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第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
01 復活祭
〔1807〕
02 逆襲
〔1808〕
03 草居谷底
〔1809〕
04 誤霊城
〔1810〕
05 横恋慕
〔1811〕
第2篇 鬼薊の花
06 金酒結婚
〔1812〕
07 虎角
〔1813〕
08 擬侠心
〔1814〕
09 狂怪戦
〔1815〕
10 拘淫
〔1816〕
第3篇 開花落花
11 狂擬怪
〔1817〕
12 開狂式
〔1818〕
13 漆別
〔1819〕
14 花曇
〔1820〕
15 騒淫ホテル
〔1821〕
第4篇 清風一過
16 誤辛折
〔1822〕
17 茶粕
〔1823〕
18 誠と偽
〔1824〕
19 笑拙種
〔1825〕
20 猫鞍干
〔1826〕
21 不意の官命
〔1827〕
22 帰国と鬼哭
〔1828〕
余白歌
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第八章
擬侠心
(
ぎけふしん
)
〔一八一四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第2篇 鬼薊の花
よみ(新仮名遣い):
おにあざみのはな
章:
第8章 擬侠心
よみ(新仮名遣い):
ぎきょうしん
通し章番号:
1814
口述日:
1925(大正14)年08月19日(旧06月30日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
橄欖山麓
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-25 09:50:28
OBC :
rm64b08
愛善世界社版:
101頁
八幡書店版:
第11輯 533頁
修補版:
校定版:
101頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
派生
[?]
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:
出口王仁三郎著作集 > 第二巻「変革と平和」 > 第三部 『霊界物語』の思想 > 擬侠心
001
四、五人の労働者
『
僕
(
ぼく
)
の
人生
(
じんせい
)
はどこにある
002
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
までタラタラと
003
汗水
(
あせみづ
)
しぼつて
金儲
(
かねまう
)
け
004
しようと
思
(
おも
)
つて
人並
(
ひとなみ
)
に
005
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
え
汗膏
(
あせあぶら
)
006
殆
(
ほとん
)
ど
尽
(
つ
)
きた
此
(
この
)
体
(
からだ
)
007
膏
(
あぶら
)
のやうに
絞
(
しぼ
)
られて
008
身体
(
しんたい
)
頓
(
とみ
)
に
骨立
(
こつりつ
)
し
009
悲鳴
(
ひめい
)
をあぐるその
中
(
うち
)
に
010
君
(
きみ
)
と
僕
(
ぼく
)
との
人生
(
じんせい
)
は
011
深
(
ふか
)
く
潜
(
ひそ
)
んでゐるのだらう
012
思
(
おも
)
へよ
思
(
おも
)
へ
友
(
とも
)
の
君
(
きみ
)
013
資本
(
しほん
)
主義
(
しゆぎ
)
なる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
014
キヤピタリズムを
唱
(
とな
)
ふれば
015
大罪悪
(
だいざいあく
)
の
酵母
(
かうぼ
)
だよ
016
殺人
(
さつじん
)
強盗
(
がうたう
)
強姦
(
がうかん
)
や
017
詐偽
(
さぎ
)
に
窃盗
(
せつたう
)
脅喝
(
けふかつ
)
や
018
まだあるまだある
沢山
(
たくさん
)
に
019
これもヤツパリ
吾々
(
われわれ
)
が
020
人生
(
じんせい
)
に
処
(
ところ
)
する
余儀
(
よぎ
)
なき
手段
(
しゆだん
)
であるだらう
021
このやうな
事
(
こと
)
になつたのも
022
キヤピタリズムの
賜
(
たまもの
)
だ
023
不労
(
ふらう
)
所得者
(
しよとくしや
)
の
賜
(
たまもの
)
だ
024
ガンヂガラミに
縛
(
しば
)
つてる
025
その
方法
(
はうはふ
)
は
警察
(
けいさつ
)
だ
026
裁判所
(
さいばんしよ
)
だ
刑務所
(
けいむしよ
)
だ
027
も
一
(
ひと
)
つひどいのは
絞首台
(
かうしゆだい
)
028
おまけに
憲兵
(
けんぺい
)
だ
軍隊
(
ぐんたい
)
だ
029
まだまだ
無数
(
むすう
)
に
手段
(
しゆだん
)
ある
030
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
よりも
巧妙
(
かうめう
)
に
031
鋼鉄
(
かうてつ
)
よりも
頑強
(
ぐわんきやう
)
に
032
無数
(
むすう
)
の
吸盤
(
きふばん
)
で
吾々
(
われわれ
)
の
033
生血
(
いきち
)
を
吸
(
す
)
ふたり
膏
(
あぶら
)
をば
034
ねぶつて
喰
(
くら
)
ふ
資本
(
しほん
)
主義
(
しゆぎ
)
035
制度
(
せいど
)
の
此
(
この
)
世
(
よ
)
にある
限
(
かぎ
)
り
036
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
も
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
も
助
(
たす
)
からぬ
037
抑
(
そも
)
人生
(
じんせい
)
のおき
所
(
どこ
)
が
038
悪
(
わる
)
かつた
為
(
ため
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
039
膚
(
はだへ
)
は
寒
(
さむ
)
く
腹
(
はら
)
は
餓
(
う
)
ゑ
040
終
(
しまひ
)
にや
縛
(
しば
)
られ
殺
(
ころ
)
される
041
何
(
なん
)
とかせねばならうまい
042
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
此
(
この
)
制度
(
せいど
)
043
打
(
う
)
てや、こらせやブル
階級
(
かいきふ
)
044
振
(
ふる
)
へよ、
起
(
た
)
てやプロレタリヤ
045
立
(
た
)
つべき
時
(
とき
)
は
今
(
いま
)
なるぞ
046
政治
(
せいぢ
)
宗教
(
しうけう
)
法律
(
はふりつ
)
や
047
倫理
(
りんり
)
や
修身
(
しうしん
)
何
(
なん
)
になる
048
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
にかけ
049
子孫
(
しそん
)
のために
悪制度
(
あくせいど
)
050
破壊
(
はくわい
)
せなくちや
人生
(
じんせい
)
の
051
大本分
(
だいほんぶん
)
が
尽
(
つく
)
せない
052
打
(
う
)
てや
懲
(
こら
)
せやブルジョアを』
053
と
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
労働者
(
らうどうしや
)
が
赤
(
あか
)
い
旗
(
はた
)
を
立
(
た
)
てて
橄欖山
(
かんらんさん
)
麓
(
ろく
)
を
歩
(
あゆ
)
んで
来
(
く
)
る。
054
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へて
居
(
ゐ
)
た
数名
(
すうめい
)
の
警官
(
けいくわん
)
は
有無
(
うむ
)
を
云
(
い
)
はせず
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らずフン
縛
(
じば
)
つて
了
(
しま
)
つた。
055
警官
(
けいくわん
)
『コリヤ、
056
その
方
(
はう
)
は
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
歌
(
うた
)
つてゐた。
057
不穏
(
ふおん
)
と
認
(
みと
)
めるから
捕縛
(
ほばく
)
したのだ。
058
調
(
しら
)
べる
事
(
こと
)
があるからエルサレム
署
(
しよ
)
迄
(
まで
)
キリキリ
歩
(
あゆ
)
め』
059
その
中
(
うち
)
の
一人
(
ひとり
)
は
盛
(
さかん
)
に
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
060
トロッキー
『オイ、
061
ポリス、
062
馬鹿
(
ばか
)
にすな、
063
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
はもとより
主義
(
しゆぎ
)
の
為
(
た
)
めに
生命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
ててゐるものだから、
064
拘引
(
こういん
)
位
(
ぐらゐ
)
は
屁
(
へ
)
の
茶
(
ちや
)
とも
思
(
おも
)
つてゐないが、
065
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
066
人民
(
じんみん
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて
省
(
かへりみ
)
たがよからうぞ。
067
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
だ、
068
僅
(
わづ
)
かな
目
(
め
)
くされ
金
(
がね
)
を
貰
(
もら
)
ひやがつて
人民
(
じんみん
)
の
怨府
(
ゑんぷ
)
になり、
069
時代
(
じだい
)
錯誤
(
さくご
)
の
張本人
(
ちやうほんにん
)
の
部下
(
ぶか
)
となつて、
070
その
日
(
ひ
)
を
暮
(
くら
)
すとは
実
(
まこと
)
に
憐
(
あは
)
れつぽいものだのう。
071
俺
(
おれ
)
は、
072
かう
見
(
み
)
えても
世界
(
せかい
)
で
有名
(
いうめい
)
なトロッキーだ。
073
どうだ、
074
今
(
いま
)
此
(
この
)
際
(
さい
)
俺
(
おれ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
一同
(
いちどう
)
の
縛
(
ばく
)
を
解
(
と
)
くか、
075
それとも
時代
(
じだい
)
に
目醒
(
めざ
)
めずして
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
を
拘引
(
こういん
)
するか。
076
忽
(
たちま
)
ち
汝
(
なんぢ
)
が
頭上
(
づじやう
)
に
災
(
わざはひ
)
の
来
(
きた
)
るは
電光
(
でんくわう
)
石火
(
せきくわ
)
よりも
速
(
すみや
)
かだぞ。
077
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
には
俺
(
おれ
)
の
部下
(
ぶか
)
が
殆
(
ほとん
)
ど
七八分
(
しちはちぶ
)
ある
筈
(
はず
)
だ。
078
それだから
何程
(
なにほど
)
法律
(
はふりつ
)
を
喧
(
やかま
)
しく
云
(
い
)
つても、
079
宗教
(
しうけう
)
を
叫
(
さけ
)
んでも
駄目
(
だめ
)
だ。
080
覚醒
(
かくせい
)
するなら
今
(
いま
)
だが、
081
どうだ、
082
返答
(
へんたふ
)
を
聞
(
き
)
かう。
083
それまでは
一寸
(
いつすん
)
だつて
吾々
(
われわれ
)
は
動
(
うご
)
かないぞ』
084
警官
(
けいくわん
)
は
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
085
トロッキーと
聞
(
き
)
いて、
086
稍
(
やや
)
恐怖心
(
きようふしん
)
に
懸
(
か
)
られてゐる。
087
警官
(
けいくわん
)
は
各
(
おのおの
)
耳
(
みみ
)
に
口
(
くち
)
を
寄
(
よ
)
せ
善後策
(
ぜんごさく
)
について
協議
(
けふぎ
)
をやつてゐる。
088
そこへ
守宮別
(
やもりわけ
)
、
089
お
花
(
はな
)
の
両人
(
りやうにん
)
がホロ
酔
(
ゑひ
)
機嫌
(
きげん
)
で
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
たり、
090
守宮
(
やもり
)
『オ、
091
これはこれは
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
警官
(
けいくわん
)
、
092
こなたで
厶
(
ござ
)
るか。
093
さてもさても
沢山
(
たくさん
)
な
得物
(
えもの
)
が
厶
(
ござ
)
つたものだな。
094
エー、
095
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
096
御
(
ご
)
忠言
(
ちうげん
)
で
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りますが、
097
一寸
(
ちよつと
)
、
098
私
(
わし
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
099
永
(
なが
)
くお
暇
(
ひま
)
はとりません。
100
何
(
なん
)
のために
労働者
(
らうどうしや
)
をお
縛
(
しば
)
りになつたのですか、
101
労働者
(
らうどうしや
)
は
抑
(
そもそ
)
も
国家
(
こくか
)
生産
(
せいさん
)
機関
(
きくわん
)
の
基礎
(
きそ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ』
102
トロッキー『イヤ、
103
お
前
(
まへ
)
さまが
噂
(
うはさ
)
に
高
(
たか
)
い
日出島
(
ひのでじま
)
の
守宮別
(
やもりわけ
)
さまだな、
104
そして、
105
そこにゐるのは
有名
(
いうめい
)
なお
寅
(
とら
)
さまかい』
106
守宮
(
やもり
)
『イヤ、
107
お
寅
(
とら
)
さまは、
108
一寸
(
ちよつと
)
様子
(
やうす
)
があつて
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
霊城
(
れいじやう
)
に
神界
(
しんかい
)
のため
立籠
(
たてこ
)
もつてゐられますよ。
109
私
(
わたし
)
はお
寅
(
とら
)
さまのお
弟子
(
でし
)
と、
110
……エー……、
111
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
でお
山
(
やま
)
に
詣
(
まい
)
る
途中
(
とちう
)
ですが、
112
貴方
(
あなた
)
等
(
ら
)
が
縛
(
しば
)
られとるのを
見
(
み
)
て、
113
どうも、
114
黙過
(
もくくわ
)
する
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
115
今
(
いま
)
警官
(
けいくわん
)
とかけあつてゐる
処
(
ところ
)
ですよ。
116
又
(
また
)
何
(
なん
)
のために、
117
こんな
目
(
め
)
にお
会
(
あ
)
ひになつたのですか』
118
トロッキー『
今日
(
けふ
)
は
全国
(
ぜんこく
)
の
農民
(
のうみん
)
が
労働
(
らうどう
)
を
祝福
(
しゆくふく
)
すると
共
(
とも
)
に、
119
暴逆
(
ばうぎやく
)
極
(
きは
)
まる
資本
(
しほん
)
主義
(
しゆぎ
)
の
搾取
(
さくしゆ
)
と
圧制
(
あつせい
)
に
対
(
たい
)
し、
120
一斉
(
いつせい
)
に
抗議
(
かうぎ
)
を
投
(
な
)
げつけるため、
121
世界
(
せかい
)
の
無産
(
むさん
)
階級
(
かいきふ
)
のために
友情
(
いうじやう
)
を
示
(
しめ
)
し、
122
又
(
また
)
吾々
(
われわれ
)
団体
(
だんたい
)
の
決意
(
けつい
)
と
団結
(
だんけつ
)
の
一層
(
いつそう
)
強固
(
きやうこ
)
ならむ
事
(
こと
)
を
誓
(
ちか
)
ふために、
123
示威
(
じゐ
)
運動
(
うんどう
)
を
全国
(
ぜんこく
)
一斉
(
いつせい
)
に
行
(
おこな
)
ふ
日
(
ひ
)
です。
124
農民
(
のうみん
)
組合員
(
くみあひゐん
)
は
一人
(
ひとり
)
も
洩
(
も
)
れ
落
(
お
)
ちなく、
125
婦人
(
ふじん
)
も
少年
(
せうねん
)
も、
126
これに
加
(
くは
)
はつて
吾々
(
われわれ
)
の
無産
(
むさん
)
階級
(
かいきふ
)
団体
(
だんたい
)
を
作
(
つく
)
るための
運動
(
うんどう
)
最中
(
さいちう
)
、
127
わからずやのポリスに
引
(
ひつ
)
かかつたのですよ。
128
警官
(
けいくわん
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふか
知
(
し
)
りませぬが
一同
(
いちどう
)
に
農民歌
(
のうみんか
)
を
歌
(
うた
)
はせますから、
129
それを
聞
(
き
)
いて
農民
(
のうみん
)
の
苦境
(
くきやう
)
をお
覚
(
さと
)
り
下
(
くだ
)
さい』
130
『
農民歌
(
のうみんか
)
始
(
はじ
)
め』と
号令
(
がうれい
)
するや
縛
(
しば
)
られた
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
を
初
(
はじ
)
め、
131
その
附近
(
ふきん
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
た
人々
(
ひとびと
)
も
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
132
警官
(
けいくわん
)
は
呆気
(
あつけ
)
にとられて
黙
(
だま
)
つて
聞
(
き
)
いてゐる。
133
一同
『
農
(
のう
)
に
生
(
うま
)
れて
農
(
のう
)
に
生
(
い
)
き
134
土
(
つち
)
を
耕
(
たがや
)
し
土
(
つち
)
に
死
(
し
)
す
135
痩
(
やせ
)
たる
土
(
つち
)
の
香
(
かを
)
りにも
136
汗
(
あせ
)
と
涙
(
なみだ
)
に
生
(
い
)
きむとす
137
吾
(
わが
)
生活
(
せいくわつ
)
の
悲愴
(
ひさう
)
さは
138
ブルジョア
階級
(
かいきふ
)
の
夢
(
ゆめ
)
にだに
139
感知
(
かんち
)
し
得
(
え
)
ざる
悲惨
(
ひさん
)
さよ
140
アヽ
吾
(
わが
)
生命
(
せいめい
)
に
力
(
ちから
)
あれ
141
吾
(
わが
)
運動
(
うんどう
)
に
力
(
ちから
)
あれ。
142
○
143
春
(
はる
)
幾度
(
いくたび
)
か
廻
(
めぐ
)
れども
144
富
(
と
)
みおごれるは
農民
(
のうみん
)
の
145
吾々
(
われわれ
)
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
等
(
ら
)
が
146
汗
(
あせ
)
と
膏
(
あぶら
)
の
賜物
(
たまもの
)
ぞ
147
汗
(
あせ
)
とあぶらを
盃
(
さかづき
)
に
148
汲
(
く
)
んでは
花
(
はな
)
にたわむれつ
149
秋
(
あき
)
の
月
(
つき
)
をば
慰
(
なぐさ
)
めに
150
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
み
交
(
かは
)
すブル
階級
(
かいきふ
)
151
寒
(
さむ
)
く
餓
(
う
)
ゑたる
同胞
(
はらから
)
を
152
蔑
(
さげす
)
み
笑
(
わら
)
ひ
鞭
(
むちう
)
てり
153
鬼
(
おに
)
か
大蛇
(
をろち
)
か
狼
(
おほかみ
)
か
154
悪魔
(
あくま
)
のはばる
此
(
この
)
世界
(
せかい
)
155
立替
(
たてかへ
)
せずにおくべきか
156
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
生命
(
いのち
)
に
力
(
ちから
)
あれ
157
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
運動
(
うんどう
)
に
力
(
ちから
)
あれ。
158
○
159
たぎるが
如
(
ごと
)
き
小山田
(
をやまだ
)
の
160
真夏
(
まなつ
)
真昼
(
まひる
)
も
孜々
(
しし
)
として
161
滝
(
たき
)
なす
汗
(
あせ
)
をしぼるのも
162
来
(
きた
)
らむ
秋
(
あき
)
の
八百穂
(
やほかい
)
の
163
稲
(
いね
)
の
実
(
み
)
のりの
肥料
(
こやし
)
ぞと
164
苦熱
(
くねつ
)
を
凌
(
しの
)
ぎ
草
(
くさ
)
とれば
165
高楼
(
かうろう
)
絃歌
(
げんか
)
にさんざめく
166
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
として
167
此
(
この
)
悪風
(
あくふう
)
を
根絶
(
こんぜつ
)
し
168
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
未来
(
みらい
)
を
救
(
すく
)
ふべし
169
未来
(
みらい
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
のものなるぞ
170
吾
(
わが
)
活動
(
くわつどう
)
に
力
(
ちから
)
あれ
171
吾
(
わが
)
生命
(
せいめい
)
に
力
(
ちから
)
あれ
172
○
173
曙
(
あけぼの
)
白
(
しろ
)
く
星
(
ほし
)
寒
(
さむ
)
く
174
刃
(
やいば
)
の
如
(
ごと
)
き
秋
(
あき
)
の
風
(
かぜ
)
175
山野
(
さんや
)
の
草
(
くさ
)
は
枯
(
か
)
れ
尽
(
つく
)
し
176
地上
(
ちじやう
)
一面
(
いちめん
)
霜
(
しも
)
をおき
177
鎌
(
かま
)
を
握
(
にぎ
)
れる
此
(
この
)
手先
(
てさき
)
178
霜
(
しも
)
ふみしめし
足
(
あし
)
の
先
(
さき
)
179
罅
(
ひび
)
凍傷
(
しもやけ
)
に
血走
(
ちばし
)
れど
180
憩
(
いこ
)
はむ
暇
(
ひま
)
さへなかりしが
181
その
収穫
(
しうくわく
)
は
大部分
(
だいぶぶん
)
182
地主
(
ぢぬし
)
の
倉
(
くら
)
に
収
(
をさ
)
まりて
183
淋
(
さび
)
しく
泣
(
な
)
ける
寒狐
(
かんぎつね
)
184
住
(
す
)
む
家
(
いへ
)
さへも
壁
(
かべ
)
は
落
(
お
)
ち
185
見
(
み
)
るも
悲惨
(
ひさん
)
な
光景
(
くわうけい
)
ぞ
186
あゝ
人生
(
じんせい
)
はかくの
如
(
ごと
)
187
悲惨
(
ひさん
)
で
一生
(
いつしやう
)
を
通
(
とほ
)
すのか
188
否々
(
いないな
)
決
(
けつ
)
してさうでない
189
天
(
てん
)
の
与
(
あた
)
へし
田種物
(
たなつもの
)
190
働
(
はたら
)
くものの
所有
(
しよいう
)
ぞや
191
不労
(
ふらう
)
所得者
(
しよとくしや
)
の
権力
(
けんりよく
)
が
192
どこに
一点
(
いつてん
)
あるものか
193
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
運動
(
うんどう
)
に
力
(
ちから
)
あれ
194
未来
(
みらい
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
のものなるぞ。
195
○
196
汗
(
あせ
)
と
涙
(
なみだ
)
と
血
(
ち
)
を
捧
(
ささ
)
げ
197
地上
(
ちじやう
)
に
画
(
ゑ
)
がく
芸術
(
げいじゆつ
)
の
198
誇
(
ほこ
)
りも
空
(
むな
)
しく
夢
(
ゆめ
)
と
消
(
き
)
え
199
汗
(
あせ
)
と
涙
(
なみだ
)
に
汚
(
よご
)
れたる
200
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
辛苦
(
しんく
)
の
結晶
(
けつしやう
)
は
201
奢侈
(
しやし
)
逸楽
(
いつらく
)
の
犠牲
(
にへ
)
となり
202
飢
(
うゑ
)
と
寒
(
さむ
)
さに
子
(
こ
)
等
(
ら
)
は
泣
(
な
)
く
203
あゝこの
惨状
(
さんじやう
)
をいかにして
204
いつ
迄
(
まで
)
看過
(
かんくわ
)
出来
(
でき
)
やうか
205
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
命
(
いのち
)
に
力
(
ちから
)
あれ
206
未来
(
みらい
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
のものなるぞ。
207
○
208
咄
(
とつ
)
何者
(
なにもの
)
の
奸策
(
かんさく
)
ぞ
209
正義
(
せいぎ
)
の
刃
(
やいば
)
に
血
(
ち
)
は
煙
(
けぶり
)
210
自由
(
じいう
)
の
剣
(
つるぎ
)
をとりて
立
(
た
)
つ
211
雄々
(
をを
)
しき
勇士
(
ゆうし
)
といたはしき
212
妻子
(
つまこ
)
の
上
(
うへ
)
に
迫害
(
はくがい
)
の
213
魔
(
ま
)
の
手
(
て
)
は
下
(
くだ
)
れり
爪先
(
つまさき
)
を
214
敏鎌
(
とかま
)
の
如
(
ごと
)
く
研
(
とぎ
)
すまし
215
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
大切
(
だいじ
)
の
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
を
216
斬
(
き
)
らむと
企
(
たく
)
むブル
階級
(
かいきふ
)
217
倒
(
たふ
)
さにやならぬ
吾々
(
われわれ
)
は
218
この
世
(
よ
)
この
儘
(
まま
)
置
(
お
)
いたなら
219
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
為
(
ため
)
に
亡
(
ほろ
)
ぼされ
220
子孫
(
しそん
)
断絶
(
だんぜつ
)
するだらう
221
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
生命
(
いのち
)
に
力
(
ちから
)
あれ
222
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
運動
(
うんどう
)
に
力
(
ちから
)
あれ
223
未来
(
みらい
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
のものなるぞ。
224
○
225
壁
(
かべ
)
落
(
お
)
ち
軒
(
のき
)
は
傾
(
かたむ
)
けど
226
五
(
ご
)
尺
(
しやく
)
の
体
(
からだ
)
を
休養
(
きうやう
)
する
227
為
(
ため
)
には
自由
(
じいう
)
の
誇
(
ほこ
)
りあり
228
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
貧
(
まづ
)
しく
疲
(
つか
)
れしも
229
抱
(
いだ
)
く
真理
(
しんり
)
に
光
(
ひかり
)
あり
230
永
(
なが
)
き
搾取
(
さくしゆ
)
と
圧制
(
あつせい
)
に
231
反逆
(
はんぎやく
)
すべく
起
(
た
)
てるなり
232
未来
(
みらい
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
のものなるぞ
233
打
(
う
)
てよ
懲
(
こら
)
せよブル
階級
(
かいきふ
)
。
234
○
235
君
(
きみ
)
よ
見
(
み
)
ざるや
農民
(
のうみん
)
を
236
全土
(
ぜんど
)
を
覆
(
おほ
)
ひし
団結
(
だんけつ
)
を
237
君
(
きみ
)
聞
(
き
)
かざるや
農民
(
のうみん
)
を
238
来
(
きた
)
れよ
友
(
とも
)
よと
呼
(
よ
)
ぶ
声
(
こゑ
)
を
239
あゝ
今
(
いま
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
起
(
た
)
たずんば
240
混沌
(
こんとん
)
の
世
(
よ
)
を
如何
(
いか
)
にせむ
241
起
(
た
)
てよ
振
(
ふる
)
へよ
怒
(
いか
)
れよ
狂
(
くる
)
へ
242
未来
(
みらい
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
のものなるぞ』
243
トロッキー『
先
(
ま
)
づ
吾々
(
われわれ
)
の
主義
(
しゆぎ
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
います、
244
永
(
なが
)
らくの
間
(
あひだ
)
、
245
農民
(
のうみん
)
は
地主
(
ぢぬし
)
資本家
(
しほんか
)
のために
生血
(
いきち
)
を
絞
(
しぼ
)
られ、
246
痩衰
(
やせおとろ
)
へて
参
(
まゐ
)
りました。
247
その
為
(
ため
)
国家
(
こくか
)
の
大本
(
たいほん
)
たるべき
農民
(
のうみん
)
は
身体
(
しんたい
)
骨立
(
こつりつ
)
し
満足
(
まんぞく
)
な
働
(
はたら
)
きも
出来
(
でき
)
ないのです。
248
これに
反
(
はん
)
して
不労
(
ふらう
)
所得者
(
しよとくしや
)
たるブル
階級
(
かいきふ
)
は
豚
(
ぶた
)
の
如
(
ごと
)
く、
249
象
(
ざう
)
の
如
(
ごと
)
く
肥太
(
こえふと
)
つて
居
(
を
)
ります。
250
これも
皆
(
みな
)
貧民
(
ひんみん
)
の
生血
(
いきち
)
を
搾取
(
さくしゆ
)
した
結果
(
けつくわ
)
です。
251
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
と
生
(
う
)
まれたる
吾々
(
われわれ
)
人間
(
にんげん
)
が、
252
どうして
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
を
真面目
(
まじめ
)
に
見
(
み
)
てゐる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
253
如何
(
いか
)
に
宗教
(
しうけう
)
が
倫理
(
りんり
)
を
説
(
と
)
くとも、
254
天国
(
てんごく
)
を
説
(
と
)
くとも、
255
法律
(
はふりつ
)
が
八釜
(
やかま
)
しく
取締
(
とりしま
)
つても、
256
パンなくして
人
(
ひと
)
は
世
(
よ
)
に
生活
(
せいくわつ
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
257
そのパンの
大部分
(
だいぶぶん
)
を
搾取
(
さくしゆ
)
する
鬼
(
おに
)
や
大蛇
(
をろち
)
の
階級
(
かいきふ
)
を
蕩滅
(
たうめつ
)
し、
258
平等愛
(
びやうどうあい
)
の
世界
(
せかい
)
に
作
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げるのは、
259
吾々
(
われわれ
)
志士
(
しし
)
たるものの
天職
(
てんしよく
)
ではありませぬか。
260
無論
(
むろん
)
宗教
(
しうけう
)
は
精神
(
せいしん
)
的
(
てき
)
に
人類
(
じんるゐ
)
を
救
(
すく
)
ふでせうが、
261
焦眉
(
せうび
)
の
急
(
きふ
)
なる
衣食住
(
いしよくぢう
)
の
問題
(
もんだい
)
を
閑却
(
かんきやく
)
しては、
262
宗教
(
しうけう
)
の
権威
(
けんゐ
)
も
有難味
(
ありがたみ
)
も
厶
(
ござ
)
いますまい。
263
そんな
手
(
て
)
ぬるい
手段
(
しゆだん
)
では、
264
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
は
駄目
(
だめ
)
だと
思
(
おも
)
ひます』
265
守宮
(
やもり
)
『
成程
(
なるほど
)
尤
(
もつと
)
も
千万
(
せんばん
)
だ、
266
僕
(
ぼく
)
は
大賛成
(
だいさんせい
)
を
致
(
いた
)
します。
267
もし
警官
(
けいくわん
)
どの、
268
どうか
此
(
この
)
憐
(
あは
)
れな
労働者
(
らうどうしや
)
を
解放
(
かいはう
)
して
下
(
くだ
)
さい。
269
その
代
(
かは
)
り
拙者
(
せつしや
)
が
代人
(
だいにん
)
となり
括
(
くく
)
られませう』
270
お
花
(
はな
)
『これ、
271
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
272
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を、
273
お
前
(
まへ
)
さまは
仰有
(
おつしや
)
るのだい。
274
人
(
ひと
)
の
罪
(
つみ
)
迄
(
まで
)
引受
(
ひきう
)
けると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が、
275
何処
(
どこ
)
にありますか。
276
私
(
わたし
)
をどうして
下
(
くだ
)
さるおつもりですか』
277
守宮
(
やもり
)
『ナザレのイエス・キリストでさへも
世界
(
せかい
)
万民
(
ばんみん
)
のため
十字架
(
じふじか
)
にかかられたぢやないか。
278
俺
(
おれ
)
がいつも
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
浮世
(
うきよ
)
を
三分
(
さんぶ
)
五厘
(
ごりん
)
で
暮
(
くら
)
してゐるのも、
279
社会
(
しやくわい
)
人類
(
じんるゐ
)
のため
命
(
いのち
)
を
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
してゐるからだ。
280
ブラバーサやお
寅
(
とら
)
さまの
様
(
やう
)
に
口
(
くち
)
ばつかり
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つても
誠
(
まこと
)
が
無
(
な
)
けりや
駄目
(
だめ
)
だ。
281
俺
(
おれ
)
は
之
(
これ
)
から
無産
(
むさん
)
階級者
(
かいきふしや
)
の
代表
(
だいへう
)
となつて
処刑
(
しよけい
)
を
受
(
う
)
けるつもりだ』
282
お
花
(
はな
)
『それも、
283
さうで
厶
(
ござ
)
いませうが、
284
これ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
285
お
前
(
まへ
)
さまが、
286
そんな
処
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
つた
後
(
あと
)
は、
287
妾
(
わたし
)
はどうするのですか』
288
守宮
(
やもり
)
『お
前
(
まへ
)
は、
289
精
(
せい
)
出
(
だ
)
してお
酒
(
さけ
)
の
差入
(
さしいれ
)
をするのだ』
290
お
花
(
はな
)
『
酒
(
さけ
)
なんか
差入
(
さしいれ
)
は
出来
(
でき
)
ますまい』
291
守宮
(
やもり
)
『
出来
(
でき
)
いでかい。
292
今
(
いま
)
の
役人
(
やくにん
)
は
皆
(
みな
)
飢
(
ひだ
)
る
腹
(
はら
)
をかかへてブリキを
佩
(
つ
)
つて
威張
(
ゐば
)
つてゐるから、
293
ソツと
金
(
かね
)
さへやれや
何
(
なん
)
でも、
294
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くよ』
295
かかる
所
(
ところ
)
へ
俄
(
には
)
かに
四辺
(
あたり
)
騒々
(
さうざう
)
しく
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の、
296
暴漢
(
ばうかん
)
が
現
(
あら
)
はれて
警官
(
けいくわん
)
を
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
にとりまき
袋叩
(
ふくろだた
)
きにして
了
(
しま
)
つた。
297
トロッキーと
名乗
(
なの
)
る
男
(
をとこ
)
、
298
及
(
およ
)
び
縛
(
ばく
)
されて
居
(
ゐ
)
た
連中
(
れんちう
)
は、
299
この
隙
(
すき
)
に
各
(
おのおの
)
縄目
(
なはめ
)
をとき
凱歌
(
がいか
)
をあげ
何処
(
どこ
)
ともなく
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
300
守宮別
(
やもりわけ
)
お
花
(
はな
)
は
得意
(
とくい
)
になり、
301
鼻歌
(
はなうた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
橄欖山
(
かんらんさん
)
上
(
じやう
)
目
(
め
)
がけて
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
くのであつた。
302
(
大正一四・八・一九
旧六・三〇
於丹後由良
北村隆光
録)
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