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第三五章 頭上(づじやう)冷水(ひやみづ)〔一八五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻 篇:第6篇 宇宙大道 よみ(新仮名遣い):うちゅうたいどう
章:第35章 頭上の冷水 よみ(新仮名遣い):ずじょうのひやみず 通し章番号:185
口述日:1921(大正10)年12月25日(旧11月27日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
聖地エルサレムは桃上彦の放埓によって、再び混乱紛糾の有様となった。各地の八王は常世城に集まり、聖地回復の策を練っていた。
そこへ常世姫からの使臣がやってきて、聖地の惨状をつぶさに伝えた。善神に立ち返っていた常世彦も、このとき一種の不安を感じて天を仰いで嘆いた。
この虚を狙って八王八頭の大蛇の霊は八王大神にささやきかけた。曰く、なぜ聖地にはせ参じて自ら実権を握り、立て直そうとしないのか、と。また、大国治立命と名乗る声が、八王の協力を得て聖地に行くようにと八王大神を促した。
八王大神は広間に戻ると、八王たちに聖地に乗り込む決心を伝えた。八王たちは正邪を審理するの分別なく、ただただ聖地の窮状を思うあまり、一も二も無く賛成してしまった。
八王大神と八王たちは大挙して聖地におしよせた。桃上彦は驚いて神々に号令したが、八王大神の勢いにほとんどの神々は肝をつぶして八王大神側についてしまった。
桃上彦は国祖のもとに参向してこの事態を訴えたが、国祖は事ここに至った原因は桃上彦の律法違反の放縦にあると厳しく責めた。そしてただちに職を退いて罪を天地に謝するようにと宣言した。
常世姫は桃上彦のところにやってきて、聖地の窮状を救うために八王大神が来たことを告げ、天使長として国祖に取り次ぐようにと命じた。
桃上彦はおそるおそる国祖のもとに参向したが、国祖に一喝されてすごすごと自分の館に退いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-01 22:18:16 OBC :rm0435
愛善世界社版:213頁 八幡書店版:第1輯 447頁 修補版: 校定版:223頁 普及版:95頁 初版: ページ備考:
001 聖地(せいち)ヱルサレムは桃上彦(ももがみひこの)(みこと)失政(しつせい)により、002ふたたび混乱(こんらん)紛糾(ふんきう)をかさね、003日向(ひなた)(こほり)()くるがごとく、004()(つき)衰滅(すゐめつ)(かたむ)ききたり。005国祖(こくそ)大神(おほかみ)はあたかも手足(てあし)をもぎとられし(かに)のごとく、006進退(しんたい)きはまり如何(いかん)ともなしたまふ(すべ)なかりける。007各山(かくざん)各地(かくち)八王(やつわう)はふたたび常世城(とこよじやう)(あつ)まり、008聖地(せいち)回復(くわいふく)(くび)をあつめて凝議(ぎようぎ)するの()むなきに(いた)りける。
009 このとき聖地(せいち)より常世姫(とこよひめ)使臣(ししん)として広若(ひろわか)010鬼若(おにわか)二人(ふたり)は、011(あま)鳥船(とりぶね)()りて(くだ)(きた)りけるに、012八王神(やつわうじん)常世彦(とこよひこ)は、013ただちに使臣(ししん)一室(いつしつ)にみちびき来意(らいい)をたづねたり。014二人(ふたり)聖地(せいち)惨状(さんじやう)()()てられず、015このままに放任(はうにん)せむか、016聖地(せいち)滅亡(めつぼう)するの(ほか)なきことを詳細(しやうさい)()べたてたり。
017 天授(てんじゆ)本心(ほんしん)立帰(たちかへ)り、018(ほん)守護神(しゆごじん)活動(くわつどう)(まつた)く、019至善(しぜん)至美(しび)善神(ぜんしん)(あらた)まりゐたる常世彦(とこよひこ)も、020このとき一種(いつしゆ)不安(ふあん)(かん)じ、021(てん)(あふ)いで嗟嘆(さたん)(こゑ)()らしける。022この(きよ)(ねら)ひゐたる八頭(やつがしら)八尾(やつを)大蛇(をろち)(れい)は、023頭上(づじやう)よりカラカラと()(わら)ひ、
024小心者(せうしんもの)卑怯者(ひけふもの)よ、025(なんぢ)のごとき弱虫(よわむし)にては常世城(とこよじやう)はおろか、026聖地(せいち)救援(きうゑん)焦慮(せうりよ)するも(なん)力量(りきりやう)かあらむ。027(なんぢ)すみやかに本心(ほんしん)立帰(たちかへ)り、028荒魂(あらみたま)(いさみ)()りおこし、029奇魂(くしみたま)(さとり)(ひら)き、030くだらぬことに煩慮(はんりよ)するよりも(をとこ)らしく(なに)ゆゑに勇猛心(ゆうまうしん)発揮(はつき)せざるか、031自信(じしん)断行力(だんかうりよく)なき(もの)蛆虫(うじむし)同様(どうやう)なり。032すみやかに(だい)勇猛心(ゆうまうしん)()りおこし、033快刀(くわいたう)乱麻(らんま)()るの壮烈(さうれつ)なる神業(しんげふ)敢行(かんかう)せよ。034(われ)こそは()稚宮(わかみや)()()大神(おほかみ)神使(しんし)なり、035夢々(ゆめゆめ)(うたが)ふなかれ』
036といふかと()れば、037その(こゑ)はバタリと()まりにける。038八王神(やつわうじん)青息(あをいき)吐息(といき)(てい)にて両手(りやうて)()み、039奥殿(おくでん)安坐(あんざ)してその処置(しよち)につき千思(せんし)万慮(ばんりよ)(つひや)しゐる(をり)しも、040ふたたび天空(てんくう)(こゑ)あり、
041(われ)大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)なり。042国治立(くにはるたちの)(みこと)(いま)窮地(きゆうち)におちいり、043非常(ひじやう)なる苦境(くきやう)にあり。044(なんぢ)神業(しんげふ)奉仕(ほうし)する神聖(しんせい)なる(しよく)(ほう)じながら、045かかる危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)(なに)(くる)しみて躊躇(ちうちよ)逡巡(しゆんじゆん)するや。046有名(いうめい)無実(むじつ)とは(なんぢ)がことなり。047すみやかに(ふる)()て、048()(なか)(おそ)るるものは(かみ)より(ほか)になし。049(ひと)つも憂慮(いうりよ)することなく各地(かくち)八王神(やつわうじん)(かた)らひ、050すみやかに聖地(せいち)ヱルサレムに()せつけよ。051(かみ)(なんぢ)()ひて(まも)らむ』
052(こゑ)(たか)らかに()(をは)り、053またもや(おに)(こゑ)はバツタリと()まりぬ。
054 常世彦(とこよひこ)五里(ごり)霧中(むちゆう)彷徨(はうくわう)しながら、055大慈(だいじ)大悲(だいひ)国祖(こくそ)大神(おほかみ)窮状(きうじやう)(みみ)にして(これ)坐視(ざし)するに(しの)びず、056断然(だんぜん)()(けつ)して神人(かみがみ)(つど)へる(だい)会議場(くわいぎぢやう)出席(しゆつせき)し、057大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)および(ほか)一神(いつしん)宣示(せんじ)諸神人(しよしん)()決心(けつしん)(うなが)したりける。058しかしてこの大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)(しよう)するは(まつた)偽神(ぎしん)にして、059大自在天(だいじざいてん)守護(しゆご)する六面(ろくめん)八臂(はつぴ)(おに)なりにける。
060 数多(あまた)八王(やつわう)常世彦(とこよひこ)(げん)()きて、061聖地(せいち)(おも)ふのあまり、062前後(ぜんご)分別(ふんべつ)もなく、063またその(こゑ)正神(せいしん)(げん)なるや、064邪神(じやしん)(げん)なるやを考慮(かうりよ)する(いとま)もなく、065異口(いく)同音(どうおん)常世彦(とこよひこ)(げん)賛成(さんせい)したり。066ここにおいて常世彦(とこよひこ)誠心(せいしん)誠意(せいい)聖地(せいち)(すく)ふべく、067八王(やつわう)とともに(あま)磐樟船(いはくすぶね)()りて天空(てんくう)(とどろ)かしつつ聖地(せいち)ヱルサレムに安着(あんちやく)したりける。
068 桃上彦(ももがみひこの)(みこと)八王(やつわう)(つばさ)(つら)ねて(くだ)りきたれるその光景(くわうけい)(きも)をつぶし、
069常世彦(とこよひこ)またもや悪心(あくしん)(おこ)し、070この聖地(せいち)占領(せんりやう)し、071みづから(かは)りて国祖(こくそ)地位(ちゐ)までも占領(せんりやう)せむとする反逆(はんぎやく)行為(かうゐ)にきはまつたり。072聖地(せいち)神人(かみがみ)らはただちに武装(ぶさう)(ととの)へ、073(かれ)反逆者(はんぎやくしや)殲滅(せんめつ)せよ』
074(こゑ)()らして号令(がうれい)したれど聖地(せいち)神人(かみがみ)らはその勢力(せいりよく)優勢(いうせい)なるに(きも)(つぶ)(あるひ)(こし)()かし、075(ねこ)()はれし(ねずみ)(ごと)各自(かくじ)()安全(あんぜん)(はか)りて()()すもあり、076(かく)るるもあり、077一柱(ひとはしら)として桃上彦(ももがみひこの)(みこと)命令(めいれい)服従(ふくじゆう)するもの()かりけり。078桃上彦(ももがみひこの)(みこと)周章(しうしやう)狼狽(らうばい)して大宮殿(だいきうでん)(すす)みいり、079国祖(こくそ)大神(おほかみ)(えつ)し、
080常世彦(とこよひこ)反逆(はんぎやく)(くはだ)て、081数多(あまた)八王(やつわう)その()神人(かみがみ)(ひき)ゐて短兵(たんぺい)(きふ)()()せたり、082いかに取計(とりはか)らはむや』
083進言(しんげん)したるに、084国祖(こくそ)大神(おほかみ)奮然(ふんぜん)として()ちあがり、
085(こと)ここにいたりし原因(げんいん)(なんぢ)律法(りつぱふ)破壊(はくわい)し、086放縦(はうじう)不軌(ふき)行動(かうどう)()りし(むく)いなれば、087(いち)()(はや)(てん)(むか)つて(つみ)(しや)し、088ただちに(しよく)退(しりぞ)至誠(しせい)表白(へうはく)せよ』
089厳重(げんぢう)()ひわたし、090そのまま奥殿(おくでん)(ふか)()らせたまひぬ。091桃上彦(ももがみひこの)(みこと)(なん)とせむ(かた)なく、092(なみだ)にくれ悄然(せうぜん)として宮殿(きうでん)()()()居館(やかた)(かへ)らむとする(とき)093常世姫(とこよひめ)春日姫(かすがひめ)094八島姫(やしまひめ)とともに礼装(れいさう)()らして()りきたり、
095八王(やつわう)大神(だいじん)聖地(せいち)混乱(こんらん)坐視(ざし)するに(しの)びず、096あまたの神人(かみがみ)とともに聖地(せいち)(すく)はむがために参向(さんかう)したり。097天使長(てんしちやう)はすみやかにこの次第(しだい)国祖(こくそ)大神(おほかみ)進言(しんげん)されたし』
098言葉(ことば)(しと)やかに()()つるにぞ、099桃上彦(ももがみひこの)(みこと)はふたたび宮殿(きうでん)参向(さんかう)(ふすま)(そと)より国祖(こくそ)大神(おほかみ)にこの次第(しだい)進言(しんげん)せむとし悲痛(ひつう)なる(こゑ)(しぼ)りながら一言(いちごん)奏上(そうじやう)せむとするや、100大神(おほかみ)(なか)よりただ一言(いちごん)
101(かみ)言葉(ことば)二言(にごん)なし、102(すみやか)天地(てんち)にむかつて(なんぢ)(つみ)(しや)せ、103(ふたた)()(まへ)(きた)(なか)れ』
104厳格(げんかく)なる()言葉(ことば)をもつて(のたま)はせたまひければ、105桃上彦(ももがみひこの)(みこと)是非(ぜひ)なく宮殿(きうでん)(くだ)り、106(おもて)憂鬱(いううつ)(いろ)をうかべながら(ふたた)()居館(やかた)(かへ)りける。
107大正一〇・一二・二五 旧一一・二七 加藤明子録)
108(第三一章~三五章 昭和一〇・一・二二 於久留米市 布屋旅館 王仁校正)
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