霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
01 復活祭
〔1807〕
02 逆襲
〔1808〕
03 草居谷底
〔1809〕
04 誤霊城
〔1810〕
05 横恋慕
〔1811〕
第2篇 鬼薊の花
06 金酒結婚
〔1812〕
07 虎角
〔1813〕
08 擬侠心
〔1814〕
09 狂怪戦
〔1815〕
10 拘淫
〔1816〕
第3篇 開花落花
11 狂擬怪
〔1817〕
12 開狂式
〔1818〕
13 漆別
〔1819〕
14 花曇
〔1820〕
15 騒淫ホテル
〔1821〕
第4篇 清風一過
16 誤辛折
〔1822〕
17 茶粕
〔1823〕
18 誠と偽
〔1824〕
19 笑拙種
〔1825〕
20 猫鞍干
〔1826〕
21 不意の官命
〔1827〕
22 帰国と鬼哭
〔1828〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第64巻下
> 第3篇 開花落花 > 第13章 漆別
<<< 開狂式
(B)
(N)
花曇 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一三章
漆別
(
うるしわけ
)
〔一八一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第3篇 開花落花
よみ(新仮名遣い):
かいからっか
章:
第13章 漆別
よみ(新仮名遣い):
うるしわけ
通し章番号:
1819
口述日:
1925(大正14)年08月20日(旧07月1日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
路上、青楼(有明家)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-11-26 19:10:13
OBC :
rm64b13
愛善世界社版:
174頁
八幡書店版:
第11輯 560頁
修補版:
校定版:
177頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
昨日
(
さくじつ
)
の
暴動
(
ばうどう
)
騒
(
さわ
)
ぎで、
002
憲兵
(
けんぺい
)
や
警官
(
けいくわん
)
が
血眼
(
ちまなこ
)
になり、
003
行交
(
ゆきか
)
ふ
人
(
ひと
)
を
一々
(
いちいち
)
誰何
(
すいか
)
して、
004
主義者
(
しゆぎしや
)
の
入込
(
いりこ
)
まない
様
(
やう
)
と、
005
警戒網
(
けいかいまう
)
を
張
(
は
)
つてゐる。
006
守宮別
(
やもりわけ
)
は
新調
(
しんてう
)
の
洋服
(
やうふく
)
を
着
(
つ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
007
駅
(
えき
)
の
棟
(
むね
)
が
仄
(
ほの
)
かに
見
(
み
)
える
地点
(
ちてん
)
までやつて
来
(
く
)
ると、
008
一人
(
ひとり
)
の
警官
(
けいくわん
)
がツカツカと
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
り、
009
警官
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
010
身体
(
しんたい
)
検査
(
けんさ
)
を
致
(
いた
)
しますから』
011
守宮別
(
やもりわけ
)
は
警官
(
けいくわん
)
よりも
何
(
なに
)
よりも
恐
(
おそ
)
ろしいのは、
012
疑深
(
うたがひぶか
)
いお
花
(
はな
)
の
追跡
(
つゐせき
)
である。
013
余
(
あま
)
り
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
をキヨロキヨロと
見廻
(
みまは
)
し
乍
(
なが
)
ら
歩
(
ある
)
いてゐたものだから、
014
警官
(
けいくわん
)
に
怪
(
あや
)
しまれて、
015
首尾
(
しゆび
)
よく
取
(
と
)
つ
捉
(
つか
)
まれたるなりき。
016
守宮別
『
私
(
わたし
)
は
守宮別
(
やもりわけ
)
です。
017
警官
(
けいくわん
)
に
調
(
しら
)
べられる
理由
(
りいう
)
はありませぬ。
018
これでも
日出島
(
ひのでじま
)
の
高等
(
かうとう
)
武官
(
ぶくわん
)
ですよ。
019
余
(
あま
)
り
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をなさると、
020
帝国
(
ていこく
)
公使館
(
こうしくわん
)
へ
訴
(
うつた
)
へて、
021
エルサレム
署
(
しよ
)
の
暴状
(
ばうじやう
)
を
曝露
(
ばくろ
)
し、
022
国際
(
こくさい
)
問題
(
もんだい
)
を
起
(
おこ
)
しますよ、
023
そこ
放
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さい。
024
急用
(
きふよう
)
がありますから』
025
警官
『さう
慌
(
あわ
)
てるには
及
(
およ
)
ばないぢやありませぬか。
026
どうも
其処辺
(
そこら
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し、
027
おちつきの
無
(
な
)
い
貴方
(
あなた
)
の
歩
(
ある
)
き
方
(
かた
)
、
028
挙動
(
きよどう
)
不審
(
ふしん
)
と
認
(
みと
)
めますから、
029
一応
(
いちおう
)
身体
(
しんたい
)
を
取調
(
とりしら
)
べます』
030
守宮別
『
取調
(
とりしら
)
べるなら
調
(
しら
)
べても
宜
(
よろ
)
しい。
031
後腹
(
あとばら
)
の
病
(
や
)
めないやうに
気
(
き
)
をつけなさいや、
032
ヘン、
033
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしてゐる』
034
といひ
乍
(
なが
)
ら、
035
自分
(
じぶん
)
からボタンを
外
(
はづ
)
し、
036
大道
(
だいだう
)
のまん
中
(
なか
)
で、
037
赤裸
(
まつぱだか
)
となり、
038
オチコもポホラのヌボも
丸出
(
まるだ
)
しにして
見
(
み
)
せる。
039
警官
『イヤ、
040
宜
(
よろ
)
しい、
041
エー
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しました。
042
どうぞ
服
(
ふく
)
を
着
(
つ
)
けて
下
(
くだ
)
さい』
043
守宮別
『
服
(
ふく
)
を
着
(
き
)
いと
言
(
い
)
はなくとも、
044
俺
(
おれ
)
の
服
(
ふく
)
だ、
045
勝手
(
かつて
)
に
着
(
き
)
るワイ。
046
要
(
い
)
らぬ
おとがい
を
叩
(
たた
)
くな』
047
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
048
スラスラと
洋服
(
やうふく
)
を
着
(
つ
)
け、
049
十日
(
とをか
)
程
(
ほど
)
前
(
まへ
)
にチラツと
見
(
み
)
ておいた、
050
白首
(
しらくび
)
の
居
(
ゐ
)
る
青楼
(
せいろう
)
指
(
さ
)
して、
051
一目散
(
いちもくさん
)
に
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
052
裸
(
はだか
)
になつた
際
(
さい
)
、
053
三千
(
さんぜん
)
円
(
ゑん
)
入
(
い
)
りの
蟇口
(
がまぐち
)
を
落
(
おと
)
し、
054
気
(
き
)
がつかぬ
様子
(
やうす
)
なので、
055
警官
(
けいくわん
)
は
何
(
なに
)
か
秘密
(
ひみつ
)
書類
(
しよるゐ
)
でもあるのではなかろか。
056
日出島
(
ひのでじま
)
の
高等
(
かうとう
)
武官
(
ぶくわん
)
だと
云
(
い
)
ひよつたから、
057
軍事
(
ぐんじ
)
探偵
(
たんてい
)
かも
知
(
し
)
れない。
058
軍備
(
ぐんび
)
に
関
(
くわん
)
する
秘密
(
ひみつ
)
書類
(
しよるゐ
)
でもあらうものなら、
059
巡査
(
じゆんさ
)
部長
(
ぶちやう
)
は
忽
(
たちま
)
ち
警部
(
けいぶ
)
になれるだらうといふ、
060
いろいろな
考
(
かんが
)
へから、
061
ソツと
拾
(
ひろ
)
ひあげ、
062
本署
(
ほんしよ
)
へ
持帰
(
もちかへ
)
り
署長
(
しよちやう
)
の
前
(
まへ
)
で
中
(
なか
)
を
検
(
あらた
)
める
事
(
こと
)
とした。
063
守宮別
(
やもりわけ
)
は
確
(
たしか
)
にポケツトの
中
(
なか
)
に
蟇口
(
がまぐち
)
と
共
(
とも
)
に
三千
(
さんぜん
)
円
(
ゑん
)
入
(
はい
)
つてゐるものと
安心
(
あんしん
)
し、
064
鷹揚
(
おうやう
)
な
態度
(
たいど
)
で、
065
青楼
(
せいろう
)
の
段階子
(
だんばしご
)
を
上
(
のぼ
)
り、
066
三階
(
さんがい
)
の
見晴
(
みはらし
)
よき
一間
(
ひとま
)
に
入
(
はい
)
つて、
067
頻
(
しき
)
りに
手
(
て
)
を
叩
(
たた
)
いてゐる。
068
階下
(
かいか
)
の
方
(
はう
)
に『ハーイ』といふ
甲走
(
かんばし
)
つた
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
がしたと
思
(
おも
)
へば、
069
間
(
ま
)
もなく、
070
トントントンと
段階子
(
だんばしご
)
を
轟
(
とどろ
)
かせ
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
たのは、
071
兼
(
かね
)
て
見
(
み
)
ておいた、
072
色白
(
いろじろ
)
の
十七八
(
じふしちはち
)
の
美人
(
びじん
)
である。
073
守宮別
(
やもりわけ
)
は
俄
(
にはか
)
に
口
(
くち
)
のはたの
泡
(
あわ
)
を
拭
(
ふ
)
いたり
目
(
め
)
ヤニを
取
(
と
)
つたり、
074
鼻
(
はな
)
をかみたりし
乍
(
なが
)
ら、
075
済
(
す
)
ました
顔
(
かほ
)
で
控
(
ひか
)
へてゐると、
076
女(綾子)
『お
客
(
きやく
)
さま、
077
コンチは、
078
今日
(
コンチ
)
はありー……』
079
守宮別
『ホヽヽヽ、
080
何
(
なん
)
だ
今日
(
コンチ
)
は
有
(
あ
)
りーと
云
(
い
)
ふたつて
分
(
わか
)
らぬぢやないか。
081
俺
(
おれ
)
や
砂糖
(
さたう
)
ではないぞ、
082
佐渡
(
さど
)
の
土
(
つち
)
の
化身
(
けしん
)
だぞ。
083
モツとハツキリ
言
(
い
)
はぬかい』
084
女(綾子)
『ハイ、
085
あテイは、
086
総理
(
そうり
)
大臣
(
だいじん
)
に
呼
(
よ
)
ばれましても、
087
知事
(
ちじ
)
さまに
招
(
よ
)
ばれましても、
088
華族
(
くわぞく
)
さまによばれましても、
089
今日
(
こんち
)
はアリーで
通
(
とほ
)
るのですもの、
090
今
(
いま
)
のお
役人
(
やくにん
)
さまは、
091
官等
(
くわんとう
)
で
一級
(
いつきふ
)
違
(
ちが
)
ふと、
092
それはそれは
偉
(
えら
)
いものですがな。
093
局長
(
きよくちやう
)
さまの
所
(
ところ
)
へ
課長
(
くわちやう
)
さまがお
出
(
いで
)
になると、
094
直立
(
ちよくりつ
)
不動
(
ふどう
)
の
姿勢
(
しせい
)
で、
095
……ハ、
096
ハ、
097
ハヽヽと、
098
かう
畏
(
かしこ
)
まつてゐやはります。
099
局長
(
きよくちやう
)
さまは
局長
(
きよくちやう
)
さまで、
100
不行儀
(
ふぎやうぎ
)
な
格好
(
かくかう
)
で、
101
椅子
(
いす
)
にのさばり
返
(
かへ
)
つて、
102
……
何々
(
なになに
)
の
事務
(
じむ
)
は
何
(
ど
)
うなつたか、
103
巧
(
うま
)
くやつとけよ……と
仰有
(
おつしや
)
ひます。
104
さうすると、
105
課長
(
くわちやう
)
さまは、
106
……ハア、
107
オチ
二三
(
にさん
)
式
(
しき
)
で、
108
怖
(
こは
)
い
様
(
やう
)
にして
下
(
さが
)
つて
行
(
い
)
かはりますワ。
109
其
(
その
)
局長
(
きよくちやう
)
さまが
大臣
(
だいじん
)
の
側
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
くと
前
(
まへ
)
の
課長
(
くわちやう
)
さまよりも、
110
マ
一
(
ひと
)
つエライ
謹慎振
(
きんしんぶり
)
ですよ。
111
総理
(
そうり
)
大臣
(
だいじん
)
と
来
(
き
)
ちや
剛勢
(
がうせい
)
なものですよ。
112
其
(
その
)
総理
(
そうり
)
大臣
(
だいじん
)
さまがチョコチョコ
妾
(
あたい
)
を
呼
(
よ
)
んで
呉
(
く
)
れやはりますが、
113
イヤもう
女
(
をんな
)
にかけたら、
114
ヤクタイなものですワ。
115
おつもの
毛
(
け
)
を
握
(
にぎ
)
つたり、
116
鼻
(
はな
)
をつまみ、
117
頤髯
(
あごひげ
)
を
掴
(
つか
)
んでパクパクさして
上
(
あ
)
げても、
118
顔
(
かほ
)
の
相好
(
さうがう
)
を
崩
(
くづ
)
して……コリヤ
綾子
(
あやこ
)
、
119
無茶
(
むちや
)
をするない……かう
仰有
(
おつしや
)
るのですもの、
120
絶対
(
ぜつたい
)
無限
(
むげん
)
の
権威
(
けんゐ
)
を、
121
芸者
(
げいしや
)
といふものは
具備
(
ぐび
)
してゐますよ。
122
それだから、
123
お
客
(
きやく
)
さまに、
124
アリー……といつたのは
余程
(
よほど
)
光栄
(
くわうえい
)
だと
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
125
守宮別
『
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い、
126
一寸
(
ちよつと
)
話
(
はな
)
せるワイ。
127
お
前
(
まへ
)
は
今
(
いま
)
綾子
(
あやこ
)
といつたが、
128
本名
(
ほんみやう
)
は
何
(
なん
)
といふのだ』
129
綾子
『ハイ、
130
妾
(
あたい
)
の
本名
(
ほんみやう
)
も
綾子
(
あやこ
)
、
131
源氏名
(
げんじな
)
は
有明家
(
ありあけや
)
の
綾子
(
あやこ
)
さまですよ』
132
守宮別
『ナニ?
綾子
(
あやこ
)
に
菖蒲
(
あやめ
)
、
133
怪体
(
けつたい
)
な
事
(
こと
)
もあるものだな。
134
女
(
をんな
)
に
迷
(
まよ
)
ふと
あやめ
も
分
(
わ
)
かぬ
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
になるといふ
事
(
こと
)
だが、
135
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
もチツと
許
(
ばか
)
り
あや
しうなつて
来
(
き
)
たぞ』
136
綾子
『お
客
(
きやく
)
さま、
137
何程
(
なにほど
)
あやめ
が
分
(
わか
)
らなくなつても、
138
綾子
(
あやこ
)
しい
事
(
こと
)
さへ
無
(
な
)
けりや、
139
晴天
(
せいてん
)
白日
(
はくじつ
)
ですワ』
140
守宮別
『イヤ、
141
実
(
じつ
)
ア
観世音
(
くわんぜおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
綾子
(
あやこ
)
の
君
(
きみ
)
の
艶麗
(
えんれい
)
な
御
(
ご
)
容姿
(
ようし
)
を
拝観
(
はいくわん
)
して、
142
心
(
こころ
)
の
土台
(
どだい
)
が
あや
しくグラ
付
(
つ
)
き
出
(
だ
)
したのだよ。
143
オイ、
144
綾子
(
あやこ
)
、
145
素面
(
すめん
)
では
話
(
はなし
)
が
出来
(
でき
)
ない。
146
酒肴
(
さけさかな
)
を
金
(
かね
)
は
構
(
かま
)
はないから、
147
充分
(
じゆうぶん
)
拵
(
こしら
)
へて
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
てくれ。
148
そして
此処
(
ここ
)
に
芸者
(
げいしや
)
が
何人
(
なんにん
)
居
(
を
)
るか
知
(
し
)
らぬが、
149
仮令
(
たとへ
)
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
居
(
を
)
つても
結構
(
けつこう
)
だ』
150
綾子
『お
客
(
きやく
)
さま、
151
ソンナ
訳
(
わけ
)
にや
行
(
ゆ
)
きませぬよ。
152
当地
(
たうち
)
の
規則
(
きそく
)
として、
153
一人
(
ひとり
)
のお
客
(
きやく
)
さまに
一人
(
ひとり
)
より
芸者
(
げいしや
)
は
出
(
だ
)
す
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないですもの』
154
守宮別
『フーンさうか、
155
そら
仕方
(
しかた
)
がない。
156
今日
(
けふ
)
は
実
(
じつ
)
ア
三千
(
さんぜん
)
円
(
ゑん
)
の
散財
(
さんざい
)
をせうと
思
(
おも
)
つて
来
(
き
)
たのだが、
157
ナアンのこつちやい。
158
厭
(
いや
)
でも
応
(
おう
)
でも
流連
(
いつづけ
)
せねばならぬのか、
159
どれ
丈
(
だけ
)
使
(
つか
)
つたつて、
160
一人
(
ひとり
)
の
芸者
(
げいしや
)
に
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
は
使
(
つか
)
へまい。
161
さうすりや、
162
十日
(
とをか
)
も
有明楼
(
ありあけろう
)
の
牢獄
(
らうごく
)
住居
(
ずまゐ
)
かな、
163
アハヽヽヽ』
164
綾子
『
牢獄
(
らうごく
)
住居
(
ずまゐ
)
なぞと、
165
何
(
なに
)
仰有
(
おつしや
)
います。
166
激戦
(
げきせん
)
場裡
(
ぢやうり
)
に
立
(
た
)
つてゐる
紳士
(
しんし
)
紳商
(
しんしやう
)
、
167
大臣
(
だいじん
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
男
(
をとこ
)
さまが、
168
命
(
いのち
)
の
洗濯
(
せんたく
)
を
遊
(
あそ
)
ばす
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
ですよ。
169
どうかお
金
(
かね
)
さへあれば、
170
十日
(
とをか
)
なと
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
なと
千
(
せん
)
日
(
にち
)
なと、
171
流連
(
いつづけ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
172
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
妾
(
あたい
)
が
手枕
(
てまくら
)
して
可愛
(
かあい
)
がつて
上
(
あ
)
げますワ』
173
守宮別
『ヨーシ
来
(
き
)
た。
174
此奴
(
こいつ
)
ア
洒落
(
しやれ
)
てる、
175
吾
(
わが
)
意
(
い
)
を
得
(
え
)
たりといふべしだ。
176
実
(
じつ
)
ア
綾子
(
あやこ
)
、
177
俺
(
おれ
)
はな
十日
(
とをか
)
程
(
ほど
)
以前
(
いぜん
)
、
178
此
(
この
)
門先
(
かどさき
)
を
通
(
とほ
)
つた
時
(
とき
)
、
179
お
前
(
まへ
)
の
姿
(
すがた
)
をチラツと
見初
(
みそ
)
めてから、
180
煩悩
(
ぼんなう
)
の
犬
(
いぬ
)
が
狂
(
くる
)
ひ
出
(
だ
)
し、
181
寝
(
ね
)
ても
醒
(
さめ
)
てもゐられないので、
182
国許
(
くにもと
)
へ
電報
(
でんぱう
)
を
打
(
う
)
ち、
183
金
(
かね
)
を
送
(
おく
)
つて
貰
(
もら
)
つて、
184
お
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
に
来
(
き
)
たのだ。
185
俺
(
おれ
)
の
心底
(
しんてい
)
もチツトは、
186
汲取
(
くみと
)
つて
呉
(
く
)
れなくては
困
(
こま
)
るよ』
187
綾子
『あ、
188
さう
仰有
(
おつしや
)
いますと、
189
十日
(
とをか
)
程
(
ほど
)
以前
(
いぜん
)
に、
190
あの
有名
(
いうめい
)
な
気違
(
きちがひ
)
婆
(
ば
)
アさまのお
寅
(
とら
)
さまとかいふ
救世主
(
きうせいしゆ
)
のお
伴
(
とも
)
をして
歩
(
ある
)
いてゐられた、
191
ゐもり
とか、
192
とかげ
とかいふお
方
(
かた
)
ぢやありませぬか。
193
随分
(
ずゐぶん
)
親密
(
しんみつ
)
相
(
さう
)
な
態度
(
たいど
)
で
歩
(
ある
)
いてゐられましたね。
194
あんな
立派
(
りつぱ
)
な
奥
(
おく
)
さまがあるのに、
195
妾
(
あたい
)
のやうなお
多福
(
たふく
)
が
相手
(
あひて
)
になつて、
196
もしやお
寅
(
とら
)
さまに
嗅付
(
かぎつ
)
けられては、
197
妾
(
あたい
)
の
命
(
いのち
)
がありませぬワ。
198
どうか
今日
(
けふ
)
は
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいな。
199
一生
(
いつしやう
)
のお
願
(
ねがひ
)
ですもの』
200
守宮別
『
馬鹿
(
ばか
)
いふな、
201
俺
(
おれ
)
は
三
(
さん
)
ケ
月
(
げつ
)
以前
(
いぜん
)
、
202
国許
(
くにもと
)
を
出発
(
しゆつぱつ
)
し、
203
スイスのゼネバへ、
204
エスペラント
会議
(
くわいぎ
)
があつたので、
205
一寸
(
ちよつと
)
覗
(
のぞ
)
きに
行
(
い
)
つた
帰
(
かへ
)
りがけだ』
206
綾子
『
何時
(
いつ
)
ゼネバからお
帰
(
かへ
)
りになつたのですか』
207
守宮別
『ウン
昨日
(
きのふ
)
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
だ』
208
綾子
『ようマア、
209
お
客
(
きやく
)
さま、
210
ソンナ
嘘
(
うそ
)
つ
八
(
ぱち
)
が
言
(
い
)
はれたものですな、
211
現
(
げん
)
に
今
(
いま
)
妾
(
あたい
)
に、
212
十日前
(
とをかまへ
)
に
妾
(
あたい
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
たと
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか』
213
守宮別
『そら
言
(
い
)
ふた。
214
確
(
たしか
)
に
言
(
い
)
ふた。
215
其
(
その
)
十日前
(
とをかまへ
)
はゼネバへ
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
すがらだもの』
216
綾子
『
成程
(
なるほど
)
、
217
ソンナラさうにしておきませう。
218
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
金
(
かね
)
さへ
払
(
はら
)
つて
貰
(
もら
)
へば、
219
商売
(
しやうばい
)
ですから、
220
金
(
かね
)
丈
(
だけ
)
の
愛
(
あい
)
は
注
(
そそ
)
ぎますよ』
221
守宮別
『オイ
早
(
はや
)
く
酒
(
さけ
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
ぬかい、
222
座
(
ざ
)
が
白
(
しら
)
けて
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか』
223
と
云
(
い
)
つてゐる
時
(
とき
)
しも、
224
トントントンと
階段
(
かいだん
)
を
上
(
のぼ
)
る
足音
(
あしおと
)
が
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たりぬ。
225
綾子
『お
客
(
きやく
)
さま、
226
お
待兼
(
まちかね
)
のお
酒
(
さけ
)
が
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
ですワ』
227
守宮別
『ヤ、
228
其奴
(
そいつ
)
ア
豪気
(
がうき
)
だ。
229
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く、
230
待兼山
(
まちかねやま
)
の
杜鵑
(
ほととぎす
)
だ』
231
茲
(
ここ
)
に
両人
(
りやうにん
)
は
喋々
(
てふてふ
)
喃々
(
なんなん
)
と
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
み
交
(
か
)
はし、
232
下
(
くだ
)
らぬ
話
(
はなし
)
に
時
(
とき
)
を
費
(
つひや
)
したり。
233
守宮別
(
やもりわけ
)
も
綾子
(
あやこ
)
も
無敵
(
むてき
)
の
上戸
(
じやうこ
)
連
(
れん
)
で
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
七八十
(
しちはちじつ
)
本
(
ぽん
)
の
燗徳利
(
かんとつくり
)
をこかして
了
(
しま
)
ひぬ。
234
綾子
(
あやこ
)
は
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふたが
最後
(
さいご
)
、
235
仕
(
し
)
だらのない
女性
(
ぢよせい
)
で、
236
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
から、
237
お
膳
(
ぜん
)
を
据
(
す
)
ゑるといふ、
238
したたか
者
(
もの
)
である。
239
守宮別
(
やもりわけ
)
は
益々
(
ますます
)
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
り、
240
守宮別
『アヽア、
241
一万
(
いちまん
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
があれば、
242
一月
(
ひとつき
)
は
悠
(
ゆつ
)
くり
遊
(
あそ
)
べるのになア……』
243
と
私
(
ひそ
)
かに
歎息
(
たんそく
)
をもらし
乍
(
なが
)
ら、
244
会
(
あ
)
ふた
時
(
とき
)
に
笠
(
かさ
)
ぬげ
式
(
しき
)
で、
245
味
(
あぢ
)
の
悪
(
わる
)
い
蛤
(
はまぐり
)
を
食
(
く
)
つた
口直
(
くちなほ
)
しにと、
246
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
への
大活劇
(
だいくわつげき
)
をやり
出
(
だ
)
した。
247
到当
(
たうとう
)
二人
(
ふたり
)
は
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
から
爪
(
つめ
)
の
先
(
さき
)
迄
(
まで
)
解
(
と
)
け
合
(
あ
)
ふて
了
(
しま
)
ひ、
248
切
(
き
)
つても
切
(
き
)
れぬ
恋仲
(
こひなか
)
となりにけり。
249
守宮別
『オイ、
250
綾子
(
あやこ
)
、
251
お
前
(
まへ
)
は
一体
(
いつたい
)
どこから
来
(
き
)
たのだい』
252
綾子
『ハイ
妾
(
あたい
)
はエルサレム
生
(
うま
)
れですよ。
253
お
父
(
とう
)
さまが
極道
(
ごくだう
)
だものですから、
254
たうとう
妾
(
あたい
)
をコンナ
所
(
ところ
)
へ
売
(
う
)
つて
了
(
しま
)
つたのです。
255
妾
(
あたい
)
の
生
(
うま
)
れた
時
(
とき
)
は
相当
(
さうたう
)
な
財産家
(
ざいさんか
)
だつたさうですが
間
(
ま
)
もなくお
母
(
かあ
)
さまが
亡
(
な
)
くなられたので、
256
お
父
(
とう
)
さまが
後妻
(
ごさい
)
を
引入
(
ひきい
)
れ、
257
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
酒池
(
しゆち
)
肉林
(
にくりん
)
の
大騒
(
おほさわ
)
ぎ、
258
何程
(
なにほど
)
金
(
かね
)
が
有
(
あ
)
つても
働
(
はたら
)
かずに
食
(
く
)
つて
許
(
ばか
)
り
居
(
を
)
れば、
259
山
(
やま
)
さへ
無
(
な
)
くなる
道理
(
だうり
)
、
260
たうとう
貧乏
(
びんばふ
)
のドン
底
(
ぞこ
)
に
落
(
お
)
ちて、
261
首
(
くび
)
がまはらぬので、
262
妾
(
あたい
)
を
十一
(
じふいち
)
の
年
(
とし
)
から、
263
此
(
この
)
有明楼
(
ありあけろう
)
へ
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
千
(
せん
)
円
(
ゑん
)
の
約束
(
やくそく
)
で
売
(
う
)
つて
了
(
しま
)
つたのです。
264
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つた
親
(
おや
)
ですワ』
265
守宮別
『フーン、
266
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
けば
聞
(
き
)
く
程
(
ほど
)
可哀相
(
かあいさう
)
だ。
267
ヨーシ、
268
俺
(
おれ
)
がキツと
助
(
たす
)
けてやるから
心配
(
しんぱい
)
するな。
269
お
前
(
まへ
)
のお
父
(
とう
)
さまといふのは
今
(
いま
)
何
(
なに
)
してゐるのだ』
270
綾子
『ヘー、
271
気違
(
きちがひ
)
婆
(
ば
)
アさまと
仇名
(
あだな
)
を
取
(
と
)
つた、
272
お
寅
(
とら
)
さまとかいふ
方
(
かた
)
の、
273
玄関番
(
げんくわんばん
)
に
雇
(
やと
)
はれてるといふ
事
(
こと
)
ですが、
274
どうなつたか
知
(
し
)
りませぬ。
275
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
も
旦那
(
だんな
)
さまによう
似
(
に
)
た
男
(
をとこ
)
ハンとお
寅
(
とら
)
さまと、
276
妾
(
あたい
)
のお
父
(
とう
)
さまと、
277
ここの
門
(
かど
)
に
立
(
た
)
ち、
278
妾
(
あたい
)
を
指
(
ゆび
)
さしてゐました。
279
アンナ
人
(
ひと
)
がお
父
(
とう
)
さまかと
思
(
おも
)
へば
恥
(
はづか
)
しうて
堪
(
たま
)
りませぬワ』
280
守宮別
『ナニ、
281
あのヤク、
282
……』
283
といひかけて、
284
俄
(
にはか
)
に
口
(
くち
)
をつめ、
285
守宮別
『ソリヤ、
286
ヤク
介者
(
かいもの
)
だなア。
287
お
前
(
まへ
)
の
心痛
(
しんつう
)
も
察
(
さつ
)
する。
288
併
(
しか
)
し
人間
(
にんげん
)
は
七転
(
ななころび
)
八起
(
やおき
)
といふから
心配
(
しんぱい
)
するには
当
(
あた
)
らないよ』
289
綾子
『ハイ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
290
旦那
(
だんな
)
さま、
291
何
(
ど
)
う
考
(
かんが
)
へても、
292
お
寅
(
とら
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
られた、
293
守宮別
(
やもりわけ
)
さまのやうに
思
(
おも
)
へて
仕方
(
しかた
)
がありませぬワ』
294
守宮別
『そら
世界
(
せかい
)
にや、
295
他人
(
たにん
)
の
空似
(
そらに
)
といつて、
296
よく
似
(
に
)
た
者
(
もの
)
が
二人
(
ふたり
)
づつあるといふ
事
(
こと
)
だから。
297
それ
程
(
ほど
)
又
(
また
)
私
(
わし
)
に
能
(
よ
)
う
似
(
に
)
た
男
(
をとこ
)
があつたかいな』
298
綾子
『
色
(
いろ
)
の
浅黒
(
あさぐろ
)
い、
299
口
(
くち
)
の
尖
(
とが
)
つた
所
(
ところ
)
、
300
目
(
め
)
の
丸
(
まる
)
い
所
(
ところ
)
、
301
鼻
(
はな
)
の
格好
(
かくかう
)
、
302
毛
(
け
)
の
伸
(
の
)
び
具合
(
ぐあひ
)
、
303
どつから
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
瓜二
(
うりふた
)
つですワ、
304
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
があるものですな』
305
守宮別
『
綾子
(
あやこ
)
、
306
もうソンナこたア、
307
何
(
ど
)
うでも
可
(
い
)
いから、
308
一
(
ひと
)
つあつさり
唄
(
うた
)
はうぢやないか』
309
綾子
『どうか
一
(
ひと
)
つ
旦那
(
だんな
)
さまから
唄
(
うた
)
つて
下
(
くだ
)
さいな。
310
そして、
311
旦那
(
だんな
)
さまのお
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいな。
312
旦那
(
だんな
)
さま
旦那
(
だんな
)
さまでは、
313
根
(
ね
)
つから
気
(
き
)
が
行
(
ゆ
)
きませぬからな』
314
守宮別
『ウン、
315
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
かい、
316
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
は……ウン、
317
さうだな、
318
マア、
319
ブラバーサにしておかうかい』
320
綾子
『
旦那
(
だんな
)
さまツたら、
321
なまくらな。
322
そら
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
名
(
な
)
ぢやありませぬか。
323
意茶
(
いちや
)
つかさずに
本当
(
ほんたう
)
の
名
(
な
)
を
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいな』
324
守宮別
『さう
短兵急
(
たんぺいきふ
)
に
追及
(
ついきふ
)
されては、
325
早速
(
さつそく
)
に
名
(
な
)
が
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ぬワ。
326
マテマテ、
327
急
(
せ
)
くな、
328
慌
(
あわ
)
てな、
329
せいては
事
(
こと
)
を
仕損
(
しそん
)
ずるからなア』
330
綾子
『せかねば
事
(
こと
)
が
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はず……とかいひましてね、
331
ホヽヽヽヽ』
332
守宮別
『
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
いて
驚
(
おどろ
)
くな。
333
吾
(
わ
)
れこそは、
334
日出
(
ひので
)
の
島
(
しま
)
にて
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き、
335
ウヅンバラ・チヤンダーといふ
者
(
もの
)
だよ』
336
綾子
『
嘘
(
うそ
)
許
(
ばか
)
り、
337
ウヅンバラ・チヤンダーは
救世主
(
きうせいしゆ
)
ぢやありませぬか』
338
守宮別
『
此奴
(
こいつ
)
ア
失敗
(
しま
)
つた。
339
実
(
じつ
)
は
漆別
(
うるしわけ
)
といふのだよ』
340
綾子
『
本当
(
ほんたう
)
ですか、
341
漆別
(
うるしわけ
)
か、
342
うるさい
別
(
わけ
)
か
知
(
し
)
らぬけれど、
343
何
(
なん
)
だか
判然
(
はつきり
)
せぬお
名前
(
なまへ
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
344
守宮別
『まア
何
(
ど
)
うでも
可
(
い
)
い。
345
目出度
(
めでたく
)
これで
帰敬式
(
ききやうしき
)
も
済
(
す
)
むだのだから、
346
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とは
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
した
夫婦
(
ふうふ
)
だ。
347
何
(
ど
)
うだ
嬉
(
うれ
)
しいか』
348
綾子
(
あやこ
)
はプリンと
背
(
せ
)
を
向
(
む
)
けて、
349
綾子
『
知
(
し
)
りませぬ』
350
守宮別
『ハヽア、
351
肝腎
(
かんじん
)
の
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
を
)
つたワイ。
352
お
愛想
(
あいそ
)
をするのを……』
353
といひ
乍
(
なが
)
ら、
354
ポケットに
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れて
見
(
み
)
たが
蟇口
(
がまぐち
)
が
無
(
な
)
いので、
355
吃驚
(
びつくり
)
し、
356
守宮別
『ヤ、
357
此奴
(
こいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ、
358
失敗
(
しま
)
つたア……』
359
綾子
『
漆別
(
うるしわけ
)
さま、
360
何
(
なに
)
かお
忘
(
わす
)
れになつたのですかい』
361
守宮別
『
落
(
おと
)
したア……、
362
力
(
ちから
)
おとした……。
363
困
(
こま
)
つたなア……』
364
綾子
『そらお
困
(
こま
)
りですな。
365
警察
(
けいさつ
)
へお
届
(
とど
)
けになつたら
何
(
ど
)
うです。
366
正直
(
しやうぢき
)
な
拾
(
ひろ
)
ひ
主
(
ぬし
)
があつて
届
(
とど
)
けてるかも
知
(
し
)
れませぬよ』
367
守宮別
『
実
(
じつ
)
ア、
368
そこの
四辻
(
よつつじ
)
で
警官
(
けいくわん
)
に
怪
(
あや
)
しまれ、
369
身体
(
しんたい
)
検査
(
けんさ
)
をやられた
時
(
とき
)
にや、
370
今
(
いま
)
考
(
かんが
)
へてみると、
371
已
(
すで
)
に
有
(
も
)
つてゐなかつたやうだ。
372
どつかで、
373
チボにでもやられたのだろ。
374
併
(
しか
)
し
綾子
(
あやこ
)
、
375
俺
(
おれ
)
は
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても、
376
国許
(
くにもと
)
では
百万
(
ひやくまん
)
長者
(
ちやうじや
)
の
息子
(
むすこ
)
だから、
377
電報
(
でんぱう
)
一
(
ひと
)
つ
打
(
う
)
てば、
378
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
経
(
た
)
たぬ
間
(
ま
)
に
電報
(
でんぽう
)
為替
(
かはせ
)
で
送
(
おく
)
つてくるから、
379
それまで
夫婦
(
ふうふ
)
になつたよしみで、
380
お
前
(
まへ
)
の
金
(
かね
)
で、
381
ここの
払
(
はら
)
ひを
済
(
す
)
ましておいて
呉
(
く
)
れないか』
382
綾子
『ハイ、
383
外
(
ほか
)
ならぬ
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
ですから、
384
払
(
はら
)
つて
置
(
お
)
きませう。
385
お
金
(
かね
)
が
来
(
き
)
たら、
386
屹度
(
きつと
)
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいや』
387
守宮別
『ヨシヨシ、
388
お
前
(
まへ
)
を
忘
(
わす
)
れてなるものかい。
389
今日
(
けふ
)
俺
(
おれ
)
が
此
(
この
)
楼主
(
ろうしゆ
)
に
対
(
たい
)
して
赤恥
(
あかはぢ
)
をかく
所
(
ところ
)
を
助
(
たす
)
けてくれたお
前
(
まへ
)
だもの、
390
況
(
ま
)
して
切
(
き
)
つても
切
(
き
)
れぬ
仲
(
なか
)
となつたのだもの、
391
之
(
これ
)
を
忘
(
わす
)
れてたまるものかい。
392
あゝ
仕方
(
しかた
)
がない。
393
之
(
これ
)
から
一寸
(
ちよつと
)
カンラン
山
(
ざん
)
を
見物
(
けんぶつ
)
して
来
(
く
)
るから、
394
お
前
(
まへ
)
ここに
待
(
ま
)
つてゐてくれ』
395
綾子
『ソンナ
所
(
ところ
)
へお
出
(
いで
)
遊
(
あそ
)
ばすにや
及
(
およ
)
ばぬぢやないですか。
396
妾
(
あたい
)
の
側
(
そば
)
に
居
(
ゐ
)
るより、
397
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
方
(
はう
)
が
恋
(
こひ
)
しいのですか』
398
守宮別
『ナニ、
399
ソンナ
事
(
こと
)
があるものかい。
400
お
前
(
まへ
)
の
側
(
そば
)
を
一刻
(
いつこく
)
も
離
(
はな
)
れ
度
(
た
)
くないのだけれど、
401
懐中
(
くわいちう
)
無一物
(
むいつぶつ
)
では、
402
どうも
安心
(
あんしん
)
して、
403
世話
(
せわ
)
になつてる
訳
(
わけ
)
にはゆかぬぢやないか』
404
綾子
『
妾
(
あたい
)
と
貴方
(
あなた
)
の
仲
(
なか
)
ぢやもの、
405
三日
(
みつか
)
や
五日
(
いつか
)
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
遊
(
あそ
)
ばしたつて
構
(
かま
)
ひませぬワ。
406
衣裳
(
いしやう
)
を
質
(
しち
)
に
置
(
お
)
いてでも、
407
三日
(
みつか
)
や
五日
(
いつか
)
は
養
(
やしな
)
ひますもの、
408
マア
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
409
守宮別
『ヨーシ、
410
それでは
序
(
ついで
)
にモウ
二日
(
ふつか
)
厄介
(
やくかい
)
にならう。
411
実
(
じつ
)
はな、
412
僧院
(
そうゐん
)
ホテルの
第一号
(
だいいちがう
)
室
(
しつ
)
を
借切
(
かりき
)
つてあるのだから、
413
そこへ
行
(
い
)
つて
宿
(
とま
)
れば
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
くても、
414
五日
(
いつか
)
や
十日
(
とをか
)
は
暮
(
くら
)
せるのだからな』
415
斯
(
か
)
く
両人
(
りやうにん
)
は
心
(
こころ
)
から
打
(
うち
)
とけて
恋仲
(
こひなか
)
となり、
416
守宮別
(
やもりわけ
)
は
綾子
(
あやこ
)
の
云
(
い
)
つた
如
(
ごと
)
く、
417
二晩
(
ふたばん
)
逗留
(
とうりう
)
して
三日目
(
みつかめ
)
の
昼頃
(
ひるごろ
)
ブラリブラリと、
418
何
(
なに
)
くはぬ
顔
(
かほ
)
して、
419
僧院
(
そうゐん
)
ホテルへ
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
りける。
420
(
大正一四・八・二〇
旧七・一
於由良秋田別荘
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 開狂式
(B)
(N)
花曇 >>>
霊界物語
>
第64巻下
> 第3篇 開花落花 > 第13章 漆別
Tweet
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【13 漆別|第64巻(卯の巻)下|霊界物語/rm64b13】
合言葉「みろく」を入力して下さい→