霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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総説(そうせつ)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻 篇:前付 よみ(新仮名遣い):
章:総説 よみ(新仮名遣い):そうせつ 通し章番号:
口述日:1934(昭和9)年07月16日(旧06月5日) 口述場所:関東別院南風閣 筆録者:林弥生 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
この至大天球(たかあまはら)に偏在充満する、一切すべてあらゆるものは、気体や液体でさえも、声音を発する性質を持っている。
どんなものでも、かすかに変動すればかすかな声音を伴い、大いに変動すれば大きな声音を伴うということは、私が日常に経験しているところである。
さて、声音とは何なのか。理学者が唱えるところによると、音響は振動であり、その振動が媒介物(主として空気)を伝い、人間の鼓膜におよび、聴覚神経を経て脳に達することで、声音が認識される、というのである。
しかしこれは、単に唯物論的な、物質世界の現象に就いての解釈に過ぎないのである。
私は、このような物事の半分しか見ていない解釈には満足することはできない。さらに進んで、なぜ物の振動はさまざまな音響となるのか、そして音響はどのような機能、効果をもっているのか、が知りたいのである。
言い換えれば、声が出るときに空気が通過するのは何の為であるか。どうして思考が発声器官を通って声となり、また聞こえてくる声と音が、聴覚器官を通じてどのように精神に影響を与えるのか、と知ろうとしているのである。
さらに、これを突き詰めていくと、精神とは何ぞや、という問題に帰着するのである。
このような問題に対しては、科学の説明以上の不可思議な力、無碍自在の妙機を認めざるを得ない。哲学的な領域の問題なのである。
古来の哲学宗教は、あるいは声音という現象をさかのぼって行き、帰納的に絶対不可思議な本源を認めている。あるいは無碍自在の妙機である根底から、演繹的に思想を展開して、声音という現象を説いている。
この無碍自在の妙機、絶対の不可思議力こそが、宇宙の本体である、独一真神、久遠の妙霊にして、一切の声音は、この存在の発現なのである。
『大毘盧遮那経』や空海の『声字即実相義』によれば、声は絶対実在の発現にして、万有一切もまた、絶対実在の発現なのである。したがって、声と物とはひとつであり、絶対声物一如というに他ならないのである。
また『新約聖書』のヨハネ伝によると、声(ことば)は即ち道であり、道は神であり、神は万有と説いているに他ならない(この意味では、キリスト教も多神教の一つであると言える)。
これらは要するに、釈迦やキリストらが認めた「声音即絶対説」であり、われわれの言霊学の声音根本説と類似している。しかしながら、それらは未だおぼろげに声音の妙機を想像したのみであり、言霊学のように、絶対の真を伝え、各声の霊機を明確に整然と説いたものではないのである。
そもそもわが国では、大宇宙を至大天球(たかあまはら)と言い、大宇宙の主宰を天之峰火夫の神、または天之御中主という。そして、万有一切を「神」と言い、この活動力を「結び」と言っている。
これを言霊学から言うと、至大天球は「あ」と言い、天之御中主は「す」と言い、「す」が分かれ発して七十五声となり、この七十五声は結びの力によってさらに発動すれば万声となり、帰り納まれば一声の「す」におさまるのである。
これが一切法界の四大観である。この四大は即ち、あらゆる声音である。天之御中主の発動が神であり、神霊元子と言う。神霊元子とは、「こころ」である。こころとは、絶対の霊機が、ここかしこと発作する状態を言っているのである。このこころの発作がさらに現れたものが、即ち「こえ」である。こえとは、「心の柄」である。
この声を広義一面に「をと」と言う。「をと」とは、外より「を」に結びあたるものあるに対して、「と」を結び、応えるということである。「緒止」である。
これを厳格に区別すると、「こえ」は有霊機物、すなわち広義の動物の心的作用による、自発的な声音である。「をと」とは、無霊機物、すなわち植物・鉱物等が他から衝撃を受けて声音を発するもので、心的作用がない、他発的声音である。
しかし、動物の下等なものは植物と区別できず、植物の下等なものも鉱物と区別することができない。しかも、声音の質はすべて持っている。だから、本にさかのぼれば、声と音とは区別がなく、人間の声も、心の働きを別にして考えれば、音であると言える。
声と音とは、天之御中主の心が発動した声音の程度の差によって名づけられたものであり、等しく広義には声なのである。この声音は、法界一切の万有となって形相を現し、また幽冥に隠れて不可思議な性質を現す。
この、巻いては延び、隠れては発するという活機が、すなわちいわゆる「結び」である。この結びの力によって、一切法界が生住異滅する状態を、至大天球(たかあまはら)というのである。
したがって、至大天球の組成元素は、声音である。声音は、至大天球と共に存在して、如来、真神そのものである。これを真言と言い、道(ことば)と言う。真言はすなわち神であり仏である。言霊は天之御中主の心である。この心をさまざまに動き結んで、万有が生じる。
声も区別があって、人の声は明朗であるが、動物の声は数少なく混濁している。すなわち霊機が減少するにしたがって、声も減少するのである。
日本と外国にも音声言語に違いがあり、外国の声は濁音、半濁音、拗音、促音、鼻音を用いるものが多く、日本人の声は直音のみであり、清明円朗にして、各声に画然たる区別がある。外国人の声はその元声が少なく、日本人は多い。
サンスクリットの母音や、韻鏡(中国語の音韻論)の字母唇音にしても、直音を出そうとするときは、必ず数音をつづり合わせて不足を補っている。日本語ではこのような困難はない。このことは、本居宣長の『漢字三音考』でも論じられている。
外国にはつまる音、鼻音が多いが、これらは正しい韻ではない。また、ンではねる音が多いが、ンは鼻から出る音で、口の音ではない。一方、他の音は口を閉じては出ないが、このンだけは口を固く閉じても出るものである。したがって、わが国の五十連音は誤りである。この五十連音はサンスクリットから借りてきたもので、濁音、半濁音を除いている。わが国の声音は、濁音、半濁音を合わせて七十五音なのである。
要するに、声音は至大天球の主宰、天之御中主の心の現れたものであり、一切万有が享有する霊機の程度によって声と音とに分かれ、声はさらに霊機を享有する程度によって、人の声と動物の声に分かれる。よって、声音の正不正と多少は、霊機の正不正と多少を示しているのである。
それのみでなく、わが国では、声におのおの活機があって、外国語のように無意味な符号ではない。たとえば、漢字音の風をフウという音は、どういう意義を有するか。金をキンという音は、何の意義をもっているか。
これこそが世界の語学者がもっとも苦心している問題であり、日本の文部省が国語仮名遣いのために焦慮しても、何の効果もないのは、この根底がないからである。もしこの根底があれば、国音、国語はもちろん、中国、インド、英仏独、ないし禽獣魚類の声をも理解することができるのであり、音を聞けば草木、金石、線、竹の種類をも分けることができる。
釈迦はこの功徳を説いて、一切衆生語言を「陀羅尼」と言ったのであり、わが国ではこれを「言霊」と言っている。
言霊は言葉の霊(たましい)である。霊とは心の枢府である。すなわち、自分の心の枢府(小我)はやがて天之御中主(大我)の心の枢府となる。この心の枢府を言葉の上から見たものが、すなわち言霊なのである。だから、言霊を知るときはあらゆる一切の言語声音を知ることができ、一切の言語声音を知るときは、天之御中主全体、すなわち至大天球(たかあまはら)を知るのである。
だから、もし真にこれを知って言霊を用いれば、一声のもとに全地球を焼くこともできるし、一呼のもとに全宇宙を漂わすこともできる。まして、雷霆を駆り、風神を叱咤し、一国土を左右し小人を生殺することはなんでもない。
このような言霊、大道、妙術は実に、わが国固有のものである。ゆえにわが国を言霊の幸はふ国と言い、言霊の助くる国と言い、言霊の明らけき国と言い、言霊の治むる国と言うのである。
わが国がこのように霊機の集まるところであり、このような大道を具有している理由は、至大天球成立の自然によるのである。それは、至大天球における脳髄のようなものだからである。
古事記による天体学から証拠を求めると、地球は至大天球の中心に位置し、やや西南に傾度をもっている。そしてわが国は、その地球の表半球の東北方面の上部に位置しているので、あたかもわが国は、地球面の中央の上に位置しているのであり、温帯中にあって寒暑が適度にあり、土壌が豊かで水気は清澄なのである。これゆえ、わが国をまた、豊葦原瑞穂の国と言うのである。
豊葦原とは、至大天球(たかあまはら)のことである。瑞穂は「満つ粋」であり、「ほ」は稲葉などの穂または槍の穂先などのことであり、精鋭純粋のものを言うのである。満つ粋(みつほ)の国とは、地球上における粋気が充満する国、という意味である。
だから、その国土に生じる一切は、皆精鋭の気を集めて生まれている。霊機もまた精鋭なのである。この霊機を真に用いれば、天を震わせ地を揺り動かす業も難しくないのである。そして、このように精鋭なものを用いようとすれば、その用法もまた、精鋭である必要がある。
そして、その用法とは、実は我が朝廷における天津日嗣の大道妙術なのであり、いわゆる言い継ぎ語り継ぎつつ伝えられる、わが国固有のものなのである。
しかしながら、崇神天皇の大御心によってひとたび包み隠されて以来、しばらくその伝を失ってしまった。天下は乱れて儒仏教の伝来となり、これと同時に外国の語声をも輸入することとなった。
以降、わが国の道はますます失われ、言霊の伝はいよいよ滅び、万葉集時代にはすでに仮名遣いの誤れるものも多くなってしまった。こういう有様のうちに、今日使用されている五十音ができあがるに至ったのである。
五十音はインドのサンスクリットの転化したものであり、自然の理法にたがえることはなはだしいものである。今、崇神天皇以来二千年を経て天地が一回りし、かの秘蔵された大道が世に出ようとするに至っている。しかしながら、習慣に慣れて久しい人々は皆、謝った五十音をもって大道の本然であると信じ、言霊をかえって奇異を好むでたらめの説であるとしている。
だから、今ここにこれを明らかにしようとするに際して、まず現行五十音の基本であるサンスクリット音韻が宇宙真理の正伝ではないことを知らしめようとするのである。しかしまた、現行五十音がサンスクリットの音韻に基づくということを知らない人もあるので、さらに一歩を引いて、五十音の出所を論定し、そうしてから本論に入る。
五十音図は、吉備真備の作、または真言の僧徒が作ったなどの説があるが、いずれにしても、サンスクリットから出たものは明らかである。真言僧が作ったといえばそのものであるし、吉備真備が作ったにしても、漢語の音韻を参考にしたであろう。しかし漢語の音韻はサンスクリットを元にしているからである。サンスクリットには母音十二字、父音三十五字がある。その音字の配列順序を勘案するに、これがサンスクリットの音韻図を元にしていることは明白なのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-06-01 16:19:42 OBC :rm790002
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 158頁 修補版: 校定版:1頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 (この)至大天球(たかあまはら)(なか)遍在(へんざい)充満(じうまん)する一切(いつさい)万有(ばんいう)は、002(その)(もの)気体(きたい)たると液体(えきたい)たるとを()はず、003(いづ)れも声音(せいおん)(こゑ)(おと)とは区別(くべつ)あれども、004(いま)(ここ)声音(せいおん)(つら)()くは、005(こゑ)にも(あら)ず、006(おと)にも(あら)ず、007(まつた)両者(りやうしや)()ねて不二(ふじ)なるものの仮名(かめい)なり)を(はつ)する性質(せいしつ)(いう)せざるはなし。008(いま)如何(いか)なる(もの)(いへど)も、009(かす)かに変動(へんどう)すれば、010(かす)かなる声音(せいおん)(ともな)ひ、011(おほい)変動(へんどう)すれば、012(だい)なる声音(せいおん)(ともな)ふは吾人(ごじん)日常(にちじやう)経験(けいけん)する(ところ)なり。
013 さて(その)声音(せいおん)とは(なん)ぞや。014通常(つうじやう)理学者(りがくしや)(をし)ふる(ところ)(もつ)てすれば、015音響(おんきやう)なるものは(ひとつ)振動(しんどう)にして、016或物(あるもの)振動(しんどう)は、017(その)振動(しんどう)媒介物(ばいかいぶつ)(しゆ)として空気(くうき))に(およ)ぼし、018媒介物(ばいかいぶつ)振動(しんどう)吾人(ごじん)鼓膜(こまく)(およ)ぼし、019鼓膜(こまく)振動(しんどう)聴覚(ちやうかく)神経(しんけい)()(なう)(たつ)するに()ると()ふにあり。020(しか)もこれ(ただ)(たん)唯物論(ゆいぶつろん)(てき)形而下(けいじか)解釈(かいしやく)而已(のみ)021吾人(ごじん)()かる半面(はんめん)解説(かいせつ)のみにては満足(まんぞく)すること(あた)はず。022(なほ)(すす)んで(もの)振動(しんどう)は、023何故(なにゆゑ)種々(しゆじゆ)なる音響(おんきやう)となり、024(また)音響(おんきやう)なるものは如何(いか)なる機能(きのう)(いう)し、025如何(いか)なる効果(かうくわ)(いう)するやを()らむと(ほつ)するなり。026換言(くわんげん)すれば、027吾人(ごじん)(こゑ)気管(きくわん)通過(つうくわ)する空気(くうき)声帯(せいたい)(その)()発声(はつせい)機関(きくわん)()れて(はつ)するなりてふ説明(せつめい)以外(いぐわい)に、028(その)発声(はつせい)(いん)たる空気(くうき)通過(つうくわ)するは(なん)(ため)なるや。029吾人(ごじん)思料(しれう)する(ところ)は、030何故(なにゆゑ)発声(はつせい)機関(きくわん)()りて(こゑ)となり、031(また)()より(きた)(こゑ)(おと)とは、032何故(なにゆゑ)吾人(ごじん)聴管(ちやうくわん)(つう)じて精神(せいしん)影響(えいきやう)するやを()かむと(ほつ)するなり。033(さら)(これ)究竟(きうきやう)する(とき)は、034精神(せいしん)とは如何(いかん)てふ問題(もんだい)帰着(きちやく)するなり。
035 吾人(ごじん)()かる問題(もんだい)(たい)しては最早(もはや)科学(くわがく)説明(せつめい)のより以上(いじやう)不可思議(ふかしぎ)(りよく)036無礙(むげ)自在(じざい)妙機(めうき)(みと)めざらむと(ほつ)するも(あた)はざるものにして、037(ここ)(まつた)科学(くわがく)圏囲(けんゐ)超脱(てうだつ)したる形而上(けいじじやう)(がく)(すなは)哲学(てつがく)(てき)領域(りやうゐき)()るものなり。038古来(こらい)哲学(てつがく)宗教(しうけう)(あるひ)声音(せいおん)なる末流(まつりう)(さかのぼ)りて帰納(きなふ)(てき)絶対(ぜつたい)不可思議(ふかしぎ)なる本源(ほんげん)(みと)め、039(あるひ)無礙(むげ)自在(じざい)妙機(めうき)なる根底(こんてい)より演繹(えんえき)(てき)声音(せいおん)なる枝葉(しえう)()くも、040畢竟(ひつきやう)ずるに(これ)(ため)のみ。041(この)無礙(むげ)自在(じざい)妙機(めうき)042絶対(ぜつたい)不可思議(ふかしぎ)(りよく)こそ(じつ)所謂(いはゆる)宇宙(うちう)本体(ほんたい)043独一(どくいつ)真神(しんしん)044久遠(くをん)妙霊(めうれい)にして、045一切(いつさい)声音(せいおん)(すなは)(その)発現(はつげん)なれ。
046 (だい)毘盧(びる)遮那経(しやなきやう)(第二具縁真言品)に()ふ。
 
047秘密主。048此真言相非一切諸仏所作。049不令他作亦不随喜。050何以故。051以是諸法法如是故。052若諸如来出現。053若諸如来不出。054諸法法爾如是住。055謂諸真言。056真言法爾故。
 
057 同経(どうきやう)()(しち)(いは)く、
 
058以如来身語意畢竟等故。059此真言相声字皆常々故不流。060無有変易。061法爾如是。062非造作所成。063若可造作則是生法。064法若有生則可破壊。065四相遷流無常無我。066何得名為真実語耶。067是故仏不自作。068不令他作。069設令有能作之人亦不随喜。070是故此真言相。071若仏出興於世。072若不出世。073若已説。074若現説。075若未説。076法住法位性相常住。077是故名心定即。078衆聖同即此大悲漫荼羅一切真言一一真言之相。079皆法爾如是故重言之也。
 
080 (また)空海(くうかい)声字(せいじ)(そく)実相義(じつさうぎ)(いは)く、
 
081名教(めいけう)(おこ)りは声字(せいじ)(あら)ざれば(じやう)ぜず。082声字(せいじ)分明(ぶんめい)にして実相(じつさう)(あら)はる。083(また)内外(ないぐわい)風気(ふうき)(わづか)(はつ)すれば、084(かなら)(ひび)くを()づけて(こゑ)()ふ。085(ひびき)(かなら)(こゑ)()る。086(こゑ)(すなは)(ひびき)(もと)なり。087(こゑ)(はつ)して(むな)しからず、088(かなら)(もの)()(あらは)す、089(ごう)して()()ふ。090()(かなら)(たい)(まね)く、091(これ)実相(じつさう)と名づく云々(うんぬん)
 
092と。093()(こゑ)絶対(ぜつたい)実在(じつざい)発現(はつげん)にして、094万有(ばんいう)一切(いつさい)(また)絶対(ぜつたい)実在(じつざい)発現(はつげん)なれば、095畢竟(ひつきやう)ずるに声物(せいぶつ)一如(いちによ)096絶対(ぜつたい)声物(せいぶつ)一如(いちによ)なりと()ふに(ほか)ならず。097(また)新約書(しんやくしよ)約翰伝(ヨハネでん)には、098(これ)(もつと)巧妙(かうめう)()(あらは)せり。099(いは)く、
 
100太初(はじめ)(ことば)あり(ことば)(かみ)(とも)()り、101(ことば)(すなは)(かみ)なり、102この(ことば)太初(はじめ)(かみ)(とも)()りき、103万物(よろづのもの)これに(より)(つく)らる、104(つく)られたるものに(ひとつ)として(これ)()らで(つく)られしは()し、105(これ)(いのち)あり、106()(いのち)(ひと)(ひかり)なり、107(ひかり)(くらき)()り、108(くらき)(これ)(さと)らざりき云々(うんぬん)……。109それ(ことば)肉体(にくたい)()りて我儕(われら)(うち)(やど)れり。110我儕(われら)その(さかえ)()るに、111(まこと)(ちち)()みたまへる独子(ひとりご)(さかえ)にして、112恩寵(めぐみ)真理(さとり)とに()てり……
 
113と。114()(ことば)(すなは)(みち)115(みち)(すなは)(かみ)116(かみ)(すなは)万有(ばんいう)なりと()ふに(ほか)ならず。117(この)(てん)(おい)ては基督教(キリストけう)多神教(たしんけう)(ひとつ)なり)(えう)するに(これ)()釈迦(しやか)118基督(キリスト)()(みと)めたる声音(せいおん)(そく)絶対説(ぜつたいせつ)にして、119(わが)言霊学(ことたまがく)声音(せいおん)根本説(こんぽんせつ)相類似(あひるいじ)せりと(いへど)も、120(その)所説(しよせつ)たる、121漠然(ばくぜん)として()(ところ)なく、122朦朧気(おぼろげ)声音(せいおん)妙機(めうき)想像(さうざう)したるのみにして、123(わが)言霊学(ことたまがく)(ごと)く、124絶対(ぜつたい)(しん)(つた)へ、125(かく)(こゑ)霊機(れいき)明確(めいかく)にして整然(せいぜん)たるが(ごと)きには(あら)ざるなり。
126 (そもそも)(この)大宇宙(だいうちう)我国(わがくに)にては、127(これ)至大天球(たかあまはら)()ひ、128大宇宙(だいうちう)主宰(しゆさい)129(これ)天之(あまの)峰火夫(みねひを)(かみ)または天之(あめの)御中主(みなかぬし)()ひ、130万有(ばんいう)一切(いつさい)131(これ)(かみ)()ひ、132(この)活動力(くわつどうりよく)133(これ)(むす)びといふ。134(しか)して(なほ)(これ)言霊学(ことたまがく)(うへ)より()(とき)は、135至大天球(たかあまはら)一声(ひとこゑ)()ひ、136天之(あめの)御中主(みなかぬし)(これ)一声(ひとこゑ)といひ、137(わか)(はつ)して七十五(しちじふご)(せい)となり、138(この)七十五(しちじふご)(せい)(むす)びの(ちから)によりて、139(さら)発動(はつどう)すれば万声(ばんせい)となり、140(かへ)(をさ)まれば一声(ひとこゑ)(おさ)まる)(これ)一切(いつさい)法界(ほふかい)四大観(しだいくわん)なり。141(この)四大(しだい)(すなは)ちあらゆる声音(せいおん)なり。142天之(あめの)御中主(みなかぬし)発動(はつどう)143(これ)(かみ)といひ、144神霊(しんれい)元子(げんし)()ふ。145神霊(しんれい)元子(げんし)とは、146こころなり、147こころとは絶対(ぜつたい)霊機(れいき)が、148此処(ここ)彼処(かしこ)発作(ほつさ)するの(いひ)なり。149()こころ発作(ほつさ)(さら)(あらは)れたるもの(すなは)こゑなり。150こゑとは(すなは)(こころ)()なり。151(この)(こゑ)広義(くわうぎ)一面(いちめん)(また)をと()ふ。152をととは(そと)より(むす)(あた)るものあるに(たい)して、153(むす)び、154(こた)ふるの(いひ)にして、155緒止(をと)なり。
156 (これ)厳格(げんかく)区別(くべつ)せば、157前者(ぜんしや)有霊機物(いうれいきぶつ)(すなは)動物(どうぶつ)広義(くわうぎ))の心的(しんてき)作用(さよう)による自発(じはつ)(てき)声音(せいおん)なり、158(おと)(あら)ず。159後者(こうしや)無霊機物(むれいきぶつ)(すなは)植鉱物(しよくくわうぶつ)(とう)()より迫撃(はくげき)するを()つて(のち)声音(せいおん)(はつ)するものにして、160心的(しんてき)作用(さよう)なき(もの)他発(たはつ)(てき)声音(せいおん)なり、161(こゑ)(あら)ず。162(しか)れども動物(どうぶつ)下等(かとう)なるものは植物(しよくぶつ)区別(くべつ)すべからず。163植物(しよくぶつ)下等(かとう)なるもの(また)鉱物(くわうぶつ)区別(くべつ)する(あた)はずして、164(しか)一種(いつしゆ)声音(せいおん)(しつ)(いう)するものなれば、165()(もと)(さかのぼ)(とき)は、166(こゑ)(おと)とは区別(くべつ)なく、167(その)(すゑ)(はし)(とき)人間(にんげん)(こゑ)(いへど)も、168(その)(こゑ)より(こころ)(はたら)きなる観念(くわんねん)控除(こうぢよ)して(かんが)ふる(とき)は、169()(おと)なり。170(これ)(えう)するに、171(こゑ)(おと)とは天之(あめの)御中主(みなかぬし)(こころ)発動(はつどう)したる声音(せいおん)程度(ていど)()によりて()づけられたるものにして、172(ひと)しく広義(くわうぎ)()ける(こゑ)なり。173(この)声音(せいおん)法界(ほふかい)一切(いつさい)万有(ばんいう)となりて形相(ぎやうさう)(げん)じ、174(また)幽冥(いうめい)(かく)れて不可思議(ふかしぎ)なり。
175 (この)巻舒(けんじよ)発蔵(はつざう)活機(くわつき)(すなは)所謂(いはゆる)(むす)びにして、176(この)(むす)びの(ちから)によりて、177一切(いつさい)法界(ほふかい)生住(せいぢう)異滅(いめつ)する状態(じやうたい)至大天球(たかあまはら)とは()ふなり。178されば至大天球(たかあまはら)組成(そせい)元素(げんそ)声音(せいおん)なり。179声音(せいおん)()ければ至大天球(たかあまはら)なし。180(ゆゑ)(この)声音(せいおん)至大天球(たかあまはら)(とも)存在(そんざい)して、181如来(によらい)所作(しよさ)(あら)ず、182真神(しんしん)所生(しよせい)(あら)ず、183如来(によらい)184真神(しんしん)そのものなり。185(これ)真言(まこと)()ひ、186(これ)(ことば)()ふ。187(ことば)(すなは)(かみ)にして、188真言(まこと)(すなは)(かみ)(なり)189(ほとけ)(なり)190我国(わがくに)にては(これ)言霊(ことたま)()ふ、191言霊(ことたま)(すなは)(かみ)なり、192(かみ)(すなは)天之(あめの)御中主(みなかぬし)(こころ)なり、193(この)(こころ)種々(しゆじゆ)(うご)(むす)びて万有(ばんいう)(しやう)ず。194万有(ばんいう)万別(ばんべつ)あり、195(ゆゑ)万有(ばんいう)言霊(ことたま)(また)万別(ばんべつ)あり)
196 (この)声音(せいおん)大別(たいべつ)すれば、197(すなは)(すで)()へりしが(ごと)く、198(こゑ)(おと)とに(わか)る。199(しか)して(この)(こゑ)(さら)(べつ)あり。200(いつ)(ひと)(こゑ)にして、201()動物(どうぶつ)(こゑ)なり。202(ひと)(こゑ)明朗(めうらう)にして数多(かずおほ)く、203動物(どうぶつ)(こゑ)溷濁(こんだく)にして数少(かずすくな)く、204(また)動物(どうぶつ)下等(かとう)なるものに(いた)りては、205(わづか)(ひびき)(いう)するのみ。206(すなは)霊機(れいき)減少(げんせう)するに(したが)つて、207(こゑ)(また)減少(げんせう)するなり。208(なほ)(また)(おな)じく、209人間(にんげん)にても外人(ぐわいじん)(わが)日本人(につぽんじん)との音声(おんせい)言語(げんご)比較(ひかく)するに、210外人(ぐわいじん)(こゑ)はすべて濁音(だくおん)211半濁音(はんだくおん)212拗音(えうおん)213促音(そくおん)のみにて、214(また)鼻音(びおん)(もち)ふるもの(すこぶ)(おほ)く、215日本人(につぽんじん)(こゑ)直音(ちよくおん)のみにして((ただ)今日(こんにち)(ひと)(こゑ)(この)(かぎ)りに(あら)ず)清明(せいめい)円朗(ゑんらう)にして、216各声(かくこゑ)確然(かくぜん)たる区別(くべつ)あり。217外人(ぐわいじん)(こゑ)数声(すうせい)連続(れんぞく)拗曲(えうきよく)せるものなるが(ゆゑ)に、218(その)元声(げんせい)(すくな)く(悉曇(しつたん)五十音(ごじふおん)219英語(えいご)二十四(にじふし)(おん)(ごと)し)日本人(につぽんじん)(こゑ)一々(いちいち)朗明(らうめい)なるが(ゆゑ)に、220(その)元声(げんせい)(おほ)し。221七十五(しちじふご)(せい)なり)(かれ)()拗促音(えうそくおん)本位(ほんゐ)として直音(ちよくおん)(いだ)し、222日本人(につぽんじん)直音(ちよくおん)本位(ほんゐ)として拗音(えうおん)(もち)ふるなり。223(ただ)上古(じやうこ)(ひとつ)(えう)224促音(そくおん)(もち)ひず)(ゆゑ)外国人(ぐわいこくじん)直音(ちよくおん)()さむとするも、225日本人(につぽんじん)(ごと)円満(ゑんまん)朗明(らうめい)なる(あた)はず、226(また)日本人(につぽんじん)(えう)227促音(そくおん)(はつ)せむとするも、228外国人(ぐわいこくじん)(ごと)曲拗(きよくえう)促迫(そくはく)したる(おん)(いだ)(あた)はず、229両者(りやうしや)(おのづか)主客(しゆきやく)(くらゐ)(さだ)まりて(うご)かすべからず。
230 (たと)へば、231悉曇(しつたん)摩多(また)母音(ぼおん)(ヲウ)(ウに(もち)ふ)エイ(エに(もち)ふ)ウウ、232ヲウ(アウヲに(もち)ふ)の(ごと)く、233また韻鏡(ゐんきやう)字母(じぼ)唇音濁(しんおんだく)(ビヤウ)「ベイ」「ヘイ」(部廻(ぶけい)「ブキヤウ」「ホウケイ」にして、234バビブベボの(ゐん)()く)、235歯音清(しおんせい)(せい)「シヨウ」(子盈(しえい)「イヤウ」(せつ)にしてサシスセソの(ゐん)()く)(とう)(ごと)し。236(これ)()我国(わがくに)(こゑ)にて()べば、237ヲウエイ238アウビヤウシヤウ(とう)なれども、239本音(ほんおん)ヲウ240エイ241アウ242ビヤウ243シヤウ(とう)なり。244(ゆゑ)(えう)245促音(そくおん)本拠(ほんきよ)とせる外人(ぐわいじん)より直音(ちよくおん)(いだ)さむとするには、246(かなら)数音(すうおん)(つづ)(あは)し、247不足(ふそく)(おぎな)(あま)れるを()て、248所謂(いはゆる)反切(はんせつ)結果(けつくわ)(あら)ざれば(いだ)すこと(あた)はざるなり。249(いはん)(また)(かれ)()(もち)ふる(えう)250促音(そくおん)(いだ)さむとするに(おい)てをや。251(すなは)ちヲウはトウ、252ツに(もち)ふる(とき)(はじ)めてウの(ごと)(はたら)き(ツはタとヲウとの(がふ)なるが(ゆゑ)に)、253エイはセイ、254セに(もち)ふる(とき)(はじ)めてヱの(ごと)(はたら)き(セはサとエとの(がふ)なるが(ゆゑ)に)、255(また)(ビヤウ)「ベイ」「ヘイ」は、256バビブベボに(はたら)字母(じぼ)なれども、257(した)()くイ、258ヤウを(のぞ)かざれば(よう)()さず。259(せい)「シヤウ」はサシスセソに(はたら)字母(じぼ)なれども、260(した)()くイ、261ヤウを(のぞ)かざれば(よう)()さず。262徳紅(とくこう)切東(せつとう)(とく)のクと(こう)のコとを()(のぞ)かざれば、263トウに()らず。264戸公(ここう)切紅(せつこう)(こう)のコを()(のぞ)かざれば、265コウに()らざるにても(あきらか)なり。266我国(わがくに)直音(ちよくおん)本拠(ほんきよ)とするものよりすれば、267(がう)()かる困難(こんなん)なし。268(なほ)(これ)()(こと)269鈴廼屋(すずのや)大人(うし)漢字(かんじ)三音考(さんおんかう)にも(ろん)ぜられたり。
270 また外国人(ぐわいこくじん)(おん)は、271(すべ)朦朧(もうろう)溷濁(こんだく)して、272(たと)へば(くも)()夕暮(ゆふぐれ)(てん)()るが(ごと)し。273(ゆゑ)にアアと()(おん)のオオの(ごと)くにも(きこ)え、274又オオと()(おん)のウウの(ごと)くにも、275ホオの(ごと)くにも(きこ)ゆる(るい)276分暁(ぶんげう)ならざること(おほ)く、277(また)カキクケコとハヒフヘホとワヰウヱヲと相渉(あひわた)りて(きこ)えるなど、278(もろもろ)(おん)(みな)皇国(くわうこく)(おん)(ごと)分明(ぶんめい)ならず、279(また)溷雑(こんざつ)紆曲(うきよく)(おん)(おほ)し。280東西(とうざい)(いま)唐音(たうおん)にトンスヰと()ぶが(ごと)き、281トとンと(まざ)り、282スとヰと(まざ)り、283(また)トよりンへ(まが)り、284スよりヰへ(まが)る。285春秋(しゆんじう)をチユインチユウと()ぶが(ごと)き、286チとユとイとンと(まざ)り、287チとユとウと(まざ)り、288又チよりユへ(まが)り、289イへ(まが)り、290ンへ(まが)り、291チよりユへ(まが)り、292ウへ(まが)る。293(いにしへ)(おん)(みな)(かく)(ごと)し。294一音(いちおん)にして(かく)(ごと)溷雑(こんざつ)し、295二段(にだん)296三段(さんだん)297四段(よだん)にも(ねぢ)(まが)るは不正(ふせい)(おん)にして、298皇国(くわうこく)(おん)(ただ)しく単直(たんちよく)なると(おほい)(ことな)り、299(まが)らざる(おと)もあれども、300それも皇国(くわうこく)(ただ)しき単音(たんおん)(ごと)くには(あら)ず。301アア、302イイ、303ウウ、304カア、305キイ、306クウなどのやうに(みな)(かなら)(なが)()きて、307(みじか)(ただ)しくは()ぶことあはたず。308(みじか)()べば(かなら)(ゐん)急促(つま)りて入声(にふせい)となるなり。
309 外国(ぐわいこく)入声(にふせい)皇国(くわうこく)入声(にふせい)(ごと)きクキツチフ(とう)(あら)はなる(ゐん)はなくして、310単音(たんおん)(ごと)くなれども、311(ただ)しき単音(たんおん)には(あら)ず。312()陶物(すゑもの)()きあたりたる(ごと)くに急促(つま)りて、313喉内(こうない)隠々(いんいん)として(ゐん)()べり。314此方(こちら)にて悪鬼(あくき)315一旦(いちたん)316鬱結(うつけつ)317悦気(えつき)318臆見(おくけん)319甲子(かつし)320吉凶(きつきよう)など(つら)()ぶときの(あく)321(いつ)322(うつ)323(えつ)324(おく)325(かつ)326(きつ)(とう)(おん)(ごと)し。327(ゆゑ)(いま)この(しよ)三音考(さんおんかう))に入声(にふせい)(かたち)()ふには、328(かり)(その)(おん)(した)にツ(てん)(ほどこ)して(しるし)とす。329日月(じつげつ)唐音(たうおん)をジツエツと()くが(ごと)し。330これ新奇(しんき)(この)むにあらず、331(その)(ゐん)(しめ)すべき仮字(かな)なきが(ゆゑ)なり。332(この)(てん)(ほどこ)せるは(みな)急掣(つま)(ゐん)心得(こころう)べし。333さて(かく)(ごと)(ゐん)急促(つま)るは(はなは)不正(ふせい)(おん)なり。334皇国(くわうこく)(おん)は(い、335ゐ)いかに(みぢ)かく()べども、336(ただ)しく舒緩(じよくわん)にして急促(つま)(こと)なし。337(また)外国(ぐわいこく)には(ゐん)をンとはぬる(おん)(こと)(おほ)し。338ンは(まつた)(はな)より()づる(おん)にして、339(くち)(おん)(あら)ず。340(ゆゑ)()諸々(もろもろ)(おん)(くち)(まつた)()ぢては()でざるに、341()のンの(おん)のみは、342(くち)(かた)()ぢても()るなり。343されば皇国(くわうこく)五十(ごじふ)連音(れんおん)344(これ)(あやま)りなり。345()五十(ごじふ)連音(れんおん)(した)()悉曇(しつたん)()にして、346濁音(だくおん)347半濁音(はんだくおん)(のぞ)きたるなり。348我国(わがくに)には(これ)(あは)して七十五(しちじふご)(おん)なり。349鈴廼屋(すずのや)大人(うし)(これ)()らざれば(かか)(ろん)あり。
350 この五位(ごゐ)十行(じふぎやう)(れつ)()らずして(たて)にも(よこ)にも相通(あひかよ)(おん)なく孤立(こりつ)なり。351(しか)るに外国人(ぐわいこくじん)(おん)(すべ)溷濁(こんだく)して(おほ)(はな)()るる(なか)に、352(こと)()のンの(ゐん)(おほ)きは、353物言(ものごと)(くち)のみならず、354(はな)(こゑ)をも厠供(まじ)るものにして、355()不正(ふせい)なること(あき)らけし。356皇国(くわうこく)古言(こげん)には、357(せい)(もち)ふるもの(いつ)もあることなし云々(うんぬん)
358 ()(しゆ)として支那(しな)字音(じおん)(かん)しての見解(けんかい)なれども、359()外国(ぐわいこく)声音(せいおん)()()()れず。360(これ)(えう)するに声音(せいおん)至大天球(たかあまはら)主宰(しゆさい)361天之(あめの)御中主(みなかぬし)(こころ)(あら)はれたるものにして、362一切(いつさい)万有(ばんいう)享有(きやういう)する霊機(れいき)程度(ていど)()つて(こゑ)(おと)とに(わか)れ、363(こゑ)(さら)霊機(れいき)享有(きやういう)程度(ていど)()つて(ひと)(こゑ)動物(どうぶつ)(こゑ)とに(わか)れ、364(ひと)(こゑ)(また)(さら)霊機(れいき)享有(きやういう)程度(ていど)()つて、365日本人(につぽんじん)(こゑ)外人(ぐわいじん)(こゑ)とに(わか)れ、366(ここ)声音(せいおん)正不正(せいふせい)多少(たせう)とは、367(あき)らかに霊機(れいき)正不正(せいふせい)多少(たせう)とを(しめ)せり。
368 加之(しかのみならず)我国(わがくに)には、369(その)(こゑ)(おのおの)活機(くわつき)ありて機能(きのう)(いう)し、370我国(わがくに)()りとあらゆる言詞(ことば)は、371(みな)(この)(こゑ)()りて()(あら)はし、372(こころ)(あらは)せるものにして、373(かの)外国語(ぐわいこくご)(ごと)く、374()(きた)りの無意味(むいみ)なる符号(ふごう)には(あら)ず。375(たと)へば漢字音(かんじおん)にて(かぜ)(ふう)()ぶ、376(しか)フウ()(おん)(なん)意義(いぎ)(いう)するや。377(また)(かね)(きん)()ぶ、378(しか)キン()(おん)(なん)意義(いぎ)(いう)するや。379(ただ)韻鏡(ゐんきやう)学者(がくしや)種々(しゆじゆ)理窟(りくつ)()するも、380(わづか)少数(せうすう)(おん)(とど)まり()完全(くわんぜん)ならず)
声と音
[#図 声と音]
381 (その)()印度語(いんどご)にても、382(また)英仏語(えいふつご)にても、383(かく)(ごと)推究(すいきう)しゆけば、384(つひ)捕捉(ほそく)する(ところ)なきに(をは)るなり。385()世界(せかい)語学者(ごがくしや)(もつと)苦心(くしん)しつつある問題(もんだい)にして、386(わが)文部省(もんぶしやう)国語(こくご)仮名遣(かなづかひ)のために焦慮(せうりよ)惨憺(さんたん)するも寸効(すんかう)(そう)せざるは、387畢竟(ひつきやう)(これ)根底(こんてい)()ければなり。388()()根底(こんてい)だに()らば、389(わが)国音(こくおん)390国語(こくご)勿論(もちろん)391支那(しな)392印度(いんど)393(えい)394(ふつ)395独語(どくご)乃至(ないし)禽獣(きんじう)鱗介(りんかい)(こゑ)をも(かい)し、396(また)(その)(おと)()けば草木(さうもく)397(かね)398(いし)399(せん)400(たけ)種類(しゆるい)をも(わか)つべし。401()()()るが(ゆゑ)大凡(おほよそ)()(わか)()るなり)
402 釈迦(しやか)(これ)功徳(くどく)()一切(いつさい)衆生(しゆじやう)語言(ごげん)陀羅尼(だらに)()ひ、403我国(わがくに)にては(これ)言霊(ことたま)()ふなり。
404 言霊(ことたま)とは言葉(ことば)(たましひ)なり。405(たましひ)とは(こころ)枢府(すうふ)なり、406(すなは)(わが)小我(せうが)(こころ)枢府(すうふ)はやがて天之(あめの)御中主(みなかぬし)大我(たいが))の(こころ)枢府(すうふ)なり。407()(こころ)枢府(すうふ)言葉(ことば)(うへ)より()たるもの(すなは)ちわが言霊(ことたま)にして、408()言霊(ことたま)はやがて天之(あめの)御中主(みなかぬし)言霊(ことたま)なり。409(ゆゑ)()言霊(ことたま)()(とき)はあらゆる一切(いつさい)言語(げんご)声音(せいおん)()り、410一切(いつさい)声音(せいおん)言語(げんご)()(とき)は、411天之(あめの)御中主(みなかぬし)全体(ぜんたい)(すなは)至大天球(たかあまはら)()るなり。412されば()()(しん)にこれを()りて言霊(ことたま)(もち)ふれば、413一声(いちせい)(もと)全地球(ぜんちきう)()くべく、414一呼(いつこ)(もと)全宇宙(ぜんうちう)(ただよ)はすべし。415(いはん)微々(びび)たる雷霆(らいてい)()り、416風神(ふうじん)(しつ)し、417乃至(ないし)一国土(いつこくど)左右(さいう)し、418小人類(せうじんるい)生殺(せいさつ)するに(おい)てをや。419如是(かくのごとき)言霊(げんれい)420如是(かくのごとき)大道(たいだう)421如是(かくのごとき)妙術(めうじゆつ)(じつ)我国(わがくに)具有(ぐいう)なり。422(ゆゑ)我国(わがくに)言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)()ひ、423言霊(ことたま)(たす)くる(くに)()ひ、424言霊(ことたま)(あき)らけき(くに)()ひ、425言霊(ことたま)(をさ)むる(くに)とは()ふなり。426(これ)()(わが)古事記(こじき)真解(しんかい)するに()りて(あき)らかなり)
427 (そもそも)我国(わがくに)(かく)(ごと)霊機(れいき)淵叢地(えんそうち)にして、428如是(かくのごとき)大道(たいだう)具有(ぐいう)する所以(ゆゑん)のものは、429至大天球(たかあまはら)成立(せいりつ)本然(ほんぜん)()るものとす。430(なほ)吾人(ごじん)一身(いつしん)支配(しはい)する精神(せいしん)宿(やど)れる脳髄(なうずゐ)(ごと)く、431至大天球(たかあまはら)()ける脳髄(なうずゐ)なればなり。432(かの)藤田(ふぢた)東湖(とうこ)が「天地(てんち)正大(せいだい)()粋然(すゐぜん)として神州(しんしう)(あつ)まる」とうたへるも、433朦朧気(おぼろげ)ながらにも(これ)想像(さうざう)したればなり。434(いま)一歩(いつぽ)(くだ)つて(これ)天文(てんもん)地文(ちもん)(てき)関係(くわんけい)より()(とき)は、435(じつ)我国(わがくに)地球(ちきう)(じやう)()ける位置(ゐち)436気候(きこう)437水土(すゐど)関係(くわんけい)より(きた)るものなりと()ふべし。438香川(かがは)景樹(かげき)水土(すゐど)関係(くわんけい)より声音(せいおん)正不正(せいふせい)(ろん)じて(いは)く、439古今集(こきんしふ)正義(せいぎ)(じよ)
 
440声音(せいおん)性情(せいじやう)()441性情(せいじやう)水土(すゐど)(れい)ならむこと(さら)(ろん)()つべからず。442(しか)(にご)れる(うち)にありては、443()しと()()西土(もろこし)の、444芳野(よしの)(はな)美善(うるはし)きを(しよ)せるに()たるも、445百千鳥(ももちどり)侏離(からさへづり)のこちたきを(まぬが)れざれば、446(かの)いはゆる(たのし)んで(えう)せず。447(かなしむ)(やぶ)らざらむ性情(せいじやう)(せい)()むことは、448ほとほと(まれ)なるべし。449(いはん)()なる(いづみ)染紙(そめがみ)のいたく喧擾(けんぜう)せる(おとなひ)をや。450猶余(なほのこ)んの(よろ)国原(くにはら)451(その)(おん)すべて単直(たんちよく)清朗(せいらう)なる(こと)(あた)はざるは、452(わが)天津(あまつ)日御霊(ひのみたま)大御照(おほみてら)しますらむ大御光(おほみひかり)(あまね)(かぎ)りに(うと)ければ、453水土(すゐど)自然(しぜん)剛潔(がうけつ)ならずして、454()(まじ)はり(にご)れる柔土(じうど)弱水(じやくすゐ)(うち)涵育(ひた)るが(ゆゑ)なりと()るべし。455されば(その)(うた)へるや譜節(ふせつ)して、456(これ)(あや)どり、457鐘鼓(しようこ)もこれをたすくといへども、458なほ()(おん)清爽(せいさう)ならず、459(その)調(てう)朦朧(もうろう)なるを、460如何(いか)にせむや。461独我(ひとりわが)安積香(あさか)(やま)()(あさ)からず。462清濁(きよにご)(かげ)()えねば、463難波津(なにはづ)(なに)をかわけて(よし)(あし)やをとはむ。
464膂肉(はじし)(むな)しく、465内木綿(うつゆふ)(うつ)ろにして、466天霧(あまぎり)さはる(くま)しなければ、467金石(きんせき)()らずと(いへど)(うた)ふを()べし。468ただちに天地(てんち)感動(かんどう)し、469神人(しんじん)和楽(やわら)かく、470(なん)百獣(ひやうじう)(まひ)をうらやまむ云々(うんぬん)
 
471 ()れ、472(もつぱ)漢詩(かんし)(しりぞ)けて和歌(わか)(おこ)さむが()めに(ろん)ぜるなれども、473()水土(すゐど)による声音(せいおん)性情(せいじやう)関係(くわんけい)(ろん)ぜる大凡(おほよそ)()(きこ)ゆるなり。474気候(きこう)水土(すいど)関係(くわんけい)によりて、475(その)国人(くにびと)性情(せいじやう)風俗(ふうぞく)一切(いつさい)各特異(かくとくい)(てん)にあることは、476吾人(ごじん)日常(にちじやう)見聞(みき)きする(ところ)にして、477(また)(これ)()天然(てんねん)勢力(せいりよく)が、478(じつ)偉大(ゐだい)なる不可抗力(ふかかうりよく)(いう)するものなることは、479欧洲(おうしう)にても、480モンテスキユー、481スペンサー()(その)()社会(しやくわい)学者(がくしや)(ひと)しく(みと)めて論明(ろんめい)せる(ところ)にして、482(いま)()声音(せいおん)(ごと)きも畢竟(ひつきやう)同理(どうり)なりと()ふべし。483(わが)古事記(こじき)()天体学(てんたいがく)(ちよう)する(とき)は、484地球(ちきう)至大天球(たかあまはら)中心(ちうしん)(くらゐ)して、485(やや)西南(せいなん)傾度(けいど)(いう)せり。486地球(ちきう)中心説(ちうしんせつ)(しか)して(わが)日本(にほん)()地球(ちきう)表半球(おもてはんきう)東北(とうほく)方面(はうめん)上部(じやうぶ)(くらゐ)するが(ゆゑ)に、487(あだか)我国(わがくに)地球面(ちきうめん)中央(ちうあう)(うへ)位置(ゐち)するものにして、488温帯中(をんたいちう)にありて、489寒暑度(かんしよど)(うしな)はず、490土壤(どじやう)沃腴(よくゆ)にして水気(すゐき)清澄(せいちやう)なり。491(これ)(もつ)(また)我国(わがくに)豊葦原(とよあしはら)瑞穂(みづほ)(くに)()ふなり。
492 豊葦原(とよあしはら)とは、493至大天球(たかあまはら)(こと)なり。494瑞穂(みづほ)()()にして、495稲葉(いなば)などの()(また)(やり)穂先(ほさき)など()ひて、496精鋭(せいえい)純粋(じゆんすゐ)(ところ)()ふものにして、497()()(くに)とは地球(ちきう)(じやう)()ける粋気(すゐき)充満(じうまん)する(くに)()なり。498されば、499()国土(こくど)(しやう)ずる一切(いつさい)は、500(みな)精鋭(せいえい)()(あつ)めて(うま)れ、501霊機(れいき)(また)精鋭(せいえい)なり。502(かく)(ごと)(みな)それ精鋭(せいえい)なり。503(ゆゑ)(いは)く、504(しん)にこれを(もち)ふれば震天(しんてん)撼地(かんち)(げふ)(また)(かた)からずと。505さて()精鋭(せいえい)なるものを(もち)ゐむとする(とき)は、506()用法(ようはふ)(また)精鋭(せいえい)ならざるべからず。507(しか)して()用法(ようはふ)(じつ)(わが)朝廷(てうてい)()ける天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)大道(たいだう)妙術(めうじゆつ)にして、508所謂(いはゆる)()()(かた)()ぎつつ(つた)(たま)へる我国(わがくに)具有(ぐいう)のものなり。
509 (しか)れども崇神(すじん)天皇(てんわう)大御心(おほみこころ)によりて、510(ひとた)韜蔵(たうざう)せられてより以還(いくわん)511(しばら)(その)(でん)(うしな)ひ、512天下(てんか)(みだ)れて儒仏教(じゆぶつけう)伝来(でんらい)となり、513これと同時(どうじ)に、514(また)外国(ぐわいこく)語声(ごせい)をも輸入(ゆにふ)(きた)りぬ。515所謂(いはゆる)支那(しな)字音(じおん)(およ)印度(いんど)悉曇(しつたん)(これ)なり。516爾後(じご)我国(わがくに)(みち)益々(ますます)(うしな)ひ、517言霊(ことたま)(でん)(いよいよ)(ほろ)び、518祭都潢成が(ごと)きすら我国(わがくに)上古(じやうこ)文字(もじ)()しと()ふに(いた)り、519万葉集(まんえうしふ)時代(じだい)には(すで)仮名遣(かなづか)ひの(あやま)れるもの(おほ)く、520(みなもと)順朝臣(したがふあそん)()(くに)古語(こご)(うしな)はれむことを(うれ)ひて、521和名抄(わみやうせう)(のこ)したれども、522()和名抄(わみやうせう)(すで)(あやま)りあり。523(かく)(ごと)有様(ありさま)なりしかば、524現在(げんざい)今日(こんにち)まで使用(しよう)してある五十音(ごじふおん)(この)(かん)(おこ)るに(いた)りしなり。525()(じつ)印度(いんど)悉曇(しつたん)転化(てんくわ)したるものにして、526()自然(しぜん)理法(りはふ)(たが)へること(はなはだ)し。527(いま)崇神(すじん)天皇(てんわう)以来(いらい)二千(にせん)(ねん)()528(とき)(めぐ)りて乾坤(けんこん)一転(いつてん)せむとし、529(ここ)()()せられたる大道(たいだう)()()でむとするに(いた)りぬ。530(しか)れども馴致(じゆんち)習慣(しふくわん)(ひさ)しき(ひと)(みな)531()(あやま)れるものを(もつ)て、532大道(たいだう)本然(ほんぜん)なりと(しん)じ、533(かへ)つて(これ)(もつ)奇異(きい)(この)める妄誕(ばうたん)(せつ)とせむ。
534 (ゆゑ)に、535(いま)(ここ)(これ)闡明(せんめい)せむとするに(さい)して、536()現行(げんかう)五十音(ごじふおん)基本(きほん)なる悉曇(しつたん)なるもの宇宙(うちう)真理(しんり)正伝(せいでん)(あら)ずして、537神随(かむながら)本道(ほんだう)(あら)ざる所以(ゆゑん)知悉(ちしつ)せしめむとす。538(しか)れども(また)往々(わうわう)にして現行(げんかう)五十音(ごじふおん)(はた)して悉曇(しつたん)(もと)づくものなるや(いな)やを()らざるものあるべければ、539(また)(さら)一歩(いつぽ)退(しりぞ)いて五十音(ごじふおん)出所(しゆつしよ)論定(ろんてい)し、540(しか)して(のち)本論(ほんろん)()らむとするなり。541(そもそも)従来(じうらい)片仮名(かたかな)542五十(ごじふ)音図(おんづ)(とも)吉備(きびの)真備(まきび)(さく)なりと()ひ、543(また)真言(しんごん)僧徒(そうと)天竺(てんぢく)悉曇章(しつたんしやう)によりて、544邦人(ほうじん)固有(こいう)する(おん)のみを()げて(つく)りしものなりといふ(とう)545(その)()異説(いせつ)(おほ)くして(つまびらか)ならず。546吾人(ごじん)(いま)(これ)作者(さくしや)何人(なんびと)なるやを尋求(じんきう)するは、547必然(ひつぜん)要件(えうけん)(あら)ずして、548五十(ごじふ)音図(おんづ)そのものの根拠(こんきよ)(もと)めむとするものなるが(ゆゑ)に、549作者(さくしや)穿鑿(せんさく)(しばら)(これ)()きて()はず、550(ただ)ちに五十音(ごじふおん)故郷(こきやう)()らむとす。
551 さて、552(いま)(これ)真言(しんごん)僧侶(そうりよ)()()れるものとせば、553悉曇(しつたん)()なることは、554(ろん)()たず。555(しか)して(また)これを吉備(きびの)真備(まきび)(さく)なりとするも、556(おな)じく()悉曇(しつたん)(もとづ)くものなり。557何者(なにもの)吉備(きび)大臣(だいじん)(これ)(つく)りしとするも、558(かなら)ずや入唐(にふたう)帰朝後(きてうご)のことに相違(さうゐ)なくして((たう)()ること二十(にじふ)(ねん)559(わが)聖武(しやうむ)天皇(てんわう)天平(てんぴやう)(しち)(ねん)帰朝(きてう)す)(まな)(きた)れる漢音(かんおん)によりて(つく)れるものなるべく、560(しか)して従来(じうらい)支那(しな)韻書(ゐんしよ)なるものは、561悉曇(しつたん)より()でたるものにして、562畢竟(ひつきやう)同根(どうこん)()なればなり。
563 張鱗之(ちやうりんし)韻鏡序(ゐんきやうじよ)(いは)く、
 
564余年二十始得此学字音。565往昔相伝類曰洪韻。566釈迦子之所撰也。567有沙門神珙。568号知韻音。569甞著切韻図載玉篇(南梁高祖武帝の天同九年成る)巻末。570窃意。571是書作於此僧。572世俗訛呼珙為洪爾。573然又無処拠云々
 
574(また)(いは)く、
 
575梵僧伝之華僧続之云々
 
576と。577(よつ)支那(しな)韻書(ゐんしよ)(また)悉曇(しつたん)より転化(てんくわ)せるものなるを()るべし。578(ゆゑ)(いづ)れにしても、579(わが)五十音(ごじふおん)悉曇(しつたん)根拠(こんきよ)(いう)するものなることは(あきら)けし。580韻鏡(ゐんきやう)易解(えきかい)大全(たいぜん)(いは)く、
 
581依開奩抄等。582竪阿伊宇恵遠五字及横加佐太奈波末也羅和九字者在仏経中。583余所三十六字(五十音中父母音を除きたるもの)弘法大師所加也云々
 
584(あるひ)(また)
 
585作者未分明矣
 
586と。587(また)同頭書(どうとうしよ)(いは)く、
 
588云々三十六字雖大師加之。589彼土本有転声法。590有反音相通規則。591故専見有口授伝来非云新加之乎
 
592と。593(いま)五十(ごじふ)音中(おんちう)父母音(ふぼおん)(のぞ)きたる(あま)りの三十六(さんじふろく)()は、594空海(くうかい)(くは)へたりとするも、595(もし)くは(しか)らずとするも、596(すで)父母音(ふぼおん)にして(かれ)(そん)し、597(その)音字(おんじ)配列(はいれつ)順序(じゆんじよ)にして両者(りやうしや)同一(どういつ)なる(てん)より(かんが)ふるときは、598最早(もはや)(うたが)ふの余地(よち)なかるべし。
五十音図
[#図 五十音図]
599 悉曇(しつたん)には母音(ぼおん)十二字(じふにじ)あり、600(これ)摩多(また)()ひ、601父音(ふおん)三十五(さんじふご)()あり、602(これ)体文(たいもん)といふ。603(しか)して我国(わがくに)五十(ごじふ)音図(おんづ)父母音(ふぼおん)は、604(みな)(みぎ)(うち)同類音(どうるいおん)一音(いちおん)(やく)したるものなり。605(すなは)ち「」(じるし)()したるは、606()約音(やくおん)(へう)する()にして、607()()除去(ぢよきよ)すれば、608アイウエオ(およ)びカサタナハマヤラワを(のこ)し、609()父母音(ふぼおん)(まじ)りて、610()三十六(さんじふろく)音図(おんづ)は、611()悉曇図(しつたんづ)(おそ)へるものなるは明白(めいはく)なり。612(ただ)(この)()(これ)襲用(しふよう)せるものなるも、613声音(せいおん)(これ)襲用(しふよう)せるものに(あら)ずして、614(まさ)しく我国(わがくに)(こゑ)なり。615上古(じやうこ)よりは多少(たせう)変化(へんくわ)あれども、616(これ)(おそ)ふも(その)類似(るゐじ)(こゑ)位置(ゐち)()りたるものなり、617(まよ)ふべからず。618印度人(いんどじん)(こゑ)到底(たうてい)日本人(につぽんじん)(こゑ)とは同一(どういつ)ならざるなり)
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