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第七章 諷詩(ふうし)(とく)〔一〇七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻 篇:第3篇 ロツキー山 よみ(新仮名遣い):ろっきーざん
章:第7章 諷詩の徳 よみ(新仮名遣い):ふうしのとく 通し章番号:107
口述日:1921(大正10)年11月14日(旧10月15日) 口述場所: 筆録者:土井靖都 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
天使長・大八洲彦命は、偽の国直姫命、国治立命によってロッキー山は占領され、貴治彦や靖国別夫婦が追放され、言霊別命が捕虜となったことを知った。神軍を派遣してロッキー山を奪回するのは難事ではないが、捕虜となった言霊別命の身の上が案じられた。
言霊別命の従者に、忠勇義烈の神・言代別という神人があった。言代別は、自らロッキー山に潜入して言霊別命を救出する計画を提案した。大八洲彦命はこれを許可した。
言代別は偽の如意宝珠を用意し、ロッキー山の国直姫命に献上した。そしてこの功績によって、ロッキー山の獄卒の職を得た。言代別は言霊別命のつながれている獄を見つけ出し、ある日酒宴が張られたのを幸い、言霊別命を手引きして、見事に脱出せしめることに成功した。
またその後も自らは敵中にとどまり、ロッキー山奪回のための活動を続けた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-04-28 15:13:28 OBC :rm0307
愛善世界社版:42頁 八幡書店版:第1輯 274頁 修補版: 校定版:43頁 普及版:18頁 初版: ページ備考:
001 大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)は、002ロツキー(ざん)悪神(あくがみ)のために根底(こんてい)より(くつが)へされ、003貴治彦(たかはるひこ)004靖国別(やすくにわけ)夫妻(ふさい)のいづこともなく逃亡(たうばう)し、005かつ言霊別(ことたまわけの)(みこと)(てき)のために(とら)はれ、006牢獄(らうごく)につながれ呻吟(しんぎん)せることを()り、007ここに諸神司(しよしん)(あつ)めて、008ロツキー(ざん)回復(くわいふく)し、009言霊別(ことたまわけの)(みこと)(すく)()さむことを協議(けふぎ)したまひぬ。010諸神司(しよしん)鳩首(きうしゆ)謀議(ぼうぎ)結果(けつくわ)011神軍(しんぐん)をおこしてロツキー(ざん)一挙(いつきよ)奪還(だつくわん)するは、012さまで難事(なんじ)にあらざれども、013言霊別(ことたまわけの)(みこと)身辺(しんぺん)にかへつて危険(きけん)(せま)らむことを(おもんばか)り、014表面(へうめん)これを攻撃(こうげき)することを躊躇(ちうちよ)したまひぬ。
015 ここに言霊別(ことたまわけの)(みこと)侍者(じしや)に、016忠勇(ちうゆう)義烈(ぎれつ)(ほまれ)(たか)言代別(ことしろわけ)といふ(もの)ありき。017言代別(ことしろわけ)(おそ)るおそる諸神将(しよしんしよう)(まへ)()で、
018(われ)つらつら(かんが)ふるに、019ロツキー(ざん)攻撃(こうげき)(さき)だち、020言霊別(ことたまわけの)(みこと)(すく)ひださざれば、021(みこと)人質(ひとじち)同様(どうやう)なれば、022魔軍(まぐん)危急(ききふ)におちいりたる場合(ばあひ)023(みこと)殺害(さつがい)したてまつるは必定(ひつぢやう)なり。024(われ)は「(いつは)るなかれ」の(きび)しき律法(りつぱう)(やぶ)りみづから犠牲(ぎせい)となりて、025()(しゆ)(すく)ひたてまつらむとす。026(さいはひ)にこの大任(たいにん)(われ)(ゆる)したまへ』
027誠心(まごころ)おもてに(あら)はして嘆願(たんぐわん)したりければ、028大八洲彦(おほやしまひこの)(みこと)()ちうなづき、
029(なんぢ)(しゆ)(すく)はむとして(てき)(いつは)らむとする行為(かうゐ)は、030元来(ぐわんらい)忠良(ちうりやう)真情(まごころ)よりいでたるものなれば(けつ)して(つみ)とならざるべし。031すみやかにロツキー(ざん)にいたりて言霊別(ことたまわけの)(みこと)(すく)ひだせよ』
032(めい)じたまひぬ。033言代別(ことしろわけ)はおほいに(よろこ)(てん)にも(のぼ)心地(ここち)して、034ただちにロツキー(ざん)にむかひける。035言代別(ことしろわけ)(まる)(いし)金鍍金(きんめつき)をほどこし、036如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)偽造(ぎざう)して懐中(くわいちう)(ふか)秘蔵(ひざう)し、037ロツキー(ざん)南門(なんもん)(あら)はれ、
038国直姫(くになほひめの)(みこと)(たてまつ)るべき珍宝(ちんぽう)あり。039拝謁(はいえつ)()ひたし。040(ねが)はくば貴下(きか)らの斡旋(あつせん)によりこの(よし)奏上(そうじやう)されむことを』
041と、042言葉(ことば)たくみに(たの)みこみけるを、043番卒(ばんそつ)はいふ。
044(はた)して貴下(きか)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)所持(しよぢ)さるるならば、045(われ)らに一目(ひとめ)拝観(はいくわん)せしめよ。046(たま)有無(うむ)をたしかめざるにおいては、047軽々(かるがる)しく奏上(そうじやう)することを()ず』
048とてやや難色(なんしよく)ありければ言代別(ことしろわけ)は、
049貴下(きか)(おほ)()(もつと)もなり』
050とて(ふところ)をひらき、051金色(きんしよく)燦然(さんぜん)たる(たま)一部(いちぶ)(あら)はし()せたるに、052番卒(ばんそつ)はこれを上級(じやうきふ)神司(かみ)(つた)へ、053漸次(ぜんじ)国直姫(くになほひめの)(みこと)にこの次第(しだい)奏上(そうじやう)したりける。054国直姫(くになほひめの)(みこと)は、
055『ロツキー(ざん)には(いま)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)なきを(うら)みとす。056しかるに天運(てんうん)循環(じゆんかん)してここに珍宝(ちんぽう)()()るは、057いよいよ願望(ぐわんばう)成就(じやうじゆ)時期(じき)到来(たうらい)せしならむ。058すみやかに言代別(ことしろわけ)()(まへ)によびきたれ』
059といそいそとして命令(めいれい)したり。060かくて言代別(ことしろわけ)はしばらくして城内(じやうない)神司(かみがみ)にみちびかれ、061国直姫(くになほひめの)(みこと)(まへ)(あら)はれ一礼(いちれい)(のち)062懐中(くわいちゆう)より(たま)取出(とりだ)八足(やたり)机上(きじやう)にうやうやしく安置(あんち)し、
063(われ)こそは高白山(かうはくざん)(ふもと)()言代別(ことしろわけ)といふ(もの)なり。064いまや当山(たうざん)国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)(あら)はれたまふと()きて歓喜(くわんき)にたへず。065(われ)往古(わうこ)より(いへ)(つた)はる如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)持参(ぢさん)し、066これを大神(おほかみ)(たてまつ)り、067もつて神業(しんげふ)参加(さんか)せむと(ほつ)し、068(とほ)山河(さんか)()えてここに(まゐ)のぼりたり』
069言葉(ことば)をつくして奏上(そうじやう)したるに、070国直姫(くになほひめの)(みこと)はおほいに(よろこ)び、071その(たま)()にとり熟視(じゆくし)して満面(まんめん)(ゑみ)(ふく)み、
072()稀代(きたい)珍宝(ちんぽう)なり。073(なんぢ)はこの(たま)(たてまつ)りし(こう)により、074いかなる(のぞ)みなりとも(かな)へつかはさむ』
075宣言(せんげん)せり。076言代別(ことしろわけ)頓首(とんしゆ)再拝(さいはい)077喜色(きしよく)満面(まんめん)にあふれ、
078()有難(ありがた)大神(おほかみ)(おん)(おほ)せ、079御恩(ごおん)海山(うみやま)()へがたし。080(ねが)はくば(いや)しき(われ)をして牢獄(らうごく)番卒(ばんそつ)たらしめたまへ、081これに()ぎたるよろこびはなし』
082(ねが)ひけるに、083国直姫(くになほひめの)(みこと)(すこ)しく(かうべ)をかたむけ、
084心得(こころえ)(なんぢ)(のぞ)み、085かかる(うるは)しき世界(せかい)珍宝(ちんぽう)(まつ)りたる功労者(こうらうしや)でありながら、086(なに)(くる)しみてかかる(いや)しき(しよく)(もと)むるや』
087反問(はんもん)するを、088言代別(ことしろわけ)はただちに言葉(ことば)(かへ)していふ。
089(ことわざ)にも喬木(けうぼく)よく(かぜ)にあたり、090()(くひ)()たれ、091(たか)きに(のぼ)(もの)は、092()()つることありと()きおよぶ。093(われ)役目(やくめ)高下(かうげ)(のぞ)まず、094ただ誠心(せいしん)誠意(せいい)大神(おほかみ)(つか)へ、095神業(しんげふ)一端(いつたん)(くは)へたまはばこれに()ぎたる(さいはひ)なし。096それとも()技倆(ぎりよう)大神(おほかみ)において(みと)めたまはば、097()のとき相当(さうたう)地位(ちゐ)(あた)へたまふべし。098(きふ)上職(じやうしよく)をたまはるより漸次(ぜんじ)(おも)(もち)ゐさせたまはば、099()一身(いつしん)にとりてもつとも安全(あんぜん)ならむ』
100との(げん)に、101国直姫(くになほひめの)(みこと)言代別(ことしろわけ)名利(めいり)(もと)めず、102寡欲(くわよく)恬淡(てんたん)なるに感激(かんげき)し、103ただちにその()ひを()れて牢獄(らうごく)番卒(ばんそつ)仲間(なかま)(くは)へけり。104言代別(ことしろわけ)日夜(にちや)番卒(ばんそつ)として忠実(ちうじつ)奉務(ほうむ)し、105(こころ)ひそかに言霊別(ことたまわけの)(みこと)(つな)がれたる牢獄(らうごく)(さぐ)りゐたりける。106言霊別(ことたまわけの)(みこと)頭髪(とうはつ)(なが)背後(はいご)()び、107(ひげ)胸先(むなさき)()れ、108顔色(がんしよく)憔悴(せうすい)して、109ほとんど見擬(みまが)ふばかりの姿(すがた)(へん)じゐたまへば、110言代別(ことしろわけ)(みこと)()姿(すがた)(みと)めること容易(ようい)ならざりける。
111 あるとき国治立(くにはるたちの)(みこと)出現(しゆつげん)(いは)ひとして、112ロツキー(ざん)城内(じやうない)祝宴(しゆくえん)()られ、113また獄卒(ごくそつ)一般(いつぱん)獄前(ごくぜん)において祝意(しゆくい)(へう)するため、114酒宴(しゆえん)(もよほ)しける。115獄卒(ごくそつ)(めづら)しき酒肴(しゆかう)()ひ、116あるひは()ひ、117あるひはうたひ、118(をど)りて立騒(たちさわ)ぎけり。119(なか)言代別(ことしろわけ)()ちて(うた)をうたひ、120(をど)りはじめたり。121その(うた)は、
122 (むかし)(むかし)のさる(むかし) (さる)三疋(さんびき)()ンできて
123 (おに)()はれて二疋(にひき)()げた。124 (のこ)りの一疋(いつぴき)(とら)まへられて
125 いまは(おに)らの玩弄(おもちや)とせられ (くら)(あな)へとほりこまれ
126 消息(たより)せうにも言伝(ことづて)しよにも いまは(せん)なしただ一言(いちごん)
127 言霊別(ことたまわけ)神代(かみしろ)と (あら)はれいでし言代別(ことしろわけ)
128 わけて(くる)しき(やみ)夜半(よは) 高天原(たかあまはら)より(くだ)りきて
129 お(さる)(いのち)(たす)けむと (おも)手段(てだて)有明(ありあけ)
130 十五(じふご)(つき)のまンまるい (ひかり)をあてに()ンで()よ。
131 (さる)(もち)()きや、132(うさぎ)がまぜる。133 まぜる(うさぎ)言代別(ことしろわけ)よ。
134 今年(ことし)豊年(ほうねん)満作(まんさく)ぢや。135 心持(こころもち)よき望月(もちづき)
136 (ひかり)とともに()ンで()よ。137 (ひかり)とともに()ンで()よ。
138 よいとさのよいとさ さつさとぬけ()(ひがし)(はし)れ。
139 (ひがし)(ひつじ)千疋(せんびき)をつて (さる)をかかへて()ンでゆく。
140 よいとさのよいとさ。
141(ふし)面白(おもしろ)くみづから(うた)ひみづから(をど)(くる)ふにぞ、142あまたの番卒(ばんそつ)(なん)意味(いみ)なるやを()らず、143ただ面白(おもしろ)(うた)とのみ(おも)ひて(わら)ふばかりなりける。144言霊別(ことたまわけの)(みこと)はこの(うた)()きて言代別(ことしろわけ)(われ)(すく)()さむために番卒(ばんそつ)となり、145合図(あひづ)(うた)をうたひしものと(おほ)いによろこび、146十五夜(じふごや)(つき)()ちゐたまひぬ。147(ひる)きたり(よる)()りて、148つひには仲秋(ちゆうしう)(つき)()となりぬ。149国直姫(くになほひめの)(みこと)以下(いか)曲人(まがびと)は、150高台(たかだい)(のぼ)月見(つきみ)(えん)(もよほ)しゐたれば、151番卒(ばんそつ)もまた一所(いつしよ)(あつ)まりて月見(つきみ)(えん)(ひら)き、152(さけ)()ひくるひ面白(おもしろ)(うた)をうたひて余念(よねん)なくたわむれゐたりけり。153このとき言代別(ことしろわけ)は、154ふたたび以前(いぜん)(うた)をうたひ牢獄(らうごく)見廻(みまは)りぬ。155ある牢獄(らうごく)(なか)より小声(こごゑ)にて、
156言代別(ことしろわけ)
157()(こゑ)あり。158(うたが)ひもなく()きおぼえたる(しゆ)(こゑ)なるに、159言代別(ことしろわけ)(おほ)いによろこび、160ただちに()をひらき(いましめ)()き、161やつれたる言霊別(ことたまわけの)(みこと)()()ひ、162東門(とうもん)()して()()したり。
163 (そと)には言霊別(ことたまわけの)(みこと)部下(ぶか)神卒(しんそつ)あまた(あら)はれきたり、164(みこと)天磐船(あまのいはふね)()せ、165天空(てんくう)(たか)くロツキー(ざん)(あと)に、166()高天原(たかあまはら)無事(ぶじ)帰還(きくわん)したりける。167言代別(ことしろわけ)何喰(なにく)はぬ(かほ)にて牢獄(らうごく)()()ぢ、168もとのごとく酒宴(しゆえん)()(あら)はれ、169あまたの番卒(ばんそつ)とともに(さけ)()(をど)(くる)ひゐたり。170(あと)(のこ)りし言代別(ことしろわけ)後日(ごじつ)いかなる活動(くわつどう)をなすか、171趣味(しゆみ)ある問題(もんだい)()ふべし。
172大正一〇・一一・一四 旧一〇・一五 土井靖都録)
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