台
(
ほんぶたい
)
だ。
392
モシモシ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
393
此
(
この
)
御
(
ご
)
婦人
(
ふじん
)
はお
寅
(
とら
)
さまでせうね。
394
最前
(
さいぜん
)
も
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
395
神聖
(
しんせい
)
にして
犯
(
をか
)
す
可
(
べか
)
らざる
此
(
この
)
霊山
(
れいざん
)
へ、
396
お
寅
(
とら
)
さまと
意茶
(
いちや
)
つきもつて、
397
お
登
(
のぼ
)
りになつたが、
398
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
をやつて
貰
(
もら
)
ふと、
399
聖地
(
せいち
)
が
汚
(
けが
)
れますよ。
400
エルサレムの
市民
(
しみん
)
がこんな
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かうものなら、
401
お
前
(
まへ
)
さま、
402
どんな
事
(
こと
)
になるか
知
(
し
)
れませぬぜ』
403
守宮別
『ハツハヽヽヽ、
404
妬
(
や
)
くない
妬
(
や
)
くない、
405
アレは、
406
あやめのお
花
(
はな
)
といつて、
407
日出島
(
ひのでじま
)
切
(
き
)
つての
別嬪
(
べつぴん
)
だ。
408
お
寅
(
とら
)
なンか
古
(
ふる
)
めかしいワ。
409
今日
(
けふ
)
更
(
あらた
)
めて
結婚式
(
けつこんしき
)
をあげ、
410
此
(
この
)
霊山
(
れいざん
)
へ
御
(
お
)
礼参
(
れいまゐ
)
り
傍
(
かたがた
)
、
411
新婚
(
しんこん
)
旅行
(
りよかう
)
と
洒落
(
しやれ
)
てゐるのだ。
412
神
(
かみ
)
さまだつて、
413
聖場
(
せいぢやう
)
だつて、
414
夫婦
(
ふうふ
)
が
参
(
まゐ
)
るのを
咎
(
とが
)
める
理由
(
りいう
)
はあるまい。
415
自由
(
じいう
)
の
権
(
けん
)
だ。
416
放
(
ほ
)
つといてくれ』
417
ガクシー
『
放
(
ほ
)
つとけといつても、
418
放
(
ほ
)
つとけぬワイ』
419
守宮別
『ソンナラ
何
(
ど
)
うするといふのだ』
420
ガクシー
『
汝
(
きさま
)
の
生命
(
いのち
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
するのだ、
421
覚悟
(
かくご
)
せい』
422
守宮別
『ハヽヽヽヽ、
423
おあいにくさま。
424
一
(
ひと
)
つより
無
(
な
)
い
大事
(
だいじ
)
な
大事
(
だいじ
)
な
生命
(
いのち
)
は、
425
新夫人
(
しんふじん
)
の
花子
(
はなこ
)
嬢
(
ぢやう
)
にサーツパリ
与
(
あた
)
へて
了
(
しま
)
うたのだ。
426
モウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
やらうといつたつて、
427
やる
物
(
もの
)
がないワイ』
428
お花
『ホヽヽヽ、
429
もしもし
皆様
(
みなさま
)
、
430
守宮別
(
やもりわけ
)
さまの
命
(
いのち
)
は
皆
(
みな
)
このお
花
(
はな
)
が
頂戴
(
ちやうだい
)
したのですよ』
431
ガクシー
『エー、
432
のろけよるない。
433
ここを
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てゐやがる』
434
お花
『ここはパレスチナの
中心地
(
ちうしんち
)
、
435
エルサレムの
市街
(
しがい
)
を
下
(
した
)
に
見
(
み
)
る、
436
キリスト
再臨
(
さいりん
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き、
437
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
中腹
(
ちうふく
)
ですよ』
438
ガクシー
『そらなーんぬかしてけつかる。
439
誰
(
たれ
)
がソンナ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いてゐるかい。
440
サ、
441
汝
(
きさま
)
の
命
(
いのち
)
と
守宮別
(
やもりわけ
)
の
命
(
いのち
)
と、
442
二
(
ふた
)
つ
乍
(
なが
)
ら
一緒
(
いつしよ
)
に
貰
(
もら
)
はう、
443
サ
覚悟
(
かくご
)
せい』
444
お花
『お
易
(
やす
)
い
御用
(
ごよう
)
、
445
何卒
(
どうぞ
)
、
446
生命
(
いのち
)
をお
取
(
と
)
りやしたら、
447
頼
(
たの
)
んでおきますが、
448
守宮別
(
やもりわけ
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
体
(
からだ
)
を
引括
(
ひつくく
)
つて
葬
(
はうむ
)
つて
下
(
くだ
)
さいや』
449
ガクシー
『エー、
450
此奴
(
こいつ
)
アたまらぬ、
451
まだ
惚
(
のろ
)
けてゐやがる。
452
箸
(
はし
)
にも
棒
(
ぼう
)
にもかからぬ
代物
(
しろもの
)
だな』
453
お花
『ホヽヽヽ、
454
どうで、
455
お
前
(
まへ
)
さま
方
(
がた
)
の
手
(
て
)
に
合
(
あ
)
ふやうな
女
(
をんな
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬワイな。
456
お
前
(
まへ
)
さまは
其
(
そ
)
んな
事
(
こと
)
いつてお
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しいのだろ。
457
お
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しけらほしいと、
458
なぜ
男
(
をとこ
)
らしうスツパリ
言
(
い
)
はぬのだい』
459
ガクシー
『
斯
(
か
)
うしてここに
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
も
待
(
ま
)
つてゐるのだから、
460
少々
(
せうせう
)
の
目
(
め
)
くされ
金
(
がね
)
位
(
ぐらゐ
)
貰
(
もら
)
つたつて
仕方
(
しかた
)
がないワ。
461
とつとと
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
許
(
ばか
)
しよこせ、
462
さうすりや、
463
無事
(
ぶじ
)
に
此
(
この
)
関所
(
せきしよ
)
を
通過
(
つうくわ
)
さしてやるワ。
464
淫乱婆
(
いんらんばば
)
奴
(
め
)
が……』
465
お花
『ホヽヽ、
466
妾
(
わたし
)
は
衆生
(
しゆじやう
)
済度
(
さいど
)
の
為
(
ため
)
、
467
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
現
(
あら
)
はれた
真宗
(
しんしう
)
の
開山
(
かいざん
)
いんらん
上人
(
しやうにん
)
ですよ。
468
肉食
(
にくじき
)
妻帯
(
さいたい
)
、
469
勝手
(
かつて
)
たるべしといふ
宗門
(
しうもん
)
を
開
(
ひら
)
いたのだから、
470
別
(
べつ
)
に
守宮別
(
やもりわけ
)
さまと
手
(
て
)
をつないで
聖地
(
せいち
)
を
歩
(
ある
)
いたつて、
471
霊山
(
れいざん
)
の
法則
(
はふそく
)
に
反
(
そむ
)
きも
致
(
いた
)
しますまい。
472
アタ
甲斐性
(
かひしやう
)
のない。
473
大
(
おほ
)
きな
荒男
(
あらをとこ
)
が
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
も
寄
(
よ
)
つて、
474
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
呉
(
く
)
れなんて、
475
よくも
言
(
い
)
へたものだな、
476
せめて
一万
(
いちまん
)
両
(
りやう
)
出
(
だ
)
してくれと
何故
(
なぜ
)
言
(
い
)
はぬのだい』
477
ガクシー
『
一万
(
いちまん
)
両
(
りやう
)
でも
十万
(
じふまん
)
両
(
りやう
)
でも、
478
請求
(
せいきう
)
するこたア
知
(
し
)
つてるが、
479
其
(
その
)
面
(
つら
)
で
大
(
おほ
)
きな
事
(
こと
)
いつたつて、
480
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
相
(
さう
)
な
事
(
こと
)
がない。
481
それだから、
482
汝
(
そなた
)
の
風体
(
ふうてい
)
相応
(
さうおう
)
に
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
と
云
(
い
)
つたのだ』
483
お花
『ヘン、
484
ソンナ
貧乏
(
びんばふ
)
と
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さるのかい。
485
コレ
御覧
(
ごらん
)
、
486
此
(
この
)
貯金帳
(
ちよきんちやう
)
にチヤンと
一万
(
いちまん
)
両
(
りやう
)
付
(
つ
)
いてるでせう。
487
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何程
(
なにほど
)
請求
(
せいきう
)
したつて、
488
やるやらぬは
此方
(
こつち
)
の
自由
(
じいう
)
だ。
489
そんなら
仕方
(
しかた
)
がないから、
490
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
恵
(
めぐ
)
んで
上
(
あ
)
げませう。
491
今後
(
こんご
)
は
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
無心
(
むしん
)
を
云
(
い
)
つちやなりませぬよ』
492
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
493
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
束
(
たば
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
せば、
494
ガクシー
『ヤア、
495
これはこれは
有難
(
ありがた
)
う、
496
三拝
(
さんぱい
)
九拝
(
きうはい
)
、
497
正
(
まさ
)
に
頂戴
(
ちやうだい
)
仕
(
つかまつ
)
ります。
498
どうか
又
(
また
)
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
499
お花
『
嫌
(
いや
)
だよ、
500
もうこれつ
切
(
き
)
りだから、
501
覚悟
(
かくご
)
しなさい。
502
サ、
503
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
504
早
(
はや
)
くお
山
(
やま
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
りませう』
505
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
十四五
(
じふしご
)
人
(
にん
)
の
武装
(
ぶさう
)
した
憲兵
(
けんぺい
)
警官
(
けいくわん
)
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
506
バルガン、
507
ガクシーを
始
(
はじ
)
め
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
労働者
(
らうどうしや
)
を
有無
(
うむ
)
をいはせず、
508
ふん
縛
(
じば
)
り、
509
坂路
(
さかみち
)
を
引立
(
ひつた
)
てて
行
(
ゆ
)
く。
510
お
花
(
はな
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
るより
又
(
また
)
守宮別
(
やもりわけ
)
が
下
(
くだ
)
らぬ
義侠心
(
ぎけふしん
)
を
出
(
だ
)
してくれては
面倒
(
めんだう
)
だと、
511
守宮別
(
やもりわけ
)
の
手
(
て
)
を
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
に
引張
(
ひつぱ
)
り
急坂
(
きふはん
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
512
(
大正一四・八・二〇
旧七・一
於由良秋田別荘
松村真澄
録)
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