霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二九章 (つき)(ゆき)(はな)〔一七九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻 篇:第5篇 局面一転 よみ(新仮名遣い):きょくめんいってん
章:第29章 月雪花 よみ(新仮名遣い):つきゆきはな 通し章番号:179
口述日:1921(大正10)年12月24日(旧11月26日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
聖地を預かる桃上彦は、常世会議の間もエルサレムで鬱々として日々を過ごしていた。
ある夜、庭園から呼ぶ声に引かれて外に出ると、えもいわれぬ美しい女性が桃上彦を招いていた。
そして、自分は聖地の生まれだが、今は常世の国にて神政を補佐しているのだ、と明かし、行成彦らが常世会議で傍若無人の振る舞いをなし、聖地の権威を失墜させている、と取り入ってきた。
桃上彦は女性と何事かを打ち合わせて戸口で袂を分かった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-01 22:04:40 OBC :rm0429
愛善世界社版:183頁 八幡書店版:第1輯 437頁 修補版: 校定版:193頁 普及版:82頁 初版: ページ備考:
001 (かぜ)新柳(しんりう)(かみ)(くし)けづり、002(なみ)青苔(せいたい)(ひげ)(あら)ふとは菅公(かんこう)()なり。
003 (ころ)弥生(やよひ)(なかば)ごろ、004天津(あまつ)()(かみ)西(にし)(やま)()(かく)黄昏(たそがれ)(くも)ただよふ。005()には(つばめ)翩翻(へんぽん)として(いそが)しげに(をさ)()り、006神人(しんじん)みな(はる)日長(ひなが)睡眠(ねむり)をもよほす、007(とき)しも(ひがし)(そら)(くも)()()けてたち(のぼ)(おぼろ)月影(つきかげ)()もいはれぬ長閑(のどか)さなりける。
008 ()りもせず(くも)りも()てぬ(はる)()
009  朧月夜(おぼろづきよ)にしくものぞなき
010古人(こじん)(うた)へる(うた)(じつ)にこの光景(くわうけい)描写(べうしや)して遺憾(ゐかん)なしと(おも)はれたり。
011 ここに聖地(せいち)ヱルサレムの桃上彦(ももがみひこ)は、012(つね)心中(しんちう)おだやかならず、013不平(ふへい)満々(まんまん)(うち)にこの(なが)(はる)()()ごしつつありぬ。014たちまち()きくる夜嵐(よあらし)に、015庭園(ていえん)(いま)(さか)りと()(ほこ)りたる八重桜(やへざくら)()もなく(かぜ)()(おと)されたり。016寝所(しんじよ)にありて()もやらず千々(ちぢ)(おも)ひをくだき(あらし)(おと)(みみ)()ませ、017(くび)()ばして屋外(をくぐわい)光景(くわうけい)()()(とき)しも、
018桃上彦(ももがみひこ)019桃上彦(ももがみひこ)
020()ぶやさしき女性(めがみ)(こゑ)021(あらし)(おと)()ぜりて(きこ)()たりぬ。022桃上彦(ももがみひこ)不審(ふしん)(ねん)にかられ、023ひそかに()()けて庭園(ていえん)()で、024遠近(をちこち)(ところ)()きまで()(つも)りたる(はな)(には)逍遥(せうえう)()たりける。
025 (そら)には満月(まんげつ)(おぼろ)(かか)り、026()には(はな)(むしろ)()きつめたるごとく、027(つき)(はな)(あひ)(えい)じて()もいはれぬ雅趣(がしゆ)をそぞろに(かん)じける。028このとき庭園(ていえん)一隅(いちぐう)より庭木(にはき)()()け、029(ゆき)をあざむく純白(じゆんぱく)女性(ぢよせい)忽然(こつぜん)として(あら)はれけるに、030桃上彦(ももがみひこ)はあたかも(つき)(ゆき)(はな)(つつ)まれて天国(てんごく)(あそ)ぶの愉快(ゆくわい)(かん)じたり。031女性(ぢよせい)桃上彦(ももがみひこ)(まへ)(ちか)くすすみ、032叮嚀(ていねい)(こし)をかがめ敬意(けいい)(へう)しける。033桃上彦(ももがみひこ)朧月夜(おぼろづきよ)のため(いづ)れの女性(ぢよせい)なるかを判別(はんべつ)するに(くる)しみぬ。034このとき(をみな)は、
035貴下(きか)()がもつとも敬愛(けいあい)する桃上彦(ももがみひこ)(いま)さずや』
036(そで)をもて(かほ)(おほ)ひ、037(こし)(かが)(はづ)かしげに(はな)のごとき(やさ)しき(くちびる)(ひら)きたり。038桃上彦(ももがみひこ)(たふ)れむばかりに(おどろ)きいたる。039この(てい)()てとりたる女性(ぢよせい)はしづかに、
040行成彦(ゆきなりひこ)らは常世城(とこよじやう)大会議(だいくわいぎ)において、041傍若(ばうじやく)無人(ぶじん)にして御校正本・愛世版では「妾は常世城の大会議について、行成彦等は傍若無人にして」になっているが、それでは主語・述語がおかしく、文意が伝わらない。霊界物語ネットでは校定版・八幡版に準じて「行成彦らは常世城の大会議において、傍若無人にして」と修正した。ほとんど天使長(てんしちやう)代理(だいり)たるの資格(しかく)なく、042諸神人(しよしん)環視(くわんし)のうちにて終生(しうせい)(ぬぐ)ふべからざる恥辱(ちじよく)(しる)したり。043(わらは)はいま常世(とこよ)(くに)にありて、044神政(しんせい)輔佐(ほさ)しつつあれども、045元来(ぐわんらい)(わらは)出生(しゆつせい)聖地(せいち)なる高天原(たかあまはら)一刻(いつこく)(わす)れたることなし。046しかるに聖地(せいち)代理(だいり)として出張(しゆつちやう)したる行成彦(ゆきなりひこ)行動(かうどう)(じつ)聖地(せいち)(はづか)しむるものなれば、047(わらは)悲歎(ひたん)()へず、048如何(いか)にもして聖地(せいち)権威(けんゐ)声望(せいばう)とを回復(くわいふく)せむと日夜(にちや)焦慮(せうりよ)し、049(とほ)海山(うみやま)()繊弱(かよわ)女性(ぢよせい)(あし)(いた)みも、050聖地(せいち)(おも)誠心(まごころ)のあまり()(わす)れ、051()()につぎてここにその実情(じつじやう)貴下(きしん)(うつた)へ、052善後策(ぜんごさく)(かう)じ、053もつて国祖(こくそ)神慮(しんりよ)(かな)ひたてまつらむとす、054貴下(きか)聖慮(せいりよ)いかに』
055言葉(ことば)たくみに小声(こごゑ)()()てたるに、056桃上彦(ももがみひこ)(おどろ)くかと(おも)ひきや、057満面(まんめん)会心(くわいしん)(ゑみ)をもらしける。058(つき)(はな)とに(てら)されたる桃上彦(ももがみひこ)笑顔(ゑがほ)をチラリとながめたる女性(ぢよせい)は、059得意(とくい)(いろ)満面(まんめん)(ただよ)はしたりき。
060 (わか)(をのこ)(きよ)姿(すがた)と、061浦若(うらわか)(をみな)姿(すがた)は、062しばらく(はな)(には)無言(むごん)のまま()(とど)まれる(をり)しも(つき)(くも)()さらりと左右(さいう)(ひら)き、063あたかも秋天(しうてん)明月(めいげつ)のごとく、064(ひか)(かがや)ける二人(ふたり)(かほ)はいやが(うへ)にもその艶麗(えんれい)(くは)へたり。065(てん)には皎々(かうかう)たる月影(つきかげ)蒼空(あをぞら)(てら)し、066(した)には大地(だいち)一面(いちめん)花筵(はなむしろ)067その(なか)窈窕(えうてう)鮮麗(せんれい)なる(わか)男女(だんぢよ)二人(ふたり)068(うるし)のごとき黒髪(くろかみ)(なが)背後(はいご)()れ、069庭園(ていえん)逍遥(せうえう)する有様(ありさま)は、070天人(てんにん)天女(てんによ)天降(あまくだ)りたるがごとき高尚(かうしやう)優美(いうび)面影(おもかげ)をとどめける。
071 桃上彦(ももがみひこ)(わか)男女(だんぢよ)夜中(やちう)私語(しご)するを他神司(たしん)()つけられ、072(いた)からぬ(はら)(さぐ)られ、073(おも)ひも()らぬ濡衣(ぬれぎぬ)()せられむことを(とほ)(おもんぱか)り、074(をみな)(とも)なひ(わざ)足音(あしおと)(たか)殿内(でんない)(すす)()りぬ。075桃上彦(ももがみひこ)女性(ぢよせい)にむかひ何事(なにごと)かささやきながら()入口(いりぐち)にて(たもと)(わか)ちぬ。076この(うるは)しき女性(ぢよせい)(はた)して何人(なにびと)なりしならむか。
077大正一〇・一二・二四 旧一一・二六 加藤明子録)
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