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第九章 狂怪戦(けうくわいせん)〔一八一五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下 篇:第2篇 鬼薊の花 よみ(新仮名遣い):おにあざみのはな
章:第9章 狂怪戦 よみ(新仮名遣い):きょうかいせん 通し章番号:1815
口述日:1925(大正14)年08月20日(旧07月1日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年11月7日
概要: 舞台:橄欖山の坂道 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-11-26 18:23:46 OBC :rm64b09
愛善世界社版:113頁 八幡書店版:第11輯 537頁 修補版: 校定版:114頁 普及版:63頁 初版: ページ備考:
001(はな)有為(うゐ)転変(てんぺん)()(なら)
002(てん)()となり()(てん)
003(かは)浮世(うきよ)有様(ありさま)
004(はな)貴方(あなた)(こと)だらう
005()ても()めても夢現(ゆめうつつ)
006()()(かみ)生宮(いきみや)
007(あたま)(さき)から(つめ)(はし)
008()(たましひ)()ちこみて
009()れて(ござ)つたお(まへ)さま
010どうした(かぜ)吹廻(ふきまは)しか
011(わたし)とコンナ(なか)となり
012二世(にせ)(ちぎ)つた夫婦(ふうふ)()
013(この)聖場(せいじやう)(かみ)(さま)
014(さぞ)()嘉納(かなふ)なさるだらう
015何程(なにほど)(かみ)ぢや(ほとけ)ぢやと
016高尚(かうしやう)(こと)()つたとて
017(ひと)肉体(にくたい)ある(かぎ)
018()いて()()(せい)(よく)
019()たす(こと)をば()らずして
020可惜(あたら)月日(つきひ)(おく)るのは
021(てん)(あた)へた快楽(くわいらく)
022蹂躪(じうりん)すると()ふものだ
023ラブ・イズ・ベストをふり(まは)
024自由(じいう)自在(じざい)(せい)(よく)
025()げた(ところ)(かみ)(さま)
026干渉(かんせう)すべき理由(りいう)はない
027あゝ面白(おもしろ)やたのもしや
028コンナ(たふと)歓楽(くわんらく)
029(とら)()アさまにだまされて
030竜宮海(りうぐうかい)乙姫(おとひめ)
031身魂(みたま)ぢや改心(かいしん)せにやならぬ
032もしも(をとこ)(さは)つたら
033八万劫(はちまんごふ)罪咎(つみとが)
034一度(いちど)(あら)はれ()三度(さんど)
035極寒(ごくかん)極暑(ごくしよ)(くる)しみを
036()けると(うま)(だま)かして
037(わたし)(じふ)(ねん)()つて()れた
038ほんに(おも)へば(おも)(ほど)
039(わたし)(なん)()馬鹿(ばか)だらう
040(こひ)目醒(めざ)めた(この)(はな)
041もはや(ゆみ)でも鉄砲(てつぱう)でも
042びくとも(うご)かぬ磐石心(ばんじやくしん)
043(かた)めた(うへ)はお(まへ)さま
044浮気心(うはきごころ)払拭(ふつしき)
045どこどこ(まで)偕老(かいらう)
046(ちぎり)(むす)んで(くだ)されや
047(いのち)(たから)もなげ()てて
048(まへ)(まか)した(この)身体(からだ)
049()いて()はふと()()はふと
050(けつ)して不足(ふそく)()ひませぬ
051さはさりながら旦那(だんな)さま
052貴方(あなた)本当(ほんたう)(みづ)くさい
053二世(にせ)(ちぎ)つた女房(にようばう)
054ある()()ながらうかうかと
055義侠心(ぎけふしん)をば()()して
056トロッキーさまの身替(みがは)りに
057警察署(けいさつしよ)門戸(もんこ)をば
058(くぐ)つてやらうと仰有(おつしや)つた
059義侠(ぎけふ)仁侠(じんけふ)もよいけれど
060ソンナ無益(むえき)犠牲(ぎせい)をば
061(はら)つて()つては()(なか)
062(いき)()(こと)出来(でき)ませぬ
063これ(ばか)りは旦那(だんな)さま
064(わたし)可愛(かあい)(おも)ふなら
065(おも)ひとまつて(くだ)されや
066人気(にんき)(わる)()(なか)
067何時(いつ)騒動(さうだう)(おこ)るやら
068(わか)つたものではありませぬ
069(その)度毎(たびごと)犠牲者(ぎせいしや)
070なつて()かれちや(この)(はな)
071どうして()()がありませう
072軍人(ぐんじん)さまを(つま)にもち
073(よろこ)(いさ)()(あら)
074コンナ(くる)しい(おも)ひをば
075させられやうとは()らナンだ
076大和(やまと)(だましひ)()らねども
077今後(こんご)()めて(くだ)されや
078可愛(かあい)女房(にようばう)()(あは)
079(なみだ)(なが)して(たの)みます
080あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
081ウラナイ(けう)大御神(おほみかみ)
082千変(せんぺん)万化(ばんくわ)移動(いどう)する
083(をつと)(こころ)()()めて
084(わたし)身魂(みたま)にピツタリと
085(くぎ)(かすがひ)()つたやうに
086(はな)れないやう(ねが)ひます
087これが一生(いつしやう)のお(ねが)ひだ
088(えん)()ふもの(めう)なもの
089海外(かいぐわい)万里(ばんり)(この)(くに)
090(なん)とも(おも)ふて()なかつた
091守宮別(やもりわけ)さまが(こひ)しうなり
092足許(あしもと)さへも()えぬ(まで)
093(こひ)暗路(やみぢ)(まよ)ひました
094(わたし)(こころ)(くる)ふたのか
095(われ)(わが)()(あや)しうなり
096合点(がつてん)()かぬよになりました
097ホンに(をんな)()ふものは
098(をとこ)にかけたら(もろ)いもの
099(をとこ)一嚬(いつぴん)一笑(いつせう)
100(むね)五寸釘(ごすんぐぎ)()つやうに
101(くる)しい(おも)ひがして()ます
102(あたま)(しも)をちらちらと
103(いただ)()ながら村肝(むらきも)
104(こころ)(もと)二八空(にはちぞら)
105(むね)はどきどき(いき)つまり
106(はぢ)外聞(ぐわいぶん)(なん)のその
107コンナ(こころ)になつたのも
108(つみ)なお(まへ)がある(ゆゑ)
109(ひろ)天地(てんち)(その)(あひ)
110たつた一人(ひとり)のお(まへ)さま
111(わたし)(いのち)(ちから)ぞや
112もしもお(まへ)()んだなら
113さつぱり(この)()地獄(ぢごく)ぞや
114地獄(ぢごく)(そこ)(そこ)(まで)
115()きな貴方(あなた)諸共(もろとも)
116()ちて()くなら(いと)やせぬ
117これ(ほど)(おも)ふて()(わし)
118すげなう見捨(みす)てて(くだ)さるな
119見捨(みす)てられたる(その)(とき)
120地震(ぢしん)(かみなり)()(あめ)
121まだまだおろか(おに)となり
122大蛇(をろち)となりて素首(そつくび)
123()きぬきますよ旦那(だんな)さま
124(さき)()をつけおきまする
125あゝ(たの)もしや(たの)もしや
126(ところ)世界(せかい)中心地(ちうしんち)
127(たつと)(かみ)のあれませる
128橄欖山(かんらんざん)聖城(せいじやう)
129三四十(さんしじふ)(ねん)若返(わかがへ)
130(けは)しき御山(みやま)()()いて
131(まゐ)(こころ)天国(てんごく)
132(はな)()(にほ)楽園(らくゑん)
133(もも)のエンゼルに(みちび)かれ
134(のぼ)つて()くやうな心地(ここち)ぞや
135あゝあゝ長生(ながい)きすればこそ
136(とし)()つてから恋愛(れんあい)
137本当(ほんたう)本当(ほんたう)(あぢは)ひが
138(わか)つて()たのだ有難(ありがた)
139()()(かみ)(おほ)ミロク
140生宮(いきみや)さまの(まへ)だとて
141コンナ(たの)しい(いさぎよ)
142(おもひ)今迄(いままで)せなかつた
143ホンに貴方(あなた)救世主(きうせいしゆ)
144天津(あまつ)御国(みくに)のエンゼルよ
145あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
146御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ。
147ホヽヽヽヽヽ、148これ守宮別(やもりわけ)旦那(だんな)さま、149(わたし)(おも)ひを()()つて(くだ)さつたら、150(あま)(にく)ふは(ござ)いますまい。151どうかイターナルに(あい)(そそ)いで(くだ)さいな。152道草(みちぐさ)()つたり(よこ)()ひたりしちや(きら)ひですよ。153(わたし)()立派(りつぱ)(おく)さまがあるのに(もと)軍人(ぐんじん)気質(かたぎ)だから()らざる義侠心(ぎけふしん)()し、154暴悪(ばうあく)無頼(ぶらい)のトロッキーなどの身替(みがは)りにアタ阿呆(あはう)らしい警察(けいさつ)(しば)られ()くナンテ、155そんな(こと)()めて(くだ)されや。156何程(なにほど)()(なか)(すくふ)()つたとてキリストさまのやうに磔刑(はりつけ)になつちやたまりませぬよ』
157守宮別『お(まへ)一緒(いつしよ)磔刑(はりつけ)になつたらよいぢやないか、158万劫(まんごふ)末代(まつだい)()(のこ)るぞよ。159(まへ)とお(とら)さまと口癖(くちぐせ)のやうに、160世界(せかい)万民(ばんみん)(たす)けたら万劫(まんごふ)末代(まつだい)結構(けつこう)()(のこ)るといつて()たぢやないか。161(むかし)キリストが十字架(じふじか)にかかつて万民(ばんみん)(つみ)(あがな)つたと()ふこのエルサレムで世界(せかい)犠牲者(ぎせいしや)となり末代(まつだい)()(のこ)すのも人間(にんげん)としては痛快事(つうくわいじ)だよ。162なアお(はな)さま』
163お花(いや)ですよ、164(はな)さまなんて他人(たにん)らしいソンナ言葉(ことば)おいて(くだ)さい、165何程(なにほど)()(のこ)ると()つたつて(いのち)()くなつて(しま)へば肉体(にくたい)(てき)歓楽(くわんらく)(あぢ)はふ(こと)出来(でき)ぬぢやありませぬか』
166守宮別()んで未来(みらい)(なか)よく()ふたら()いぢやないか、167さうすれやお(まへ)もお(とら)さまに()りかへされる心配(しんぱい)()らず、168宇宙(うちう)第一(だいいち)安全(あんぜん)地帯(ちたい)だよ。169(おれ)だつてトロッキーなどの身替(みがは)りになるやうな馬鹿(ばか)ぢやないが、170一寸(ちよつと)(まへ)(じつ)(ところ)は……義侠心(ぎけふしん)(つよ)(をとこ)だなア……とこのやうに(おも)はし()いので芝居(しばゐ)をやつて()たのだ。171(その)(うへ)沢山(たくさん)農民(のうみん)団体(だんたい)労働(らうどう)団体(だんたい)(そば)にごろついて()たものだから、172()出島(でじま)守宮別(やもりわけ)()(をとこ)義侠心(ぎけふしん)()んだ(をとこ)だ、173()れこそ真当(ほんたう)救世主(きうせいしゆ)だと世界中(せかいぢう)()(ひろ)めやうと(おも)つた(わたし)策略(さくりやく)だよ。174兎角(とかく)人間(にんげん)(ひろ)()()られないと仕事(しごと)出来(でき)ないからなア。175あのウズンバラ・チヤンダーだつて実際(じつさい)交際(つき)あつて()ればコンマ以下(いか)人間(にんげん)だ。176(おれ)から()れば小指(こゆび)(はし)にも()らないやうな小人物(せうじんぶつ)だ。177そいつがふとした(こと)から事件(じけん)()(おこ)世界中(せかいぢう)()(ひび)いたものだから、178世界(せかい)阿呆(あはう)(ども)がキリストの再来(さいらい)だ、179ミロクの出現(しゆつげん)だ、180メシヤだ、181などと(かつ)ぐやうになつたのだ。182売名策(ばいめいさく)には労働者(らうどうしや)(なか)()つて一寸(ちよつと)(あぢ)をやるのが一番(いちばん)(おく)()だよ、183ハヽヽヽ』
184お花『ホヽヽヽヽ、185(なん)とまア()()()いお(かた)(こと)186それ(だけ)知恵(ちゑ)がある(くせ)今迄(いままで)どうしてお(とら)さまのやうな、187没分暁漢(わからずや)(くら)ひついて()らつしやつたのですか』
188守宮別『お(とら)さまは変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)ぢやないか、189脱線(だつせん)だらけの(わか)らない(こと)(しや)べり()てて()ても、190(なん)()ふても系統(ひつぽう)だから、191三五教(あななひけう)没分暁漢(わからずや)(れん)がコソコソとひつつきに()よる。192そいつを利用(りよう)して、193つまり(えう)するに三五教(あななひけう)転覆(てんぷく)(くはだ)て、194変性(へんじやう)女子(によし)地位(ちゐ)()つて(かは)らうと()大野心(だいやしん)()つて()たからだ』
195お花(なん)とまア(ひと)()かけによらぬものだ(こと)196(ゆめ)(うつつ)守宮別(やもりわけ)さまと播陽(ばんやう)さまでさへ()つて()られた(くらゐ)だから、197(さけ)さへ()ましておけばいい(をとこ)だと(おも)つて()たに、198()けば()(ほど)(たの)もしい(なん)()立派(りつぱ)(をとこ)だらう。199(しか)しそれも無理(むり)もない、200世界(せかい)(こと)にかけたら(すい)(あま)いも(から)いも(さと)りきつた蹴爪(けづめ)()えた、201コケコツコウか、202()(ふた)つに(わか)れた山猫(やまねこ)のやうなアヤメのお(はな)(とろ)かすと()(うで)があるのだもの、203ホヽヽヽヽ。204油断(ゆだん)(すき)もならない主人(しゆじん)だわ。205(ひと)守宮別(やもりわけ)さま、206(いな)旦那(だんな)さま貴方(あなた)得意(とくい)鈴虫(すずむし)のやうな(こゑ)詩吟(しぎん)でもやつて(くだ)さいな。207(わたし)ばつかりに(うた)はしてあまり平衡(へいかう)()れませぬわ』
208守宮別『よしよしお(のぞ)みとあれば詩吟(しぎん)でも(なん)でもやらう』
209銅羅声(どらごゑ)()()大口(おほぐち)をあけ、
210守宮別(つき)()(からす)()いて(しも)(てん)()
211(あかつき)()千兵(せんぺい)大河(たいが)(よう)するを……  ゼスト……』
212お花『これ旦那(だんな)さま、213ソンナ(ふる)めかしい詩吟(しぎん)ならもう()めて(くだ)さい。214どうか(わたし)(こと)(うた)つて(もら)ひたいのですがなア』
215守宮別『よしよし、216それぢや新派(しんぱ)(ひと)つやつて()やう。217()()くやうな(つや)つぽい(うた)だよ、218オホン。
 
219 (てん)背景(はいけい)となし
220 ()舞台(ぶたい)となし
221 (くも)(そで)をふるつて
222 大宇宙(だいうちう)活躍(くわつやく)
223 あゝ(われ)(ひと)(うま)れて(ひと)(あら)
224 さりとて(けもの)にも(あら)
225 (また)(かみ)でもなければ(ほとけ)にも(あら)
226 (ひろ)宇宙(うちう)(ただ)一点(いつてん)肉塊(にくくわい)として
227 忽然(こつぜん)として()めるのみ
228 あゝ(てん)(とき)(いま)(いた)りて
229 世界(せかい)中心(ちうしん)地点(ちてん)
230 ()()(しま)(また)中心(ちうしん)
231 浪花(なには)遊里(いうり)初声(うぶごゑ)をあげたまひし
232 あやめの(きみ)懇親(こんしん)(むす)
233 (わが)現世(げんせ)生誕(せいたん)して(はじ)めての歓喜(くわんき)()
234 医者(いしや)南瓜(かぼちや)はヒネたのがよい
235 (いろ)年増(としま)(とど)()
236 あゝ(なん)たる幸福(かうふく)ぞや
237 お(とら)(ごと)きは(もの)(かず)ならず
238 (その)面貌(めんばう)はアトラスの(ごと)
239 (その)臀肉(でんにく)搗臼(ひきうす)(ごと)
240 アヤメの(きみ)とお(とら)(ばば)比較(ひかく)すれば
241 天空(てんくう)(かがや)月光(げつくわう)菩薩(ぼさつ)
242 地中(ちちう)(ひそ)泥亀(どろがめ)(ごと)
243 (くは)ふるにお(とら)懐中(くわいちう)には
244 (わづ)かに千金(せんきん)(あま)すのみ
245 黄金(わうごん)万能(ばんのう)現世(げんせ)(おい)
246 万金(まんきん)懐中(くわいちう)する
247 アヤメの(きみ)こそは
248 (とみ)においても最大(さいだい)優者(いうしや)なり
249 この夫人(ふじん)にしてこの(かね)あり
250 この夫人(ふじん)にしてこの(をつと)あり
251 (ぞく)所謂(いはゆる)(おに)金棒(かなぼう)とは
252 這般(しやはん)消息(せうそく)物語(ものがた)るものか
253 あゝ愉快(ゆくわい)なりカンランの(やま)
254 (をつと)となり(つま)となつて(この)艶姿(えんし)天地(てんち)万物(ばんぶつ)観覧(くわんらん)せしむ
255 宇宙(うちう)幸福(かうふく)(われ)(なんぢ)独占(どくせん)して
256 (いき)(なが)幸福(かうふく)(かみ)となり
257 万劫(まんごふ)末代(まつだい)生通(いきどほ)しの仙術(せんじゆつ)(まな)
258 天地(てんち)(とも)悠久(いうきう)(いき)むとす
259 あゝたのもしきかな たのもしきかな
260 カンランの神山(みやま)(ゆふべ)
261 (つき)皎々(かうかう)として五色(ごしき)(くも)階段(かいだん)(のぼ)
262 (ほし)燦爛(さんらん)として金銀(きんぎん)(ひかり)(はな)
263 (てん)(きよ)()(また)(きよ)
264 (われ)(きよ)(なんぢ)(また)(きよ)
265 半日(はんにち)清遊(せいいう)(じつ)心胆(しんたん)(あら)ふの(おも)ひあり
266 (かつ)267
 
268お花『あゝ吃驚(びつくり)しましたよ、269(たぬき)のやうな(くち)あけて、270(かつ)なんて(なん)ですか。271()ひつかれるかと(おも)ひましたよ』
272守宮別『あまりお(まへ)可愛(かあい)ので(あたま)から()ぶつてやらうと(おも)つたのだ、273アハヽヽ』
274お花『オホヽヽヽ、275あのまア旦那(だんな)(さま)のほどのよい(こと)(わい)のう。276その(こゑ)蜥蜴(とかげ)(くら)ふか杜鵑(ほととぎす)(しき)だから一寸(ちよつと)油断(ゆだん)出来(でき)ないわ』
277守宮別『おいお(はな)278もう(だま)つて()かう、279どうやら、280あの木蔭(こかげ)(ひと)()るやうだ、281(ちつ)(ばか)()つともないからなア。282(まへ)二三間(にさんげん)(はな)れてついて()()れ。283さうして(ひと)()(ところ)旦那(だんな)さまなぞと()つて(もら)つちや(こま)るよ』
284お花『ハイ、285旦那(だんな)さまつて今日(けふ)(かぎ)(まをし)ませぬ。286よう()(かは)るお(かた)ですな』
287()悋気(りんき)(つの)(はや)して()る。
288 守宮別(やもりわけ)小声(こごゑ)で、
289守宮別『あゝ女子(ぢよし)小人(せうじん)(やしな)(がた)しとは()くいつたものだな。290(やさ)しく()つたら自惚(うぬぼれ)る、291(きつ)()へば()える、292(ころ)せば()けて()ると()魔物(まもの)だからなア、293アーア』
294 お(はな)小声(こごゑ)でハツキリわからねどアーアの(こゑ)()き、295こいつは(また)(れい)心境(しんきやう)変化(へんくわ)境界線(きやうかいせん)ではないかと心配(しんぱい)のあまりサツト顔色(かほいろ)(かは)蟇蛙(ひきがへる)()(そこ)ねたやうな(つら)をさらし()る。
296 路傍(みちばた)五六(ごろく)間先(けんさき)()(した)から(かはら)をぶちやけたやうな(わら)(ごゑ)(きこ)(きた)りける。
297大正一四・八・二〇 旧七・一 於由良 加藤明子録)
298(昭和一〇・三・一〇 於台湾別院蓬莱殿 王仁校正)
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