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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第3巻(寅の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 国魂の配置
第1章 神々の任命
第2章 八王神の守護
第2篇 新高山
第3章 渓間の悲劇
第4章 鶴の首
第3篇 ロツキー山
第5章 不審の使神
第6章 籠の鳥
第7章 諷詩の徳
第8章 従神司の殊勲
第4篇 鬼城山
第9章 弁者と弁者
第10章 無分別
第11章 裸体の道中
第12章 信仰の力
第13章 嫉妬の報
第14章 霊系の抜擢
第5篇 万寿山
第15章 神世の移写
第16章 玉ノ井の宮
第17章 岩窟の修業
第18章 神霊の遷座
第6篇 青雲山
第19章 楠の根元
第20章 晴天白日
第21章 狐の尻尾
第22章 神前の審判
第7篇 崑崙山
第23章 鶴の一声
第24章 蛸間山の黒雲
第25章 邪神の滅亡
第26章 大蛇の長橋
第8篇 神界の変動
第27章 不意の昇天
第28章 苦心惨憺
第29章 男波女波
第30章 抱擁帰一
第31章 竜神の瀑布
第32章 破軍の剣
第9篇 隠神の活動
第33章 巴形の斑紋
第34章 旭日昇天
第35章 宝の埋換
第36章 唖者の叫び
第37章 天女の舞曲
第38章 四十八滝
第39章 乗合舟
第10篇 神政の破壊
第40章 国の広宮
第41章 二神の帰城
第42章 常世会議
第43章 配所の月
第11篇 新規蒔直し
第44章 可賀天下
第45章 猿猴と渋柿
第46章 探湯の神事
第47章 夫婦の大道
第48章 常夜の闇
第49章 袖手傍観
第12篇 霊力体
第50章 安息日
岩井温泉紀行歌
余白歌
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第3巻(寅の巻)
> 第11篇 新規蒔直し > 第44章 可賀天下
<<< 配所の月
(B)
(N)
猿猴と渋柿 >>>
第四四章
可賀
(
かか
)
天下
(
てんか
)
〔一四四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
篇:
第11篇 新規蒔直し
よみ(新仮名遣い):
しんきまきなおし
章:
第44章 可賀天下
よみ(新仮名遣い):
かかてんか
通し章番号:
144
口述日:
1921(大正10)年12月08日(旧11月10日)
口述場所:
筆録者:
栗原七蔵
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
国祖は地の高天原の役職について、天上より高照姫命を降して宰相とし、天使長とした。また真澄姫、言霊姫、竜世姫らを天使と定めた。
この新体制により、八王たちは八王大神の支配を離れて高照姫命に帰順したため、一時は世界は前にもまして平和に治まることとなった。加えて、竜宮城の三重の金殿から顕国の御玉の霊光が発揮して邪神を照らし、地の高天原と竜宮城に神威をますます加えた。
顕国の御玉の霊威は、万寿山に退去した四神の祈念の力によるものであった。しかし高照姫命以下地の高天原・竜宮城の神々は、須佐之男大神のご守護の賜物であることを悟らず、慢心したために、徐々に世界には不平不満の声が満ちてくるようになった。
ここにいたって八王大神は、大国彦とはかって各地の八王・八頭に邪霊を憑依させ、再び聖地に反逆させることに成功した。八王大神らが再度聖地に攻め寄せると、高照姫命らは軍事力でこれに対抗し、国祖の戒めを無視して戦いを続けたために、聖地は戦乱によって悲惨を極めた。
激しい戦いの末、神器の威力もあって地の高天原軍が勝利するが、東北から強風が突如として吹き起こり、聖地聖城を倒壊させ、甚大な被害が生じた。また洪水が氾濫して竜宮城は水没するほどになってしまった。
神々は国祖の神勅をないがしろにした報いであろうと謝罪の天津祝詞を必死で称えたが、天変地異は一向に収まる気配がなかった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm0344
愛善世界社版:
257頁
八幡書店版:
第1輯 351頁
修補版:
校定版:
261頁
普及版:
116頁
初版:
ページ備考:
001
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
以下
(
いか
)
天使
(
てんし
)
の
聖地
(
せいち
)
退去
(
たいきよ
)
ののちは、
002
国治立
(
くにはるたちの
)
命
(
みこと
)
の
奏請
(
そうせい
)
により、
003
天上
(
てんじやう
)
より
高照姫
(
たかてるひめの
)
命
(
みこと
)
を
降
(
くだ
)
したまひて、
004
これを
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
の
宰相神
(
さいしやうがみ
)
に
任
(
にん
)
じ、
005
天使長
(
てんしちやう
)
の
聖職
(
せいしよく
)
に
就
(
つ
)
かしめ、
006
真澄姫
(
ますみひめ
)
、
007
言霊姫
(
ことたまひめ
)
、
008
竜世姫
(
たつよひめ
)
をして
天使
(
てんし
)
の
聖職
(
せいしよく
)
につかしめたまひぬ。
009
ここに
女神司
(
によしん
)
四柱
(
よはしら
)
相
(
あひ
)
並
(
なら
)
びて
神務
(
しんむ
)
と
神政
(
しんせい
)
に
奉仕
(
ほうし
)
することとなり、
010
神々
(
かみがみ
)
の
心気
(
しんき
)
を
新
(
あらた
)
にすることを
得
(
え
)
たりけり。
011
一
(
いつ
)
たん
常世彦
(
とこよひこ
)
の
威力
(
ゐりよく
)
に
圧
(
あつ
)
せられ、
012
八王
(
やつわう
)
聯盟
(
れんめい
)
に
加
(
くは
)
はりゐたる
諸天使
(
しよてんし
)
は、
013
八頭神
(
やつがしらがみ
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
八王
(
やつわう
)
大神
(
だいじん
)
に
背
(
そむ
)
きてふたたび
高照姫
(
たかてるひめの
)
命
(
みこと
)
の
幕下
(
ばくか
)
となり、
014
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
い、
015
ここに
目出度
(
めでた
)
く
帰順
(
きじゆん
)
することとなり、
016
聖地
(
せいち
)
の
神政
(
しんせい
)
はまつたく
復活
(
ふくくわつ
)
することを
得
(
え
)
たりき。
017
天使長
(
てんしちやう
)
高照姫
(
たかてるひめの
)
命
(
みこと
)
は
国治立
(
くにはるたちの
)
命
(
みこと
)
の
神命
(
しんめい
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
018
八王
(
やつわう
)
八頭
(
やつがしら
)
を
率
(
ひき
)
ゐて、
019
天地
(
てんち
)
の
律法
(
りつぱう
)
をあまねく
地上
(
ちじやう
)
の
世界
(
せかい
)
に
宣伝
(
せんでん
)
し、
020
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
もおとすばかりの
大勢力
(
だいせいりよく
)
にして、
021
世界
(
せかい
)
の
各山
(
かくざん
)
各所
(
かくしよ
)
には
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
充満
(
じゆうまん
)
し、
022
神人
(
しんじん
)
動植物
(
どうしよくぶつ
)
はことごとくその
堵
(
と
)
に
安
(
やす
)
んじ、
023
実
(
じつ
)
に
天下
(
てんか
)
は
泰平
(
たいへい
)
に
治
(
をさ
)
まり、
024
邪神
(
じやしん
)
はおのおの
影
(
かげ
)
をひそめ
国土
(
こくど
)
安穏
(
あんをん
)
にして、
025
天日
(
てんじつ
)
いよいよ
照
(
て
)
り
輝
(
かがや
)
き、
026
月光
(
げつくわう
)
澄
(
す
)
みわたり
蒼空
(
さうくう
)
一点
(
いつてん
)
の
妖気
(
えうき
)
なく、
027
実
(
じつ
)
に
完全
(
くわんぜん
)
無欠
(
むけつ
)
の
神世
(
しんせい
)
を
現出
(
げんしゆつ
)
せしめたれば、
028
世界
(
せかい
)
の
神人
(
しんじん
)
こぞつて
可賀
(
かか
)
天下
(
てんか
)
と
賞揚
(
しやうやう
)
するの
聖代
(
せいだい
)
とはなりける。
029
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
に
雲
(
くも
)
をしのぎて
聳立
(
しようりつ
)
せる、
030
三重
(
みへ
)
の
金殿
(
きんでん
)
より
顕国
(
うつしくに
)
の
御玉
(
みたま
)
の
神霊
(
しんれい
)
発動
(
はつどう
)
して、
031
唸
(
うな
)
りを
発
(
はつ
)
し、
032
ときどき
不可思議
(
ふかしぎ
)
なる
光輝
(
くわうき
)
を
発射
(
はつしや
)
して
邪悪神
(
じやあくしん
)
の
面
(
おもて
)
を
照
(
て
)
らしたまへば、
033
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
の
聖地
(
せいち
)
も
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
の
聖城
(
せいじやう
)
も、
034
日
(
ひ
)
ましに
神威
(
しんゐ
)
霊徳
(
れいとく
)
くははり、
035
金色
(
こんじき
)
の
鴉
(
からす
)
、
036
銀色
(
ぎんしよく
)
の
神鳩
(
しんきう
)
嬉々
(
きき
)
として
中空
(
ちうくう
)
に
舞
(
ま
)
ひ
遊
(
あそ
)
び、
037
天男
(
てんなん
)
天女
(
てんによ
)
はつねに
四辺
(
しへん
)
を
囲繞
(
ゐぜう
)
して
太平
(
たいへい
)
の
音楽
(
おんがく
)
を
奏
(
そう
)
し、
038
五風
(
ごふう
)
十雨
(
じふう
)
順
(
じゆん
)
をたがへず、
039
禾穀
(
くわこく
)
豊穣
(
ほうじやう
)
して
神人
(
しんじん
)
その
業
(
げふ
)
を
楽
(
たの
)
しみ、
040
神界
(
しんかい
)
理想
(
りさう
)
の
黄金
(
わうごん
)
世界
(
せかい
)
を
現出
(
げんしゆつ
)
するにいたり、
041
遠近
(
をちこち
)
の
邪神
(
じやしん
)
も
静謐
(
せいひつ
)
帰順
(
きじゆん
)
をよそほひ、
042
野心
(
やしん
)
を
深
(
ふか
)
く
包
(
つつ
)
みて
現実
(
げんじつ
)
的
(
てき
)
暴動
(
ばうどう
)
を
慎
(
つつし
)
み、
043
天下
(
てんか
)
一点
(
いつてん
)
の
妖雲
(
えううん
)
を
見
(
み
)
ざる
瑞祥
(
ずゐしやう
)
の
世
(
よ
)
とはなりにける。
044
これは
万寿山
(
まんじゆざん
)
に
退去
(
たいきよ
)
されし
前
(
ぜん
)
天使長
(
てんしちやう
)
以下
(
いか
)
の
日夜
(
にちや
)
の
専念
(
せんねん
)
的
(
てき
)
祈念
(
きねん
)
の
力
(
ちから
)
によりて、
045
その
精霊体
(
せいれいたい
)
に
活動
(
くわつどう
)
をおこし、
046
聖地
(
せいち
)
聖域
(
せいゐき
)
の
霊徳
(
れいとく
)
を
発輝
(
はつき
)
したまひしが
故
(
ゆゑ
)
なり。
047
されど
天使長
(
てんしちやう
)
高照姫
(
たかてるひめの
)
命
(
みこと
)
以下
(
いか
)
の
三天使
(
さんてんし
)
をはじめ
神将
(
しんしやう
)
神卒
(
しんそつ
)
にいたるまで、
048
須佐之男
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
昼夜
(
ちうや
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
の
賜
(
たまもの
)
たることを
少
(
すこ
)
しも
覚
(
さと
)
らず、
049
天運
(
てんうん
)
の
循環
(
じゆんかん
)
と、
050
新天使
(
しんてんし
)
以下
(
いか
)
の
神務
(
しんむ
)
と
神政
(
しんせい
)
の
完全
(
くわんぜん
)
無欠
(
むけつ
)
にして、
051
天地
(
てんち
)
神明
(
しんめい
)
の
神慮
(
しんりよ
)
にかなひ
奉
(
まつ
)
れる
結果
(
けつくわ
)
ならむと、
052
心
(
こころ
)
おごりて、
053
顕国
(
うつしくに
)
の
御玉
(
みたま
)
の
守護
(
しゆご
)
と、
054
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
以下
(
いか
)
の
専心
(
せんしん
)
祈念
(
きねん
)
の
賜
(
たまもの
)
たることを
忘却
(
ばうきやく
)
し、
055
つひには
女神司
(
によしん
)
のあさはかにも
驕慢心
(
けうまんしん
)
増長
(
ぞうちよう
)
し、
056
その
結果
(
けつくわ
)
は
天地
(
てんち
)
の
律法
(
りつぱう
)
まで
軽視
(
けいし
)
するにいたり、
057
神徳
(
しんとく
)
日々
(
ひび
)
に
衰
(
おとろ
)
へ
各所
(
かくしよ
)
に
不平
(
ふへい
)
不満
(
ふまん
)
の
声
(
こゑ
)
おこり、
058
漸次
(
ぜんじ
)
日
(
ひ
)
を
追
(
お
)
ひ
月
(
つき
)
を
重
(
かさ
)
ぬるとともに、
059
可賀
(
かか
)
天下
(
てんか
)
の
神政
(
しんせい
)
を
呪
(
のろ
)
ふ
神々
(
かみがみ
)
勃発
(
ぼつぱつ
)
するの
形勢
(
けいせい
)
を
馴致
(
じゆんち
)
したりける。
060
ここに
一旦
(
いつたん
)
鉾
(
ほこ
)
をおさめ
帰順
(
きじゆん
)
をよそほひゐたる
八王
(
やつわう
)
大神
(
だいじん
)
常世彦
(
とこよひこ
)
は、
061
常世姫
(
とこよひめ
)
と
再挙
(
さいきよ
)
をくはだて、
062
大国彦
(
おほくにひこ
)
と
計
(
はか
)
り、
063
世界
(
せかい
)
各所
(
かくしよ
)
の
八王
(
やつわう
)
八頭
(
やつがしら
)
に、
064
八頭
(
やつがしら
)
八尾
(
やつを
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
霊魂
(
みたま
)
を
憑依
(
ひようい
)
せしめ、
065
その
女神司
(
によしん
)
には
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
の
霊
(
れい
)
を
憑依
(
ひようい
)
せしめ、
066
部下
(
ぶか
)
の
神司
(
かみがみ
)
には
六面
(
ろくめん
)
八臂
(
はつぴ
)
の
邪鬼
(
じやき
)
や
眷属
(
けんぞく
)
を
憑依
(
ひようい
)
せしめて、
067
俄
(
にはか
)
に
反逆心
(
はんぎやくしん
)
を
発
(
はつ
)
せしめたり。
068
世界
(
せかい
)
の
神人
(
かみがみ
)
はまたもや
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
起
(
た
)
つて、
069
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
の
神政
(
しんせい
)
に
反抗
(
はんかう
)
的
(
てき
)
態度
(
たいど
)
をあらはし、
070
あまたの
神人
(
かみがみ
)
魔軍
(
まぐん
)
と
変
(
へん
)
じて、
071
八王
(
やつわう
)
大神
(
だいじん
)
指揮
(
しき
)
のもとに、
072
まづ
諸山
(
しよざん
)
の
神軍
(
しんぐん
)
を
降
(
くだ
)
し、
073
勝
(
かち
)
に
乗
(
じやう
)
じて
聖地
(
せいち
)
にむかひ、
074
天
(
あま
)
の
磐船
(
いはふね
)
を
数百千
(
すうひやくせん
)
とも
限
(
かぎ
)
りなく
建造
(
けんざう
)
して
天空
(
てんくう
)
を
翔
(
かけ
)
り、
075
群
(
むれ
)
をなして
攻
(
せ
)
めよせ
来
(
きた
)
りぬ。
076
天使長
(
てんしちやう
)
高照姫
(
たかてるひめの
)
命
(
みこと
)
は
周章
(
しうしやう
)
狼狽
(
らうばい
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
077
神勅
(
しんちよく
)
を
請
(
こ
)
ふのいとまなく、
078
ただちに
数百隻
(
すうひやくせき
)
の
天
(
あま
)
の
鳥船
(
とりふね
)
を
造
(
つく
)
り、
079
橄欖山
(
かんらんざん
)
より
敵
(
てき
)
にむかつて
攻入
(
せめい
)
り、
080
蒼空
(
さうくう
)
高
(
たか
)
く
一大
(
いちだい
)
激戦
(
げきせん
)
を
開始
(
かいし
)
し、
081
一勝
(
いつしよう
)
一敗
(
いつぱい
)
たがひに
雌雄
(
しゆう
)
を
争
(
あらそ
)
ひ、
082
ふたたび
聖地
(
せいち
)
は
紛乱
(
ふんらん
)
の
巷
(
ちまた
)
と
化
(
くわ
)
し
去
(
さ
)
りにける。
083
空中
(
くうちゆう
)
の
戦
(
たたか
)
ひは
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
につぎほとンど
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
有余
(
いうよ
)
を
費
(
つひ
)
やしたり。
084
国祖
(
こくそ
)
国治立
(
くにはるたちの
)
命
(
みこと
)
はまたもや
神勅
(
しんちよく
)
を
降
(
くだ
)
し、
085
『
天地
(
てんち
)
の
律法
(
りつぱう
)
を
遵奉
(
じゆんぽう
)
し
決
(
けつ
)
して
暴力
(
ばうりよく
)
をもつて
戦
(
たたか
)
ふべからず。
086
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
親心
(
おやごころ
)
をもつて
敵
(
てき
)
を
言向和
(
ことむけや
)
はせ、
087
善一
(
ぜんひと
)
つの
大道
(
だいだう
)
に
教
(
をし
)
へ
導
(
みちび
)
くべし』
088
と
厳命
(
げんめい
)
されたれども、
089
高照姫
(
たかてるひめの
)
命
(
みこと
)
、
090
真澄姫
(
ますみひめ
)
、
091
言霊姫
(
ことたまひめ
)
、
092
竜世姫
(
たつよひめ
)
は、
093
『
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
かかる
緩漫
(
くわんまん
)
なる
方法
(
はうはふ
)
をもつて
敵
(
てき
)
を
改心
(
かいしん
)
せしめむとするは、
094
実
(
じつ
)
に
無謀
(
むぼう
)
迂遠
(
うゑん
)
の
策
(
さく
)
にして
到底
(
たうてい
)
寸効
(
すんかう
)
なかるべし。
095
いたづらに
宋襄
(
そうじやう
)
の
仁
(
じん
)
を
施
(
ほどこ
)
しかへつて
敵
(
てき
)
に
乗
(
じやう
)
ぜられ、
096
噬臍
(
ぜいせい
)
の
悔
(
くい
)
を
後日
(
ごじつ
)
にのこさむよりは、
097
強暴
(
きやうぼう
)
にたいするに
強暴
(
きやうぼう
)
をもつてし、
098
我
(
われ
)
らの
実力
(
じつりよく
)
を
示
(
しめ
)
して
敵
(
てき
)
を
全滅
(
ぜんめつ
)
せしめ、
099
後難
(
こうなん
)
を
絶
(
た
)
つに
如
(
し
)
かず。
100
いかに
国祖
(
こくそ
)
の
神命
(
しんめい
)
なればとて、
101
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
102
実力
(
じつりよく
)
なき
天地
(
てんち
)
の
律法
(
りつぱう
)
をふりかざして、
103
なんの
効
(
かう
)
をか
為
(
な
)
さむや。
104
神勅
(
しんちよく
)
は、
105
われらは
努
(
つと
)
めて
遵奉
(
じゆんぽう
)
せざるべからずといへども、
106
それは
時
(
とき
)
と
位置
(
ゐち
)
とに
関
(
くわん
)
して
行
(
おこな
)
ふべきものなり。
107
急場
(
きふば
)
の
用
(
よう
)
に
立
(
た
)
つべきものにあらず』
108
と
四柱
(
よはしら
)
の
天使
(
てんし
)
はきはめて
強硬
(
きやうかう
)
なる
態度
(
たいど
)
を
持
(
ぢ
)
し、
109
神勅
(
しんちよく
)
を
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
にてあしらひゐたりけり。
110
時
(
とき
)
しも
敵
(
てき
)
はますます
進
(
すす
)
ンで
聖地
(
せいち
)
の
上空
(
じやうくう
)
に
雲霞
(
うんか
)
のごとく
飛
(
と
)
びきたり、
111
天
(
てん
)
の
三柱宮
(
みはしらのみや
)
の
上
(
うへ
)
に
火弾
(
くわだん
)
を
無数
(
むすう
)
に
投
(
な
)
げつけたれば、
112
たちまち
黒煙
(
こくえん
)
濛々
(
もうもう
)
として
立
(
た
)
ちのぼり、
113
さしも
荘厳
(
さうごん
)
を
極
(
きは
)
めたるエルサレムの
大神殿
(
だいしんでん
)
もたちまち
烏有
(
ういう
)
に
帰
(
き
)
したり。
114
時
(
とき
)
しも
火焔
(
くわえん
)
の
中
(
なか
)
より
巨大
(
きよだい
)
なる
神将
(
しんしやう
)
あらはれ、
115
味方
(
みかた
)
の
鳥船
(
とりふね
)
にうち
乗
(
の
)
り
敵
(
てき
)
の
神将
(
しんしやう
)
醜原別
(
しこはらわけ
)
にむかつて
衝突
(
しようとつ
)
を
試
(
こころ
)
みたりければ、
116
醜原別
(
しこはらわけ
)
はもろくも
打
(
う
)
ち
落
(
おと
)
され、
117
火焔
(
くわえん
)
の
中
(
なか
)
につつまれ
苦悶
(
くもん
)
の
結果
(
けつくわ
)
つひに
焼死
(
せうし
)
したりける。
118
味方
(
みかた
)
の
神将
(
しんしやう
)
神卒
(
しんそつ
)
は
手
(
て
)
を
打
(
う
)
ちてよろこび、
119
快哉
(
くわいさい
)
を
叫
(
さけ
)
びしが、
120
その
声
(
こゑ
)
天地
(
てんち
)
も
動
(
ゆる
)
ぐばかりなり。
121
言霊姫
(
ことたまひめ
)
は
又
(
また
)
もや
破軍
(
はぐん
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
抜放
(
ぬきはな
)
ち、
122
敵
(
てき
)
の
魔軍
(
まぐん
)
にむかつて
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
空中
(
くうちゆう
)
目
(
め
)
がけて
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
りしにぞ、
123
宝剣
(
ほうけん
)
の
威徳
(
ゐとく
)
ただちに
現
(
あら
)
はれたまひて、
124
敵
(
てき
)
の
将卒
(
しやうそつ
)
は
雨
(
あめ
)
のごとく
地上
(
ちじやう
)
に
落下
(
らくか
)
し、
125
あるひは
火焔
(
くわえん
)
の
中
(
なか
)
に
墜落
(
つゐらく
)
して
黒焦
(
くろこげ
)
となり
滅亡
(
めつぼう
)
したり。
126
敵軍
(
てきぐん
)
の
将卒
(
しやうそつ
)
は
不意
(
ふい
)
を
打
(
う
)
たれて
一敗
(
いつぱい
)
地
(
ち
)
にまみれ、
127
命
(
いのち
)
からがら
西天
(
せいてん
)
をかすめて
遠
(
とほ
)
く
姿
(
すがた
)
を
没
(
ぼつ
)
しける。
128
東北
(
とうほく
)
の
強風
(
きやうふう
)
突如
(
とつじよ
)
として
吹
(
ふ
)
きおこり
聖地
(
せいち
)
聖城
(
せいじやう
)
を
倒潰
(
たうくわい
)
し、
129
動植物
(
どうしよくぶつ
)
の
被害
(
ひがい
)
は
目
(
め
)
もあてられぬ
悲惨
(
ひさん
)
なる
光景
(
くわうけい
)
となりければ、
130
真澄姫
(
ますみひめ
)
、
131
竜世姫
(
たつよひめ
)
はおほいに
驚
(
おどろ
)
き、
132
『
妾
(
わらは
)
ら
神勅
(
しんちよく
)
違反
(
ゐはん
)
の
行動
(
かうどう
)
を
執
(
と
)
りたるを
大神
(
おほかみ
)
の
赫怒
(
かくど
)
したまひて、
133
かくのごとく
災害
(
さいがい
)
の
頻発
(
ひんぱつ
)
するならむ』
134
と、
135
天地
(
てんち
)
に
拝跪
(
はいき
)
して
謝罪
(
しやざい
)
し
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
奏上
(
そうじやう
)
したれども、
136
東北
(
とうほく
)
の
風
(
かぜ
)
はますます
強烈
(
きやうれつ
)
となり、
137
洪水
(
こうずゐ
)
氾濫
(
はんらん
)
してつひには
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
も
水中
(
すゐちゆう
)
に
没
(
ぼつ
)
せむとするに
到
(
いた
)
れり。
138
聖地
(
せいち
)
聖城
(
せいじやう
)
の
神将
(
しんしやう
)
神卒
(
しんそつ
)
は、
139
今
(
いま
)
さらのごとく
一斉
(
いつせい
)
に
天地
(
てんち
)
に
拝跪
(
はいき
)
して
救助
(
きうじよ
)
を
祈
(
いの
)
り
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
したれども、
140
天地
(
てんち
)
の
怒
(
いか
)
りは
容易
(
ようい
)
に
解
(
と
)
けず、
141
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
すればするほど
風勢
(
ふうせい
)
は
刻々
(
こくこく
)
に
猛烈
(
まうれつ
)
の
度
(
ど
)
をくはへ、
142
雨
(
あめ
)
はいよいよ
繁
(
しげ
)
く
降
(
ふ
)
りきたり、
143
雷鳴
(
らいめい
)
は
天柱
(
てんちゆう
)
くじけ、
144
地維
(
ちゐ
)
裂
(
さ
)
くるかと
疑
(
うたが
)
ふばかりの
大音響
(
だいおんきやう
)
すさまじく
轟
(
とどろ
)
きわたり、
145
電光
(
でんくわう
)
ひらめきわたりて
眼
(
め
)
を
開
(
ひら
)
くあたはず、
146
神人
(
かみがみ
)
らの
面色
(
めんしよく
)
は
土色
(
つちいろ
)
と
変
(
へん
)
じ、
147
息
(
いき
)
をこらして
地上
(
ちじやう
)
に
平伏
(
へいふく
)
するのみなりける。
148
(
大正一〇・一二・八
旧一一・一〇
栗原七蔵
録)
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(B)
(N)
猿猴と渋柿 >>>
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